説明

偏光板、その製造方法、光学フィルムおよび画像表示装置

【課題】耐湿性と耐熱性の両耐久性に優れ、さらにクニックの発生を抑えた偏光板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】偏光子の両面に接着剤を介して保護フィルムが貼り合わされた偏光板であって、偏光子は、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系樹脂からなり、かつ、亜鉛を含有し、保護フィルムは、40℃、90%RHの雰囲気下における透湿度が、150g/m2・24h以下であり、接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂、架橋剤、及び平均粒径が1〜100nmの金属化合物コロイド、を含有する偏光板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板およびその製造方法に関する。また本発明は、当該偏光板を用いた、光学フィルムに関する。さらには当該偏光板、光学フィルムを用いた液晶表示装置、有機EL表示装置、PDP等の画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶表示装置において、その画像形成方式から、透明電極を形成した2枚の電極基板間に液晶を封入した液晶セルの片側または両側に偏光板が貼り付けられている。このような偏光板としては、通常、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素や二色性染料等の二色性材料を吸着、延伸配向させた偏光子の両面に、トリアセチルセルロースフィルム等の保護フィルムを、ポリビニルアルコール系接着剤を介して接着したものが一般的に使用されている。
【0003】
近年では、液晶表示装置はその広範な利用に伴い高温条件下等で長期間使用される場合も多くなり、その利用される用途に応じた色相の変化の少ない液晶表示装置が求められている。例えば、液晶表示装置は車載用や携帯情報端末用として用いられることが多くなり、それに伴い偏光板にも、高温条件下に放置したときや高温高湿条件下に放置したときの光学特性が劣化しないような信頼性(耐久性)が求められている。
【0004】
偏光板の耐熱性を向上させる技術としては、偏光子または接着剤中に亜鉛を含有させることにより、偏光子の加熱時における色相変化を抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。しかしながら、これらの方法によっても、偏光板の耐湿性を改善することはできない。
【0005】
一方で、透湿度の高いトリアセチルセルロースフィルムに代えて、ノルボルネン系樹脂フィルム等の透湿度の低い樹脂フィルムを偏光子の保護フィルムとして用いることで、偏光板の耐湿性を向上する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、透湿度の低い樹脂フィルムを保護フィルムとして用いた偏光板は、耐湿性が向上する一方で、耐熱性の悪化等により光学特性の不具合が発生することが確認されている。また、単に、前記亜鉛を含有する偏光子に、保護フィルムとしてノルボルネン系樹脂フィルムを貼り合わせたとしても、それぞれの特徴を生かして耐湿性と耐熱性の両耐久性が改善されるものではなく、むしろこれらの耐久性が悪化することさえあった。
【0006】
さらには、ノルボルネン系樹脂フィルム等の透湿度の低い樹脂フィルムを用いた場合は、トリアセチルセルロースフィルム等の透湿度の高いフィルムを用いた場合と比較して、局所的な凹凸欠陥(クニック欠陥)が発生しやすいという問題を有しており、特に、ポリビニルアルコール系接着剤を介して偏光子と貼り合わせた場合にその発生が顕著であった。
【特許文献1】特開2000‐35512号公報
【特許文献2】特開2003‐50318号公報
【特許文献3】特開平8‐5836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、偏光子の両面に、保護フィルムが接着剤を介して貼り合わされている偏光板であって、耐湿性と耐熱性の両耐久性に優れ、さらにクニックの発生を抑えた偏光板およびその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、前記偏光板を用いた光学フィルム、さらに前記偏光板および/または光学フィルムを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す偏光板により前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、偏光子の両面に接着剤を介して保護フィルムが貼り合わされた偏光板であって、
偏光子は、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系樹脂からなり、かつ、亜鉛を含有し、
保護フィルムは、40℃、90%RHの雰囲気下における透湿度が、150g/m2・24h以下であり、
接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂、架橋剤、及び平均粒径が1〜100nmの金属化合物コロイド、を含有することを特徴とする偏光板に関する。
【0010】
さらに、本発明の偏光板においては、前記接着剤が、接着剤中のポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、前記金属化合物コロイドを200重量部以下の割合で含有することが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の偏光板においては、前記金属化合物コロイドが、正電荷を有することが好ましく、アルミナコロイドであることが特に好ましい。
【0012】
さらに、本発明の偏光板においては、前記ポリビニルアルコール系樹脂が、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂であることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明の偏光板においては、前記架橋剤が、メチロール基を有する化合物を含有することが好ましい。
【0014】
さらに、本発明の偏光板においては、前記架橋剤の配合量が、接着剤中のポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、10〜60重量部であることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明の偏光板においては、接着剤層の厚みが、10〜300nmであり、かつ、接着剤層の厚みが、前記金属化合物コロイドの平均粒径よりも大きいことが好ましい。
【0016】
さらに、本発明の偏光板においては、前記偏光子中の亜鉛含有量が、偏光子中0.002〜2重量%であることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、偏光板の製造方法に関する。すなわち、本発明は、偏光子の両面に保護フィルムが接着剤を介して積層された前記偏光板を製造する方法であって、
ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系樹脂からなり、かつ、亜鉛を含有する偏光子および/または、40℃、90%RHの雰囲気下における透湿度が、150g/m2・24h以下である保護フィルムに、ポリビニルアルコール系樹脂、架橋剤、及び平均粒径が1〜100nmの金属化合物コロイド、を含有する接着剤を塗布する工程、
前記偏光子と、前記保護フィルムと、を貼り合わせる工程、
前記偏光子と前記保護フィルムとを貼り合わせた後に乾燥する工程、
を有する偏光板の製造方法に関する。
【0018】
さらに、本発明の偏光板の製造方法においては、前記偏光子と保護フィルムとを貼り合わせる工程に供される偏光子の水分率が、12〜31重量%であることが好ましい。
【0019】
さらに、本発明の偏光板の製造方法においては、前記乾燥する工程における乾燥温度が90℃以下であることが好ましい。
【0020】
さらに、本発明は、前記偏光板が、少なくとも1枚積層されている光学フィルムに関する。
【0021】
さらに、本発明は、前記偏光板または前記光学フィルムを少なくとも1枚用いた画像表示装置に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の偏光板を構成する、ヨウ素系偏光子、透湿度の低い保護フィルム(以下、単に保護フィルムと記載する場合がある)、接着剤について説明するとともに、その製法について説明する。
【0023】
本発明の偏光板を構成する偏光子としては、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系偏光子を用いる。偏光子に適用されるポリビニルアルコール系フィルムの材料には、ポリビニルアルコールまたはその誘導体が用いられる。ポリビニルアルコールの誘導体としては、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール等があげられる他、エチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸そのアルキルエステル、アクリルアミド等で変性したものがあげられる。ポリビニルアルコールの重合度は、1000〜10000程度、ケン化度は80〜100モル%程度のものが一般に用いられる。
【0024】
前記ポリビニルアルコール系フィルム中には可塑剤等の添加剤を含有することもできる。可塑剤としては、ポリオールおよびその縮合物等があげられ、たとえばグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等があげられる。可塑剤の使用量は、特に制限されないがポリビニルアルコール系フィルム中20重量%以下とするのが好適である。
【0025】
前記ポリビニルアルコール系フィルム(未延伸フィルム)は、常法に従って、一軸延伸処理、ヨウ素染色処理が少なくとも施される。さらには、ホウ酸処理、ヨウ素イオン処理を施すことができる。また前記処理の施されたポリビニルアルコール系フィルム(延伸フィルム)は、常法に従って乾燥されて偏光子となる。
【0026】
一軸延伸処理における延伸方法は特に制限されず、湿潤延伸法と乾式延伸法のいずれも採用できる。乾式延伸法の延伸手段としては、たとえば、ロール間延伸方法、加熱ロール延伸方法、圧縮延伸方法等があげられる。延伸は多段で行うこともできる。前記延伸手段において、未延伸フィルムは、通常、加熱状態とされる。通常、未延伸フィルムは30〜150μm程度のものが用いられる。延伸フィルムの延伸倍率は目的に応じて適宜に設定できるが、延伸倍率(総延伸倍率)は2〜8倍程度、好ましくは3〜6.5倍、さらに好ましくは3.5〜6倍とするのが望ましい。延伸フィルムの厚さは5〜40μm程度が好適である。
【0027】
ヨウ素染色処理は、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素およびヨウ化カリウムを含有するヨウ素溶液に浸漬することにより行われる。ヨウ素溶液は、通常、ヨウ素水溶液であり、ヨウ素および溶解助剤としてヨウ化カリウムを含有する。ヨウ素濃度は0.01〜1重量%程度、好ましくは0.02〜0.5重量%であり、ヨウ化カリウム濃度は0.01〜10重量%程度、さらには0.02〜8重量%で用いるのが好ましい。
【0028】
ヨウ素染色処理にあたり、ヨウ素溶液の温度は、通常20〜50℃程度、好ましくは25〜40℃である。浸漬時間は通常10〜300秒間程度、好ましくは20〜240秒間の範囲である。ヨウ素染色処理にあたっては、ヨウ素溶液の濃度、ポリビニルアルコール系フィルムのヨウ素溶液への浸漬温度、浸漬時間等の条件を調整することによりポリビニルアルコール系フィルムにおけるヨウ素含有量およびカリウム含有量が前記範囲になるように調整する。ヨウ素染色処理は、一軸延伸処理の前、一軸延伸処理中、一軸延伸処理の後の何れの段階で行ってもよい。
【0029】
ホウ酸処理は、ホウ酸水溶液へポリビニルアルコール系フィルムを浸漬することにより行う。ホウ酸水溶液中のホウ酸濃度は、2〜15重量%程度、好ましくは3〜10重量%である。ホウ酸水溶液中には、ヨウ化カリウムによりカリウムイオンおよびヨウ素イオンを含有させることができる。ホウ酸水溶液中のヨウ化カリウム濃度は0.5〜10重量%程度、さらには1〜8重量%とするのが好ましい。ヨウ化カリウムを含有するホウ酸水溶液は、着色の少ない偏光子、即ち可視光のほぼ全波長域に亘って吸光度がほぼ一定のいわゆるニュートラルグレーの偏光子を得ることができる。
【0030】
ホウ酸処理にあたり、ホウ酸水溶液の温度は例えば30℃以上、好ましくは40〜85℃の範囲である。浸漬時間は、通常、1〜1200秒間、好ましくは10〜600秒間、さらに好ましくは20〜500秒程度である。ホウ酸処理を施す段階は、ヨウ素染色処理の後である。また、ホウ酸処理は一軸延伸中または延伸後に行われる。ホウ酸処理は複数回行なってもよい。
【0031】
ヨウ素イオン処理には、たとえば、ヨウ化カリウム等によりヨウ素イオンを含有させた水溶液を用いる。ヨウ化カリウム濃度は0.5〜10重量%程度、さらには1〜8重量%とするのが好ましい。ヨウ素イオン含浸処理にあたり、その水溶液の温度は、通常15〜60℃程度、好ましくは25〜40℃である。浸漬時間は通常1〜120秒程度、好ましくは3〜90秒間の範囲である。ヨウ素イオン処理の段階は、乾燥工程前であれば特に制限はない。後述の水洗浄後に行うこともできる。
【0032】
本発明の偏光板においては、偏光子に亜鉛を含有させることを特徴とする。偏光子に亜鉛を含有させることは、加熱耐久時における色相劣化抑制の点で好ましい。偏光子中の亜鉛の含有量は、亜鉛元素が、偏光子中に0.002〜2重量%含有される程度に調整することが好ましい。さらには、0.01〜1重量%に調整することが好ましい。偏光子中の亜鉛含有量が前記範囲において、耐久性向上効果がよく、色相の劣化を抑えるうえで好ましい。
【0033】
亜鉛含浸処理には、亜鉛塩溶液が用いられる。亜鉛塩としては、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛などのハロゲン化亜鉛、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛などの水溶液の無機塩化合物が好適である。これらのなかでも、硫酸亜鉛が亜鉛の偏光子中における保持率を高めることができることから好ましい。また、亜鉛含浸処理には、各種亜鉛錯体化合物を用いることができる。亜鉛塩水溶液中の亜鉛イオンの濃度は、0.1〜10重量%程度、好ましくは0.3〜7重量%の範囲である。また、亜鉛塩溶液はヨウ化カリウム等によりカリウムイオンおよびヨウ素イオンを含有させた水溶液を用いるのが亜鉛イオンを含浸させやすく好ましい。亜鉛塩溶液中のヨウ化カリウム濃度は0.5〜10重量%程度、さらには1〜8重量%とするのが好ましい。
【0034】
亜鉛含浸処理にあたり、亜鉛塩溶液の温度は、通常15〜85℃程度、好ましくは25〜70℃である。浸漬時間は通常1〜120秒程度、好ましくは3〜90秒間の範囲である。亜鉛含浸処理にあたっては、亜鉛塩溶液の濃度、ポリビニルアルコール系フィルムの亜鉛塩溶液への浸漬温度、浸漬時間等の条件を調整することによりポリビニルアルコール系フィルムにおける亜鉛含有量を調整することができる。亜鉛含浸処理の段階は特に制限されず、ヨウ素染色処理の前でもよく、ヨウ素染色処理後のホウ酸水溶液への浸漬処理の前、ホウ酸処理中、ホウ酸処理後でもよい。またヨウ素染色溶液中に亜鉛塩を共存させておいて、ヨウ素染色処理と同時に行ってもよい。亜鉛含浸処理は、ホウ酸処理とともに行なうのが好ましい。また亜鉛含浸処理とともに一軸延伸処理を行なうこともできうる。また、亜鉛含浸処理は複数回行なってもよい。
【0035】
前記処理の施されたポリビニルアルコール系フィルム(延伸フィルム)は、常法に従って、水洗浄工程、乾燥工程に供することができる。
【0036】
水洗浄工程は、通常、純水にポリビニルアルコール系フィルムを浸漬することにより行う。水洗浄温度は、通常、5〜50℃、好ましくは10〜45℃、さらに好ましくは15〜40℃の範囲である。浸漬時間は、通常、10〜300秒間、好ましくは20〜240秒間程度である。
【0037】
乾燥工程は、任意の適切な乾燥方法、例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥等を採用しうる。例えば、加熱乾燥の場合には、乾燥温度は代表的に20〜80℃、好ましくは25〜70℃であり、乾燥時間は代表的には1〜10分間程度であることが好ましい。
【0038】
乾燥後の偏光子の水分率は2.0〜5.0重量%とすることが好ましく、2.5〜3.5重量%とすることがより好ましい。乾燥後の水分率を上記範囲とすることで、接着剤を介して偏光子と保護フィルムとを貼り合わせた後に乾燥する際の光学特性の低下を防止することができる。すなわち、水分率が高すぎると、耐熱性の低下や接着力の低下を招きやすく、水分率が低すぎるとクニックや外観上のムラが発生しやすいという問題があるが、水分率を上記範囲とすることで、このような光学特性の低下を防止することができる。
【0039】
本発明の偏光板を構成する保護フィルムとしては、40℃、90%RHの雰囲気下における透湿度が150g/m2・24h以下であるものを用いる。保護フィルムの透湿度は10〜150g/m2・24hであることが好ましく、30〜120g/m2・24hであることがより好ましく、50〜100g/m2・24hであることがさらに好ましい。透湿度が上記範囲を超えると、加湿条件下において偏光子が退色し、色相変化したり、偏光度の低下が発生したりする場合がある。また、透湿度が過度に低いと、乾燥時に粘着剤の剥がれを生じる場合がある。ここで、本明細書において、フィルムの透湿度はJIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準じて測定し、40℃、90%の相対湿度差で、面積1mの試料を24時間で透過する水蒸気のグラム数である。
【0040】
本発明の偏光板は、偏光子の両面に保護フィルムを有するが、前記の透湿度の要件を満たしていれば、片方の面の保護フィルムと他方の面の保護フィルムは同一のものであっても、異なるものであってもよい。また、片面当たり少なくとも1層の保護フィルムを有していればよく、2層以上の積層物を用いることもできる。
【0041】
保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1〜500μm程度である。特に1〜300μmが好ましく、5〜200μmがより好ましい。クニックは、保護フィルムが、薄型化するほど生じやすくなる傾向があるため、保護フィルムの厚みはが、5〜100μmが特に好適である。さらには、保護フィルムの厚みを変えることによって、透湿度を適宜に調整することも可能である。
【0042】
保護フィルムを構成する材料としては、例えば、透明性、機械強度、熱安定性、水分遮断性、に優れる熱可塑性樹脂が挙げられる。また、保護フィルムに光学等方性が要求される場合は、固有複屈折の小さい樹脂を選択することが好ましい。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、たとえば、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。また、また、(メタ)アクリル系、等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂も用い得る。上記のうち、透湿度および光学特性の観点においては、(メタ)アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノルボルネン系樹脂を用いることが好ましく、中でもノルボルネン系樹脂が最も好ましい。
【0043】
(メタ)アクリル系樹脂のTg(ガラス転移温度)は、100℃以上が好ましく、105℃以上がより好ましく、110℃以上がさらに好ましく115℃以上が特に好ましい。Tgが前記範囲内であることにより、耐熱性に優れた偏光板を製造し得る。また、上記(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限は特に限定されないが、成形性等の観点からは150℃以下であることが好ましい。
【0044】
当該(メタ)アクリル系樹脂としては本発明の効果を損なわない範囲内で、任意の適切な(メタ)アクリル系樹脂を採用し得る。例えば、ポリメタクリル酸メチル等のポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂肪族炭化水素基を有する共重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−メタアクリル酸ノルボルニル共重合体など)が挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルが挙げられる。なかでも、より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。これら(メタ)アクリル樹脂の具体例としては、例えば三菱レイヨン社のアクリペットVHや、アクリペットVRL20A等が挙げられる。
【0045】
ポリイミド系樹脂としては、例えば、特開2001−343529号公報(WO01/37007号)に記載されているような樹脂組成物から形成されるポリマーフィルム等が使用可能である。より詳細には、側鎖に置換イミド基または、非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換フェニル基または非置換フェニル基とシアノ基を有する熱可塑性樹脂との混合物である。具体例としては、イソブテンとN−メチレンマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合タイトを有する樹脂組成物等が挙げられる。
【0046】
ノルボルネン系樹脂はノルボルネン、テトラシクロドデセンや、それらの誘導体等の環状オレフィンから得られる樹脂の一般的な総称であり、たとえば、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている。具体的には環状オレフィンの開環重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとのランダム共重合体、またこれらを不飽和カルボン酸やその誘導体等で変性したグラフト変性体等が例示できる。さらには、これらの水素化物があげられる。商品としては、日本ゼオン社製のゼオネックス、ゼオノア、JSR社製のアートン、TICONA社製のトーパス等があげられる。
【0047】
保護フィルムには、任意の適切な添加剤が1種以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、他の樹脂、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などが挙げられる。保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できない場合がある。
【0048】
保護フィルムは、正面位相差が40nm未満、かつ、厚み方向位相差が80nm未満であるものが、通常、用いられる。正面位相差(Re)は、Re=(nx−ny)×d、で表わされる。厚み方向位相差(Rth)は、Rth=(nx−nz)×d、で表される。また、Nz係数は、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)、で表される。[ただし、フィルムの遅相軸方向、進相軸方向及び厚さ方向の屈折率をそれぞれnx、ny、nzとし、d(nm)はフィルムの厚みとする。遅相軸方向は、フィルム面内の屈折率の最大となる方向とする。]。なお、保護フィルムは、できるだけ色付きがないことが好ましい。厚み方向位相差(Rth)が−90nm〜+75nmである保護フィルムが好ましく用いられる。かかる厚み方向位相差が−90nm〜+75nmのものを使用することにより、透明保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)をほぼ解消することができる。厚み方向位相差は、さらに好ましくは−80nm〜+60nm、特に−70nm〜+45nmが好ましい。
【0049】
一方、保護フィルムとして、正面位相差が40nm以上および/または、厚み方向位相差が80nm以上の位相差を有する位相差板を用いることもできる。正面位相差は、通常、40〜200nmの範囲に、厚み方向位相差は、通常、80〜300nmの範囲に制御される。透明保護フィルムとして位相差板を用いる場合には、当該位相差板が保護フィルムとしても機能するため、薄型化を図ることができる。
【0050】
保護フィルムに位相差板を用いる場合において、透湿度が前記の範囲内であれば、用いられる材料は特に限定されないが、前記保護フィルムを一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルムを好適に用いることができる。また、位相差を有しない低透湿フィルムに、別途、各種高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどを貼り合せて用いることもできる。位相差板の厚さも特に制限されないが、20〜150μm程度が一般的である。
【0051】
位相差板に用いられる高分子素材としては、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、またはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などがあげられる。これらの高分子素材は延伸等により配向物(延伸フィルム)となる。
【0052】
位相差板に用いられる液晶ポリマーとしては、例えば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側鎖に導入された主鎖型や側鎖型の各種のものなどをあげられる。主鎖型の液晶ポリマーの具体例としては、屈曲性を付与するスペーサー部でメソゲン基を結合した構造の、例えばネマチック配向性のポリエステル系液晶ポリマー、ディスコティックポリマーやコレステリックポリマーなどがあげられる。側鎖型の液晶ポリマーの具体例としては、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート又はポリマロネートを主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサー部を介してネマチック配向付与性のパラ置換環状化合物単位からなるメソゲン部を有するものなどがあげられる。これらの液晶ポリマーは、例えば、ガラス板上に形成したポリイミドやポリビニルアルコール等の薄膜の表面をラビング処理したもの、酸化ケイ素を斜方蒸着したものなどの配向処理面上に液晶ポリマーの溶液を展開して熱処理することにより行われる。
【0053】
位相差板は、例えば各種波長板や液晶層の複屈折による着色や視角等の補償を目的としたものなどの使用目的に応じた適宜な位相差を有するものであって良く、2種以上の位相差板を積層して位相差等の光学特性を制御したものなどであっても良い。
【0054】
位相差板は、nx=ny>nz、nx>ny>nz、nx>ny=nz、nx>nz>ny、nz=nx>ny、nz>nx>ny、nz>nx=ny、の関係を満足するものが、各種用途に応じて選択して用いられる。なお、ny=nzとは、nyとnzが完全に同一である場合だけでなく、実質的にnyとnzが同じ場合も含む。
【0055】
例えば、nx>ny>nz、を満足する位相差板では、正面位相差は40〜100nm、厚み方向位相差は100〜320nm、Nz係数は1.8〜4.5を満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nx>ny=nz、を満足する位相差板(ポジティブAプレート)では、正面位相差は100〜200nmを満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nz=nx>ny、を満足する位相差板(ネガティブAプレート)では、正面位相差は100〜200nmを満足するものを用いるのが好ましい。例えば、nx>nz>ny、を満足する位相差板では、正面位相差は150〜300nm、Nz係数は0を超え、0.7以下を満足するものを用いるのが好ましい。また、上記の通り、例えば、nx=ny>nz、nz>nx>ny、またはnz>nx=ny、を満足するものを用いることもできる。
【0056】
保護フィルムが有する位相差の範囲は、適用される液晶表示装置に応じて適宜に選択できる。例えば、VA(VerticalAlignment,MVA,PVA含む)の場合は、偏光板の少なくとも片方(セル側)の透明保護フィルムが位相差を有している方が望ましい。具体的な位相差として、Re=0〜240nm、Rth=0〜500nmの範囲である事が望ましい。三次元屈折率で言うと、nx>ny=nz、nx>ny>nz、nx>nz>ny、nx=ny>nz(一軸,二軸,Z化,ネガティブCプレート)の場合が望ましい。液晶セルの上下に偏光板を使用する際、液晶セルの上下共に、位相差を有している、または上下いずれかの透明保護フィルムが位相差を有していてもよい。
【0057】
例えば、IPS(In−Plane Switing,FFS含む)の場合、偏光板の片方の透明保護フィルムが位相差を有している場合、有していない場合のいずれも使用できる。例えば、位相差を有していない場合は、液晶セルの上下(セル側)ともに位相差を有していない場合が望ましい。位相差を有している場合は、液晶セルの上下ともに位相差を有している場合、上下のいずれかが位相差を有している場合が望ましい(例えば、上側にZ化、下側に位相差なしの場合や、上側にAプレート、下側にポジティブCプレートの場合)。位相差を有している場合、Re=−500〜500nm、Rth=−500〜500nmの範囲が望ましい。三次元屈折率で言うと、nx>ny=nz、nx>nz>ny、nz>nx=ny、nz>nx>ny(一軸,Z化,ポジティブCプレート、ポジティブAプレート)が望ましい。
【0058】
保護フィルムの偏光子と接着する面には、易接着処理を施すことができる。易接着処理としては、プラズマ処理、コロナ処理等のドライ処理、アルカリ処理(ケン化処理)等の化学処理、易接着層を形成するコーティング処理等があげられる。これらのなかでも、接着剤層を形成するコーティング処理やアルカリ処理が好適である。易接着層の形成には、ポリオール樹脂、ポリカルボン酸樹脂、ポリエステル樹脂等の各種の易接着材料を使用することができる。なお、易接着層の厚みは、通常、0.001〜10μm程度、さらには0.001〜5μm程度、特に0.001〜1μm程度とするのが好ましい。
【0059】
前記保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよい。
【0060】
ハードコート処理は偏光板表面の傷付き防止などを目的に施されるものであり、例えばアクリル系、シリコーン系などの適宜な紫外線硬化型樹脂による硬度や滑り特性等に優れる硬化皮膜を保護フィルムの表面に付加する方式などにて形成することができる。反射防止処理は偏光板表面での外光の反射防止を目的に施されるものであり、従来に準じた反射防止膜などの形成により達成することができる。また、スティッキング防止処理は隣接層との密着防止を目的に施される。
【0061】
またアンチグレア処理は偏光板の表面で外光が反射して偏光板透過光の視認を阻害することの防止等を目的に施されるものであり、例えばサンドブラスト方式やエンボス加工方式による粗面化方式や透明微粒子の配合方式などの適宜な方式にて保護フィルムの表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。前記表面微細凹凸構造の形成に含有させる微粒子としては、例えば平均粒径が0.5〜50μmのシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等からなる導電性のこともある無機系微粒子、架橋又は未架橋のポリマー等からなる有機系微粒子などの透明微粒子が用いられる。表面微細凹凸構造を形成する場合、微粒子の使用量は、表面微細凹凸構造を形成する透明樹脂100重量部に対して一般的に2〜50重量部程度であり、5〜25重量部が好ましい。アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角などを拡大するための拡散層(視角拡大機能など)を兼ねるものであってもよい。
【0062】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層等は、保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途光学層として透明保護層とは別体のものとして設けることもできる。
【0063】
本発明の偏光板を構成する接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂、架橋剤および平均粒径が1〜100nmの金属化合物コロイドを含有してなる樹脂溶液である。
【0064】
ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリビニルアルコール樹脂や、アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール樹脂があげられる。アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール樹脂は、反応性の高い官能基を有するポリビニルアルコール系接着剤であり、偏光板の耐久性が向上するため好ましい。
【0065】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られたポリビニルアルコール;その誘導体;更に酢酸ビニルと共重合性を有する単量体との共重合体のケン化物;ポリビニルアルコールをアセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化等した変性ポリビニルアルコールがあげられる。前記単量体としては、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸及びそのエステル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン、(メタ)アリルスルホン酸(ソーダ)、スルホン酸ソーダ(モノアルキルマレート)、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート、N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン誘導体等があげられる。これらポリビニルアルコール系樹脂は一種を単独でまたは二種以上を併用することができる。
【0066】
前記ポリビニルアルコール系樹脂は特に限定されないが、接着性の点からは、平均重合度100〜5000程度、好ましくは1000〜4000、平均ケン化度85〜100モル%程度、好ましくは90〜100モル%である。
【0067】
アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリビニルアルコール系樹脂とジケテンとを公知の方法で反応して得られる。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を酢酸等の溶媒中に分散させておき、これにジケテンを添加する方法、ポリビニルアルコール系樹脂をジメチルホルムアミドまたはジオキサン等の溶媒にあらかじめ溶解しておき、これにジケテンを添加する方法等があげられる。またポリビニルアルコールにジケテンガスまたは液状ジケテンを直接接触させる方法があげられる。
【0068】
アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂のアセトアセチル基変性度は、0.1モル%以上であれば特に制限はない。0.1モル%未満では接着剤層の耐水性が不充分となる傾向がある。アセトアセチル基変性度は、好ましくは0.1〜40モル%程度、さらに好ましくは1〜20モル%、特に好ましくは2〜7モル%である。アセトアセチル基変性度が40モル%を超えると、耐水性の向上効果を十分に得られない場合がある。アセトアセチル基変性度はNMRにより定量することができる。
【0069】
架橋剤としては、ポリビニルアルコール系接着剤に用いられているものを特に制限なく使用できる。前記ポリビニルアルコール系樹脂と反応性を有する官能基を少なくとも2つ有する化合物を使用できる。例えば、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアルキレン基とアミノ基を2個有するアルキレンジアミン類;トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルメタントリイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよびこれらのケトオキシムブロック物またはフェノールブロック物等のイソシアネート類;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジまたはトリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等のエポキシ類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド等のモノアルデヒド類;グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、マレインジアルデヒド、フタルジアルデヒド等のジアルデヒド類;メチロール尿素、メチロールメラミン、アルキル化メチロール尿素、アルキル化メチロール化メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンとホルムアルデヒドとの縮合物等のアミノ−ホルムアルデヒド樹脂、;更にナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉄、ニッケル等の二価金属、又は三価金属の塩及びその酸化物があげられる。これらのなかでもアミノ−ホルムアルデヒド樹脂やジアルデヒド類が好ましい。アミノ−ホルムアルデヒド樹脂としてはメチロール基を有する化合物が好ましく、ジアルデヒド類としてはグリオキザールが好適である。なかでもメチロール基を有する化合物である、メチロールメラミンが特に好適である。
【0070】
前記架橋剤の配合量は、接着剤中のポリビニルアルコール系樹脂の種類等に応じて適宜設計できるが、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、通常、10〜60重量部程度、好ましくは20〜50重量部である。かかる範囲において、良好な接着性が得られる。
【0071】
耐久性を向上させるには、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂を用いることが好ましい。この場合にも、接着剤中のポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、架橋剤を10〜60重量部、さらには20〜50重量部の範囲で用いるのが好ましい。架橋剤の配合量が多くなりすぎると、架橋剤の反応が短時間で進行し、接着剤がゲル化する傾向がある。その結果、接着剤としての可使時間(ポットライフ)が極端に短くなり、工業的な使用が困難となる場合がある。かかる観点からは、架橋剤の配合量は、上記配合量で用いられるが、本発明の樹脂溶液は、金属化合物コロイドを含有しているため、前記のように架橋剤の配合量が多い場合であっても、安定性よく用いることができる。
【0072】
金属化合物コロイドは、微粒子が分散媒中に分散しているものであり、微粒子の同種電荷の相互反発に起因して静電的安定化し、永続的に安定性を有するものである。金属化合物コロイド(微粒子)の平均粒径は1〜100nmである。前記コロイドの平均粒径が前記範囲であれば、接着剤層中において、金属化合物を略均一に分散させることができ、接着性を確保し、かつクニックを抑えることができる。前記平均粒径の範囲は、可視光の波長領域よりもかなり小さく、形成される接着剤層中において、金属化合物によって透過光が散乱したとしても、偏光特性には悪影響を及ぼさない。金属化合物コロイドの平均粒径は、1〜100nm、さらには1〜50nmであるのが好ましい。
【0073】
金属化合物コロイドとしては、各種のものを用いることができる。例えば、金属化合物コロイドとしては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等の金属酸化物のコロイド;炭酸亜鉛、炭酸バリウム、リン酸カルシウム等の金属塩のコロイド;セライト、タルク、クレイ、カオリン等の鉱物のコロイドがあげられる。
【0074】
金属化合物コロイドは、分散媒に分散してコロイド溶液の状態で存在している。分散媒は、主として水である。水の他に、アルコール類等の他の分散媒を用いることもできる。コロイド溶液中の金属化合物コロイドの固形分濃度は、特に制限されないが、通常、1〜50重量%程度、さらには、1〜30重量%のものが一般的である。また、金属化合物コロイドは、安定剤として硝酸、塩酸、酢酸などの酸を含有するものを用いることができる。
【0075】
金属化合物コロイドは、静電的に安定化しており、正電荷を有するものと、負電荷を有するものに分けられるが、金属化合物コロイドは非導電性の材料である。正電荷と負電荷とは、接着剤調製後の溶液におけるコロイド表面電荷の電荷状態により、区別される。金属化合物コロイドの電荷は、例えば、ゼータ電位測定機により、ゼータ電位を測定することにより確認できる。金属化合物コロイドの表面電荷は、一般に、pHにより変化する。従って、本願のコロイド溶液の状態の電荷は、調整された接着剤溶液のpHにより影響される。接着剤溶液のpHは、通常、2〜6、好ましくは2.5〜5、さらに好ましくは3〜5、さらには3.5〜4.5の範囲に設定される。本発明では、正電荷を有する金属化合物コロイドが、負電荷を有する金属化合物コロイドに比べて、クニックの発生を抑える効果が大きい。正電荷を有する金属化合物コロイドとしては、アルミナコロイド、チタニアコロイド等があげられる。これらのなかでも、特に、アルミナコロイドが好適である。
【0076】
金属化合物コロイドは、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、200重量部以下の割合(固形分の換算値)で配合することが好ましい。属化合物コロイドの配合割合を前記範囲とすることで、偏光子と保護フィルムとの接着性を確保しながら、クニックの発生を抑えることができる。金属化合物コロイドの配合割合は、10〜200重量部であるのが好ましく、さらには20〜175重量部、さらには30〜150重量部であるのが好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂に対する金属化合物コロイドの配合割合が過剰であると接着性に劣る場合があり、金属化合物コロイドの配合割合が小さいと、クニック発生を抑止する効果を十分に得られない場合がある。
【0077】
本発明の偏光板に用いる接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂、架橋剤および平均粒径が1〜100nmの金属化合物コロイドを含有してなる樹脂溶液であり、通常、水溶液として用いられる。樹脂溶液濃度は特に制限はないが、塗工性や放置安定性等を考慮すれば、0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。
【0078】
偏光板用接着剤である樹脂溶液の粘度は特に制限されないが、1〜50mPa・sの範囲のものを好適に用いることができる。偏光板の作成にあたって、接着剤の粘度が下がるに従って、クニックの発生が多くなるのが一般的であるが、接着剤を前述のような組成とすることで、樹脂溶液の粘度に拘らず、1〜20mPa・sの範囲のような低粘度の範囲においても、クニックの発生を抑えることができる。アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂は、一般的なポリビニルアルコール樹脂に比べて、重合度を高くすることができず、前記のような低粘度で用いられていたが、本発明の偏光板においては、接着剤として、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合にも、樹脂溶液の低粘度によって生じるクニックの発生を抑えることができる。
【0079】
偏光板用接着剤である樹脂溶液の調製法は特に制限されない。通常は、ポリビニルアルコール系樹脂および架橋剤を混合し、適宜に濃度を調製したものに、金属化合物コロイドを配合することで、樹脂溶液が調製される。また、ポリビニルアルコール系樹脂として、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂を用いたり、架橋剤の配合量が多いような場合には、溶液の安定性を考慮して、ポリビニルアルコール系樹脂と金属化合物コロイドを混合した後に、架橋剤を、得られる樹脂溶液の使用時期等を考慮しながら、混合することができる。なお、偏光板用接着剤である樹脂溶液の濃度は、樹脂溶液を調製した後に適宜に調整することもできる。
【0080】
なお、偏光板用接着剤には、さらにシランカップリング剤、チタンカップリング剤などのカップリング剤、各種粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤などの安定剤等を配合することもできる。また、本願における、金属化合物コロイドは非導電性の材料であるが、導電性物質の微粒子を含有することもできる。
【0081】
本発明の偏光板は、前記偏光子と前記保護フィルムとを、前記接着剤を用いて貼り合わせることにより製造する。得られた偏光板では、偏光子の両側に、前記偏光板接着剤により形成された接着剤層を介して、保護フィルムが設けられている。
【0082】
前記接着剤の塗布は、保護フィルム、偏光子のいずれに行ってもよく、両者に行ってもよい。前記接着剤の塗布は、乾燥後の接着剤層の厚みが10〜300nm程度になるように行なうのが好ましい。接着剤層の厚みは、均一な面内厚みを得ることと、十分な接着力を得る点から、10〜200nmであることがより好ましく、20〜150nmであることがさらに好ましい。また、前述の通り、接着剤層の厚みは、偏光板用接着剤に含有されている金属化合物コロイドの平均粒径よりも大きくなるように設計することが好ましい。
【0083】
接着剤層の厚みを調整する方法としては、特に制限されるものではないないが、例えば、接着剤溶液の固形分濃度や接着剤の塗布装置を調整する方法があげられる。このような接着剤層厚みの測定方法としては、特に制限されるものではないが、SEM(Scanning Electron Microscopy)や、TEM(Transmission Electron Microscopy)による断面観察測定が好ましく用いられる。接着剤の塗布操作は特に制限されず、ロール法、噴霧法、浸漬法等の各種手段を採用できる。
【0084】
接着剤を塗布した後は、偏光子と保護フィルムをロールラミネーター等により貼り合わせる。本発明の偏光板の製造方法においては、前述のごとく、この貼り合わせる工程に供される偏光子の水分率は、12〜31重量%とすることが好ましく、20〜27重量%とすることがより好ましい。水分率を上記範囲とすることで、耐熱性の低下や接着力の低下クニックや外観上のムラの発生を防止することができる。
【0085】
さらに、本発明の偏光板は、偏光子の両面に保護フィルムを貼り合わせた後に、適切な乾燥温度で乾燥させることが好ましい。光学特性の観点から乾燥温度は90℃以下であることが好ましく、85℃以下であることがより好ましく、80℃以下であることがさらに好ましい。また、乾燥温度に下限はないが、工程の効率や実用性を考慮すると、50℃以上であることが好ましい。また、乾燥温度は上記温度範囲内で段階的に昇温して実施することもできる。
【0086】
本発明の偏光板は、実用に際して他の光学層と積層した光学フィルムとして用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視角補償フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。特に、本発明の偏光板に更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光板または半透過型偏光板、偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板、偏光板に更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光板、あるいは偏光板に更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光板が好ましい。
【0087】
反射型偏光板は、偏光板に反射層を設けたもので、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置などを形成するためのものであり、バックライト等の光源の内蔵を省略できて液晶表示装置の薄型化を図りやすいなどの利点を有する。反射型偏光板の形成は、必要に応じ透明保護層等を介して偏光板の片面に金属等からなる反射層を付設する方式などの適宜な方式にて行うことができる。
【0088】
なお、半透過型偏光板は、上記において反射層で光を反射し、かつ透過するハーフミラー等の半透過型の反射層とすることにより得ることができる。半透過型偏光板は、通常液晶セルの裏側(バックライト側)に設けられ、液晶表示装置などを比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射させて画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置などを形成できる。すなわち、半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、比較的暗い雰囲気下においても内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置などの形成に有用である。
【0089】
偏光板に更に位相差板が積層されてなる楕円偏光板または円偏光板について説明する。直線偏光を楕円偏光または円偏光に変えたり、楕円偏光または円偏光を直線偏光に変えたり、あるいは直線偏光の偏光方向を変える場合に、位相差板などが用いられる。特に、直線偏光を円偏光に変えたり、円偏光を直線偏光に変える位相差板としては、いわゆる1/4波長板(λ/4板とも言う)が用いられる。1/2波長板(λ/2板とも言う)は、通常、直線偏光の偏光方向を変える場合に用いられる。
【0090】
また上記の楕円偏光板や反射型楕円偏光板は、偏光板又は反射型偏光板と位相差板を適宜な組み合わせで積層したものである。かかる楕円偏光板等は、(反射型)偏光板と位相差板の組み合わせとなるようにそれらを液晶表示装置の製造過程で順次別個に積層することによっても形成しうるが、前記の如く予め楕円偏光板等の光学フィルムとしたものは、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置などの製造効率を向上させうる利点がある。
【0091】
視角補償フィルムは、液晶表示装置の画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフィルムである。このような視角補償位相差板としては、例えば位相差板、液晶ポリマー等の配向フィルムや透明基板上に液晶ポリマー等の配向層を支持したものなどからなる。通常の位相差板は、その面方向に一軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムが用いられるのに対し、視角補償フィルムとして用いられる位相差板には、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムとか、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。傾斜配向フィルムとしては、例えばポリマーフィルムに熱収縮フィルムを接着して加熱によるその収縮力の作用下にポリマーフィルムを延伸処理又は/及び収縮処理したものや、液晶ポリマーを斜め配向させたものなどが挙げられる。位相差板の素材原料ポリマーは、先の位相差板で説明したポリマーと同様のものが用いられ、液晶セルによる位相差に基づく視角の変化による着色等の防止や良視認の視野角の拡大などを目的とした適宜なものを用いうる。
【0092】
また良視認の広い視野角を達成する点などより、液晶ポリマーの配向層、特にディスコティック液晶ポリマーの傾斜配向層からなる光学的異方性層をトリアセチルセルロースフィルムにて支持した光学補償位相差板が好ましく用いうる。
【0093】
偏光板と輝度向上フィルムを貼り合わせた偏光板は、通常液晶セルの裏側に設けられて使用される。輝度向上フィルムは、液晶表示装置などのバックライトや裏側からの反射などにより自然光が入射すると所定偏光軸の直線偏光または所定方向の円偏光を反射し、他の光は透過する特性を示すもので、輝度向上フィルムを偏光板と積層した偏光板は、バックライト等の光源からの光を入射させて所定偏光状態の透過光を得ると共に、前記所定偏光状態以外の光は透過せずに反射される。この輝度向上フィルム面で反射した光を更にその後ろ側に設けられた反射層等を介し反転させて輝度向上フィルムに再入射させ、その一部又は全部を所定偏光状態の光として透過させて輝度向上フィルムを透過する光の増量を図ると共に、偏光子に吸収させにくい偏光を供給して液晶表示画像表示等に利用しうる光量の増大を図ることにより輝度を向上させうるものである。
【0094】
前記の輝度向上フィルムとしては、例えば誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものの如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどの適宜なものを用いうる。
【0095】
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板やその他の光学フィルムの接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0096】
前述した偏光板や、偏光板を少なくとも1層積層されている光学フィルムには、液晶セル等の他部材と接着するための粘着層を設けることもできる。粘着層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
【0097】
また上記に加えて、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性などの点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層が好ましい。
【0098】
粘着層は、例えば天然物や合成物の樹脂類、特に、粘着性付与樹脂や、ガラス繊維、ガラスビーズ、金属粉、その他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤、酸化防止剤などの粘着層に添加されることの添加剤を含有していてもよい。また微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層などであってもよい。
【0099】
偏光板や光学フィルムの片面又は両面への粘着層の付設は、適宜な方式で行いうる。その例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物又は混合物からなる溶剤にベースポリマーまたはその組成物を溶解又は分散させた10〜40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で偏光板上または光学フィルム上に直接付設する方式、あるいは前記に準じセパレータ上に粘着層を形成してそれを偏光板上または光学フィルム上に移着する方式などがあげられる。
【0100】
粘着層は、異なる組成又は種類等のものの重畳層として偏光板や光学フィルムの片面又は両面に設けることもできる。また両面に設ける場合に、偏光板や光学フィルムの表裏において異なる組成や種類や厚さ等の粘着層とすることもできる。粘着層の厚さは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1〜500μmであり、5〜200μmが好ましく、特に10〜100μmが好ましい。
【0101】
粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的にセパレータが仮着されてカバーされる。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。セパレータとしては、上記厚さ条件を除き、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体等の適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来に準じた適宜なものを用いうる。
【0102】
なお本発明において、上記した偏光板を形成する偏光子や保護フィルムや光学フィルム等、また粘着層などの各層には、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
【0103】
本発明の偏光板または光学フィルムは液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと偏光板または光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による偏光板または光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0104】
液晶セルの片側又は両側に偏光板または光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による偏光板または光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に偏光板または光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【0105】
次いで有機エレクトロルミネセンス装置(有機EL表示装置)について説明する。一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に透明電極と有機発光層と金属電極とを順に積層して発光体(有機エレクトロルミネセンス発光体)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、および電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
【0106】
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物質を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
【0107】
有機EL表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明でなくてはならず、通常酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いている。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
【0108】
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
【0109】
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機エレクトロルミネセンス発光体を含む有機EL表示装置において、透明電極の表面側に偏光板を設けるとともに、これら透明電極と偏光板との間に位相差板を設けることができる。
【0110】
位相差板および偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板を1/4波長板で構成し、かつ偏光板と位相差板との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【0111】
すなわち、この有機EL表示装置に入射する外光は、偏光板により直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は位相差板により一般に楕円偏光となるが、とくに位相差板が1/4波長板でしかも偏光板と位相差板との偏光方向のなす角がπ/4のときには円偏光となる。
【0112】
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、位相差板に再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
【実施例】
【0113】
以下に、本発明を実施例をあげて説明するが、本発明は以下に示した実施例に制限されるものではない。なお、以下の実施例および比較例の評価は、以下の方法によりおこなったものである。
【0114】
(亜鉛含有量)
偏光子中における亜鉛の含有量は、蛍光X線分析装置(リガク社製、ZSX)によって測定した。
【0115】
(透湿度)
フィルムの透湿度はJIS Z0208の透湿度試験(カップ法)に準じて、40℃、90%の相対湿度差で、面積1mの試料を24時間で透過する水蒸気の重量を測定した
【0116】
(平均粒径)
水溶液におけるコロイドの平均粒径は粒度分布計(日機装社製、ナノトラックUAP150)により動的光散乱法(光相関法)で測定した。
【0117】
(接着剤水溶液の粘度)
調製した接着剤水溶液(常温:23℃)を、レオメーター(RSI‐HS,HAAKE社製)により測定した。
【0118】
(偏光度、透過率の測定)
分光光度計(村上色彩技術研究所製,DOT−3)を用いて、1枚の偏光板の透過率(単体透過率)を測定した。また、同様の分光光度計を用いて、2枚の同じ偏光板を両者の透過軸が平行となるように重ね合わせた場合の透過率(平行透過率:H)および、両者の透過軸が直交するように重ね合わせた場合の透過率(直交透過率:H90)を測定した。そして、平行透過率(H)および、直交透過率(H90)を、以下の式に適用することで偏光度を算出した。
偏光度(%)={(H−H90)/(H+H90)}1/2 × 100
なお、単体透過率、平行透過率(H)、直交透過率(H90)は、JIS Z8701の2度視野(C光源)により視感度補整したY値である。
【0119】
(直交色度)
偏光板の直交色度は、ハンター表色系におけるa値を用い、分光光度計(村上色彩技術研究所製、DOT−3)により測定した。
【0120】
(耐熱性試験)
偏光板の初期、および105℃の条件下に500時間放置した後の直交色度(aおよびa500)を測定した。
【0121】
(耐湿性試験)
偏光板を85℃、85%RHの恒温恒湿器に投入して、500時間後の偏光度を測定し、初期値からの変化量(ΔP500)を算出した。
【0122】
(外観検査:クニック欠陥)
偏光板を、1000mm×1000mmの正方形となるように2枚切り出し、両者の透過軸が直交するように輝度8000カンデラ/mの蛍光灯上に2枚積層させ、光り抜けする箇所(クニック欠陥)の個数を目視により数えた。
【0123】
(剥がれ量測定)
偏光板を、吸収軸方向が50mm、吸収軸と直交する方向が25mmの長方形となるように切り出したサンプルを用意した。このサンプルを60℃の温水に5時間浸漬した後に温水から取り出し、サンプル端部の保護フィルムの剥がれ代をノギスで測定した。なお、剥がれ代の測定にはJIS一級規格のノギスを使用した。
【0124】
(実施例1)
(偏光子の作成)
平均重合度2700、厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを、周速比の異なるロール間で染色しながら延伸搬送した。先ず、30℃の水浴中に1分間浸漬させてポリビニルアルコールフィルムを膨潤させつつ搬送方向に1.2倍に延伸した後、30℃のヨウ化カリウム濃度0.03重量%、ヨウ素濃度0.3重量%の水溶液(浴液)中で1分間浸漬することで染色しながら搬送方向に、全く延伸していないフィルムを基準にして3倍に延伸した。次に、60℃のホウ酸濃度4重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%、硫酸亜鉛濃度2.5重量%の水溶液(浴液)中に30秒間浸漬しながら搬送方向に、全く延伸していないフィルムを基準にして6倍に延伸した。次いで、得られた延伸フィルムを70℃で2分間乾燥して偏光子を得た。得られた偏光子の厚みは30μm、亜鉛含有量は0.20重量%、水分率は25.0重量%であった。
(保護フィルム)
ノルボルネン系樹脂フィルム(日本ゼオン社製、ゼオノアフィルム(厚み40μm))を用いた。このフィルムの透湿度は5g/m・24hであった。
(接着剤の調製)
アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂(平均重合度1200、ケン化度98.5%、アセトアセチル化度5モル%)100部に対し、メチロールメラミン50部を、30℃の温度条件下で純水に溶解し、固形分濃度3.7重量%の水溶液を調製した。この水溶液100重量部に対してアルミナコロイド水溶液(平均粒径15nm、固形分濃度10重量%、正電荷)18重量部を加えて接着剤水溶液を調製した。接着剤溶液の粘度は9.6mPa・sであり、pHは4〜4.5の範囲であり、アルミナコロイドの配合量はポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して74重量部であった。
(偏光板の作成)
上記の保護フィルムの片面に、上記の接着剤を、乾燥後の接着剤層厚みが80nmとなるように塗布した。接着剤が塗布された保護フィルムを上述の亜鉛含有偏光子の両面に、ロール機を用いて貼り合わせ、55℃で6分間乾燥させて偏光板を作成した。
【0125】
(実施例2)
(保護フィルム)
光弾性係数が5×10−12(m/N)のポリメタクリル酸メチル樹脂(三菱レイヨン社製、アクリペットVH)90重量部と、その複屈折を消失させるように作用するアクリロニトリル−スチレン共重合体(旭化成社製、スタイラックAS)10重量部と、を溶解してTダイより押出し、キャストロール上でフィルム状に形成した。その後、ゾーン延伸法により、縦方向の延伸倍率を1.8倍として縦延伸し、分子が一軸配向したポリメタクリル酸メチルフィルムとを得た。さらにこの一軸配向したフィルムを、テンター延伸法により横方向の延伸倍率を2.2倍とすることで、分子が二軸配向した厚みが40μmのポリメタクリル酸メチルを主成分とするフィルムを得た。このフィルムの透湿度は90g/m・24hであった。
(偏光板の作成)
保護フィルムとして上記のポリメタクリル酸メチルを主成分とするフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にして偏光板を作成した。
【0126】
(実施例3)
(接着剤の調製)
アルミナコロイド水溶液(平均粒径15nm、固形分濃度10重量%、正電荷)を加える量を調整してアルミナコロイドの配合量がポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して140重量部になるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして接着剤を調整した。
(偏光板の作成)
接着剤として上記接着剤を用いた以外は、実施例1と同様にして偏光板を作成した。
【0127】
(実施例4)
(接着剤の調製)
アルミナコロイド水溶液(平均粒径75nm、固形分濃度10重量%、正電荷)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして接着剤を調整した。
(偏光板の作成)
接着剤として上記接着剤を用いた以外は、実施例1と同様にして偏光板を作成した。
【0128】
(比較例1)
(偏光子の作成)
ポリビニルアルコールフィルムを6倍延伸する際に用いる浴液に、硫酸亜鉛を含有させなかったこと以外は、実施例1と同様にして亜鉛を含有しない偏光子を作成した。
(偏光板の作成)
上記の亜鉛を含有しない偏光子を用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作成した。
【0129】
(比較例2)
(保護フィルム)
トリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ社製、KC4UWY(厚み40μm))を用いた。このフィルムの透湿度は400g/m・24hであった。
(偏光板の作成)
保護フィルムとして上記トリアセチルセルロースフィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして偏光板を作成した。
【0130】
(比較例3)
(偏光子の作成)
平均重合度2700、厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の水浴に浸漬して膨潤させた後、市販の二色性染料(キシダ化学社製,Congo Red)の水溶液(濃度1重量%)からなる30℃の染色浴中で約3倍に延伸した。その後、50℃のホウ酸3重量%水溶液からなる架橋浴にて総延伸倍率が6倍になるように延伸した。さらに、30℃のホウ酸4重量%水溶液で架橋した。次に、50℃にて4分間乾燥し、ヨウ素の代わりに吸収二色性染料を含有する偏光子を得た。
(偏光板の作成)
上記の染料系偏光子を用いたこと以外は、比較例2と同様に保護フィルムとしてトリアセチルセルロースフィルムを用いて偏光板を作成した。
【0131】
(比較例4)
(接着剤の調製)
接着剤を調整する際に、アルミナコロイド水溶液を加えなかったこと以外は、実施例1と同様にして接着剤水溶液を調製した。
(偏光子の作成)
接着剤として上記接着剤を用いた以外は、実施例1と同様にして偏光板を作成した。
【0132】
(比較例5)
(接着剤の調製)
アルミナコロイド水溶液(平均粒径15nm、固形分濃度10重量%、正電荷)を加える量を調整してアルミナコロイドの配合量がポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して300重量部になるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして接着剤を調整した。
(偏光板の作成)
接着剤として上記接着剤を用いた以外は、実施例1と同様にして偏光板を作成した。
【0133】
(比較例6)
(接着剤の調製)
アルミナコロイド水溶液(平均粒径1μm、固形分濃度10重量%、正電荷)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして接着剤を調整した。
(偏光板の作成)
接着剤として上記接着剤を用いた以外は、実施例1と同様にして偏光板を作成した。
【0134】
実施例1〜4、および比較例1〜6で得られた偏光板の作成条件および評価結果を表1に示す。
【0135】
【表1】

【0136】
各実施例と比較例1、2の対比から、偏光子中の亜鉛含有および低透湿保護フィルムによって、偏光板の耐久性を高められることがわかる。また、各実施例と比較例3の対比から、染料系偏光子を用いた場合は、耐久性は高いものの、光学特性(偏光度)に劣っていることがわかる。
【0137】
さらには、各実施例と比較例4〜6の対比から、粘着剤中に適当な粒径を有する金属化合物コロイドを適量含有することによって、粘着剤剥がれがなく、かつ、外観の優れた偏光板が得られることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子の両面に接着剤を介して保護フィルムが貼り合わされた偏光板であって、
偏光子は、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系樹脂からなり、かつ、亜鉛を含有し、
保護フィルムは、40℃、90%RHの雰囲気下における透湿度が、150g/m2・24h以下であり、
接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂、架橋剤、及び平均粒径が1〜100nmの金属化合物コロイド、を含有することを特徴とする偏光板。
【請求項2】
前記接着剤が、接着剤中のポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、金属化合物コロイドを200重量部以下の割合で含有する請求項1記載の偏光板。
【請求項3】
前記金属化合物コロイドが、正電荷を有する請求項1または2に記載の偏光板。
【請求項4】
前記金属化合物コロイドが、アルミナコロイドである請求項3記載の偏光板。
【請求項5】
前記ポリビニルアルコール系樹脂が、アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂である請求項1〜4のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項6】
接着剤層の厚みが、10〜300nmであり、かつ、接着剤層の厚みが、前記金属化合物コロイドの平均粒径よりも大きい請求項1〜5のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項7】
前記架橋剤が、メチロール基を有する化合物を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項8】
前記架橋剤の配合量が、接着剤中のポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対して、10〜60重量部である請求項1〜7のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項9】
前記偏光子中の亜鉛含有量が、偏光子中0.002〜2重量%である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項10】
偏光子の両面に保護フィルムが接着剤を介して積層された請求項1〜9のいずれか1項に記載の偏光板を製造する方法であって、
ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系樹脂からなり、かつ、亜鉛を含有する偏光子および/または、40℃、90%RHの雰囲気下における透湿度が、150g/m2・24h以下である保護フィルムに、ポリビニルアルコール系樹脂、架橋剤、及び平均粒径が1〜100nmの金属化合物コロイド、を含有する接着剤を塗布する工程、
前記偏光子と、前記保護フィルムと、を貼り合わせる工程、
前記偏光子と前記保護フィルムとを貼り合わせた後に乾燥する工程、
を有する偏光板の製造方法。
【請求項11】
前記偏光子と保護フィルムとを貼り合わせる工程に供される偏光子の水分率が、12〜31重量%である請求項10に記載の偏光板の製造方法。
【請求項12】
前記乾燥する工程における乾燥温度が90℃以下である請求項10または11に記載の偏光板の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の偏光板が、少なくとも1枚積層されている光学フィルム。
【請求項14】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の偏光板、または請求項13記載の光学フィルムを少なくとも1枚用いた画像表示装置。

【公開番号】特開2009−42455(P2009−42455A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206649(P2007−206649)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】