説明

個人識別用非接触ICタグおよび個人識別機能付き靴

【課題】個人識別情報を記録した非接触ICタグを靴に装着する場合に、医療機器の下部前面に設置したリーダのアンテナによる個人識別情報の読み取りを安定させる。
【解決手段】個人識別情報を記録したICチップ6と、そのICチップ6に接続するアンテナ4をプリントしたフィルム5とからなるインレット2を、柔軟性を有する密閉ケース3に収容し、その密閉ケース3を靴12の甲部分13に着脱可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、靴に装着する個人識別用非接触ICタグ、および、その個人識別用非接触ICタグを装着した個人識別機能付き靴に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触ICタグを用いたシステムが医療分野で利用されており、例えば、医療従事者が非接触ICタグを身に付けて医療機器を使用する際に、その非接触ICタグに記録された医療従事者の個人識別情報を、医療機器に設置したリーダに読み取らせ、その個人識別情報に基づいて、医療機器にアクセスする資格の有無を識別し、アクセスする資格があるときに、その医療機器へのアクセスを許可するものが知られている。
【0003】
上記のシステムは、非接触ICタグを首から下げて使用するものや、バッジのように胸に付けて使用するものなどがあり、リーダと離れた位置から、非接触ICタグに記録された個人識別情報をリーダに読み取らせることができる利便性がある。
【0004】
しかし、心臓にペースメーカを埋め込んだ医療従事者が、非接触ICタグを上半身に付けた場合、非接触ICタグとペースメーカとが近いので、その非接触ICタグに記載された個人識別情報をリーダに読み取らせるときに発生する電磁波が、ペースメーカの動作に影響を及ぼすおそれがある。
【0005】
また、非接触ICタグを上半身に付けた医療従事者が、心臓にペースメーカを埋め込んだ患者に医療行為をする場合、医療従事者の非接触ICタグと患者のペースメーカとが近いので、非接触ICタグに記載された個人識別情報をリーダに読み取らせるときに発生する電磁波が、患者のペースメーカの動作に影響を及ぼすおそれがあった。
【0006】
この問題を解決するために、非接触ICタグを靴に取り付けることによって、ペースメーカと非接触ICタグの距離を確保することが考えられるが、そのような靴として、非接触ICタグを靴の中敷きの下に水平に設けたものが知られている(特許文献1)。
【0007】
この靴は、リーダのアンテナを埋め込んだマットを踏んだときに、非接触ICタグのアンテナから電磁波を発生させ、その電磁波をリーダのアンテナで受信することによって、非接触ICタグに記録された個人識別情報をリーダに読み取らせる(特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−319083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、医療機器とは別体のマットにリーダのアンテナを設けると、医療機器を移動させる場合に、マットも移動させる必要があり手間がかかる。この手間を省くため、医療機器にリーダを直接取り付けて医療機器とリーダを一体化することが考えられるが、医療機器とリーダを一体化する場合、非接触ICタグから送信される個人識別情報をリーダのアンテナで読み取るために、靴に取り付けた非接触ICタグとリーダのアンテナとの間の通信距離を短くする必要があるため、リーダのアンテナは医療機器の下部前面に設置するのが適当である。
【0009】
しかし、上記靴は、非接触ICタグが水平なので、医療機器の下部前面にリーダのアンテナを設置した場合、リーダのアンテナ軸の方向に対する非接触ICタグのアンテナ軸の方向のずれが大きく、非接触ICタグに記録された医療従事者の個人識別情報を安定して読み取ることができない。
【0010】
この発明が解決しようとする課題は、個人識別情報を記録した非接触ICタグを靴に装着する場合に、医療機器の下部前面に設置したリーダのアンテナによる個人識別情報の読み取りを安定させることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、個人識別情報を記録したICチップと、そのICチップに接続するアンテナをプリントしたフィルムとからなるインレットを、柔軟性を有する密閉ケースに収容し、その密閉ケースを靴の甲部分に着脱可能とした。このようにすると、靴の甲に装着された非接触ICタグは前下がりに傾斜した状態となるので、医療機器の下部前面にリーダのアンテナを設置した場合、非接触ICタグのアンテナ軸の方向に対するリーダのアンテナ軸の方向のずれが小さくなり、その非接触ICタグに記録された医療従事者の個人識別情報を、リーダで安定して読み取ることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明の個人識別用非接触ICタグは、靴の甲部分に装着するので、医療機器の下部前面に取り付けたリーダのアンテナで、非接触ICタグに記録された医療従事者の個人識別情報を安定して読み取ることができる。
【0013】
また、インレットを収容する密閉ケースが柔軟性を有するので、靴を履いて歩いたときに、密閉ケースが甲部分に沿って変形し、違和感を生じない。
【0014】
さらに、インレットを収容する密閉ケースが着脱可能なので、靴が傷んだときに、非接触ICタグを交換せずに靴だけを交換することができる。同様に、非接触ICタグが壊れたときに、靴を交換せずに非接触ICタグだけを交換することができ、経済的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に、この発明の実施形態の個人識別用非接触ICタグ1を示す。この非接触ICタグ1は、インレット2と、そのインレット2を収容する密閉ケース3からなる。
【0016】
インレット2は、図2、図3に示すように、導体からなるアンテナ4が、絶縁性の樹脂フィルム5の表面を、その周縁に沿ってらせん状にプリントされている。アンテナ4は、個人識別情報が記録されたICチップ6に接続されており、アンテナ4から発生する電磁波を介して個人識別情報を送信可能となっている。
【0017】
密閉ケース3は、図2に示すように、軟質プラスチックからなる表面シート7と裏面シート8とを有する。表面シート7と裏面シート8は、図4に示すように、インレット2を間に挟んだ状態で表面シート7の周縁9と裏面シート8の周縁10が互いに溶着されており、水やアルコール等の液体が密閉ケース3に付着しても、その液体の浸入を防止する。
【0018】
裏面シート8には、面ファスナ11が取り付けられており、その面ファスナ11によって、密閉ケース3は、図5に示すように、靴12の甲部分13に着脱可能となっている。
【0019】
この非接触ICタグ1の靴12への装着は、靴12の甲部分13に面ファスナ14をあらかじめ取り付けておき、その面ファスナ14に面ファスナ11を貼り合わせることによって行なう。非接触ICタグ1を靴12に装着してなる個人識別機能付き靴15は、図6に示すように、密閉ケース3が甲部分13を覆う大きさとなっているが、密閉ケース3の表面シート7と裏面シート8が軟質プラスチックからなっており柔軟性を有するので、個人識別機能付き靴15を履いて歩いたときに、密閉ケース3が甲部分13に沿って変形し、違和感を与えないようになっている。
【0020】
この個人識別機能付き靴15を用いると、次のようにして医療機器16へのアクセス制限を行なうことができる。まず、図7に示すように、医療機器16の下部前面にリーダ17のアンテナ18を設置し、そのアンテナ18から非接触ICタグ1を動作させるための電磁波を発生させる。個人識別機能付き靴15を履いた医療従事者19が医療機器16に近づくと、個人識別機能付き靴15の非接触ICタグ1は、リーダ17からの電磁波をアンテナ4で受信し、ICチップ6に記録された個人識別情報に対応する電磁波をアンテナ4から発生する。リーダ17は、非接触ICタグ1から発生した電磁波から個人識別情報を読み取って医療機器16に送り、その個人識別情報に基づいて、医療機器16にアクセスする資格の有無を識別する。
【0021】
アクセスする資格の識別は、たとえば、医療機器16にあらかじめ記憶させた許可者リストとリーダ17で読み取った個人識別情報とを照合し、その個人識別情報が許可者リストに含まれているか否かを判定することによって行なう。許可者リストに含まれている場合は、アクセスする資格があると判定し、医療機器16へのアクセスを許可する。一方、許可者リストに含まれていない場合は、アクセスする資格がないと判定して、医療機器16へのアクセスを制限する。
【0022】
この個人識別用非接触ICタグ1は、靴12の甲部分13に装着したときに、前下がりに傾斜した状態となるので、非接触ICタグ1のアンテナ軸の方向に対するリーダ17のアンテナ軸の方向のずれが小さい。そのため、医療従事者19が医療機器16に近づいたときに、非接触ICタグ1のアンテナ4とリーダ17のアンテナ18との間の距離が長いときにも、非接触ICタグ1に記録された医療従事者19の個人識別情報を、リーダ17で安定して読み取ることができる。
【0023】
また、この非接触ICタグ1は、密閉ケース3に収容したインレット2が個人識別機能付き靴15の甲部分13を覆う程度の大きさなので、個人識別機能付き靴15の甲部分13よりも面積の小さいかかと等の部位に非接触ICタグ1を取り付ける場合に比べて、非接触ICタグ1のアンテナ4の面積が大きい。そのため、アンテナ4の感度が高く、非接触ICタグ1とリーダ17との間の読み取り距離が長い。
【0024】
また、個人識別機能付き靴15は、非接触ICタグ1が着脱可能なので、個人識別機能付き靴15が傷んだときに、非接触ICタグ1を交換せずに靴12だけを交換することができる。同様に、非接触ICタグ1が壊れたときに、靴12を交換せずに非接触ICタグ1だけを交換することができ、経済的である。
【0025】
密閉ケース3を構成する表面シート7と裏面シート8は、軟質プラスチックに限られるものではなく、ゴム等の他の柔軟性材料を用いてもよい。
【0026】
密閉ケース3は、靴12の甲部分13を覆う形状として、図3に示すように、長方形の角をそれぞれ丸くした形状を採用してもよいが、図8(a)に示すように、長方形の角をそれぞれ丸くし、2つの短辺のうち一方を他方よりも短くした形状のものや、図8(b)に示すように、楕円形のものでもよく、図8(c)に示すように、二等辺三角形の角をそれぞれ丸くした形状のものでもよい。
【0027】
個人識別機能付き靴15は、面ファスナ11、14に換えて、ボタンやホック等の他の連結部材により靴12の甲部分13に非接触ICタグ1を着脱可能としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の実施形態の個人識別用非接触ICタグを示す斜視図
【図2】図1に示す非接触ICタグの分解斜視図
【図3】図1に示す非接触ICタグの裏面シートの一部を破断した状態を示す図
【図4】図1に示す非接触ICタグのIV−IV線に沿った断面図
【図5】図1に示す非接触ICタグの靴への装着方法の説明図
【図6】図1に示す非接触ICタグを靴に装着した状態を示す図
【図7】図6に示す個人識別機能付き靴の使用状態を示す図
【図8】図3に示す非接触ICタグの変形例を示す図であり、(a)は長方形の角をそれぞれ丸くし、2つの短辺のうち一方を他方よりも短くした形状の非接触ICタグを示す図、(b)は楕円形状の非接触ICタグを示す図、(c)は二等辺三角形の角をそれぞれ丸くした形状の非接触ICタグを示す図
【符号の説明】
【0029】
1 個人識別用非接触ICタグ
2 インレット
3 密閉ケース
4 アンテナ
5 樹脂フィルム
6 ICチップ
12 靴
13 甲部分
15 個人識別機能付き靴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人識別情報を記録したICチップ(6)と、そのICチップ(6)に接続するアンテナ(4)をプリントしたフィルム(5)とからなるインレット(2)を、柔軟性を有する密閉ケース(3)に収容し、その密閉ケース(3)を靴(12)の甲部分(13)に着脱可能とした個人識別用非接触ICタグ。
【請求項2】
請求項1に記載した個人識別用非接触ICタグ(1)を、甲部分(13)に装着した個人識別機能付き靴。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−204380(P2008−204380A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42610(P2007−42610)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000245391)野崎印刷紙業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】