説明

偽造防止媒体、偽造防止ラベル、印刷物、転写箔、および判別方法

【課題】より高い偽造防止効果を達成すること。
【解決手段】光反射層22と、前記光反射層22の前面の一部と向き合い且つ液晶材料を含んだ位相差層23とを具備した偽造防止媒体10であって、前記偽造防止媒体10のうち、前記光反射層22の前記位相差層23と向き合った部分に対応した第1光反射領域11と、前記光反射層22の前記位相差層23と向き合っていない部分に対応した第2光反射領域12との各々は、互いからの判別が可能な可視像を形成していることを特徴とする偽造防止媒体10を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、株券、債権、小切手、および商品券などの有価証券、宝くじ、並びにIDカードなどの偽造を防止するために利用可能な偽造防止技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真技術を利用した複写機が普及し、これを利用して誰でも簡単に書類を複写できるようになった。特に、最近のカラーデジタル複写機によれば、原稿か複写物かの判定が極めて困難な複写物でさえも容易に作製することができる。
【0003】
一般的なカラーデジタル複写機では、以下の方法で複写を行う。まず、原稿に光を照射し、反射光をCCDラインセンサで検知する。CCDラインセンサは、反射光の強度に応じたデジタル信号を生成し、複写機内のメモリに送信する。この読み取りを、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の3色について行い、それぞれの色について得られたデジタル信号をメモリに格納する。次に、格納されたデジタル信号に基づいて、レーザー光で感光体ドラムに静電潜像を描画する。続いて、静電力を利用して、感光体ドラム上に静電潜像に対応したトナー像を形成する。その後、このトナー像を用紙へと転写し、転写したトナー像を用紙上に定着させる。例えば、このプロセスを3色について行うことにより、精巧なカラー複写物を得ることができる。
【0004】
このようなカラー複写は、便利である反面、株券、債権、約束手形、小切手などの有価証券や、入場券、搭乗券などの印刷物の偽造を容易にする。このため、容易に複写できないように、印刷物に複製防止対策を施す提案が種々なされている。
【0005】
そのような対策の1つとして、カラー複写による複写物の色が原稿の色と異なるようにする技術がある。例えば、有価証券などの原稿を非常に淡い色で着色する技術が提案されている。この淡い色を複写で正確に再現することは難しい。また、原稿に大きさの異なる網点を形成する技術が提案されている。これの複写物では、小さい網点の再現性が不十分となり易い。さらに、緑、紫、橙、金、銀等のカラー複写機のトナーにない色で印刷する技術が提案されている。また、人間が容易に知覚できる光の波長域では反射および/または吸収特性がほぼ等しく、人間が知覚困難な光の波長域、例えば380nm〜450nmおよび650nm〜780nmの波長域における反射および/または吸収特性が異なる2種類のインキを用いる技術が提案されている。これらインキを使用して形成した2つの領域は、見た目には同色であるが、カラー複写機で複写した場合に異なる色に再現され得る。
【0006】
しかし、カラー複写機では、出力色の補正が可能である。また、カラースキャナで読み込んだデジタルデータをコンピュータで補正し、カラープリンタで出力するデジタルプレスが普及しつつある。従って、多少の手間をかければ、原稿の色を精巧に再現することが可能であり、上記のような技術で偽造を防止することは困難である。
【0007】
また、例えば、有価証券などに、カラー複写機では再現不可能な特殊部品を設けておく技術も提案されている。このうち、特許文献1および2に記載されているホログラム箔などのOVD(Optical Variable Device)を有価証券などの表面上に設ける技術は、すでに実用化されている。この技術によると、ホログラムの銀面が光を鏡面反射するため、CCDラインセンサに反射光が入射せず、原稿の銀面部分は複写物では黒色に再現される。また、特許文献3には、屈折率の異なるセラミック層を積層してなり且つ見る角度によって色が変化する光学薄膜を使用する技術が記載されている。この色の変化は複写物では得ることができないので、容易に真贋判定が可能となる。さらにまた、この方法で形成された薄膜を細かく砕き、破片をインキに混入して印刷を行うことも提案されている。
【0008】
しかしながら、エンボス技術が発達したため、レリーフ型の回折構造を含んだ反射層の形成は以前より低難易度化している。加えて、多層薄膜フィルムは、一般の包装用フィルムとして販売され始めている。その結果、ホログラムの偽造防止効果は低化してきている。
【0009】
特許文献4〜7には、ホログラムと同様に見る角度に応じて反射光の色が変化する効果、すなわち、カラーシフト効果を得るべく、コレステリック液晶を使用することが記載されている。
【0010】
高分子コレステリック液晶が選択反射する円偏光の波長は、視線とヘリカル軸とがなす角度に応じて変化する。特許文献4〜7には、偽造防止効果を得るべく、このカラーシフト効果を利用することが開示されている。また、コレステリック液晶層とホログラム形成部とを積層することや、コレステリック液晶顔料と電離放射線硬化性樹脂とを含んだインキを使用する技術も開示されている。さらにはコレステリック液晶層とネマチック液晶を用いた位相差層とを組み合せ、反射光としての偏光の回転方向を制御する技術の開示もある。
【0011】
しかしながら、ディスプレイで円偏光板が頻繁に利用されるようになった昨今、コレステリック液晶が入手し易くなっている。そのため、コレステリック液晶による偽造防止効果は低下しつつある。
【特許文献1】特開平6−259013号公報
【特許文献2】特開平7−089293号公報
【特許文献3】特表2004−505158号公報
【特許文献4】特開昭63−51193号公報
【特許文献5】国際公開第00/13065号パンフレット
【特許文献6】特開2002−114935号公報
【特許文献7】特開2002−255200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、より高い偽造防止効果を達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するための第1の発明は、光反射層と、前記光反射層の前面の一部と向き合い且つ液晶材料を含んだ位相差層とを具備した偽造防止媒体であって、前記偽造防止媒体のうち、前記光反射層の前記位相差層と向き合った部分に対応した第1光反射領域と、前記光反射層の前記位相差層と向き合っていない部分に対応した第2光反射領域との各々は、互いからの判別が可能な可視像を形成していることを特徴とする偽造防止媒体である。
【0014】
また、第2の発明は、前記光反射層の前方に位置し且つ前記位相差層と向き合った光透過性の着色層を更に具備したことを特徴とする第1の発明の偽造防止媒体である。
【0015】
また、第3の発明は、前記位相差層は、光透過性の着色層と、それを挟んだ1対の液晶層とを含んでいることを特徴とする第1の発明の偽造防止媒体である。
【0016】
また、第4の発明は、前記光反射は、干渉色を呈する反射層を含んでいることを特徴とする第1から第3の発明のいずれか1つの偽造防止媒体である。
【0017】
また、第5の発明は、前記光反射層と前記位相差層との間に介在した配向膜をさらに具備したことを特徴とする第1から第4の発明のいずれか1つの偽造防止媒体である。
【0018】
また、第6の発明は、第1から第5の発明のいずれか1つ偽造防止媒体と、その背面に支持された粘着層とを具備したことを特徴とする偽造防止ラベルである。
【0019】
また、第7の発明は、第1から第5の発明のいずれか1つの偽造防止媒体と、これがすき込まれた紙とを具備したことを特徴とする印刷物である。
【0020】
また、第8の発明は、第1から第4の発明のいずれか1つの偽造防止媒体と、前記偽造防止媒体の前面を剥離可能に支持した基材と、前記偽造防止媒体の背面に支持された接着層とを含んだことを特徴とする転写箔である。
【0021】
また、第9の発明は、真正であるか否かが未知の物品を真正品と非真正品との間で判別する方法であって、前記真正品は第1から第5の発明のいずれか1つの偽造防止媒体を支持した物品であり、各々が互いから判別可能な可視像を形成しており且つ偏光子を介して観察することによりコントラスト比が変化する第1および第2光反射領域を前記真正であるか否かが未知の物品が含んでいない場合には、前記真正であるか未知の物品は非真正品であると判断することを含んだことを特徴とする判別方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、より高い偽造防止効果を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0024】
図1は、本発明の第一実施形態の偽造防止媒体を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示す偽造防止媒体のII−II線に沿った断面図である。
【0025】
この偽造防止媒体10は、図2に示す基材21を含んでいる。基材21は、例えば、ポリエチレンテレフタレートからなる二軸延伸フィルムである。
【0026】
基材21上には、光反射層22が形成されている。典型的には、光反射層22は鏡面反射体である。光反射層22は、例えば、アルミニウムを蒸着することにより形成することができる。
【0027】
光反射層22の前面は、λ/8位相差層23で部分的に被覆されている。λ/8位相差層23は、例えば、ネマチック液晶からなる。λ/8位相差層23は、図1に矢印nA23で示す方向に沿った進相軸と、この進相軸nA23に垂直な遅相軸nB23(図1では図示せず)とを有している。λ/8位相差層23は、波長がλであり且つ偏光面(電場ベクトルの振動面)が進相軸nA23に対して斜めの直線偏光を入射させると、偏光面が遅相軸nB23に平行な第1直線偏光と、偏光面が進相軸nA23に平行であり且つ第1直線偏光からλ/8だけ位相が進んだ第2直線偏光とを出射する。
【0028】
波長λは、設計波長である。設計波長λは、典型的には、自然光のうち人間の視細胞の感度が高い緑色光の波長、例えば約550nmである。設計波長λにおけるλ/8位相差層23のリターデイションは、その厚さのばらつきなどに起因して、設計通りにならないことがある。このような場合であっても、このリターデイションの設計値からのずれが、設計値の約10%以下であれば、後述する検証に大きな影響を及ぼすことはない。
【0029】
なお、典型的には、光反射層22と位相差層23との間には、配向膜を介在させる。配向膜は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)からなる。配向膜は、その上に成膜する液晶層が含む液晶分子のメソゲン基の配向方向を制御する働きをもつ。
【0030】
λ/8位相差層23は、光透過性の着色層24で被覆されている。着色層24は、波長がλの光を透過させる。着色層24は、直接染料、分散染料および二色性染料などの染料、または、顔料を含有している。着色層24は、透明樹脂をさらに含有することができる。
【0031】
以下、この偽造防止媒体10またはその前面のうち、光反射層22のλ/8位相差層23と向き合った部分に対応した領域を第1光反射領域11と呼び、光反射層22のλ/8位相差層23と向き合っていない部分に対応した領域を第2光反射領域12と呼ぶ。
【0032】
次に、偽造防止媒体10に自然光を照射して、これを肉眼で観察した場合に見える画像について説明する。
【0033】
第1光反射領域11は、入射した自然光の一部を着色層24が吸収するので、入射光に比べて強度が低い光を放出する。一方、第2光反射領域12は、入射光とほぼ等しい強度の光を放出する。よって、第1光反射領域11は、第2光反射領域12と比較してより暗く見える。また、第1光反射領域11は着色層24の色相が見える。すなわち、第1光反射領域11と第2光反射領域12との各々は、肉眼で見た場合に互いからの判別が可能な可視像を形成している。
【0034】
次に、この偽造防止媒体10を支持した物品が真正品であることを確認するためなどに用いる検証具について説明する。
【0035】
図3は、検証具の一例を概略的に示す分解図である。図3に示す検証具50は、直線偏光フィルム51と、λ/4位相差層52とを含んでいる。
【0036】
直線偏光フィルム51は、例えば、吸収型の偏光フィルムである。この場合、直線偏光フィルム51は、その透過軸OPと平行な偏光面を持つ直線偏光は透過させ、透過軸OPと直交する偏光面を持つ直線偏光を吸収する。
【0037】
吸収型の偏光フィルム51としては、例えば、PVAからなる延伸フィルムにヨードを吸収させたPVA−ヨウ素型フィルムまたは二色性染料型フィルムを用いることができる。これら偏光フィルムは、物理的強度が低いため、トリアセチルロース(TAC)からなるフィルムで挟んで使用してもよい。
【0038】
λ/4位相差層52は、直線偏光フィルム51の一方の主面と向き合っている。λ/4位相差層52の進相軸nA52は、直線偏光フィルム51の透過軸OPに対して斜めである。一例として、直線偏光フィルム51側からλ/4位相差層52を見た場合に、λ/4位相差層52の進相軸nA52の方向は透過軸OPに平行な方向から反時計回りに45°回転させた方向であるとする。この場合、この検証具50は左円偏光子として機能する。
【0039】
設計波長λにおけるλ/4位相差層52のリターデイションは、その厚さのばらつきなどに起因して、設計通りにならないことがある。このような場合であっても、このリターデイションの設計値からのずれが、設計値の約10%以下であれば、後述する検証に大きな影響を及ぼすことはない。
【0040】
次に、この検証具50を用いて、偽造防止媒体10を支持した物品が真正品であることを検証する方法を説明する。
【0041】
図4(a)は、図1および図2に示す偽造防止媒体10と図3に示す検証具50とを重ねた場合に観察可能な画像の一例を概略的に示す平面図である。
【0042】
図4(a)では、偽造防止媒体10と検証具50とを、λ/4位相差層52が光反射領域11および12の双方と向き合うように配置している。さらに、直線偏光フィルム51の光透過軸OPを、λ/8位相差層23の進相軸nA23と直交させている。この場合、図4(a)に示すように、第2光反射領域12は暗部として見え、第1光反射領域11は第2光反射領域12と比較してより明るく見える。この理由を、以下に説明する。なお、ここでは、簡略化のため、設計波長λと等しい波長を有する光についてのみ考える。
【0043】
まず、第1光反射領域11による光反射について説明する。
検証具50から出射した左円偏光は、図2に示すλ/8位相差層23に入射する。λ/8位相差層23は、入射した左円偏光を、左楕円偏光に変換する。この左楕円偏光の電場ベクトルの終端の軌跡は、光反射層22側から見た場合に、長軸が進相軸nA23に対して時計回りに45°傾いた楕円を形成している。
【0044】
λ/8位相差層23が放出した左楕円偏光は、光反射層22によって鏡面反射され、右楕円偏光に変換される。この右楕円偏光の電場ベクトルの終端の軌跡は、観察者側から見た場合に、長軸が進相軸nA23に対して反時計回りに45°傾いた楕円を形成している。
【0045】
この右楕円偏光は、λ/8位相差層23に入射する。λ/8位相差層23は、この右楕円偏光を直線偏光へと変換する。この直線偏光は、観察者側から見た場合に、偏光面が進相軸nA23に対して反時計回りに45°傾いている。
【0046】
この直線偏光は、検証具50のλ/4位相差層52に入射する。λ/位相差層52は、この直線偏光を左円偏光へと変換する。
【0047】
この左円偏光は、直線偏光フィルム51に入射する。直線偏光フィルム51は、左円偏光のうち、偏光面が透過軸OPに平行な直線偏光を透過させ、偏光面が透過軸OPに垂直な直線偏光を吸収する。すなわち、検証具50は、理想的には、第1光反射領域11からの反射光の半分を透過させ、残りの半分を吸収する。
【0048】
次に、第2光反射領域12による光反射について説明する。
第2光反射領域12は、検証具50から出射した左円偏光を右円偏光に変換する。すなわち、λ/4位相差層52に入射する第2光反射領域12からの反射光は右円偏光である。この右円偏光は、検証具50を透過できない。
【0049】
以上の理由から、第2光反射領域12は暗部として見え、第1光反射領域11は第2光反射領域12と比較してより明るく見える。
【0050】
図4(b)〜(d)は、図1および図2に示す偽造防止媒体10と図3に示す検証具50とを重ねた場合に観察可能な画像の他の例を概略的に示す平面図である。図4(b)〜(d)には、それぞれ、図4(a)に示す状態から検証具50のみを観察者側から見て時計回りに45°、90°、および135°回転させた状態を描いている。
【0051】
図4(a)〜(d)に示すように、第1光反射領域11の明るさおよび第2光反射領域12の明るさの各々は、検証具50を法線の周りで回転させたとしても変化しない。これは、検証具50は円偏光子であり、第1光反射領域11および第2光反射領域12が検証具50に向けて放出する光はそれぞれ円偏光および直線偏光であるためである。
【0052】
このように、検証具50を使用しないで偽造防止媒体10を観察した場合には、着色層24が第1光反射領域11と第2光反射領域12とに明るさの相違を生じさせる。具体的には、検証具50を使用しないで偽造防止媒体10を観察した場合、第1光反射領域11は、第2光反射領域12と比較してより暗く見える。そして、検証具50と偽造防止媒体10とをλ/4位相差層52と偽造防止媒体10とが向き合うように配置し、この状態で検証具50を介して偽造防止媒体10を観察すると、第2光反射領域12は暗部として見え、第1光反射領域11は第2光反射領域12と比較してより明るく見える。すなわち、検証具50を使用することにより、第1光反射領域11と第2光反射領域12との間で明部と暗部とが入れ替わる。
【0053】
次に、検証具50を裏返しにして偽造防止媒体10に重ねた場合に見える画像について説明する。
【0054】
図5(a)は、図1および図2に示す偽造防止媒体10と図3に示す検証具50とを重ねた場合に観察可能な画像の他の例を概略的に示す平面図である。図5(a)では、検証具50を裏返しにすると共に、直線偏光フィルム51の透過軸OPとλ/8位相差層23の進相軸nA23とを直交させている。
【0055】
検証具50を裏返しにした場合、検証具50は、透過軸OPを有する直線偏光子として機能する。すなわち、λ/4位相差層52側から検証具50に自然光を照射すると、検証具50は、偽造防止媒体10に向けて、直線偏光フィルム51の透過軸OPに平行な偏光面を有する直線偏光を放出する。
【0056】
図5(a)に示すように偽造防止媒体10と検証具50とを配置した場合、第1光反射領域11は、偽造防止媒体10と検証具50とに図4(a)〜(d)に示す配置を採用した場合と比較してより明るく見える。一方、第2光反射領域12は、明部として見える。以下、偽造防止媒体10の第1光反射領域11および第2光反射領域12が両方とも明るく見える理由を説明する。
【0057】
まず、第1光反射領域11による光反射について説明する。
検証具50から出射した直線偏光は、第1光反射領域11では、λ/8位相差層23に入射する。この直線偏光は、λ/8位相差層23の進相軸nA23と直交する偏光面を有している。そのため、この直線偏光は、直線偏光フィルム51の透過軸OPに平行な偏光面を有する直線偏光のままλ/8位相差層23を透過する。λ/8位相差層23から出射した直線偏光は、光反射層22によって鏡面反射される。反射された直線偏光は、λ/8位相差層23に再び入射し、直線偏光フィルム51の透過軸OPに平行な偏光面を有する直線偏光のままλ/8位相差層23を透過する。この直線偏光は、理想的には吸収されることなく、直線偏光フィルム51を透過する。直線偏光フィルム51を透過した直線偏光は、λ/4位相差層52に入射し、左円偏光に変換される。このように、検証具50は、理想的には、第1光反射領域11からの反射光の全てを透過させる。
【0058】
次に、第2光反射領域12による光反射について説明する。
検証具50から出射した直線偏光は、第2光反射領域12では、光反射層22に入射する。光反射層22は、この直線偏光を鏡面反射する。反射された直線偏光は、直線偏光フィルム51の透過軸OPに平行な偏光面を有しているので、理想的には吸収されることなく、直線偏光フィルム51を透過する。直線偏光フィルム51を透過した直線偏光は、λ/4位相差層52に入射し、左円偏光に変換される。このように、検証具50は、理想的には、第2光反射領域12からの反射光の全てを透過させる。
【0059】
以上の理由から、図5(a)に示す配置を採用した場合、第1光反射領域11および第2光反射領域12はともに明るく見える。なお、第1光反射領域11は、第2光反射領域12とは異なり、着色層24を含んでいる。したがって、図5(a)に示す配置を採用した場合、第2光反射領域12は、第1光反射領域11と比較してより明るく見える。
【0060】
図5(b)は、図1および図2に示す偽造防止媒体10と図3に示す検証具50とを重ねた場合に観察可能な画像のさらに他の例を概略的に示す平面図である。図5(b)には、図5(a)に示す状態から、検証具50のみを観察者側から見て時計回りに45°回転させた状態を描いている。すなわち、図5(b)の配置では、直線偏光フィルム51の光学軸OPとλ/8位相差層23の進相軸nA23とは45°の角度をなしている。さらに、λ/4位相差層52の進相軸nA52とλ/8位相差層23の進相軸nA23とは平行である。
【0061】
偽造防止媒体10と検証具50とを図5(b)に示すように配置した場合、第1光反射領域11は、図5(a)の配置を採用した場合と比較してより暗く見える。また、第2光反射領域12は、図5(a)の配置を採用した場合と同じ明るさに見える。ここで、このような明るさの相違を生じる理由を説明する。
【0062】
図5(b)の配置を採用した場合、第1光反射領域11のλ/8位相差層23に入射する直線偏光の電場ベクトルの振動方向は、偽造防止媒体10側から見て、λ/8位相差層23の進相軸nA23に平行な方向から時計回りに45°回転させた方向である。そのため、この直線偏光は、λ/8位相差層23によって右楕円偏光へと変換される。この右楕円偏光の電場ベクトルの終端の軌跡は、光反射層22側から見た場合に、長軸が進相軸nA23に対して時計回りに45°傾いた楕円を形成している。
この右楕円偏光は、光反射層22によって反射され、左楕円偏光へと変換される。この左楕円偏光の電場ベクトルの終端の軌跡は、観察者側から見た場合に、長軸が進相軸nA23に対して反時計回りに45°傾いた楕円を形成している。
この左楕円偏光は、λ/8位相差層23に入射する。λ/8位相差層23は、この左楕円偏光を左円偏光へと変換する。
この左円偏光は、直線偏光フィルム51に入射する。直線偏光フィルム51は、これに入射した左円偏光のうち、直線偏光フィルム51の透過軸OPに平行な偏光面を有する直線偏光を透過させ、透過軸OPに垂直な偏光面を有する直線偏光を吸収する。直線偏光フィルム51を透過した直線偏光は、λ/4位相差層52に入射する。λ/4位相差層52は、この直線偏光を左円偏光に変換する。すなわち、検証具50は、理想的には、第1光反射領域11からの反射光の半分を透過させ、残りの半分を吸収する。
【0063】
一方、第2光反射領域12による光反射は、図5(a)の配置を採用した場合と同様である。
【0064】
このように、図5(b)の配置を採用した場合、検証具50は、第1光反射領域11からの反射光の約半分を吸収し、第2光反射領域12からの反射光のほぼ全てを透過させる。したがって、図5(b)の配置を採用した場合、第1光反射領域11は図5(a)の配置を採用した場合と比較してより暗く見え、第2光反射領域12は図5(a)の配置を採用した場合と同じ明るさに見える。
【0065】
図5(c)は、図1および図2に示す偽造防止媒体10と図3に示す検証具50とを重ねた場合に観察可能な画像のさらに他の例を概略的に示す平面図である。図5(c)には、図5(a)に示す状態から、検証具50のみを観察者側から見て時計回りに90°回転させた状態を描いている。すなわち、図5(c)の配置では、直線偏光フィルム51の透過軸OPとλ/8位相差層23の進相軸nA23とは平行である。
【0066】
図5(c)に示す配置を採用した場合、第1光反射領域11は、図5(a)に示す配置を採用した場合と同じ明るさに見える。また、図5(c)に示す配置を採用した場合、第2光反射領域12は、図5(a)に示す配置を採用した場合と同じ明るさに見える。
【0067】
図5(d)は、図1および図2に示す偽造防止媒体10と図3に示す検証具50とを重ねた場合に観察可能な画像のさらに他の例を概略的に示す平面図である。図5(d)には、図5(c)に示す状態から、検証具50のみを観察者側から見て時計回りに135°回転させた状態を描いている。すなわち、図5(d)の配置では、直線偏光フィルム51の光学軸OPとλ/8位相差層23の進相軸nA23とは45°の角度をなしている。さらに、検証具50のλ/4位相差層52の進相軸nA52とλ/8位相差層23の進相軸nA23とは直交している。
【0068】
図5(d)に示す配置を採用した場合、第1光反射領域11は、図5(b)に示す配置を採用した場合と同じ明るさに見える。また、図5(d)に示す配置を採用した場合、第2光反射領域12は、図5(b)に示す配置を採用した場合と同じ明るさに見える。
【0069】
以上の説明から明らかなように、偽造防止媒体10と検証具50とを、直線偏光フィルム51と偽造防止媒体10とが向き合うように重ね、この状態で検証具50を介して偽造防止媒体10を観察した場合、第1光反射領域11の明度は直線偏光フィルム51の透過軸OPの方位に応じて変化する。一方、第2光反射領域12の明度は直線偏光フィルム51の透過軸OPの方位を変えても変化しない。
【0070】
また、図5(a)および図5(c)に示すように第1光反射領域11が最も明るく見えるように偽造防止媒体10と検証具50とを配置した場合、着色層24による光吸収に起因して、第1光反射領域11は、第2光反射領域12と比較してより暗く見える。そして、図5(b)および図5(d)に示すように第1光反射領域11が最も暗く見えるように偽造防止媒体10と検証具50とを配置した場合、第2光反射領域12は、第1光反射領域11と比較してより明るく見える。
【0071】
この偽造防止媒体10は、真正であることが確認されるべき物品に支持させる。このような偽造防止対策を施した物品と偽造品などの非真正品とを肉眼で判別できない場合であっても、検証具50などの偏光子を使用することによりそれらを判別することができる。例えば、各々が互いから判別可能な可視像を形成しており且つ検証具50を介して観察することによりコントラスト比が変化する第1光反射領域11および第2光反射領域12を、真正であるか否かが未知の物品が含んでいない場合には、その物品は非真正品であると判断することができる。また、真正であるか否かが未知の物品が、各々が互いから判別可能な可視像を形成しており且つ検証具50を介して観察することによりコントラスト比が変化する第1及び第2光反射領域を含んでいたとしても、それら光反射領域が、図5(a)〜(d)を参照しながら説明した偽造防止媒体10と検証具50との配置に応じたコントラスト比の変化を生じない場合には、その物品は非真正品であると判断することができる。
【0072】
以上説明したように、第1光反射領域11と第2光反射領域12とのコントラスト比は、検証具50を介して観察することにより変化する。そして、この偽造防止媒体10では、このコントラスト比の変化を生じさせるλ/8位相差層23と着色層24とを重ねている。したがって、真偽判定に先のコントラスト比の変化が利用されること、及び、偽造防止媒体10にλ/8位相差層23が形成されていることを、これらを知らない者が認知できる可能性は低い。しかも、先のコントラスト比の変化を、この偽造防止媒体10の複写物で再現することはできず、また、この偽造防止媒体10はλ/8位相差層23として液晶層を使用しているので、その複製は困難である。したがって、この偽造防止媒体10を使用すると、より高い偽造防止効果を達成することが可能となる。
【0073】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。
図6は、本発明の第二実施形態の偽造防止媒体を概略的に示す平面図である。図7は、図6に示す偽造防止媒体のVII−VII線に沿った断面図である。
【0074】
この偽造防止媒体10は、以下の構成を採用したこと以外は、図1および図2を参照しながら説明した偽造防止媒体10と同様である。すなわち、図6および図7に示す偽造防止媒体10は、図2に示すλ/8位相差層23の代わりに、λ/4位相差層26を含んでいる。このλ/4位相差層26は、光反射層22の前面を部分的に被覆している。そして、図6および図7に示す偽造防止媒体10では、着色層24は、λ/4位相差層26と光反射層22との間に介在している。
【0075】
なお、図7において、参照符号25で示す部材は、第一実施形態で説明した配向膜である。配向膜25は、着色層24とλ/4位相差層26との間に介在している。配向膜25は、図7に示すように光反射層22の前面全体を被覆していてもよく、着色層24とλ/4位相差層26との間にのみ存在していてもよく、或いは、省略してもよい。
【0076】
λ/4位相差層26は、例えば、ネマチック液晶からなる。λ/4位相差層26は、図6に矢印nA26で示す方向に沿った進相軸と、この進相軸nA26に垂直な遅相軸nB26(図6では図示せず)とを有している。λ/4位相差層26は、波長がλであり且つ偏光面(電場ベクトルの振動面)が進相軸nA26に対して斜めの直線偏光を入射させると、偏光面が遅相軸nB26に平行な第1直線偏光と、偏光面が進相軸nA26に平行であり且つ第1直線偏光からλ/4だけ位相が進んだ第2直線偏光とを出射する。
【0077】
なお、設計波長λにおけるλ/4位相差層26のリターデイションは、その厚さのばらつきなどに起因して、設計通りにならないことがある。このような場合であっても、このリターデイションの設計値からのずれが、設計値の約10%以下であれば、後述する検証に大きな影響を及ぼすことはない。
【0078】
以下、この偽造防止媒体10またはその前面のうち、光反射層22のλ/4位相差層26と向き合った部分に対応した領域を第1光反射領域11と呼び、光反射層22のλ/4位相差層26と向き合っていない部分に対応した領域を第2光反射領域12と呼ぶ。
【0079】
次に、偽造防止媒体10に自然光を照射して、これを肉眼で観察した場合に見える画像について説明する。
【0080】
第一実施形態で説明した通り、第2光反射領域12は入射光と強度がほぼ等しい光を放出する。さらに、第1光反射領域11は、第一実施形態の第1光反射領域と同様に、入射した自然光の一部が着色層24で吸収されるので、入射光に比べて強度が低い光を放出する。よって、偽造防止媒体10に自然光を照射して、これを肉眼で観察した場合には、第1光反射領域11は、第2光反射領域12と比較してより暗く見える。また、第1光反射領域11は、着色層24の色相が見える。すなわち、第1光反射領域11と第2光反射領域12との各々は、肉眼で見た場合に互いからの判別が可能な可視像を形成している。
【0081】
次に、この偽造防止媒体10が、図3に示す検証具50を用いて観察した場合に表示する画像について説明する。
【0082】
図8(a)は、図6および図7に示す偽造防止媒体と図3に示す検証具とを重ねた場合に観察可能な画像の一例を概略的に示す平面図である。
【0083】
図8(a)では、偽造防止媒体10と検証具50とを、λ/4位相差層52が第1光反射領域11および第2光反射領域12と向き合うように配置している。さらに、直線偏光フィルム51の光透過軸OPを、λ/4位相差層26の進相軸nA26と直交させている。この場合、図4(a)を参照しながら説明したのと同様に、第2光反射領域12は暗部として見える。
【0084】
ここで、第1光反射領域11による光反射について説明する。
検証具50から出射した左円偏光は、図7に示すλ/4位相差層26に入射する。λ/4位相差層26は、入射した左円偏光を直線偏光に変換する。この直線偏光の偏光面は、光反射層22側から見た場合に、λ/4位相差層26の進相軸nA26に対して時計回りに45°傾いている。光反射層22は、この直線偏光を鏡面反射する。λ/4位相差層26は、この直線偏光を左円偏光に変換する。この左円偏光は、検証具50のλ/4位相差層52に入射する。λ/4位相差層52は、この左円偏光を直線偏光フィルム51の透過軸OPと平行な偏光面を有する直線偏光に変換する。この直線偏光は、直線偏光フィルム51を透過する。
【0085】
以上の理由から、第1光反射領域11は明部として見え、第2光反射領域12は暗部として見える。
【0086】
図8(b)〜(d)は、図6および図7に示す偽造防止媒体10と図3に示す検証具50とを重ねた場合に観察可能な画像の他の例を概略的に示す平面図である。図8(b)〜(d)には、それぞれ、図8(a)に示す状態から検証具50のみを観察者側から見て時計回りに45°、90°、および135°回転させた状態を描いている。
【0087】
図8(a)〜(d)に示すように、第1光反射領域11の明るさおよび第2光反射領域12の明るさの各々は、検証具50を法線の周りで回転させたとしても変化しない。これは、検証具50は円偏光子であり、第1光反射領域11および第2光反射領域12が検証具50に向けて放出する光は円偏光であるためである。
【0088】
このように、検証具50を使用しないで偽造防止媒体10を観察した場合には、着色層24が第1光反射領域11と第2光反射領域12とに明るさの相違を生じさせる。具体的には、検証具50を使用しないで偽造防止媒体10を観察した場合、第1光反射領域11は、第2光反射領域12と比較してより暗く見える。そして、検証具50と偽造防止媒体10とをλ/4位相差層52と偽造防止媒体10とが向き合うように配置し、この状態で検証具50を介して偽造防止媒体10を観察すると、第1光反射領域は第2光反射領域12と比較してより明るく見え、第2光反射領域12は暗部として見える。すなわち、検証具50を使用することにより、第1光反射領域11と第2光反射領域との間で明部と暗部とが入れ替わる。
【0089】
次に、検証具50を裏返しにして偽造防止媒体10に重ねた場合に見える画像について説明する。
【0090】
図9(a)は、図6および図7に示す偽造防止媒体10と図3に示す検証具50とを重ねた場合に観察可能な画像の他の例を概略的に示す平面図である。図9(a)では、検証具50を裏返しにすると共に、直線偏光フィルム51の透過軸OPとλ/4位相差層26の進相軸nA26とを直交させている。
この場合、第2光反射領域12は、図5(a)を参照しながら説明したのと同じ明るさで見える。
【0091】
次に、第1光反射領域11による光反射について説明する。
第1光反射領域11のλ/4位相差層26に入射する直線偏光は、λ/4位相差層26の進相軸nA26と直交する偏光面を有している。そのため、この直線偏光は、直線偏光フィルム51の透過軸OPに平行な偏光面を有する直線偏光のままλ/4位相差層26を透過する。λ/4位相差層26から出射した直線偏光は、光反射層22によって鏡面反射される。反射された直線偏光は、λ/4位相差層26に再び入射し、先と同じ理由により、偏光フィルム51の透過軸OPに平行な偏光面を有する直線偏光のままλ/4位相差層26を透過する。この直線偏光は、理想的には吸収されることなく、直線偏光フィルム51を透過する。直線偏光フィルム51を透過した直線偏光は、λ/4位相差層52に入射し、左円偏光に変換される。このように、検証具50は、理想的には、第1光反射領域11からの反射光の全てを透過させる。
【0092】
以上の理由から、図9(a)に示す配置を採用した場合、第1光反射領域11および第2光反射領域12はともに明るく見える。なお、第1光反射領域11は、第2光反射領域12とは異なり、着色層24を含んでいる。したがって、図9(a)に示す配置を採用した場合、第2光反射領域12は、第1光反射領域11と比較してより明るく見える。
【0093】
図9(b)は、図1および図2に示す偽造防止媒体10と図3に示す検証具50とを重ねた場合に観察可能な画像のさらに他の例を概略的に示す平面図である。図9(b)には、図9(a)に示す状態から、検証具50のみを観察者側から見て時計回りに45°回転させた状態を描いている。すなわち、図9(b)の配置では、直線偏光フィルム51の光学軸OPとλ/4位相差層26の進相軸nA26とは45°の角度をなしている。さらに、λ/4位相差層52の進相軸nA52とλ/4位相差層26の進相軸nA26とは平行である。
【0094】
偽造防止媒体10と検証具50とを図9(b)に示すように配置した場合、第1光反射領域11は、図9(a)の配置を採用した場合と比較してより暗く見える。また、第2光反射領域12は、図9(a)の配置を採用した場合と同じ明るさに見える。ここで、このような明るさの相違を生じる理由を説明する。
【0095】
図9(b)の配置を採用した場合、検証具50が偽造防止媒体10に向けて放出する直線偏光の電場ベクトルの振動方向は、偽造防止媒体10側から見て、λ/4位相差層26の進相軸nA26に平行な方向から時計回りに45°回転させた方向である。そのため、この直線偏光は、λ/4位相差層26によって右円偏光へと変換される。
【0096】
この右円偏光は、光反射層22によって反射され、左円偏光へと変換される。
この左円偏光は、λ/4位相差層26に入射する。λ/4位相差層26は、この左円偏光を直線偏光へと変換する。この直線偏光は、直線偏光フィルム51の透過軸OPに直交する偏光面を有しているので、直線偏光フィルム51を透過できない。
【0097】
一方、第2光反射領域12による光反射は、図9(a)の配置を採用した場合と同様である。
【0098】
このように、図9(b)の配置を採用した場合、検証具50は、第1光反射領域11からの反射光のほぼ全てを吸収し、第2光反射領域12からの反射光のほぼ全てを透過させる。したがって、図9(b)の配置を採用した場合、第1光反射領域11は図9(a)の配置を採用した場合と比較してより暗く見え、第2光反射領域12は図9(a)の配置を採用した場合と同じ明るさに見える。
【0099】
図9(c)は、図6および図7に示す偽造防止媒体10と図3に示す検証具50とを重ねた場合に観察可能な画像のさらに他の例を概略的に示す平面図である。図9(c)には、図9(a)に示す状態から、検証具50のみを観察者側から見て時計回りに90°回転させた状態を描いている。すなわち、図9(c)の配置では、直線偏光フィルム51の透過軸OPとλ/4位相差層26の進相軸nA26とは平行である。
【0100】
図9(c)に示す配置を採用した場合、第1光反射領域11は、図9(a)に示す配置を採用した場合と同じ明るさに見える。また、図9(c)に示す配置を採用した場合、第2光反射領域12は、図9(a)に示す配置を採用した場合と同じ明るさに見える。
【0101】
図9(d)は、図6および図7に示す偽造防止媒体10と図3に示す検証具50とを重ねた場合に観察可能な画像のさらに他の例を概略的に示す平面図である。図9(d)には、図9(c)に示す状態から、検証具50のみを観察者側から見て時計回りに135°回転させた状態を描いている。すなわち、図9(d)の配置では、直線偏光フィルム51の光学軸OPとλ/4位相差層26の進相軸nA26とは45°の角度をなしている。さらに、検証具50のλ/4位相差層52の進相軸nA52とλ/4位相差層26の進相軸nA26とは直交している。
【0102】
図9(d)に示す配置を採用した場合、第1光反射領域11は、図9(b)に示す配置を採用した場合と同じ明るさに見える。また、図9(d)に示す配置を採用した場合、第2光反射領域12は、図9(b)に示す配置を採用した場合と同じ明るさに見える。
【0103】
以上の説明から明らかなように、偽造防止媒体10と検証具50とを、直線偏光フィルム51と偽造防止媒体10とが向き合うように重ね、この状態で検証具50を介して偽造防止媒体10を観察した場合、第1光反射領域11の明度は直線偏光フィルム51の透過軸OPの方位に応じて変化する。一方、第2光反射領域12の明度は、直線偏光フィルム51の透過軸OPの方位を変えても変化しない。
【0104】
また、図9(a)および図9(c)に示すように第1光反射領域11が最も明るく見えるように偽造防止媒体10と検証具50とを配置した場合、着色層24による光吸収に起因して、第1光反射領域11は、第2光反射領域12と比較してより暗く見える。そして、図9(b)および図9(d)に示すように第1光反射領域11が最も暗く見えるように偽造防止媒体10と検証具50とを配置した場合、第1光反射領域11は、第2光反射領域12と比較してより暗く見え、且つそれら領域の明度の差は、図9(a)および図9(c)に示すように配置した場合と比較して大きくなる。
【0105】
この偽造防止媒体10は、真正であることが確認されるべき物品に支持させる。このような偽造防止対策を施した物品と偽造品などの非真正品とを肉眼で判別できない場合であっても、第一実施形態で説明したのと同様の方法により、それらを判別することができる。
【0106】
また、第一実施形態と同様、第1光反射領域11と第2光反射領域12とのコントラスト比は、検証具50を介して観察することにより変化する。そして、この偽造防止媒体10では、このコントラスト比の変化を生じさせるλ/4位相差層26と着色層24とを重ねている。したがって、真偽判定に先のコントラスト比の変化が利用されること、及び、偽造防止媒体10にλ/4位相差層26が形成されていることを、これらを知らない者が認知できる可能性は低い。しかも、先のコントラスト比の変化を、この偽造防止媒体10の複写物で再現することはできず、また、この偽造防止媒体10はλ/4位相差層26として液晶層を使用しているので、その複製は困難である。したがって、この偽造防止媒体10を使用すると、より高い偽造防止効果を達成することが可能となる。
【0107】
上述した偽造防止媒体10には、様々な変形が可能である。例えば、図2では着色層24はλ/8位相差層23を被覆しているが、着色層24は、λ/8位相差層23と反射層22との間に設置してもよい。或いは、λ/8位相差層23を、着色層24とそれを挟んだ一対の液晶層とで構成してもよい。また、図7では着色層24をλ/4位相差層26と光反射層22との間に設置しているが、着色層24は、λ/4位相差層26の前面を被覆していてもよい。或いは、λ/4位相差層26を、着色層24とそれを挟んだ一対の液晶層とで構成してもよい。
【0108】
着色層24は、第1光反射領域11内に設置する代わりに、第2光反射領域12内に設置してもよい。或いは、第1光反射領域11内に着色層24を設置するのに加え、第2光反射領域12内に着色層24とは色相が異なる着色層を設置してもよい。
【0109】
色相が互いに異なる複数の着色層24を配置する場合、これら着色層24は、同一の下地上に形成してもよく、或いは、異なる下地上に形成してもよい。例えば、反射層22の前面のうち第2光反射領域12に対応した部分を着色層24で被覆し、λ/8位相差層23またはλ/4位相差層26に、着色層24とは色相が異なる着色層を一対の液晶層で挟んだ構造を採用してもよい。
【0110】
上述した偽造防止媒体10では、可視像を形成するために着色層26を使用しているが、他の方法で可視像を形成してもよい。例えば、着色層24を用いる代わりに、エンボス加工などを利用して、光反射層22の前面のうち第1光反射領域11又は第2光反射領域12に対応した部分に凸パターンおよび/または凹パターンを形成してもよい。例えば、凸パターンおよび/または凹パターンが光反射層22に光散乱性を与える場合、第1光反射領域11と第2光反射領域12との各々は、互いからの判別が可能な可視像を形成する。
【0111】
光反射層22は、回折構造を含んでいてもよい。例えば、光反射層22は、レリーフ構造を有する金属反射層であってもよい。
【0112】
光反射層22は、干渉色を呈する反射層を含んでもよい。この場合、光反射層22として、干渉色を呈する反射層を単独で使用してもよく、或いは、干渉色を呈する反射層と金属反射層との積層体を使用してもよい。干渉色を呈する反射層としては、例えば、コレステリック液晶層およびパール顔料を用いて形成した層を使用することができる。
【0113】
偽造防止媒体10の前面に、紫外線や物理衝撃からの保護を目的として、保護層を設けてもよい。
【0114】
左円偏光子として機能する検証具50の代わりに、右円偏光子として機能する検証具50を使用してもよい。また、検証具50を裏返しにして偽造防止媒体10に重ねることに代えて、別途準備した直線偏光フィルムを偽造防止媒体10に重ねてもよい。
【0115】
偽造防止媒体10の背面、ここでは基材21の2つの主面のうち反射層22が形成されていない面に、粘着または接着加工を施してもよい。すなわち、偽造防止媒体10を用いて、偽造防止ラベルとして使用可能な粘着ラベルを形成してもよい。
【0116】
偽造防止媒体10は、様々な方法で印刷物に適用できる。例えば、上記の粘着ラベルを印刷物に貼り付けてもよい。この場合、基材21に切り込みまたはミシン目を設けておいてもよい。すなわち、ラベルを剥がそうとしたときに、基材21が切り込みからまたはミシン目の位置で破れるような構造を採用してもよい。もちろん、偽造防止媒体10は、印刷物以外の物品に貼り付けることもできる。
【0117】
偽造防止媒体10を含んだ転写箔を形成し、これを用いて、偽造防止媒体10を物品に取り付けてもよい。
【0118】
図10は、転写箔の一例を概略的に示す断面図である。図10に示す転写箔90は、基材91を含んでいる。基材91上には、剥離層92、偽造防止媒体10、および接着層93が順次積層されている。
【0119】
偽造防止媒体10の前面は、基材91と向き合っている。偽造防止媒体10は、図2などを参照しながら説明した基材21を含んでいなくてもよい。
【0120】
偽造防止媒体10を印刷物に適用する場合、スレッド(ストリップ、フィラメント、糸状物、安全帯片などとも称される)と呼ばれる形態で、紙にすき込んでもよい。
【0121】
以下、偽装防止媒体10に使用可能な材料について説明する。
【0122】
基材21としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン等からなる合成樹脂フィルム、天然樹脂フィルム、合成紙、紙、ガラス板、アルミフォイルなどを単独で、または、それらを組み合わせた複合体などとして使用することが可能である。厚みは、偽造防止媒体10の使用目的に応じて適宜選択すればよい。
【0123】
光反射層22に用いる材料としては、光反射性が得られれば特に限定されず、例えば、アルミニウム、金、銀、銅などの金属または合金を用いることができる。これらの材料は単独でまたは積層して使用できる。光反射層22は、例えば、真空蒸着やスパッタリングなどの方法を用いて形成することができる。光反射層22の厚さは、例えば、50から1000Åの範囲内とする。
【0124】
配向膜25の材料としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)やポリイミドなどの樹脂を使用できる。これらの樹脂を適宜溶解した樹脂溶液を、ワイヤバー、グラビア、マイクログラビアなどの塗工方式を用いて光反射層22上に塗布し、この塗膜を乾燥する。乾燥後、ラビング布にて配向膜面を擦るラビング処理を行い、配向膜25を得る。ラビング布には、コットンやベルベットなどの材料を使用できる。
【0125】
配向膜25上に形成するλ/8位相差層23およびλ/4位相差層26は、例えば、スメクチック液晶またはネマチック液晶である。この場合、λ/8位相差層23およびλ/4位相差層26は、例えば、サーモトロピック液晶材料または高分子液晶材料からなる。
【0126】
例えば、サーモトロピック液晶材料からなる位相差層を形成する場合には、これを含有したインキを用いて印刷パターンを形成する。この印刷には、例えば、グラビア印刷法などの方法を用いることができる。また、先のインキは、例えば、溶剤および/または添加剤をさらに含有していてもよい。次いで、必要に応じて、この印刷パターンに熱および/または圧力を印加する。これにより、位相差層23および26を得る。なお、サーモトロピック液晶材料を使用する場合、配向膜25は省略してもよい。
【0127】
高分子液晶材料からなる位相差層を形成する場合には、例えば、重合性液晶材料を含有したインキを用いて配向膜25上に印刷パターンを形成する。この印刷には、例えば、グラビア印刷法などの方法を用いることができる。また、先のインキは、例えば、溶剤および/または添加剤をさらに含有していてもよい。次いで、加熱またはエネルギー線照射により、重合性液晶材料を重合させる。これにより、位相差層23および26を得る。
【0128】
重合性液晶材料としては、例えば、重合性基、重縮合性基または重付加に有効な基を有するエネルギー線硬化性化合物を使用することができる。この場合、重合性液晶材料は、分子中に2個以上のエネルギー線硬化性基を有している単量体またはオリゴマーを含有していることが好ましい。液晶の末端にアクリル基等の官能基を導入したものは、液晶の配向が終了した後、活性化エネルギー線照射により架橋することで物理的強度が向上するので、より好適である。
【0129】
重合性液晶材料は、典型的には、重合開始剤などを添加して使用する。例えば、α−ヒドロキシアセトフェノン系、α−アミノアセトフェノン系などのアセトフェノン系、ベンゾインエーテル系、ベンジルケタール系、α−ジカルボニル系、α−アシルオキシムエステル系などの重合開始剤を重合性液晶材料に添加してもよい。
【0130】
位相差層24および26は、直接染料、分散染料および二色性染料などの染料、または、顔料を含んでいてもよい。この場合、着色剤の含量は、位相差層のULCS(uniform lightness chromaticness scale)表色系における明度L*が好ましくは25以上となるように、より好ましくは35以上となるように調節する。
【0131】
反射層22とλ/8位相差層23またはλ/4位相差層26との間には、誘電体多層膜を粉砕してなる粉末と樹脂とを含有した層を設置してもよい。誘電体多層膜は、見る角度に応じて色が変化する。したがって、これを粉砕してなる粉末を含有した層を使用することにより、偽造防止媒体10に新たな光学的特徴を与えることができる。さらには、赤外線吸収剤や蛍光顔料などが適宜使用可能である。
【0132】
偽造防止媒体10を印刷物等に適用するための粘着剤としては、一般的な材料を用いることができる。例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系ポリアミド、アクリル系、ブチルゴム系、天然ゴム系、シリコン系、ポリイソブチル系などの粘着剤を単独で用いることもできるし、またはこれらの粘着剤にアルキルメタクリレート、ビニルエステル、アクリルニトリル、スチレン、ビニルモノマー等の凝集成分、不飽和カルボン酸、ヒドロキシ基含有モノマー、アクリルニトリル等に代表される改質成分や重合開始剤、可塑剤、硬化剤、硬化促進剤、酸化防止剤等の添加剤を必要に応じて添加したものを用いることもできる。粘着層の形成には、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法などの印刷方法やバーコート法、グラビア法、ロールコート法などの塗布方法を用いることができる。或いは、一方の主面に粘着層を形成したセパレータを使用してもよい。すなわち、粘着層をセパレータと共に偽造防止媒体10に貼り付け、その後、偽造防止媒体10からセパレータのみを剥がしてもよい。粘着層には、離型処理を行った離型紙や離型フィルムを貼り付けてもよい。これにより、粘着加工を施した偽造防止媒体10の取り扱いが容易になる。
【実施例】
【0133】
以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
厚さ25μmの片面アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、グラビア印刷法により、アルミニウム蒸着面の一部に液晶層用インキを塗布した。この塗膜は、硬化膜厚が約0.5μmとなるように形成した。この液晶層用インキの組成を以下に示す。
【0134】
液晶(商品名:パリオカラー LC242 BASF(株)製) 30重量%
重合開始剤(商品名:イルカギュア184 チバカイギー(株)製) 1.5重量%
溶剤(50重量部のトルエンと50重量部のメチルエチルケトンとの混合液) 68.5重量%
この塗膜を100℃で1分間の乾燥に供した後、高圧水銀灯にて500mJ/cm2の光照射を行って塗膜を硬化させた。これにより、λ/8位相差層を得た。
【0135】
次に、着色層を形成すべく、平台校正機を用いて、λ/8位相差層上に、以下の組成の着色層用インキを乾燥膜厚が1μmとなるようにグラビア印刷した。
【0136】
ポリエステル樹脂(商品名:バイロン200 東洋紡(株)製) 20重量%
染料(商品名:カヤセット Flavine FG 日本化薬(株)製) 1重量%
溶剤(50重量部のトルエンと50重量部のメチルエチルケトンとの混合液) 79重量%
次に、この塗膜を80℃で30秒間の乾燥に供した。これにより、着色層を得た。
【0137】
以上のようにして、偽造防止媒体を製造した。
【0138】
この偽造防止媒体に白色光を照射しながら肉眼で観察したところ、着色層に対応した領域については着色層の色相を確認できた。また、着色層の周囲の領域は、白色に見えた。
【0139】
次に、この偽造防止媒体と図3を参照しながら説明した検証具50とを位相差層52が偽造防止媒体と向き合うように重ねたこと以外は上記と同様の条件のもとで、偽像防止媒体を観察した。その結果、偽造防止媒体のうち、位相差層が形成されていない領域は暗部として見え、λ/8位相差層が形成された領域は位相差層が形成されていない領域と比べてより明るく見えた。
【0140】
次に、この偽造防止媒体と検証具50とを直線偏光フィルム51が偽造防止媒体と向き合うように重ねたこと以外は上記と同様の条件のもとで、偽造防止媒体を観察した。偽造防止媒体のλ/8位相差層が含むメソゲン基の配向方向と直線偏光フィルム51の透過軸OPとを平行または直交させた場合、偽造防止媒体のλ/8位相差層が形成された領域からの反射光を観察することができた。しかし、偽造防止媒体のλ/8位相差層が含むメソゲン基の配向方向と偏光フィルム51の透過軸OPとがなす角度を45°にすると、偽造防止媒体のうちλ/8位相差層が形成された領域は暗部へと変化した。
【0141】
次に、この偽造防止媒体をカラーコピーして、検証具を用いて上記と同じ方法で検証した。その結果、明暗の変化は確認できなかった。
【0142】
(実施例2)
実施例1で使用したのと同様の片面アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、スクリーン印刷法により、そのアルミニウム蒸着面の一部に着色層用インキを塗布した。この着色用インキの組成を以下に示す。
【0143】
カラーシフト性顔料 (商品名 シクパスター 9Z7P041 SICPA社製)
この塗膜を80℃で1分間の乾燥に供した。これにより、カラーシフト効果を有する着色層を得た。
【0144】
次に、バーコート法を用いて、着色層とアルミニウム蒸着面とに配向膜用インキを塗布した。この塗膜は、乾燥膜厚が3μmとなるように形成した。この配向膜用インキの組成を以下に示す。
【0145】
ポリビニルアルコール樹脂(商品名:ポバール117 クラレ(株)製) 10重量%
溶剤(95重量部の水と5重量部のイソプロピルアルコールとの混合液) 90重量%
塗膜を100℃で2分間の乾燥に供した後、この塗膜にラビング処理を施した。ラビング布としては、吉川化工(株)製のFINE PUFF YA−20−Rを使用した。これにより、配向膜を得た。
【0146】
次いで、配向膜のうち着色層に対応した部分に、実施例1で使用したのと同様の位相差層用インキを硬化膜厚が1μmとなるようにグラビア印刷した。この塗膜を100℃で1分間の乾燥に供した後、高圧水銀灯にて500mJ/cmの光照射を行って塗膜を硬化させた。これにより、λ/4位相差層を得た。
【0147】
その後、片面アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムの樹脂面に両面テープを貼り付けて、偽造防止ラベルを得た。両面テープとしては、日東電工(株)製の商品名No.531を用いた。
【0148】
この偽造防止ラベルに白色光を照射しながら肉眼で観察したところ、着色層に対応した領域については着色層に起因したカラーシフト効果を確認できた。また、着色層の周囲の領域は、白色に見えた。
【0149】
次に、この偽造防止ラベルと図3を参照しながら説明した検証具50とを位相差層52が偽造防止ラベルと向き合うように重ねたこと以外は上記と同様の条件のもとで、偽像防止ラベルを観察した。その結果、偽造防止ラベルのうち、位相差層が形成されていない領域は暗部として見え、λ/4位相差層が形成された領域は位相差層が形成されていない領域と比べてより明るく見えた。
【0150】
次に、この偽造防止ラベルと検証具50とを直線偏光フィルム51が偽造防止ラベルとを向き合うように重ねたこと以外は上記と同様の条件のもとで、偽造防止ラベルを観察した。偽造防止ラベルのλ/4位相差層が含むメソゲン基の配向方向と直線偏光フィルム51の透過軸OPとを平行または直交させた場合、偽造防止ラベルのλ/4位相差層が形成された領域からの反射光を観察することができた。しかし、偽造防止ラベルのλ/4位相差層が含むメソゲン基の配向方向と偏光フィルム51の透過軸OPとがなす角度を45°にすると、偽造防止ラベルのうちλ/4位相差層が形成された領域は暗部へと変化した。
【0151】
次に、この偽造防止媒体をカラーコピーして、検証具を用いて上記と同じ方法で検証した。その結果、明暗の変化は確認できなかった。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1】本発明の第1実施形態の偽造防止媒体を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す偽造防止媒体のII−II線に沿った断面図。
【図3】検証具の一例を概略的に示す分解図。
【図4】(a)〜(d)は、図1および図2に示す偽造防止媒体と図3に示す検証具とを重ねた場合に観察可能な画像の例を概略的に示す平面図。
【図5】(a)〜(d)は、図1および図2に示す偽造防止媒体と図3に示す検証具とを重ねた場合に観察可能な画像の他の例を概略的に示す平面図。
【図6】本発明の第2実施形態の偽造防止媒体を概略的に示す平面図。
【図7】図6に示す偽造防止媒体のVII−VII線に沿った断面図。
【図8】(a)〜(d)は、図6および図7に示す偽造防止媒体と図3に示す検証具とを重ねた場合に観察可能な画像の例を概略的に示す平面図。
【図9】(a)〜(d)は、図6および図7に示す偽造防止媒体と図3に示す検証具とを重ねた場合に観察可能な画像の他の例を概略的に示す平面図。
【図10】転写箔の一例を概略的に示す平面図。
【符号の説明】
【0153】
10…偽造防止媒体、11…第1光反射領域、12…第2光反射領域、21…基材、22…光反射層、23…λ/8位相差層、24…着色層、25…配向膜、26…λ/4位相差層、50…検証具、51…直線偏光フィルム、52…λ/4位相差層、90…転写箔、91…基材、92…剥離層、93…接着層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射層と、前記光反射層の前面の一部と向き合い且つ液晶材料を含んだ位相差層とを具備した偽造防止媒体であって、前記偽造防止媒体のうち、前記光反射層の前記位相差層と向き合った部分に対応した第1光反射領域と、前記光反射層の前記位相差層と向き合っていない部分に対応した第2光反射領域との各々は、互いからの判別が可能な可視像を形成していることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項2】
前記光反射層の前方に位置し且つ前記位相差層と向き合った光透過性の着色層を更に具備したことを特徴とする請求項1記載の偽造防止媒体。
【請求項3】
前記位相差層は、光透過性の着色層と、それを挟んだ1対の液晶層とを含んでいることを特徴とする請求項1記載の偽造防止媒体。
【請求項4】
前記光反射は、干渉色を呈する反射層を含んでいることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の偽造防止媒体。
【請求項5】
前記光反射層と前記位相差層との間に介在した配向膜をさらに具備したことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の偽造防止媒体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項記載の偽造防止媒体と、その背面に支持された粘着層とを具備したことを特徴とする偽造防止ラベル。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項記載の偽造防止媒体と、これがすき込まれた紙とを具備したことを特徴とする印刷物。
【請求項8】
請求項1から4のいずれか1項記載の偽造防止媒体と、
前記偽造防止媒体の前面を剥離可能に支持した基材と、
前記偽造防止媒体の背面に支持された接着層とを含んだことを特徴とする転写箔。
【請求項9】
真正であるか否かが未知の物品を真正品と非真正品との間で判別する方法であって、
前記真正品は請求項1から5のいずれか1項記載の偽造防止媒体を支持した物品であり、
各々が互いから判別可能な可視像を形成しており且つ偏光子を介して観察することによりコントラスト比が変化する第1および第2光反射領域を前記真正であるか否かが未知の物品が含んでいない場合には、前記真正であるか未知の物品は非真正品であると判断することを含んだことを特徴とする判別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−80501(P2008−80501A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259701(P2006−259701)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】