説明

側鎖含有重合体の製造方法

【課題】 カルボキシル基とエポキシ基との付加反応を利用して好適に側鎖含有重合体を製造することできる側鎖含有重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】 エポキシ基とカルボキシル基とを触媒を用いて付加反応することによって重合体に側鎖を導入して側鎖含有重合体を製造する方法であって、該側鎖含有重合体の製造方法は、付加反応した後に吸着剤を用いて触媒を除去する工程を必須とすることを特徴とする側鎖含有重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側鎖含有重合体の製造方法に関する。より詳しくは、電子材料、基板材料等のエレクトロニクス樹脂の分野等に用いられる側鎖含有重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
側鎖含有重合体は、重合体の主鎖に一定の長さをもつ構造部分が付加した構造を有する重合体であり、側鎖部分に導入された官能基の種類によって、様々な物性を有する重合体が得られることになるため、様々な分野で用途に合わせた物性を有する側鎖含有重合体が使用されている。これらの側鎖含有重合体の使用される用途の1つに電子材料、基板材料等のエレクトロニクス樹脂の分野がある。電子材料、基板材料等のエレクトロニクス樹脂の分野では、電気・電子部品の組み立て過程で熱がかかっても黄変等しにくい材料が要求され、耐熱性の高い重合体が使用されている。
【0003】
近年では、パーソナルコンピューター等のフラットディスプレーとしてカラー液晶表示装置が急速に普及していることに伴って、液晶パネルを構成するカラーフィルター等の薄膜層又は微細パターンを形成するために用いられる電離放射線硬化用樹脂組成物の構成要素となる重合体の需要が急増し、この分野にも側鎖含有重合体が使用されている。その例として、マレイミド系アルカリ可溶性共重合体と、ラジカル重合性化合物及び光重合開始剤とを含む電離放射線硬化用樹脂組成物であって、マレイミド系アルカリ可溶性共重合体は、N置換マレイミド単量体単位を必須として有し、且つ二重結合当量が300〜10万である電離放射線硬化用樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この技術は、側鎖二重結合含有重合体としてマレイミド系アルカリ可溶性共重合体を用いるものであり、この重合体を材料としてカラーフィルター及び液晶表示装置等を調製しようとするものである。
【0004】
このような側鎖含有重合体は、様々な製造方法により製造することが可能であるが、その中の1つとして、官能基を有する重合体を製造した後に、重合体の官能基と反応する官能基を有する化合物を反応させて側鎖部分を形成する方法があり、カルボキシル基とエポキシ基との反応を利用して重合体に側鎖部分を形成することが行われている。
カルボキシル基とエポキシ基との反応を利用して重合体に側鎖部分を形成する製造方法として、メタクリル酸を含む単量体成分を重合して得られた重合体に、メタクリル酸グリシジルを反応させる製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この製造方法においては、カルボキシル基とエポキシ基とを反応させる場合、アミン化合物やホスフィン化合物が触媒として使用されるが、この反応により適した製造方法を検討する工夫の余地があった。
【特許文献1】特開2003−192746号公報(第1−2、15−19項)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、カルボキシル基とエポキシ基との付加反応を利用して好適に側鎖含有重合体を製造することできる側鎖含有重合体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、カルボキシル基とエポキシ基との付加反応を利用して側鎖含有重合体を製造する方法について種々検討したところ、カルボキシル基とエポキシ基との反応で側鎖を形成すると、カルボキシル基とエポキシ基との反応によって生じる水酸基が、重合体の主鎖が有する他のエステル基部分とエステル交換反応して架橋構造が形成される反応が徐々に進行して分子量や粘度の変化がおこること、及び、重量平均分子量が2万を超える重合体では、この反応の影響が特に顕著に発現し、重合体の分子量が大きく増加して得られる側鎖含有重合体がゲル化したり、分子量の経時安定性に劣るものとなる等の影響が大きいことを見出した。そして、エポキシ基とカルボキシル基とを触媒を用いて付加反応することによって、重合体に側鎖を導入して側鎖含有重合体を製造する方法において、付加反応した後に吸着剤を用いて触媒を除去する工程を必須とすることによって、カルボキシル基とエポキシ基との反応によって生じる水酸基と重合体の主鎖が有する他のエステル基部分とのエステル交換反応の進行を抑制することができることから、分子量の経時安定性に優れた重合体を製造することができ、重合体の物性が経時的に変化したり、ゲル化したりするといった不具合を防止できることを見出し、本発明に想到したものである。本発明の側鎖含有重合体の製造方法は、吸着剤を用いる方法を選択することにより、アミン系触媒やホスフィン系触媒のごとき均一系触媒を除去することができ、重合体の物性を顕著に安定化させることができるものである。
【0007】
すなわち、本発明は、エポキシ基とカルボキシル基とを触媒を用いて付加反応することによって重合体に側鎖を導入して側鎖含有重合体を製造する方法であって、上記側鎖含有重合体の製造方法は、付加反応した後に吸着剤を用いて触媒を除去する工程を必須とする側鎖含有重合体の製造方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明の側鎖含有重合体の製造方法において、側鎖を導入するとは、カルボキシル基又はエポキシ基を有する化合物と重合体の主鎖に結合したエポキシ基又はカルボキシル基を有する構造部分のエポキシ基又はカルボキシル基とを付加反応させることによって、一定の長さをもつ構造部分を重合体に追加することであり、追加される構造部分は、一定の構造単位の繰り返しを含むものであってもよく、含まないものであってもよい。
なお、主鎖とは、エポキシ基又はカルボキシル基を有する単量体を含む単量体成分を重合反応させることによって形成される重合体の最も長い鎖を意味するものであり、カルボキシル基又はエポキシ基を有する化合物を付加反応させることによって側鎖を導入するもとになる部分である。主鎖は、カルボキシル基又はエポキシ基を有する化合物と付加反応させる前にあらかじめ形成されていてもよく、カルボキシル基又はエポキシ基を有する化合物を付加反応させるときに形成されてもよい。
また、側鎖とは、主鎖から枝分かれしている鎖の部分を意味するものである。側鎖を形成する化合物は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
以下、重合体に側鎖部分を導入するための付加反応を行う前の重合体を原料重合体、又は、単に重合体と表記し、側鎖部分を導入した後の重合体を側鎖含有重合体と表記する。
【0009】
上記製造方法において、エポキシ基とカルボキシル基とを付加反応する工程(以下、付加反応工程と表記する。)は、触媒の存在下で行うものである。
触媒の使用量は、全単量体成分100重量%に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。より好ましくは0.02〜2質量部であり、更に好ましくは0.03〜1質量部である。特に好ましくは0.04〜0.5質量部であり、最も好ましくは0.05〜0.2質量部である。触媒の使用量は、触媒の種類に応じて変更することができる。なお、全単量体成分の重量とは、反応溶液中の重合体及び重合体と反応させる化合物の合計質量である。触媒量が下回ると、付加反応に要する時間が長くなりすぎ工業的に不利である。上回ると、吸着剤を多量に使用する必要があり、工業的に不利である。
【0010】
上記付加反応工程は、50〜160℃の温度範囲で行うことが好ましい。より好ましくは70〜140℃であり、更に好ましくは90〜120℃である。
上記付加反応工程における反応時間は、2時間から24時間が好ましい。これによって、となる。上記反応時間としてより好ましくは、3〜18時間であり、更に好ましくは、4〜12時間であり、特に好ましくは5〜10時間である。反応温度・時間が下回ると、反応が充分進行しないおそれがある。上回ると、着色しやすくなったり、ゲル化するおそれがある。
上記付加反応工程は、圧力を0.5〜2atmとして行うことが好ましい。これによって、となる。より好ましくは0.8〜1.5atmであり、更に好ましくは常圧である。
【0011】
上記付加反応工程において、重合体と反応させる側鎖部分を形成する化合物の量は、重合体が有するエポキシ基又はカルボキシル基の官能基100モル%に対して、化合物が有するエポキシ基又はカルボキシル基の官能基が20モル%以上、100モル%以下となる量であることが好ましい。より好ましくは、25モル%以上、95モル%以下である。
【0012】
上記付加反応工程においては、反応溶液中の重合体及び重合体と反応させる化合物の合計の濃度が10〜70重量%であることが好ましい。このような濃度範囲にあると、付加反応をより効率的にすすめることができる。より好ましくは20〜60重量%であり、更に好ましくは30〜50重量%である。
【0013】
上記付加反応工程は、溶媒を用いて行うことが好ましい。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、グリコール等のアルコール類;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;酢酸セロソルブ、酢酸カルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のエーテル類;テトラヒドロフラン等の環状エーテル;シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の極性を有する有機溶剤等を用いることができる。
これらの中でもより好ましくは、エステル類である。更に好ましくは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである。
上記付加反応工程における溶媒の使用量は、反応溶液中の重合体及び重合体と反応させる化合物の合計の濃度が後述する範囲となるように設定することが好適である。
【0014】
上記付加反応工程は、重合禁止剤の存在下で行われることが好ましい。重合禁止剤としては、公知の重合禁止剤の1種又は2種以上を用いることができる。重合禁止剤の使用量は、全単量体成分100重量%に対して0.001〜1.0重量%であることが好ましい。これによって、 となる。より好ましくは0.005〜0.5重量%であり、更に好ましく0.01〜0.3重量%である。なお、使用量は、重合禁止剤の種類に応じて変更することができる。重合禁止剤が少なすぎると、付加反応中にゲル化するおそれがある。多すぎると、特に感光性樹脂組成物とした時、硬化が不充分となるおそれがある。
【0015】
上記重合禁止剤は、フェノール系重合禁止剤であることが好ましい。
上記フェノール系重合禁止剤としては、例えば、スミライザーGM、スミライザーGS、スミライザーBHT、スミライザーS、スミライザーGA−80、スミライザーWX−R(いずれも商品名、住友化学工業社製);アデカスタブAO−20、アデカスタブAO−30、アデカスタブAO−40、アデカスタブAO−50、アデカスタブAO−60、アデカスタブAO−70、アデカスタブAO−330(いずれも商品名、旭電化工業社製);アンテージDBH、アンテージDAH、アンテージW−400、アンテージW−500(いずれも商品名、川口化学工業社製)が好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でもより好ましくは、アンテージW−400である。
【0016】
上記付加反応工程は、酸素濃度が2〜15%である雰囲気下で行うことが好ましい。これによって、付加反応中の熱重合によるゲル化を防ぐことができる。より好ましくは酸素濃度が4〜10%である雰囲気下で行うことである。酸素濃度が2%未満であると、禁止剤が有効に作用せずゲル化するおそれがある。
【0017】
上記側鎖含有重合体の製造方法は、付加反応した後に吸着剤を用いて触媒を除去する工程(以下、触媒除去工程と表記することがある。)を含むものである。
上記側鎖含有重合体の製造方法おいて、反応工程終了前に触媒が吸着剤に吸着されるのを防ぐため、反応系中に吸着剤を添加するのは、付加反応工程が終了した後であることが好ましい。なお、付加反応工程が終了した後とは、付加反応に最終的に悪影響を及ぼさないと評価できる範囲で付加反応を行う操作が終了した後である。付加反応に悪影響を及ぼさないと評価できるときは、例えば、付加反応のために昇温した反応系中の温度を降温した以降であることが好ましい。
【0018】
上記触媒除去工程は、触媒を吸着剤に吸着させる工程(以下、吸着工程と表記する。)を含むものであるが、吸着工程は、5〜80℃で行うことが好ましい。これによって、不純物の発生をより少なくし、重合体の汚染を防止することができる。吸着工程における温度としてより好ましくは6〜70℃であり、更に好ましくは8〜60℃であり、特に好ましくは10〜50℃である。吸着工程における温度が80℃を超えると、イオン交換体から水分や、イオン交換体に吸着されているイオン分が溶出されやすくなり重合体を汚染するおそれがある。
【0019】
上記吸着工程における吸着剤の使用量は、触媒を除去できる最小限の量であることが好適である。吸着剤の使用量は、触媒の種類及び使用量に応じて適宜設定することができるが、例えば、側鎖含有重合体100重量%に対して0.1〜10重量%で用いることが好ましい。より好ましくは0.2〜8重量%であり、更に好ましくは0.3〜7重量%である。特に好ましくは0.4〜6重量%であり、最も好ましくは0.5〜5重量%である。
【0020】
上記吸着工程においては、攪拌機を用いて攪拌を行うことが好ましい。これによって、吸着剤と触媒とを吸着させることができる。上記吸着工程で攪拌機を用いて攪拌を行う時間は、0.5〜8時間であることが好ましい。より好ましくは1〜7.5時間であり、更に好ましくは2〜5時間である。
【0021】
上記吸着工程で用いる攪拌機は、電動モーター、軸、及び、攪拌翼を備えた攪拌機であることが好適である。上記攪拌翼としては、例えば、デスクタービン、ファンタービン、わん曲ファンタービン、矢羽根タービン、多段ファンタービン翼、ファウドラー翼、ブルマージン型、角度付き羽根、プロペラ型、多段翼、アンカー型、ゲート型、二重リボン翼、スクリュー翼、マックスブレンド翼が好ましい。これらのなかでもより好ましくは、多段ファンタービン翼、ファウドラー翼、マックスブレンド翼である。
また、上記攪拌翼の回転速度は、例えば、5〜500rpmであることが好ましい。より好ましくは10〜400rpmであり、更に好ましくは15〜300rpmである。
これらによって、吸着剤と触媒とをより充分に吸着させることができる。
【0022】
上記触媒除去工程は、吸着処理後に吸着剤を分離する工程(以下、分離工程と表記する。)を含む。上記分離工程とは、吸着剤に触媒を吸着処理した後に吸着剤を固液分離する工程である。固液分離の方法としては、濾過又は遠心分離の方法で行うことが好適である。
濾過に用いる装置としては、例えば、濾紙、濾布、カートリッジフィルター、セルロースとポリエステルとの2層フィルター、金属メッシュ型フィルター、金属焼結型フィルターを用いることができる。濾過は、温度20〜80℃で行うことが好適である。また、減圧又は加圧下のいずれでもおこなうことができる。
遠心分離に用いる装置としては、例えば、遠心分離器、デカンター、遠心清澄機を用いることが好適である。また、必要に応じて固液分離前の液100質量部に対して水を1〜30質量部程度添加することもできる。
上記固液分離の方法としてより好ましくは濾過であり、更に好ましくは金属メッシュ型フィルターを用いて濾過を行うことである。
【0023】
上記触媒除去工程は、使用した触媒の全質量を100質量%としたとき、30質量%以上の触媒を除去するものであることが好ましい。より好ましくは50質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上である。
【0024】
上記製造方法において用いられる触媒は、エポキシ基とカルボキシル基との付加反応を促進させる化合物である。そのような化合物としては、塩基性化合物が好ましい。塩基性化合物としては、例えば、アミン系化合物及びホスフィン系化合物が好ましい。
すなわち、上記製造方法において、触媒がアミン系化合物及びホスフィン系化合物からなる群より選択される少なくとも1つであることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記触媒がアミン系化合物又はホスフィン系化合物であると、触媒が除去されることによって保存安定性が向上することに加えて、更に、下記(1)及び(2)の有利な効果が付随的に発揮されることになる。なお、アミン系化合物及びホスフィン系化合物の1種又は2種以上を触媒として用いることができる。
(1)硬化時の熱処理工程でのアミン化合物及びホスフィン化合物並びにそれらの分解物の揮発が少なく、装置の汚染を低減できる。
(2)側鎖含有重合体を、液晶パネル、半導体及びプリント配線基板用の感光性樹脂組成物とした場合、感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化物からのアミン化合物及びホスフィン化合物並びにそれらの分解物の溶出による液晶や基板の汚染を低減し、歩留まり率の向上、電気絶縁性の向上が達成される。
【0025】
上記アミン系化合物とは、アンモニアが有する水素原子の1つ以上を炭化水素基で置換した化合物である。アミン系化合物は、窒素元素に炭化水素基が2つ以上結合した構造を有する化合物であることが好ましい。より好ましくは3級アミン及び/又は4級アンモニウム塩である。
上記3級アミンは、下記一般式(1);
【0026】
【化1】

【0027】
(上記式中、R、R、及び、Rは、同一又は異なって、有機基を表す。)で表される化合物であることが好ましい。
上記R、R、及び、Rにおける有機基は、例えば、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。上記有機基としてより好ましくは、炭素数1〜15の炭化水素基であり、更に好ましくは炭素数1〜15のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、シクロアルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、最も好ましくは炭素数2〜7のアルキル基である。このような3級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリブチルアミン、トリフェニルアミンが好ましい。
【0028】
上記4級アンモニウム塩は、下記一般式(2);
【0029】
【化2】

【0030】
(上記式中、R、R、R、及び、Rは、同一又は異なって、有機基を表す。)で表される化合物であることが好ましい。
上記R、R、R、及び、Rにおける有機基は、例えば、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。上記有機基としてより好ましくは、炭素数1〜15の炭化水素基であり、更に好ましくは炭素数1〜15のアルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、最も好ましくは炭素数2〜7のアルキル基である。このような4級アンモニウム塩としては、例えば、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化トリメチルベンジルアンモニウムが好ましい。
【0031】
上記ホスフィン系化合物とは、ホスフィンが有する水素原子の1つ以上を炭化水素基で置換した化合物である。ホスフィン系化合物は、リン元素に炭化水素基が2つ以上結合した構造を有する化合物であることが好ましい。より好ましくは3級ホスフィン及び/又は4級ホスホニウム塩である。
上記3級ホスフィンは、下記一般式(3);
【0032】
【化3】

【0033】
(上記式中、R、R、及び、R10は、同一又は異なって、有機基を表す。)で表される化合物であることが好ましい。
上記R、R、及び、R10における有機基は、例えば、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。上記有機基としてより好ましくは、炭素数1〜15の炭化水素基であり、更に好ましくは炭素数1〜15のアルキル基、フェニル基であり、特に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基、フェニル基であり、最も好ましくは炭素数2〜7のアルキル基、フェニル基である。このような3級ホスフィンとしては、例えば、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィンが好ましい。
【0034】
上記4級ホスホニウム塩は、下記一般式(4);
【0035】
【化4】

【0036】
(上記式中、R11、R12、R13、及び、R14は、同一又は異なって、有機基を表す。)で表される化合物であることが好ましい。
上記R11、R12、R13、及び、R14における有機基は、例えば、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましい。上記有機基としてより好ましくは、炭素数1〜15の炭化水素基であり、更に好ましくは炭素数1〜15のアルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、最も好ましくは炭素数2〜7のアルキル基である。このような4級ホスホニウム塩としては、例えば、塩化テトラエチルホスホニウム、塩化テトラフェニルホスホニウム、臭化テトラフェニルホスホニウムが好ましい。
【0037】
上記触媒の中でも、上記一般式(1)で表される3級アミンを用いることが好ましい。3級アミンは、触媒活性が高い点で有利である。また、3級アミンとして特に好ましくは、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミンである。これらは、入手の容易性、触媒活性の高さ、及び、臭気の少なさの点等において更に有利である。最も好ましくは、トリエチルアミンである。
【0038】
本発明の側鎖含有重合体の製造方法に用いる吸着剤としては、無機酸化物系陽イオン交換体、有機系性陽イオン交換体、活性炭、物理吸着剤からなる群より選択される1又は2以上のものを用いることが好ましい。
上記無機酸化物系陽イオン交換体としては、例えば、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、二酸化ケイ素が挙げられる。上記有機系性陽イオン交換体としては、例えば、イオン交換樹脂が挙げられる。上記物理吸着剤としては、例えば、モレキュラーシーブが挙げられる。
【0039】
上記吸着剤は、多孔質の形状であること好ましい。吸着剤が多孔質の形状であると、表面積が多く吸着能力を高くすることができる。更に、吸着剤は、顆粒状のものであることが好ましい。微粒子状よりも、顆粒状の方が、固液分離の効率があがり、簡単なメッシュろ過などで吸着剤を除去できるため装置を小型化できる。多孔質吸着剤は、表面積が100m/g以上が好ましく、300m/g以上が更に好ましい。これら多孔質吸着剤としては、富田製薬社製 トミタ−AD700シリーズ(ケイ酸アルミニウム)、トミタ−AD1000シリーズ(二酸化ケイ素)が好ましい。
【0040】
上記製造方法において、吸着剤が陽イオン交換体であることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
陽イオン交換体とは、無機酸化物系陽イオン交換体又は有機系性陽イオン交換体のいずれかであり、これらの1種又は2種を用いることができる。陽イオン交換体を用いると、水等の不純物が生じにくい。
上記吸着剤の中でも、無機酸化物系陽イオン交換体を用いることが好ましい。
無機酸化物陽イオン交換体を用いると、水、ナトリムウイオン、カリウムイオンなどの金属分の溶出が少ない。
【0041】
上記製造方法が重合体の側鎖に二重結合を導入して側鎖含有重合体を製造するものであることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
これによって、側鎖含有重合体が二重結合を有するものとすることができ、感光性樹脂組成物に好適に用いることができるものとなる。すなわち、感光性樹脂組成物の電離放射線による硬化性が優れることになることから、硬化時間を短縮して効率化し、しかも、現像後のパターン形状の精度を充分に向上することが可能となる。
【0042】
上記製造方法が重合体の側鎖に二重結合を導入して側鎖含有重合体を製造するものである実施形態とは、上記製造方法が、触媒を用いてエポキシ基とカルボキシル基とを付加反応することによって二重結合を有する側鎖を重合体に導入するものである実施形態である。
二重結合を有する側鎖を重合体に導入する方法は、カルボキシル基及び二重結合を有する化合物を用いて重合を行ってカルボキシル基を有する重合体を調製した後、エポキシ基及び二重結合を有する化合物を反応させる方法、又は、エポキシ基及び二重結合を有する化合物を用いて重合を行ってエポキシ基を有する重合体を調製した後、カルボキシル基及び二重結合を有する化合物を反応させる方法のいずれかであることが好適である。
これらの中でもより好ましくは、カルボキシル基及び二重結合を有する化合物を用いて重合を行ってカルボキシル基を有する重合体を調製した後、エポキシ基及び二重結合を有する化合物を反応させる方法である。
【0043】
上記製造方法において、上記側鎖含有重合体は、二重結合当量が300〜10万であることが好ましい。300未満であると、二重結合量が多すぎるため、硬化が起こりすぎることになり、硬化収縮が大きくなることにより基板との密着性が低下するうえに、分子量が経時的に増加して保存安定性が低下することとなり、ゲル化のおそれがある。
10万を超えると、二重結合量が少なすぎるため、少ない露光量で現像を行う場合には、硬化が充分に起こらないことから現像性が充分でなくなり、また、塗膜表面の荒れが起こることとなる。更に、カラーフィルターを製造するときには、製造効率が低下したり、パターン形状の精度が低下したりすることとなる。二重結合当量を上記の範囲内とすると、少ない露光量で、例えば、50mJ/cmの露光量であっても現像が可能でとなり、しかも、硬い塗膜を得ることができる。本発明における二重結合当量の好ましい範囲は、300〜1万である。より好ましくは、300〜3000であり、更に好ましくは、300〜2000であり、特に好ましくは、400〜2000であり、最も好ましくは、450〜1000である。なお、二重結合当量とは、側鎖含有重合体における二重結合1個あたりの重量平均分子量である。
【0044】
上記製造方法において、側鎖含有重合体の重量平均分子量が2万以上であることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
側鎖含有重合体の重量平均分子量が2万以上である場合、本発明による保存安定性を向上する等の有利な効果が特に顕著に発揮されることになる。重量平均分子量としてより好ましくは25000以上であり、更に好ましくは25000〜50000である。
また、重量平均分子量が50000を超えると、感光性樹脂組成物とした場合の粘度が高くなりすぎ、またアルカリに対する溶解性が低下する恐れがある。また、重量平均分子量が50000を超えると、重量平均分子量の変化を抑えるためにより触媒の除去率を高める必要があることから、多量の吸着剤を使用する必要があり、生産効率が低下するため好ましくない。
【0045】
上記製造方法において、上記側鎖含有重合体は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)で測定した重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)が4.0以下であることが好ましい。4.0を超えると、熱安定性やアルカリ水溶解性が低下するおそれがある。より好ましくは、3.0以下であり、更に好ましくは、2.5以下である。
【0046】
本発明の側鎖含有重合体の製造方法において、エポキシ基を有する化合物は、炭素数2〜20の化合物であることが好ましい。より好ましくは、炭素数2〜17の化合物であり、更に好ましくは、炭素数2〜15の化合物である。これらの中でも特に好ましくは、二重結合を有する化合物である。二重結合を有する化合物を用いると、側鎖部分に二重結合を有する重合体を製造することができる。このような好ましい化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、3,4−エポキシ−1−ブテン、グリシジル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロへキシルメチル(メタ)アクリレート等が好ましい。より好ましくは、アリルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートである。更に好ましくは、グリシジル(メタ)アクリレートである。
【0047】
本発明の側鎖含有重合体の製造方法において、カルボキシル基を有する化合物は、炭素数2〜20の化合物であることが好ましい。より好ましくは、炭素数2〜17の化合物であり、更に好ましくは、炭素数2〜15の化合物である。特に好ましくは、炭素数2〜10の化合物であり、最も好ましくは、炭素数2〜5の化合物である。
また、カルボキシル基を有する化合物は、二重結合を有する化合物が好ましい。二重結合を有する化合物を用いると、側鎖部分に二重結合を有する重合体を製造することができる。カルボキシル基と二重結合とを有する化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸、及び、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸類が挙げられる。これらの中でも、不飽和モノカルボン酸が好ましい。より好ましくは、(メタ)アクリル酸である。
【0048】
本発明の側鎖含有重合体の製造方法に用いられる原料重合体を構成する単量体成分に含まれるエポキシ基を有する単量体、及び、カルボキシル基を有する単量体としては、上記エポキシ基を有する化合物、及び、カルボキシル基を有する化合物のうち、二重結合を有するものと同様のものが好ましい。重合体を構成する単量体成分は、エポキシ基を有する単量体、カルボキシル基を有する単量体を1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよく、エポキシ基を有する単量体、カルボキシル基を有する単量体の両方を含んでいてもよい。また、単量体成分は、エポキシ基を有する単量体、カルボキシル基を有する単量体以外の単量体を含んでいてもよい。
【0049】
上記単量体成分が含む、エポキシ基を有する単量体、カルボキシル基を有する単量体以外の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等の芳香族ビニル系単量体;ジメチル−2,2’−(オキシジメチレン)ジアクリレート、ジエチル−2,2’−(オキシジメチレン)ジアクリレート等を用いることができる。
【0050】
上記単量体成分は、単量体成分全体100モル%に対して、エポキシ基を有する単量体及び/又はカルボキシル基を有する単量体を5モル%以上、60モル%以下含むものであることが好ましい。
より好ましくは10モル%以上、30モル%以下である。
【0051】
本発明の側鎖含有重合体の製造方法に用いられる原料重合体は、マレイミド系アルカリ可溶性共重合体であることが好ましい。マレイミド系アルカリ可溶性共重合体とは、N置換マレイミド単量体単位を必須として有するものである。このようなマレイミド系アルカリ可溶性共重合体の好ましい形態としては、N置換マレイミド単量体単位、(メタ)アクリル酸単量体単位及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位及び/又は芳香族ビニル単量体を必須として有する形態が挙げられる。
【0052】
上記マレイミド系アルカリ可溶性共重合体を構成する単量体単位の質量割合としては、例えば、N置換マレイミド単量体単位が5〜50質量%、(メタ)アクリル酸単量体単位が8〜30質量%、及び、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位及び/又は芳香族ビニル単量体が30〜87質量%であることが好ましい。より好ましくは、シクロヘキシルマレイミド及び/又はベンジルマレイミド単量体単位10〜45質量%、(メタ)アクリル酸単量体単位10〜25質量%、及び、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位及び/又は芳香族ビニル単量体30〜80質量%であり、最も好ましくは、シクロヘキシルマレイミド及び/又はベンジルマレイミド単量体単位15〜40質量%、(メタ)アクリル酸単量体単位15〜25質量%、及び、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位及び/又は芳香族ビニル単量体35〜70質量%である。とりわけ、シクロヘキシルマレイミド及び/又はベンジルマレイミド単量体単位をX質量%、(メタ)アクリル酸単量体単位をY質量%とするとき、0.4×X≦Y≦0.5×X+10の不等式を満たす範囲であることが、アルカリ可溶性と溶媒溶解性のバランスが優れるため最も好ましい。なお、上記質量範囲は、マレイミド系アルカリ可溶性共重合体100質量%を基準とする。また、共重合体の組成は、例えば、重合終了時に未反応単量体をガスクロマトグラフィーにより定量する方法等により決定することができる。
【0053】
上記マレイミド系アルカリ可溶性共重合体は、上記必須の単量体単位以外の単量体単位を有していても有していなくてもよいが、上記必須の単量体単位の合計質量割合としては、例えば、50質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、70質量%以上であり、更に好ましくは、90質量%以上である。必須の単量体単位以外の単量体単位は、上述したエポキシ基を有する単量体、カルボキシル基を有する単量体以外の単量体由来の単量体単位が好ましい。
上記マレイミド系アルカリ可溶性共重合体における単量体単位の配列形態は、例えば、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体のいずれでもよい。
【0054】
上記N置換マレイミド単量体として、例えば、フェニルマレイミド、ベンジルマレイミド、ナフチルマレイミド、o−クロロフェニルマレイミド等の芳香族置換マレイミド;シクロヘキシルマレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、イソプロピルマレイミド等のアルキル置換マレイミド等が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミド、ベンジルマレイミドを用いることが好ましい。より好ましくは、シクロヘキシルマレイミド及びベンジルマレイミドであり、本発明の作用効果を充分に発揮することができる。また、シクロヘキシルマレイミドとしては、シクロヘキシルマレイミド中に副成物として含まれるシクロヘキシルアミノ無水コハク酸の含有量を1質量%以下に低減したものを用いることが好ましい。
【0055】
上記(メタ)アクリル酸系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。更に、(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。また、芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレンが挙げられる。
【0056】
本発明の側鎖含有重合体の製造方法に用いられる原料重合体を製造する方法としては、例えば、ラジカル重合開始剤及び必要に応じて分子量調節剤を用いて単量体成分を重合する方法である。この場合、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、乳化重合、又は、これらを適宜組み合わせる形態等により重合を行うことができる。これらの中でも、溶液重合により重合を行うことが好ましい。より好ましくは、回分式溶液重合により重合を行うことである。
【0057】
上記原料重合体を製造する際のラジカル重合開始剤、重合条件等としては、重合方法や、共重合する単量体の種類、使用比率等に応じて適宜設定することが好ましい。例えば、溶液重合により重合を行う場合に使用する溶剤としては、溶液重合に支障がなく、原料である単量体成分と、生成する原料重合体の両方を溶解し得る液体であればよく、例えば、メタノール、エタノール、グリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;酢酸セロソルブ、酢酸カルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;テトラヒドロフラン等の環状エーテル;シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の極性を有する有機溶剤等を用いることができる。また、非水系の分散重合により重合を行う場合に使用する溶剤としては、原料である単量体成分が溶解可能であり、且つ、生成する原料重合体が不溶である液体であればよく、例えば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等の液状の炭化水素や、その他の非極性の有機溶剤等を用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。溶液重合や非水系の分散重合に用いられる溶剤の量としては、例えば、全単量体成分100質量%に対して20〜400質量%とすることが好ましい。20質量%未満であると、重合終了時に増粘のため攪拌を充分に行うことができなくなるおそれがあり、400質量%を超えると、生成する原料重合体の分子量が小さくなりすぎるおそれがある。より好ましくは、50〜200質量%である。
【0058】
上記ラジカル重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤、例えば、過酸化物、アゾ開始剤等の1種又は2種以上を用いることができる。重合開始剤の使用量としては、例えば、全単量体成分100質量%に対して、0.001〜5.0質量%の割合で用いることが好ましく、更に好ましくは0.5〜3.0%である。また、分子量調節剤としては、例えば、α−メチルスチレンダイマーや、メルカプタン系の連鎖移動剤等の1種又は2種以上を用いることができる。中でも、炭素数8以上の長鎖アルキルメルカプタンが、臭気や着色の少なさの点で好ましい。
【0059】
上記共重合における重合温度としては、例えば、50〜200℃とすることが好ましい。50℃未満であると、分解温度の低い開始剤を用いる必要があり、開始剤を冷却保存する設備等が必要となる等、工業製造に不利となるおそれがある。200℃を超えると、開始剤の分解温度に達する前に単量体成分が熱重合し始めるおそれがある。好ましくは、80〜150℃である。なお、重合温度は、ラジカル重合開始剤の種類等に応じて設定することが好ましい。
【0060】
本発明の側鎖含有重合体の製造方法によって側鎖含有重合体を製造する場合、重合体と側鎖部分を形成する化合物との反応の終了後に反応液から揮発分を除去して側鎖含有重合体を分離して使用してもよく、また、固形分を分離せず、溶液状態で使用してもよい。側鎖含有重合体を分離する方法としては特に限定されず、例えば、反応液を真空下で加熱する方法、反応液を貧溶媒中に投入して沈殿させ濾別する方法等を適用することができるが、真空下の加熱により溶剤及び残存単量体を揮発除去させる方法がコスト等の点から好ましい。重合反応に用いる装置としては、揮発除去された溶剤及び残存単量体を回収する設備を備えていることが好ましい。この場合、例えば、脱揮槽で真空加熱、2軸押出機で脱溶媒等を行うことが好適である。また、脱揮槽で反応液を予備濃縮した後、2軸押出機で脱溶媒を完結させることもできる。
【0061】
本発明の製造方法によって得られる側鎖含有重合体は、長期又は高温での保管時に分子量変化が少なく、長期間品質が安定である特性を有し、液晶ディスプレイ用カラーフィルター、プリント配線基板、半導体製造用の感光性樹脂組成物のバインダーポリマーの用途に特に好適に用いることができる。
このように、エポキシ基とカルボキシル基とを触媒を用いて付加反応することによって重合体に側鎖を導入して製造される側鎖含有重合体であって、上記側鎖含有重合体は、アミン系化合物及びホスフィン系化合物の合計含有量が側鎖含有重合体100質量%に対して0.1質量%未満である側鎖含有重合体もまた、本発明の1つである。
アミン系化合物及びホスフィン系化合物の合計含有量が0.1質量%以上であると、経時的に物性が変化しやすく、長期間品質を維持できないものとなるおそれがある。
【0062】
上記アミン系化合物及びホスフィン系化合物の合計含有量は、側鎖含有重合体100質量%に対して0.09質量%未満であることが好ましい。より好ましくは0.08質量%未満であり、更に好ましくは0.07質量%未満である。特に好ましくは0.06質量%未満であり、最も好ましくは0.05質量%未満である。
上記側鎖含有重合体は、上述した側鎖含有重合体の製造方法によって得られるものであることが好ましい。上述した側鎖含有重合体の製造方法によれば、アミン系化合物及びホスフィン系化合物の合計含有量を上記範囲内とすることができる。
【0063】
本発明はまた、上記側鎖含有重合体の製造方法により得られる側鎖重合体又は上記側鎖含有重合体と、ラジカル重合性化合物と、光重合開始剤とを必須成分として含む感光性樹脂組成物でもある。
側鎖含有重合体、ラジカル重合性化合物及び光重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。感光性樹脂組成物をカラーフィルターの基板上に塗布し、露光することによって、側鎖含有重合体の優れた物性と、ラジカル重合性化合物によって形成される3次元ネットワーク構造により、被塗布体表面(基板表面)に対する密着性、被膜強度、耐熱性、耐温純水性、耐薬品性等の諸物性に優れた硬化被膜を形成することができ、露光時に所定のパターン状に露光して現像する場合には正確なパターンを形成することができることになる。また、側鎖含有重合体として上記マレイミド系アルカリ可溶性共重合体を用いると、アルカリ現像性にも優れることになる。
【0064】
以下に感光性樹脂組成物の好ましい実施形態の詳細について記載するが、これらの実施形態は、上記側鎖含有重合体がマレイミド系アルカリ可溶性共重合体である場合において特に好適に適用されるものである。
上記側鎖含有重合体の配合量としては、例えば、感光性樹脂組成物100質量%に対して、5〜80質量%とすることが好ましい。5質量%未満であると、粘度が低くなり過ぎ、塗布乾燥後の塗膜安定性が充分とはならないおそれがあり、80質量%を超えると、粘度が高くなりすぎるため流動性が低下し、塗布性が悪くなる等の不都合を生じるおそれがある。より好ましくは、10〜50質量%である。
【0065】
上記感光性樹脂組成物において、ラジカル重合性化合物は、光重合反応による硬化を可能とするものであり、例えば、オリゴマー(低重合体)の形態であるラジカル重合性オリゴマーや、モノマー(単量体)の形態であるラジカル重合性モノマーが好適に用いられる。ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、不飽和ポリエステル、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、側鎖に二重結合を持つアクリル系重合体等が挙げられる。ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、α―メチルスチレン、α―クロロスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスホネート等の芳香族ビニル系モノマー;酢酸ビニル、アジピン酸ビニル等のビニルエステルモノマー;メチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、(2−オキソー1,3−ジオキソラン−4−イル)−メチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系モノマー;(ジ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;トリアリルシアヌレート等が挙げられる。これらの中でも、得られる感光性樹脂組成物の感光性性能や現像性、ポストベーク後の塗膜物性等の観点から、多官能(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。なお、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
上記ラジカル重合性化合物の使用量としては、上記カルボキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する重合体100重量部に対して、上限は1000重量部、下限は10重量部であることが好ましい。10重量部未満であると、露光時における硬化力が充分なものとはならないおそれがあり、1000重量部を超えると、他の成分の作用効果を充分に発揮させることができないおそれがある。より好ましい上限は600重量部、下限は20重量部であり、更に好ましい上限は400重量部、下限は30重量部である。
【0067】
上記光ラジカル開始剤は、活性光線により励起されてラジカルを発生し、上記ラジカル重合性化合物の重合を開始させるものであり、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オンや2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1;アシルホスフィンオキサイド類;キサントン類等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0068】
上記光ラジカル開始剤の使用量としては、上記ラジカル重合性化合物100重量部に対して、上限は50重量部、下限は0.1重量部であることが好ましい。0.1重量部未満であると、光照射時間を増やす必要性が生じたり、光照射を行っても充分に重合が起こらなかったりし、適切な現像性が得られないおそれがある。50重量部を超えると、塗膜が着色したり、強度が充分とはならないおそれがあり、また、経済的に不利になるおそれもある。より好ましい上限は40重量部、下限は0.5重量部であり、更に好ましい上限は30重量部、下限は1重量部である。
【0069】
なお、上記光ラジカル開始剤とともに、熱重合開始剤を併用することができる。
上記熱重合開始剤としては特に限定されず、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ化合物;等の1種又は2種以上を用いることができる。熱重合開始剤の使用量としては、本発明の効果を損なわない範囲で適宜設定すればよい。
【0070】
上記着色剤としては、染料や顔料が挙げられるが、顔料を用いることが好適である。
上記顔料としては、例えば、カラーインデックス(C.I.:The Society of Dyers and Colourists社発行)において、ピグメント(pigment)に分類されている有機化合物のうち、C.I.Pigment Yellow 24、31、53、83、138、C.I.Pigment Orange 43、C.I.Pigment Red 105、176、177、254、C.I.Pigment Violet 14、29、C.I.Pigment Blue 15、15:6、22、28、C.I.Pigment Green 15、25、36、C.I.Pigment Brown 28、C.I.Pigment Black 1、7等の有機顔料;鉄、コバルト、アルミニウム、カドミウム、鉛、銅、チタン、マグネシウム、クロム、亜鉛、アンチモン等の金属酸化物又は複合酸化物等の無機顔料等の1種又は2種以上を用いることができる。
上記着色剤の使用量としては、上記カルボキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する重合体と上記ラジカル重合性化合物との合計100重量部に対して、上限は400重量部、下限は1重量部であることが好ましい。より好ましい上限は300重量部、下限は5重量部であり、更に好ましい上限は200重量部、下限は10重量部である。
【0071】
上記分散剤としては、例えば、界面活性剤、顔料の中間体、染料の中間体、高分子分散剤等の1種又は2種以上を用いることができる。界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコールラウリルエーテル、ポリエチレングリコールステアリルエーテル等のポリエチレングリコールアルキルエーテル類;ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル等のポリエチレングリコールアリールエーテル類;ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジエステル類;BM−1000(ビーエム・ヘビー社製)等のフッ素系界面活性剤;オルガノシロキサンポリマー系等のカチオン系界面活性剤;アニオン性高分子高分子不飽和ポリカルボン酸等のアニオン系界面活性剤等が挙げられる。顔料の中間体、染料の中間体としては、例えば、母体となる有機色素に置換基を導入した有機色素の誘導体が好ましい。母体となる有機色素としては、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ペリレン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、金属錯塩系等が挙げられ、置換基としては、水酸基、カルボキシル基、スルホン基、カルボンアミド基、スルホンアミド基等が挙げられる。
このような分散剤は、上記着色剤と併用して用いることが好ましく、その使用量しては、着色剤100重量部に対し、上限は50重量部、下限は0.1重量部であることが好ましい。より好ましい上限は30重量部、下限は0.5重量部であり、更に好ましい上限は20重量部、下限は1重量部であり、最も好ましい上限は10重量部、下限は1重量部である。
【0072】
上記その他の添加剤としては、必要に応じて、水酸化アルミニウム、タルク、クレー、硫酸バリウム等の充填材、消泡剤、カップリング剤、レベリング剤、増感剤、離型剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、重合抑制剤、増粘剤等を用いることができる。また、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシヌレート等のエポキシ樹脂、ジシアンジアミド、イミダゾール化合物等のエポキシ硬化剤又はジオキサゾリン化合物等を配合してもよい。これらの添加量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜設定すればよい。
【0073】
上記感光性樹脂組成物としてはまた、必要に応じて希釈剤により希釈されていてもよい。希釈剤としては、上記ラジカル重合性化合物又は適当な溶媒を用いることができる。溶媒としては、上述した重合方法における重合溶媒と同様であり、その使用量としては、感光性樹脂組成物を使用する際の最適粘度に応じて適宜設定すればよいが、例えば、上記感光性樹脂組成物100重量部に対して、上限は1000重量部、下限は10重量部とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0074】
本発明の側鎖含有重合体の製造方法は、上述の構成よりなり、長期又は高温での保管時に分子量変化が少なく、長期間品質の安定な側鎖含有重合体の製造方法及び側鎖含有重合体、並びに、該側鎖含有重合体を用いた感光性樹脂組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0075】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0076】
以下の実施例及び比較例において、各種物性等は以下のように測定した。
<グリシジルメタクリレート及びトリエチルアミン濃度測定>
島津製作所製GC−17Aを使用し、測定した。
<重量平均分子量>
ポリスチレンを標準物質とし、THFを溶離液としてHLC−8220GPC(東ソー社製)により重量平均分子量を測定した。
<粘度>
300mlトールビーカーに樹脂溶液を入れ、25±0.2℃の恒温水槽中にて保持し、25±0.5℃に調温し、B型デジタル粘度計(東機産業社製、DVM−B型)でローターNo.3、6rpmにて粘度を測定した。
【0077】
実施例1
攪拌機付きセパラブルフラスコに、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)61.89部を仕込み、窒素気流下に90℃に昇温した。
他方、滴下系1として、N−ベンジルマレイミド2.84部、ベンジルメタクリレート8.52部、メチルメタクリレート10.59部、メタクリル酸6.44部、PGMEA2.84部、滴下系2として、重合開始剤V601(和光純薬社製)0.57部、PGMEA1.48部を用意し、3時間連続で滴下を行った。滴下終了後、更に30分90℃に保持した後、115℃に昇温し、更に1時間30分熟成を行った。
反応系を一旦室温まで冷却した後、グリシジルメタクリレート(GMA)4.69部、重合禁止剤としてアンテージW400(川口化学社製)0.056部、付加触媒としてトリエチルアミン0.1部を加え、7%酸素濃度の酸素・窒素混合ガスをバブリングしながら、115℃に昇温し、7時間GMA付加反応を行った。
ガスクロマトグラム法にて測定した反応終了後のGMA濃度は、0.1%であった。
反応混合物を室温まで冷却し、陽イオン交換体としてケイ酸アルミニウム(富田製薬社製 トミタ−AD700SK)を、重合液100部に対し2部の割合で加え、攪拌下に4時間、吸着処理を行った。
その後、反応混合物を100メッシュのステンレス製金網にてろ過し、吸着剤を除去し、重合体溶液1を得た。
ガスクロマトグラフ法で測定した、トリエチルアミンの濃度は、反応混合物として、0.015%、重合体当たりに換算して0.045%であった。使用したトリエチルアミンのうち、残存しているトリエチルアミンは15%に相当する。
得られた重合体溶液1は、固形分濃度(重合体濃度)31%、GPC法による重量平均分子量は28000、酸価は77mgKOH/g、粘度は1000mPa・sであった。重合体溶液1を、85℃で8週間保持した際の重量平均分子量、GPC強度、及び、粘度の経時的な変化を測定した。この結果を下記表1に示す。更に、85℃で行った試験とは別個に、重合体溶液1を、25℃で1年間保持した際の重量平均分子量、GPC強度、及び、粘度の経時的な変化を測定した。この結果を下記表1に示す。なお、GPC強度は、合成直後のGPCのピーク面積を100としたときの相対面積である。
【0078】
実施例2
重合開始剤V601の量を1.91部とした以外は実施例1と同様にして、重合体溶液2を得た。ガスクロマトグラム法で測定した、トリエチルアミンの濃度は、反応混合物として0.014%、重合体当たりに換算して0.045%であった。使用したトリエチルアミンのうち、残存しているトリエチルアミンは15%に相当する。
得られた重合体溶液2は、固形分濃度(重合体濃度)31%、GPC法による重量平均分子量は15000、酸価は77mKOH/g、粘度は300mP・sであった。重合体溶液2を、実施例1と同様に保持して測定した結果を表1に示す。
【0079】
比較例1
ケイ酸アルミニウムによる触媒吸着処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較重合体溶液1を得た。比較重合体溶液1を、実施例1と同様に保持して測定した結果を表1に示す。
【0080】
比較例2
ケイ酸アルミニウム処理を行わなかった以外は、実施例2と同様の操作を行い、比較重合体溶液2を得た。比較重合体溶液2を、実施例1と同様に保持して測定した結果を表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
実施例1は、付加反応後に吸着剤を用いて触媒を除去したものである。実施例1で得られた重合体溶液1は、85℃の高温で8週間保存しても物性に大きな変化がなく、また、1年間常温で保存しても物性に大きな変化がなく、保存安定性に優れたものであることが確認された。
【0083】
比較例1は、付加反応後に吸着剤を用いて触媒を除去しなかった以外は実施例1と同様に行ったものである。比較例1で得られた重合体溶液は、85℃の高温で4週間保存するとゲル化して使用できないものとなり、また、6ヶ月間常温で保存すると粘度が非常に高いものとなり、実施例1の重合体溶液と対比すると、保存安定性に劣るものであることが確認された。
なお、比較例1では、常温で6ヶ月保存した後に重量平均分子量がやや低下し、粘度が上昇している。これは、下記のような現象であると考えられる。すなわち、比較例1の架橋挙動は、通常のラジカル架橋(徐々に高分子量化し、粘度が上昇、ついにゲル化)ではなく、最初、GPCで測定した重量平均分子量が低下する。しかし、実際には重量平均分子量が低下しているのではなく、ミクロでゲルが発生し、GPCの測定の際にカラムに吸着され、見かけ上の重量平均分子量が低下すると考えられる。これは、GPCの強度(面積)が減少すること、及び、粘度が上昇することから明らかである。そして、ついにゲル化すると考えられる。60℃以上の高温では重量平均分子量の上昇が顕著であるが、室温でも、半年ないし一年といった長期保管時に分子量及び粘度の増加が起こると考えられる。
【0084】
実施例2で得られた重合体溶液2は、重量平均分子量が15000の重合体を含むものであり、実施例1と同様に付加反応後に吸着剤を用いて触媒を除去したものである。重合体溶液2は、1年間常温で保存したり、85℃の高温で8週間保存しても重量平均分子量及び粘度にほとんど変化がみられなかった。
【0085】
比較例2で得られた比較重合体溶液2は、付加反応後に吸着剤を用いて触媒を除去しない以外は、実施例2と同じ重合体を含むものである。比較重合体溶液2は、1年間常温で保存すると少し粘度が上昇したものの、物性に大きな変化はなかった。また、85℃の高温で8週間保存するとやや粘度が上昇したものの、重合体溶液がゲル化したりするような顕著な物性の変化はみとめられなかった。
【0086】
実施例2及び比較例2の結果から、重量平均分子量が2万より小さい重合体においては、重量平均分子量が2万以上の重合体における効果のように顕著ではなかったが、付加反応後に吸着剤を用いて触媒すると、重合体の分子量及び粘度が経時的に変化する等の現象を抑制する効果がみとめられた。
以上より、本発明の側鎖含有重合体の製造方法によれば、側鎖含有重合体の分子量及び粘度の経時的な増加、並びに、重合体溶液がゲル化する等の現象を抑制する効果が発揮されることがわかった。また、その効果は、重量平均分子量が2万以上の重合体において特に顕著に発揮されるものであることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ基とカルボキシル基とを触媒を用いて付加反応することによって重合体に側鎖を導入して側鎖含有重合体を製造する方法であって、
該側鎖含有重合体の製造方法は、付加反応した後に吸着剤を用いて触媒を除去する工程を必須とすることを特徴とする側鎖含有重合体の製造方法。
【請求項2】
前記触媒は、アミン系化合物及びホスフィン系化合物からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の重合体の製造方法。
【請求項3】
前記製造方法は、重合体の側鎖に二重結合を導入して側鎖含有重合体を製造することを特徴とする請求項1又は2に記載の側鎖含有重合体の製造方法。
【請求項4】
前記吸着剤は、陽イオン交換体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の側鎖含有重合体の製造方法。
【請求項5】
前記側鎖含有重合体は、重量平均分子量が2万以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の側鎖含有重合体の製造方法。
【請求項6】
エポキシ基とカルボキシル基とを触媒を用いて付加反応することによって重合体に側鎖を導入して製造される側鎖含有重合体であって、
該側鎖含有重合体は、アミン系化合物及びホスフィン系化合物の合計含有量が側鎖含有重合体100質量%に対して0.1質量%未満であることを特徴とする側鎖含有重合体。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の側鎖含有重合体の製造方法により得られる側鎖重合体又は請求項6に記載の側鎖含有重合体と、ラジカル重合性化合物と、光重合開始剤とを必須成分として含むことを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の感光性樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする硬化物。

【公開番号】特開2009−57489(P2009−57489A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226848(P2007−226848)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】