説明

偏光ベースの干渉型検出器

【課題】高いスループットのスクリーニング方法と統合可能であって、分子の正確な量を迅速かつ特異的に検出するのに十分なほど感度が高いセンサを提供する。
【解決手段】サンプル材料の光学特性を決定するセンサ及び方法が開示される。センサは、入射面に対して所定の偏光方位を有する直線偏光ビームを生成する光源を備える。直線偏光ビームは、サンプルで反射して、第2の光ビームと第3の光ビームに分割され、第2及び第3の光ビームは、第1の光ビームの相互に直交する成分の組合せ投影像で構成される。信号プロセッサが、第2の光ビームと第3の光ビームの強度差を測定して、サンプル材料によって誘発される位相差を計算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0002] 本発明は、生体親和性及び化学センサに関し、液体及び気体サンプルを定量分析するための2つの直交する偏光成分間の位相ずれの測定に基づいている。
【背景技術】
【0002】
[0001] 本出願は、2006年4月17日出願の特許第11/379,026号の一部継続出願であり、米国特許法第120条により本出願に対する優先権を主張する。その内容は、参照により全体を本明細書に組み込むものとする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[0003] 科学者も産業も同様に、分子間相互作用を評価し、当該分子の位置を検出するためのラベルの使用に伴う不確実性を解消する方法を探求し続けている。この問題を解決する点で、ラベルがない技術は非常に重要である。何故なら、これらの技術によって研究者は、相互作用の力学を根本的に変化させる外部の化学作用で摂動させることなく分子系を調べることができるからである。これらの分子間相互作用を分析するように設計された計器の感度こそが、最高の関心事となる。何故なら、当該分子は往々にして生成及び/又は隔離が困難で費用がかかるか、又は生体サンプル中に非常に低い濃度でしか存在しないからである。量が極めて少ないという問題をさらに悪化させるのは、結合特性が望ましい薬物開発の組合せの化学物質ライブラリにあるように分析物の種類が無数にあることである。 高いスループットのスクリーニング方法と統合可能なセンサを開発することが望ましい。これは、当該分子の正確な量を迅速かつ特異的に検出するのに十分なほど感度も高くなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0004] 光源と、センサと、光学リターダと、ビームスプリッタと、サンプル材料の光学特性を決定する検出器とを備えるシステムを開示する。システムは、第1及び第2の光波を有する第1の光ビームを生成する光源を備え、第1の光波は第1の直線偏光を有し、第2の光波は第2の直線偏光を有し、第1の直線偏光と第2の直線偏光は相互に対して直交し、第1の光波と第2の光波は相互に対して同相である。第1の直線偏光(p偏光)は入射面にあり、第2の直線偏光(s偏光)は入射面に対して直角である。第1の光波と第2の光波の強度は、所定の比率に設定される。システムは、第1の光波と第2の光波の間に相対遅延を加えることによって第1の光波と第2の光波の間に可変位相ずれを提供する光学リターダ、及び、サンプル材料からの第1の光ビームを内部全反射(TIR)又は阻止波内部全反射(FTR)の状態で反射するプリズムインタフェースも含む。
【0005】
[0005] 第1の光ビームが光学インタフェースから反射した後に、第1の光ブームを第2の光ブームと第3の光ビームに分割するために、偏光ビームスプリッタを使用し、第2の光ビームと第3の光ビームは、ビームスプリッタの主軸上で相互に直交する偏光成分の組合せ投影像を備える。信号プロセッサが、第2の光ビームと第3の光ビームの強度差を測定して、サンプル材料によって誘発された位相差を計算し、信号プロセッサは、第1の検出器から第1の強度測定値を、第2の検出器から第2の強度測定値を受信し、第1及び第2の検出器は、それぞれ第2及び第3の光ビームの強度を測定する。
【0006】
[0006] システムの光源は、直線偏光するコヒーレント光ビームを含むことができ、直線偏光は、センサ表面の面に対して所定の角度で回転している。入射角は、センサ表面の変化による第1の光波と第2の光波との最大位相ずれに基づいて決定される。光源は、ガスレーザ、ダイオード励起固体レーザ、エキシマランプ、垂直共振器型面発光レーザ、レーザダイオード、又は約500〜700ナノメートルの波長範囲を有する直線偏光コヒーレント光を提供する任意の光源を使用することができる。
【0007】
[0007] 偏光ビームスプリッタは、第2及び第3の光ビームの強度が相互に実質的に等しいか、又は等しくなるように配向することができる。偏光ビームスプリッタは、光学インタフェースの面に対して約45°の角度で配向することができる。
【0008】
[0008] 第1及び第2の光波の強度の所定の比率はβである。ここで、
β=I/I=I/I
であり、I及びIは、それぞれ、サンプル材料から反射する前及び反射した後の第1の光波の強度であり、Iは、第2の光波の強度である。
【0009】
[0009] システムの光学リターダは、フレネル菱面体プリズム、又は直交する偏光成分間に実質的に90°の位相ずれを提供する直角プリズムであってもよい。
【0010】
[0010] システムは、更に、第1のビームの路に配置された1つ又は複数の光学構成要素を備えることができ、1つ又は複数の光学構成要素は、光ビームがビームスプリッタに伝達される前に、実質的に楕円の偏光を実質的に円形の偏光に変換する。
【0011】
[0011] システムは、少なくとも1つのセンサを備え、少なくとも1つのSPRトランスデューサを備えることができる。センサは、抗体、抗原、オリゴヌクレオチド、タンパク質、酵素、受容体、受容体リガンド、有機分子、及び触媒などの生体分子を含む検知材料を含むことができる。別の方法としては、サンプル材料は、アレイ状のトランスデューサに適用することができ、各トランスデューサが検知材料を含み、その後にセンサで分析する。サンプル材料は、核酸、タンパク質、ポリペプチド、有機分子、細菌及びウイルス粒子を含むことができる。
【0012】
[0012] 本発明のシステムは、少なくとも5×10−8という屈折率単位の表面屈折率の変化を検出することができる。システムは、分子に特異な表面と関連させると、少なくとも50フェムトグラムのサンプル、又は少なくとも2,230,000個の分子の100アミノ酸ペプチドを検出することができる。
【0013】
[0013] 本発明の別の態様では、サンプル材料の光学特性を決定する方法が提供される。方法は、検知材料を含むトランスデューサの光学インタフェースにサンプル材料を適用するステップと、第1及び第2の光波を有する第1の光ビームを生成するステップとを含み、第1の光波は第1の直線偏光を有し、第2の光波は第2の直線偏光を有し、第1の直線偏光と第2の直線偏光は相互に対して直交する。第1の光波と第2の光波の間に相対遅延を加えることによって、第1の光ビームがセンサ表面から反射した後に、第1の光波と第2の光波の間に実質的に90°の位相ずれを提供する。第1の光ビームは、TIR又はFTRの状態でサンプル材料から反射し、その後に第1の光ビームは、提供するステップ及び反射するステップの後に、第2の光ビームと第3の光ビームに分割され、第2の光ビーム及び第3の光ビームは、第1の光ビームの相互に直交する偏光成分の組合せ投影像を備えるか、又はそれで構成される。第2の光ビームと第3の光ビームの間の強度差を測定して、サンプル材料によって誘発された位相差を計算する。
【0014】
[0014] 本発明の更に別の態様では、サンプル中の分析物の存在を検出する方法が提供され、方法は、検知材料を含むトランスデューサの光学インタフェースにサンプルを適用するステップと、第1及び第2の光波を有する第1の光ビームを光学インタフェースで反射するステップと、第1の光ビームが光学インタフェースから反射した後に、これを第2の光ビームと第3の光ビームに分割するステップと、サンプルによって誘発された位相差を計算するために、第2の光ビームと第3の光ビームの間の強度の差を測定するステップとを含む。
【0015】
[0015] 本発明の方法では、第1の光ビームは直線偏光し、コヒーレントであってもよい。第1の光ビームは、第1及び第2の光波を有することができる。第1の光波は第1の直線偏光を有し、第2の光波は第2の直線偏光を有することができる。第1の直線偏光と第2の直線偏光は、相互に対して直交する。第1の光ビームは、センサ表面から反射した後、実質的に楕円形に偏光し、第1の光ビームを第2の光ビームと第3の光ビームに分割する前に、実質的に円形の偏光に変換することができる。内部全反射の状態で、及び/又は第1の光ビームの路の光学リターダを調整することによって、第1の光ビームを2つの反射面から反射させて、90°又は実質的に90°の位相ずれを提供する。
【0016】
[0016] 本発明の方法では、第1の光波と第2の光波の強度の所定の比率はβであり、ここで、
β=I/I=I/I
である。ここで、I及びIは、それぞれ、サンプル材料から反射する前、及び反射した後の第1の光波の強度であり、Iは、第2の光波の強度である。
【0017】
[0017] 場合によっては、第2及び第3の光ビームの強度は等しいか、又は実質的に等しくてもよい。第2及び第3の光ビームは、ビームスプリッタの主軸上の相互に直交する偏光成分の組合せ投影像で構成することができる。
【0018】
[0018] 本明細書のシステムは、光学インタフェース上で固定化した検知材料を含むことができる。このような材料は、例えば、抗体、抗原、オリゴヌクレオチド、タンパク質、酵素、受容体、受容体リガンド、有機分子、及び触媒などの生体分子を含むことができる。サンプル材料は、核酸、タンパク質、ポリペプチド、有機分子、細菌及びウイルス粒子を含むことができる。サンプル材料は、1つのトランスデューサ又はアレイ状のトランスデューサに適用することができ、各トランスデューサが検知材料を含み、その後にセンサにより分析する。
【0019】
[0019] 本発明の方法は、少なくとも5×10−8という屈折率単位(RIU)の表面屈折率の変化を検出することができ、分子に特異な表面と関連させると、少なくとも50フェムトグラムのサンプル、又は少なくとも2,230,000個の分子の100アミノ酸ペプチドを検出することができる。分析は、基準サンプルが存在し、分析物が存在する(又は存在しない)状態で、かつ、基準サンプル中に既知のアイデンティティ及び量の分析物が存在する(又は存在しない)状態で、実行することができる。
【0020】
[0020] 本明細書で言及した全ての出版物及び特許出願は、個々の各出版物又は特許出願が特異的かつ個々に参照により組み込まれるものと示される場合と同程度に、参照により本明細書に組み込むものとする。
【0021】
[0021] 本発明の新規の特徴は、添付の特許請求の範囲で詳細に記載される。本発明の原理を使用した例示的実施形態について記載する以下の詳細な説明、及び添付の図面を参照することにより、本発明の特徴及び利点をよりよく理解することができるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
[0027] センサ表面における受容体薄膜への分析物結合の検出に基づく光学センサが集中的に研究されている。干渉計、偏光解析装置、及び偏光器では、エバネッセント場での屈折率の変化を測定するために光学的内部全反射(TIR)の構成を使用することが一般的である。これらの技術は全て、ラベルなしの検出を目的として、化学的又は生物学的層状媒体の測定に適用することができる。
【0023】
[0028] 液晶を配向し、溶質を基板表面に吸収させ、液体の屈折率を測定するために、内部反射偏光解析法(IRE)を使用することができる。感度が低いために厚さの測定には好ましくない入射角の内部全反射領域で測定を実行した。このような厚さ測定感度を向上させるために、表面プラズモン共振(SPR)効果の実施態様が開発されており、この方法は、より一般的な阻止波内部全反射(FTR)の方法に入る。しかし、バイオ及び化学センシング装置で厚さ及び屈折率の変化の両方を測定するために、高感度装置が依然として必要とされている。
【0024】
[0029] 空間反射係数及び全体的強度をセンサインタフェースから測定するために、いくつかの方法が使用されてきた。これらの強度に基づく技術は、光源の強度が変動し、センサ表面からの反射係数が比較的小さいという欠点を有する。検知性能を改善するためには、感度を向上させることが常に望ましい。高感度は、他の要素を使用して達成してもよい。表面の結合層の屈折率又は厚さが変化している場合、光波の位相は、強度よりもはるかに唐突に変化し得ることが判明している。SPR中にセンサインタフェースから位相変化を測定することによって、センサアレイの結像機能があっても、センサでいくつかの方法を使用することができる。例えば、SPR及びヘテロダイン干渉法と極めて高感度及び低ノイズとの組合せに基づくセンサが提案されている。
【0025】
[0030] TIR及びFTRの両方の状態にある間、親和性に感度が高い層の屈折率又は厚さなどの隣接する媒体の光学特性が変化する度に、反射ビームのp偏光成分とs偏光成分との位相差は、急速な変動を経験する。更に、入射ビームのp偏光成分の位相ずれを測定すると、入射角の変化に伴う強度を測定するSPR技術よりも感度がはるかに高くなる。更に、位相変化方法によって、金属でコーティングし、更に光学的に透明なトランスデューサを、特殊な金属質コーティングがない状態で使用することができる。
【0026】
[0031] 本明細書で開示する方法は、システムの測定パラメータと一般的構成に関して、TIR及びFTRの両方の状態に類似の方法で適用される。いくつかの異なる構成で、感知用途にSPR現象を使用することが実証されている。一般的な方法は、クレッチュマン構成を使用する。コヒーレントなp偏光光波が、TIR状態で、ガラスのプリズムのように光学的に密な材料と希薄媒体との間のインタフェースで反射し、希薄媒体はこの場合、サンプル媒体で、その屈折率は密な媒体より低い。2つの媒体の間のインタフェースは、薄い導電性金属膜でコーティングされ、これは光波の吸収材として作用する。光波の入射角、波長及び媒体の屈折率に依存する特定の状態に適合すると、光波は金属の表面プラズモン電子を共振で振動させ、金属膜内で波のエネルギーを吸収する。これらの共振状態の間、サンプルの屈折率が変動して、p偏光成分の光位相が急変する一方、s偏光の位相は比較的一定のままである。共振状態では、TIR状態とは対照的に、p偏光成分の大部分がSPR効果によって金属膜に吸収される。この事実は、強度に基づくSPRセンサ及び偏光解析装置に活用され、反射光の最低強度の状態を光学的構成に関連させ、それによってサンプルの屈折率又は層の厚さを推定する。
【0027】
[0032] 上記方法は、単一光ビームの構成を使用し、このビームに含まれて相互作用するTIR/SPR表面から反射した直交偏光成分(すなわち、p偏光とs偏光で、p偏光は入射面にあり、s偏光は入射面に直角である)の強度を観察することによって、層状媒体の変化を監視し、ビームの偏光成分が強度及び位相の変動を経験すると、その観察結果は、定常センサ状態の偏光間で実質的に90°の位相ずれを得ることによって最適化される。
【0028】
[0033] 本明細書の方法は、他の競合する技術ではこれまで入手できなかった感度レベルを可能にするために、内部全反射(TIR)又は阻止波内部全反射(FTR)状態と組み合わせた偏光ベースの干渉法(PBI)を利用する。FTRと組み合わせて、同じビームの2つの偏光状態(s偏光及びp偏光状態)を干渉計で測定すると、表面屈折率の変化に対する感度が少なくとも5×10−8屈折率単位(RIU)まで向上し、これによって分子に特異な表面と関連させると、少なくとも50フェムトグラムのサンプル、又は少なくとも2,230,000個の分子の100アミノ酸ペプチドを検出することができる。
【0029】
[0034] 本発明の方法は、TIR又はFTRの状態で適用される。入射ビームのp偏光成分とs偏光成分との位相差は、トランスデューサ表面に隣接する媒体の誘電特性が変化すると、急速な変動を経験する。表面の結合層の屈折率又は厚さが変化している場合、p偏光成分の位相は、強度よりもはるかに唐突に変化する。この差によって、トランスデューサ表面上で、又はその近傍で、屈折率変化の感度を検出するために、調整可能な特定の角度で傾斜した実質的に直線偏光する1本のビームを使用することができる。2つの成分が直交又は90°位相がずれている場合、最高の感度が達成される。直交偏光成分の入手を、偏光ビームスプリッタ及び差分信号処理方式とを組み合わせると、小さい位相ずれを高感度で直接測定し、多重アレイ結像を検出する。
【0030】
[0035] 本発明は、アレイフォーマットの複数の相補的化学物質を評価するために、高感度レベルで高いスループットのスクリーニングを可能にする方法を提供する。このような装置の潜在的用途は、血液中の感染症スクリーニング及び空気中のウイルス又は細菌粒子の検出、薬物開発用途の薬物動態研究及び主接着研究、更に個別的病状、特に癌に対する薬剤、生物学的及び化学的兵器剤/災害の検出、及び産業プロセスの品質管理である。
【0031】
[0036] 感染症スクリーニングのいくつかの例は、全細菌、全ウイルス又はウイルス粒子、全感染性寄生体又は他のその生活周期同族体の識別、特定の細菌又はウイルス株に対して生じる抗体の識別、感染性因子から排出/分泌された抗原又は核酸マーカ、又はホスト又は病原因子からの病気のタンパク質バイオマーカを含むことができる。感染病スクリーニングは、診断目的又は血液供給の安全性監視のために使用することができる。個別的病状に応じた薬剤は、当該病状から生じる抗体、タンパク質、ペプチド、核酸、及び小有機分子の識別を使用することができる。製薬研究及び開発では、本発明を核酸、抗体、タンパク質、ペプチド及び合成有機分子のスクリーニングに使用して、薬品の候補として開発し、前臨床及び臨床開発を通して生体サンプル中で薬品の候補を検出し、検出及び数量化のために臨床及び社会的状況で被験者の安全性を監視するのに適切な活性分子を識別することができる。
【0032】
[0037] 他の潜在的用途は、空気及び水質監視を含む。監視対象には、粒子、汚染物質、毒素、産業廃棄物、廃棄物の生物学的性質、又は無機の健康災害がある。
【0033】
[0038] 図1は、提案された発明の実施形態による光学TIRセンサ10を示す。センサ10は、光源100と、半波長板200と、フレネル菱面体300と、偏光ビームスプリッタ400と、2つの光検出器500及び600と、サンプル800と相互作用する特定のセンサ材料700を含むスライドと、を備える。
【0034】
[0039] 光源100は、レーザなどの実質的に単色のコヒーレント放射を提供する任意の光源を使用することができる。光源は、ガスレーザ、ダイオード励起固体レーザ、エキシマランプ、垂直共振器型面発光レーザ又はレーザダイオードであることが好ましい。光源100は、500〜700ナノメートルの波長範囲の実質的に単色のコヒーレント放射を提供する任意の光源であることが好ましい。光源100は、実質的に直線の偏光ビームSを生成するために使用される。半波長板200を使用して、光ビームSの偏光を回転し、縦軸から45°ずれたビームSの偏光の方位を提供する。その結果、信号S1は、s及びp偏光成分の両方を含み、s偏光とp偏光の位相差はゼロ度である。
【0035】
[0040] フレネル菱面体300は、信号S1のs偏光成分とp偏光成分の間に実質的に90°の位相差を導入するために使用される。信号S1のs偏光成分とp偏光成分の間に90°の位相ずれを導入するために知られている他の方法も、本発明では考慮する。特定のセンサ材料を含むスライド700は、フレネル菱面体の表面の1つ、R1又はR2又は両方に配置される。スライド700は、光源100の波長に対して実質的に透明である材料で作成することが好ましい。スライド700は、サンプルより高い屈折率を有する材料で作成することが好ましい。スライド700はガラス、プラスチック、シリコン又はセラミックで作成することが好ましい。スライド700のセンサ材料がサンプル800と相互作用する。この相互作用は、菱面体/スライドの境界から信号S1が反射すると、s偏光成分とp偏光成分の間に位相ずれを生じる。スライド700及びサンプル800は、菱面体300に光学的に結合されて、最小限の損失を確保し、内部全反射の状態を維持する。
【0036】
[0041] 別の方法としては、スライド700及びプリズム300は、1つのアセンブリの一部であり、それによって屈折率が一致する流体を使用する必要がなくなる。一実施形態では、光源100からの光ビームの入射角は、特定用途に対する最適なTIR/FTR角度のあたりで変動することができる。入射角は、センサ表面の変化による第1の光波と第2の光波との最大位相ずれに基づいて決定される。入射角の正確な値は、動作状態が変化しても、すなわち新しいチップ、金属又はバイオコーティングの屈折の変動などがあっても、センサの最高感度及び計器反応のおよその直線性を所望の動的範囲内で生じる状態から決定することができる。この実施形態では、入射角に比例して変化する信号が、その周波数で変調される。次に、ジタリング(jittering)を生じる周波数が除去され、DC信号の測定値に影響しない。この周波数は、測定されたプロセスの特徴的な時間よりはるかに高いことが好ましい。
【0037】
[0042] 偏光ビームスプリッタ400は、信号S2のs偏光成分とp偏光成分の投影像を組み合わせるために使用される。ビームスプリッタ400は、直交する偏光成分を組み合わせる任意のビームスプリッタを使用することができる。いくつかの実施形態では、ビームスプリッタ400は立方体ビームスプリッタである。s偏光成分とp偏光成分の分離された投影像は、検出器500及び600によって検出される。検出器500及び600は、光信号を受けて、光信号と同じ情報を含む電気信号を生成する任意の光検出器であり、例えば、光ダイオード(PD)又は電荷結合素子(CCD)である。
【0038】
[0043] 検出器500及び600によって生成される電気信号は、信号処理ユニット900に伝送される。信号処理ユニット900は、2つの検出器のパワーの差を読み取る。この差は、s偏光成分とp偏光成分の位相ずれに正比例する。s偏光成分とp偏光成分との位相ずれは、例えば、スライド700上のセンサ材料の屈折率又は厚さなどの光学特性の変化を示す。
【0039】
[0044] 図2は、本発明の一実施形態によるセンサシステム30を示す。センサシステム30は、直線偏光源314と、半波長板320と、直角プリズム310と、偏光ビームスプリッタ340と、検出器350及び360とを備える。光源314は、レーザなどの実質的に単色のコヒーレント放射を提供する任意の光源を使用することができる。いくつかの実施形態では、光源は、ガスレーザ、ダイオード励起固体レーザ、エキシマランプ、垂直共振器型面発光レーザ又はレーザダイオードである。いくつかの実施形態では、光源100は、532〜680ナノメートルの波長範囲の実質的に単色のコヒーレント放射を提供する任意の光源である。光源314は、ある範囲の波長を提供する波長可変レーザであることが好ましい。光源314は、実質的に直線の偏光ビームIを生成するために使用される。半波長板320は、光学信号Iの偏光を45°回転して信号I1を生成するために使用される。また、半波長板320は、下式(13)により信号を最適化するために、TIR/SPR感知表面にてs偏光とp偏光との間の相対的光パワーを調整するためにも使用することができる。ビームI1は、間の位相差がゼロ度のs偏光成分とp偏光成分の両方を含む。
【0040】
[0045] ビームI1はプリズム310に送られ、ここで楕円偏光になる。また、センサシステム30は、ガラスのホスト基板370、生体親和性コーティングが適用された金属膜390も含み、これがサンプル380と相互作用する。金属膜390は金の膜であることが好ましい。直角プリズム310は、液体又は気体の動作、又は異なる波長の光源に対応するように回転することができる。ビームI1は、プリズムの表面318でTIR状態を経験し、プリズム内の第2のTIR表面322で跳ね返って、ビームI2としてプリズムを出る。ビームI2は楕円偏光である。波長板311、312は、実質的に円形の偏光(実質的に90°の位相ずれ)を有するビームI3を得るために使用される。いくつかの実施形態では、波長板の1つが速い軸で入射面に対して45°に固定される。任意選択で、波長板316は、実質的に90°の位相差を得るために使用される。これらの方法は両方とも、測定されたサンプルバッファの屈折率の範囲が広すぎ、プリズムのみのTIR反射では実質的に90°の位相が入手できない場合に適用することができる。偏光ビームスプリッタ340は、ビームI3のs偏光成分とp偏光成分の投影像を組み合わせる。ビームスプリッタ340は、1本のビームの直交する偏光成分を組み合わせる任意のビームスプリッタを使用することができる。ビームスプリッタ340は立方体ビームスプリッタであることが好ましい。
【0041】
[0046] s偏光成分とp偏光成分の組み合わせた投影像は、それぞれの検出器350及び360によって検出される。検出器350及び360は、光ダイオード(PD)又は電荷結合素子(CCD)などの光信号を受信し、光信号と同じ情報を含む電気信号を生成する任意の光検出器である。検出器350及び360によって生成された電気信号は、信号処理ユニット330に伝送される。信号処理ユニット330は、2つの検出器のパワーの差を読み取る。この差は、s偏光成分とp偏光成分の位相ずれに正比例する。s偏光成分とp偏光成分との位相ずれは、例えば、金属膜390上のセンサ材料の屈折率又は厚さなどの光学特性の変化を示す。
【0042】
[0047] 任意選択で、プリズム310は、様々なタイプのサンプルに対応するために回転することができる。動作中に、サンプル基準が初期臨界SPR角度の有意の変化につながる場合、最適に動作するには、プリズム310を回転する必要があることがある。任意選択で、プリズム310は測定中に動的に回転することができる。図示の構成により、プリズム310からの入出力光ビームは、プリズムが回転しても平行なままであり、それ故、動作中の追加的な動的位置合わせが回避される。
【0043】
[0048] 本発明の方法は、内部全反射(TIR)又は阻止波内部全反射(FTR)の状態で光学インタフェースにおける屈折率の比率が変化すると、s及びp偏光の偏光状態又は相対位相、及び個々の各偏光成分の強度が変化するという事実を活用する。本発明の方法は、s偏光成分とp偏光成分の間に実質的に90°の位相ずれを加えることによって、変化するこれらの成分の間に可能な最大の差を抽出しようとする。
【0044】
[0049] 純粋なTIR状態では、p偏光成分とs偏光成分との光学的位相ずれ(δ)は、以下のように表される。
【0045】
【数1】

【0046】
ここで、θは、特定のTIR/FTRインタフェース上での光ビームの入射角であり、n及びnは、それぞれ、サンプル媒体及びプリズム310の屈折率である。入射角は、より複雑なセンサシステムで可能な限り最高の感度を達成するために、ある範囲のバッファ溶液及びSPRの状態に対応するように、簡易システムに対する内蔵静的利得補償システムがある所与の計器に対して固定するか、又は変動可能であってもよい。
【0047】
[0050] SPRの場合、s及びp偏光の反射係数は以下のように書くことができる。
【0048】
【数2】

【0049】
[0051] p偏光成分とs偏光成分との位相差は下式の通りである。
【0050】
【数3】

【0051】
[0052] これは、全複素屈折関係式(2)から求めることができる。
【0052】
[0053] 概して、感知表面に入射する実質的に直線の偏光ビームは、プリズム310を出る時に楕円偏光に変化する。ビームの電磁ベクトルは以下のように説明される。
【0053】
【数4】

【0054】
[0054] ここで、δ及びδはs偏光とp偏光それぞれの位相ずれである。
【0055】
【数5】

【0056】
[0055] 2つの検出器D及びDが直交して配置され、入射面に対して角度Ψだけ回転すると、以下のように、それらの間のパワーの差を得ることができる。
【0057】
【数6】

【0058】
[0056] 検出器が下式のように角度Ψで配置されている場合、
【0059】
【数7】

【0060】
よって、D−D=0となる。
【0061】
[0057] 次に、以下の仮定が真であると仮定する。
【0062】
【数8】

【0063】
[0058] ここで、a20及びδは、初期又は定常状態を意味する。そこから、下式のようになる。
【0064】
【数9】

【0065】
[0059] 従って、トランスデューサ表面の変化による強度差の変化は下式の通りである。
【0066】
【数10】

【0067】
式(12)では、最初のカッコは「強度」寄与率を指し、2番目のカッコは応答Rの「位相」寄与率に対応する。TIRの間に、強度は変化せず、位相のみが変動する。しかし、SPR事象では強度と位相の両方が変化する。にもかかわらず、強度寄与率を無視することができることが判明し、それ故センサの応答は下式のように簡略化される。
【0068】
【数11】

【0069】
[0060] 上記方法の重要な概念は、位相変化に対する応答を最大にすることである。
【0070】
[0061] 位相ずれの寄与率は、以下のような条件を満たした場合に最高になる。
【0071】
【数12】

【0072】
条件(15)は、前述したように直交又は実質的に90°の位相ずれを意味する。条件(14)は、検出器を入射面から45°外して配置するべきことを示す。また、条件(14)及び(16)は、SPR事象中に金属表面におけるビームのp偏光成分の吸収を補償するために、感知プリズムの前に配置された半波長板を回転することによっても満足することができる。回転角ηは下式のように与えられる。
【0073】
【数13】

【0074】
ここで、I及びIは、感知した表面から反射する前及び反射した後のp偏光成分の強度であり、Iはs偏光成分の強度である。
【0075】
[0062] 最後に、円偏光に対応する最大応答は、下式のように表される。
【0076】
【数14】

【0077】
[0063] 実質的に90°の所望の位相差を得るために、位相遅延の種々の方法をビーム路で使用することができる。所望の位相ずれを達成する特定の例は、以下のパラメータを変更することによって実施することができる。すなわち、プリズム310の屈折率、プリズム内のセンサではない任意のTIR/FTRインタフェースの指数比、入射角θ、及びプリズム内のTIR/FTR反射の数である。
【0078】
[0064] 例えば、可変波長板は、水晶などのZカット複屈折材料である。波長板は、屈折率が、光軸に対する傾斜角αがnからnの範囲で変動するように設計される。ここで、nは以下の式で表される。
【0079】
【数15】

【0080】
[0065] 波長板は、ビームに対して直角に配置される、すなわちα=0の場合は、nの屈折率、ビームに平行に位置合わせされた場合は、nの値を有する。従って、金属膜390におけるSPRの位相差に関係なく、偏光ビームスプリッタ340で実質的に90°になるように位相を調整することができる。
【0081】
[0066] また、偏光が完全に円形ではなく、圧縮された垂直又は水平の長円である(sとpとの位相ずれは依然として実質的に90°である)場合は、プリズムの前方に半波長板を配置して、感知表面における相互作用の後に2つの偏光成分のパワーを平衡させ、所望の円偏光を生成することができる。
【0082】
[0067] 円偏光を達成する更に別の方法は、信号の読み取りに応答して偏光角度を制御する容易な方法を与える液晶偏光回転子を使用する。例えば、加える電圧は、2つの偏光成分の間でゼロに近い読み取り値の差を提供するために、フィードバックループで調整することができる。
【0083】
[0068] それ故、最大出力信号及び位相差直交を得るために、種々の方法を使用することができる。例えば、2つ以上の反射面を使用して、2つの偏光成分の間に実質的に90°の位相ずれを提供することができる。これは、反射する毎にTIR状態を提供する適切な屈折率を有する特殊なプリズムの設計によって達成することができる。SPRの方法では、2回以上反射する特殊設計のプリズムを使用して、s偏光とp偏光の間に実質的に90°の位相ずれを提供することができる。任意の意図されたサンプルバッファの屈折率の範囲が広すぎる場合は、可変波長板316を使用しないと、実質的に90°の位相ずれを得られない場合がある。また、プリズム310の後方に2つのλ/4波長板(311、312)を配置して、楕円偏光ビームを円偏光ビームに変換し、それ故、実質的に90°の位相ずれを得ることができる。
【0084】
[0069] 図3は、サンプル413が図4に示すAlphaSnifferのウイルスチップ950のようなアレイ状のサンプルトランスデューサである本発明のある実施形態を示す。チップ950は図4に図示されている。図4のウイルスチップ950は、光源100(図1)又は314(図2)に対して実質的に透明である任意の基板に載せることもできる。一実施形態では、チップ950はガラス又はSFI1基板上にある。チップ950は、他のラボオンチップ又はバイオチップの方法と類似の特性を有する。一実施形態では、チップ950が、分析される液体に曝露する表面上に開いた「親和性感知フィーチャ」を有するか、又は流体工学的流路をチップアセンブリの一部として構築することができる。流体路は、単一の流路又は複数の流路を使用することができる。搬送ストリーム(バッファ)があることが好ましい。サンプルは、チップ表面に、又はそのすぐ近傍に気泡が形成されるのを回避するために、チップに送出する前にサンプルを脱気することが好ましい。
【0085】
[0070] 図3は、本発明の方法を使用して複数のサンプルトランスデューサ380(図4参照)を処理する生体親和性及び化学センサ40を示す。センサ40はトランスデューサレイ413を備え、これはアレイ状のトランスデューサ要素380、及びトランスデューサレイ413を構成する要素毎に対応する金属膜層390(図示せず)を備える。ビームはこのアレイで反射し、各要素380の位相及び強度情報を保持する。ビームスプリッタ440を使用して、s及びp偏光成分の投影像を組み合わせ、次にこれが検出器415及び414によって検出される。検出器414及び415は、光検出器アレイ又はCCDカメラを備える。検出器414及び415は、上述したものと類似の技術を使用する差分信号分析ツールを使用して「像の差」を得るために使用される。「像の差」は、アレイ413の各トランスデューサ要素380の位相情報を含む。
【0086】
[0071] 図5は、本発明を実施する装置を使用して分析したサンプルの試験結果を示す。0.3mg/mL濃度のバッファ中のアビジン溶液120μLを、連続して3回、ビオチン化BSAでコーティングした感知表面に注入する。デルタ応答とは、アビジンをトランスデューサの表面に結合した結果である応答と、バッファがトランスデューサ上を流れている間のシステムの初期応答との差である。デルタ応答の段階的増加は、トランスデューサの表面がアビジンサンプルの最初の注入では飽和せず、その後の注入中に追加の結合があったことを示す。また、この方法では、注入される分析物の体積及び濃度、及びトランスデューサの表面に対するサンプルの曝露時間を変化させることによって反応速度を調査することもできる。
【0087】
[0072] 本明細書で開示するシステム及び方法は、1つ又は複数のサンプル中の複数の相補的化学作用を評価するために使用することができる。サンプルは、本来的に流体性(例えば、液体、気体など)であることが好ましい。動物から入手できる流体サンプルの例としては、全血、血清、汗、涙、耳垢、痰、リンパ液、骨髄懸濁液、尿、唾液、精液、膣の流動物、髄液、脳液、腹水、乳、呼吸分泌物、腸管及び尿生殖路、及び羊水が挙げられるが、これに限定されない。
【0088】
[0073] サンプルは、分析物の相補的化学作用に基づいてサンプル中の特定の分析物を検出及び/又は識別するために分析することができる。相補的化学作用の例としては、サンドイッチ状の抗体の相互作用を含む抗体と抗原の相互作用、小分子、ペプチド及びタンパク質などの受容体リガンドの相互作用、天然及び合成両方の受容体との相互作用、核酸の相互関係及び組成間の他の相互作用、例えば、非受容体が介在するタンパク質/タンパク質、ペプチド、小有機分子又は無機分子の相互作用が挙げられるが、これに限定されない。
【0089】
[0074] 例えば、抗体と抗原の相互作用を分析する場合、トランスデューサは生物膜(例えば、センサ材料)で構成することができ、生物膜は、血液、血漿、唾液、尿、胆汁など、又は他の媒体混合物などの任意の生物学的流体内の相補的化学作用を検出するために、抗体又は抗原で構成するか、又はそれでコーティングされる。以上を使用し、例えば、サンプル中のポリペプチド又はタンパク質を、当該ポリペプチド又はタンパク質と特に結合する抗体と生物膜で構成されたトランスデューサを使用して検出することができる。このような実施形態の有用な用途は、血液供給の安全性を含む感染症診断、医学診断、癌の特徴付け及び診断などの個別的病状に応じた薬剤、生物学的/化学的災害又は生物/化学兵器の検出、例えば、タンパク質及び小分子に基づく毒素及び毒物の検出、及び免疫学的研究を含む。このようなより広い用途のいずれでも、計器は、ウイルス又は病気に関連した抗原、ホスト免疫グロブリン、ウイルス粒子及び/又は細菌を検出するために使用される。
【0090】
[0075] 酵素結合免疫溶媒検定(ELISA)と比較して、提案のシステムは顕著な利点を提供する。それは、追加のリポータ抗体と活性化酵素との培養を省くことにより、結果を出す時間がはるかに短いこと、リアルタイムで監視すること、更に検定プロセスに関して複雑性が大幅に低下することを含む。血液などの複雑な混合物の非特異的結合により背景信号が減少するので、ELISA研究に使用される遮断プロセスと類似の簡易的なステップが提案され、従って当該分析物がない複雑な混合物がトランスデューサ上を通過し、非特異的結合が測定され、次に当該分析物を含む複雑な混合物が添加され、その結果、当該分析物に特異的な信号になる。また、結合分子への当該分析物の混合及び分離速度に関連する情報をバイオセンサ上で得ることができる。
【0091】
[0076] いくつかの実施形態では、本明細書のシステム及び方法を使用して、受容体リガンドの相互作用を検出することができる。このような実施形態では、受容体又はリガンドがトランスデューサ表面に結合され、それとリガンドの結合が検定される。通常、このような相互作用は、比色/蛍光又は放射ラベルなどのリポータシステムを使用して監視される。本明細書の方法及びシステムによって、薬剤の開発、薬物動態学、混合及び分離定数の生化学動態研究、望ましくない生成物又は副反応が生じることがある産業プロセスの品質管理、化学反応の終了の監視、触媒作用、イオン注入、及び基礎的化学研究のために、リアルタイムで多様な組合せ化学スクリーニングが可能になる。プラチナへの水素添加などの触媒プロセスに貴金属を使用する場合は、トランスデューサとして触媒表面を直接統合することにより、プロセスのリアルタイムの分析及び評価が可能になり得る。薬物の発見及び生物学的調査の両方で、当該生体分子、例えば、酵素を固定化することによって動態研究を実行することができ、これによって特定の小分子又は想定される生物学的ターゲットの混合及び分離又は処理速度を測定することができる。合成受容体、すなわち例えば、変性ポルフィリン、シクロデキストリンなども固定化し、選択的結合が可能な小分子を検出することができる。
【0092】
[0077] いくつかの実施形態では、本明細書のシステム及び方法が、極めて高感度で核酸(例えば、DNA)のハイブリダイゼーションを検出及び/又は監視する。これは、例えば、アレイ上のプローブへのターゲット核酸シーケンスのハイブリダイゼーションを検出するために使用することができる。核酸ハイブリダイゼーションを分析すると、ウイルス負荷を決定することもでき、他のシステムで要求される数百億ではなく、信号を登録するために十分な数(数十万)の分子が存在する場合は、核酸増幅ステップの必要がなくなる。また、本発明のシステム及び方法では、サンプル中のこのような分析物(例えば、ターゲット核酸シーケンス)をリアルタイムで検出することができる。
【0093】
[0078] 本発明で実行可能な分子ターゲット分析の他の形態は、建物の給気システムの生物由来のウイルス粒子又は他の粒子、化学的及び生物学的兵器剤、水及び食品の品質を検出し、供給及び廃棄流又は環境生命維持システム及び発電所の排出物中の化学的汚染物質を監視することを含む。流体又は気体状サンプルで、全細菌も検出することができる。それ故、本発明は、血液中の感染症スクリーニング及び空気中のウイルス又は細菌粒子の検出、薬物開発用途での薬物動態研究及び基本的結合研究、更に個別的症状、特に癌に対する薬剤、生物学的及び化学的兵器剤/災害の検出、及び産業プロセスの品質管理に関する。
【0094】
[0079] 本明細書の実施形態のいずれでも、個々の部位に異なるプローブ又はサンプルを有するアレイ状のトランスデューサを使用して、高いスループットのスクリーニングを可能にする装置を構成することができる。例えば、核内低分子多形性(SNP)、又は出生前スクリーニング用の特定の遺伝マーカを分析するか、又は種々の薬物摂生に対する癌の感受性を決定するか、又は精神病の遺伝的性質を評価するか、又はC型肝炎又はHIVなどの感染症の多数の患者による血液サンプルを分析するために、10から1000のフィーチャがあるチップを開発することができた。分析率は、一部はチップ上に離散した部位の数に、及びサンプルのボリュームにも依存する。いくつかの実施形態では、チップは離散した部位が10、100、1,000又は10,000を超えるように設計されるが、これに限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書の装置は、最大120μLのサンプルを1〜2分で、又は最大500μLのサンプルを2〜5分で分析するが、これに限定されない。離散した部位は、例えば、血液又は他の体液、水、気体状物質などを含むサンプルを有することができる。離散した部位はそれぞれ、1つのサンプルの一意の部位から採取したデータを、特定のサンプル(例えば、患者Xから採取したサンプル)に関連付けられるように、アドレスを有することができる。
【0095】
[0080] 本明細書では、本発明の好ましい実施形態を示し、説明してきたが、このような実施形態は例示によってのみ提供されていることが当業者には明白である。当業者には、本発明から逸脱することなしに、多くの変形、変更及び置換を行うことができることは明らかであろう。本発明を実施する際には、本明細書で説明した本発明の実施形態の種々の代替物を使用することができることを理解されたい。添付の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義し、このような特許請求の範囲に入る方法及び構造及びその等価物がそれに含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】[0022] 本発明の一実施形態によりフレネル菱面体の方法を使用するTIRセンサを示す。
【図2】[0023] 直角プリズムの構成を使用する本発明の一実施形態を示す。
【図3】[0024] 本発明の一実施形態によるセンサアレイを示す。
【図4】[0025] 本発明により作動できる感知用途用のバイオセンサアレイを示す。
【図5】[0026] 生体親和性センサとしてのシステムの典型的な反応を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル材料の光学特性を決定するシステムであって、
第1及び第2の光波を有する第1の光ビームを生成する光源を備え、前記第1の光波が第1の直線偏光を有し、前記第2の光波が第2の直線偏光を有し、前記第1及び第2の直線偏光が相互に実質的に直交し、前記第1及び第2の光波が相互に同相であり、更に、
前記第1の光波と前記第2の光波との間に相対遅延を加えることによって、前記第1の光波と第2の光波の間に合計90°の位相ずれを提供する光学リターダと、
前記サンプル材料からの前記第1の光ビームを内部全反射の状態で反射する光学インタフェースと、
前記第1の光ビームが前記光学インタフェースから反射した後に、前記第1のビームを第2の光ビームと第3の光ビームに分割する偏光ビームスプリッタと、を備え、前記第2及び第3の光ビームが、前記ビームスプリッタの主軸上で相互に直交する偏光成分の組合せ投影像で構成され、更に、
前記第2の光ビームと前記第3の光ビームの強度差を測定して、前記サンプル材料によって誘発された位相差を計算する信号プロセッサを備え、前記信号プロセッサが、第1の検出器からの第1の強度測定値及び第2の検出器からの第2の強度測定値を受信し、前記第1及び第2の検出器が、それぞれ前記第2及び第3の光ビームの強度を測定する、
システム。
【請求項2】
前記光源が、直線偏光し、入射面に対して所定の角度で回転するコヒーレント光を備える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記光源が、ガスレーザ、ダイオード励起固体レーザ、エキシマランプ、垂直共振器型面発光レーザ又はレーザダイオードである、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記光源が、約500〜700ナノメートルの範囲の波長を有する直線偏光コヒーレント光を提供する任意の光源である、
請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記第2の光ビーム及び前記第3の光ビームの強度が実質的に等しいように、前記偏光ビームスプリッタが配向される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記偏光ビームスプリッタが、前記光学インタフェースの面に対して45°の角度で配向される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記所定の角度が、前記入射面に対して実質的に45°である、
請求項2に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1及び第2の光波の前記強度の前記所定の比率が、
β=I/I=I/Iであり、
及びIが、それぞれ、前記サンプル材料から反射する前及び反射した後の前記第1の光波の強度であり、Iが、前記第2の光波の強度である、
請求項2に記載のシステム。
【請求項9】
合計90°の位相ずれを提供する前記光学リターダが、フレネル菱面体プリズムである、
請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
合計90°の位相ずれを提供する前記光学リターダが、直角プリズムである、
請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1のビームの路に配置された1つ又は複数の光学構成要素を更に備え、前記光ビームが前記ビームスプリッタへ伝送される前に、前記1つ又は複数の光学構成要素が前記光ビームの前記偏光を実質的に楕円の偏光から実質的に円形の偏光へと変換する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記センサが、少なくとも1つのSPRトランスデューサを備える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記サンプル材料が、検知材料を含むトランスデューサに適用される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記検知材料が、生体分子を含む、
請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記検知材料が、抗体、抗原、オリゴヌクレオチド、タンパク質、酵素、受容体、及び受容体リガンドからなる群から選択される、
請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記検知材料が、有機分子を含む、
請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記検知材料が、触媒を含む、
請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
前記サンプル材料が、アレイ状のトランスデューサに適用され、各トランスデューサが検知材料を含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記サンプル材料が、トランスデューサのアレイチップに適用される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記サンプル材料が、核酸を含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記サンプル材料が、タンパク質及びポリペプチドからなる群から選択される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記サンプル材料が、ウイルス粒子を含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項23】
前記サンプル材料が、細菌を含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項24】
前記サンプル材料が、有機分子を含む、
請求項1に記載のシステム。
【請求項25】
少なくとも5×10−8屈折率単位の表面屈折率の変化が検出される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項26】
少なくとも50フェムトグラムのサンプルが検出される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項27】
サンプル材料の光学特性を決定する方法であって、
検知材料を含むトランスデューサの光学インタフェースに前記サンプル材料を適用するステップと、
第1及び第2の光波を有する第1の光ビームを生成するステップであって、前記第1の光波が第1の直線偏光を有し、前記第2の光波が第2の直線偏光を有し、前記第1及び第2の直線偏光が相互に直交するステップと、
前記第1の光波と前記第2の光波との間に相対遅延を加えることによって、前記第1の光波と第2の光波との間に合計90°の位相ずれを提供するステップと、
前記光学インタフェースで前記第1の光ビームを反射するステップと、
前記第1の光ビームが前記光学インタフェースから反射した後に、前記第1の光ビームを第2の光ビームと第3の光ビームに分割するステップであって、前記第2及び第3の光ビームが、ビームスプリッタの主軸上で相互に直交する偏光成分の組合せ投影像で構成されるステップと、
前記サンプル材料によって誘発された位相差を計算するために、前記第2の光ビームと前記第3の光ビームの間の強度差を測定するステップと、を含む、
方法。
【請求項28】
前記第1の光ビームが、前記入射面に対して所定の角度で回転した直線偏光コヒーレント光ビームである、
請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第2の光ビームと前記第3の光ビームの前記強度が実質的に等しい、
請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記第2の光ビームと前記第3の光ビームの前記強度が等しい、
請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記所定の角度が、前記入射面に対して実質的に45°である、
請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記第1及び第2の光波の前記強度の前記所定の比率が、
β=I/I=I/Iであり、
及びIが、それぞれ、前記サンプル材料から反射する前及び反射した後の前記第1の光波の強度であり、Iが、前記第2の光波の強度である、
請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記第1の光ビームを第2の光ビームと第3の光ビームに分割する前に、前記第1の光ビームの前記偏光を実質的に楕円の偏光から実質的に円形の偏光に変換するステップを更に含む、
請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記第1の光ビームを内部全反射の状態で2つ以上の反射面から反射させることによって、実質的に90°の前記位相ずれが提供される、
請求項27に記載の方法。
【請求項35】
前記サンプル材料が、核酸を含む、
請求項27に記載の方法。
【請求項36】
前記サンプル材料が、タンパク質及びポリペプチドからなる群から選択される、
請求項27に記載の方法。
【請求項37】
前記サンプル材料が、ウイルス粒子を含む、
請求項27に記載の方法。
【請求項38】
前記サンプル材料が、細菌を含む、
請求項27に記載の方法。
【請求項39】
前記サンプル材料が、有機分子を含む、
請求項27に記載の方法。
【請求項40】
前記検知材料が、生体分子を含む、
請求項27に記載の方法。
【請求項41】
前記検知材料が、抗体、抗原、オリゴヌクレオチド、タンパク質、酵素、受容体、及び受容体リガンドからなる群から選択される、
請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記検知材料が、有機分子を含む、
請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記検知材料が、触媒を含む、
請求項27に記載の方法。
【請求項44】
前記サンプル材料によって誘発される前記位相差が、少なくとも5×10−8屈折率単位の表面屈折率変化である、
請求項27に記載の方法。
【請求項45】
少なくとも50フェムトグラムのサンプル材料が検出される、
請求項27に記載の方法。
【請求項46】
サンプル中の分析物の存在を検出する方法であって、
検知材料を含むトランスデューサの光学インタフェースに前記サンプルを適用するステップと、
第1及び第2の光波を有する第1の光ビームを前記光学インタフェースから反射するステップと、
前記光学インタフェースから反射した後に、前記第1の光ビームを第2の光ビームと第3の光ビームに分割するステップと、
前記サンプルによって誘発された位相差を計算するために、前記第2の光ビームと前記第3の光ビームとの間の強度差を測定するステップと、
を含む方法。
【請求項47】
前記サンプルによって誘発された前記位相差を、基準サンプルによって誘発された位相差と比較するステップを更に含む、
請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記基準サンプルに分析物が存在しない、
請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記基準サンプルに既知の分析物が存在する、
請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記基準サンプルに既知の量の分析物が存在する、
請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記第1の光波が、第1の直線偏光を有し、前記第2の光波が第2の直線偏光を有し、前記第1の直線偏光と前記第2の直線偏光とが相互に直交する、
請求項46に記載の方法。
【請求項52】
前記第1の光波と第2の光波との間に相対遅延を加えることによって、前記第1の光波と前記第2の光波との間に位相ずれを提供するステップを更に含む、
請求項46に記載の方法。
【請求項53】
前記位相ずれが、実質的に90°である、
請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記位相ずれが、90°である、
請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記第2の光ビーム及び前記第3の光ビームが、ビームスプリッタの主軸上で相互に直交する偏光成分の組合せ投影像で構成される、
請求項46に記載の方法。
【請求項56】
前記第1の光ビームが、入射面に対して所定の角度で回転する直線偏光コヒーレント光ビームである、
請求項46に記載の方法。
【請求項57】
前記第2の光ビーム及び前記第3の光ビームの強度が実質的に等しい、
請求項46に記載の方法。
【請求項58】
前記第2の光ビームと前記第3の光ビームの前記強度が等しい、
請求項46に記載の方法。
【請求項59】
前記所定の角度が、前記入射面に対して実質的に45°である、
請求項56に記載の方法。
【請求項60】
前記第1及び第2の光波の前記強度の前記所定の比率が、
β=I/I=I/Iであり、
及びIが、それぞれ、前記サンプル材料から反射する前及び反射した後の前記第1の光波の強度であり、Iが、前記第2の光波の強度である、
請求項56に記載の方法。
【請求項61】
前記第1の光ビームを第2の光ビームと第3の光ビームに分割する前に、前記第1の光ビームの前記偏光を実質的に楕円の偏光から実質的に円形の偏光に変換するステップを更に含む、
請求項46に記載の方法。
【請求項62】
前記第1の光ビームを内部全反射の状態で2つの反射面から反射させることによって、実質的に90°の前記位相ずれが提供される、
請求項53に記載の方法。
【請求項63】
前記分析物が、核酸を含む、
請求項46に記載の方法。
【請求項64】
前記分析物が、タンパク質及びポリペプチドからなる群から選択される、
請求項46に記載の方法。
【請求項65】
前記分析物が、ウイルス粒子を含む、
請求項46に記載の方法。
【請求項66】
前記分析物が、細菌を含む、
請求項46に記載の方法。
【請求項67】
前記分析物が、有機分子を含む、
請求項46に記載の方法。
【請求項68】
前記検知材料が、生体分子を含む、
請求項46に記載の方法。
【請求項69】
前記検知材料が、抗体、抗原、オリゴヌクレオチド、タンパク質、酵素、受容体、及び受容体リガンドからなる群から選択される、
請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記検知材料が、有機分子を含む、
請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記検知材料が、触媒を含む、
請求項46に記載の方法。
【請求項72】
前記位相差が、少なくとも5×10−8屈折率ユニットの表面屈折率変化である、
請求項46に記載の方法。
【請求項73】
少なくとも50フェムトグラムの分析物が検出される、
請求項46に記載の方法。

【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−533696(P2009−533696A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−506707(P2009−506707)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/066723
【国際公開番号】WO2007/121406
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(508310229)バイオプティックス,エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】