説明

倒立型エアゾール製品

【課題】フイルター部材を使用する必要がなく、エアゾール製品からその外部にエアゾール容器内の内容物をほとんど残存させることなく噴射させることができ、内容物がその内壁に付着して乾燥することによって生成した乾燥物が剥がれ落ちた破片や内容物から生じた析出物などがハウジング内のステム孔の流路を閉塞することを防止することができるエアゾール製品を提供する。
【解決手段】倒立型エアゾール製品用噴射バルブがエアゾール容器7に装着されている。前記倒立型エアゾール製品用噴射バルブは、ステム1、当該ステム1の側面に形成されたステム孔1aを封止するように配設されたステムラバー2およびステム1に押圧を加えるためのスプリング3がハウジング4内に収納されてなり、前記ハウジング4の少なくとも側面に前記ステム1に配設されたステム孔1aの孔径以下の孔径を有する貫通孔4aが複数個設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、倒立型エアゾール製品に関する。さらに詳しくは、バルブを下方に向けて使用される、倒立型泡沫エアゾール製品などに代表される倒立型エアゾール製品、それに使用される倒立型エアゾール製品用バルブおよび倒立型エアゾール製品用ハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
エアゾール製品のバルブで目詰まりが生じた場合、内容物を一定量で噴射することができなくなったり、経時的に噴射量が減少したりするなどの噴射不良が生じる。エアゾール製品のバルブでの目詰まりは、エアゾール製品にとって致命的な欠点であるため、その目詰まりを防止することは、エアゾール製品を開発するうえでの重要な技術的課題となっている。
【0003】
エアゾール製品の中でも特に倒立型エアゾール製品では、正立状態で静置している間にエアゾール容器の内容物がその内壁に付着して乾燥することによって生成した乾燥物が使用するときの振盪によって剥がれ落ちた破片や内容物から生じた析出物などが内容物中で沈降し、倒立状態で使用するときにバルブのハウジング内に吸い込まれ、ハウジング内のステム孔の流路を閉塞することがある。このようにステム孔の流路が閉塞した場合、エアゾール製品の内容物を一定量で噴射させることができなくなったり、経時的に噴射量が減少したりするという噴射不良が生じるおそれがある。
【0004】
そこで、バルブの目詰まりを防止し、良好な噴霧状態を与える倒立型エアゾール製品として、耐圧容器の収納物を外部に取り出すための導入孔が壁部に設けられているエアゾールバルブにおいて、当該導入孔にフイルター部材が当接されている倒立型エアゾール製品が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この倒立型エアゾール製品に使用されているフイルター部材には、ポリウレタン系発泡体などの素材が使用されているため、エアゾール製品の収納物によって当該素材が溶解したり、当該素材に含まれている可塑剤などが収納物に溶出し、収納物が変性したりするおそれがあることから、エアゾール製品内に充填することができる収納物の種類に制約がある。
【0005】
エアゾール缶のステム孔の詰まりによる動作不良を防止する弁構造として、ステムと接続されるハウジングの底面のチューブの取付け部にステム孔の径以下の径を有する複数の剤導入孔が形成された弁構造が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、この弁構造には、ハウジングの底面のチューブの取付け部にステム孔の径以下の径を有する複数の剤導入孔が設けられていることから、配設可能な剤導入孔の数に制約があるとともにエアゾール缶の内容物の流量がこの剤導入孔で制限されるため、剤導入孔で目詰まりが生じると内容物の噴射量が低減し、所望の噴射形態に制御することが困難となる。
【0006】
また、エアゾール製品のステム孔が微小異物で目詰まりすることを防止するフイルタキャップとして、エアゾール容器内の内容物を流入させるための流入孔を有するハウジングの底部にパイプ部を設け、当該パイプ部にスリーブが外挿され、スリーブの内周面に凹部を設けることにより、パイプ部とスリーブとの間にフイルタ用小孔が形成されたフイルタキャップが提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、このフイルタキャップを倒立型エアゾール製品に適用し、当該倒立型エアゾール製品を倒立させて使用した場合、フイルタキャップのパイプ部の下端部からエアゾール容器内の内容物が流入するため、パイプ部の下端面からハウジングが取り付けられているマウンティングカップの下端面までの間に存在する内容物が残存することから、エアゾール製品からその外部に内容物を十分に噴射させることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−2568号公報
【特許文献2】特開平10−147384号公報
【特許文献3】特開2003−81371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、フイルター部材を使用する必要がなく、エアゾール製品からその外部にエアゾール容器内の内容物をほとんど残存させることなく噴射させることができ、エアゾール容器の内容物がその内壁に付着して乾燥することによって生成した乾燥物の破片がバルブのハウジング内に吸い込まれ、ハウジング内のステム孔の流路を閉塞することを防止することができるエアゾール製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の倒立型エアゾール製品用ハウジングは、倒立型エアゾール製品に使用されるステムに配設されたステム孔の孔径以下の孔径を有する貫通孔が少なくともその側面に複数個設けられていることを特徴とする。本発明の倒立型エアゾール製品用ハウジングは、前記構成を有するので、倒立型エアゾール製品に使用した場合、フイルター部材を使用する必要がなく、エアゾール製品からその外部にエアゾール容器内の内容物をほとんど残存させることなく噴射させることができ、エアゾール容器の内容物がその内壁に付着して乾燥することによって生成した乾燥物が剥がれ落ちた破片や内容物から生じた析出物などがバルブのハウジング内に吸い込まれ、ハウジング内のステム孔の流路を閉塞することを防止することができる。
【0010】
本発明の倒立型エアゾール製品用噴射バルブは、倒立型エアゾール製品に使用される噴射バルブであり、ステム、当該ステムの側面に形成されたステム孔を封止するように配設されたステムラバーおよびステムに押圧を加えるためのスプリングがハウジング内に収納されてなり、前記ハウジングとして、前記ステムに配設されたステム孔の孔径以下の孔径を有する貫通孔が少なくともその側面に複数個設けられていることを特徴とする。本発明の倒立型エアゾール製品用バルブは、前記構成を有するので、倒立型エアゾール製品に使用した場合、フイルター部材を使用する必要がなく、エアゾール製品からその外部にエアゾール容器内の内容物をほとんど残存させることなく噴射させることができ、エアゾール容器の内容物がその内壁に付着して乾燥することによって生成した乾燥物が剥がれ落ちた破片や内容物から生じた析出物などがバルブのハウジング内に吸い込まれ、ハウジング内のステム孔の流路を閉塞することを防止することができる。
【0011】
本発明の倒立型エアゾール製品は、倒立型エアゾール製品用噴射バルブおよびエアゾール容器を有する倒立型エアゾール製品であり、倒立型エアゾール製品用噴射バルブがエアゾール容器に装着されてなり、前記倒立型エアゾール製品用噴射バルブがステム、当該ステムの側面に形成されたステム孔を封止するように配設されたステムラバーおよびステムに押圧を加えるためのスプリングがハウジング内に収納されてなり、前記ハウジングとして、前記ステムに配設されたステム孔の孔径以下の孔径を有する貫通孔が少なくともその側面に複数個設けられていることを特徴とする。本発明の倒立型エアゾール製品は、前記構成を有するので、フイルター部材を使用する必要がなく、エアゾール製品からその外部にエアゾール容器内の内容物をほとんど残存させることなく噴射させることができ、エアゾール容器の内容物がその内壁に付着して乾燥することによって生成した乾燥物が剥がれ落ちた破片や内容物から生じた析出物などがバルブのハウジング内に吸い込まれ、ハウジング内のステム孔の流路を閉塞することを防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の倒立型エアゾール製品用ハウジングは、倒立型エアゾール製品に使用した場合、フイルター部材を使用する必要がなく、エアゾール製品からその外部にエアゾール容器内の内容物をほとんど残存させることなく噴射させることができ、エアゾール容器の内容物がその内壁に付着して乾燥することによって生成した乾燥物が剥がれ落ちた破片や内容物から生じた析出物などがバルブのハウジング内に吸い込まれ、ハウジング内のステム孔の流路を閉塞することを防止することができるという効果を奏する。
【0013】
本発明の倒立型エアゾール製品用噴射バルブは、倒立型エアゾール製品に使用した場合、フイルター部材を使用する必要がなく、エアゾール製品からその外部にエアゾール容器内の内容物をほとんど残存させることなく噴射させることができ、エアゾール容器の内容物がその内壁に付着して乾燥することによって生成した乾燥物が剥がれ落ちた破片や内容物から生じた析出物などがバルブのハウジング内に吸い込まれ、ハウジング内のステム孔の流路を閉塞することを防止することができるという効果を奏する。
【0014】
本発明の倒立型エアゾール製品は、フイルター部材を使用する必要がなく、エアゾール製品からその外部にエアゾール容器内の内容物をほとんど残存させることなく噴射させることができ、エアゾール容器の内容物がその内壁に付着して乾燥することによって生成した乾燥物が剥がれ落ちた破片や内容物から生じた析出物などがバルブのハウジング内に吸い込まれ、ハウジング内のステム孔の流路を閉塞することを防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の倒立型エアゾール製品の一実施形態を示す一部省略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の倒立型エアゾール製品は、倒立型エアゾール製品用噴射バルブおよびエアゾール容器を有する倒立型エアゾール製品であり、倒立型エアゾール製品用噴射バルブがエアゾール容器に装着されている。
【0017】
本発明の倒立型エアゾール製品を図1に基づいて説明する。図1は、本発明の倒立型エアゾール製品の一実施形態を示す一部省略断面図である。
【0018】
倒立型エアゾール製品用噴射バルブは、ステム1、当該ステム1の側面に形成されたステム孔1aを封止するように配設されたステムラバー2およびステム1に押圧を加えるためのスプリング3をハウジング4内に収納することによって構成されている。ハウジング4は、ステム1に配設されたステム孔1aの孔径以下の孔径を有する貫通孔4aが少なくともその側面に複数個設けられていることを特徴とする。
【0019】
ステム1は、マウンティングキャップ5のステム挿入口5aに挿入されている。ステム1の側面には、エアゾール製品の内部に充填された内容物をステム1内の空隙部を介してエアゾール製品の外部に噴射させるためのステム孔1aが設けられている。
【0020】
ステム孔1aの形状は、円形や楕円形であってもよく、四角形であってもよく、その他の多角形であってもよい。ステム孔1aの孔径は、特に限定されないが、通常、0.3〜0.8mm程度、好ましくは0.3〜0.5mm程度である。
【0021】
マウンティングキャップ5のステム挿入口5aが設けられている部分において、マウンティングキャップ5のエアゾール容器7が設けられている側には、ステム1を押圧していない状態でステム孔1aを封止するためにステムラバー2が設けられており、ステム孔1aは、ステムラバー2によって封止されている。
【0022】
ステム1のエアゾール容器7が設けられている側には、ステム1を押圧していない状態でステム孔1aをステムラバー2で封止するために、ステム1をエアゾール容器7が設けられていない側の方向に押圧を与えるスプリング3が設けられている。スプリング3の一端は、ステム1と当接し、その他端は、ハウジング4の底面と当接している。スプリング3は、ステム1の押し下げによって収縮するが、押圧を解除すると、元の状態に復元するので、ステム1は、元の位置に戻る。ステム1がバルブから外れないようにするために、ステム1には、係止部1cが設けられている。
【0023】
ハウジング4は、マウンティングキャップ5のハウジング固定用凸部5bによって固定されている。ハウジング4とマウンティングキャップ5との間に空隙が存在していると、エアゾール製品の内容物がその空隙を介して外部に漏出するおそれがあるため、ハウジング4の端部は、ステムラバー2を介してマウンティングキャップ5と密着されている。ハウジング4は、例えば、ポリアセタール、ナイロン、ポリブチレンテレフタレートなどの樹脂で成形することができる。
【0024】
ハウジング4には、貫通孔4aが設けられている。貫通孔4aは、エアゾール製品の内容物をハウジング4内に導入するために設けられている。ハウジング4内に導入された内容物は、ステム1をエアゾール製品の内部方向に押し下げると、ステム1の押し下げと連動してステムラバー2が下方に撓むため、ステム孔1aの封止が解除され、ステム孔1aを介して外部に噴射される。ステム1の押圧を解除すると、ハウジング4に内蔵されているスプリング3によってステム1が元の位置に戻るため、ステム孔1aは、ステムラバー2によって封止され、エアゾール製品の内容物の噴射が停止される。
【0025】
本発明においては、ハウジング4の少なくとも側面に貫通孔4aが複数個設けられている点に、1つの特徴がある。このように、ハウジング4の側面に貫通孔4aが複数個設けられているので、複数の貫通孔4aのうち一部の貫通孔4aがエアゾール容器の内容物の乾燥物が剥がれ落ちた破片や内容物から生じた析出物などによって封止された場合であっても、他の貫通孔4aにより、エアゾール容器7内の内容物をハウジング4内に十分に導入することができることから、ステム孔1aの目詰まりを防止しつつ、エアゾール製品からその外部にエアゾール容器内の内容物をほとんど残存させることなく噴射させることができる。特に、貫通孔4aがハウジングの壁面の上端側(ステム側)まで設けられている場合には、エアゾール製品における内容物の残存量をより一層低減させて噴射させることができる。また、ハウジング4の側面に貫通孔4aが複数設けられていることにより、エアゾール容器7内に内容物をほとんど残存させずにエアゾール製品からその外部にエアゾール容器7内の内容物を噴射させることができる。
【0026】
ハウジング4の貫通孔4aの形状は、特に限定されず、円形や楕円形であってもよく、四角形であってもよく、その他の多角形であってもよい。ハウジング4の貫通孔4aは、ハウジング4の側面にのみ設けられていてもよく、ハウジング4の側面以外にも、ハウジング4の底面にも設けられていてもよい。図1に示されるハウジング4では、ハウジング4の底面にも貫通孔4bが設けられている。貫通孔4aは、内容物中に粗大粒子が生成した場合であっても、その粗大粒子によって複数の貫通孔4aが同時に閉塞されることを防止する観点から、ハウジング4に均一に分散している状態で設けられていることが好ましい。貫通孔4aは、ハウジング4を成形するときに設けられてもよく、あるいはハウジング4を成形した後、ドリルやピンバイスなどの工具を用いて後加工によって設けられてもよい。
【0027】
ハウジング4の貫通孔4aは、ステム1の側面に配設されているステム孔1aの孔径以下の孔径を有する。本発明においては、ハウジング4の貫通孔4aの孔径がステム1のステム孔1aの孔径以下となるように設定されているので、ステム1のステム孔1aを閉塞するような粒子は、当該貫通孔4aで捕捉されるため、当該粒子によるステム孔1aの閉塞を防止することができる。ハウジング4の貫通孔4aの孔径は、ステム孔1aがより閉塞されがたくなるようにする観点から、ステム孔1aの孔径よりも0.02mm以上小さいことが好ましく、0.05mm以上小さいことがより好ましく、0.1mm以上小さいことがさらに好ましい。
【0028】
貫通孔4aは、エアゾール製品の内容物に含まれている粒子のうちステム孔1aを閉塞させるような大きさを有する粒子を捕捉するという機能を有している。貫通孔4aが当該粒子を捕捉したとき、当該貫通孔4aの開口部は、その粒子によって閉塞されるため、当該貫通孔4aに内容物が流入しがたくなる。貫通孔4aは、粒子を捕捉することによって貫通孔4aに内容物が流入しがたくなったとしても、他の貫通孔4aで内容物が十分に通過するようにする観点から、複数個設けられているが、できるだけ数多くの貫通孔4aが設けられていることが好ましく、ステム孔1aの開口部における面積に応じて決定することがより好ましい。
【0029】
ハウジング4に設けられているすべての貫通孔4aの開口部における面積の総和は、エアゾール製品の内容物の流量が貫通孔4aによって制限されないようにする観点から、ステム孔1aの開口部における面積と同じであるか、またはそれ以上であることが好ましい。また、当該面積の総和は、一部の貫通孔4aが粒子を捕捉することによって当該貫通孔4aに内容物が流入しないようになった場合であっても、内容物の噴射量の低下や噴射形態の変動を防止する観点から、ステム孔1aの開口部における面積の1.1倍以上であることが好ましく、1.3倍以上であることがより好ましく、1.5倍以上であることがさらに好ましい。
【0030】
マウンティングキャップ5は、例えば、かしめることによってエアゾール容器7と一体化される。その際、マウンティングキャップ5とエアゾール容器7との間隙からエアゾール容器7内の内容物が漏出しないようにするために、マウンティングキャップ5とエアゾール容器7とは、間隙を封止するための封止パッキン6を介して一体化されている。封止パッキン6としては、例えば、ゴムパッキン、樹脂パッキンなどが挙げられる。
【0031】
エアゾール容器7の材質および大きさは、任意であり、エアゾール製品の用途などに応じて適宜決定すればよい。
【0032】
エアゾール製品に充填される内容物の種類についても特に限定がなく、例えば、毛髪用フォーム剤などのように、エアゾール容器7の内壁に付着した内容物が乾燥し、生成した乾燥物が使用時の振盪によって剥がれ落ちて破片を生成したり、内容物から析出物が生じるおそれがある内容物に対して、本発明のエアゾール製品を好適に使用することができる。
【0033】
なお、本発明のエアゾール製品においては、ステム1の先端には、必要により、所望の形状と大きさを有する噴孔をもつ押しボタン(図示せず)が設けられていてもよい。
【0034】
本発明のエアゾール製品は、以下のように作動する。エアゾール製品の内容物は、ハウジング4の少なくとも側面に設けられている貫通孔4aからハウジング4の内部に流入する。このとき、貫通孔4aの開口部よりも大きい径を有する粒状物は、貫通孔4aによってハウジング4内に流入するのが阻止される。ハウジング4には複数個の貫通孔4aが設けられているから、粒状物によって閉塞された貫通孔4aが生じたとしても、閉塞されていない他の貫通孔4aから内容物がハウジング4内に流入させることができる。
【0035】
次に、ステム1がエアゾール製品の内部方向に向けて押し下げられると、ステムラバー2によって封止されていたステム孔1aが開口し、ハウジング4内の内容物がエアゾール製品の内圧によってステム孔1aから噴射される。このとき、ハウジング4の貫通孔4aの開口部の大きさは、ステム孔1aの開口部の大きさと同一であるかまたは小さいことから、貫通孔4aを通過した内容物に含まれている粒状物は、ステム孔1aを通過するので、ステム孔1aの閉塞を防止することができる。
【実施例】
【0036】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0037】
実施例1および比較例1
本発明に係るエアゾール容器(満注量:262mL)と従来のエアゾール容器(満注量:262mL)に内容物を充填し、エアゾール製品を製造した。本発明に係るエアゾール容器として、図1に示すものを用いた。
【0038】
表1における配合例1または配合例2に示す原液と、噴射剤である液化石油ガス(LPG)を表1に示す容量比で混合したものを用いた。製造したエアゾール製品を倒立させて1回噴射した後、1日間室温中で静置した。この操作を毎日繰り返し、60日間経過時における噴射状態を以下の評価基準に基づいて評価した。その結果を表1に示す。
【0039】
(評価基準)
○:噴射状態に異常は認められない。
×:噴射量が少ないか、またはまったく噴射しなく(目詰まりが発生している)。
【0040】
【表1】

【0041】
表1に示された結果から、実施例1のエアゾール製品は、比較例1のエアゾール製品と対比して、エアゾール製品を倒立させて噴射する操作を毎日繰り返したとしても、噴射状態に異常が認められないことから、エアゾール製品からその外部にエアゾール容器内の内容物をほとんど残存させることなく噴射させることができ、内容物がその内壁に付着して乾燥することによって生成した乾燥物が剥がれ落ちた破片や内容物から生じた析出物などがハウジング内のステム孔の流路を閉塞することを防止することができることがわかる。
【符号の説明】
【0042】
1 ステム
1a ステム孔
2 ステムラバー
3 スプリング
4 ハウジング
4a 貫通孔
5 マウンティングキャップ
7 エアゾール容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
倒立型エアゾール製品に使用されるハウジングであって、
倒立型エアゾール製品に使用されるステムに配設されたステム孔の孔径以下の孔径を有する貫通孔が少なくともその側面に複数個設けられていることを特徴とする倒立型エアゾール製品用ハウジング。
【請求項2】
すべての貫通孔の開口部における面積の総和が、ステム孔の開口部における面積と同じであるか、またはそれ以上である請求項1に記載の倒立型エアゾール製品用ハウジング。
【請求項3】
倒立型エアゾール製品に使用される噴射バルブであって、
ステム、当該ステムの側面に形成されたステム孔を封止するように配設されたステムラバーおよびステムに押圧を加えるためのスプリングがハウジング内に収納されてなり、前記ハウジングとして、前記ステムに配設されたステム孔の孔径以下の孔径を有する貫通孔が少なくともその側面に複数個設けられていることを特徴とする倒立型エアゾール製品用バルブ。
【請求項4】
すべての貫通孔の開口部における面積の総和が、ステム孔の開口部における面積と同じであるか、またはそれ以上である請求項3に記載の倒立型エアゾール製品用バルブ。
【請求項5】
倒立型エアゾール製品用噴射バルブおよびエアゾール容器を有する倒立型エアゾール製品であって、
倒立型エアゾール製品用噴射バルブがエアゾール容器に装着されてなり、
前記倒立型エアゾール製品用噴射バルブが、ステム、当該ステムの側面に形成されたステム孔を封止するように配設されたステムラバー、およびステムに押圧を加えるためのスプリングがハウジング内に収納されてなり、
前記ハウジングとして、前記ステムに配設されたステム孔の孔径以下の孔径を有する貫通孔が少なくともその側面に複数個設けられていることを特徴とする倒立型エアゾール製品。
【請求項6】
すべての貫通孔の開口部における面積の総和が、ステム孔の開口部における面積と同じであるか、またはそれ以上である請求項5に記載の倒立型エアゾール製品。

【図1】
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【公開番号】特開2010−173695(P2010−173695A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18685(P2009−18685)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(390011442)株式会社マンダム (305)
【Fターム(参考)】