説明

偏平容器のブロー成形方法

【課題】一般的な形状のプリフォームを用いて吊具が一体成形された均一な肉厚の偏平容器を製造可能な吊具付きの偏平容器のブロー成形方法を提案すること。
【解決手段】試験管状の一般的なプリフォーム11を型開き状態にある左右のブロー成形用割型31、32にセットして型締めを行う前に、吊具成形用割型33、34を降下させてプリフォーム11の底部14を両側から挟持して引き上げて、プリフォーム11を延伸させる。延伸後にブロー成形用割型31、32の型締め動作を行いながら、プリフォーム11に低圧ブローエアーを導入してフリーブローを行う。フリーブローされたプリフォーム11をブロー成形用割型31、32で偏平形状となるように押圧し、型締後に高圧ブローエアーを導入して偏平容器に成形すると同時に吊具成形用割型33、34を最終型締して吊具4を偏平容器の底部にプレス成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有底筒状のプリフォームを二軸延伸ブロー成形して、偏平な断面形状の点滴用容器などの吊具付きの医療容器を製造するために用いる偏平容器のブロー成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吊具付きの偏平容器、例えば、リンゲル液や生理食塩水を封入する医療容器(点滴容器)はボトル形状の容器とソフトバッグ形式の二種類が用いられている。ボトル形状のものは射出延伸ブロー方式と押出しブロー方式(ダイレクトブロー方式)の二方法で生産されている。射出延伸ブロー方式は底部に付設されるべき吊具がブロー成形時に一体的に形成するのが困難なため、ボトル成形後に別に成形した吊具を熱溶着などで一体化しているが、部品や工程が増えてコストアップになる。押出しブロー方式はブロー成形時に吊具が一体的に形成可能であるが、製品の上下にバリが出て無駄な材料が増え、やはりコストアップになる。ソフトバッグ形式の容器の成形は、最初にフィルムを熱溶着して袋を形成するときに同時に吊具を付設できる利点がある。しかし、別個に成形した口部と袋を熱溶着するため工程が複雑でやはり高コストとなる。点滴用医療容器であるボトルやソフトバッグの製造方法としては、部品点数が少なく、工程が簡素化された、低コストの方法が望まれている。
【0003】
ここで、リンゲル液や生理食塩水は直接血管から血液中に点滴されるが、患者に余分な負担を与えないため、点滴速度は一定であることが望ましい。このために、点滴容器は内容液が滴下して容器内が負圧になると容器自身が萎んで大気圧と大きな圧力差が生じないようにデザインされている。
【0004】
負圧で容易にしぼむ形状としては偏平度合いの大きい容器が適している。しかし、ブロー成形容器の観点から考えると、偏平度合いの大きいブロー成形容器はその偏平断面における長径側と短径側の肉厚を均一に成形することが難しく、短径側が肉厚で長径側が薄肉になり、容器内が負圧になった時必ずしも容易に萎まないという欠点がある。
【0005】
すなわち、容器内が負圧になった時、容易に萎むためには長径方向と短径方向の肉厚差を最小にすることが望ましい。しかし、通常のブロー成形では、円形断面のプリフォームをそのまま大きな円形断面となるようにブロー成形する場合は、円周方向の各部において均一な肉厚が得られるが、偏平形状にブロー成形する場合には、ブロー成形型内においてプリフォームが徐々に膨らむ過程で、プリフォームの外周面のうち短径側となる部分が先にブロー成形型の内面に接触して冷却され、それ以上延伸できなくなり、プリフォームの外周面の長径側となる部分のみが延伸されて薄肉になる。
【0006】
特許文献1には、ブロー金型を二個配置して、一次ブロー金型でプリフォームを最終製品である偏平容器の短径方向より大きい径となるように延伸し、次いで延伸したプリフォームを収縮させた後、二次ブロー金型にプリフォームを移送して再度ブローする、いわゆる二段ブロー成形法が提案されている。二段ブロー成形法自体はPET製の耐熱瓶成形方法として実用化されており、決して新しい方法ではないが、特許文献1では偏平容器の製造に用いて偏肉のない偏平容器を得るようにしている。
【0007】
一方、吊具付きの偏平容器である点滴容器などの医療容器をブロー成形する場合には、吊具をどのように形成するのかが問題となる。上述したように、従来の射出2軸延伸ブロー成形法による点滴用医療容器は吊具を容器本体と一体的に成形できないため、別パーツを後付けで付設している。この方法では吊具を別工程で成形し、更に容器本体と一体化しなければならないためコスト的に高くつく。
【0008】
特許文献2には、プリフォームの底に吊具成形用の延出部を予め一体成形しておき、プリフォームのブロー成形時あるいは成形後に、延出部をプレスして吊具に成形する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−21962号公報
【特許文献2】特開2003−89147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示の二段ブロー成形法は、偏平容器を成形する際に、その偏平断面における円周方向の各部分の肉厚を均等化する方法としては有効であるが、通常の一段ブロー成形法に比べてブロー金型は2倍必要であり、更に成形機の型締め装置も余分に必要であり、製造コストが高いという問題点がある。また、耐熱性についても必ずしも満足できるものではなかった。その理由は一次ブロー金型で成形された一次ブロー真円形成形品を収縮させた後に、二次ブロー偏平金型内でブロー成形すると、出来た偏平形状成形品の熱負荷収縮率は満足できるものではないからである。
【0011】
一方、特許文献2に開示の吊具付き容器の成形方法では、プリフォームの射出成形時に延出部を一体成形する必要があるので、射出成形型として、一般的な試験管状のプリフォームを成形するためのものとは異なるものにする必要があり、コスト高になるという問題点がある。また、延出部として板状のものをプリフォームに一体形成した場合には、ブロー成形型にセットされたプリフォームの延出部をプレスできるように、延出部が常に一定の向きとなるように、プリフォームを成形型内にセットする必要がある。このため、プリフォームをブロー成形型にセットする工程が複雑になるという問題点もある。さらに、延出部が一体形成されているプリフォームは、延出部が損傷しないように、一般的な試験管状のプリフォームに比べて、取り扱いを慎重に行う必要があり、収納保管のためのスペースも多く必要になる。
【0012】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、プリフォームに一段の二軸延伸ブローを施すことにより偏肉の無い偏平容器を製造可能な偏平容器のブロー成形方法を提案することにある。
【0013】
また、本発明の課題は、一般的な形状のプリフォームを用いて吊具が一体成形された偏肉のない偏平容器を製造可能な吊具付きの偏平容器のブロー成形方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明は、有底筒状のプリフォームの口部以外の部分を二軸延伸ブローして、当該プリフォームの中心軸線に直交する断面形状が偏平断面形状の偏平容器を製造するブロー成形方法であって、
ブロー成形可能な温度に加熱された前記プリフォームを、型開き状態にある左右のブロー成形用割型にセットするセット工程と、
前記ブロー成形用割型の型締め動作を行う型締め工程と、
前記型締め工程と並行して行われ、前記プリフォームの口部から当該プリフォーム内に第1の圧力でブローエアーを導入して当該プリフォームをフリーブローするフリーブロー工程と、
前記型締め工程の途中における、フリーブローされた前記プリフォームに前記ブロー成形用割型が接触した時点から開始され、前記第1の圧力のブローエアーの導入を継続しながら、前記ブロー成形用割型によって前記プリフォームを前記偏平断面形状となるように押圧成形する拘束ブロー工程と、
前記型締め工程の終了後に行われ、前記第1の圧力よりも高い第2の圧力のブローエアーを前記プリフォーム内に導入して前記プリフォームを前記偏平容器に成形する最終ブロー工程とを有し、
前記フリーブロー工程の終了時点において、前記プリフォームの前記中心軸線に直交するプリフォーム断面形状の外径が、型締状態の前記ブロー成形用割型によって規定されるキャビティにおける前記中心軸線に直交するキャビティ断面形状の短径より大きく、かつ、当該キャビティ断面形状の長径より小さく、前記プリフォーム断面形状の周長が前記キャビティ断面形状の周長より短くなるように、前記プリフォームのフリーブローを行うことを特徴としている。
【0015】
本発明では、フリーブロー工程においてプリフォームをフリーブローして所定の大きさに膨らませ、左右のブロー成形用割型に接触した後は、拘束ブロー工程において、相互に閉じる方向に移動する左右のブロー成形用割型によってフリーブロー後のプリフォームを偏平断面となるように押圧成形している。フリーブロー終了時には、プリフォーム断面形状の外径が、型締状態のブロー成形用割型によって規定されるキャビティにおける中心軸線に直交するキャビティ断面形状の短径より大きく、かつ、当該キャビティ断面形状の長径より小さくなるように設定される。また、プリフォーム断面形状の周長がキャビティ断面形状の周長より短くなるように設定される。
【0016】
したがって、拘束ブロー工程では、フリーブローによって均一肉厚の状態に膨らんだプリフォームが、最終製品の偏平容器の偏平断面形状における短径方向に押しつぶされ、その長径方向に押し出されるように、全体として変形させられる。プリフォームの周長を偏平断面のキャビティの周長よりも僅かに短くしておけば、実質的に二軸延伸に伴う肉厚変化が生ずることなく、また、弛みなくプリフォームは偏平断面形状に変形する。すなわち、フリーブロー成形によって得られた均一な肉厚状態のまま偏平断面形状に押圧成形される。この後は、最終ブロー工程において、高圧のブローエアーが導入されてプリフォーム外周面がキャビティ内周面に押し付けられて密着して、均一な肉厚の偏平容器が得られる。
【0017】
ここで、ブロー成形用割型の内周面を所定の温度に加熱しておけば、最終ブロー工程においてキャビティ内周面に押し付けられた密着したプリフォームが加熱(熱処理)されるので、耐熱性の高い偏平容器を得ることができる。
【0018】
また、前記型締め工程では、前記割型の型締動作を連続して行うことができる。この代わりに、型締め途中でブロー成形用割型の移動を止め、一定時間後に移動を再開するというように、型締動作を断続的に行うことも可能である。
【0019】
次に、吊具付きの偏平容器を製造するために、本発明のブロー成形方法は、
前記セット工程の後に、前記プリフォームの底部を、前記中心軸線の両側から左右の吊具成形用割型で挟持する挟持工程と、
前記底部を挟持した前記吊具成形用割型を前記中心軸線の方向に引き上げることにより前記プリフォームを延伸する延伸工程と、
前記ブロー成形用割型に干渉しない位置まで引き上げた前記吊具成形用割型の最終型締を行って前記底部に吊具となる部位を成形する吊具成形工程とを有し、
前記フリーブロー工程を前記延伸工程と並行して行い、当該フリーブロー工程では、前記プリフォームにおける前記口部と前記吊具成形用割型によって挟持された前記底部との間の胴部をフリーブローすることを特徴としている。
【0020】
本発明では、型開き状態のブロー成形用割型にセットされたプリフォームの底部を両側から挟持してプリフォームを中心軸線方向に延伸している。また、挟持するための部材として吊具成形用割型を用いており、延伸後には、当該吊具成形用割型によって挟持した底部の部位を、吊具となるようにプレス成形している。したがって、吊具成形用の延出部などのような部位が一体成形されたプリフォームを用いることなく、一般的な試験管形状のプリフォームを用いて吊具付きの偏平容器を製造することが可能である。
【0021】
ここで、前記延伸工程は、吊具成形用割型が、型締めされるブロー成形用割型に干渉しないように行えばよい。例えば、吊具成形用割型による引き上げ動作が終了した後に型締動作を開始すればよい。あるいは、ブロー成形用割型に吊具成形用割型が干渉しないように延伸工程および型締め工程を並行して行っても良い(すなわち、吊具成形用割型の移動と、ブロー成形用割型の移動を並行して行っても良い)。
【発明の効果】
【0022】
本発明の偏平容器のブロー成形方法によれば、型開き状態のブロー成形用割型にセットしたプリフォームを低圧のブローエアーによってフリーブローして均一肉厚の状態で膨らませ、次に、均一な肉厚状態のプリフォームを偏平断面形状となるようにブロー成形用割型で押し潰しながら型締めを行い、型締後に高圧のブローエアーをプリフォーム内に導入して最終ブロー成形を行うようにしている。したがって、一段のブロー工程によって均一な肉厚の偏平容器を廉価に製造できる。
【0023】
また、ブロー成形用割型にセットされたプリフォームの底部を吊具成形用割型で挟持してプリフォームを中心軸線方向に延伸し、延伸後に、挟持した底部を吊具成形用割型によってプレスすることにより吊具を成形している。したがって、一般的な形状のプリフォームを用いて吊具が一体成形された偏平容器を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(a)は吊具付き偏平容器の平面図であり、(b)はプリフォームの縦断面形状と共に吊具付き偏平容器の側面形状を示す側面図、(c)は吊具付き偏平容器の底面図である。
【図2】プリフォームの加熱工程を示す説明図である。
【図3】プリフォームをブロー成形用割型にセットしたセット工程を示す説明図である。
【図4】プリフォームの底部を挟持した挟持工程を示す説明図である。
【図5】プリフォームを中心軸線方向に延伸する延伸工程を示す説明図である。
【図6】ブロー成形用割型の型締工程、拘束ブロー工程および最終ブロー工程を示す説明図である。
【図7】図6に示す工程におけるプリフォームの断面形状の変化を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、図面を参照して本発明を適用した吊具付き偏平容器のブロー成形方法を説明する。
【0026】
(吊具付き偏平容器およびプリフォーム)
図1(a)、(b)および(c)は、本発明のブロー成形方法により製造可能な吊具付き偏平容器の一例を示す平面図、側面図および底面図である。図1(b)には当該吊具付き偏平容器を製造するために用いるプリフォームの縦断面も想像線によって表示してある。
【0027】
図示の吊具付き偏平容器1は例えば点滴用の偏平容器であり、一般的な試験管形状のプリフォーム11を二軸延伸ブロー成形して得られたものである。プリフォーム11はPETその他のブロー成形可能な熱可塑性樹脂の射出成形品である。このプリフォーム11の円筒状の口部12は延伸ブローされることなくそのままの形状で、偏平容器1の口部2として残っている。
【0028】
プリフォーム11における口部12に連続している円筒状の胴部13は、その中心軸線11aの方向および当該中心軸線11aに直交する方向に二軸延伸ブローされて偏平容器の胴部3を形成している。胴部3は、全体として上下に長い長円形の側面輪郭形状をしており、その中心軸線に直交する方向の断面形状は、一方向が長径、これに直交する方向が短径となっている長径両端が尖った偏平楕円状の形状をしている。例えば、短径はプリフォーム11の外径とほぼ同一であり、長径が短径の略3倍の長さとなっている。
【0029】
プリフォーム11における胴部の下端の半球状の底部14は、プレス成形されて、偏平容器1の底部に一体形成された吊具4となっている。吊具4は一定厚さの略矩形の板状片4aの中心に吊り下げ用の円形貫通孔4bが形成された構成となっている。
【0030】
(ブロー成形手順)
図2〜図7を参照して、プリフォーム11から吊具付き偏平容器1をブロー成形により製造する手順を説明する。以下に述べる手順は、本発明を、プリフォーム11を予め射出成形しておき、これをブロー成形に適した温度に加熱してブロー成形を行うコールドパリソン法に適用したものであるが、本発明は1ステージ(ホットパリソン法)の成形法にも同様に適用できることは勿論である。
【0031】
まず、図2に示すように、プリフォーム11は倒立状態でキャリア21に担持され、この状態でヒーター22が配置されている加熱ステーション23を経由して搬送される。搬送中においてプリフォーム11はその中心軸線11a回りに回転させられて、全体が均一にブロー成形に適した温度に加熱される。かかる加熱工程は一般的に採用されているものである。
【0032】
次に、図3に示すように、ブロー成形に適した温度に加熱されたプリフォーム11は、型開き状態の左右のブロー成形用割型31、32の中心に同軸状態にセットされる(セット工程)。ブロー成形用割型31、32の対向面には、型締状態において偏平容器1の輪郭形状に対応する内周面形状を備えたキャビティを形成可能な凹状の成形面31a、32aが形成されている。ブロー成形用割型31、32の中心の真上には、左右の吊具成形用割型33、34が配置されており、不図示の型締機構によって左右に開閉可能であり、不図示の昇降機構によって昇降可能である。吊具成形用割型33、34はプレス型であり、それらの対向面には吊具4をプレス成形するためのプレス成形面33a、34aが形成されている。
【0033】
次に、図4に示すように、型開き状態の左右のブロー成形用割型31、32の中心にプリフォーム11がセットされた後は、左右の吊具成形用割型33、34を型開き状態のまま降下させる。これらの成形面33a、34aが、倒立姿勢のプリフォーム11の底部14に対峙する高さ位置において降下を止めて、不図示の型締機構によって、左右の吊具成形用割型33、34を閉じ、プリフォーム11の底部14を、その中心軸線11aの両側から所定の力で挟持する。底部14は板状に押しつぶされた状態で左右の吊具成形用割型33、34の間に挟持される(挟持工程)。
【0034】
次に、図5に示すように、プリフォーム11の底部14を挟持した吊具成形用割型33、34を、その状態のまま不図示の昇降機構によって中心軸線11aの方向に引き上げる。これにより、プリフォーム11が中心軸線11aの方向に延伸させられる(延伸工程)。ここで、プリフォーム11を中心軸線11aの方向に延伸させると同時に、キャリア21の中心に形成した貫通孔を介して下側から低圧のブローエアー41をプリフォーム11内に導入する。このブローエアー41によってプリフォーム11は中心軸線11aに直交する方向にフリーブローされる(フリーブロー工程)。すなわち、プリフォーム11における口部12と、吊具成形用割型33、34によって挟持された底部14との間の円筒状の胴部13は、中心軸線11aに直交する方向に拘束されることなく円筒状に膨らむ。なお、上下方向には延伸力が作用しているので、側方から見た場合には全体として紡錘状に膨らむ。
【0035】
ここで、フリーブロー工程においてプリフォーム11内に吹き込まれるブローエアーの量を管理することが望ましい。例えば、ブローエアーを定量タンク41Aに充填しておき、当該定量タンクからブローエアーを供給してプリフォーム11内に導入することが望ましい。または、エアーシリンダーなどの定量容器に溜めた一定量のブローエアーをピストンなどによって押し出してプリフォーム11内に供給してもよい。定量のブローエアーをプリフォーム11内に供給することにより、精度良く、目標とする形状となるようにプリフォーム11をフリーブローすることができる。
【0036】
吊具成形用割型33、34によるプリフォーム11の延伸は、吊具成形用割型33、34の下端面33b、34bが、左右のブロー成形用割型31、32の上端顎面31b、32bの高さ位置となるまで行われる。吊具成形用割型33、34がこの高さ位置まで上昇すると、型締されるブロー成形用割型31、32に干渉しない状態になる。吊具成形用割型33、34がこの高さ位置に到達すると、これらの上昇を止めてその位置に保持し、左右のブロー成形用割型31、32の型締動作を開始する(型締工程)。
【0037】
吊具成形用割型33、34の引き上げ動作と並行して左右のブロー成形用割型31、32の型締め動作を行うこともできる。この場合には、型締めされるブロー成形用割型31、32に干渉しないように吊具成形用割型33、34の引き上げ動作を行えばよい。
【0038】
型締め動作が開始された後においても低圧ブローエアー41によるプリフォーム11の胴部13のフリーブローが継続して行われる。型締される左右のブロー成形用割型31、32の成形面31a、32aがフリーブローされているプリフォーム11に接触する時点まで継続する。
【0039】
ここで、図7に示すように、この時点においては、プリフォーム11の中心軸線11aに直交する円筒状のプリフォーム断面形状の外径Lが、型締状態のブロー成形用割型31、32によって規定されるキャビティ35における中心軸線11aに直交する方向のキャビティ断面形状の短径L1より大きく、かつ、当該キャビティ断面形状の長径L2より小さい。また、プリフォーム断面形状の周長がキャビティ断面形状の周長よりも僅かに短い。この状態が形成されるように、低圧ブローエアーの圧力、供給量、吊具成形用割型33、34の引き上げ速度、ブロー成形用割型31、32の型締速度などを設定しておけばよい。また、ブロー成形用割型31、32の型締めを連続して行わずに、途中で一定時間停止させる断続的な動作形態で行うことも可能である。
【0040】
この後は、図6、図7に示すように、低圧ブローエアー41の導入を継続しながら、プリーブローによって膨張したプリフォーム11の胴部13(C)が左右のブロー成形用割型31、32によって偏平断面形状となるように押し付けられる(拘束ブロー工程)。これらの図においては、ブロー成形用割型31の移動位置を符号31(A)〜31(E)で示してあり、各位置31(C)、31(D)、31(E)におけるプリフォーム11の胴部13の形状を符号13(C)、13(D)および13(E)で示してある。
【0041】
このように左右のブロー成形用割型31、32によって偏平に押しつぶされながら低圧ブローエアーがプリフォーム内部に導入される拘束ブロー工程では、フリーブローによって均一肉厚の状態で円筒状に膨らんだプリフォーム11は、最終製品の偏平容器1の偏平断面形状における短径方向に押しつぶされ、その長径方向に押し出されるように、全体として変形させられる。プリフォーム11の周長は偏平断面のキャビティの周長よりも僅かに短いので、実質的に二軸延伸に伴う肉厚変化が生ずることなく、プリフォーム11は偏平断面形状に変形する。すなわち、フリーブロー成形によって得られた均一な肉厚状態のまま偏平断面形状に成形される。
【0042】
図7において太い実線で示すように、ブロー成形用割型31、32の型締動作が終了した後は、高圧のブローエアー42が導入されてプリフォーム11の胴部13の外周面13aがキャビティ35の内周面(成形面31a、32a)に押し付けられて密着して、均一な肉厚の偏平容器1が得られる(最終ブロー工程)。ここで、ブロー成形用割型の内周面を所定の温度に加熱しておけば、最終ブロー工程においてキャビティ内周面に押し付けられた密着したプリフォームが加熱(熱処理)されるので、耐熱性の高い偏平容器を得ることができる。例えば、ブロー成形用割型31、32の本体をカートリッジヒーターや熱媒体によって加熱された状態にすることによって最終成形された偏平容器1は熱処理され耐熱性を向上させることができる。
【0043】
また、この最終ブロー工程と同時に、吊具成形用割型33、34の最終型締動作を行って、これらの間に挟まれている底部14をプレスして、円形貫通孔4bを備えた吊具4を成形する(吊具成形工程)。
【0044】
以上の工程によって、吊具4が一体成形され、且つ耐熱性能の高い点滴用医療容器を安定的に生産することができる。
【0045】
(その他の実施の形態)
上記の例は吊具付きの偏平容器に本発明を適用した場合のものである。本発明の方法は吊具を備えていない偏平容器の製造にも用いることができる。この場合には、吊具成形用割型が不要であり、次の工程によって偏平容器がブロー成形される。
(1)所定の温度に加熱したプリフォームをブロー成形用割型に導入する、
(2)ブロー成形用割型を閉じ始めるとほぼ同時に、プリフォーム内に低圧ブローエアーを導入してフリーブローを開始する。
(3)一定時間後にフリーブロー途中のプリフォームは型締め途中のブロー成形用割型表面に接触し始める。そのときの円形状に膨らんだプリフォーム径はブロー成形用割型の短径より大きく、且つ長径より小さい。また、ブロー途中のプリフォーム周長はブロー成形用割型によって形成されるキャビティの周長よりも短い。
(4)次いで、ブロー成形用割型が継続して閉じつつある時、拘束状態でブローされているプリフォームは押圧されながら徐々に最終偏平形状に近づく。ブロー成形用割型が完全に閉じた後、プリフォーム内に高圧ブローエアーを導入して金型形状に賦型させ完成品(偏平容器)とする。
【0046】
なお、ブロー成形用割型は最終型締めまで連続的に駆動しても良いし、型締め途中で一時停止し、一定時間後に型締めしても良い。
【0047】
次に、本発明のブロー成形法は偏平断面ではない一般的な円筒状断面をした吊具付き容器の製造にも用いることができる。この場合には次の工程によって吊具付き容器がブロー成形される。
(a)加熱後のプリフォームを型開き状態のブロー成形用割型にセットした後に、吊具部分を形成する底割金型(吊具成形用割型)でプリフォーム先端を挟んだ後、当該底割金型を徐々に引き上げながら(即ちプリフォームを延伸しながら)同時にプリフォーム内部に微圧ブローエアーを導入してフリーブローを行う。このときプリフォーム内部に導入する微圧ブローエアーを量規制すると形状が安定してよい結果が得られる。
(b)底割金型を所定の位置まで引き上げた後(又は底割金型を引き上げながら同時にブロー成形用割型を閉じ始めても良い)、ブロー成形用割型を閉じながらプリフォーム内部に継続して微圧ブローエアーを導入する。
(c)ブロー成形用割型が最終的に閉じる時に吊具を形成する底割金型も同時に最終型締めして吊具を形成する。
【0048】
なお、ブロー成形用割型をカートリッジヒーターや熱媒体によって加熱された状態にすることによって最終成形された吊具付き容器は熱処理され耐熱性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 偏平容器
2 口部
3 胴部
4 吊具
4a 板状片
4b 円形貫通孔
11 プリフォーム
11a 中心軸線
12 口部
13 胴部
14 底部
21 キャリア
22 ヒーター
23 加熱ステーション
31、32 ブロー成形用割型
31a、32a 成形面
33、34 吊具成形用割型
33a、34a 成形面
35 キャビティ
41 低圧ブローエアー
41A 定量タンク
42 高圧ブローエアー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状のプリフォームの口部以外の部分を二軸延伸ブローして、当該プリフォームの中心軸線に直交する断面形状が偏平断面形状の偏平容器を製造するブロー成形方法であって、
ブロー成形可能な温度に加熱された前記プリフォームを、型開き状態にある左右のブロー成形用割型にセットするセット工程と、
前記ブロー成形用割型の型締め動作を行う型締め工程と、
前記型締め工程と並行して行われ、前記プリフォームの口部から当該プリフォーム内に第1の圧力でブローエアーを導入して当該プリフォームをフリーブローするフリーブロー工程と、
前記型締め工程の途中における、フリーブローされた前記プリフォームに前記ブロー成形用割型が接触した時点から開始され、前記第1の圧力のブローエアーの導入を継続しながら、前記割型によって前記プリフォームを前記偏平断面形状となるように成形する拘束ブロー工程と、
前記型締め工程の終了後に行われ、前記第1の圧力よりも高い第2の圧力のブローエアーを前記プリフォーム内に導入して前記プリフォームを前記偏平容器に成形する最終ブロー工程とを有し、
前記フリーブロー工程の終了時点において、前記プリフォームの前記中心軸線に直交するプリフォーム断面形状の外径が、型締状態の前記ブロー成形用割型によって規定されるキャビティにおける前記中心軸線に直交する方向のキャビティ断面形状の短径より大きく、かつ、当該キャビティ断面形状の長径より小さく、前記プリフォーム断面形状の周長が前記キャビティ断面形状の周長より短くなるように、前記プリフォームのフリーブローを行うことを特徴とする偏平容器のブロー成形方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記型締め工程では、前記割型の型締動作を連続して行うか、あるいは、断続的に行うことを特徴とする偏平容器のブロー成形方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記セット工程の後に、前記プリフォームの底部を、前記中心軸線の両側から左右の吊具成形用割型で挟持する挟持工程と、
前記底部を挟持した前記吊具成形用割型を前記中心軸線の方向に引き上げることにより前記プリフォームを延伸する延伸工程と、
前記ブロー成形用割型に干渉しない位置まで引き上げた前記吊具成形用割型の最終型締を行って前記底部に吊具となる部位を成形する吊具成形工程とを有し、
前記フリーブロー工程を前記延伸工程と並行して行い、当該フリーブロー工程では、前記プリフォームにおける前記口部と前記吊具成形用割型によって挟持された前記底部との間の胴部をフリーブローすることを特徴とする偏平容器のブロー成形方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記延伸工程の終了後に前記型締め工程を開始するか、あるいは、前記ブロー成形用割型に前記吊具成形用割型が干渉しないように前記延伸工程および前記型締め工程を並行して行うことを特徴とする偏平容器のブロー成形方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項において、
前記最終ブロー工程において偏平容器に熱処理を施して耐熱性を高めるために、前記ブロー成形用割型を所定の温度に加熱しておくことを特徴とする偏平容器のブロー成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−79243(P2011−79243A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233962(P2009−233962)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(594082648)株式会社フロンティア (34)
【Fターム(参考)】