説明

倍力装置

【課題】高性能化を図りつつ小型化を可能とした倍力装置を提供する。
【解決手段】
駆動力が付与されて作動する流量ピストン41と、流量ピストン41によって内部のオイルが加圧される一次側オイル室121と、一次側オイル室121からのオイルが連通路141を介して供給される二次側オイル室122と、一次側オイル室121から二次側オイル室122へのオイルの供給に伴って連通路141を閉鎖する切替機構221と、一次側オイル室121内の油圧を受けて後退し二次側オイル室122のオイルを加圧する増圧ピストン101と、記二次側オイル室122内のオイルを出力するための出力ポート201とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチ機構に用いられる倍力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術としては、例えば自動クラッチ断続装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この自動クラッチ段側装置では、油圧ポンプとクラッチとの間に、モータ駆動式のシングルピストン型アクチュエータを倍力装置として介在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−063017公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来にあっては、大容量で高圧かつ高応答性を両立しようとすると、モータや減速機構の大型化が避けられない。
【0006】
これに伴って、変速機等への搭載性が悪化するという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、高性能化を図りつつ小型化を可能とした倍力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明の請求項1の倍力装置にあっては、駆動力が付与されて作動する一次側ピストンと、該一次側ピストンによって内部のオイルが加圧される一次側オイル室と、該一次側オイル室からのオイルが連通路を介して供給される二次側オイル室と、前記一次側オイル室から前記二次側オイル室へのオイルの供給に伴って前記連通路を閉鎖する切替機構と、前記一次側オイル室内の油圧を受けて後退し前記二次側オイル室のオイルを加圧する二次側ピストンと、前記二次側オイル室内のオイルを出力するための出力ポートと、を備えている。
【0009】
すなわち、駆動力を付与して一次側ピストンを前進方向に作動すると、一次オイル室内のオイルが加圧され、当該オイルが連通路を介して二次側オイル室へ供給された後、出力ポートを介して、例えばクラッチ等のアクチュエータに出力される。これにより、当該アクチュエータには、前記オイルが供給されるとともに、その供給油圧が徐々に高められる。
【0010】
そして、前記一次側オイル室から前記二次側オイル室へのオイルの供給に伴って前記連通路が閉鎖される。すると、前記一次側ピストンによって高められた前記一次オイル室内の油圧は、二次側ピストンを後退させる力として作用する。これにより後退した前記二次側ピストンは、前記二次側オイル室のオイルを加圧するため、前記出力ポートを介して前記アクチュエータに供給される油圧が高められる。
【0011】
このように、前記一次側ピストンの作動開始時には、前記一次側ピストンの作動量に応じたオイルがアクチュエータに供給され、前記連通路が閉鎖された時点からは、前記二次側ピストンの作動量に応じた油圧がアクチュエータに供給される。
【0012】
また、請求項2の倍力装置においては、前記二次側ピストンの前記一次側オイル室側の受圧面積を前記二次側オイル室側の受圧面積より大きくなるように設定した。
【0013】
すなわち、前記一次側オイル室側の受圧面積は、前記二次側オイル室側の受圧面積より大きく設定されているので、パスカルの原理によって、前記二次側オイル室側での増圧が可能となる。
【0014】
さらに、請求項3の倍力装置では、前記二次側ピストンに形成した前記連通路の端部開口部を当該二次側ピストンの側面に開口するとともに、前記端部開口部が対向するシリンダ内面の部位に前記一次側オイル室に連通する段部を凹設し、前記二次側ピストンが後退する際に前記端部開口部が前記段部に対向した連通状態から前記端部開口部が前記シリンダ内面の一般部に対向して閉鎖される閉鎖状態に変化するように構成した。
【0015】
すなわち、前記一次側ピストンによる前記一次側オイル室の加圧を開始すると、前記二次側ピストンの側面とシリンダ内面の段部との間に流入した前記一次側オイル室のオイルが、前記二次側ピストンの側面に開口した端部開口部を介して連通路に通流する。そして、このオイルは、前記連通路を介して前記二次側オイル室に供給される。
【0016】
次に、前記一次側オイル室内の油圧の上昇に伴って前記二次側ピストンが後退すると、前記端部開口部が前記シリンダ内面の一般部に対向することによって閉鎖され、前記連通路を介した前記二次側オイル室へ供給が遮断される。
【0017】
これにより、前述した切替機構が構成される。
【0018】
加えて、請求項4の倍力装置にあっては、前記二次側ピストンを前記一次側オイル室側へ向けて付勢するリターンスプリングを設けた。
【0019】
すなわち、前記二次側ピストンには、前記二次側オイル室からの圧力に加えて前記リターンスプリングの付勢力が付与される。
【0020】
また、請求項5の倍力装置においては、前記二次側オイル室に生ずる油圧の衝撃を吸収する調圧機構を設けた。
【0021】
これにより、前記二次側オイル室に生じ得る油圧の衝撃が和らげられる。
【0022】
さらに、請求項6の倍力装置では、前記二次側ピストンと前記調圧機構とを並列に配置した。
【0023】
これにより、前記二次側ピストンと前記調圧機構とを直列に配置する場合と比較して、全体としての長さ寸法が抑えられる。
【0024】
加えて、請求項7の倍力装置にあっては、前記二次側ピストンを中心に配置し、該二次側ピストンの外周部にリング状の前記調圧機構を配設した。
【0025】
これにより、前記二次側ピストンの外周部空間が有効利用される。
【0026】
また、請求項8の倍力装置においては、前記調圧機構を中心に配置し、該調圧機構の外周部にリング状の前記二次側ピストンを配設した。
【0027】
これにより、前記調圧機構の外周部空間が有効利用される。
【0028】
さらに、請求項9の倍力装置では、前記調圧機構に前記連通路を設けた。
【0029】
これにより、前記調圧機構に前記連通路の機能を付加することができる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように本発明の請求項1の倍力装置にあっては、一次側ピストンの作動開始時には一次側ピストンの作動量に応じたオイルをアクチュエータに供給することができ、連通路が閉鎖された時点からは、二次側ピストンの作動量に応じた油圧をアクチュエータに供給することができる。
【0031】
このように、オイルの供給と油圧の供給とを役割分担することで、オイルの供給を要する際にはオイルの供給を、油圧の供給を要する際には油圧の供給を優先して行うことができる。このため、オイルの供給と油圧の供給とを単一のピストンで行わなければならない場合と比較して、必要に応じた容量及び圧力の供給が容易となるとともに、モータや減速機構を大型化すること無く、要求に対する応答性を高めることができる。
【0032】
これにより、小型化及び高性能化を図ることができるので、変速機等への搭載性を向上することができる。
【0033】
また、請求項2の倍力装置においては、前記一次側オイル室側の受圧面積が、前記二次側オイル室側の受圧面積より大きく設定されているため、パスカルの原理によって、前記二次側オイル室側での圧力を増大を図ることができる。
【0034】
さらに、請求項3の倍力装置では、前記二次側ピストンを利用することで、前述した切替機構を構成することができる。
【0035】
これにより、前記二次側ピストンの有効利用を図ることができる。
【0036】
加えて、請求項4の倍力装置にあっては、前記二次側ピストンには前記二次側オイル室からの圧力に加えてリターンスプリングの付勢力が付与される。
【0037】
このため、このリターンスプリングの付勢力を変更することで、前記二次側ピストンの作動油圧を調整することができる。
【0038】
また、請求項5の倍力装置においては、前記二次側オイル室に生じ得る油圧の衝撃を和らげることができる。
【0039】
これにより、衝撃圧に起因した悪影響を抑制することができる。
【0040】
さらに、請求項6の倍力装置では、前記二次側ピストンと前記調圧機構とを並列に配置することで、前記二次側ピストンと前記調圧機構とを直列に配置する場合と比較して、長さ寸法を抑えることができ、小型化に寄与することができる。
【0041】
加えて、請求項7の倍力装置にあっては、前記二次側ピストンを中心に配置し、該二次側ピストンの外周部にリング状の前記調圧機構を配設することで、前記二次側ピストンの外周部空間の有効利用を図ることができる。
【0042】
また、請求項8の倍力装置においては、前記調圧機構を中心に配置し、該調圧機構の外周部にリング状の前記二次側ピストンを配設することで、前記調圧機構の外周部空間の有効利用を図ることができる。
【0043】
さらに、請求項9の倍力装置では、前記調圧機構に前記連通路を設けることによって、前記調圧機構による機能と前記連通路による機能とを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第一の実施の形態を示す説明図である。
【図2】同実施の形態を示す断面図である。
【図3】同実施の形態の動作を示す説明図である。
【図4】同実施の形態の調圧機構を示す説明図である。
【図5】同実施の形態の配置を示す説明図である。
【図6】同実施の形態の油圧上昇動作を示す説明図である。
【図7】同実施の形態の油圧上昇動作時の各所のデータを示す説明図である。
【図8】同実施の形態の油圧減少動作を示す説明図である。
【図9】同実施の形態の油圧減少動作時の各所のデータを示す説明図である。
【図10】同実施の形態の機能を示す説明図である。
【図11】本発明の第二の実施の形態を示す説明図である。
【図12】本発明の第三の実施の形態を示す説明図である。
【図13】本発明の第四の実施の形態を示す説明図である。
【図14】本発明の第五の実施の形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
(第一の実施の形態)
【0046】
以下、本発明の第一の実施の形態を図に従って説明する。
【0047】
図1は、本実施の形態にかかる倍力装置1を示す図であり、該倍力装置1は、例えば車両に搭載されたクラッチを制御する装置である。
【0048】
この倍力装置1は、図1中右上に示したように、円柱状に形成されており、そのA断面と、B断面と、C断面とが、当該図1内に示されている。前記倍力装置1は、図2に示すように、仕切板11を境とする基端側に駆動部12が設けられており、その先端側に制御部13が設けられている。
【0049】
前記駆動部12は、前記仕切板11と共に閉鎖空間を形成する有底円筒状のケーシング21を備えており、該ケーシング21内には、駆動源を構成するDCモータ22が設けられている。該DCモータ22の回転軸23は、減速ギア24を介して台形ねじ25が接続されており、該台形ねじ25は、前記仕切板11に螺合している。この台形ねじ25の先端部は、前記仕切板11を挿通して前記制御部13側へ延出しており、前記DCモータ22で回転して前進後退することで前記制御部13側への延出量を可変できるように構成されている。
【0050】
前記制御部13の外周部は、円筒状の流量シリンダ31で構成されており、該流量シリンダ31は、その基端が前記仕切板11に密着した状態で固定されるとともに、その先端は蓋部32で閉鎖されている。
【0051】
この流量シリンダ31の基端部には、前記台形ねじ25が延出しており、該台形ねじ25の先端には、一次側ピストンを構成する流量ピストン41が設けられている。これにより、当該流量ピストン41は、前記DCモータ22からの駆動力が付与され作動するように構成されている。
【0052】
このとき、前記流量ピストン41は、前記減速ギア24及び前記台形ねじ25の回転に伴って前後移動するように構成されている。このため、前記DCモータ22が非通電となっても、その移動位置を保持する自己保持機能を備えており、省エネ効果が得られるように構成されている。
【0053】
前記流量ピストン41は、薄肉円柱状に形成されており、その外形寸法は、前記流量シリンダ31の内径寸法に適合する大きさに設定されている。この流量ピストン41の外周面には、Oリング51が設けられており、前記流量ピストン41が前後移動する際に、前記Oリング51が前記流量シリンダ31の内周面に摺接するように構成されている。
【0054】
前記流量シリンダ31の基端部には、オイルが通流する入力ポート61が設けられており、前記流量ピストン41が最も後退した状態で、前記入力ポート61が当該流量ピストン41より先端側に連通する一方、該流量ピストン41が所定位置まで前進した際に前記入力ポート61と当該流量ピストン41より先端側との連通状態を遮断するように構成されている。
【0055】
前記流量シリンダ31の先端側には、図1及び図2に示したように、円筒状の増圧シリンダ71が設けられている。該増圧シリンダ71は、図2中下寄りに配置されており、当該増圧シリンダ71の図2中下側の一部は、前記流量シリンダ31によって構成されている。
【0056】
この増圧シリンダ71の先端には、図2に示したように、中心側へ延出した先端延出部81がリング状に形成されており、該先端延出部81の内縁からは、円筒状の小径円筒部82が基端側へ向けて延出している。これにより、該小径円筒部82と前記増圧シリンダ71との間には、スプリング保持部83が形成されており、該スプリング保持部83には、コイルバネからなるリターンスプリング84の一端部が保持されている。
【0057】
前記小径円筒部82は、当該増圧シリンダ71の中途部まで延出しており、当該増圧シリンダ71の先端部には前記小径円筒部82で構成された小径部91が、また基端側に大径部92が形成されている。
【0058】
前記増圧シリンダ71内には、二次側ピストンを構成する増圧ピストン101が内嵌しており、該増圧ピストン101は、前記大径部92に内嵌する円柱状の頭部102と、前記小径部91に内嵌する小径円柱状の首部103とによって断面T字状に形成されている。
【0059】
該首部103の周面には、前記小径円筒部82の内側面に設けられたシールリング111に摺接するように構成されており、前記頭部102の外周面には、前記増圧シリンダ71のシリンダ内面112と摺接する一対のOリング113,113が設けられている。
【0060】
これにより、前記流量シリンダ31内は、前記増圧ピストン101を境に区画されており、該増圧ピストン101より基端側には、一次側オイル室121が形成されている。また、前記増圧ピストン101より先端側には、二次側オイル室122が形成されており、該二次側オイル室122は、前記増圧シリンダ71の先端部に設けられた連通部123を介して、当該増圧シリンダ71の側部に設けられた圧力制御室124に連通している。
【0061】
前記増圧ピストン101の前記頭部102の裏面には、前記リターンスプリング84の他端が当接しており、当該増圧ピストン101には、後退時に前記リターンスプリング84によって前記一次側オイル室121側へ向けた付勢力が付与されるように構成されている。
【0062】
前記増圧ピストン101の前記頭部102の頭部端面131が構成する前記一次側オイル室121側の受圧面積132は、当該増圧ピストン101の前記首部103基端の首部端面133が構成する前記二次側オイル室122側の受圧面積134より大きくなるように設定されている。
【0063】
これにより、図3に示すように、前記増圧ピストン101に対して先端方向へ向けて作用する流量シリンダ側推進力Gは、「前記一次側オイル室121内の油圧(流量ピストン側油圧)×前記一次側オイル室121側の受圧面積132」となるように構成されている。
【0064】
一方、前記増圧ピストン101に対して基端方向へ向けて作用する増圧シリンダ側推力は、「(前記二次側オイル室122内の油圧(流量シリンダ油圧)×前記二次側オイル室122側の受圧面積134)D+(リターンスプリング推力)E+(前記増圧ピストン101の前記頭部102の裏面の面積(リターンスプリング室面積+リターンスプリング圧))F」となるように構成されている。
【0065】
前記増圧ピストン101には、図2に示したように、前記一次側オイル室121と前記二次側オイル室122とを連通する連通路141が形成されており、該連通路141は、前記首部103の中心線に沿って延在する直進部142と、該直進部142より側方へ折曲し前記頭部102の半径方向に延在する折曲部143とによって断面L字状に形成されている。
【0066】
これにより、この連通路141の一端側の端部開口部151は、当該増圧ピストン101の前記首部103の端面に開口しているとともに、他端側の端部開口部152は、当該増圧ピストン101の前記頭部102の側面に開口しており、この端部開口部152の開口位置は、前記両Oリング1113,113間に設定されている。
【0067】
この他端側の前記端部開口部152が対向する前記増圧シリンダ71におけるシリンダ内面112の部位には、前記一次側オイル室121に連通する段部161が当該増圧シリンダ71の基端部に凹設されており、前記端部開口部152が前記段部161に対向した際には、前記一次側オイル室121が前記連通路141に連通した連通状態162が形成されるように構成されている。一方、前記増圧ピストン71が後退して前記端部開口部152が前記シリンダ内面112の一般部163に対向した際には、前記端部開口部152が前記一般部163と前記両Oリング113,113とでシールされるように構成されており、図3に示したように、前記連通路141が閉鎖された閉鎖状態164を形成できるように構成されている。
【0068】
前記圧力制御室124は、図1にも示したように、円柱状の空間で構成されており、当該圧力制御室124を包囲する包囲壁171の一部は、図2に示したように、前記流量シリンダ31及び前記増圧シリンダ71によって構成されている。前記包囲壁171の基端は、閉鎖部材172で閉鎖されており、該閉鎖部材172に閉鎖された前記圧力制御室124は、その基端部が図外のドレンポートを介して外部に連通している。
【0069】
前記圧力制御室124には、調圧バネ181が収容されており、該調圧バネ181の一端は前記閉鎖部材172に当接している。また、この調圧バネ181の他端には、円柱状の弁体182が支持されており、該弁体182の外周面に設けられたOリング183は、前記包囲壁171に摺接するように構成されている。
【0070】
これにより、前記二次側オイル室122に油圧の衝撃が加えられた際に、前記弁体182が後退して当該衝撃を吸収できるように構成されており、図4にも示すように、衝撃吸収用の調圧機構191が構成されている。また、この調圧機構191は、図5に示すように、前記増圧ピストン101と並列に配置されている。
【0071】
前記圧力制御室124は、図2に示したように、前記流量シリンダ31の先端部に設けられた出力ポート201に連通しており、該出力ポート201は、アクチュエータとしてのクラッチに接続されるように構成されている。
【0072】
図6は、前記DCモータ22で前記流量ピストン41を前進させ前記出力ポート201からクラッチ211へ供給される圧力を上昇する動作を示す説明図であり、図7は、その際の各部の動作状態及び前記出力ポート201から出力される油圧並びに吐出油量が示されている。
【0073】
すなわち、前記流量ピストン41が最も後退した状態では、入力ポート61と出力ポート201とが連通され、元圧つまり油圧が「0」となる(S1)。そして、前記流量ピストン41が前進するに従って一次側オイル室121内のオイルが加圧され、当該オイルが前記連通路141を介して出力ポート201から供給されるとともに、前記増圧ピストン101が後退し(S2〜S3)、やがて前記連通路141が閉鎖される(S4)。
【0074】
この状態において、前記流量ピストン41をさらに前進させると、前記一次側オイル室121内の油圧を受けた前記増圧ピストン101が後退し、前記二次側オイル室122のオイルを加圧するため、前記出力ポート201から供給される油圧が増大する(S5)。これにより、クラッチ211が確実にミートした状態を形成することができる。
【0075】
一方、図8は、前記DCモータ22で前記流量ピストン41を後退させ前記出力ポート201からクラッチ211へ供給される圧力を減少する動作を示す説明図であり、図9は、その際の各部の動作状態及び前記出力ポート201から出力される油圧並びに吐出油量が示されている。
【0076】
すなわち、前記流量ピストン41が最も前進した状態では、前記出力ポート201から供給される油圧が最大であり(SB1)、クラッチ211が確実にミートしている。
【0077】
この状態から前記流量ピストン41を後退すると前記増圧ピストン101が後退を開始し(SB2)、やがて前記連通路141が開放される(SB3)。
【0078】
さらに、前記流量ピストン41を後退すると、前記クラッチ211に供給されたオイルが前記連通路141を介して前記一次側オイル室121へ戻り(SB4)、前記流量ピストン41が最も後退した状態では、前記出力ポート201と前記入力ポート61とが連通して、元圧つまり油圧が「0」となる(SB4)。
【0079】
このように、図10に示すように、前記流量ピストン41によって低圧で高流量の実現を可能とし、前記増圧ピストン101によって低流量で高圧供給を実現することができる。
【0080】
この間、前記一次側オイル室121から前記二次側オイル室122へのオイルの供給は継続しつつ前記増圧ピストン101が後退し、前記連通路141が閉鎖した時点で、前記流量ピストン41が支配的な高流用状態から前記増圧ピストン101が支配的な増圧状態に切り替わる。これにより、本発明の切替機構221が構成される。
【0081】
具体的に説明すると、図2に示したように、前記流量ピストン41による前記一次側オイル室121の加圧を開始すると、前記増圧ピストン101の側面とシリンダ内面112の段部161との間に流入した前記一次側オイル室121のオイルが、前記増圧ピストン101の側面に開口した端部開口部152を介して連通路141に通流する。そして、このオイルは、前記連通路141を介して前記二次側オイル室122に供給される。
【0082】
次に、前記一次側オイル室121内の油圧の上昇に伴って前記増圧ピストン101がさらに後退すると、前記端部開口部152が前記シリンダ内面112の一般部163に対向することによって閉鎖され、前記連通路141を介した前記二次側オイル室122へ供給が遮断される。
【0083】
これにより、前述した切替機構221が構成される。
【0084】
以上の構成にかかる本実施の形態において、前記流量ピストン41の作動開始時には、該流量ピストン41の作動量に応じたオイルをクラッチ211に供給することができ、前記連通路141が閉鎖された時点からは、前記増圧ピストン101の作動量に応じた油圧を前記クラッチ211に供給することができる。
【0085】
このように、オイルの供給と油圧の供給とを役割分担することで、オイルの供給を要する際にはオイルの供給を、油圧の供給を要する際には油圧の供給を優先して行うことができる。
【0086】
このため、オイルの供給と油圧の供給とを単一のピストンで行わなければならない場合と比較して、必要に応じた容量及び圧力の供給が容易となるとともに、DCモータ22や減速機構を大型化すること無く、要求に対する応答性を高めることができる。
【0087】
これにより、小型化及び高性能化を図ることができるので、変速機への搭載性を向上することができる。
【0088】
また、前記増圧ピストン101の前記一次側オイル室121側の受圧面積132が、前記二次側オイル室122側の受圧面積134より大きく設定されているため、パスカルの原理によって、前記二次側オイル室122側での圧力を増大を図ることができる。
【0089】
さらに、前記増圧ピストン101を利用して前述の切替機構221を構成したので、当該増圧ピストン101の有効利用を図ることができる。
【0090】
ここで、前記増圧ピストン101には、前記二次側オイル室122からの圧力に加えて前記リターンスプリング84の付勢力が付与されている。
【0091】
このため、このリターンスプリング84の付勢力を変更することで、前記増圧ピストン101の作動油圧を調整することができる。
【0092】
そして、この倍力装置1には、前記二次側オイル室122に生ずる油圧の衝撃を吸収する調圧機構191が設けられている。
【0093】
このため、前記二次側オイル室122に生じ得る油圧の衝撃を和らげることができる。よって、衝撃圧に起因した悪影響を抑制することができる。
【0094】
さらに、本実施の形態では、前記増圧ピストン101と前記調圧機構191とを並列に配置した。
【0095】
このため、前記増圧ピストン101と前記調圧機構191とを直列に配置する場合と比較して、全体としての長さ寸法を抑えることができ、小型化に貢献することができる。
【0096】
(第二の実施の形態)
【0097】
図11は、第二の実施の形態を示す図であり、第一の実施の形態と同一又は同等部分に付いては同符号を付して説明を割愛するとともに、異なる部分に付いてのみ説明する。
【0098】
すなわち、本実施の形態にかかる倍力装置1001では、前記増圧シリンダ71及び前記増圧ピストン101が当該倍力装置1001の中心に配置されており、前記増圧シリンダ71の外周部にリング状の前記調圧機構191が配設されている。
【0099】
これにより、前記増圧ピストン101の外周部空間の有効利用を図ることができる。
【0100】
(第三の実施の形態)
【0101】
図12は、第三の実施の形態を示す図であり、第一の実施の形態と同一又は同等部分に付いては同符号を付して説明を割愛するとともに、異なる部分に付いてのみ説明する。
【0102】
すなわち、本実施の形態にかかる倍力装置1101では、前記調圧機構191が当該倍力装置1101の中心に配置されており、前記調圧機構191の外周部にリング状の前記増圧シリンダ71及び前記増圧ピストン101が配設されている。
【0103】
これにより、前記調圧機構191の外周部空間の有効利用を図ることができる。
【0104】
(第四の実施の形態)
【0105】
図13は、第四の実施の形態を示す図であり、第一の実施の形態と同一又は同等部分に付いては同符号を付して説明を割愛するとともに、異なる部分に付いてのみ説明する。
【0106】
すなわち、本実施の形態にかかる倍力装置1201では、前記調圧機構191に前記連通路141が設けられている。
【0107】
具体的に説明すると、当該倍力装置1201の中心に前記圧力制御室124が設けられており、該圧力制御室124は、前記包囲壁171で包囲されている。この圧力制御室124には、前記調圧バネ181が収容されており、該調圧バネ181の一端は、前記包囲壁171の端部より内側へ向けて延出したリング状の内方延出部1211に支持されている。
【0108】
また、前記調圧バネ181の他端は、前記弁体182を構成する調圧ピストン1221に当接されており、該調圧ピストン1221は、前記蓋部32へ向けて付勢されている。
【0109】
前記調圧ピストン1221には、前記連通路141が形成されており、該連通路141の端部開口部152は、前記調圧ピストン1221の周面に開口している。
【0110】
これにより、前記二次側オイル室122の油圧により前記調圧ピストン1221が基端方向へ移動した際に、前記連通路141の前記端部開口部152が前記包囲壁171の内側面に対向して閉鎖されるように構成されており、これにより、前記増圧ピストン101の後退が促進され、前記二次側オイル室122内の油圧を上昇できるように構成されている。
【0111】
以上の構成に係る本実施の形態では、前記調圧機構191に前記連通路141を設けたので、前記調圧機構191の機能と前記連通路141の機能とを同時に得ることができる。
【0112】
(第五の実施の形態)
【0113】
図14は、第五の実施の形態を示す図であり、第一の実施の形態と同一又は同等部分に付いては同符号を付して説明を割愛するとともに、異なる部分に付いてのみ説明する。
【0114】
すなわち、本実施の形態にかかる倍力装置1301では、前記調圧機構191に前記連通路141が設けられている。
【0115】
具体的に説明すると、前記圧力制御室124には、円筒状の調圧ピストン1311が軸方向へ移動可能に保持されており、該調圧ピストン1311の大径部1312と、当該調圧ピストン1311を保持するリング状保持部1313との間には調圧バネ181が配設されている。
【0116】
前記調圧ピストン1311には、前記連通路141が形成されており、該連通路141の端部開口部152は、前記大径部1312の周面に開設されている。
【0117】
前記端部開口部152が対向する前記増圧シリンダ71の外周面には、前記段部161が形成されており、前記連通路141を介して前記一次側オイル室121と前記二次側オイル室122との連通状態を確保できるように構成されている。
【0118】
一方、前記二次側オイル室122の油圧により前記調圧ピストン1311が基端方向へ移動した際には、前記連通路141の前記端部開口部152が前記増圧シリンダ71の外周面の一般部に対向して閉鎖されるように構成されており、これにより、前記増圧ピストン101の後退が促進され前記二次側オイル室122内の油圧を上昇できるように構成されている。
【0119】
以上の構成に係る本実施の形態にあっても、前記調圧機構191に前記連通路141を設けたので、前記調圧機構191の機能と前記連通路141の機能とを同時に得ることができる
【符号の説明】
【0120】
1 倍力装置
22 DCモータ
41 流量ピストン
84 リターンスプリング
101 増圧ピストン
112 シリンダ内面
121 一次側オイル室
122 二次側オイル室
141 連通路
152 端部開口部
161 段部
162 連通状態
163 一般部
164 閉鎖状態
191 調圧機構
201 出力ポート
221 切替機構
1001 倍力装置
1101 倍力装置
1201 倍力装置
1301 倍力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力が付与されて作動する一次側ピストンと、
該一次側ピストンによって内部のオイルが加圧される一次側オイル室と、
該一次側オイル室からのオイルが連通路を介して供給される二次側オイル室と、
前記一次側オイル室から前記二次側オイル室へのオイルの供給に伴って前記連通路を閉鎖する切替機構と、
前記一次側オイル室内の油圧を受けて後退し前記二次側オイル室のオイルを加圧する二次側ピストンと、
前記二次側オイル室内のオイルを出力するための出力ポートと、
を備えたことを特徴とする倍力装置。
【請求項2】
前記二次側ピストンの前記一次側オイル室側の受圧面積を前記二次側オイル室側の受圧面積より大きくなるように設定したことを特徴とする請求項1記載の倍力装置。
【請求項3】
前記二次側ピストンに形成した前記連通路の端部開口部を当該二次側ピストンの側面に開口するとともに、前記端部開口部が対向するシリンダ内面の部位に前記一次側オイル室に連通する段部を凹設し、前記二次側ピストンが後退する際に前記端部開口部が前記段部に対向した連通状態から前記端部開口部が前記シリンダ内面の一般部に対向して閉鎖される閉鎖状態に変化するように構成したことを特徴とする請求項1又は2記載の倍力装置。
【請求項4】
前記二次側ピストンを前記一次側オイル室側へ向けて付勢するリターンスプリングを設けたことを特徴とする請求項3記載の倍力装置。
【請求項5】
前記二次側オイル室に生ずる油圧の衝撃を吸収する調圧機構を設けたことを特徴とする請求項1から4にいずれか記載の倍力装置。
【請求項6】
前記二次側ピストンと前記調圧機構とを並列に配置したことを特徴とする請求項5記載の倍力装置。
【請求項7】
前記二次側ピストンを中心に配置し、該二次側ピストンの外周部にリング状の前記調圧機構を配設したことを特徴とする請求項5又は6記載の倍力装置。
【請求項8】
前記調圧機構を中心に配置し、該調圧機構の外周部にリング状の前記二次側ピストンを配設したことを特徴とする請求項5又は6記載の倍力装置。
【請求項9】
前記調圧機構に前記連通路を設けたことを特徴とする請求項5から8にいずれか記載の倍力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−237401(P2012−237401A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107430(P2011−107430)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000220505)日本電産トーソク株式会社 (189)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】