健康管理装置
【課題】 本発明の目的は、使用者の使用状態に応じた適量の洗浄水を供給して便器を洗浄し、また、洗浄水の断水等の自己診断機能を備え、さらに、構造が単純で、容易にメンテナンスできる便器洗浄装置を提供することにある。
【解決手段】 ドップラーセンサ11の出力はアンプ31で増幅され、FFT演算部32で周波数スペクトラムが求められる。周波数スペクトラムをもとにして、流量演算部33において流量に換算される。コントローラ34は、流量演算部33で演算された流量や洗浄指示ボタン16の操作状況に基づいて、他の装置を作動させる。洗浄水供給バルブ36はコントローラ34の指示により開閉する。電解水生成部38では排水管に尿石が形成される事を防ぐ電解水が生成され、電解水供給バルブ39が開成された時に、吐出口から電解水が流し出される事になる。
【解決手段】 ドップラーセンサ11の出力はアンプ31で増幅され、FFT演算部32で周波数スペクトラムが求められる。周波数スペクトラムをもとにして、流量演算部33において流量に換算される。コントローラ34は、流量演算部33で演算された流量や洗浄指示ボタン16の操作状況に基づいて、他の装置を作動させる。洗浄水供給バルブ36はコントローラ34の指示により開閉する。電解水生成部38では排水管に尿石が形成される事を防ぐ電解水が生成され、電解水供給バルブ39が開成された時に、吐出口から電解水が流し出される事になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿量を計測し、健康管理に活用するための健康管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用足し後の便器本体の洗浄を自動化する為に、便器に赤外線センサ等の人体検知センサを設置し、この人体検知センサが一定時間以上使用者を検知した場合には、その後に使用者が離れたことを検知して、一定量の洗浄水を流すようにしたものがある。しかし、このような人体検知に基づいた自動洗浄システムでは、用足しの有無や小便の量に関わらず一定の洗浄水を流していたので、無駄が多かった。そこで、上記問題を解決するものとして、特開平10−37284号公報で提案された装置は、小便器のトラップ部の水圧変化を圧力センサで検出することによって、トラップ部の水位変化、即ち、排尿を検出するというものである。この方式によれば、排尿が有ったことを検出するので、小便器の前に来たが用足しをしなかった人がいても、誤って洗浄水を供給する事は無い。また、排尿された尿量を検出して、尿量に応じた洗浄水を供給することで、不必要に大量の洗浄水を無駄に流す事が無い。また、排水管が詰まっている場合に小便器に洗浄水を流し続けると、水位が上昇して洗浄水が小便器から溢れ出てしまう事があるが、水位を検出する事によって、事前にバルブを制御して、便器本体から洗浄水が溢れ出ることを未然に防ぐ事ができる。さらに、圧力センサによって洗浄水の供給状態が検出できるので、「断水」、「でっぱなし」を検出して警報を発する事ができる。
【0003】
しかしながら、上記した圧力センサを用いた洗浄システムは、トラップ内の水圧を検出する為にトラップ部と圧力センサとを配管で連結する構造をとっていて、トラップ部での配管接続部において、長期間にわたって水密を確保する必要があるが、これは実際には容易ではない。また、センサ部が液体や有害ガスに侵されないようにする為の保護部材が必要であり、組み立てが困難である。水圧検出の為の配管部が詰まらないように、洗浄水の一部を供給してこの配管を洗浄するとしているが、ますます複雑な構造となるので、組み立てが困難になるとともに、故障の発生原因となりうる。さらに、配管部に故障が生じた場合には、給水管及び排水管から小便器を離して、小便器を壁面から前方に移動させた後に、ようやく小便器の背部から修理に取り掛かれるというもので、とても現実的なシステムであるとは言えない。
【0004】
また、トラップ部の水圧の検出を利用する根本的な問題として、排水管の圧力変動を受けるという事がある。即ち、一般に、排水管は複数の便器や洗面器等の設備機器の排水部が接続されていて、個々の設備機器からの排水を集めて下水設備へと送っている。排水管内の圧力は、複数の設備機器からの排水によって絶えず変動しているので、これに応じて小便器のトラップ内の水圧も変動しており、排尿のみを確実に検出するのは、実際には難しい。
【特許文献1】特開平10-37284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した背景に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、上記した問題を解決し、使用状態に応じて適切に洗浄水を供給することにある。また、洗浄水の断水やでっぱなしを自己診断し、その警報を発することにより節水を図ることも目的とする。さらに、本発明の他の目的は、構造が単純で、万一故障した場合でも、容易に修理できる便器洗浄装置を提供することにある。本発明のさらなる目的は、後述する実施形態の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、本発明は、便器本体に対し洗浄水を供給可能とするバルブ付き洗浄水配管を備えた便器に設置され、前記バルブの開閉制御をする便器洗浄装置であって、便器のボール部内空間又はボール部開口部の近傍空間に向けて電波を送信する送信手段と該送信手段によって送信された電波の反射波を受信する受信手段とを有し、該受信手段で受信した信号の周波数と前記送信手段によって送信された信号の周波数との差分に応じた差分信号を生成するドップラーセンサを設置し、該ドップラーセンサの出力を周波数解析する周波数解析手段の出力に基づいて、ボール部内空間の液流状態を液流状態演算手段によって演算し、その演算結果に応じて前記バルブの制御を行う制御手段を設けた事を特徴として構成されている。
【0007】
電波(特にマイクロ、ミリ波)によるドップラーセンサは、ドップラ効果を利用して以下の原理で物体(動き)検知に用いられている。
基本式:ΔF=Fs−Fb=2×Fs×ν/c
ΔF:ドップラ周波数
Fs:送信周波数
Fb:反射周波数
ν:物体の移動速度
c:光速(300×106m/s)
アンテナから送信されたFsは、物体に反射し、相対運動νによるドップラ周波数シフトを受けFbとなる。この時、送信波と反射波の周波数差ΔFが検出信号として取り出せる。
【0008】
このドップラーセンサを水流に向けると、その流速度に応じた周波数の信号が出力される事が、実験により確認された。図24は、水流にドップラーセンサを向けて、その出力の周波数スペクトラムを求めたものである。流速度を違えると、得られるスペクトラムは変化して、例えば、ピーク周波数と流速度との関係をグラフ化すると図25のようになって、流速度とドップラーセンサの出力の周波数特性との間に相関があることが言える。よって、便器のボール部内空間に向けて電波を送信するドップラーセンサからは、尿または洗浄水の流れの速度に応じた周波数の信号が出力される。よって、ドップラーセンサの出力を周波数解析して、尿や洗浄水といったボール面を流れる液流に関して、その液流の有無や量、或いは、流量の時間的変化等を演算して求めることによって、それに応じた適切なバルブの開弁タイミングまたは閉弁タイミング等の制御を行うことができる。
【0009】
この際、便器が陶器、樹脂等で形成されていれば、電波が透過するので、ドップラーセンサは便器の内側に設置することが可能である。その為、センサが洗浄水や排泄物により腐蝕する恐れが無い。また、外観上はセンサが見えないので、見栄えが良いし、悪戯されにくい。また、構造が単純なので、製品の組み立てが容易である。
【0010】
また、周波数解析手段は高速フーリエ変換による周波数スペクトラムを出力するものであり、液流状態演算手段は、所定の閾値以上の周波数の有無によって液流の有無を判断することができる。
FFT(Fast Fourier Transform)を用いる事により、ドップラーセンサの出力の周波数スペクトルが、リアルタイムに得られる。得られた周波数スペクトルから、尿や洗浄水を検出できる。
あるいは、周波数解析手段は、特定範囲の周波数の信号のみを通過出力するフィルタであり、液流状態演算手段はフィルタからの出力と所定の閾値とを比較して液流の有無を判断する事もできる。
フィルタの通過帯域を、尿流や洗浄水流に対するドップラーセンサの出力信号の周波数分布の実態に合わせて設定しておく事により、尿流や洗浄水流を検出できる。前記液流状態演算手段は、液流が有ると判断する時間を計測する計時手段を有する事もできる。
【0011】
以上の構成によれば、尿に関しては、瞬間流量を代表値に設定しておいて、その代表値と継続時間との乗算によって、およその尿総量を簡単に把握することができる。尿総量を求める事によって、尿総量に見合った適切な洗浄水を供給できるので、節水が可能になる。
【0012】
一方、洗浄水に関しては、便器に洗浄水が実際に流れている時間を把握して、バルブの開放指示している時間と比較する事によって、「断水」や「配管詰まり」を検出して対処する事ができる。
【0013】
前記液流状態演算手段は、高速フーリエ変換による周波数スペクトラムの極大値に基づいて液流量を演算する事もできる。ドップラーセンサの出力の周波数スペクトラムと液流速とは相関があるので、FFTの出力に基づいて液流量を導くことができる。
【0014】
こうする事によって、瞬間液流量を把握する事ができる。洗浄水の瞬間流量は、少なすぎれば排泄物を便器から排出できない。逆に、多すぎても、総洗浄水量が多くなって無駄になる、水はねを生じるという問題があるので、適正な範囲である事が好ましい。よって、洗浄水の瞬間流量を得る事によって、何らかの対応を取る事が可能になる。
【0015】
また、尿の瞬間流量、及び、その時間的変化は、尿路障害等によって健常者と違いがあるので、この装置を用いる事によって、容易に排尿機能の検査ができるようになる。
【0016】
前記液流状態演算手段は、液流が有ると判断する時間における液流量を積算して液流の総量を演算する事もできる。瞬間液流量を積算することによって、より正確に総流量を得ることができる。これによって、尿総量に見合った適切な洗浄水を供給できるので、節水が可能になる。一方、実際に便器に流れる洗浄水量を正確に得る事によって、洗浄水量を適切にするように対処できる。
【0017】
前記ドップラーセンサは、送信手段から便器のボール部内壁面の流水方向と略平行方向に向けて電波を送信する事ができる。
ドップラーセンサは、対象物体の移動速度に基づく周波数の信号を出力する。ここでの移動速度は、電波の送受信方向と同一の成分が、出力信号に大きく反映されるのであって、他方向の成分はセンサ出力信号として殆ど反映されない。よって、大きな信号を得る為には、液流方向と電波の送受信方向とをできるだけ近づける事が望ましい。便器においては、洗浄水流はボール部内壁面の汚れを流す為に、内壁面に沿って流される。尿については、一旦、ボール部内壁面に当たった後に、内壁面に沿って流れる事が多い。よって、電波の送受信方向をボール部内壁面の流水方向と略平行にすることによって、大きなセンサ出力信号を得ることができて、結局、ノイズの影響を受けにくく、また、センサ特性の歪の影響を受け難くなって、正確に尿流や洗浄水流を検出できるようになる。
【0018】
前記ドップラーセンサは、送信手段から略使用者の方向に向けて電波を送信する事もできる。
上述したように、ドップラーセンサは、測定物体の運動方向と平行に電波を送信する事が好ましい。よって、空中での尿流を測定する場合には、尿は使用者から排泄されるので、ドップラーセンサから略使用者の方向に向けて電波を送信する事が望ましい。
【0019】
また、他の効果として、使用者の有無を同時に検出できる事が挙げられる。一般的に、尿流速は、2m/秒程度であるが、人体の便器付近での移動速度はこの半分以下であるので、ドップラーセンサの出力信号の周波数は、これに応じて異なるので、周波数解析手段によって人体と尿流とを判別できる。使用者の有無を同時に検出できる事から、例えば、使用者を検出した時点で洗浄水を供給してボール部内壁面に水膜を形成させて(前洗浄)、汚れが付き難くすることが可能である。或いは、例えば、人体と尿の両方を検出した場合のみ洗浄水を供給するようにして、尿の検出の確実性をより向上することができる。
【0020】
液流状態演算手段の出力を外部に出力する外部出力手段をさらに備えてもよい。
液流状態演算手段が出力する演算結果の情報を信号として外部に出力すれば、他の装置で活用することができる。また、人が分かるように、液流状態演算手段が出力する情報をメッセージや音声等のように、視覚的に又は聴覚的に外部出力するようにしてもよい。尿流は、泌尿器系の状態を示すものなので、これに関する情報を出力する事によって、医療や健康管理の為に活用する事ができる。または、供給された洗浄水の水流に関する情報を外部に出力する事によって、適正な洗浄水流となるように対処する事ができるようになる。
【0021】
液流状態演算手段によって液流が無くなったと判断されたときは、バルブを開成して洗浄水を供給する事ができる。
こうすることにより、排尿が有った時だけ洗浄水を供給するので、無駄な水を流すことを防げる。
【0022】
さらに、前記ドップラーセンサは、送信手段から略使用者の方向に向けて電波を送信するものであり、ドップラーセンサの出力に基づいて便器の使用者の有無を検出する使用者検出手段を備え、前記液流状態演算手段によって液流が無くなったと判断され、且つ、前記使用者検出手段の出力が使用者無しを検出すると、前記バルブを開成して洗浄水を供給する事もできる。
【0023】
排尿は、一旦途絶えた後に再度起こる場合があるが、上記の構成にすることによって、排尿後に使用者が立ち去ってから、洗浄水が供給されるので、1回の排尿に対して2回以上洗浄水を供給する事態を防止でき、水を無駄にする恐れが無くなる。前記液流状態演算手段は液流が無くなったと判断されてから所定時間以上経過すると、前記バルブを開成して洗浄水を供給することができる。
【0024】
排尿は、一旦途絶えた後に再度起こる場合があるが、上記の構成にすることによって、短時間の排尿の中断に惑わされて、1度の排尿に対して複数回洗浄水を供給してしまって、水を無駄にする恐れが無くなる。
【0025】
前記バルブを開成した後に閉成させてから所定時間が経過するまでの間は、該バルブの開成を禁止する事ができる。ボール部内壁面に沿って流れる洗浄水と尿流とは、流速度が近い値となる場合があり、両者を判別できない事がありえる。このような場合に、洗浄水を尿と判断して再度洗浄水を供給することは無駄である。そこで、バルブを開けた場合は、バルブを閉じてもしばらく経過するまでの間は、洗浄水が流れているので、この期間は再度洗浄水を供給しないようにバルブの開成を禁止する事によって、上記のような無駄を防ぐ事ができる。
【0026】
前記制御手段に、前記バルブへの指示状態及び前記液流状態演算手段の出力に基づいて洗浄水の供給状態を判定する洗浄状態判定手段を備え、該洗浄状態判定手段の出力を外部に出力することができる。
【0027】
以上の構成において、バルブへの指示状態とは「開」、或いは「閉」のいずれかである。
一方、液流状態演算手段の出力から洗浄水の流量が得られる。よって、例えば、指示状態が「開」の場合に流量が所定の適正範囲内であるかを洗浄状態判定手段で判定する。また、例えば、指示状態が「閉」の場合に流量が零であるかを洗浄状態判定手段で判定する。
これにより、ドップラーセンサを利用して洗浄状態の自己診断を行うことができる。外部出力手段は、洗浄状態判定手段の出力を外部のシステムで活用する為に信号として出力しても良いし、あるいは、外部出力手段を人に知らせる為の表示やブザー等の手段として構成しても良い。
【0028】
以上の構成によれば、例えば、給水設備の不具合による断水や、便器に付設されている洗浄用配管の詰まりやバルブの不具合等によって、本来洗浄水を供給すべき時に、洗浄水が流れていない場合には、異常の発生を検知して外部に出力することができるので、使用者または管理者が対応することができる。一方、便器に付設されているバルブは「閉」を指示されているにも関わらず、バルブの不具合によって、洗浄水の供給が停止しない場合には、異常の発生を検知して外部に出力することができるので、使用者または管理者が対応することができる。
【0029】
また、供給する洗浄水の量には、排泄物を便器から排出する為に適正範囲があるが、実際には、給水圧力に応じて変わってしまう。これに対して、上記の構成によれば、バルブは「開」を指示されていて、洗浄水は流れているが、その流量が所定の適正範囲内にない場合にも、その旨が外部に出力されるので、外部のシステムによって自動的に、もしくは、人手によって給水圧力を調整して、適切な洗浄水量となるように対処することができる。
【0030】
前記バルブは洗浄水量調節手段を備え、前記液流状態演算手段の出力に基づいて該洗浄水量調節手段を制御する制御手段を備える事もできる。
ここで、液流状態演算手段では洗浄水の流量が演算される。
洗浄水量は、排泄物を便器から排出する為に適正範囲があるが、実際には、給水圧力に応じて変わってしまう。これに対して、上記の構成によれば、演算によって求められた洗浄水の流量が適正範囲になるように洗浄水量調節手段によって調整されるので、自動的に適切な洗浄水量となる。
【0031】
排水管中に尿石が形成される事を防ぐ尿石防止液を排水管へ投入する尿石防止液供給手段を備える事もできる。
ここで、尿石防止液は尿石の形成を抑制できるものであれば良く、例えば、次亜塩素酸等が好ましい。尿石防止液を排水管に投入するのは、定期的に行っても良いし、尿量に応じて投入しても良い。
【0032】
本発明によって節水を実現する場合には、便器自体は充分に洗浄されるが、排水管中の尿濃度が従来よりも高くなり、排水管中に形成される尿石が多くなって、尿石の除去の手間が増す恐れがある。しかしながら、以上の構成によれば、節水をしながら排水管中の尿石の形成を抑制できるので、排水管の維持管理の手間が増える事が無くなる。
【0033】
前記液流状態演算手段によって液流が検出されると、直ちに前記バルブを開成して洗浄水を供給させる制御部を備えてもよい。
以上の構成によれば、小便を検出した際に、直ちに便器に洗浄水が供給されて、ボール部内液面に水膜が形成されるので、ボール部内液面への汚れの付着が防止される。また、使用者を検出してから洗浄水を供給する場合は、使用者が排尿せずに立ち去ったような場合に無駄に水を流してしまう事になるが、この構成では、そのような恐れがなくなる。
【0034】
前記ドップラーセンサは便器本体内部に、前記送信手段からの電波の送信方向を便器本体内部面と略直交させて配置してもよい。
ドップラーセンサを便器の内側に設置する場合に、送信手段からの電波の一部は、便器本体内部面において、媒質の不整合の為に反射を生じるが、以上の構成によれば、便器本体内部面で反射した電波は再びドップラーセンサで反射して、本来の送信方向へと向かうので、結局、より強い電波が便器本体を透過することになって、感度が向上する。
【0035】
前記ドップラーセンサは、便器本体内部に設置され、便器本体面の前記送信手段から送信される電波が通過する領域に密接して、便器本体面における電波の反射を防ぐ板材を設置することもできる。
【0036】
一般に、波動インピーダンスがZAの媒質Aから、波動インピーダンスがZBの媒質Bへと向かう電波は、ZAとZBが異なれば、界面にて一部が反射するが、媒質Aと媒質Bの間に、波動インピーダンスが√(ZAZB)で厚さをλ(2n+1)/4(λ:波長、n:整数)とする媒質を挿入する事によってZAとZBの整合がとれて反射が無くなる事が知られている。
誘電率ε、透磁率μ、の媒質中での周波数fの電波の伝播速度vは、1/√(εμ)であるので、波長λは、λ=v/f=1/f√(εμ)であり、
λ(2n+1)/4=(2n+1)/(4f√(εμ))となる。
即ち、波動インピーダンスが√(Z0Z2) (Z0:空気中の波動インピーダンス、Z2:便器本体の波動インピーダンス)で、厚さを、
(2n+1)/(4f√(εμ)) (ε:誘電率、μ:透磁率、n:整数、f;電波の周波数) とする板材を便器本体面の前記送信手段から送信される電波が通過する領域に密接して設置する事によって、便器本体面における反射を無くすることが出来る。
【0037】
単に、略一様な媒質からなる便器本体の内側にドップラーセンサを設置すると、送信手段からの電波の一部は、便器本体の内部面、及び、外部面において媒質の不整合の為に反射を生じるが、以上の構成によれば、波動インピーダンスの整合が得られる為、反射が減り、より強い電波が便器本体を透過することになって、感度が向上する。
【0038】
前記バルブの下流にボール部内壁面へ洗浄水を吐水する吐水部を備え、該吐水部からの吐水速度を一般的な尿流速度と異ならせる事を特徴として構成されている。
吐水部からの吐水速度とは、吐水部からの水流量(m3/s) を水流の断面積(m2)で除した値であって、これがドップラーセンサの出力の周波数に反映される。従って、吐水部からの吐水速度を一般的な尿流速度(例えば、1.4〜2.8m/s) と異ならせる事によって、両者に対するドップラーセンサの出力の周波数は異なることになる。
よって、前使用者の使用後の洗浄中に次の使用者が小便をする場合等においても、尿流を認識できるので、正確に尿量を計測できる事になる。
【0039】
本発明の他の観点に従えば、便器本体に回動可能に取り付けられた便座及び便蓋を開閉させるための開閉手段と、前記ドップラーセンサの出力に基づいて便器の使用者の有無を検出する使用者検出手段とを備え、前記制御手段は、前記使用者検出手段によって使用者が検出されると前記開閉手段に便座及び便蓋の開成を指示し、その後、前記液流状態演算手段によって液流が検出された後に前記使用者検出手段によって使用者が検出されなくなってから、前記開閉手段に便座及び便蓋の閉成を指示し、前記バルブを開成して洗浄水を供給させる事を特徴とする。以上の構成により、使用者が近づくと自動的に便座、便蓋が開成し、使用者が排尿して立ち去ってから自動的に、便座、便蓋が閉成し、洗浄されることになる。この作用によって、使用者にとっては、便座、便蓋が自動的に開閉する事により、利便性が向上し、また、便座、便蓋に触れる機会が減るので衛生性が向上するという効果が得られる。また、構成として、液流、即ち、小便の検出と、使用者の検出とを唯一のドップラーセンサによって為し得るので、部品数を少なくできる。また、占有スペースが狭くなるので、装置の小型化に有用となる。
【0040】
さらに、前記制御手段は、前記ドップラーセンサからの出力信号に基づいて使用者が前記便器本体に接近したか否か及び前記ボール部内に排尿されたか否かをそれぞれ検出し、前記使用者が前記便器本体に接近した場合は、洗浄水を短時間だけ供給して前洗浄し、前記使用者が排尿を終えた場合は、排尿の量に応じて洗浄水を供給して後洗浄を行うこともできる。
【0041】
また、前記制御手段は、前記液流総量に応じて洗浄水を供給すると共に、前記液流総量に応じて前記尿石防止液の濃度又は前記尿石防止液の供給量の少なくともいずれか一方を調節する事ができる。
【0042】
一方、前記ドップラーセンサは、前記便器本体の背面側から該便器本体を通過して便器のボール部内空間に向けて振動波を送信するように設け、前記便器本体のうち少なくとも前記振動波が通過する部分の全部又は一部は、前記振動波が透過可能に形成してもよい。
【0043】
なお、前記ドップラーセンサは、前記振動波として、電波、光波、音波のいずれかを発生させ、送信周波数と受信周波数の差分に基づいた信号を出力するものであればよい。
【発明の効果】
【0044】
尿流に関する情報を出力する事によって、医療や健康管理の為に活用する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明の実施例を図面をもとに以下に説明する。
【0046】
図1 は、本発明による便器洗浄装置を適用した小便器の構成を示す図である。小便器10の内部には、ドップラーセンサ11、機能部12が収められている。小便器10の上端は、蓋15となっており、ドップラーセンサ11と機能部12が収められている空間のメンテナンス作業が容易にできるようになっている。小便器10の上方背面には、小便器10のボール部内空間を洗浄する為の水を供給する給水部13が設けられている。ボール部内空間の上部には、洗浄水吐出口14が設けられている。小便器の外側の目立たない個所には、清掃作業者が随意にボール部内空間に洗浄水を吐出させる為の洗浄指示ボタン16、及び、本便器洗浄装置の状態を知らせる為のランプ19が設置されている。ボール部内空間の下部には、封水を形成する為のトラップ部17と排水口18が設けられている。
【0047】
ドップラーセンサ11によって尿が検出された場合や、洗浄指示ボタン16が操作された場合には、洗浄水が、給水部13から機能部12を介して、洗浄水吐出口14から吐出されてボール部内空間を洗い流し、トラップ部17を通過して排出口18から排出される。
【0048】
この際、洗浄水吐出口14は、ボール部内空間の内壁面の汚れを洗い落とすように配置されているので、洗浄水は、ボール部内壁面に沿って下方に流れ落ちてゆく。一方、使用者から放出される尿は、一旦ボール部内壁面に衝突した後にボール部内壁面に沿って下方に流れてゆく場合と、直接にボール部内下部に向けて放出される場合とがある。いずれの場合においても、使用者が放出してからトラップ部17に至るまでの尿の流れは、ボール部内壁面とほぼ平行になる。ドップラーセンサ11は、アンカーを用いてボール部内壁面と平行の方向に電波を送信するように配置されているので、洗浄水と尿の信号を高いS/N比と低歪で得ることができる。
【0049】
図2は、ドップラーセンサ11の機能構成図である。ドップラーセンサ11は、例えば、10.525GHzのマイクロ波を送信する送信手段20と、反射波を受信する受信手段21と、送信手段20と受信手段21との周波数との差分を出力する差分検出手段22から構成されている。なお、本実施形態では、電波を用いた場合のドップラー効果を利用するが、これに限らず、例えば、赤外線等の光波や超音波等の音波を利用するドップラーセンサを用いてもよい。
【0050】
図3は、機能部12を具体的に示す構成図である。ドップラーセンサ11の出力はアンプ31で増幅され、FFT演算部32で周波数スペクトラムが求められる。周波数スペクトラムをもとにして、流量演算部33において流量に換算される。コントローラ34は、流量演算部33で演算された流量や洗浄指示ボタン16の操作状況に基づいて、他の装置を作動させる。洗浄水供給バルブ36はコントローラ34の指示により開閉する。電解水生成部38では排水管に尿石が形成される事を防ぐ電解水が生成され、電解水供給バルブ39が開成された時に、洗浄水吐出口14から電解水が流し出される事になる。また、電解水生成部38で生成された電解水が上水に逆流しないように、上流側に逆止弁37が設けられている。コントローラ34は、最低でも、1日に1回は電解水を供給させるようになっていて、さらに、使用頻度に応じて高い頻度で供給させる。外部出力インターフェース35は、外部へ情報を伝送する為のものである。流量演算部33で演算された尿量は、外部出力インターフェース35を介して外部に送られる。また、コントローラ34において便器洗浄装置に異常が有ると判定された場合には、外部出力インターフェース35を介して外部にその旨が伝えられると同時に、ランプ19を点灯させて、管理者に知らしめる。
【0051】
ここで、電解水生成部38について更に詳述する。電解水生成部38は、銀を含有する電極に通電することにより、水中に銀イオンを溶出させて電解水を生成させるようになっている。電極に通電する電流値の大きさや通電時間を調整することにより、電解水中の銀イオン濃度を制御することができる。
【0052】
以上の構成の便器洗浄装置において、使用者が小便をした際の作用について、以下に説明する。図4は、排尿中のドップラーセンサ11の出力信号波形である。アンプ31は、この信号を増幅する。FFT演算部32は、500ms毎の一定周期でアンプ31の出力を演算処理して、例えば、図5に示すような周波数スペクトラムを求める。この周波数スペクトラムは、尿の流れ方によって異なるので、演算する度に変化して当然のものである。
尚、ここでは、FFT演算の周期を500msとしたが、演算周期を短くする事によって、より正確に流量の変化を捉えることができるようになる。逆に、演算周期を長くすることによって演算速度が遅い、即ち、安価な構成にする事ができる。
【0053】
排尿中には、図5に示す周波数スペクトラムのように、50Hz未満の低い周波数と、それよりも高い周波数(fmax)において極大値を有する。そして、高い周波数での極大値(fmax)が、尿流量と相関する事が分かっている。よって、流量演算部33では、50Hz以上での極大値となる周波数(fmax)を求めて、この周波数を元に、予め設定してある周波数と瞬間流量との換算テーブルを参照して、瞬間流量を求める。
【0054】
流量演算部33は、FFT演算部32で周波数スペクトラムが求められる度に、50Hz以上での極大値となる周波数(fmax)を求める。その方法の一例を図6のフローチャートをもとに説明する。メモリー上にf 、Vmax、fmaxという変数を確保しておいて、最初にfに50、VmaxにV(50)、fmaxに50を代入する(S61)。尚、V(50)は、FFT演算部32で求めた50Hzの信号レベルをあらわす。次に、fに1を加算し(S62)、V(f)をVmaxと比較して(S63)、V(f)がVmaxを超える場合のみ、VmaxをV(f)に更新し(S64)、fmaxをfに更新する(S65)。次に、fが500になったかを判定し、(S66)、fが500未満であれば、S2の処理に戻り、500であれば、終了する。以上によって、最終的に、fmaxには、50Hz以上で、最大となる周波数が記録される事になる。
【0055】
流量演算部33は、以上のようにして求めたfmaxを予め設定してある変換式に代入して瞬間流量を演算する。流量演算部33において求められる流量は、例えば、図7のようになる。コントローラ34は、この流量データを外部出力インターフェース35を介して、外部に送信する事ができる。例えば、医師がこのデータをもとに、使用者の健康状態を検査することができる。また、演算された尿流に対して、コントローラ34は、確実に排尿が終了したと判定してから、洗浄水供給バルブ36を開成して、洗浄を開始せしめる。
【0056】
コントローラ34は、流量演算部33で所定の閾値以上の流量を検出する事により、排尿の開始を認識する。その後、排尿が確実に終了したと判定する為に、コントローラ34は、流量演算部33で演算される瞬間流量を用いて、図8のフローチャートに示す処理を行う。500ms毎に演算される瞬間流量を閾値と比較し(S81)、閾値を下回ると、タイマをスタートする(S82)。そして、引き続き瞬間流量を閾値と比較し(S83)、瞬間流量が閾値以上となった場合には、タイマをリセット(S87)して、S1に戻る。
また、S3で瞬間流量が閾値未満の場合は、タイマが2秒経過するかどうかを判定する(S84)。タイマが2秒経過した場合には、前回のバルブ閉成から5秒以上経過していれば、バルブを開成し(S86)、そうでなければ終了する。
【0057】
以上の手順によれば、瞬間流量が2秒以上にわたって閾値未満である場合に初めて洗浄がなされる事になる。また、前回のバルブ閉成から5秒経過していない場合にはバルブを開成しないので、ボール部内壁面を流れる洗浄水を検出した場合に、誤って、再度洗浄するようなことはない。
【0058】
次に、洗浄水供給バルブ36を閉じるタイミングについて説明する。小便器10の衛生を一定水準以上に保つ為には、尿量が多いほど、多くの洗浄水量が必要なので、本便器洗浄装置においては、尿量に対して、供給する洗浄水量が、例えば、図9に示すグラフのように設定されている。従って、供給する洗浄水量は、図7に示した瞬間流量のデータを積算して、尿量を演算し、この尿量をもとにコントローラ34に予め設定されているテーブルを参照する事によって求められる。
【0059】
このようにして求められた量の洗浄水を供給する為に、コントローラ34は、洗浄水供給バルブ36を開成した後に、図10のフローチャートに示す手順で洗浄水供給バルブ36を閉成させる。先ず、尿と同様に、ボール部内壁面を流れる洗浄水に対して、ドップラーセンサ11からその流量に応じた周波数特性の信号が出力されるので、尿の場合と同様にして、洗浄水の瞬間流量が求められる。但し、尿と洗浄水とでは、流れの面積、センサに対する位置、流れの状態等が異なるので、周波数スペクトラムから瞬間流量を導く換算テーブルは、それぞれ個別に有している。瞬間流量を積算してゆく事で(S101)今までに供給された洗浄水量が求められており、この洗浄水量が設定値に達したかを比較して(S102)、設定値に達すれば、バルブを閉成する(S103)。
【0060】
以上の手順で、使用者が小便をした際には、確実に排尿が終了した時点で、小便量に応じた適切な量で洗浄し、また、小便量を外部に出力して健康管理に活用することができる。
また、本便器洗浄装置は、洗浄の状態を検出して出力する事が可能である。即ち、本装置は、ドップラーセンサ11を利用した自己診断機能を備える。コントローラ34が、洗浄水供給バルブ36バルブを開ける指示を出しているときに異常を検出して出力する方法の一例を、図11に示すフローチャートに基づいて説明する。洗浄水供給バルブ36バルブを開成させた後に、タイマをスタートさせる(S111)。そして、流量演算部32で演算される流量が適正下限値Q1と適正上限値Q2の間にあるかを判定して(S112)、適正範囲内であれば、タイマをリセットする(S113)。一方、流量が適正範囲外であれば、タイマがカウントアップしたかどうかを判定し(S114)、カウントアップしていない場合は、S2での流量の判定を継続する。タイマがカウントアップした場合は、外部出力インターフェース35から、『流量が所定時間以上にわたって適正範囲外である』という情報を出力し(S115)、ランプ19を点滅(S116)させる。尚、以上の処理は、洗浄水供給バルブ36バルブを開かせているときのみ実施する。また、異常と判定する時間は、洗浄水供給バルブ36に開成の指示を出してから、ボール部内壁面での洗浄水流が定常状態に達するまでの時間よりも充分に長く(例えば2秒に)設定しておく事によって、洗浄水供給バルブ36を開成した直後は洗浄水量が定常値に達していない為に異常と判定してしまう恐れが無くなる。
【0061】
次に、コントローラ34が、洗浄水供給バルブ36を閉じさせているときに異常を検出して出力する方法の一例を、図12に示すフローチャートに基づいて説明する。洗浄水供給バルブ36バルブを閉成させた後に、タイマをスタートさせる(S121)。そして、流量演算部32で演算される流量Qが零であるかを判定して(S122)、零であれば、タイマをリセットする(S123)。一方、流量が零でなければ、タイマがカウントアップしたかどうかを判定し(S124)、カウントアップしていない場合は、S122での流量の判定を継続する。タイマがカウントアップした場合は、外部出力インターフェース35から、『流量が所定時間以上にわたって零でない』という情報を出力し(S125)、ランプ19を点灯させる。尚、以上の処理は、洗浄水供給バルブ36バルブを閉じさせているときのみ実施する。また、異常と判定する時間は、一般的な排尿時間よりも充分に長く(例えば3分に)設定しておく事によって、排尿を検出したのに異常と判定してしまう恐れが無くなる。
【0062】
図13は、本発明による便器洗浄装置の第2の構成例を示す図である。図3の構成に加えて、洗浄水供給バルブ41の下流に流量調整弁42が設けられている。流量調整弁42は、開度変更手段43により流路の開度が段階的に変更されるようになっている。開度変更手段43は、コントローラ44の指示によって作動するステッピングモータにより駆動される。
【0063】
以上の構成において、コントローラ34が洗浄水供給バルブ41を開けている間に、ボール部内壁面を流れる洗浄水量が適正範囲にない場合に、洗浄水量を自動的に調整する方法を、図14 のフローチャートをもとに説明する。
【0064】
洗浄水供給バルブ41を開成し(S141)、ステッピングモータを所定のPステップだけ開弁方向に回動させて(S142)、所定時間が経過するまで待つ(S143でN)。そして、所定時間が経過すると(S143でY)、演算された瞬間流量Qが適正下限値Q1よりも小さいか否かを判定し(S144)、瞬間流量Qが適正下限値Q1よりも小さい場合には、開度変更手段43を1ステップ開作動させて流量調節弁42の流路面積を増大させる(S145)。逆に、瞬間流量Qが適正上限値Q2よりも大きい場合には(S146でY)、開度変更手段43を1ステップ閉作動させて流量調節弁42の流路面積を小さくさせる(S147)。以上の調整動作を洗浄水供給バルブ41に閉成指示を出すまで継続する(S148)。ここで、S143において調整しないようにする時間は、洗浄水供給バルブ41を開成してからボール部内壁面を流れる洗浄水量が定常値に達するまでの時間よりも充分に長く(例えば2秒に)設定する。以上の処理により、再び洗浄水供給バルブ41が開成される時まで、流量調整弁42の開度は保たれるので、給水圧に変化がない限りは、次回は始めから適正な流量の洗浄水が供給される事になる。
【0065】
図15は、本発明による便器洗浄装置の第3の構成例を示す図である。図3の構成との相違点は、周波数解析手段として、FFT演算手段に代えてバンドパスフィルタ51を採用した点にある。バンドパスフィルタ51を用いる事により、安価な構成とする事ができる。
【0066】
バンドパスフィルタ51は、尿流による信号の周波数を通過するように通過帯域を設定されていて、例えば、図16のような出力信号が得られる。図16において、出力信号は排尿が開始する以前は一定の零レベルを保っているが、排尿が開始されると、零レベルの上下に波打つ波形となる。
【0067】
通常は尿流速度と洗浄水の流速度は近い値なので、両者に対してドップラーセンサの出力の周波数は近い値となる。従って、バンドパスフィルタ51からは尿流の場合も洗浄水の場合も略同等の出力が得られるが、洗浄水の吐出部の形状を改めることによって、洗浄水の流速度を尿流速度と異ならせることができ、バンドパスフィルタ51で尿流のみを検出できるようになる。こうすることによって、洗浄中であっても、尿流を検出できるようになるので、前使用者の使用後の洗浄中に次の使用者が小便をする場合等においても、正確に尿流を計測できるので好ましい。
【0068】
図33は、洗浄水の流速を尿流速度と異ならせる為の吐水部の一例を示す断面図である。
入水部130に入る洗浄水は、吐水部本体内部を流れた後、大部分が吐出方向制御板131に衝突してから、吐出口132から流れ出る。この際、吐出口132は洗浄水の流れから見て左右、及び、下方向に開口部が設けられているので、洗浄水は、図34に示すように、ボール部内壁面に沿って、広がって流れ出る事になる。つまり、洗浄水を吐出方向制御板131に吐出させ吐出口から略放射状に吐出させることにより、洗浄水の流速度を遅くさせることができ、洗浄中であっても、尿流が検出できる事になる。なお、洗浄水の流速を低下させる手段は、図33に示すものに限らない。
【0069】
図15に戻る。バンドパスフィルタ51は、コンデンサと抵抗器を用いた回路で構成する事が可能である。或いは、他の構成として、マイクロコンピュータやDSP(Digital Signal Processor)等の演算器を用いてデジタルフィルタとする事により、簡単な構成にする事が出来る。即ち、アンプ54の出力を等時間隔でA/D変換し、そのA/D値を必要なフィルタ特性に合わせた演算処理に代入することで実現できる。
【0070】
排尿が開始されると直ちに、コントローラ53は、ボール部内壁面への汚れの付着を防ぐ為に洗浄水を供給してボール部内壁面に水膜を形成させる。具体的には、図26のフローチャートに示す手順で行われる。バンドパスフィルタ51の出力レベルVが、図16中に示すV1以下、或いは、V2以上になると(S261でN)、タイマをスタートする(S262)。タイマが0.2secに達するまでは(S263でN)、バンドパスフィルタ51の出力レベルVがV1からV2の範囲になって50msecが経過しないか(S264)を判定する。バンドパスフィルタ51の出力レベルVがV1からV2の範囲になって50msecが経過すると(S264でY)、尿流ではなく、雑音であるとみなして、タイマをクリアし(S265)、再びバンドパスフィルタ51の出力レベルVが、V1以下、或いは、V2以上にならないかを調べる(S261)。一方、タイマが0.2secに達すると(S263でY)、洗浄水供給バルブ52を所定時間開成する(S176)。
【0071】
排尿後に洗浄水を供給するまでの手順を、図17のフローチャートに示す。バンドパスフィルタ51の出力レベルVが、V1以下、或いは、V2以上になると(S171でN)、タイマをスタートする(S172)。V がV1からV2の範囲になって所定時間が経過すると(S173でY)、タイマを停止し(S174)、洗浄水供給バルブ52を開成する(S175)。S173における所定時間は、一般に尿が中断する時間より充分に長く(例えば、2秒)設定しておく。以上の処理が終了した時点で、タイマの値、即ち、排尿が検出された時間は、洗浄水量に反映されことになる。
【0072】
次に、コントローラ53には、タイマ値から洗浄水供給バルブ52を開けておく時間を導くテーブルが図18のように予め設定されているので、コントローラ53は、このテーブルを参照して得られた時間が経過した後で、洗浄水供給バルブ52を閉じる。以上のようにすれば、尿流継続時間に比例して尿量が増える傾向を利用して、洗浄水量を適切に制御する事ができる。
【0073】
小便器におけるドップラーセンサの他の配置例を図19の図面をもとに説明する。小便器60の内部には、ドップラーセンサ61及び機能部62が収められている。小便器60の上端には、蓋65が設けられており、ドップラーセンサ61と機能部62が収められている空間のメンテナンス作業が容易にできるようになっている。また、小便器60での洗浄水の流れは、第1の例の場合と同じである。ドップラーセンサ61は、アンカーを用いて使用者に向けて電波を送信するように配置されているので、使用者及び使用者から放出される尿の信号を高いS/N比と、低歪で得ることができる。
【0074】
機能部62は図20で示す構成である。ドップラーセンサ61の出力はアンプ71で増幅され、50Hz未満の信号を通過させる低域バンドパスフィルタ72と、100〜500Hzの信号を通過させる高域バンドパスフィルタ73とにそれぞれ出力される。コントローラ74は、低域バンドパスフィルタ72と、高域バンドパスフィルタ73の出力に基づいて、洗浄水供給バルブ75を作動させる。
【0075】
以上の構成の小便器において、使用者が小便器60に接近する場合又は使用者が小便器60から離隔する場合には、主に低域バンドパスフィルタ72から信号が出力される。一方、尿流は人体に比べて速度が速いので、主に高域バンドパスフィルタ73から信号が出力される。従って、コントローラ74は人の動きと尿流とを識別できる。
【0076】
洗浄水供給バルブ75の制御方法の一例を図21のフローチャートをもとに説明する。コントローラ74は、低域バンドパスフィルタ72、高域バンドパスフィルタ73の出力に基づいて、使用者の有無を識別している。そして、使用者不在と判定している時には、図21のフローチャートに示す処理を行う。即ち、低域バンドパスフィルタ72の出力が閾値を超えた場合(S211でY)には、洗浄水供給バルブ75を一定時間開ける(S212)。尚、以上の処理は、洗浄水供給バルブ75を閉じている間は継続的に行われる。以上の処理によって、使用者が接近した場合に、排尿以前にボール部内壁面に水膜を形成して、汚れを落とし易くすることができる。
【0077】
コントローラ74は、洗浄水を供給していない時に高域バンドパスフィルタ73の出力が所定の閾値以上となることにより、排尿の開始を認識する。その後、排尿が確実に終了したと判定する為に、コントローラ74は、図22のフローチャートに示す処理を行う。高域バンドパスフィルタ73の出力は、排尿中は閾値以上であるが(S221でN)、排尿が終了すると閾値を下回り(S221でY)、次に、低域バンドパスフィルタ72の出力は、使用者が立ち去るまでは閾値を超えないが(S222でN)、使用者が立ち去ると閾値を超えて(S222でY)、バルブが開成される(S223)。
【0078】
洗浄水供給バルブ75を閉じるタイミングについては、先に示した例と同様に、尿流の継続時間に応じて適切に設定する事ができる。また、バンドパスフィルタに変えて、FFT演算を行って、流量を正確に認識することも可能である。
【0079】
更に小便器におけるドップラーセンサの他の配置例を以下に説明する。図27は、その概要を示す図である。小便器90の上方の内部には、ドップラーセンサ91及び機能部92が収められている。小便器90の上端には蓋95が設けられており、ドップラーセンサ91と機能部92が収められている空間のメンテナンス作業が容易にできるようになっている。また、小便器90での洗浄水の流れは、前述の例の場合と同じである。ドップラーセンサ91は、尿流をより確実に検出する為に、大多数の尿流方向と平行な方向に向けて、即ち、斜め下向きに電波を送信するように配置されているので、使用者から放出される尿の信号を高いS/N比と、低歪で得ることができる。
【0080】
図28は、小便器90上部の断面図である。ドップラーセンサ91は、スペーサ101を用いて、小便器90の内面と送信方向が直交するようにして配置されている。また、小便器90の、ドップラーセンサ91から送信される電波が通過する部分の内面には、比誘電率が約3で、比透磁率が約1であるABS樹脂製の反射防止板102がアンカーを用いて密接して配置されている。
【0081】
ドップラーセンサ91からは、例えば10.525GHzの電波が送信されるようになっている。ドップラーセンサ91が発信した電波は、ドップラーセンサ91と反射防止板102との間のギャップ内に存在する空気中を伝播してから、反射防止板102を透過して小便器90の陶器製の内壁へと進む。ここで、空気中の波動インピーダンスZ0は、Z0=√(ε0/μ0)である。また、陶器の比誘電率は約9なので、小便器90の陶器製の内壁の波動インピーダンスZ2は、Z2≒√(9ε0/μ0)となる。反射防止板102の波動インピーダンスZ1はZ1≒√(3ε0/μ0)である。
√(Z0×Z2)≒√{√(ε0/μ0)×√(9ε0/μ0)}=√(3ε0/μ0)
なので、反射防止板102の波動インピーダンスZ1≒√(Z0×Z2)という関係を満たす事になる。ここで、ε0は真空の誘電率、μ0は真空の透磁率をそれぞれ示す。
【0082】
さらに、反射防止板102の厚さを、1/(4f√(εμ))=1/(4f√(3×ε0μ0))=1/(4×10.525×109×√(3×8.854×10−12×4π×10−7))≒4.1mmと設定する事により、ドップラーセンサ91から送信される電波は、小便器90の陶器製の内壁との間で波動インピーダンスの整合が得られる。従って、感度を下げる原因となる反射を防ぐ事が出来る。尚、小便器90のボール部側にも他の反射防止板を設ける事によって、更にボール部内壁面での反射を防止できる。
【0083】
尚、反射防止板の材料としては、上述したABS樹脂に限るものではなく、比誘電率が約3で、比透磁率が約1である材料であればよい。例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等を用いる事が可能である。
【0084】
今までは、小便器への適用について述べてきたが、本発明は同様に大便器にも適用する事ができる。例えば、図23に示すように陶器製の大便器の下部の内側に、ドップラーセンサ81を上方に向けて電波を送信するように配置する事によって、使用者、及び、尿流を検出して洗浄の制御などに活用できる。
【0085】
さらに、本発明を多機能な大便器システムへ適用する事も可能である。図29はその一例を示すもので、大便器110には便座111、便蓋112、タンク収納ケース113が設けられている。タンク収納ケース113には、局部洗浄手段114、洗浄水タンク115、機能部116、ドップラーセンサ117がそれぞれ設けられている。また、ドップラーセンサ117は、電波の送信方向が大便器110の前方となるように設置されており、これによって、単一のドップラーセンサ117により使用者の存在と使用者の尿流との両方を検出可能となっている。
【0086】
機能部116は図30で示す構成である。ドップラーセンサ117の出力はアンプ120で増幅され、50Hz未満の信号を通過させる低域バンドパスフィルタ121と、100から200Hzの信号を通過させる高域バンドパスフィルタ122にそれぞれ出力される。便蓋開閉手段123は、コントローラ125の指示により便蓋112を開閉する。便座開閉手段124は、コントローラ125の指示により便座111を開閉する。局部洗浄手段114は、コントローラ125の指示により、便座に座る使用者の局部へ湯水を吐出させるものである。大小切替洗浄手段126は、大便か小便かによって洗浄水の量を二段階に異ならせて、タンク115から大便器110へ洗浄水を供給する手段である。使用者が操作手段127を操作することにより、局部洗浄手段114、便座開閉手段124、便蓋開閉手段123、大小切替洗浄手段126を作動させることができる。
【0087】
以上の構成の大便器システムにおいて、使用者が大便器110に接近又は離隔する際には、主に低域バンドパスフィルタ121から信号が出力される。一方、尿流は人体に比べて速度が速いので、主に高域バンドパスフィルタ122から信号が出力される。このため、コントローラは人の動きと尿流とを識別できる。
【0088】
便蓋開閉手段123、便座開閉手段124、及び、大小切替洗浄手段126の制御方法の一例を、以下フローチャートをもとに説明する。コントローラ125は、低域バンドパスフィルタ121の出力に基づいて、使用者の有無を識別している。そして、使用者無しと識別している時には、図31のフローチャートに示す処理を行う。即ち、低域バンドパスフィルタ121の出力が閾値を超えた場合(S311でY)には、便蓋開閉手段123を作動させて、便蓋112を開ける(S312)。以上の処理によって、使用者が接近した場合に、自動的に便蓋112が開けられるので、使用者の手間を省く事が出来る。
【0089】
次に、使用者が小便をした場合には、コントローラ125は、高域バンドパスフィルタ122の出力が所定の閾値以上となることにより、排尿の開始を認識する。その後、排尿が確実に終了したと判定する為に、コントローラ125は、図32のフローチャートに示す処理を行う。高域バンドパスフィルタ122の出力は、排尿中は閾値以上であるが(S321でN)、排尿が終了すると閾値を下回る(S321でY)。次に、低域バンドパスフィルタ121の出力は、使用者が立ち去るまでは閾値を超えないが(S322でN)、使用者が立ち去ると閾値を超えて(S322でY)、大小切替洗浄手段126により、小便を洗い流すための洗浄水が供給され、便蓋開閉手段123、便座開閉手段124を作動させて、便蓋112と便座111を閉じる(S313)。
【0090】
洗浄水供給バルブを閉じるタイミングについては、先に示した例と同様に、尿流の継続時間に応じて適切に設定する事ができる。また、バンドパスフィルタに変えて、FFT演算を行って、流量を正確に認識することも可能である。
【0091】
次に、図35及び図36を参照して、ドップラーセンサからの信号をバンドパスフィルタで処理することにより、放尿の開始から終了までの放尿期間や使用者の接近及び離隔を検出する方法について説明する。
【0092】
図35は、ドップラーセンサからの出力信号を示す波形図である。使用者が便器に向かって移動してくると、比較的振幅の大きい出力波形が得られる。使用者が便器の前に到達して立ち止まり、放尿の準備を開始すると、振幅が小さくなる。そして、放尿が開始されると、尿流の速度に応じて比較的安定した振幅の波形が出力される。使用者が放尿を終えて身仕舞いを開始すると、使用者の動きに応じた波形が得られる。最後に、使用者が便器から離れると、使用者が便器から離隔する速度に応じて比較的振幅の大きな波形が得られる。
【0093】
従って、図36に示すように、例えば、100〜200Hzの周波数を通過させる高域バンドパスフィルタを用いれば、図35に示す出力波形から放尿期間中の波形のみを取り出すことができる。そして、上述の通り、検出された放尿期間だけ予め設定された瞬間流量を積算することにより、使用者の放尿量を算出することができ、放尿量に応じた水量の洗浄水を供給して便器を効果的に無駄なく洗浄することができる。
【0094】
一方、図37は、例えば、10〜40Hzの周波数を通過させる低域バンドパスフィルタを用いた場合の波形図である。低域バンドパスフィルタを用いることにより、図35に示す波形から使用者の動きのみを検出することができる。従って、放尿に訪れた使用者の動きや放尿を終えた使用者が便器から立ち去る動きを検出することができる。そして、例えば、使用者が便器に接近した場合又は放尿の直前あるいは放尿開始と同時に、少量の洗浄水を予め供給して便器内に水膜を形成することもできる。
【0095】
次に、図38は、ドップラーセンサの外観を模式的に示す図である。ドップラーセンサは、それぞれ2個ずつの送信アンテナ151及び受信アンテナ152を有し、それぞれ2個1組の送信アンテナ151及び受信アンテナ152は、互いに対向してドップラーセンサの検出面150に設けられている。なお、これはドップラーセンサの一例であって、本発明はこれに限定されない。送信アンテナ及び受信アンテナを3個以上設けても良く、あるいは、2個の送信アンテナと4個の受信アンテナのように、送信側と受信側とでアンテナの数を違えてもよい。
【0096】
次に、ドップラーセンサの取付方法について具体例を幾つか例示する。まず、図39に示す例では、小便器210が取り付けられているパネル200の背面側に、ドップラーセンサ222を設けている。
【0097】
小便器210の便器本体211は、パネル200に取り付けられている。便器本体211の前面には、使用者が放尿するためのボール部212が広く開口して設けられている。また、便器本体211の上側には、ボール部212内に洗浄水を吐出供給するための吐出口213が設けられ、便器本体211の下側には、洗浄水や尿が一時的に溜まるトラップ部214と、洗浄水や尿を排出するための排水口215とが設けられている。
【0098】
次に、便器本体211の背面側に着目すると、便器本体211の背面側に位置するパネル200の裏面上側には、吐出口213に洗浄水を供給するための給水部220と、開成又は閉成することにより給水部220からの給水を制御する洗浄水供給バルブ221が設けられている。なお、電解水生成部、電解水供給バルブ等も設けられているが図示を省略している。
【0099】
制御部230は、ボール部212の上方に位置するようにして、パネル200の裏面側に設けられている。そして、ドップラーセンサ222は、パネル200及び便器本体211を介して、略使用者の方向を向くように取り付けられている。
【0100】
ドップラーセンサ222から送信された電波は、パネル200及び便器本体211を透過してボール部212に到達し、ボール部内の液流(洗浄水又は尿流)で反射する。反射された電波は、再び便器本体211及びパネル200を透過して、ドップラーセンサ222に受信される。
【0101】
このように、便器本体211の裏側にドップラーセンサ222を設けても、洗浄水の流れや尿の流れ及び使用者の動きを非接触で検出することができる。また、ドップラーセンサ222を、便器本体211の内部ではなく、便器本体211の外部に位置する背面側に設ける構成のため、便器本体211の構造を簡素化することができるほか、洗浄水や尿からドップラーセンサ222を隔離することができるため、水分やアンモニア等による劣化なども防止することができる。
【0102】
次に、図40は、ドップラーセンサの他の取付例を示す。本例では、制御部230a及びドップラーセンサ222aを、ボール部212の下方に位置するようにして、パネル200の裏面側に取り付ける。
ドップラーセンサ222aは、ボール部212の下側から斜め上向きに電波を送受信するようにして設けられている。
【0103】
これに対し、図41に示すように、制御部230b及びドップラーセンサ222bを便器本体211の上側に位置してパネル200の裏面側に取り付けることもできる。
この場合、ドップラーセンサ222bは、ボール部212の上方から斜め下を見下ろすようにして、電波を送受信するように取り付けられる。
【0104】
次に、図42は、大便器に適用する他の例を示す模式図である。大便器300の便器本体310には、ボール部311,便座312,排水口313等が設けられている。また、便器本体310の後方上側には、機能部収容空間320が設けられており、該空間320内には、洗浄水供給バルブ321やドップラーセンサ322が収容されている。
【0105】
ドップラーセンサ322は、便器本体310の外部に位置して、斜め上方からボール部311に向けて電波を送信するようになっている。洗浄水による便器洗浄中は、ドップラーセンサ322からの出力信号を無視し、洗浄水を尿流を間違えて検出するのを防止する。
【0106】
なお、本発明は上述した各実施の形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、構成を追加、変更、削除等することができる。例えば、ドップラーセンサは電波(マイクロ波)を用いるものに限らず、超音波や赤外線等の他の波動を利用するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の実施例に係る小便器の構成図である。
【図2】本発明の実施例に係るドップラーセンサの機能構成図である。
【図3】本発明の実施例に係る小便器の機能構成図である。
【図4】排尿中のドップラーセンサの出力信号波形である。
【図5】FFT演算部で求められる周波数スペクトラムである。
【図6】周波数スペクトラムから最大値となる周波数を求める手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】流量演算部において求められる流量の一例を示すグラフである。
【図8】確実に排尿が終了したと判定する方法の一例を示すフローチャートである。
【図9】尿量と、供給する洗浄水量との関係を示すグラフである。
【図10】洗浄水供給バルブが閉成するまでの手順を示すフローチャートである。
【図11】コントローラが、洗浄水供給バルブバルブを開かせているときに異常を検出して出力する方法の一例を示すフローチャートである。
【図12】コントローラが、洗浄水供給バルブバルブを閉じさせているときに異常を検出して出力する方法の一例を示すフローチャートである。
【図13】本発明による便器洗浄装置の第二の構成例を示す機能構成図である。
【図14】ボール部内壁面を流れる洗浄水量が適正範囲にない場合に、自動的に調整する方法を示すフローチャートである。
【図15】本発明による便器洗浄装置の第三の構成例を示す図である。
【図16】バンドパスフィルタの出力信号の一例を示す図である。
【図17】バンドパスフィルタの出力信号に基づいて、洗浄水を供給するまでの手順を示すフローチャートである。
【図18】タイマ値から洗浄水供給バルブを開けておく時間を導くテーブルを説明する図である。
【図19】小便器におけるドップラーセンサの他の配置例を示す図である。
【図20】機能部の構成を示す図である。
【図21】洗浄水供給バルブの制御方法の一例を示すフローチャートである。
【図22】排尿後に洗浄水供給バルブを開成するまでの処理方法の一例を示すフローチャートである。
【図23】本便器洗浄装置を大便器に適用する際の、ドップラーセンサ配置の一例を示す図である。
【図24】水流に対するドップラーセンサの出力の周波数スペクトラムを示すグラフである。
【図25】周波数スペクトラムにおけるピーク周波数と流速度との関係を示すグラフである。
【図26】排尿が開始されると直ちにボール部内壁面への汚れの付着を防ぐ為に洗浄水を供給する手順を示すフローチャートである。
【図27】小便器におけるドップラーセンサの他の配置例の概要を示す図である。
【図28】図2 7 に示す小便器上部の断面図である。
【図29】本発明を多機能な大便器システムへ適用する一例を示す図である。
【図30】多機能な大便器システムの機能部の構成を示す図である。
【図31】便蓋開閉手段、便座開閉手段、及び、大小切替洗浄手段の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【図32】排尿後の便蓋開閉手段、便座開閉手段、及び、大小切替洗浄手段の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【図33】洗浄水の流速を尿流速度と異ならせる為の吐水部の一例を示す断面図である。
【図34】図3 3 に示す吐水部を用いた際の洗浄水の流れを示す図である。
【図35】小便時のドップラーセンサの出力を増幅した波形を示す波形図である。
【図36】小便時のアンプ波形を高域バンドパスフィルタで処理し、尿流のみを検出する状態を示す波形図である。
【図37】小便時のアンプ波形を低域バンドパスフィルタで処理し、人体の動きのみを検出する状態を示す波形図である。
【図38】ドップラーセンサの外観図である。
【図39】ドップラーセンサを便器の外部に取り付ける具体例を示す説明図である。
【図40】ドップラーセンサを便器の外部に取り付ける他の具体例を示す説明図である。
【図41】ドップラーセンサを便器の外部に取り付けるさらに別の具体例を示す説明図である。
【図42】ドップラーセンサを大便器に取り付ける場合の具体例を示す説明図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿量を計測し、健康管理に活用するための健康管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用足し後の便器本体の洗浄を自動化する為に、便器に赤外線センサ等の人体検知センサを設置し、この人体検知センサが一定時間以上使用者を検知した場合には、その後に使用者が離れたことを検知して、一定量の洗浄水を流すようにしたものがある。しかし、このような人体検知に基づいた自動洗浄システムでは、用足しの有無や小便の量に関わらず一定の洗浄水を流していたので、無駄が多かった。そこで、上記問題を解決するものとして、特開平10−37284号公報で提案された装置は、小便器のトラップ部の水圧変化を圧力センサで検出することによって、トラップ部の水位変化、即ち、排尿を検出するというものである。この方式によれば、排尿が有ったことを検出するので、小便器の前に来たが用足しをしなかった人がいても、誤って洗浄水を供給する事は無い。また、排尿された尿量を検出して、尿量に応じた洗浄水を供給することで、不必要に大量の洗浄水を無駄に流す事が無い。また、排水管が詰まっている場合に小便器に洗浄水を流し続けると、水位が上昇して洗浄水が小便器から溢れ出てしまう事があるが、水位を検出する事によって、事前にバルブを制御して、便器本体から洗浄水が溢れ出ることを未然に防ぐ事ができる。さらに、圧力センサによって洗浄水の供給状態が検出できるので、「断水」、「でっぱなし」を検出して警報を発する事ができる。
【0003】
しかしながら、上記した圧力センサを用いた洗浄システムは、トラップ内の水圧を検出する為にトラップ部と圧力センサとを配管で連結する構造をとっていて、トラップ部での配管接続部において、長期間にわたって水密を確保する必要があるが、これは実際には容易ではない。また、センサ部が液体や有害ガスに侵されないようにする為の保護部材が必要であり、組み立てが困難である。水圧検出の為の配管部が詰まらないように、洗浄水の一部を供給してこの配管を洗浄するとしているが、ますます複雑な構造となるので、組み立てが困難になるとともに、故障の発生原因となりうる。さらに、配管部に故障が生じた場合には、給水管及び排水管から小便器を離して、小便器を壁面から前方に移動させた後に、ようやく小便器の背部から修理に取り掛かれるというもので、とても現実的なシステムであるとは言えない。
【0004】
また、トラップ部の水圧の検出を利用する根本的な問題として、排水管の圧力変動を受けるという事がある。即ち、一般に、排水管は複数の便器や洗面器等の設備機器の排水部が接続されていて、個々の設備機器からの排水を集めて下水設備へと送っている。排水管内の圧力は、複数の設備機器からの排水によって絶えず変動しているので、これに応じて小便器のトラップ内の水圧も変動しており、排尿のみを確実に検出するのは、実際には難しい。
【特許文献1】特開平10-37284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した背景に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、上記した問題を解決し、使用状態に応じて適切に洗浄水を供給することにある。また、洗浄水の断水やでっぱなしを自己診断し、その警報を発することにより節水を図ることも目的とする。さらに、本発明の他の目的は、構造が単純で、万一故障した場合でも、容易に修理できる便器洗浄装置を提供することにある。本発明のさらなる目的は、後述する実施形態の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、本発明は、便器本体に対し洗浄水を供給可能とするバルブ付き洗浄水配管を備えた便器に設置され、前記バルブの開閉制御をする便器洗浄装置であって、便器のボール部内空間又はボール部開口部の近傍空間に向けて電波を送信する送信手段と該送信手段によって送信された電波の反射波を受信する受信手段とを有し、該受信手段で受信した信号の周波数と前記送信手段によって送信された信号の周波数との差分に応じた差分信号を生成するドップラーセンサを設置し、該ドップラーセンサの出力を周波数解析する周波数解析手段の出力に基づいて、ボール部内空間の液流状態を液流状態演算手段によって演算し、その演算結果に応じて前記バルブの制御を行う制御手段を設けた事を特徴として構成されている。
【0007】
電波(特にマイクロ、ミリ波)によるドップラーセンサは、ドップラ効果を利用して以下の原理で物体(動き)検知に用いられている。
基本式:ΔF=Fs−Fb=2×Fs×ν/c
ΔF:ドップラ周波数
Fs:送信周波数
Fb:反射周波数
ν:物体の移動速度
c:光速(300×106m/s)
アンテナから送信されたFsは、物体に反射し、相対運動νによるドップラ周波数シフトを受けFbとなる。この時、送信波と反射波の周波数差ΔFが検出信号として取り出せる。
【0008】
このドップラーセンサを水流に向けると、その流速度に応じた周波数の信号が出力される事が、実験により確認された。図24は、水流にドップラーセンサを向けて、その出力の周波数スペクトラムを求めたものである。流速度を違えると、得られるスペクトラムは変化して、例えば、ピーク周波数と流速度との関係をグラフ化すると図25のようになって、流速度とドップラーセンサの出力の周波数特性との間に相関があることが言える。よって、便器のボール部内空間に向けて電波を送信するドップラーセンサからは、尿または洗浄水の流れの速度に応じた周波数の信号が出力される。よって、ドップラーセンサの出力を周波数解析して、尿や洗浄水といったボール面を流れる液流に関して、その液流の有無や量、或いは、流量の時間的変化等を演算して求めることによって、それに応じた適切なバルブの開弁タイミングまたは閉弁タイミング等の制御を行うことができる。
【0009】
この際、便器が陶器、樹脂等で形成されていれば、電波が透過するので、ドップラーセンサは便器の内側に設置することが可能である。その為、センサが洗浄水や排泄物により腐蝕する恐れが無い。また、外観上はセンサが見えないので、見栄えが良いし、悪戯されにくい。また、構造が単純なので、製品の組み立てが容易である。
【0010】
また、周波数解析手段は高速フーリエ変換による周波数スペクトラムを出力するものであり、液流状態演算手段は、所定の閾値以上の周波数の有無によって液流の有無を判断することができる。
FFT(Fast Fourier Transform)を用いる事により、ドップラーセンサの出力の周波数スペクトルが、リアルタイムに得られる。得られた周波数スペクトルから、尿や洗浄水を検出できる。
あるいは、周波数解析手段は、特定範囲の周波数の信号のみを通過出力するフィルタであり、液流状態演算手段はフィルタからの出力と所定の閾値とを比較して液流の有無を判断する事もできる。
フィルタの通過帯域を、尿流や洗浄水流に対するドップラーセンサの出力信号の周波数分布の実態に合わせて設定しておく事により、尿流や洗浄水流を検出できる。前記液流状態演算手段は、液流が有ると判断する時間を計測する計時手段を有する事もできる。
【0011】
以上の構成によれば、尿に関しては、瞬間流量を代表値に設定しておいて、その代表値と継続時間との乗算によって、およその尿総量を簡単に把握することができる。尿総量を求める事によって、尿総量に見合った適切な洗浄水を供給できるので、節水が可能になる。
【0012】
一方、洗浄水に関しては、便器に洗浄水が実際に流れている時間を把握して、バルブの開放指示している時間と比較する事によって、「断水」や「配管詰まり」を検出して対処する事ができる。
【0013】
前記液流状態演算手段は、高速フーリエ変換による周波数スペクトラムの極大値に基づいて液流量を演算する事もできる。ドップラーセンサの出力の周波数スペクトラムと液流速とは相関があるので、FFTの出力に基づいて液流量を導くことができる。
【0014】
こうする事によって、瞬間液流量を把握する事ができる。洗浄水の瞬間流量は、少なすぎれば排泄物を便器から排出できない。逆に、多すぎても、総洗浄水量が多くなって無駄になる、水はねを生じるという問題があるので、適正な範囲である事が好ましい。よって、洗浄水の瞬間流量を得る事によって、何らかの対応を取る事が可能になる。
【0015】
また、尿の瞬間流量、及び、その時間的変化は、尿路障害等によって健常者と違いがあるので、この装置を用いる事によって、容易に排尿機能の検査ができるようになる。
【0016】
前記液流状態演算手段は、液流が有ると判断する時間における液流量を積算して液流の総量を演算する事もできる。瞬間液流量を積算することによって、より正確に総流量を得ることができる。これによって、尿総量に見合った適切な洗浄水を供給できるので、節水が可能になる。一方、実際に便器に流れる洗浄水量を正確に得る事によって、洗浄水量を適切にするように対処できる。
【0017】
前記ドップラーセンサは、送信手段から便器のボール部内壁面の流水方向と略平行方向に向けて電波を送信する事ができる。
ドップラーセンサは、対象物体の移動速度に基づく周波数の信号を出力する。ここでの移動速度は、電波の送受信方向と同一の成分が、出力信号に大きく反映されるのであって、他方向の成分はセンサ出力信号として殆ど反映されない。よって、大きな信号を得る為には、液流方向と電波の送受信方向とをできるだけ近づける事が望ましい。便器においては、洗浄水流はボール部内壁面の汚れを流す為に、内壁面に沿って流される。尿については、一旦、ボール部内壁面に当たった後に、内壁面に沿って流れる事が多い。よって、電波の送受信方向をボール部内壁面の流水方向と略平行にすることによって、大きなセンサ出力信号を得ることができて、結局、ノイズの影響を受けにくく、また、センサ特性の歪の影響を受け難くなって、正確に尿流や洗浄水流を検出できるようになる。
【0018】
前記ドップラーセンサは、送信手段から略使用者の方向に向けて電波を送信する事もできる。
上述したように、ドップラーセンサは、測定物体の運動方向と平行に電波を送信する事が好ましい。よって、空中での尿流を測定する場合には、尿は使用者から排泄されるので、ドップラーセンサから略使用者の方向に向けて電波を送信する事が望ましい。
【0019】
また、他の効果として、使用者の有無を同時に検出できる事が挙げられる。一般的に、尿流速は、2m/秒程度であるが、人体の便器付近での移動速度はこの半分以下であるので、ドップラーセンサの出力信号の周波数は、これに応じて異なるので、周波数解析手段によって人体と尿流とを判別できる。使用者の有無を同時に検出できる事から、例えば、使用者を検出した時点で洗浄水を供給してボール部内壁面に水膜を形成させて(前洗浄)、汚れが付き難くすることが可能である。或いは、例えば、人体と尿の両方を検出した場合のみ洗浄水を供給するようにして、尿の検出の確実性をより向上することができる。
【0020】
液流状態演算手段の出力を外部に出力する外部出力手段をさらに備えてもよい。
液流状態演算手段が出力する演算結果の情報を信号として外部に出力すれば、他の装置で活用することができる。また、人が分かるように、液流状態演算手段が出力する情報をメッセージや音声等のように、視覚的に又は聴覚的に外部出力するようにしてもよい。尿流は、泌尿器系の状態を示すものなので、これに関する情報を出力する事によって、医療や健康管理の為に活用する事ができる。または、供給された洗浄水の水流に関する情報を外部に出力する事によって、適正な洗浄水流となるように対処する事ができるようになる。
【0021】
液流状態演算手段によって液流が無くなったと判断されたときは、バルブを開成して洗浄水を供給する事ができる。
こうすることにより、排尿が有った時だけ洗浄水を供給するので、無駄な水を流すことを防げる。
【0022】
さらに、前記ドップラーセンサは、送信手段から略使用者の方向に向けて電波を送信するものであり、ドップラーセンサの出力に基づいて便器の使用者の有無を検出する使用者検出手段を備え、前記液流状態演算手段によって液流が無くなったと判断され、且つ、前記使用者検出手段の出力が使用者無しを検出すると、前記バルブを開成して洗浄水を供給する事もできる。
【0023】
排尿は、一旦途絶えた後に再度起こる場合があるが、上記の構成にすることによって、排尿後に使用者が立ち去ってから、洗浄水が供給されるので、1回の排尿に対して2回以上洗浄水を供給する事態を防止でき、水を無駄にする恐れが無くなる。前記液流状態演算手段は液流が無くなったと判断されてから所定時間以上経過すると、前記バルブを開成して洗浄水を供給することができる。
【0024】
排尿は、一旦途絶えた後に再度起こる場合があるが、上記の構成にすることによって、短時間の排尿の中断に惑わされて、1度の排尿に対して複数回洗浄水を供給してしまって、水を無駄にする恐れが無くなる。
【0025】
前記バルブを開成した後に閉成させてから所定時間が経過するまでの間は、該バルブの開成を禁止する事ができる。ボール部内壁面に沿って流れる洗浄水と尿流とは、流速度が近い値となる場合があり、両者を判別できない事がありえる。このような場合に、洗浄水を尿と判断して再度洗浄水を供給することは無駄である。そこで、バルブを開けた場合は、バルブを閉じてもしばらく経過するまでの間は、洗浄水が流れているので、この期間は再度洗浄水を供給しないようにバルブの開成を禁止する事によって、上記のような無駄を防ぐ事ができる。
【0026】
前記制御手段に、前記バルブへの指示状態及び前記液流状態演算手段の出力に基づいて洗浄水の供給状態を判定する洗浄状態判定手段を備え、該洗浄状態判定手段の出力を外部に出力することができる。
【0027】
以上の構成において、バルブへの指示状態とは「開」、或いは「閉」のいずれかである。
一方、液流状態演算手段の出力から洗浄水の流量が得られる。よって、例えば、指示状態が「開」の場合に流量が所定の適正範囲内であるかを洗浄状態判定手段で判定する。また、例えば、指示状態が「閉」の場合に流量が零であるかを洗浄状態判定手段で判定する。
これにより、ドップラーセンサを利用して洗浄状態の自己診断を行うことができる。外部出力手段は、洗浄状態判定手段の出力を外部のシステムで活用する為に信号として出力しても良いし、あるいは、外部出力手段を人に知らせる為の表示やブザー等の手段として構成しても良い。
【0028】
以上の構成によれば、例えば、給水設備の不具合による断水や、便器に付設されている洗浄用配管の詰まりやバルブの不具合等によって、本来洗浄水を供給すべき時に、洗浄水が流れていない場合には、異常の発生を検知して外部に出力することができるので、使用者または管理者が対応することができる。一方、便器に付設されているバルブは「閉」を指示されているにも関わらず、バルブの不具合によって、洗浄水の供給が停止しない場合には、異常の発生を検知して外部に出力することができるので、使用者または管理者が対応することができる。
【0029】
また、供給する洗浄水の量には、排泄物を便器から排出する為に適正範囲があるが、実際には、給水圧力に応じて変わってしまう。これに対して、上記の構成によれば、バルブは「開」を指示されていて、洗浄水は流れているが、その流量が所定の適正範囲内にない場合にも、その旨が外部に出力されるので、外部のシステムによって自動的に、もしくは、人手によって給水圧力を調整して、適切な洗浄水量となるように対処することができる。
【0030】
前記バルブは洗浄水量調節手段を備え、前記液流状態演算手段の出力に基づいて該洗浄水量調節手段を制御する制御手段を備える事もできる。
ここで、液流状態演算手段では洗浄水の流量が演算される。
洗浄水量は、排泄物を便器から排出する為に適正範囲があるが、実際には、給水圧力に応じて変わってしまう。これに対して、上記の構成によれば、演算によって求められた洗浄水の流量が適正範囲になるように洗浄水量調節手段によって調整されるので、自動的に適切な洗浄水量となる。
【0031】
排水管中に尿石が形成される事を防ぐ尿石防止液を排水管へ投入する尿石防止液供給手段を備える事もできる。
ここで、尿石防止液は尿石の形成を抑制できるものであれば良く、例えば、次亜塩素酸等が好ましい。尿石防止液を排水管に投入するのは、定期的に行っても良いし、尿量に応じて投入しても良い。
【0032】
本発明によって節水を実現する場合には、便器自体は充分に洗浄されるが、排水管中の尿濃度が従来よりも高くなり、排水管中に形成される尿石が多くなって、尿石の除去の手間が増す恐れがある。しかしながら、以上の構成によれば、節水をしながら排水管中の尿石の形成を抑制できるので、排水管の維持管理の手間が増える事が無くなる。
【0033】
前記液流状態演算手段によって液流が検出されると、直ちに前記バルブを開成して洗浄水を供給させる制御部を備えてもよい。
以上の構成によれば、小便を検出した際に、直ちに便器に洗浄水が供給されて、ボール部内液面に水膜が形成されるので、ボール部内液面への汚れの付着が防止される。また、使用者を検出してから洗浄水を供給する場合は、使用者が排尿せずに立ち去ったような場合に無駄に水を流してしまう事になるが、この構成では、そのような恐れがなくなる。
【0034】
前記ドップラーセンサは便器本体内部に、前記送信手段からの電波の送信方向を便器本体内部面と略直交させて配置してもよい。
ドップラーセンサを便器の内側に設置する場合に、送信手段からの電波の一部は、便器本体内部面において、媒質の不整合の為に反射を生じるが、以上の構成によれば、便器本体内部面で反射した電波は再びドップラーセンサで反射して、本来の送信方向へと向かうので、結局、より強い電波が便器本体を透過することになって、感度が向上する。
【0035】
前記ドップラーセンサは、便器本体内部に設置され、便器本体面の前記送信手段から送信される電波が通過する領域に密接して、便器本体面における電波の反射を防ぐ板材を設置することもできる。
【0036】
一般に、波動インピーダンスがZAの媒質Aから、波動インピーダンスがZBの媒質Bへと向かう電波は、ZAとZBが異なれば、界面にて一部が反射するが、媒質Aと媒質Bの間に、波動インピーダンスが√(ZAZB)で厚さをλ(2n+1)/4(λ:波長、n:整数)とする媒質を挿入する事によってZAとZBの整合がとれて反射が無くなる事が知られている。
誘電率ε、透磁率μ、の媒質中での周波数fの電波の伝播速度vは、1/√(εμ)であるので、波長λは、λ=v/f=1/f√(εμ)であり、
λ(2n+1)/4=(2n+1)/(4f√(εμ))となる。
即ち、波動インピーダンスが√(Z0Z2) (Z0:空気中の波動インピーダンス、Z2:便器本体の波動インピーダンス)で、厚さを、
(2n+1)/(4f√(εμ)) (ε:誘電率、μ:透磁率、n:整数、f;電波の周波数) とする板材を便器本体面の前記送信手段から送信される電波が通過する領域に密接して設置する事によって、便器本体面における反射を無くすることが出来る。
【0037】
単に、略一様な媒質からなる便器本体の内側にドップラーセンサを設置すると、送信手段からの電波の一部は、便器本体の内部面、及び、外部面において媒質の不整合の為に反射を生じるが、以上の構成によれば、波動インピーダンスの整合が得られる為、反射が減り、より強い電波が便器本体を透過することになって、感度が向上する。
【0038】
前記バルブの下流にボール部内壁面へ洗浄水を吐水する吐水部を備え、該吐水部からの吐水速度を一般的な尿流速度と異ならせる事を特徴として構成されている。
吐水部からの吐水速度とは、吐水部からの水流量(m3/s) を水流の断面積(m2)で除した値であって、これがドップラーセンサの出力の周波数に反映される。従って、吐水部からの吐水速度を一般的な尿流速度(例えば、1.4〜2.8m/s) と異ならせる事によって、両者に対するドップラーセンサの出力の周波数は異なることになる。
よって、前使用者の使用後の洗浄中に次の使用者が小便をする場合等においても、尿流を認識できるので、正確に尿量を計測できる事になる。
【0039】
本発明の他の観点に従えば、便器本体に回動可能に取り付けられた便座及び便蓋を開閉させるための開閉手段と、前記ドップラーセンサの出力に基づいて便器の使用者の有無を検出する使用者検出手段とを備え、前記制御手段は、前記使用者検出手段によって使用者が検出されると前記開閉手段に便座及び便蓋の開成を指示し、その後、前記液流状態演算手段によって液流が検出された後に前記使用者検出手段によって使用者が検出されなくなってから、前記開閉手段に便座及び便蓋の閉成を指示し、前記バルブを開成して洗浄水を供給させる事を特徴とする。以上の構成により、使用者が近づくと自動的に便座、便蓋が開成し、使用者が排尿して立ち去ってから自動的に、便座、便蓋が閉成し、洗浄されることになる。この作用によって、使用者にとっては、便座、便蓋が自動的に開閉する事により、利便性が向上し、また、便座、便蓋に触れる機会が減るので衛生性が向上するという効果が得られる。また、構成として、液流、即ち、小便の検出と、使用者の検出とを唯一のドップラーセンサによって為し得るので、部品数を少なくできる。また、占有スペースが狭くなるので、装置の小型化に有用となる。
【0040】
さらに、前記制御手段は、前記ドップラーセンサからの出力信号に基づいて使用者が前記便器本体に接近したか否か及び前記ボール部内に排尿されたか否かをそれぞれ検出し、前記使用者が前記便器本体に接近した場合は、洗浄水を短時間だけ供給して前洗浄し、前記使用者が排尿を終えた場合は、排尿の量に応じて洗浄水を供給して後洗浄を行うこともできる。
【0041】
また、前記制御手段は、前記液流総量に応じて洗浄水を供給すると共に、前記液流総量に応じて前記尿石防止液の濃度又は前記尿石防止液の供給量の少なくともいずれか一方を調節する事ができる。
【0042】
一方、前記ドップラーセンサは、前記便器本体の背面側から該便器本体を通過して便器のボール部内空間に向けて振動波を送信するように設け、前記便器本体のうち少なくとも前記振動波が通過する部分の全部又は一部は、前記振動波が透過可能に形成してもよい。
【0043】
なお、前記ドップラーセンサは、前記振動波として、電波、光波、音波のいずれかを発生させ、送信周波数と受信周波数の差分に基づいた信号を出力するものであればよい。
【発明の効果】
【0044】
尿流に関する情報を出力する事によって、医療や健康管理の為に活用する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明の実施例を図面をもとに以下に説明する。
【0046】
図1 は、本発明による便器洗浄装置を適用した小便器の構成を示す図である。小便器10の内部には、ドップラーセンサ11、機能部12が収められている。小便器10の上端は、蓋15となっており、ドップラーセンサ11と機能部12が収められている空間のメンテナンス作業が容易にできるようになっている。小便器10の上方背面には、小便器10のボール部内空間を洗浄する為の水を供給する給水部13が設けられている。ボール部内空間の上部には、洗浄水吐出口14が設けられている。小便器の外側の目立たない個所には、清掃作業者が随意にボール部内空間に洗浄水を吐出させる為の洗浄指示ボタン16、及び、本便器洗浄装置の状態を知らせる為のランプ19が設置されている。ボール部内空間の下部には、封水を形成する為のトラップ部17と排水口18が設けられている。
【0047】
ドップラーセンサ11によって尿が検出された場合や、洗浄指示ボタン16が操作された場合には、洗浄水が、給水部13から機能部12を介して、洗浄水吐出口14から吐出されてボール部内空間を洗い流し、トラップ部17を通過して排出口18から排出される。
【0048】
この際、洗浄水吐出口14は、ボール部内空間の内壁面の汚れを洗い落とすように配置されているので、洗浄水は、ボール部内壁面に沿って下方に流れ落ちてゆく。一方、使用者から放出される尿は、一旦ボール部内壁面に衝突した後にボール部内壁面に沿って下方に流れてゆく場合と、直接にボール部内下部に向けて放出される場合とがある。いずれの場合においても、使用者が放出してからトラップ部17に至るまでの尿の流れは、ボール部内壁面とほぼ平行になる。ドップラーセンサ11は、アンカーを用いてボール部内壁面と平行の方向に電波を送信するように配置されているので、洗浄水と尿の信号を高いS/N比と低歪で得ることができる。
【0049】
図2は、ドップラーセンサ11の機能構成図である。ドップラーセンサ11は、例えば、10.525GHzのマイクロ波を送信する送信手段20と、反射波を受信する受信手段21と、送信手段20と受信手段21との周波数との差分を出力する差分検出手段22から構成されている。なお、本実施形態では、電波を用いた場合のドップラー効果を利用するが、これに限らず、例えば、赤外線等の光波や超音波等の音波を利用するドップラーセンサを用いてもよい。
【0050】
図3は、機能部12を具体的に示す構成図である。ドップラーセンサ11の出力はアンプ31で増幅され、FFT演算部32で周波数スペクトラムが求められる。周波数スペクトラムをもとにして、流量演算部33において流量に換算される。コントローラ34は、流量演算部33で演算された流量や洗浄指示ボタン16の操作状況に基づいて、他の装置を作動させる。洗浄水供給バルブ36はコントローラ34の指示により開閉する。電解水生成部38では排水管に尿石が形成される事を防ぐ電解水が生成され、電解水供給バルブ39が開成された時に、洗浄水吐出口14から電解水が流し出される事になる。また、電解水生成部38で生成された電解水が上水に逆流しないように、上流側に逆止弁37が設けられている。コントローラ34は、最低でも、1日に1回は電解水を供給させるようになっていて、さらに、使用頻度に応じて高い頻度で供給させる。外部出力インターフェース35は、外部へ情報を伝送する為のものである。流量演算部33で演算された尿量は、外部出力インターフェース35を介して外部に送られる。また、コントローラ34において便器洗浄装置に異常が有ると判定された場合には、外部出力インターフェース35を介して外部にその旨が伝えられると同時に、ランプ19を点灯させて、管理者に知らしめる。
【0051】
ここで、電解水生成部38について更に詳述する。電解水生成部38は、銀を含有する電極に通電することにより、水中に銀イオンを溶出させて電解水を生成させるようになっている。電極に通電する電流値の大きさや通電時間を調整することにより、電解水中の銀イオン濃度を制御することができる。
【0052】
以上の構成の便器洗浄装置において、使用者が小便をした際の作用について、以下に説明する。図4は、排尿中のドップラーセンサ11の出力信号波形である。アンプ31は、この信号を増幅する。FFT演算部32は、500ms毎の一定周期でアンプ31の出力を演算処理して、例えば、図5に示すような周波数スペクトラムを求める。この周波数スペクトラムは、尿の流れ方によって異なるので、演算する度に変化して当然のものである。
尚、ここでは、FFT演算の周期を500msとしたが、演算周期を短くする事によって、より正確に流量の変化を捉えることができるようになる。逆に、演算周期を長くすることによって演算速度が遅い、即ち、安価な構成にする事ができる。
【0053】
排尿中には、図5に示す周波数スペクトラムのように、50Hz未満の低い周波数と、それよりも高い周波数(fmax)において極大値を有する。そして、高い周波数での極大値(fmax)が、尿流量と相関する事が分かっている。よって、流量演算部33では、50Hz以上での極大値となる周波数(fmax)を求めて、この周波数を元に、予め設定してある周波数と瞬間流量との換算テーブルを参照して、瞬間流量を求める。
【0054】
流量演算部33は、FFT演算部32で周波数スペクトラムが求められる度に、50Hz以上での極大値となる周波数(fmax)を求める。その方法の一例を図6のフローチャートをもとに説明する。メモリー上にf 、Vmax、fmaxという変数を確保しておいて、最初にfに50、VmaxにV(50)、fmaxに50を代入する(S61)。尚、V(50)は、FFT演算部32で求めた50Hzの信号レベルをあらわす。次に、fに1を加算し(S62)、V(f)をVmaxと比較して(S63)、V(f)がVmaxを超える場合のみ、VmaxをV(f)に更新し(S64)、fmaxをfに更新する(S65)。次に、fが500になったかを判定し、(S66)、fが500未満であれば、S2の処理に戻り、500であれば、終了する。以上によって、最終的に、fmaxには、50Hz以上で、最大となる周波数が記録される事になる。
【0055】
流量演算部33は、以上のようにして求めたfmaxを予め設定してある変換式に代入して瞬間流量を演算する。流量演算部33において求められる流量は、例えば、図7のようになる。コントローラ34は、この流量データを外部出力インターフェース35を介して、外部に送信する事ができる。例えば、医師がこのデータをもとに、使用者の健康状態を検査することができる。また、演算された尿流に対して、コントローラ34は、確実に排尿が終了したと判定してから、洗浄水供給バルブ36を開成して、洗浄を開始せしめる。
【0056】
コントローラ34は、流量演算部33で所定の閾値以上の流量を検出する事により、排尿の開始を認識する。その後、排尿が確実に終了したと判定する為に、コントローラ34は、流量演算部33で演算される瞬間流量を用いて、図8のフローチャートに示す処理を行う。500ms毎に演算される瞬間流量を閾値と比較し(S81)、閾値を下回ると、タイマをスタートする(S82)。そして、引き続き瞬間流量を閾値と比較し(S83)、瞬間流量が閾値以上となった場合には、タイマをリセット(S87)して、S1に戻る。
また、S3で瞬間流量が閾値未満の場合は、タイマが2秒経過するかどうかを判定する(S84)。タイマが2秒経過した場合には、前回のバルブ閉成から5秒以上経過していれば、バルブを開成し(S86)、そうでなければ終了する。
【0057】
以上の手順によれば、瞬間流量が2秒以上にわたって閾値未満である場合に初めて洗浄がなされる事になる。また、前回のバルブ閉成から5秒経過していない場合にはバルブを開成しないので、ボール部内壁面を流れる洗浄水を検出した場合に、誤って、再度洗浄するようなことはない。
【0058】
次に、洗浄水供給バルブ36を閉じるタイミングについて説明する。小便器10の衛生を一定水準以上に保つ為には、尿量が多いほど、多くの洗浄水量が必要なので、本便器洗浄装置においては、尿量に対して、供給する洗浄水量が、例えば、図9に示すグラフのように設定されている。従って、供給する洗浄水量は、図7に示した瞬間流量のデータを積算して、尿量を演算し、この尿量をもとにコントローラ34に予め設定されているテーブルを参照する事によって求められる。
【0059】
このようにして求められた量の洗浄水を供給する為に、コントローラ34は、洗浄水供給バルブ36を開成した後に、図10のフローチャートに示す手順で洗浄水供給バルブ36を閉成させる。先ず、尿と同様に、ボール部内壁面を流れる洗浄水に対して、ドップラーセンサ11からその流量に応じた周波数特性の信号が出力されるので、尿の場合と同様にして、洗浄水の瞬間流量が求められる。但し、尿と洗浄水とでは、流れの面積、センサに対する位置、流れの状態等が異なるので、周波数スペクトラムから瞬間流量を導く換算テーブルは、それぞれ個別に有している。瞬間流量を積算してゆく事で(S101)今までに供給された洗浄水量が求められており、この洗浄水量が設定値に達したかを比較して(S102)、設定値に達すれば、バルブを閉成する(S103)。
【0060】
以上の手順で、使用者が小便をした際には、確実に排尿が終了した時点で、小便量に応じた適切な量で洗浄し、また、小便量を外部に出力して健康管理に活用することができる。
また、本便器洗浄装置は、洗浄の状態を検出して出力する事が可能である。即ち、本装置は、ドップラーセンサ11を利用した自己診断機能を備える。コントローラ34が、洗浄水供給バルブ36バルブを開ける指示を出しているときに異常を検出して出力する方法の一例を、図11に示すフローチャートに基づいて説明する。洗浄水供給バルブ36バルブを開成させた後に、タイマをスタートさせる(S111)。そして、流量演算部32で演算される流量が適正下限値Q1と適正上限値Q2の間にあるかを判定して(S112)、適正範囲内であれば、タイマをリセットする(S113)。一方、流量が適正範囲外であれば、タイマがカウントアップしたかどうかを判定し(S114)、カウントアップしていない場合は、S2での流量の判定を継続する。タイマがカウントアップした場合は、外部出力インターフェース35から、『流量が所定時間以上にわたって適正範囲外である』という情報を出力し(S115)、ランプ19を点滅(S116)させる。尚、以上の処理は、洗浄水供給バルブ36バルブを開かせているときのみ実施する。また、異常と判定する時間は、洗浄水供給バルブ36に開成の指示を出してから、ボール部内壁面での洗浄水流が定常状態に達するまでの時間よりも充分に長く(例えば2秒に)設定しておく事によって、洗浄水供給バルブ36を開成した直後は洗浄水量が定常値に達していない為に異常と判定してしまう恐れが無くなる。
【0061】
次に、コントローラ34が、洗浄水供給バルブ36を閉じさせているときに異常を検出して出力する方法の一例を、図12に示すフローチャートに基づいて説明する。洗浄水供給バルブ36バルブを閉成させた後に、タイマをスタートさせる(S121)。そして、流量演算部32で演算される流量Qが零であるかを判定して(S122)、零であれば、タイマをリセットする(S123)。一方、流量が零でなければ、タイマがカウントアップしたかどうかを判定し(S124)、カウントアップしていない場合は、S122での流量の判定を継続する。タイマがカウントアップした場合は、外部出力インターフェース35から、『流量が所定時間以上にわたって零でない』という情報を出力し(S125)、ランプ19を点灯させる。尚、以上の処理は、洗浄水供給バルブ36バルブを閉じさせているときのみ実施する。また、異常と判定する時間は、一般的な排尿時間よりも充分に長く(例えば3分に)設定しておく事によって、排尿を検出したのに異常と判定してしまう恐れが無くなる。
【0062】
図13は、本発明による便器洗浄装置の第2の構成例を示す図である。図3の構成に加えて、洗浄水供給バルブ41の下流に流量調整弁42が設けられている。流量調整弁42は、開度変更手段43により流路の開度が段階的に変更されるようになっている。開度変更手段43は、コントローラ44の指示によって作動するステッピングモータにより駆動される。
【0063】
以上の構成において、コントローラ34が洗浄水供給バルブ41を開けている間に、ボール部内壁面を流れる洗浄水量が適正範囲にない場合に、洗浄水量を自動的に調整する方法を、図14 のフローチャートをもとに説明する。
【0064】
洗浄水供給バルブ41を開成し(S141)、ステッピングモータを所定のPステップだけ開弁方向に回動させて(S142)、所定時間が経過するまで待つ(S143でN)。そして、所定時間が経過すると(S143でY)、演算された瞬間流量Qが適正下限値Q1よりも小さいか否かを判定し(S144)、瞬間流量Qが適正下限値Q1よりも小さい場合には、開度変更手段43を1ステップ開作動させて流量調節弁42の流路面積を増大させる(S145)。逆に、瞬間流量Qが適正上限値Q2よりも大きい場合には(S146でY)、開度変更手段43を1ステップ閉作動させて流量調節弁42の流路面積を小さくさせる(S147)。以上の調整動作を洗浄水供給バルブ41に閉成指示を出すまで継続する(S148)。ここで、S143において調整しないようにする時間は、洗浄水供給バルブ41を開成してからボール部内壁面を流れる洗浄水量が定常値に達するまでの時間よりも充分に長く(例えば2秒に)設定する。以上の処理により、再び洗浄水供給バルブ41が開成される時まで、流量調整弁42の開度は保たれるので、給水圧に変化がない限りは、次回は始めから適正な流量の洗浄水が供給される事になる。
【0065】
図15は、本発明による便器洗浄装置の第3の構成例を示す図である。図3の構成との相違点は、周波数解析手段として、FFT演算手段に代えてバンドパスフィルタ51を採用した点にある。バンドパスフィルタ51を用いる事により、安価な構成とする事ができる。
【0066】
バンドパスフィルタ51は、尿流による信号の周波数を通過するように通過帯域を設定されていて、例えば、図16のような出力信号が得られる。図16において、出力信号は排尿が開始する以前は一定の零レベルを保っているが、排尿が開始されると、零レベルの上下に波打つ波形となる。
【0067】
通常は尿流速度と洗浄水の流速度は近い値なので、両者に対してドップラーセンサの出力の周波数は近い値となる。従って、バンドパスフィルタ51からは尿流の場合も洗浄水の場合も略同等の出力が得られるが、洗浄水の吐出部の形状を改めることによって、洗浄水の流速度を尿流速度と異ならせることができ、バンドパスフィルタ51で尿流のみを検出できるようになる。こうすることによって、洗浄中であっても、尿流を検出できるようになるので、前使用者の使用後の洗浄中に次の使用者が小便をする場合等においても、正確に尿流を計測できるので好ましい。
【0068】
図33は、洗浄水の流速を尿流速度と異ならせる為の吐水部の一例を示す断面図である。
入水部130に入る洗浄水は、吐水部本体内部を流れた後、大部分が吐出方向制御板131に衝突してから、吐出口132から流れ出る。この際、吐出口132は洗浄水の流れから見て左右、及び、下方向に開口部が設けられているので、洗浄水は、図34に示すように、ボール部内壁面に沿って、広がって流れ出る事になる。つまり、洗浄水を吐出方向制御板131に吐出させ吐出口から略放射状に吐出させることにより、洗浄水の流速度を遅くさせることができ、洗浄中であっても、尿流が検出できる事になる。なお、洗浄水の流速を低下させる手段は、図33に示すものに限らない。
【0069】
図15に戻る。バンドパスフィルタ51は、コンデンサと抵抗器を用いた回路で構成する事が可能である。或いは、他の構成として、マイクロコンピュータやDSP(Digital Signal Processor)等の演算器を用いてデジタルフィルタとする事により、簡単な構成にする事が出来る。即ち、アンプ54の出力を等時間隔でA/D変換し、そのA/D値を必要なフィルタ特性に合わせた演算処理に代入することで実現できる。
【0070】
排尿が開始されると直ちに、コントローラ53は、ボール部内壁面への汚れの付着を防ぐ為に洗浄水を供給してボール部内壁面に水膜を形成させる。具体的には、図26のフローチャートに示す手順で行われる。バンドパスフィルタ51の出力レベルVが、図16中に示すV1以下、或いは、V2以上になると(S261でN)、タイマをスタートする(S262)。タイマが0.2secに達するまでは(S263でN)、バンドパスフィルタ51の出力レベルVがV1からV2の範囲になって50msecが経過しないか(S264)を判定する。バンドパスフィルタ51の出力レベルVがV1からV2の範囲になって50msecが経過すると(S264でY)、尿流ではなく、雑音であるとみなして、タイマをクリアし(S265)、再びバンドパスフィルタ51の出力レベルVが、V1以下、或いは、V2以上にならないかを調べる(S261)。一方、タイマが0.2secに達すると(S263でY)、洗浄水供給バルブ52を所定時間開成する(S176)。
【0071】
排尿後に洗浄水を供給するまでの手順を、図17のフローチャートに示す。バンドパスフィルタ51の出力レベルVが、V1以下、或いは、V2以上になると(S171でN)、タイマをスタートする(S172)。V がV1からV2の範囲になって所定時間が経過すると(S173でY)、タイマを停止し(S174)、洗浄水供給バルブ52を開成する(S175)。S173における所定時間は、一般に尿が中断する時間より充分に長く(例えば、2秒)設定しておく。以上の処理が終了した時点で、タイマの値、即ち、排尿が検出された時間は、洗浄水量に反映されことになる。
【0072】
次に、コントローラ53には、タイマ値から洗浄水供給バルブ52を開けておく時間を導くテーブルが図18のように予め設定されているので、コントローラ53は、このテーブルを参照して得られた時間が経過した後で、洗浄水供給バルブ52を閉じる。以上のようにすれば、尿流継続時間に比例して尿量が増える傾向を利用して、洗浄水量を適切に制御する事ができる。
【0073】
小便器におけるドップラーセンサの他の配置例を図19の図面をもとに説明する。小便器60の内部には、ドップラーセンサ61及び機能部62が収められている。小便器60の上端には、蓋65が設けられており、ドップラーセンサ61と機能部62が収められている空間のメンテナンス作業が容易にできるようになっている。また、小便器60での洗浄水の流れは、第1の例の場合と同じである。ドップラーセンサ61は、アンカーを用いて使用者に向けて電波を送信するように配置されているので、使用者及び使用者から放出される尿の信号を高いS/N比と、低歪で得ることができる。
【0074】
機能部62は図20で示す構成である。ドップラーセンサ61の出力はアンプ71で増幅され、50Hz未満の信号を通過させる低域バンドパスフィルタ72と、100〜500Hzの信号を通過させる高域バンドパスフィルタ73とにそれぞれ出力される。コントローラ74は、低域バンドパスフィルタ72と、高域バンドパスフィルタ73の出力に基づいて、洗浄水供給バルブ75を作動させる。
【0075】
以上の構成の小便器において、使用者が小便器60に接近する場合又は使用者が小便器60から離隔する場合には、主に低域バンドパスフィルタ72から信号が出力される。一方、尿流は人体に比べて速度が速いので、主に高域バンドパスフィルタ73から信号が出力される。従って、コントローラ74は人の動きと尿流とを識別できる。
【0076】
洗浄水供給バルブ75の制御方法の一例を図21のフローチャートをもとに説明する。コントローラ74は、低域バンドパスフィルタ72、高域バンドパスフィルタ73の出力に基づいて、使用者の有無を識別している。そして、使用者不在と判定している時には、図21のフローチャートに示す処理を行う。即ち、低域バンドパスフィルタ72の出力が閾値を超えた場合(S211でY)には、洗浄水供給バルブ75を一定時間開ける(S212)。尚、以上の処理は、洗浄水供給バルブ75を閉じている間は継続的に行われる。以上の処理によって、使用者が接近した場合に、排尿以前にボール部内壁面に水膜を形成して、汚れを落とし易くすることができる。
【0077】
コントローラ74は、洗浄水を供給していない時に高域バンドパスフィルタ73の出力が所定の閾値以上となることにより、排尿の開始を認識する。その後、排尿が確実に終了したと判定する為に、コントローラ74は、図22のフローチャートに示す処理を行う。高域バンドパスフィルタ73の出力は、排尿中は閾値以上であるが(S221でN)、排尿が終了すると閾値を下回り(S221でY)、次に、低域バンドパスフィルタ72の出力は、使用者が立ち去るまでは閾値を超えないが(S222でN)、使用者が立ち去ると閾値を超えて(S222でY)、バルブが開成される(S223)。
【0078】
洗浄水供給バルブ75を閉じるタイミングについては、先に示した例と同様に、尿流の継続時間に応じて適切に設定する事ができる。また、バンドパスフィルタに変えて、FFT演算を行って、流量を正確に認識することも可能である。
【0079】
更に小便器におけるドップラーセンサの他の配置例を以下に説明する。図27は、その概要を示す図である。小便器90の上方の内部には、ドップラーセンサ91及び機能部92が収められている。小便器90の上端には蓋95が設けられており、ドップラーセンサ91と機能部92が収められている空間のメンテナンス作業が容易にできるようになっている。また、小便器90での洗浄水の流れは、前述の例の場合と同じである。ドップラーセンサ91は、尿流をより確実に検出する為に、大多数の尿流方向と平行な方向に向けて、即ち、斜め下向きに電波を送信するように配置されているので、使用者から放出される尿の信号を高いS/N比と、低歪で得ることができる。
【0080】
図28は、小便器90上部の断面図である。ドップラーセンサ91は、スペーサ101を用いて、小便器90の内面と送信方向が直交するようにして配置されている。また、小便器90の、ドップラーセンサ91から送信される電波が通過する部分の内面には、比誘電率が約3で、比透磁率が約1であるABS樹脂製の反射防止板102がアンカーを用いて密接して配置されている。
【0081】
ドップラーセンサ91からは、例えば10.525GHzの電波が送信されるようになっている。ドップラーセンサ91が発信した電波は、ドップラーセンサ91と反射防止板102との間のギャップ内に存在する空気中を伝播してから、反射防止板102を透過して小便器90の陶器製の内壁へと進む。ここで、空気中の波動インピーダンスZ0は、Z0=√(ε0/μ0)である。また、陶器の比誘電率は約9なので、小便器90の陶器製の内壁の波動インピーダンスZ2は、Z2≒√(9ε0/μ0)となる。反射防止板102の波動インピーダンスZ1はZ1≒√(3ε0/μ0)である。
√(Z0×Z2)≒√{√(ε0/μ0)×√(9ε0/μ0)}=√(3ε0/μ0)
なので、反射防止板102の波動インピーダンスZ1≒√(Z0×Z2)という関係を満たす事になる。ここで、ε0は真空の誘電率、μ0は真空の透磁率をそれぞれ示す。
【0082】
さらに、反射防止板102の厚さを、1/(4f√(εμ))=1/(4f√(3×ε0μ0))=1/(4×10.525×109×√(3×8.854×10−12×4π×10−7))≒4.1mmと設定する事により、ドップラーセンサ91から送信される電波は、小便器90の陶器製の内壁との間で波動インピーダンスの整合が得られる。従って、感度を下げる原因となる反射を防ぐ事が出来る。尚、小便器90のボール部側にも他の反射防止板を設ける事によって、更にボール部内壁面での反射を防止できる。
【0083】
尚、反射防止板の材料としては、上述したABS樹脂に限るものではなく、比誘電率が約3で、比透磁率が約1である材料であればよい。例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等を用いる事が可能である。
【0084】
今までは、小便器への適用について述べてきたが、本発明は同様に大便器にも適用する事ができる。例えば、図23に示すように陶器製の大便器の下部の内側に、ドップラーセンサ81を上方に向けて電波を送信するように配置する事によって、使用者、及び、尿流を検出して洗浄の制御などに活用できる。
【0085】
さらに、本発明を多機能な大便器システムへ適用する事も可能である。図29はその一例を示すもので、大便器110には便座111、便蓋112、タンク収納ケース113が設けられている。タンク収納ケース113には、局部洗浄手段114、洗浄水タンク115、機能部116、ドップラーセンサ117がそれぞれ設けられている。また、ドップラーセンサ117は、電波の送信方向が大便器110の前方となるように設置されており、これによって、単一のドップラーセンサ117により使用者の存在と使用者の尿流との両方を検出可能となっている。
【0086】
機能部116は図30で示す構成である。ドップラーセンサ117の出力はアンプ120で増幅され、50Hz未満の信号を通過させる低域バンドパスフィルタ121と、100から200Hzの信号を通過させる高域バンドパスフィルタ122にそれぞれ出力される。便蓋開閉手段123は、コントローラ125の指示により便蓋112を開閉する。便座開閉手段124は、コントローラ125の指示により便座111を開閉する。局部洗浄手段114は、コントローラ125の指示により、便座に座る使用者の局部へ湯水を吐出させるものである。大小切替洗浄手段126は、大便か小便かによって洗浄水の量を二段階に異ならせて、タンク115から大便器110へ洗浄水を供給する手段である。使用者が操作手段127を操作することにより、局部洗浄手段114、便座開閉手段124、便蓋開閉手段123、大小切替洗浄手段126を作動させることができる。
【0087】
以上の構成の大便器システムにおいて、使用者が大便器110に接近又は離隔する際には、主に低域バンドパスフィルタ121から信号が出力される。一方、尿流は人体に比べて速度が速いので、主に高域バンドパスフィルタ122から信号が出力される。このため、コントローラは人の動きと尿流とを識別できる。
【0088】
便蓋開閉手段123、便座開閉手段124、及び、大小切替洗浄手段126の制御方法の一例を、以下フローチャートをもとに説明する。コントローラ125は、低域バンドパスフィルタ121の出力に基づいて、使用者の有無を識別している。そして、使用者無しと識別している時には、図31のフローチャートに示す処理を行う。即ち、低域バンドパスフィルタ121の出力が閾値を超えた場合(S311でY)には、便蓋開閉手段123を作動させて、便蓋112を開ける(S312)。以上の処理によって、使用者が接近した場合に、自動的に便蓋112が開けられるので、使用者の手間を省く事が出来る。
【0089】
次に、使用者が小便をした場合には、コントローラ125は、高域バンドパスフィルタ122の出力が所定の閾値以上となることにより、排尿の開始を認識する。その後、排尿が確実に終了したと判定する為に、コントローラ125は、図32のフローチャートに示す処理を行う。高域バンドパスフィルタ122の出力は、排尿中は閾値以上であるが(S321でN)、排尿が終了すると閾値を下回る(S321でY)。次に、低域バンドパスフィルタ121の出力は、使用者が立ち去るまでは閾値を超えないが(S322でN)、使用者が立ち去ると閾値を超えて(S322でY)、大小切替洗浄手段126により、小便を洗い流すための洗浄水が供給され、便蓋開閉手段123、便座開閉手段124を作動させて、便蓋112と便座111を閉じる(S313)。
【0090】
洗浄水供給バルブを閉じるタイミングについては、先に示した例と同様に、尿流の継続時間に応じて適切に設定する事ができる。また、バンドパスフィルタに変えて、FFT演算を行って、流量を正確に認識することも可能である。
【0091】
次に、図35及び図36を参照して、ドップラーセンサからの信号をバンドパスフィルタで処理することにより、放尿の開始から終了までの放尿期間や使用者の接近及び離隔を検出する方法について説明する。
【0092】
図35は、ドップラーセンサからの出力信号を示す波形図である。使用者が便器に向かって移動してくると、比較的振幅の大きい出力波形が得られる。使用者が便器の前に到達して立ち止まり、放尿の準備を開始すると、振幅が小さくなる。そして、放尿が開始されると、尿流の速度に応じて比較的安定した振幅の波形が出力される。使用者が放尿を終えて身仕舞いを開始すると、使用者の動きに応じた波形が得られる。最後に、使用者が便器から離れると、使用者が便器から離隔する速度に応じて比較的振幅の大きな波形が得られる。
【0093】
従って、図36に示すように、例えば、100〜200Hzの周波数を通過させる高域バンドパスフィルタを用いれば、図35に示す出力波形から放尿期間中の波形のみを取り出すことができる。そして、上述の通り、検出された放尿期間だけ予め設定された瞬間流量を積算することにより、使用者の放尿量を算出することができ、放尿量に応じた水量の洗浄水を供給して便器を効果的に無駄なく洗浄することができる。
【0094】
一方、図37は、例えば、10〜40Hzの周波数を通過させる低域バンドパスフィルタを用いた場合の波形図である。低域バンドパスフィルタを用いることにより、図35に示す波形から使用者の動きのみを検出することができる。従って、放尿に訪れた使用者の動きや放尿を終えた使用者が便器から立ち去る動きを検出することができる。そして、例えば、使用者が便器に接近した場合又は放尿の直前あるいは放尿開始と同時に、少量の洗浄水を予め供給して便器内に水膜を形成することもできる。
【0095】
次に、図38は、ドップラーセンサの外観を模式的に示す図である。ドップラーセンサは、それぞれ2個ずつの送信アンテナ151及び受信アンテナ152を有し、それぞれ2個1組の送信アンテナ151及び受信アンテナ152は、互いに対向してドップラーセンサの検出面150に設けられている。なお、これはドップラーセンサの一例であって、本発明はこれに限定されない。送信アンテナ及び受信アンテナを3個以上設けても良く、あるいは、2個の送信アンテナと4個の受信アンテナのように、送信側と受信側とでアンテナの数を違えてもよい。
【0096】
次に、ドップラーセンサの取付方法について具体例を幾つか例示する。まず、図39に示す例では、小便器210が取り付けられているパネル200の背面側に、ドップラーセンサ222を設けている。
【0097】
小便器210の便器本体211は、パネル200に取り付けられている。便器本体211の前面には、使用者が放尿するためのボール部212が広く開口して設けられている。また、便器本体211の上側には、ボール部212内に洗浄水を吐出供給するための吐出口213が設けられ、便器本体211の下側には、洗浄水や尿が一時的に溜まるトラップ部214と、洗浄水や尿を排出するための排水口215とが設けられている。
【0098】
次に、便器本体211の背面側に着目すると、便器本体211の背面側に位置するパネル200の裏面上側には、吐出口213に洗浄水を供給するための給水部220と、開成又は閉成することにより給水部220からの給水を制御する洗浄水供給バルブ221が設けられている。なお、電解水生成部、電解水供給バルブ等も設けられているが図示を省略している。
【0099】
制御部230は、ボール部212の上方に位置するようにして、パネル200の裏面側に設けられている。そして、ドップラーセンサ222は、パネル200及び便器本体211を介して、略使用者の方向を向くように取り付けられている。
【0100】
ドップラーセンサ222から送信された電波は、パネル200及び便器本体211を透過してボール部212に到達し、ボール部内の液流(洗浄水又は尿流)で反射する。反射された電波は、再び便器本体211及びパネル200を透過して、ドップラーセンサ222に受信される。
【0101】
このように、便器本体211の裏側にドップラーセンサ222を設けても、洗浄水の流れや尿の流れ及び使用者の動きを非接触で検出することができる。また、ドップラーセンサ222を、便器本体211の内部ではなく、便器本体211の外部に位置する背面側に設ける構成のため、便器本体211の構造を簡素化することができるほか、洗浄水や尿からドップラーセンサ222を隔離することができるため、水分やアンモニア等による劣化なども防止することができる。
【0102】
次に、図40は、ドップラーセンサの他の取付例を示す。本例では、制御部230a及びドップラーセンサ222aを、ボール部212の下方に位置するようにして、パネル200の裏面側に取り付ける。
ドップラーセンサ222aは、ボール部212の下側から斜め上向きに電波を送受信するようにして設けられている。
【0103】
これに対し、図41に示すように、制御部230b及びドップラーセンサ222bを便器本体211の上側に位置してパネル200の裏面側に取り付けることもできる。
この場合、ドップラーセンサ222bは、ボール部212の上方から斜め下を見下ろすようにして、電波を送受信するように取り付けられる。
【0104】
次に、図42は、大便器に適用する他の例を示す模式図である。大便器300の便器本体310には、ボール部311,便座312,排水口313等が設けられている。また、便器本体310の後方上側には、機能部収容空間320が設けられており、該空間320内には、洗浄水供給バルブ321やドップラーセンサ322が収容されている。
【0105】
ドップラーセンサ322は、便器本体310の外部に位置して、斜め上方からボール部311に向けて電波を送信するようになっている。洗浄水による便器洗浄中は、ドップラーセンサ322からの出力信号を無視し、洗浄水を尿流を間違えて検出するのを防止する。
【0106】
なお、本発明は上述した各実施の形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、構成を追加、変更、削除等することができる。例えば、ドップラーセンサは電波(マイクロ波)を用いるものに限らず、超音波や赤外線等の他の波動を利用するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の実施例に係る小便器の構成図である。
【図2】本発明の実施例に係るドップラーセンサの機能構成図である。
【図3】本発明の実施例に係る小便器の機能構成図である。
【図4】排尿中のドップラーセンサの出力信号波形である。
【図5】FFT演算部で求められる周波数スペクトラムである。
【図6】周波数スペクトラムから最大値となる周波数を求める手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】流量演算部において求められる流量の一例を示すグラフである。
【図8】確実に排尿が終了したと判定する方法の一例を示すフローチャートである。
【図9】尿量と、供給する洗浄水量との関係を示すグラフである。
【図10】洗浄水供給バルブが閉成するまでの手順を示すフローチャートである。
【図11】コントローラが、洗浄水供給バルブバルブを開かせているときに異常を検出して出力する方法の一例を示すフローチャートである。
【図12】コントローラが、洗浄水供給バルブバルブを閉じさせているときに異常を検出して出力する方法の一例を示すフローチャートである。
【図13】本発明による便器洗浄装置の第二の構成例を示す機能構成図である。
【図14】ボール部内壁面を流れる洗浄水量が適正範囲にない場合に、自動的に調整する方法を示すフローチャートである。
【図15】本発明による便器洗浄装置の第三の構成例を示す図である。
【図16】バンドパスフィルタの出力信号の一例を示す図である。
【図17】バンドパスフィルタの出力信号に基づいて、洗浄水を供給するまでの手順を示すフローチャートである。
【図18】タイマ値から洗浄水供給バルブを開けておく時間を導くテーブルを説明する図である。
【図19】小便器におけるドップラーセンサの他の配置例を示す図である。
【図20】機能部の構成を示す図である。
【図21】洗浄水供給バルブの制御方法の一例を示すフローチャートである。
【図22】排尿後に洗浄水供給バルブを開成するまでの処理方法の一例を示すフローチャートである。
【図23】本便器洗浄装置を大便器に適用する際の、ドップラーセンサ配置の一例を示す図である。
【図24】水流に対するドップラーセンサの出力の周波数スペクトラムを示すグラフである。
【図25】周波数スペクトラムにおけるピーク周波数と流速度との関係を示すグラフである。
【図26】排尿が開始されると直ちにボール部内壁面への汚れの付着を防ぐ為に洗浄水を供給する手順を示すフローチャートである。
【図27】小便器におけるドップラーセンサの他の配置例の概要を示す図である。
【図28】図2 7 に示す小便器上部の断面図である。
【図29】本発明を多機能な大便器システムへ適用する一例を示す図である。
【図30】多機能な大便器システムの機能部の構成を示す図である。
【図31】便蓋開閉手段、便座開閉手段、及び、大小切替洗浄手段の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【図32】排尿後の便蓋開閉手段、便座開閉手段、及び、大小切替洗浄手段の制御方法の一例を示すフローチャートである。
【図33】洗浄水の流速を尿流速度と異ならせる為の吐水部の一例を示す断面図である。
【図34】図3 3 に示す吐水部を用いた際の洗浄水の流れを示す図である。
【図35】小便時のドップラーセンサの出力を増幅した波形を示す波形図である。
【図36】小便時のアンプ波形を高域バンドパスフィルタで処理し、尿流のみを検出する状態を示す波形図である。
【図37】小便時のアンプ波形を低域バンドパスフィルタで処理し、人体の動きのみを検出する状態を示す波形図である。
【図38】ドップラーセンサの外観図である。
【図39】ドップラーセンサを便器の外部に取り付ける具体例を示す説明図である。
【図40】ドップラーセンサを便器の外部に取り付ける他の具体例を示す説明図である。
【図41】ドップラーセンサを便器の外部に取り付けるさらに別の具体例を示す説明図である。
【図42】ドップラーセンサを大便器に取り付ける場合の具体例を示す説明図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器のボール部内空間又はボール部開口部の近傍空間に向けて振動波を送信する送信手段と該送信手段によって送信された振動波の反射波を受信する受信手段とを有し、該受信手段で受信した信号の周波数と前記送信手段によって送信された信号の周波数との差分に応じた差分信号を生成するドップラーセンサと、
前記ドップラーセンサの出力を周波数解析する周波数解析手段の出力に基づいて、ボール部内空間の尿流量を演算する液流状態演算手段と、
前記液流状態演算手段の出力を外部に出力する外部出力手段とを備え、
前記液流状態演算手段は、液流が有ると判断する時間を計測する計時手段を有する事を特徴とする健康管理装置。
【請求項2】
前記周波数解析手段は高速フーリエ変換による周波数スペクトラムを出力するものであり、
前記液流状態演算手段は、所定の閾値以上の周波数の有無によって尿流の有無を判断し、また、高速フーリエ変換による周波数スペクトラムの極大値に基づいて尿流量を演算する事を特徴とする、請求項1に記載の健康管理装置。
【請求項3】
前記液流状態演算手段は、尿流が有ると判断する時間における尿流量を積算して尿流の総量を演算する事を特徴とする請求項1または請求項2に記載の健康管理装置。
【請求項4】
前記ドップラーセンサは、送信手段から便器のボール部内壁面の流水方向と略平行方向に
向けて電波を送信する事を特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の健康管理装置。
【請求項5】
前記ドップラーセンサは便器本体内部に、前記送信手段からの電波の送信方向を便器本体
内部面と略直交させて配置される事を特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の健康管理装置。
【請求項6】
前記ドップラーセンサは、前記便器本体の背面側から該便器本体を通過して便器のボール部内空間に向けて振動波を送信するように設けられており、
前記便器本体のうち少なくとも前記振動波が通過する部分の全部又は一部は、前記振動波が透過可能に形成されている事を特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の健康管理装置。
【請求項7】
前記ドップラーセンサは、前記振動波として、電波、光波、音波のいずれかを発生させるものである事を特徴とする、請求項1に記載の健康管理装置。
【請求項1】
便器のボール部内空間又はボール部開口部の近傍空間に向けて振動波を送信する送信手段と該送信手段によって送信された振動波の反射波を受信する受信手段とを有し、該受信手段で受信した信号の周波数と前記送信手段によって送信された信号の周波数との差分に応じた差分信号を生成するドップラーセンサと、
前記ドップラーセンサの出力を周波数解析する周波数解析手段の出力に基づいて、ボール部内空間の尿流量を演算する液流状態演算手段と、
前記液流状態演算手段の出力を外部に出力する外部出力手段とを備え、
前記液流状態演算手段は、液流が有ると判断する時間を計測する計時手段を有する事を特徴とする健康管理装置。
【請求項2】
前記周波数解析手段は高速フーリエ変換による周波数スペクトラムを出力するものであり、
前記液流状態演算手段は、所定の閾値以上の周波数の有無によって尿流の有無を判断し、また、高速フーリエ変換による周波数スペクトラムの極大値に基づいて尿流量を演算する事を特徴とする、請求項1に記載の健康管理装置。
【請求項3】
前記液流状態演算手段は、尿流が有ると判断する時間における尿流量を積算して尿流の総量を演算する事を特徴とする請求項1または請求項2に記載の健康管理装置。
【請求項4】
前記ドップラーセンサは、送信手段から便器のボール部内壁面の流水方向と略平行方向に
向けて電波を送信する事を特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の健康管理装置。
【請求項5】
前記ドップラーセンサは便器本体内部に、前記送信手段からの電波の送信方向を便器本体
内部面と略直交させて配置される事を特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の健康管理装置。
【請求項6】
前記ドップラーセンサは、前記便器本体の背面側から該便器本体を通過して便器のボール部内空間に向けて振動波を送信するように設けられており、
前記便器本体のうち少なくとも前記振動波が通過する部分の全部又は一部は、前記振動波が透過可能に形成されている事を特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の健康管理装置。
【請求項7】
前記ドップラーセンサは、前記振動波として、電波、光波、音波のいずれかを発生させるものである事を特徴とする、請求項1に記載の健康管理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【公開番号】特開2006−38873(P2006−38873A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−242444(P2005−242444)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【分割の表示】特願2003−525747(P2003−525747)の分割
【原出願日】平成14年8月13日(2002.8.13)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【分割の表示】特願2003−525747(P2003−525747)の分割
【原出願日】平成14年8月13日(2002.8.13)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]