説明

偏光膜生成用コーティング液及び偏光膜

【課題】透過率を高く維持できるとともに透過率の膜内均一性が高い偏光膜生成用コーティング液及びそのコーティング液から生成される偏光膜を提供する。
【解決手段】波長400nm以上の可視光領域で光吸収特性を有するリオトロピック液晶化合物(A)と、波長400nm以上の可視光領域で光吸収特性を有しないか又は光吸収特性が小さいリオトロピック液晶化合物(B)と、前記リオトロピック液晶化合物(A)及びリオトロピック液晶化合物(B)を溶解する溶媒とを含む偏光膜生成用コーティング液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過率を高く維持できるとともに透過率の膜内均一性が高い偏光膜生成用コーティング液及びそのコーティング液から生成される偏光膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、特開2000−061755号公報に記載されているように、リオトロピック液晶化合物と水を含む水溶液(コーティング液)を基材上に塗布し、乾燥及び配向させることにより、偏光膜を形成する方法が知られている。
【0003】
このように、リオトロピック液晶化合物を含む水溶液から作成した偏光膜は、一般に汎用されているポリビニルアルコールをヨウ素で染色した偏光膜に比べて、その膜厚を格段に薄くすることができ、将来的に期待されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−061755号公報(第2ページ〜第15ページ、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記した従来におけるリオトロピック液晶化合物から生成される偏光膜は、その高い吸光度に起因して単位膜厚当たりの吸光度(光学密度)が高過ぎることとなり、入射光強度に対して透過光強度が極端に低下してしまう。この傾向は偏光膜が厚ければ厚い程大きくなるから、一定以上の透過光強度を得るためには、例えば、乾燥後における膜厚を0.5μm以下になるように薄く塗布する必要がある。また、膜厚が薄いことから、僅かな塗布ムラ(膜厚のバラツキ)によって、偏光膜の透過率の膜内均一性が損なわれるという問題がある。
【0006】
かかる状況下、光学密度を低くして適度な膜厚で塗布することができる偏光膜生成用コーティング液、及び、高い透過率を維持しつつ透過率の膜内均一性が良好な偏光膜の出現が望まれている。
【0007】
本発明は前記従来の問題点を解消するためになされたものであり、透過率を高く維持できるとともに透過率の膜内均一性が高い偏光膜生成用コーティング液及びそのコーティング液から生成される偏光膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明に係る偏光膜生成用コーティング液は、波長400nm以上の可視光領域で光吸収特性を有するリオトロピック液晶化合物(A)と、波長400nm以上の可視光領域で光吸収特性を有しないか又は光吸収特性が小さいリオトロピック液晶化合物(B)と、前記リオトロピック液晶化合物(A)及びリオトロピック液晶化合物(B)を溶解する溶媒とを含むことを特徴とする。
尚、本明細書において、「可視光領域」とは波長380nm〜780nmの領域をいう。
【0009】
好ましい実施形態においては、前記偏光膜生成用コーティング液が、1重量%〜50重量%の全固形分濃度の少なくとも一部で液晶性を示すことが望ましい。
【0010】
好ましい実施形態においては、前記リオトロピック液晶化合物(A)と前記リオトロピック液晶化合物(B)との重量比(A:B)が、90:10〜50:50であることが望ましい。
【0011】
好ましい実施形態においては、前記リオトロピック液晶化合物(A)が、アゾ系化合物、アントラキノン系化合物、ペリレン系化合物、キノフタロン系化合物、ナフトキノン系化合物又はメロシアニン系化合物であることが望ましい。
【0012】
好ましい実施形態においては、前記リオトロピック液晶化合物(B)が、芳香族メラミン系化合物、ベンズイミダゾール系化合物、フェナントロキノキサリン系化合物、アセナフトキノキサリン系化合物、長鎖アルキル系化合物又はセルロース系化合物であることが望ましい。
【0013】
また、本発明に係る偏光膜は、上記いずれかの偏光膜生成用コーティング液を基材上に塗布し、乾燥して得られることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
透過率を高く維持できるとともに透過率の膜内均一性が高い偏光膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[本発明の概要]
本発明に係る偏光膜生成用コーティング液は、
(1)波長400nm以上の可視光領域で光吸収特性を有するリオトロピック液晶化合物(A)と、
(2)波長400nm以上の可視光領域で光吸収特性を有しないか又は光吸収特性が小さいリオトロピック液晶化合物(B)と、
(3)前記リオトロピック液晶化合物(A)及びリオトロピック液晶化合物(B)を溶解する溶媒とを含むことを特徴とする。
【0016】
このような偏光膜生成用コーティング液では、波長400nm以上の可視光領域で光吸収特性を有するリオトロピック液晶化合物(A)と、波長400nm以上の可視光領域で光吸収特性を有しないか又は光吸収特性が小さいリオトロピック液晶化合物(B)とを混合することにより、単位膜厚当たりのリオトロピック液晶化合物(A)の含有量が減少しても、リオトロピック液晶化合物(B)がその減少分を補って配向することで、安定な液晶相を形成できる。その結果、膜全体としての配向構造が維持されるため、二色比を低下させずに、単位膜厚当たりの吸光度(光学密度)を低下させて、透過率の膜内均一性を良好に維持可能な偏光膜を生成することができる。
【0017】
[リオトロピック液晶化合物]
本発明において、リオトロピック液晶化合物とは、温度や溶液濃度を変化させることにより、等方相−液晶相の相転移を起こす化合物をいう。液晶相については特に制限はなく、例えば、ネマチック液晶相、スメクチック液晶相、コレステリック液晶相等が挙げられる。これらの液晶相は、偏光顕微鏡で観察される液晶相の光学模様によって識別することができる。
【0018】
[リオトロピック液晶化合物(A)]
本発明に係るリオトロピック液晶化合物(A)は、一般に波長が350nm〜800nmの範囲にある可視光領域の内、波長400nm以上の可視光領域で光吸収特性を有する。かかるリオトロピック液晶化合物(A)は、波長400nm〜700nmの範囲、好ましくは波長460nm〜660nm、更に好ましくは520nm〜620nmの可視光領域で最大吸収を示すことが望ましい。更に、リオトロピック液晶化合物(A)は、分子の長軸方向の遷移モーメントが短軸方向の遷移モーメントに比べて大きいか、又は、分子の短軸方向の遷移モーメントが長軸方向の遷移モーメントに比べて大きいことが望ましく、換言すれば、吸収二色性を示すものである。このような吸収二色性を示すリオトロピック液晶化合物(A)は、配向させることにより偏光膜を生成することができる。
【0019】
前記リオトロピック液晶化合物(A)としては、アゾ系化合物、アントラキノン系化合物、ペリレン系化合物、キノフタロン系化合物、ナフトキノン系化合物又はメロシアニン系化合物から選択されることが望ましい。このような化合物は、溶液状態で液晶性(リオトロピック液晶性)を示し、且つ、吸収二色性を示し得る。
【0020】
前記リオトロピック液晶化合物(A)は、好ましくはアゾ系化合物又はペリレン系化合物である。配向性に優れ、可視光領域の吸収二色性を大きくすることができるからである。
アゾ系化合物は、好ましくは、下記一般式化学式1で示される化合物である。式中、Q1はフェニル基又はナフチル基(これらの基は置換基を有していてもよい)を表し、Q2及びQ3は、それぞれ独立してフェニレン基又はナフチレン基(これらの基は置換基を有していてもよい)を表し、Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、アセチル基、ベンゾイル基又はフェニル基(置換基を有していてもよい)を表し、kは0〜4の整数、Iは0〜4の整数(ただし、k+1≦4を満足する)、mは0〜2の整数を表し、Mは対イオンを表す。
前記一般式化学式1で表されるアゾ系化合物は、細田豊著「理論製造 染料化学」(昭和43年7月15日、技法堂発行、第5版、第135頁〜第152頁参照)に従って、例えば、それぞれアミノ基を有する2種類の化合物を、ジアゾ化、及びカップリング反応させて得ることができる。なお、アゾ結合で連結された置換基Q2の数は、ジアゾ化、及びカップリング反応を繰り返すことにより、増加させることができる。
【0021】
【化1】

【0022】
ペリレン化合物は、好ましくは、下記一般化学式2で表される化合物である。式中、Q4は式(a)又は(b)を表し、L1、L2、L3及びL4はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、又はアミノ基を表し、o、p、q、rはそれぞれ0〜2の整数、sは0〜4の整数(ただし、o+p+q+r+s≦8を満足する)を表し、Mは対イオンを表す。式(a)中、Q5はそれぞれ独立してフェニル基、フェニルアルキル基、又はナフチル基(これらの基は置換基を有していてもよい)を表し、L5は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、又はアミノ基を表し、tは0〜4の整数を表す。
一般化学式2で表されるペリレン系化合物は、例えば、特表平8−511109号公報に記載の方法によって得ることができる。
【0023】
【化2】

【0024】
前記一般化学式1及び2により表されるリオトロピック液晶化合物は、それ自身が単独で安定な液晶相を形成するため、高度に配向する。その結果、可視光領域の吸収二色性が大きな偏光膜を得ることができる。
【0025】
[リオトロピック液晶化合物(B)]
本発明に係るリオトロピック液晶化合物(B)は、一般に波長が350nm〜800nmの範囲にある可視光領域の内、波長400nm以上の可視光領域で光吸収特性を有しないか、又は、光吸収特性が小さい。かかるリオトロピック液晶化合物(B)は、波長400nm以上で光吸収特性を有しないことが望ましいが、波長400nm近傍の可視光領域で僅かな光吸収特性を示す化合物(波長400nm以上で光吸収特性が小さい化合物)であってもよい。尚、本明細書において「光吸収特性が小さい」とは、リオトロピック液晶化合物(B)単体の吸収スペクトルが、波長400nmにおいて、モル吸光係数が50以下であるものを包含する。
波長400nm近傍の吸収帯は、後に生成する偏光膜の光学特性に悪影響を及ぼし難いので、波長400nm以上で光吸収特性が小さい化合物を使用することは可能である。
【0026】
前記リオトロピック液晶化合物(B)は、波長200nm〜400nm、好ましくは240nm〜400nm、更に好ましくは290nm〜390nmで最大吸収を示すことが望ましい。更に、リオトロピック液晶化合物(B)は、分子の長軸方向の遷移モーメントが、短軸方向の遷移モーメントよりも大きいか、又は、分子の短軸方向の遷移モーメントが長軸方向の遷移モーメントに比べて大きいことが望ましく、換言すれば、吸収二色性を示すものである。このようなリオトロピック液晶化合物(B)は、単独で配向させることにより、位相差膜として使用することが可能である。
【0027】
前記リオトロピック液晶化合物(B)としては、芳香族メラミン系化合物、ベンズイミダゾール系化合物、フェナントロキノキサリン系化合物、アセナフトキノキサリン系化合物、長鎖アルキル系化合物又はセルロース系化合物であることが望ましい。このような化合物は、溶液状態で液晶性(リオトロピック液晶性)を示し、且つ、波長400nm以上の可視光領域で光吸収特性を有しないか、又は、光吸収特性が小さい。このようにリオトロピック液晶化合物(B)であれば、前記リオトロピック液晶化合物(A)の配向を阻害せず、且つ、リオトロピック液晶化合物(A)との相溶性も良好であり、その混合比率に応じてリオトロピック液晶化合物(A)の光学密度を低下させ得る。
【0028】
前記リオトロピック液晶化合物(B)は、好ましくは、アセナフトキノキサリン系化合物である。かかるアセナフトキノキサリン系化合物は、好ましくは、下記一般化学式3で表される化合物である。式中、kは0〜4の整数であり、l及びmはそれぞれ0〜3の整数であり、nは1〜4の整数である(ここで、k、l、m及びnの値は、式:k+l+m+n≦10を満たす)。
【0029】
【化3】

【0030】
前記一般化学式3の化合物は、それ自身が単独で安定な液晶相を形成するため、リオトロピック液晶化合物(A)の配向を乱すことはない。その結果として、偏光膜形成能を維持したまま、光学密度の小さいコーティング液を得ることができる。
前記アセナフトキノキサリン系化合物は、特表2007−512236号公報に記載の通り、例えば、アセナフテンキノン又はその誘導体と、o−フェニレンジアミン又はその誘導体との縮合反応によって得ることができる。
【0031】
一般化学式3中、Mは好ましくは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、金属イオン、又は置換若しくは無置換のアンモニウムイオンである。 金属イオンとしては、例えば、Ni2+、Fe3+、Cu2+、Ag+、Zn2+、Al3+、Pd2+、Cd2+、Sn2+、Co2+、Mn2+、Ce3+等が挙げられる。例えば、本発明の偏光膜が水溶液から生成される場合、前記Mは当初水への溶解性を向上させる基を選択しておき、成膜後は耐水性を高めために水に不溶性又は難溶性の基に置換することもできる。
【0032】
[溶媒]
本発明において、リオトロピック液晶化合物(A)とリオトロピック液晶化合物(B)とを溶解する溶媒としては、両リオトロピック液晶化合物(A)、(B)を溶解可能にものであれば特に制限はない。具体的には、溶媒としては、親水性溶媒が望ましい。親水性溶媒としては、例えば、水、アルコール類、セロソルブ類等が挙げられる。
【0033】
[偏光膜生成用コーティング液]
前記リオトロピック液晶化合物(A)とリオトロピック液晶化合物(B)とを溶媒により溶解してなる偏光膜生成用コーティング液には、例えば、界面活性剤、酸化防止剤、帯電防止剤等の任意の添加物を含有させてもよい。かかる偏光膜生成用コーティング液は、1重量%〜50重量%の全固形分濃度の少なくとも一部で液晶性を示すことが望ましい。
【0034】
また、偏光膜生成用コーティング液における前記リオトロピック液晶化合物(A)と前記リオトロピック液晶化合物(B)との重量比(A:B)は、90:10〜50:50であることが望ましい。更に、この重量比(A:B)は、80:20〜70:30であることが望ましい。このような混合比であれば、光学密度を低くして、且つ、適度な塗布厚で塗布することてができる偏光膜生成用コーティング液を調整することができ、また、かかるコーティング液から生成された偏光膜は、膜内における透過率の均一性を良好にしたリオトロピック液晶化合物の偏光膜を生成することができる。
【0035】
また、前記のように調整される偏光膜生成用コーティング液は、その吸収スペクトル測定(波長400nm以上の可視光領域)において、濃度1モル%(光路長0.5mm)における吸光度を、好ましくは2.0〜3.5、更に好ましくは2.5〜3.0とすることが可能である。
尚、従来のリオトロピック液晶化合物を含むコーティング液は、濃度1モル%(光路長0.5mm)における吸光度が4.0程度あるから、これより本実施形態に係る偏光膜生成用コーティング液の光学密度は、従来のコーティング液と対比して十分に小さいものといえる。
【0036】
前記リオトロピック液晶化合物(A)とリオトロピック液晶化合物(B)との混合方法については特に制限はない。例えば、リオトロピック液晶化合物(A)及び(B)を混合してから、溶媒を加えてコーティング液としてもよい。また、リオトロピック液晶化合物(A)及び(B)の一方と溶媒とを先に混合し、これに他方のリオトロピック液晶化合物を混合してもよい。更に、リオトロピック液晶化合物(A)及び(B)を、それぞれ分けて溶媒と混合し、その後、両者を混合してコーティング液としてもよい。
【0037】
[偏光膜]
本実施形態に係る偏光膜は、前記コーティング液を基材上に塗布し、乾燥して得られる。
ここに、基材は、コーティング液を均一に塗工するために用いられ、かかる基材としては、例えば、ガラス基板、石英基板、高分子フィルム、プラスチック基板、アルミや鉄等の金属板、セラミックス基板、シリコンウェハー等が使用可能であり、任意に選択された適切な基板が使用される。また、偏光膜の生成時におけるコーティング液の塗布手段及び乾燥手段は、任意の適切な手段が採用され得る。
【0038】
前記リオトロピック液晶化合物(A)及び(B)は、溶媒の揮発過程で、任意の方法により配向することができる。例えば、各リオトロピック液晶化合物は、配向処理が施された基材を使用することにより、その配向処理方向と平行又は直交方向に配向させることができる。ここに、リオトロピック液晶化合物の配向手段としては、通常の配向処理の他に、磁場、電場等の任意の手段を採用することができる。
【0039】
本実施形態によれば、偏光膜の膜厚を、例えば、0.6μm以上とすることができる。具体的に、偏光膜の膜厚としては、好ましくは0.6μm〜1.5μm、更に好ましくは0.7μm〜0.9μmである。
また、偏光膜の平均透過率は、30%以上であることが望ましく、更に、40%以上であることが望ましい。
更に、偏光膜の平均二色比は、10以上であることが望ましく、更に15以上であることが望ましい。
また、偏光膜は、その平均透過率が40%以上で、且つ、[平均透過率/膜厚]の値が40〜70の範囲にあることが望ましい。
【0040】
前記のように生成される偏光膜は、液晶表示装置に使用して好適である。液晶表示装置としては、パソコンモニタ、ノートパソコン、コピー機等のディスプレイに使用されるものが挙げられる。
【実施例】
【0041】
波長570nmで最大吸収を示し、ペリレン系のリオトロピック液晶化合物(ネマチック液晶化合物)を含む、濃度16重量%の水溶液(オプティバ社製 商品名「NO15」)65部に、波長400nm以上の可視光領域で略光吸収特性を示さず、波長380nmで最大吸収を示すキノキサリンアセナフテン−2、5−ジスルホン酸塩(アセナフトキノキサリン系化合物)を含む濃度16重量%の水溶液35部を混合して、室温(23℃)でネマチック液晶相を示すコーティング液を調整した。
このコーティング液をガラス基板上にスライド式コータを用いて塗布厚が5μmとなるように塗布し、23℃で自然乾燥させた。このようにして得られた偏光膜につきガラス基板(光学的に等方性)とともに測定された諸物性が表1に示されている。
【比較例1】
【0042】
波長570nmで最大吸収を示すリオトロピック液晶化合物(ネマチック液晶化合物)の16重量%の水溶液(オプティバ社製 商品名「NO15」)をガラス基板上にスライドコータを用いて塗布厚さ5μmとなるように塗布し、23℃で自然乾燥させた。このようにして得られた偏光膜につきガラス基板(光学的に等方性)とともに測定された諸物性が表1に示されている。
【比較例2】
【0043】
波長570nmで最大吸収を示すリオトロピック液晶の16重量%の水溶液(オプティバ社製 商品名「NO15」)をガラス基板上にスライドコータを用いて塗布厚さ3μmとなるように塗布し、23℃で自然乾燥させた。このようにして得られた偏光膜につきガラス基板(光学的に等方性)とともに測定された諸物性が表1に示されている。
【0044】
【表1】

【0045】
尚、表1において、偏光膜の透過率は、分光光度計(日本分光社製 製品名「V−7100」)を用いて測定した。
また、偏光膜の透過率の面内バラツキについては、縦8cm×横8cmのサンプルを作製し、辺から2cm間隔で縦方向に3点、横方向に3点、合計9点につき透過率を測定して平均値及び面内バラツキを求めた。尚、面内バラツキは、透過率の(最大値−最小値)である。
更に、偏光膜の二色比については、グラントムソン偏光子を備え分光光度計(日本分光社製 製品名「U−4100」)を用いて、波長600nmの直線偏光の測定光を入射させ、k1及びk2を求め、下記式より算出した。
【0046】
【数1】

【0047】
ここで、上記k1は最大透過率方向の直線偏光の透過率を示し、k2は最大透過率方向に直交する方向の直線偏光の透過率を示す。
そして、平均、縦8cm×横8cmのサンプルの辺から2cm間隔で縦方向に3点、横方向に3点、合計9点につき測定した値の平均値より求めた。
【0048】
表1において、実施例に係る偏光膜の平均透過率は41%であり、また、透過率の面内バラツキは1%である。これより、実施例の偏光膜では、平均透過率が高く、且つ、透過率の面内バラツキが小さいことが分かる。
これに対して、比較例1の偏光膜では、透過率の面内バラツキは1%と小さいものの、平均透過率が28%と低い。また、比較例2の偏光膜では、平均透過率が41%と高いものの、透過率の面内バラツキが3%と大きく、また、[平均透過率/膜厚]の値が82となって70以上の値となっている。
い。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明の偏光膜生成用コーティング液によれば、透過率を高く維持できるとともに透過率の膜内均一性が高い偏光膜を得ることができ、かかる偏光膜は、例えば、液晶表示装置の表示特性の向上に極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長400nm以上の可視光領域で光吸収特性を有するリオトロピック液晶化合物(A)と、
波長400nm以上の可視光領域で光吸収特性を有しないか又は光吸収特性が小さいリオトロピック液晶化合物(B)と、
前記リオトロピック液晶化合物(A)及びリオトロピック液晶化合物(B)を溶解する溶媒とを含む偏光膜生成用コーティング液。
【請求項2】
前記偏光膜生成用コーティング液が、1重量%〜50重量%の全固形分濃度の少なくとも一部で液晶性を示す請求項1に記載の偏光膜生成用コーティング液。
【請求項3】
前記リオトロピック液晶化合物(A)と前記リオトロピック液晶化合物(B)との重量比(A:B)が、90:10〜50:50である請求項1又は2に記載の偏光膜生成用コーティング液。
【請求項4】
前記リオトロピック液晶化合物(A)が、アゾ系化合物、アントラキノン系化合物、ペリレン系化合物、キノフタロン系化合物、ナフトキノン系化合物又はメロシアニン系化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の偏光膜生成用コーティング液。
【請求項5】
前記リオトロピック液晶化合物(B)が、芳香族メラミン系化合物、ベンズイミダゾール系化合物、フェナントロキノキサリン系化合物、アセナフトキノキサリン系化合物、長鎖アルキル系化合物又はセルロース系化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の偏光膜生成用コーティング液。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の偏光膜生成用コーティング液を基材上に塗布し、乾燥して得られる偏光膜。

【公開番号】特開2009−122574(P2009−122574A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298980(P2007−298980)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】