説明

偏光板保護フィルム

【課題】薄手のフィルムであっても、高温高湿下において耐久性に優れた偏光板保護フィルムを提供する。
【解決手段】セルロースエステルのアセチル基の置換度が2.50〜2.78であるセルロースエステルフィルムであって、23±3℃、55±3%RHの常温常湿雰囲気下に12時間放置したフィルムの流延方向の寸法をLmd(mm)、フィルムの幅方向の寸法をLtd(mm)とし、80±3℃、90±3%RHの高温高湿雰囲気下で50時間放置した後に該常温常湿雰囲気下に12時間放置した時のフィルムの流延方向の寸法をHmd(mm)、フィルムの幅方向の寸法をHtdとして、伸縮率Smd及びStdが何れも±0.3%の範囲にあることを特徴とする偏光板保護フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜厚が薄いにも係わらず、伸縮率が小さく、厚さ方向のレターデーション値が高く、透明性に優れ、また光漏れが少ない液晶表示装置に有用な光学用セルロースエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
セルローストリアセテートフィルムはその透明性や光学的欠点のない特性からハロゲン化銀写真感光材料のベースとしてだけではなく、光学的等方性という特性を有していることから液晶画像表示装置の偏光板用保護フィルムとして好ましく使用されている。
【0003】
昨今、液晶表示装置も携帯性が備わり、その薄型化、軽量化の開発が活発に進められ、その目的で偏光板用保護フィルムに使用されるセルロースエステルフィルムにも更なる薄膜化が要求されている。
【0004】
液晶表示装置の用途は広がる一方で、屋外での使用頻度が増えており、また、車内に設置されるような使い方も多くなっていることから、高温高湿下の耐久性が要求されるようになっている。
【0005】
偏光板を高温高湿環境下に長時間曝したときに、偏光子とフィルムが剥がれてしまったり、偏光子は特に水分に弱く、偏光子を劣化させるため、偏光板用保護フィルムの高温高湿における透湿性、保護性が課題となっている。
【0006】
偏光板用保護フィルムの透湿性を改善する策として可塑剤を増量する事が考えられるが、単純に増量しただけでは可塑剤のセルロースエステルフィルム表面への析出が問題となり、製膜工程の汚染、偏光板用保護フィルム、液晶画像表示装置等の機能低下を引き起こす。
【0007】
偏光板用保護フィルムを薄膜化した場合においては、更なる耐透湿性が要求される。上記のように可塑剤によって薄膜化セルロースエステルフィルムの耐透湿性を上げようとすると、フィルム上への可塑剤の析出が激しくなり、その目的は達しにくい。
【0008】
可塑剤の析出などの課題に対して、従来からポリエステル、ポリエステルエーテル、あるいはポリウレタンエーテル等の重合物を、あるいは低分子可塑剤と併用して高分子可塑剤として含有する技術が提案されている。
【0009】
例えば、特公昭47−760号、同43−16305号、特開平5−197073号公報、米国特許第3,054,673号、同第3,227,031号明細書を挙げることが出来る。また、アクリル系の重合物をセルローストリアセテートフィルムに、またはアクリル系モノマーをセルローストリアセテート存在下で重合させて含有させる技術も提案されている。
【0010】
更に、偏光板用保護フィルムには紫外線吸収剤が添加されていることがあるが、可塑剤同様、製膜中にフィルムの表面に析出したり、鹸化処理時に粒子化したり、結晶化したりして析出する事もある。
【0011】
液晶表示装置には視野角の拡大のような性質を、そこに使用されているフィルムに付与することが要求されている。前述のごとくセルロースエステルフィルムは光学的に等方性であり、フィルムの厚さ方向のレターデーション値が低いために偏光板用保護フィルムに採用されたものの、他の用途のフィルム例えば、光学補償シートのようなフィルムの厚さ方向の高いレターデーション値が要求されるものもある。
【0012】
光学的に等方性のセルロースエステルフィルムは厚さが薄くなると厚さ方向のレターデーション値が低下するので、厚手フィルム同等またはそれ以上の厚さ方向のレターデーション値を持つ薄手のフィルムが要求される。
【0013】
光学補償シートの分野で、セルロースエステルの酢化度を比較的低く、平均酢化度55.0〜58.0%のものを使用することにより、厚さ方向に高いレターデーション値を有するというセルロースエステルフィルム及びその製造方法が、特開2000−154261号公報に開示されている。
【0014】
しかしながら、酢化度を低くすることによって耐透湿性が低下し、高温高湿下での液晶表示装置の機能劣化が問題となる。更に薄手化したセルロースエステルフィルムでは、高温高湿における透湿性や耐水性に関連する伸縮率や耐久性が劣化し、その改良が大きな課題となる。
【0015】
なお、セルロースアセテートにおいて、酢化度とアセチル基の置換度の関係は、酢化度はセルロースのグルコース単位の3個の水酸基に反応した酢酸の量を質量%として表したものであるのに対し、アセチル基の置換度は、グルコース単位の3個の水酸基の水素がアセチル基で置換されたかを、全て置換された3.0以下の置換度として表したものである。
【0016】
ちなみに、全ての水酸基が置換された置換度3.0を酢化度に換算すると62.5質量%である。前記特開2000−154261号公報に記載の酢化度55.0〜58.0%を置換度に換算すると、2.414〜2.636である。
【特許文献1】特開2000−154261号公報
【特許文献2】特開平05−197073号公報
【特許文献3】特開2000−256468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、アシル基の置換度が2.50〜2.78のような低置換度のセルロースエステルと低分子の可塑剤を使用しただけのセルロースエステルフィルムでは、耐水性に乏しく、フィルムの伸縮性が大きく、偏光板にした時の耐久性に劣ることがわかった。
【0018】
このような場合、低分子可塑剤を通常より多く添加することによって、若干耐水性が改善できるが、十分でないばかりか、溶液流延製膜でセルロースエステルフィルムを作製中に可塑剤がウェブから析出して装置やフィルム自身を汚し、品質と生産性を低下させる。
【0019】
更に、低置換度のセルロースエステルフィルムについて、光学的特性を検討したところ、低置換度のセルロースエステルを用いたフィルムは面内のレターデーション値とフィルム製造時の流延方向と遅相軸とのなす角度が、フィルムの幅手方向においてばらつきが大きいことが判明した。
【0020】
これは、フィルムの面品質向上のためにフィルム製造時に利用される幅手方向の保持(テンター)によって特にばらつきが発生しやすく、画像装置の光学品質を下げる原因となるようである。
【0021】
本発明者らは、先に特願2000−211276号において、重合物(ポリマー)をセルロースエステルフィルムに混合する技術、また重合物(ポリマー)と高分子紫外線吸収剤をセルロースエステル溶液に混合してドープを調製し、セルロースエステルフィルムとする技術を出願した。重合物(ポリマー)と高分子紫外線吸収剤を混合する際、やり方によって相分離が起ころうこともあり、更に安定してドープを調製する方法の検討が行われた。
【0022】
本発明者らは、液晶表示装置の小型化、軽量化に対応し、且つ上述したような欠点のない薄手のセルロースエステルフィルム開発研究を行った。
【0023】
本発明の第1の目的は、薄手のフィルムであっても、伸縮率がフィルムの溶液流延製膜方向及び幅手方向ともに小さく、面内レターデーション値及び/または流延方向と遅相軸とのなす角度のばらつきがなく、薄いフィルムであっても厚さ方向のレターデーションが大きいセルロースエステルフィルム及びその製造方法を提供することにある。
【0024】
第2の目的は、液晶表示装置用フィルムの均一な紫外線吸収剤分布を持つセルロースエステルフィルムを提供することにある。更に第3の目的は、薄手のフィルム用いても、高温高湿下において耐久性に優れた偏光板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は以下の構成よりなる。
【0026】
(1) セルロースエステルのアセチル基の置換度が2.50〜2.78であるセルロースエステルフィルムであって、23±3℃、55±3%RHの常温常湿雰囲気下に12時間放置したフィルムの流延方向の寸法をLmd(mm)、フィルムの幅方向の寸法をLtd(mm)とし、80±3℃、90±3%RHの高温高湿雰囲気下で50時間放置した後に該常温常湿雰囲気下に12時間放置した時のフィルムの流延方向の寸法をHmd(mm)、フィルムの幅方向の寸法をHtdとして、下式に示す伸縮率Smd及びStdが何れも±0.3%の範囲にあることを特徴とするセルロースエステルフィルムからなる偏光板保護フィルム。
【0027】
Smd(%)={(Hmd−Lmd)/Lmd}×100
Std(%)={(Htd−Ltd)/Ltd}×100
(2) 前記セルロースエステルフィルムが、重量平均分子量400〜5,000を有するポリエステル及びポリエステルエーテルから選ばれる重合物を含有することを特徴とする(1)に記載のセルロースエステルフィルムからなる偏光板保護フィルム。
【発明の効果】
【0028】
上記構成により、フィルムの厚さが薄くても、伸縮性が小さく、厚み方向のレターデーション値が大きく、フィルムの流延方向と遅延軸とのなす角度のばらつきが小さい液晶表示装置用のセルロースエステルフィルム、特に偏光板用保護フィルムを提供出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0030】
まず、本発明に使用するセルロースエステルについて説明する。
【0031】
本発明に係わるセルロースエステルフィルムに使用するセルロースエステルは、綿花リンター、木材パルプ及びケナフ由来のセルロースが用いられる。それらに無水酢酸、無水プロピオン酸、または無水酪酸を常法により反応して得られるもので、セルロースの水酸基に対するアシル基の置換度が2.50〜2.78の比較的低置換度のセルロースエステルである。
【0032】
このセルロースエステルがアセテートの場合、通常ハロゲン化銀写真感光材料の支持体に使用しているセルローストリアセテートフィルムのセルローストリアセテートはアセチル基の置換度がほぼ2.7〜3.0であるのに対してほぼ2.4〜2.55位の範囲のものがセルロースジアセテートとして成型などプラスティックスとして使用されている。
【0033】
本発明の場合には、ちょうどこれらセルローストリアセテートとセルロースジアセテートとの狭間にあるアセチル基置換度に相当するものである。構成(16)〜(29)におけるセルロースエステルは、アシル基置換度が2.78を超え3.0以下のものも含まれる。
【0034】
本発明に係わるセルロースエステルはセルロースの水酸基に置換されるアシル基が炭素原子数2〜4を有する低級脂肪酸の置換基(アセチル基、プロピオニル基、ビチリル基)であることが好ましい。本発明におけるセルロースエステルは、アセチル基の置換度が1.50以上あることが好ましい。
【0035】
セルロースエステルとしては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、またはセルロースアセテートプロピオネートブチレートが好ましい。
【0036】
中でもセルロースアセテートプロピオネートが特に好ましく用いられる。セルロースエステルのアシル基の置換度の測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することが出来る。これらのセルロースエステルの分子量は数平均分子量として、50,000〜300,000の範囲が、フィルムに成形した場合の機械的強度が強く好ましい。更に70,000〜200,000が好ましい。
【0037】
通常、セルロースエステルは反応後の水洗等処理後において、フレーク状となり、その形状で使用されるが、粒子サイズは粒径を0.05〜2.0mmの範囲とすることにより溶解性を早めることが出来好ましい。
【0038】
本発明に係わるセルロースエステルに対して溶解性を有する有機溶媒は、セルローストリアセテートで溶解性があまり顕著でなかった有機溶媒も使用することが出来、溶解性及び有機溶媒の選択の幅が広がる。
【0039】
本発明に係わるセルロースエステルに対する良溶媒としての有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、乳酸エチル、ギ酸エチル、アセトン、シクロヘキサノン、アセト酢酸メチル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、塩化メチレン、ブロモプロパン、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、メトキシエチルアセテート等を挙げることが出来、酢酸メチル、アセトン、塩化メチレンが好ましく用いられる。
【0040】
しかし最近の環境問題から非塩素系の有機溶媒の方が好ましい傾向にある。また、これらの有機溶媒に、メタノール、エタノール、ブタノール等の低級アルコールを併用すると、セルロースエステルの有機溶媒への溶解性が向上したりドープ粘度を低減出来るので好ましい。
【0041】
特に沸点が低く、毒性の少ないエタノールが好ましい。本発明に係るドープに使用する有機溶媒は、セルロースエステルの良溶媒と貧溶媒を混合して使用することが、生産効率の点で好ましく、良溶媒と貧溶媒の混合比率の好ましい範囲は、良溶媒が70〜98質量%であり、貧溶媒が2〜30質量%である。
【0042】
本発明に用いられる良溶媒、貧溶媒とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶媒、単独では溶解しないものを貧溶媒と定義している。本発明に係るドープに使用する貧溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、アセトン、シクロヘキサノン等を好ましく用いることが出来る。
【0043】
本発明における比較的低置換度セルロースエステルを良溶媒と貧溶媒の混合有機溶媒に溶解したドープ中のセルロースエステルの濃度は10〜35質量%程度である。更に好ましくは、15〜25質量%である。
【0044】
本発明において、通常の方法でドープを調製出来るが、比較的低置換度のセルロースエステルを使用するセルロースエステル溶液またはドープを調製する際、本発明においては、高温溶解方法または冷却溶解方法を用いるのが好ましい。
【0045】
高温溶解方法は、セルロースエステルを後述の重合物や他の添加剤を加えてセルロースエステルに対して良溶媒と貧溶媒の混合有機溶媒に耐圧密閉溶解釜中で攪拌しながら主要の有機溶媒沸点以上で溶解してセルロースエステル溶液またはドープを調製するものである。例えば主溶媒として酢酸メチル(沸点56.32℃)を用いた場合を例に挙げると、温度は56.32℃〜120℃が好ましく、更に60℃〜90℃が好ましい。
【0046】
また、本発明では、上記セルロースエステル溶液またはドープ調製方法として、特開平9−95538号、同9−95544号、同9−95557号公報に記載されているような冷却溶解方法が好ましく用いられる。
【0047】
この方法は、セルロースエステルまたはセルロースエステルと重合物を含有する有機溶媒を−100℃〜−10℃に冷却するか、またはセルロースエステルを−100℃〜−10℃の有機溶媒と混合した後、0℃〜120℃に加温して溶解する方法で、溶解性が十分でなかった場合には、この操作を繰り返しておこなってもよい。
【0048】
この冷却溶解方法でセルロースエステル溶液を調製することにより、フィルムの厚さ方向のレターデーションが向上出来、本発明において有用な方法の一つである。冷却溶解法においてはセルローストリアセテートに対して溶解性の良い有機溶媒の塩化メチレンを使用しなくとも、アセトン、酢酸メチル、ギ酸エチル等の有機溶媒を使用してセルロースエステル溶液を調製出来る。
【0049】
その他、通常の溶解方法、使用する有機溶媒の沸点以下で溶解する方法でも、また、特開平11−21379号公報に記載の高圧溶解方法も使用することが出来る。これはセルロースエステルと有機溶媒を5MPa〜200MPaに加圧してアセトン等の有機溶媒を用いセルロースエステル溶液を調製する方法である。
【0050】
本発明においては、セルロースエステルフィルムの耐伸縮性の向上のために、伸縮率を小さくすることの出来る添加剤であれば制限なくセルロースエステルフィルムに含有させ使用することが出来るが、本発明に係わる重合物を低置換度セルロースエステルフィルムに含有させることが好ましい。
【0051】
本発明においては、低置換度の耐水性、レターデーションのばらつき等に対処するため、重合物をセルロースエステルとともにドープとすることによって、改善することを見い出した。
【0052】
本発明に有用な重合物はセルロースエステル溶液中、ドープ中あるいはセルロースエステルフィルム中で相分離が起こらないものが好ましく用いられる。
【0053】
本発明に有用な重合物はセルロースエステルドープに添加する過程、流延してフィルムを形成するまでの過程、または出来上がりのセルロースエステルフィルムの経時、高温高湿等の悪条件に曝される状態でも、相分離したり、白濁したり、ブリードアウトしたりせず、フィルム形成後、寸法変化が非常に小さく、保留性にも優れているものである。
【0054】
重量平均分子量を上記範囲より大きくすると相溶性が劣化するため、前述のような範囲の重量平均分子量であることが好ましい。従って、本発明に係る重合物はオリゴマーと呼ばれるものも含んでいる。
【0055】
本発明に有用な重合物としては、重量平均分子量400〜5,000を有するポリエステル及びポリエステルエーテルから選ばれるもの、また、ビニルエステルを含有する単独重合物または共重合物であり、該重合物が5,000〜150,000、より好ましくは10,000〜80,000の重量平均分子量を有するものが好ましい。
【0056】
本発明に有用なポリエステルについてさらに詳細に述べる。ポリエステルの片方の構成成分である二塩基酸としては、脂肪族二塩基酸、脂環式二塩基酸、芳香族二塩基酸が好ましく、例えば、脂肪族二塩基酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸等、芳香族二塩基酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−キシリデンジカルボン酸等、脂環式二塩基酸としては、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジ酢酸等を挙げることが出来る。
【0057】
特に、脂肪族ジカルボン酸としては炭素原子数4〜12のもの、脂環式二塩基性酸及び芳香族ジカルボン酸が好ましく、これらから選ばれる少なくとも一つのものを使用する。つまり、2種以上の二塩基酸を組み合わせて使用してよい。
【0058】
もう片方の構成成分であるグリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,5−ペンチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等を挙げることが出来るが、これらのうちエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールが好ましく、更に、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールを好ましく用いられる。
【0059】
ポリエステルは結晶化しにくいものが好ましい。ポリエステルの重縮合は常法によって行われる。
【0060】
例えば、上記二塩基酸とグリコールの直接反応、上記の二塩基酸またはこれらのアルキルエステル類、例えば二塩基酸のメチルエステルとグリコール類とのポリエステル化反応またはエステル交換反応により熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコールとの脱ハロゲン化水素反応の何れかの方法により容易に合成し得るが、重量平均分子量がさほど大きくないポリエステルは直接反応によるのが好ましい。
【0061】
低分子量側に分布が高くあるポリエステルはセルロースエステルとの相溶性が非常によく、フィルム形成後、透湿度も小さく、しかも透明性に富んだセルロースエステルフィルムを得ることが出来る。
【0062】
分子量の調節方法は、特に制限なく従来の方法を使用出来る。例えば、重合条件にもよるが、1価の酸または1価のアルコールで分子末端を封鎖する方法により、これらの1価のものの添加する量によりコントロール出来る。
【0063】
この場合、1価の酸が重合物の安定性から好ましい。例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ピバリン酸、安息香酸等を挙げることが出来る。このような1価の酸としては、重縮合反応中には系外に溜去せず、且つ封鎖反応後に系外に溜去し易いものが選ばれる。
【0064】
またこれらの封鎖するものを混合使用してもよい。また、直接反応の場合には、反応中に溜去してくる水の量により反応を停止するタイミングを計ることによっても重量平均分子量を調節出来る。
【0065】
その他、仕込むグリコールまたは二塩基酸のモル数を偏らせることによっても出来るし、反応温度をコントロールしても調節出来る。
【0066】
本発明に有用なポリエステルエーテルは、上記ポリエステルや上記二塩基性酸あるいはこれらのアルキルエステル類と、エーテル単位の両末端にOH基を有する化合物を、ポリエステル化反応またはエステル交換反応により熱溶融縮合法か、末端OH基を有するポリエステルにエーテル化する反応法によりポリエステルエーテルを得ることが出来る。
【0067】
エーテル単位としては特に限定されないが、例えば、HO(RO)nROH(ここでRはアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基、2官能脂環基等でこれらが混ざり合っていてもよい、またnは1〜100)のようなジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリフェニレングリコール、ポリシクロヘキシレングリコール等を挙げることが出来、これらを組み合わて使用してもよい。
【0068】
重合物の分子量を調整する方法は、とくに制限なく使用出来、ポリエステルの場合と同様に行うことが出来る。
【0069】
本発明に適したポリエステルエーテルを市販品から求めることが出来る。例えば、Dupont社製のハイテレル(Hytrel)コポリエステル類、GAF社製のガルフレック(Galflex)重合物、「旭電化工業(株)製アデカサイザーRSシリーズ」を挙げることが出来る。
【0070】
本発明に有用なポリエステルまたはポリエステルエーテルはセルロースエステルフィルム中に、セルロースエステルに対して5〜30質量%含有することが好ましく、より好ましくは7〜20質量%が好ましい。
【0071】
また、本発明に有用なビニルエステルを主とする重合物をセルロースエステルフィルム中に、セルロースエステルに対して5〜45質量%含有することが好ましく、より好ましくは7〜35質量%が好ましい。
【0072】
これらのポリエステルエーテルをセルロースエステルと混合して用いる量は前記ポリエステルと同様であり、フィルム形成後のセルロースエステルフィルムの透明性は低下することなく、優れた機械的性質、特に引き裂き強さを示す。
【0073】
本発明に有用なビニルエステルを主として含有する重合物は、相分離を起こさないものであれば、その種類は特に限定されない。
【0074】
ビニルエステルを主とする重合物を形成するモノマーとしては、ビニルエステルモノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、バレリアン酸ビニル、イソバレリアン酸、メチルエチル酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、イソカプロン酸ビニル、エナント酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル等を挙げることが出来る。ビニルエステルを主とするとは、重合物中にビニルエステルを40質量%以上含むものをいう。ビニルエステルとの共重合成分としては、ビニルエーテル類として、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等、ビニルケトン類として、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、ブチルビニルケトン等、アクリル酸またはメタクリル酸エステル類として、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェネチルアクリレート等及びこれらアクリレートをメタクリレートとしたもの等を挙げることが出来る。
【0075】
また、上記モノマーの他にマレイン酸エステル、フマル酸エステル、塩化ビニル、ブタジエン等のモノマーと共重合成分としてあげることが出来る。
【0076】
本発明においては、特にビニルエステルモノマーからの重合物がセルロースエステルと相溶性に優れており、相溶性をよくするに十分な重量平均分子量は前記ポリエステルと同様な範囲で添加することが出来る。
【0077】
また、このようなビニルエステルを主とする重合物の分子量を調節する方法としては、特に従来の方法を制限なく使用することが出来る。
【0078】
例えば、重合開始剤の添加量を多くする方法、溶液重合の溶媒量を多量にして行う方法、重合温度を高くする方法、モノマー濃度を高める方法、連鎖移動剤や重合禁止剤を添加する方法などがある。連鎖移動剤としては、例えば、四塩化炭素、四塩化エタン、クロロホルム、三塩化エタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、n−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、エチルチオグリコレート、ジスルフィド、ドデシルメルカプタン、ジアゾチオエーテル等の含イオウ炭化水素類、n−ブタノール、i−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトンのケトン類等を挙げることが出来る。
【0079】
また重合禁止剤も用いることが出来、例えば、ベンゾキノン、ニトロベンゼン、ジフェニルピクリルヒドラジル等を挙げることが出来る。
【0080】
また、本発明に有用な上記重合物は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnが1〜5の範囲にあることが好ましく、2〜5の範囲がより好ましく、3〜5の範囲が更に好ましい。
【0081】
Mw/Mnは大きいということは、重合物が低分子量体をより多く含有していることで、本発明において、低分子側に分布が高くなっているものが好ましいのである。そして低分子量重合物(オリゴマー的なもの)をより多く含むものであることが特徴で、相溶性がよく、相分離ブリードアウト、白濁等を起こさず好ましい。
【0082】
なお、Mn及びMwはGPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて通常の方法で測定することが出来る。例えば、カラム(昭和電工社製、SHODEX−K806−K803)の温度を25℃として、溶離液として塩化メチレンを用い、流量を1.0ml/minとし、注入量を100μl、試料濃度を0.1(質量/容量%)とし、また標準試料としてポリスチレンを用いて行ったものである。
【0083】
本発明に有用なこれらの重合物のセルロースエステルフィルム中の含有量は5〜30質量%が好ましい。
【0084】
本発明に特に有用なポリエステル、ポリエステルエーテル、及びビニルエステルを主とするポリマーの重合例を下記に示す。
【0085】
(ポリエステルの重合例、PE−1の重合)
1lの三つ口フラスコに、攪拌機、窒素ガス導入管、温度計、除水管を取り付ける。除水管は、分留管、その先に頭頂温度計と冷却管、また冷却管の下に目盛り(ml)の付いた水の受器を設け、受器には上部に排気管を有している。
【0086】
フラスコに180gのプロピレングリコール、292gのアジピン酸を入れ、窒素ガスをゆっくり流しながら内温を80〜90℃に加温し、撹拌を開始する。1時間かけて温度を150〜160℃に上昇させる。
【0087】
この際頭頂温度が100℃を超えないように(水だけを系外に溜去させ、グリコールが溜出しないように)して、水を排出させ、更に温度を190〜200℃とし、水が58g溜出したところで、内温を110〜120℃に下げ、更に80℃に下げた。アセトンで析出させて、析出物を濾取し、PE−1の分子量をGPCにより測定した結果、重量平均分子量は600であった。
【0088】
(ポリエステルの重合例、PE−2〜4の重合)
溜出水量を変化させることによって、PE−1と同様の方法で、PE−2〜4を得た。重量平均分子量は以下の通りであった。以下括弧内の数値は重量平均分子量である。PE−2(980)、PE−3(1800)、PE−4(4,800)。
【0089】
(ポリエステルエーテルの重合例、PEE−1の重合)
1.5lのフラスコ以外はPE−1の重合と同様な装置を用い、フラスコに460gのポリエチレングリコール(PEG)(重量平均分子量250)、146gのアジピン酸を入れ、窒素ガスをゆっくり流しながら、同様にPE−1と同様に重合し、水が32g溜出したところで温度を下げ、同様に濾取してPEE−1を得た。PEE−1の分子量をGPCにより測定した結果、重量平均分子量は650であった。
【0090】
(ポリエステルエーテルの重合例、PEE−2〜3の重合)
溜出水量を変化させることによって、PEE−1と同様の方法で、PEE−2〜3を得た。但し、PEGの重量平均分子量を各々下記の通り変更した。以下括弧内の数値は、前半はPEG、後半はPEEの重量平均分子量である。PEE−2(400、1,000)、PEE−3(875、1,900)。
【0091】
(ポリ酢酸ビニルの重合例、PV−1の重合)
攪拌機、冷却管、窒素導入管、モノマー導入管を付した三つ口フラスコを用意し、50gの酢酸ビニルモノマーを200mlの四つ口フラスコに入れ、窒素ガスを導入しながら脱水テトラヒドロフラン100mlを加えて混合溶解した後、窒素を5分更に導入して容器内を窒素置換した。
【0092】
この溶液に2,2′−アゾビスイソブチロニトリル2mgを含有する脱水テトラヒドロフランをフラスコに導入し、50℃で3時間環流し重合した。微量のニトロベンゼンのテトラヒドロフラン溶液を重合禁止剤として加え重合を停止し、重合反応後テトラヒドロフラン溶液を水蒸気を吹き込みながら未反応の酢酸ビニルモノマーをテトラヒドロフラン共に溜去する。溜出液の温度がテトラヒドロフランの沸点65℃になったら追い出しが終了し、中身のポリ酢酸ビニルを取り出し、精製して、GPCで重量平均分子量を測定した結果、30,000であった。
【0093】
(ポリ酢酸ビニルの重合例、PV−2〜4の重合)
重合禁止剤のニトロベンゼンを入れるタイミングを変えた以外は、PV−1と同様に重合、精製を行い、重量平均分子量の異なったPV−2〜4を得た。括弧内は重量平均分子量である。PV−2(60,000)、PV−3(15,000)、PV−4(7,000)。
【0094】
本発明のセルロースエステルフィルム中には、紫外線吸収剤及び微粒子を含有しているか、また必要に応じて添加してもよい。また、従来のセルロースエステルフィルムに含有されている低分子可塑剤、あるいは劣化防止剤も含有してもよい。
【0095】
液晶画像表示装置に用いる光学用セルロースエステルフィルムには、特に偏光板用保護フィルムには、一般に紫外線吸収剤が含有されており、紫外線吸収剤は屋外で使用する際に液晶や偏光膜の劣化防止の役割をする。
【0096】
本発明においても紫外線吸収剤は好ましく用いられる。紫外線吸収剤は波長380nm以下の紫外線を吸収する性能に優れ、かつ波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。特に、波長380nmでの透過率が10%以下である必要があり、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下である。
【0097】
本発明において、使用し得る紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることが出来る。
【0098】
中でも光に対しする安定性を有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。例えばチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のチヌビン109(UV−1とする)、チヌビン171(UV−2とする)、チヌビン326(UV−3とする)、チヌビン327(UV−4とする)、チヌビン328(UV−5とする)等を好ましく用いることが出来るが、低分子の紫外線吸収剤は使用量によっては可塑剤同様に製膜中にウェブに析出したり、揮発する虞があるので、その添加量はセルロースエステルに対して0.13〜3質量%が好ましい。
【0099】
本発明においては、上記低分子の紫外線吸収剤より析出等が起こりにくい高分子紫外線吸収剤を、本発明に係るポリマーと共にセルロースエステルフィルムに含有させることがより好ましく、寸法安定性、保留性、透湿性等を損なうことなく、またフィルム中で相分離することもなく安定した状態で紫外線を十分にカットすることが出来る。
【0100】
本発明に有用な高分子紫外線吸収剤としては、特開平6−148430号公報に記載されている高分子紫外線吸収剤や、紫外線吸収剤モノマーを含むポリマーは制限なく使用出来る。
【0101】
市販品としての紫外線吸収剤モノマーとして、UVM−1の1−(2−ベンゾトリアゾール)−2−ヒドロキシ−5−(2−ビニルオキシカルボニルエチル)ベンゼン、大塚化学社製の反応型紫外線吸収剤RUVA−93の1−(2−ベンゾトリアゾール)−2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)ベンゼンまたはこの類似化合物がある。
【0102】
これらを単独又は共重合したポリマーまたはコポリマーも好ましく用いられるが、これらに限定されない。例えば、市販品の高分子紫外線吸収剤として、大塚化学(株)製のPUVA−30Mも好ましく用いられる。
【0103】
本発明において、高分子紫外線吸収剤の使用量は化合物の種類、使用条件などにより一様ではないが、セルロースエステルフィルムに対して0.5〜6.0質量%が好ましい。高分子紫外線吸収剤は2種以上用いてもよく、低分子の紫外線吸収剤を混合して使用してもよい。
【0104】
高分子紫外線吸収剤のドープへの添加方法は、アルコールや塩化メチレン、ジオキソラン、酢酸メチルなどの有機溶媒に高分子紫外線吸収剤を溶解してから添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。
【0105】
しかし、本発明においては、前述のように、高分子紫外線吸収剤を紫外線吸収剤液に溶解させてから、該紫外線吸収剤液とセルロースエステル溶液とを合流管で合流させてインラインミキサーで混合する方法をとるのがよい。
【0106】
また、本発明に有用な高分子紫外線吸収剤の重合例を下記に示す。
【0107】
(高分子紫外線吸収剤の重合例、PUV−1の重合)
UVM−1の57.6gと酢酸ビニルモノマーの43.1gを混合して200mlの前記PV−1と同様な三口フラスコに入れ、窒素導入下脱水テトラヒドロフラン100mlに溶解した後、窒素を5分間溶液に流してフラスコ内の空気を窒素置換した。
【0108】
この溶液に2,2′−アゾビスイソブチロニトリル2mgの脱水テトラヒドロフラン溶液を添加し、50℃で3時間加熱環流して重合した。重合終了後、反応溶媒を減圧溜去した後、アセトンで析出させた。
【0109】
析出物を濾取し、PUV−1を90g得た。PUV−1の分子量をGPCにより測定した結果、数平均分子量は19,500であった。またPUV−1の構造を、1H−NMRによりUVM−1と酢酸ビニルモノマーのユニット比は25:75(モル比)であることを確認した。
【0110】
(高分子紫外線吸収剤の重合例、PUV−2の重合)
RUVA−93の57.6gとメチルアクリレートモノマーの43.1gを混合して300mlの同様な三口フラスコに入れ、窒素導入下脱水テトラヒドロフラン200mlに溶解した後、窒素を5分間溶液に流してフラスコ内の空気を窒素置換した。
【0111】
この溶液に2,2′−アゾビスイソブチロニトリル37mgの脱水テトラヒドロフラン溶液を添加し、50℃で3時間加熱環流して重合した。
【0112】
重合終了後、反応溶媒を減圧溜去した後、アセトンで析出させた。析出物を濾取し、PUV−2を90g得た。PUV−2の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した結果、数平均分子量は16800であった。またPUV−2の構造を、1H−NMRによりRUVM−93とメチルアクリレートモノマーのユニット比は24:76(モル比)であることを確認した。
【0113】
本発明の構成(16)〜(29)は、高分子紫外線吸収剤を含有する紫外線吸収剤液を、別に調製したセルロースエステル溶液と混合してドープを調製する方法を用いたセルロースエステルフィルムの製造方法及びセルロースエステルフィルムに関するものである。
【0114】
紫外線吸収剤液を、実質的に流延の直前で合流させて混合しドープにするというのは、両者の液を別々の移送管で移送し移送管の合流点(合流管)で合流してから移送管の中で混合し直接流延ダイに移送するというものである。
【0115】
これに対して、従来の方法は、バッチ的なドープの調製方法で、前もって両者を混合してバッチでドープを調製しておいて、後で移送して流延するというものである。
【0116】
ドープ中またはセルロースエステルフィルム中での層分離を起こさせないためにこのような方法をとるものである。
【0117】
もちろん高分子紫外線吸収剤の種類分子量によってはこのような方法をとらなくとも均一に混合したドープまたはセルロースエステルフィルムをうることは出来る。
【0118】
高分子紫外線吸収剤を含む紫外線吸収剤液とセルロースエステル溶液を混合するには、両方の液の移送管を合流管で合流させ、インラインミキサーで混合することが高分子紫外線吸収剤をドープ中に均一にする手段として好ましい。
【0119】
インラインミキサーとしては、例えば、スタチックミキサーSWJ(東レ静止型管内混合器 Hi−Mixer)(東レエンジニアリング製)のようなインラインミキサーを使用するのが好ましい。インラインミキサーは直列に2基以上並べて設けてもよい。
【0120】
このように調製したドープで作製したセルロースエステルフィルムはフィルム内の紫外線透過率のばらつきが小さくすることが出来、紫外線透過率の測定点の最大値と最小値の差は1.0%未満が好ましく、0.5%未満がより好ましい。
【0121】
本発明において、セルロースエステルフィルム中に低分子可塑剤を含有してもよく、添加量としては、0.1〜4.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜3.0質量%である。
【0122】
本発明において、補助的に重合物とともに添加出来る低分子可塑剤としては、特に限定されないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤などを好ましく用いることが出来る。リン酸エステル系可塑剤として、前記のトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤として、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジベンジルフタレート、グリコレート系可塑剤として、ブチルフタリルブチルグリコレート、前記のエチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート等を好ましく用いることが出来る。これらの可塑剤は単独あるいは2種以上混合して用いることが出来る。
【0123】
また、本発明の光学用セルロースエステルフィルムには、劣化防止剤を含有していてもよい。例えば特開平3−199201号、同5−197073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載されているような、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕捉剤等を含有していてもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1,000ppmが更に好ましい。
【0124】
また、本発明の光学セルロースエステルフィルムには、フィルム中に微粒子を含有しているのが好ましく、微粒子としては、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を含有させることが好ましい。
【0125】
中でも二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを小さく出来るので好ましい。微粒子の2次粒子の平均粒径は0.01〜1.0μmの範囲で、その含有量はセルロースエステルに対して0.005〜0.3質量%が好ましい。二酸化ケイ素のような微粒子には有機物により表面処理されている場合が多いが、このようなものはフィルムのヘイズを低下出来るため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、ハロシラン類、アルコキシシラン類(特にメチル基を有するアルコキシシラン類)、シラザン、シロキサンなどがあげられる。
【0126】
微粒子の平均粒径が大きい方がマット効果は大きく、反対に平均粒径の小さい方は透明性に優れるため、好ましい微粒子の一次粒子の平均粒径は5〜50nmで、より好ましくは7〜16nmである。
【0127】
これらの微粒子はセルロースエステルフィルム中では、通常、凝集体として存在しセルロースエステルフィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を生成させることが好ましい。
【0128】
二酸化ケイ素の微粒子としてはアエロジル(株)製のAEROSIL(アエロジル) 200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812,OX50、TT600等を挙げることが出来、好ましくはAEROSIL(アエロジル) 200V、R972、R972V、R974、R202、R812である。
【0129】
これらの微粒子は2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することが出来る。この場合、平均粒径や材質の異なる微粒子、例えばAEROSIL(アエロジル) 200VとR972Vを質量比で0.1:99.9〜99.9〜0.1の範囲で使用出来る。
【0130】
本発明において、微粒子はドープ調製時、セルロースエステル、他の添加剤及び有機溶媒とともに含有させて分散してもよいが、セルロースエステル溶液とは、別に微粒子分散液のような十分に分散させた状態でドープを調製するのが好ましい。
【0131】
微粒子を分散させるために、前もって有機溶媒にひたしてから高剪断力を有する分散機で細分散させておくのが好ましい。その後により多量の有機溶媒に分散して、セルロースエステル溶液と合流させ、インラインミキサーで混合してドープとすることが好ましい。この場合、微粒子分散液に紫外線吸収剤を加え紫外線吸収剤液としてもよい。
【0132】
上記のように溶解したセルロースエステル溶液、紫外線吸収剤液またはドープは濾過することによって異物、特に液晶画像表示装置において、画像と認識しまごう異物は除去しなければならい。
【0133】
光学用セルロースエステルフィルムの品質は、この濾過によって決まるといってよい。濾過に使用する濾材は絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さすぎると濾過材の目詰まりが発生しやすく、濾材の交換を頻繁に行わなければならず、生産性を低下させるという問題点ある。
【0134】
このため、本発明のドープの濾材は、絶対濾過精度0.008mm以下のものが好ましく、0.001〜0.008mmの範囲がより好ましく、0.003〜0.006mmの範囲の濾材が更に好ましい。
【0135】
濾材の材質には特に制限はなく、通常の濾材を使用することが出来るが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック繊維製の濾材やステンレス繊維等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。本発明のドープの濾過は通常の方法で行うことが出来るが、溶媒の常圧での沸点以上でかつ溶媒が沸騰しない範囲の温度で加圧下加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の差圧(以下、濾圧とすることがある)の上昇が小さく、好ましい。好ましい温度範囲は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃の範囲であることが更に好ましい。濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
【0136】
次に、ドープを金属支持体上に流延する工程、金属支持体上での乾燥工程及びウェブを金属支持体から剥離する剥離工程について述べる。金属支持体は無限に移行する無端の金属ベルトあるいは回転する金属ドラムであり、その表面は鏡面となっている。
【0137】
流延工程は、上記の如き濾過したドープを加圧型定量ギヤポンプを通して加圧ダイに送液し、流延位置において、金属支持体上に加圧ダイからドープを流延する工程である。口金部分のスリット形状が調整出来、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。
【0138】
加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があるが、何れも好ましく用いられる。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。
【0139】
膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、ダイの口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力、金属支持体の速度等をコントロールするのがよい。
【0140】
金属支持体上での乾燥工程は、ウェブ(金属支持体上に流延した以降のドープ膜の呼び方をウェブとする)を支持体上で加熱し溶媒を蒸発させる工程である。溶媒を蒸発させるには、ウェブ側及び支持体裏側から加熱風を吹かせる方法、支持体の裏面から加熱液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等がある。
【0141】
またそれらを組み合わせる方法も好ましい。また、ウェブの膜厚が薄ければ乾燥が早い。金属支持体の温度は全体が同じでも、位置によって異なっていてもよい。
【0142】
本発明に適した金属支持体上での乾燥方法は、例えば、金属支持体温度を0〜40℃、好ましくは5〜30℃として流延するのが好ましい。ウェブに当てる乾燥風は30〜45℃程度が好ましいが、これに限定されない。
【0143】
剥離工程は、金属支持体上で有機溶媒を蒸発させて、金属支持体が一周する前にウェブを剥離する工程である。その後ウェブを乾燥工程に送り仕上げる。金属支持体からウェブを剥離する位置のことを剥離点といい、また剥離を助けるロールを剥離ロールという。
【0144】
ウェブの厚さにもよるが、剥離点でのウェブの残留溶媒量(下記式)があまり大き過ぎると剥離し難かったり、逆に支持体上で充分に乾燥させてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりすることがある。
【0145】
通常、残留溶媒量が20〜150質量%でウェブの剥離が行われる。本発明において好ましい剥離残留溶媒量は20〜120質量%で、特に好ましくは30〜115質量%である。製膜速度を上げる方法(残留溶媒量が出来るだけ多いうちに剥離するため製膜速度を上げることが出来る)として、残留溶媒量が多くとも剥離出来るゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。
【0146】
その方法としては、ドープ中にセルロースエステルに対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、支持体の温度を低めてゲル化する方法等がある。また、ドープ中に金属塩を加える方法もある。
【0147】
支持体上でゲル化させ膜を強くすることによって、剥離を早め製膜速度を上げることが出来る。残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損なったり、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易く、経済速度と品質との兼ね合いで残留溶媒量を決められる。
【0148】
本発明で用いる残留溶媒量は下記の式で表せる。
【0149】
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMのものを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
【0150】
また、セルロースエステルフィルムの乾燥工程においては、支持体より剥離したフィルムを更に乾燥し、残留溶媒量を2.0質量%以下にすることが好ましい。より好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは、0.5質量%以下である。
【0151】
ウェブ乾燥工程ではロールを千鳥状に配置したロール乾燥装置、ウェブの両端をクリップで把持しながら、幅保持あるいは若干幅方向に延伸するテンター乾燥装置でウェブを搬送しながら乾燥する方式が採られる。本発明においては、テンター乾燥装置を用いることは、支持体より剥離した後任意の過程で、また任意の残留溶媒量の多いところで、幅保持または延伸することによって寸法安定性を良好ならしめるため特に好ましい。
【0152】
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行う。簡便さの点で熱風で行うのが好ましい。乾燥温度は40〜150℃の範囲で段階的に高くしていくことが好ましく、50〜140℃の範囲で行うことが寸法安定性を良くするため更に好ましい。
【0153】
本発明のセルロースエステルフィルムを巻き取る方法は、一般に使用されている巻き取り機で行えばよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、これらを使用することが出来る。
【0154】
本発明の光学用セルロースエステルフィルムの膜厚は薄い方が、液晶ディスプレイの薄膜化が容易になるため好ましいが、薄すぎると、伸縮率、透湿度、透過性、ヘイズや、引き裂き強度などが劣化する。これらを両立する光学用セルロースエステルフィルムの膜厚は10〜80μmが好ましく、10〜60μmが更に好ましく、20〜50μmが特に好ましい。
【0155】
本発明の光学用セルロースエステルフィルムは、アシル基置換度が比較的低いにも係わらず、重合物を含有することによって高温高湿雰囲気下に曝しても伸縮性の極めて小さいのが特徴である。
【0156】
本発明における高温高湿状態における伸縮率について詳しく説明する。
【0157】
本発明における伸縮率は、23±3℃、55±3%RHの常温常湿の状態に12時間放置したフィルムを、80±3℃、90±3%RHという高温高湿の状態に50時間曝し、再び23±3℃、55±3%RHという常温常湿の状態に12時間放置した時の、フィルムの不可逆的な寸法変化(伸びあるいは縮み)をいう。
【0158】
23±3℃、55±3%RHの常温常湿の雰囲気に12時間放置したフィルムの流延方向の寸法をLmd(mm)、幅方向の寸法をLtd(mm)とし、80±3℃、90±3%RHの高温高湿雰囲気下で50時間放置後、該常温常湿の雰囲気に戻し12時間放置した時の該寸法をそれぞれHmd(mm)およびHtd(mm)とした時、伸縮率(SmdおよびStd)を下記式で表すことが出来る。
【0159】
Smd(%)={(Hmd−Lmd)/Lmd}×100
Std(%)={(Htd−Ltd)/Ltd}×100
80±3℃、90±3%RHという高温高湿の雰囲気に50時間曝した後の伸縮率が±0.3%以内であると、これを光学用セルロースエステルフィルムとして液晶表示装置に用いると温度湿度に対して安定化し、例えば偏光板用保護フィルムとして本発明の光学用セルロースエステルフィルムを用いた偏光板の耐久性が向上することが明らかとなった。好ましくは伸縮率±0.1%以内、さらに好ましくは±0.05%以内である。
【0160】
本発明の光学用セルロースエステルフィルムは、本発明に係わる重合物を含有することによって、白濁や相分離もなく、高温高湿雰囲気下に曝された伸縮率が向上することが出来る。
【0161】
本発明に係わるアシル基の低置換度が2.50〜2.78のセルロースエステルフィルムは、面内方向における下記式のレターデーション(R0)を低く抑えることが出来る。
【0162】
0=(nx−ny)×d
ここで、nxとnyはそれぞれフィルム面内遅相軸方向とフィルム面内進相軸方向の屈折率、d(nm)は乾燥後のフィルムの膜厚である。
【0163】
本発明の光学用セルロースエステルフィルムを液晶表示装置の偏光板用保護フィルムとして用いる場合、R0は10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましく、1nm以下であることが更に好ましい。
【0164】
また、本発明のセルロースエステルフィルムの流延方向と遅相軸とのなす角度をθとした場合、θ(単位 °)と面内方向のレターデーションR0(nm)が下記の関係を満たすことが好ましい。
【0165】
P≦1−sin2(2πθ/180)×sin2(πR0/λ)
ここで、Pは0.9990以上で限りなく1に近い範囲にあり、λ(nm)はθとR0を求めるための三次元屈折率測定の際の光の波長、πは円周率である。
【0166】
上式において、Pが0.9990である時にθとR0が上式を満たすことが好ましく、更に好ましくはPが0.9995である時にθとR0が上式を満たすことが好ましく、更に好ましくはPが0.9999である時にθとR0が上式を満たすことが好ましく、より好ましくはPが0.99995である時にθとR0が上式を満たすことが好ましい。
【0167】
λは380〜650nmの範囲にあり、好ましくはλが590nmの時に上式を満たすことが好ましく、更に好ましくはλが400nmの時に上式を満たすことである。
【0168】
P値は1に近いほど良く、1より値が小さくなる、特に0.9990より小さくなるに従って、液晶画像表示装置の偏光板用保護フィルムとした場合に光漏れが大きくなることを意味している。
【0169】
また、P(光漏れ度)の値がセルロースエステルフィルム面内でのばらつきが小さいことが光学用フィルムとして重要であり、特には幅手方向のPの最大値(Pmax)と最小値(Pmin)の差ΔPが小さいほど光漏れがなく均一で、液晶表示装置としての品質に優れ、また均一であればあるほど液晶表示装置に使用される割合が多くなるため歩留まりが高く生産性の向上にもつながる。
【0170】
更に、一般にセルロースエステルフィルムを薄膜化し、液晶表示装置用のセルロースエステルフィルムとして使用する場合、通常膜厚の減少とともに厚み方向のレターデーション値Rt(nm)が小さい値となるため、液晶画像表示装置のコントラストや視野角特性に影響が出易い。この観点から、本発明のアシル基の置換度が2.50〜2.78のセルロースエステルと重合物を含有するセルロースエステルフィルムは下記式のRtを厚さの割により大きくすることが出来る。本発明における光学セルロースエステルフィルムのRtは20〜90nmが好ましく、より好ましくは20〜80nm、更に35〜80nmが好ましい。
【0171】
t=〔{(nx+ny)/2}−nz〕×d
ここで、nx、ny、nzはそれぞれフィルムの遅相軸方向、フィルム面内進相軸方向、厚さ方向の屈折率であり、dはフィルムの膜厚(nm)である。
【0172】
本発明の光学用セルロースエステルフィルムは、該フィルムが偏光板用保護フィルムの場合、鹸化処理を行った後も、光透過率(可視光の)90%以上であることが好ましく、より好ましくは92%以上、更に93%以上であることが好ましく、またヘイズは0.5%未満であることが好ましく、より好ましくは0.3%未満、更に0.1%未満であることが好ましい。もちろん0%であればなお良い。
【0173】
本発明の光学用セルロースエステルフィルムは光学等方性に優れるため、液晶表示用部材に用いられる。液晶表示用部材とは液晶表示装置に使用される部材のことで、例えば、偏光板、偏光板用保護フィルム、位相差板、反射板、光学補償フィルム、視野角向上フィルム、防眩フィルム、無反射フィルム、帯電防止フィルム等があげられる。上記記載の中でも、偏光板または偏光板用保護フィルム用に好ましく用いられる。
【0174】
本発明の偏光板は、従来公知の方法により作製することが出来る。一例を挙げると、セルロースエステルフィルムを40℃の2.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液で60秒間表面鹸化処理を行い、3分間水洗して乾燥させて表面鹸化した偏光板用保護フィルムを得る。別に120μmの厚さのポリビニルアルコールをヨウ素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で4倍に縦方向に延伸して偏光子を得る。この偏光子の片面または両面に上記表面鹸化処理したセルロースエステルフィルムを完全鹸化型のポリビニルアルコール5質量%水溶液を粘着剤として貼り合わせ偏光板を作製することが出来る。
【0175】
本発明の偏光板は本発明の光学用セルロースエステルフィルムを用いることにより薄手フィルムでありながら、耐久性に優れている。本発明の偏光板を液晶表示装置に組み込んだ実際の系において、高温高湿の過酷な条件、例えば80℃で90%RHという条件においても剥離したり、収縮したり、平面性が劣化したり、着色したりしないというような耐久性を有する優れた偏光板を得ることが出来るのである。
【実施例】
【0176】
〔評価方法〕
〈伸縮率〉
セルロースエステルフィルムの流延方向と幅方向について、各々30mm幅×120mm長さの試験片として3枚採取する。試験片の長さ方向の両端に6mmφの穴をパンチで2個ずつ100mm間隔であける。これを23℃、55%RHの室内で12時間放置して調湿する。自動ピンケージ(新東科学(株)製)を用いて、流延方向と幅方向についてパンチ間隔の流延方向の原寸Lmdと幅方向の原寸Ltdを最小目盛1/1000mmまで測定する。次に各試験片を80℃、90%RHの恒温恒湿器に吊して50時間放置した後、23℃、55%RHの室内で12時間放置して調湿した試料について自動ピンケージでパンチ間隔の流延方向の寸法Hmd及び幅方向の寸法Htdを測定する。そして、次式により流延方向及び幅方向の伸縮率をSmd及びStdを各々3枚の試料の平均で計算する。なお、伸びを+、収縮を−とする。
【0177】
Smd(%)={(Hmd−Lmd)/Lmd}×100
Std(%)={(Htd−Ltd)/Ltd}×100
〈レターデーション値及び光漏れ度の評価〉
《面内レターデーションと厚み方向のレターデーション》
自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下、波長590nmにおける3次元屈折率測定を行い、屈折率nx、ny、nz(それぞれ、フィルム面内の遅相軸方向、フィルム面内進相軸方向、厚さ方向の各屈折率)を求めた。下記式に従って、フィルム面に垂直方向の入射光に対する面内レターデーション値(R0値)及び厚み方向のレターデーション値(Rt値)を算出した。
【0178】
0=(nx−ny)×d
t=〔{(nx+ny)/2}−nz〕×d
ここで、nxはフィルムの面内の遅相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内の進相軸方向の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dはフィルムの厚み(nm)をそれぞれ表す。
【0179】
《Pの最大値と最小値の差ΔPの評価》
一方面内レターデーションと同様の環境および条件で、配向角θを測定した。なお、配向角はフィルムの流延方向と遅相軸方向とのなす角度をあらわしており、面内レターデーションおよび配向角の結果から、下記式により光漏れ度P(光漏れ度)を算出する。
【0180】
P≦1−sin2(2πθ/180)×sin2(πR0/λ)
波長590nmでの試料幅手方向5箇所の測定からそれぞれのPを算出し、その最大値(Pmax)と最小値(Pmin)を求め、その最大値と最小値の差ΔPを算出する。
【0181】
〈ヘイズ値の測定〉
フィルム試料1枚をASTM−D1003−52に従って、東京電色工業(株)社製T−2600DAを使用して測定し、以下のようにヘイズをランクわけし評価する。
【0182】
A:ヘイズ0.1%未満
B:ヘイズ0.1%以上0.5%未満
C:ヘイズ0.5%以上1%未満
D:ヘイズ1%以上。
【0183】
〈耐久性の評価〉
80℃、90%RHの高温高湿条件下で1000時間放置した偏光板と、高温高湿に放置しなかった偏光板を用いた3組づつ6組の反射型液晶表示装置を、電源OFF時及び電源ONにして画面部の着色の程度を目視で評価し、以下のようにランク分けして評価する。
【0184】
A:着色は見られない
B:極わずか端部に着色が見られる
C:端部に若干、画面部にも僅かな着色が見られる
D:端部は強く、画面部も着色している
E:全体が着色している。
〈紫外線透過率の測定〉
Spectrophotometer U−3200(日立製作所製)を用いて製膜したフィルム試料の分光スペクトルを測定し、380nmにおける透過率をもとめた。巻き取ったセルロースエステルフィルムを巻きほぐし、長さ方向10m間隔で1mの長さで10個の試料をとり、1m×幅(m)内の任意の10点について紫外線透過率を測定し、100点の紫外線透過率の最大値と最小値の差で下記のように評価した。
【0185】
A:差が0.5%未満
B:差が0.5%以上1.0%未満
C:差が1.0%以上3.0%未満
D:差が3.0%以上5.0%未満
E:差が5.0%以上。
【0186】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0187】
以下の実施例1〜3は請求項1〜15の発明に係わるものである。
【0188】
実施例1
〔ドープの調製〕
1.0質量部のアエロジルR972と5質量部のエタノールを容器内で混合し、10MPaの剪断力を有するマントンゴーリン分散機で細分散して微粒子原液とし、耐圧密閉容器に282質量部の塩化メチレン及び紫外線吸収剤(表1に示した種類及びセルロースエステルに対する量の10倍量)を含む溶液内に微粒子原液を注入し、攪拌して紫外線吸収剤液とした。別の耐圧密閉容器に下記のセルロースエステル溶液組成物を導入し、高温溶解方法でセルロースエステル溶液を調製した。耐圧密閉容器の内容物を80℃に加温して耐圧密閉容器内圧力を0.2MPaとし、攪拌しながら溶解させ、更に上記紫外線吸収剤液を質量比にして0.1を質量比として1のセルロースエステル溶液に注ぎ、十分攪拌してから一晩そのまま放置した。その後溶液を安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、ドープを調製した。
【0189】
(セルロースエステル溶液組成物−1)
セルロースアセテート(表1に示したアセチル基置換度、数平均分子量
120,000〜140,000) 160質量部
重合物(表1に示した種類及びセルロースエステルに対する量)
低分子可塑剤(表1に示した種類及びセルロースエステルに対する量)
塩化メチレン 742質量部
エタノール 64質量部
〔光学用セルロースエステルフィルムの作製〕
前記ドープを用いて、ドープ温度35℃、支持体温度35℃に調整して、ダイからステンレス製支持体ベルト上に流延した。支持体上での乾燥風温度は40℃とした。その後支持体の温度を20℃として、剥離残留溶媒量80質量%でウェブを支持体から剥離した。次いで、テンターを用いてウェブの両端をクリップで把持しながら100℃で5分乾燥し、クリップを離し、更に130℃のオーブン中をロール搬送させながら、ウェブ中の残留溶媒量が1質量%以下となるまで乾燥させ、ロール状に巻き取った。ドープから作製した光学用セルロースエステルフィルム試料とし、乾燥後の膜厚を40μmになるように各々作製し、表1のように試料No.1〜24とした。
【0190】
実施例2
〔ドープの調製〕
ドープ調製において、紫外線吸収剤液として、塩化メチレンを酢酸メチルに、紫外線吸収剤を実施例2で表1に示した種類と量に、また、セルロースエステル溶液として、セルロースエステル溶液組成物−1を下記セルロースエステル溶液組成物−2に変更した以外は、実施例1と同様にドープを調製した。
【0191】
(セルロースエステル溶液組成物−2)
セルロースアセテートブチレート(アセチル基置換度1.9、
ブチリル基置換度0.77、数平均分子量150,000)
160質量部
重合物(表1に示した種類及びセルロースエステルに対する量)
低分子可塑剤(表1に示した種類及びセルロースエステルに対する量)
酢酸メチル 742質量部
エタノール 64質量部
〔光学用セルロースエステルフィルムの作製〕
上記ドープを用い実施例1と同様なセルロースエステルフィルムの製法で光学用セルロースエステルフィルムを作製し表1のように試料No.25〜32とした。
【0192】
実施例3
〔ドープの調製〕
紫外線吸収剤液として、塩化メチレンを酢酸メチルに、紫外線吸収剤を実施例3で表1に示した種類と量に変更した以外は、実施例1と同様に紫外線吸収剤液を調製した。また、セルロースエステル溶液を冷却溶解方法で下記のセルロースエステル溶液組成物−3を用い調製した。
【0193】
(セルロースエステル溶液組成物−3)
セルロースアセテート(表1に示したアセチル基置換度、数平均分子量
120,000〜140,000) 160質量部
重合物(表1に示した種類及びセルロースエステルに対する量)
低分子可塑剤(表1に示した種類及びセルロースエステルに対する量)
酢酸メチル 742質量部
エタノール 64質量部
上記組成を混合して混合物とし、その混合物をジャケット付の耐圧密閉容器に入れ、混合物をゆっくり攪拌しながら外側のジャケットに冷媒を導入した。これにより内側容器内の混合物を−70℃まで冷却した。混合物が均一に冷却されるまで30分冷却した。密閉容器の外側のジャケット内の冷媒を排出し、代わりに温水をジャケットに導入した。続いて内容物を攪拌し、40分かけて100℃まで上げた。容器内は2.5気圧となった。攪拌しながら50℃まで温度を下げ常圧に戻し、この操作をもう一度繰り返しセルロースエステル溶液を得た。上記紫外線吸収剤液を質量比にして0.1を質量比として1の該セルロースエステル溶液に注ぎ、十分に攪拌し、一晩そのまま放置しドープを得た。その後溶液を安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、ドープを調製した。
【0194】
〔光学用セルロースエステルフィルムの作製〕
上記ドープを用い実施例1と同様なセルロースエステルフィルムの製法で光学用セルロースエステルフィルムを作製し、表1のように試料No.33〜40とした。
【0195】
以下の実施例4〜6は請求項16〜29発明に係わるものである。
【0196】
実施例4
〔紫外線吸収剤液とセルロースエステル溶液の調製〕
紫外線吸収剤液として、紫外線吸収剤を実施例4で表1に示した種類と量に、また、セルロースエステル溶液として、セルロースエステル溶液組成物−1を下記セルロースエステル溶液組成物−4に変更した以外は、実施例1と同様に紫外線吸収剤液とセルロースエステル溶液を調製した。
【0197】
(セルロースエステル溶液組成物−4)
セルローストリアセテート(数平均分子量120,000〜140,000)
(表1に示したアセチル基置換度) 160質量部
重合物(表1に示した種類及びセルロースエステルに対する量)
塩化メチレン 742質量部
エタノール 64質量部
〔ドープの調製と光学用セルロースエステルフィルムの作製〕
30℃の上記のセルロースエステル溶液質量比1に対して30℃の上記の紫外線吸収剤液を質量比0.1としてそれぞれの移送管から合流管で合流させ、続いて2連の東レエンジニアリング(株)製のHi−Mixerインラインミキサーで均一に混合してドープを得た。ドープをダイから流延部のステンレスベルトの上に流延し、ステンレスベルトのウェブ側の空気面側からウェブの移行方向に45°の角度で50℃の風を当てて1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、25℃の冷水を接触させて冷却した後、残留溶媒量30質量%で剥離した。剥離後、テンターに導入して90〜120℃で幅方向に0.5%延伸しながら乾燥し、続いてロール乾燥機で110〜130℃で乾燥し、最後に25℃に冷却して巻き取り、乾燥膜厚40μmの光学用セルローストリアセテートフィルムを得、表1のように試料No.41〜43とした。
【0198】
実施例5
〔紫外線吸収剤液とセルロースエステル溶液の調製〕
紫外線吸収剤液として、紫外線吸収剤を実施例5で表1に示した種類と量に、また、セルロースエステル溶液として、セルロースエステル溶液組成物−1を下記セルロースエステル溶液組成物−5に変更した以外は、実施例4と同様に紫外線吸収剤液とセルロースエステル溶液を調製した。
【0199】
(セルロースエステル溶液組成物−5)
セルロースアセテートブチレート(アセチル基置換度1.9、
ブチリル基置換度0.77、数平均分子量150,000)
160質量部
重合物(表1に示した種類及びセルロースエステルに対する量)
酢酸メチル 742質量部
エタノール 64質量部
〔ドープの調製と光学用セルロースエステルフィルムの作製〕
実施例4の紫外線吸収剤液とセルロースエステル溶液を、上記実施例5の紫外線吸収剤液とセルロースエステル溶液に変更した以外は実施例4と同様にドープを調製し、また光学用セルロースエステルフィルムを作製し、表1のように試料No.44〜46とした。
【0200】
実施例6
〔紫外線吸収剤とセルロースエステル溶液の調製〕
紫外線吸収剤液を実施例6で表1に示した種類と量に変更した以外は実施例4と同様に紫外線吸収剤液を調製した。また、セルロースエステル溶液組成物−1を下記セルロースエステル溶液組成物−6に、また高温溶解方法を実施例3の冷却溶解方法に変更した以外は実施例4と同様にセルロースエステル溶液を調製した。
【0201】
(セルロースエステル溶液組成物−6)
セルロースアセテート(表1に示したアセチル基置換度、数平均分子量
120,000〜140,000) 160質量部
重合物(表1に示した種類及びセルロースエステルに対する量)
低分子可塑剤(表1に示した種類及びセルロースエステルに対する量)
酢酸メチル 742質量部
エタノール 64質量部
〔ドープの調製と光学用セルロースエステルフィルムの作製〕
実施例4の紫外線吸収剤液とセルロースエステル溶液を、上記実施例6の紫外線吸収剤液とセルロースエステル溶液に変更した以外は実施例4と同様にドープを調製し、また光学用セルロースエステルフィルムを作製し、試料No.47〜49とした。
【0202】
【表1】

【0203】
表1において、CAはセルロースアセテート、CABはセルロースアセテートブチレート、EPEGはエチルフタリルエチルグリコレート、またTPPはトリフェニルフタレートである。
【0204】
以上の実施例1〜6の光学用セルロースエステルフィルムついて、伸縮率、レターデーション値、ΔP、ヘイズ、紫外線透過率(最大値−最小値)について評価し、その結果を実施例7とともに表2に示した。
【0205】
実施例7
本実施例7は請求項30の発明に係わるものである。
【0206】
実施例1〜6で得られた光学用セルロースエステルフィルムをそれぞれ、60℃の2mol/l濃度の水酸化ナトリウム水溶液中に2分間浸漬し水洗した後、100℃で10分間乾燥して得たアルカリ鹸化処理した偏光板用保護フィルムを作製した。
【0207】
一方別に、厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを沃素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で4倍に延伸して偏光子(偏光膜)を作製した。
【0208】
上記偏光子の両面に前記偏光板用保護フィルムをそれぞれ完全鹸化型ポリビニルアルコール5%水溶液を接着剤として用いて各々貼り合わせ偏光板を作製した。なお、光学用セルロースエステルフィルムは、巻き取ったフィルムロールの巾方向の両端部及び中央部からそれぞれ所定の大きさに切り出し、それぞれ1種について2枚づつ使用して3組の偏光板を作製した。
【0209】
以上の様にして得た偏光板をそれぞれ1種について3組づつ二つに分け、一方を80℃、90%RHの高温高湿状態に1000時間放置後、23℃、55%RHの常温常湿状態に24時間放置した。残りの3組の偏光板23℃、55%RHの室温常湿状態に24時間放置した。それぞれの組の偏光板を反射型液晶表示装置に次のように組み込んだ。構成は、前面側から、偏光板/ガラス基板/ITO透明電極/配向膜/TN型液晶/配向膜/金属電極兼反射膜/ガラス基板とした。
【0210】
以上の実施例1〜7の光学用セルロースエステルフィルムついて、伸縮率、レターデーション値、ΔP、ヘイズ、紫外線透過率(最大値−最小値)について評価し、また液晶表示装置の評価について、その結果を表2に示した。
【0211】
【表2】

【0212】
(結果)
表2からわかるように、アシル基置換度が比較的低いセルロースエステル及び重合物を含有した本発明の構成により、フィルムの厚さが薄手であっても、伸縮率がフィルムの流延方向及び幅手方向いずれも小さく、透明性に優れ、厚さ方向のレターデーション値が大きく、フィルムの流延方向と遅延軸とのなす角度のばらつきがほとんどないセルロースエステルフィルムを得ることが出来た。またセルロースエステル及び重合物を含有したセルロースエステル溶液と高分子紫外線吸収剤を含有した溶液を合流した後、インラインミキサーにより混合することにより、紫外線透過率のばらつきの小さいセルロースエステルフィルムを得ることが出来た。更に本発明のセルロースエステルフィルムを用いた偏光板は薄手のフィルムであっても高温高湿の条件下においても耐久性に優れていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースエステルのアセチル基の置換度が2.50〜2.78であるセルロースエステルフィルムであって、23±3℃、55±3%RHの常温常湿雰囲気下に12時間放置したフィルムの流延方向の寸法をLmd(mm)、フィルムの幅方向の寸法をLtd(mm)とし、80±3℃、90±3%RHの高温高湿雰囲気下で50時間放置した後に該常温常湿雰囲気下に12時間放置した時のフィルムの流延方向の寸法をHmd(mm)、フィルムの幅方向の寸法をHtdとして、下式に示す伸縮率Smd及びStdが何れも±0.3%の範囲にあることを特徴とするセルロースエステルフィルムからなる偏光板保護フィルム。
Smd(%)={(Hmd−Lmd)/Lmd}×100
Std(%)={(Htd−Ltd)/Ltd}×100
【請求項2】
前記セルロースエステルフィルムが、重量平均分子量400〜5,000を有するポリエステル及びポリエステルエーテルから選ばれる重合物を含有することを特徴とする請求項1に記載のセルロースエステルフィルムからなる偏光板保護フィルム。

【公開番号】特開2007−328371(P2007−328371A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−222204(P2007−222204)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【分割の表示】特願2000−317856(P2000−317856)の分割
【原出願日】平成12年10月18日(2000.10.18)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】