説明

偽造防止媒体および判別方法

【課題】より高い偽造防止効果を達成すること。
【解決手段】本発明の偽造防止媒体10は、光反射層22と、光反射層22の前面と向き合い、ネマチック液晶材料またはスメクチック液晶材料からなり、一方の主面にレリーフ型の回折格子24が形成された位相差層23とを含んだことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、株券、債権、小切手、および商品券などの有価証券、宝くじ、並びにIDカードなどの偽造を防止するために利用可能な偽造防止技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真技術を利用した複写機が普及し、これを利用して誰でも簡単に書類を複写できるようになった。特に、最近のカラーデジタル複写機によれば、原稿か複写物かの判定が極めて困難な複写物でさえも容易に作製することができる。
【0003】
一般的なカラーデジタル複写機では、以下の方法で複写を行う。まず、原稿に光を照射し、反射光をCCDラインセンサで検知する。CCDラインセンサは、反射光の強度に応じたデジタル信号を生成し、複写機内のメモリに送信する。この読み取りを、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の3色について行い、それぞれの色について得られたデジタル信号をメモリに格納する。次に、格納されたデジタル信号に基づいて、レーザー光で感光体ドラムに静電潜像を描画する。続いて、静電力を利用して、感光体ドラム上に静電潜像に対応したトナー像を形成する。その後、このトナー像を用紙へと転写し、転写したトナー像を用紙上に定着させる。例えば、このプロセスをイエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の4色について行うことにより、精巧なカラー複写物を得ることができる。
【0004】
このようなカラー複写は、便利である反面、株券、債権、約束手形、小切手などの有価証券や、入場券、搭乗券などの印刷物の偽造を容易にする。このため、容易に複写できないように、印刷物に複製防止対策を施す提案が種々なされている。
【0005】
そのような対策の1つとして、カラー複写による複写物の色が原稿の色と異なるようにする技術がある。例えば、有価証券などの原稿を非常に淡い色で着色する技術が提案されている。この淡い色を複写で正確に再現することは難しい。また、原稿に大きさの異なる網点を形成する技術が提案されている。これの複写物では、小さい網点の再現性が不十分となり易い。さらに、緑、紫、橙、金、銀等のカラー複写機のトナーにない色で印刷する技術が提案されている。また、人間が容易に知覚できる光の波長域では反射および/または吸収特性がほぼ等しく、人間が知覚困難な光の波長域、例えば380nm〜450nmおよび650nm〜780nmの波長域における反射および/または吸収特性が異なる2種類のインキを用いる技術が提案されている。これらインキを使用して形成した2つの領域は、見た目には同色であるが、カラー複写機で複写した場合に異なる色に再現され得る。
【0006】
しかし、カラー複写機では、出力色の補正が可能である。また、カラースキャナで読み込んだデジタルデータをコンピュータで補正し、カラープリンタで出力するデジタルプレスが普及しつつある。従って、多少の手間をかければ、原稿の色を精巧に再現することが可能であり、上記のような技術で偽造を防止することは困難である。
【0007】
また、例えば、有価証券などに、カラー複写機では再現不可能な特殊部品を設けておく技術も提案されている。このうち、特許文献1および2に記載されているホログラム箔などのOVD(Optical Variable Device)を有価証券などの表面上に設ける技術は、すでに実用化されている。この技術によると、ホログラムの銀面が光を鏡面反射するため、CCDラインセンサに反射光が入射せず、原稿の銀面部分は複写物では黒色に再現される。また、特許文献3には、屈折率の異なるセラミック層を積層してなりかつ見る角度によって色が変化する光学薄膜を使用する技術が記載されている。この色の変化は複写物では得ることができないので、容易に真贋判定が可能となる。さらにまた、この方法で形成された薄膜を細かく砕き、破片をインキに混入して印刷を行うことも提案されている。
【0008】
しかしながら、エンボス技術が発達したため、レリーフ型の回折格子を含んだ反射層の形成は以前より低難易度化している。加えて、多層薄膜フィルムは、一般の包装用フィルムとして販売され始めている。その結果、ホログラムの偽造防止効果は低化してきている。
【0009】
なお、特許文献4には、パターニングされた高分子液晶層と連続膜としての回折構造層とを含んだ液晶積層複合体が開示されている。この複合体において、回折構造層は、高分子液晶層を被覆するとともに、それが形成しているパターンの開口を埋め込んでいる。
【特許文献1】特開平6−259013号公報
【特許文献2】特開平7−089293号公報
【特許文献3】特表2004−505158号公報
【特許文献4】特開2006−142599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、より高い偽造防止効果を達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための第1の発明は、光反射層と、光反射層の前面と向き合い、ネマチック液晶材料またはスメクチック液晶材料からなり、一方の主面にレリーフ型の回折格子が形成された位相差層とを含んだことを特徴とする偽造防止媒体である。
【0012】
また、第2の発明は、回折格子は、主面の一部のみに形成されたことを特徴とする第1の発明の偽造防止媒体である。
【0013】
また、第3の発明は、光反射層の前方に位置しかつ位相差層と向き合った光透過性の着色層をさらに具備したことを特徴とする第1または第2の発明の偽造防止媒体である。
【0014】
また、第4の発明は、光反射層は、干渉色を呈する反射層を含んでいることを特徴とする第1から第3の発明のいずれか1つの偽造防止媒体である。
【0015】
また、第5の発明は、真正であるか否かが未知の物品を真正品と非真正品との間で判別する方法であって、真正品は第1から第4の発明のいずれか1つの偽造防止媒体を支持した物品であり、真正であるか否かが未知の物品が、偏光子を介して観察することで可視化する潜像を含んでいない場合には、真正であるか未知の物品は非真正品であると判断することを含んだことを特徴とする判別方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、より高い偽造防止効果を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
図1は、本発明の第1実施形態の偽造防止媒体を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示す偽造防止媒体のII−II線に沿った断面図である。この偽造防止媒体10は、真正品であることが確認されるべき物品に支持させる。
【0019】
この偽造防止媒体10は、図2に示す基材21を含んでいる。基材21としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン等の合成樹脂のフィルム、天然樹脂のフィルム、合成紙などの紙、ガラス板、アルミフォイル、または、それらの組み合わせを使用することが可能である。厚みは、偽造防止媒体の使用目的に応じて適宜選択すれば良い。
【0020】
基材21上には、光反射層22が形成されている。光反射層22の材料は、光反射性が得られれば特に限定されない。光反射層22は、例えば、金属蒸着層などの鏡面反射層である。この光反射層の材料としては、例えば、アルミニウム、金、銀、銅などの金属または合金を用いることができる。これらの材料は単独でまたは積層して使用できる。この光反射層22は、例えば、真空蒸着やスパッタリングなどの気相堆積方法を用いて形成することができる。
【0021】
光反射層22は、反射性顔料を含んだ光反射性顔料層であってもよい。光反射性顔料層の材料としては、例えば、光反射性顔料を樹脂などに分散させたものを用いることができる。この光反射層22は、反射光に干渉色を与えるものであってもよい。そのような光反射層22は、光反射性顔料として、例えば、見る角度に応じて色が変化する材料を微粉砕したものを用いることにより得られる。この材料は、例えば、屈折率がそれぞれ異なりかつ適当な膜厚を持つセラミックからなる複数層を積層させて形成する。また、光反射性顔料としては他に、パール顔料と呼ばれる光輝性顔料を用いることもできる。
【0022】
光反射層22の前面は、λ/4位相差層23で部分的に被覆されている。λ/4位相差層23は、図1に矢印nA23で示す方向に沿った進相軸と、この進相軸nA23に垂直な遅相軸(図示せず)とを有している。λ/4位相差層23は、波長がλでありかつ偏光面(電場ベクトルの振動面)が進相軸nA23に対して斜めの直線偏光を入射させると、偏光面が遅相軸に平行な第1直線偏光と、偏光面が進相軸nA23に平行でありかつ第1直線偏光からλ/4だけ位相が進んだ第2直線偏光とを射出する。
【0023】
波長λは、設計波長である。設計波長λは、典型的には自然光のうち人間の視細胞の感度が高い緑色光の波長、例えば約550nmである。設計波長λにおけるλ/4位相差層23のリターデイションは、その厚さのばらつきなどに起因して、設計通りにならないことがある。このような場合であっても、このリターデイションの設計値からのずれが、設計値の約10%以下であれば、後述する検証に大きな影響を及ぼすことはない。
【0024】
λ/4位相差層23は、ネマチックまたはスメクチック液晶材料からなる。この液晶材料は、例えば、サーモトロピック液晶材料である。λ/4位相差層23は、例えば、この液晶材料を含有したインキを用いて形成する。この印刷には、例えば、グラビア印刷法を用いることができる。
【0025】
先のインキには、溶剤を添加してもよい。また、液晶分子の末端には、アクリル基等の官能基を導入してもよい。そのような液晶材料を使用した場合、液晶分子の配向を完了させた後に活性エネルギー線を照射することにより液晶分子を架橋させることができる。したがって、物理的強度に優れたλ/4位相差層23が得られる。
【0026】
λ/4位相差層23は、直接染料、分散染料および二色性染料などの染料、または、顔料を含んでいてもよい。この場合、着色剤の含量は、後述する第1光反射領域11のULCS(uniform lightness chromaticness scale)表色系における明度L*が好ましくは10以上となるように、より好ましくは15以上となるように調節する。
【0027】
λ/4位相差層23の前面には、レリーフ型の回折格子24が形成されている。
【0028】
この回折格子24は、例えば、レリーフ型のホログラムである。ホログラムは、光の干渉縞を微細な凹凸パターンとして平面に記録するレリーフ型、体積方向に干渉縞を記録する体積型などがある。この中でも、レリーフ型ホログラムは、量産性やコストの面で好ましいため、一般的に利用されている。なお、用語「回折格子」は、照明光を照射することにより回折波を生じる構造を意味し、ホログラムだけではなく、例えば複数の溝を平行かつ等間隔に配置する通常の回折格子も含む。
【0029】
回折格子24には、様々な像を表示させることができる。例えば、回折格子24には、立体画像、見る角度により色が変化するカラーシフトを生じる像、キラキラと輝く独特な光輝感を有する像などを表示させることができる。あるいは、回折格子24には、星などの図形や、肉眼では判別不可能な微細な文字,所謂、マイクロ文字,などの文字を表示させることができる。また、回折格子24には、多色の画像を表示させることや、観察角度等に応じて異なる画像を表示させることも可能である。
【0030】
回折格子24に表示させる像には、画素構造を採用してもよい。すなわち、λ/4位相差層23の前面に、各々が回折格子を含み、視覚効果が互いに異なる複数の画素をマトリクス状に並べてもよい。これら画素の各々の視覚効果が分かっていれば、それらの並べ替えによって得られる像の予想は容易である。それゆえ、デジタル画像データから、各画素に採用すべき構造を容易に決定することができる。
【0031】
なお、典型的には、光反射層22と位相差層23との間には、配向膜を介在させる(図示せず)。配向膜は、その上に形成する液晶層が含む液晶分子のメソゲン基の配向方向を制御する働きをもつ。配向膜は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)などの樹脂からなる。
【0032】
配向膜は、例えば、以下の方法により形成する。まず、先の樹脂を溶剤に溶解してなる樹脂溶液を、ワイヤバー、グラビア、マイクログラビア等の塗工方式を用いて反射性基材上に塗布し、この塗膜を乾燥する。その後、ラビング布にて配向膜面を擦るラビング処理を行い、配向膜を得る。ラビング布には、例えば、コットンやベルベットなどの材料が使用できる。
【0033】
偽造防止媒体10は、基材21の光反射層22が形成された面と反対側の面に光吸収層25を含むことができる。光吸収層25は、光反射層22が光反射性顔料を含む場合には、その反射色を明瞭にする役割を果たす。なお、光吸収層25は、基材21と光反射層22との間に介在させてもよい。また、光吸収層25を省略することもできる。
【0034】
以下、この偽造防止媒体10のうち、λ/4位相差層23およびこれと向き合った部分からなる領域を第1光反射領域11と呼び、その他の領域を第2光反射領域12と呼ぶ。
【0035】
次に、偽造防止媒体10に自然光を照射して、これを肉眼で観察した場合に見える画像について説明する。
【0036】
まず、第1光反射領域11による光反射について説明する。
【0037】
λ/4位相差層23は照射された自然光の一部を反射する。λ/4位相差層23の前面には回折格子24が形成されているので、この反射光の少なくとも一部は回折光である。以下、この回折光を回折反射光と呼ぶ。観察者は、この回折反射光を見ることで、回折格子24による視覚効果を知覚する。
【0038】
一方、λ/4位相差層23に入射した自然光は、λ/4位相差層23を透過する。光反射層22は、この透過光を反射する。
【0039】
この反射光は、λ/4位相差層23を透過する。以下、この透過光を、透過反射光と呼ぶ。λ/4位相差層23の前面には回折格子24が形成されているので、透過反射光の少なくとも一部は回折光である。観察者は、この透過反射光を見ることで、光反射層22が与える視覚効果と回折格子24が与える視覚効果とを同時に知覚する。
【0040】
このように、第1光反射領域11は、回折格子24による視覚効果と光反射層22による視覚効果とを有している。
【0041】
次に、第2光反射領域12による光反射について説明する。
【0042】
光反射層22は、照射された自然光を反射する。観察者は、この反射光を見ることで、光反射層22の視覚効果を知覚する。したがって、第2光反射領域12は、光反射層22による視覚効果を有している。
【0043】
このように、第1光反射領域11と第2光反射領域12とは、異なる視覚効果を有している。つまり、偽造防止媒体10を肉眼で観察した場合、これらは互いからの判別が可能な可視像を形成する。
【0044】
次に、この偽造防止媒体10を支持した物品が真正品であることを確認するためなどに用いる検証具について説明する。
【0045】
ここで用いる検証具は、直線偏光フィルムと、λ/4位相差層とを含んでいる。
【0046】
直線偏光フィルムは、例えば、吸収型の偏光フィルムである。この場合、直線偏光フィルムは、その透過軸と平行な偏光面を持つ直線偏光は透過させ、透過軸と直行する偏光面を持つ直線偏光を吸収する。
【0047】
吸収型の偏光フィルムとしては、例えば、PVAからなる延伸フィルムにヨードを吸収させたPVA−ヨウ素型フィルムまたは二色性染料型フィルムを用いることができる。これら偏光フィルムは、物理的強度が低いため、トリアセチルロース(TAC)からなるフィルムで挟んで使用してもよい。
【0048】
λ/4位相差層は、直線偏光フィルムの一方の主面と向き合っている。λ/4位相差層の進相軸は、直線偏光フィルムの透過軸に対して斜めである。一例として、直線偏光フィルム側からλ/4位相差層を見た場合に、λ/4位相差層の進相軸の方向は透過軸に平行な方向から反時計回りに45°回転させた方向であるとする。この場合、この検証具は左円偏光子として機能する。
【0049】
次に、この検証具を用いて、偽造防止媒体10を支持した物品が真正品であることを検証する方法を説明する。
【0050】
図3は、図1および図2に示す偽造防止媒体10と上で説明した検証具とを重ねた場合に観察可能な画像の一例を概略的に示す平面図である。
【0051】
図3では、偽造防止媒体10と検証具50とを、検証具50のλ/4位相差層が光反射領域11および12の双方と向き合うように配置している。さらに、直線偏光フィルムの透過軸OPとλ/4位相差層23の進相軸nA23とを平行にしている。この場合、図3に示すように、第2光反射領域12は暗部として見え、第1光反射領域11は第2光反射領域12と比較して明るく見える。この理由を、以下に説明する。なお、ここでは、簡略化のため、設計波長λと等しい波長を有しかつ偽造防止媒体10に垂直に入射する光についてのみ考える。
【0052】
検証具50の直線偏光フィルムに自然光を照射すると、検証具50は、第1光反射領域11および第2光反射領域12に向けて左円偏光を射出する。
【0053】
第1光反射領域11では、図2に示すλ/4位相差層23は、この左円偏光の一部を反射して、右円偏光へと変換する。なお、λ/4位相差層23の前面には回折格子24が形成されているので、この右円偏光の少なくとも一部は回折反射光である。
【0054】
検証具50のλ/4位相差層は、この右円偏光を直線偏光へと変換する。この直線偏光の偏光面は、検証具50の直線偏光フィルムの透過軸OPと直交する。したがって、λ/4位相差層23が反射した光は、検証具50を透過できない。
【0055】
一方、検証具50が第1光反射領域11に向けて射出した左円偏光の他の一部は、λ/4位相差層23を透過する。λ/4位相差層23は、この左円偏光を直線偏光へと変換する。この直線偏光の偏光面は、観察者側から見た場合に進相軸nA23に対して反時計回りに45°傾いている。
【0056】
光反射層22は、この直線偏光を偏光面の向きを変えずに反射する。
【0057】
この直線偏光は、λ/4位相差層23を透過する。λ/4位相差層23は、この直線偏光を左円偏光へと変換する。
【0058】
検証具50のλ/4位相差層は、この左円偏光を直線偏光へと変換する。この直線偏光の偏光面は、検証具50の直線偏光フィルムの透過軸OPと平行である。したがって、λ/4位相差層23を透過した光は、検証具50を透過することができる。
【0059】
以上の理由から、検証具50を介して偽造防止媒体10の第1光反射領域11を観察した場合、観察者は、λ/4位相差層23が反射した光は知覚できないものの、λ/4位相差層23を透過した光は知覚できる。
【0060】
次に、第2光反射領域12による光反射について説明する。検証具50は、第2光反射領域12に向けて左円偏光を射出する。光反射層22は、この左円偏光を反射して、右円偏光へと変換する。
【0061】
検証具50のλ/4位相差層は、この右円偏光を直線偏光へと変換する。この直線偏光の偏光面は、検証具50の直線偏光フィルムの透過軸OPと直交する。したがって、この反射光は、検証具50を透過できない。
【0062】
以上の理由から、検証具50を介して偽造防止媒体10を観察した場合、観察者は、第2光反射領域12からの反射光を知覚できない。
【0063】
このように、検証具50を介して偽造防止媒体10を観察した場合、観察者は、第1光反射領域11からの反射光は知覚できるが、第2光反射領域12からの反射光は知覚できない。したがって、第1光反射領域11は明部として見え、第2光反射領域12は暗部として見える。すなわち、検証具50を使用することにより、λ/4位相差層23の複屈折性が形成している潜像を可視化することができる。
【0064】
したがって、このような偽造防止媒体10を支持させた物品と偽造品などの非真正品とを肉眼で判別できない場合であっても、検証具50などの偏光子を使用することによりそれらを判別することができる。すなわち、真正であるか否かが未知の物品が、偏光子を介して観察することで可視化する潜像を含んでいない場合には、その物品は非真正品であると判断することができる。
【0065】
このような表示画像の変化は、偽造防止媒体10の複写物で再現することはできない。加えて、回折格子24が形成している回折像も、偽造防止媒体10の複写物で再現することはできない。そして、偽造防止媒体10の複製は困難である。
【0066】
しかも、この偽造防止媒体10は、先の回折像と潜像とが完全に重なり合っているため、これを拡大して観察したとしても、回折格子24による偽造防止対策が図られているようにしか見えない。加えて、この偽造防止媒体10では、回折像と潜像との双方を、1つの層,すなわち、λ/4位相差層23,のみに形成している。そのため、回折像と潜像と別々の層に形成した場合と比較して、これら像に対応した部分の厚さとそれ以外の部分の厚さとの差が小さい。それゆえ、この偽造防止媒体10は、潜像の存在を悟られ難い。
【0067】
したがって、偽造防止媒体10を使用すると、より高い偽造防止効果を達成することが可能となる。
【0068】
なお、この偽造防止媒体10では、λ/4位相差層23をパターニングして潜像を形成しているが、他の方法で潜像を形成することも可能である。
【0069】
例えば、パターニングされ、リターデイションが互いに異なる複数の位相差層を同一面内に並べてもよい。しかしながら、そのような構造を形成することは難しく、コストがかかる。
【0070】
あるいは、連続膜としてのλ/4位相差層を形成し、このλ/4位相差層にリターデイションが異なる領域を設けることにより潜像を形成することも可能である。例えば、連続膜としてのλ/4位相差層を形成し、その一部を加熱することにより、その加熱部のリターデイションを変化させることができる。あるいは、連続膜としてのλ/4位相差層を形成し、その一部に有機溶剤を塗布することにより、その塗布部のリターデイションを変化させることができる。しかしながら、連続膜としてのλ/4位相差層に形成した潜像は、必ずしも高い熱安定性を有しているわけではない。また、特に有機溶剤を使用してリターデイションを変化させる場合には、微細で複雑な形状の潜像を形成することは難しい。
【0071】
図1および図2に示す偽造防止媒体10では、リターデイションの異なる複数の位相差層を用いずにλ/4位相差層23のみで潜像を形成している。したがって、潜像を容易かつ低コストで形成することができる。また、図1および図2に示す偽造防止媒体10では、λ/4位相差層23の形状が潜像の形状に対応している。それゆえ、この偽造防止媒体10は、潜像の熱安定性に優れている。そして、このλ/4位相差層23は、例えば印刷法により形成することができる。そのため、微細で複雑な形状の潜像を形成することができる。
【0072】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。
【0073】
図4は、本発明の第2実施形態の偽造防止媒体を概略的に示す平面図である。
【0074】
この偽造防止媒体20は、以下の構成を採用したこと以外は、図1および図2を参照しながら説明した偽造防止媒体10とほぼ同様である。すなわち、図4の偽造防止媒体20では、第1光反射領域11は、回折格子24が形成された領域11aと回折格子24が形成されていない領域11bとを含んでいる。
【0075】
この偽造防止媒体20に自然光を照射して、これを肉眼で観察した場合、領域11aは、回折格子24による視覚効果と光反射層22による視覚効果とを示す。領域11bは、回折格子による視覚効果は示さず、光反射層22による視覚効果のみを示す。また、第2光反射領域12は、光反射層22による視覚効果を示す。
【0076】
したがって、偽造防止媒体20を肉眼で観察した場合、第1光反射領域11の領域11bと第2光反射領域12との間の境界を判別することは困難である。また、領域11aと、領域11bおよび第2光反射領域12とは、互いからの判別が可能な可視像を形成している。
【0077】
次に、検証具を介して偽造防止媒体20を観察した場合に見える画像について説明する。
【0078】
図5は、図4に示す偽造防止媒体と検証具とを重ねた場合に観察可能な画像の一例を概略的に示す平面図である。
【0079】
図5では、偽造防止媒体20と第1実施形態で説明したのと同様の検証具50とを、検証具50のλ/4位相差層が光反射領域11および12の双方と向き合うように配置している。さらに、直線偏光フィルムの透過軸OPとλ/4位相差層23の進相軸nA23とを平行にしている。この場合、第1実施形態で説明したのと同様に、第2光反射領域12は暗部として見え、第1光反射領域11は明部として見える。
【0080】
このように、第2実施形態は、第1光反射領域11の一部,すなわち、領域11a,のみに回折像を形成すること以外は第1実施形態と同様である。したがって、本実施形態によると、回折像と潜像とを完全に重ね合わせることに伴う効果は得られないものの、第1実施形態で説明したのとほぼ同様の効果を得ることができる。
【0081】
上述した偽造防止媒体10および20には、様々な変形が可能である。
【0082】
例えば、λ/4位相差層24が偽造防止媒体の前面全体に設けられ、このλ/4位相差層24の少なくとも一部に回折格子が設けられた構成を採用することもできる。また、偽造防止媒体10および20では、回折格子24をλ/4位相差層23の前面に形成しているが、回折格子24は、λ/4位相差層23の光反射層22と向き合う面に形成してもよい。λ/4位相差層23の代わりに、リターデイションがλ/4以外の位相差層を使用してもよい。例えば、λ/2位相差層やλ/8位相差層を光反射層22上に設けることもできる。その場合、検証に用いる検証具も設けた位相差層に応じて適宜変更する。また、λ/4位相差層23の前面または背面に光透過性の着色層を設けることもできる。
【0083】
光反射層22は、パターニングされていてもよい。例えば、光反射層22は、図形および/または文字パターンを形成していてもよい。そのような光反射層22は、例えば、マスクを用いた気相堆積法により基材21上に金属を堆積させることにより得られる。パターニングされている光反射層を含んだ偽造防止媒体は、光反射層が連続膜である偽造防止媒体と比較してより高い偽造防止効果を発揮する。
【0084】
偽造防止媒体10および20の前面に、紫外線や物理衝撃からの保護を目的として、保護層を設けることもできる。例えば、図4の偽造防止媒体20の前面に、光透過性の保護層を設けると、第1光反射領域11の領域11bと第2光反射領域12との境界の判別をさらに困難にすることができる。
【0085】
偽造防止媒体10および20の背面,ここでは基材21の2つの主面のうち反射層22が形成されていない面,には、粘着または接着加工を施してもよい。すなわち、偽造防止媒体10または20を用いて、偽造防止ラベルとして使用可能な粘着ラベルを形成してもよい。
【0086】
偽造防止媒体10および20は、様々な方法で印刷物に適用できる。例えば、上記の粘着ラベルを印刷物に貼り付けてもよい。この場合、基材21に切り込みまたはミシン目を設けておいてもよい。すなわち、ラベルを剥がそうとしたときに、基材21が切り込みからまたはミシン目の位置で破れるような構造を採用してもよい。もちろん、偽造防止媒体10および20は、印刷物以外の物品に貼り付けることもできる。
【0087】
偽造防止媒体10または20を含んだ転写箔を形成し、この転写箔を用いて、偽造防止媒体10または20を物品に転写してもよい。
【0088】
偽造防止媒体10または20を印刷物に適用する場合、スレッド(ストリップ、フィラメント、糸状物、安全帯片などとも称される)と呼ばれる形態で、紙にすき込んでもよい。
【0089】
偽造防止媒体10または20を印刷物などに適用するための粘着剤としては、一般的な材料を用いることができる。例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系ポリアミド、アクリル系、ブチルゴム系、天然ゴム系、シリコン系、ポリイソブチル系などの粘着剤を単独で用いることもできるし、またはこれらの粘着剤にアルキルメタクリレート、ビニルエステル、アクリルニトリル、スチレン、ビニルモノマー等の凝集成分、不飽和カルボン酸、ヒドロキシ基含有モノマー、アクリルニトリル等に代表される改質成分や重合開始剤、可塑剤、硬化剤、硬化促進剤、酸化防止剤等の添加剤を必要に応じて添加したものを用いることもできる。粘着層の形成には、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法などの印刷方法やバーコート法、グラビア法、ロールコート法などの塗布方法を用いることができる。あるいは、一方の主面に粘着層を形成したセパレータを使用してもよい。すなわち、粘着層をセパレータと共に偽造防止媒体10または20に貼り付け、その後、偽造防止媒体10または20からセパレータのみを剥がしてもよい。粘着層には、離型処理を行った離型紙や離型フィルムを貼り付けてもよい。これにより、粘着加工を施した偽造防止媒体10または20の取り扱いが容易になる。
【0090】
次に、参考例を説明する。
【0091】
図6は、参考例の偽造防止媒体を概略的に示す平面図である。図7は、図6に示す偽造防止媒体のVII−VII線に沿った断面図である。この偽造防止媒体30は、真正品であることが確認されるべき物品に支持させる。
【0092】
図6に示す偽造防止媒体30は、以下の構成を採用したこと以外は、図1および図2を参照しながら説明した偽造防止媒体10と同様である。すなわち、図6の偽造防止媒体30は、回折格子形成層26と液晶配向膜27とをさらに含んでいる。回折格子形成層26は、基材21と光反射層22との間に介在している。液晶配向膜27は、光反射層22とλ/4位相差層23との間に介在している。そして、回折格子24は、λ/4位相差層23の前面には形成されておらず、光反射層22の前面であって、λ/4位相差層23と隣り合う領域に対応した位置に形成されている。
【0093】
回折構造形成層26の前面には、回折格子24に対応した形状の凹凸が設けられている。回折格子形成層26は、例えば、基材21上に高分子樹脂層を形成し、この高分子樹脂層に対して微細な凹凸を有する原版をプレスすることにより得られる。
【0094】
光反射層22は、回折格子形成層26上に形成されている。光反射層22の前面には、回折格子形成層26の前面に設けられた凹凸に対応して、凹凸が設けられている。この凹凸は、回折格子24を形成している。
【0095】
配向膜27は、光反射層22を被覆している。配向膜27は、例えば、第1実施形態で説明した方法により形成することができる。
【0096】
以下、この偽造防止媒体30のうち、λ/4位相差層23およびこれと向き合った部分からなる領域を第1光反射領域11bと呼び、その他の領域を第3光反射領域13と呼ぶ。
【0097】
この偽造防止媒体30に自然光を照射して、これを肉眼で観察した場合第1光反射領域11bは、図4を参照しながら説明した偽造防止媒体20の領域11bと同様に見える。すなわち、第1光反射領域11bは、光反射層22の視覚効果を有している。
【0098】
また、第3光反射領域13では、光反射層22が自然光を反射する。光反射層22の前面には回折格子24が形成されているので、この反射光の少なくとも一部は回折光である。すなわち、第3光反射領域13は、光反射層22による視覚効果と回折格子24による視覚効果とを有している。
【0099】
このように、第1光反射領域11bと第3光反射領域13とは、異なる視覚効果を有している。つまり、偽造防止媒体30を肉眼で観察した場合、第1光反射領域11bと第3光反射領域13とは、互いからの判別が可能な可視像を形成する。
【0100】
次に、この偽造防止媒体30を支持した物品が真正品であることを確認するためなどに用いる検証具について説明する。
【0101】
ここで用いる検証具は、直線偏光フィルムである。この直線偏光フィルムは、上で説明した検証具50が含んだ直線偏光フィルムと同じである。
【0102】
次に、この直線偏光フィルムを用いて、偽造防止媒体30を支持した物品が真正品であることを検証する方法を説明する。
【0103】
図8は、図6および図7に示す偽造防止媒体30と直線偏光フィルムとを重ねた場合に観察可能な画像の一例を概略的に示す平面図である。
【0104】
図8では、偽造防止媒体30と直線偏光フィルム51とを、直線偏光フィルムの透過軸OPとλ/4位相差層23の進相軸nA23とが平行になるように配置している。この場合、観察者は、第1光反射領域11bからの反射光と第3光反射領域13からの反射光との双方を知覚できる。この理由を、以下に説明する。
【0105】
直線偏光フィルム51に自然光を照射すると、直線偏光フィルム51は、第1光反射領域11bおよび第3光反射領域13に向けて直線偏光を射出する。
【0106】
第1光反射領域11bでは、この直線偏光は、図7に示すλ/4位相差層23を透過する。この直線偏光は、λ/4位相差層23の進相軸nA23と平行な偏光面を持つので、偏光面を変えずにλ/4位相差層23を透過する。
【0107】
光反射層22は、この直線偏光を偏光面の向きを変えずに反射し、この直線偏光は、λ/4位相差層23を透過する。この直線偏光は、λ/4位相差層23の進相軸nA23と平行な偏光面を持つので、偏光面を変えずにλ/4位相差層23を透過する。
【0108】
この直線偏光は、直線偏光フィルム51の透過軸OPと平行な偏光面を有しているので、直線偏光フィルム51を透過する。したがって、図8の配置で直線偏光フィルム51を介して偽造防止媒体30を観察すると、観察者は、第1光反射領域11bからの反射光を知覚する。
【0109】
次に、第3光反射領域13による光反射について説明する。
【0110】
直線偏光フィルム51が第3光反射領域13へ向けて射出した直線偏光は、図7に示す光反射層22に照射される。光反射層22は入射した直線偏光を偏光面の向きを変えずに反射する。この直線偏光は、直線偏光フィルム51の透過軸OPと平行な偏光面を有しているので、直線偏光フィルム51を透過する。したがって、図8の配置で直線偏光フィルム51を介して偽造防止媒体30を観察すると、観察者は、第3光反射領域13からの反射光を知覚する。
【0111】
つまり、図8の配置で直線偏光フィルム51を介して偽造防止媒体30を観察した場合、第1光反射領域11bと第3光反射領域13とは明るく見える。
【0112】
図9は、図6および図7に示す偽造防止媒体30と直線偏光フィルム51とを重ねた場合に観察可能な画像の他の例を概略的に示す平面図である。図9には、図8に示す状態から、直線偏光フィルム51のみを観察者側から見て時計回りに45°回転させた状態を描いている。すなわち、図9の配置では、直線偏光フィルム51の光学軸OPとλ/4位相差層23の進相軸nA23とは45°の角度をなしている。この場合、第1光反射領域11bは暗部となり、第3光反射領域13は第1光反射領域11bと比べて明るく見える。この理由を以下に説明する。
【0113】
まず、第1光反射領域11bによる光反射について説明する。
【0114】
直線偏光フィルム51が第1光反射領域11bに向けて射出した直線偏光は、図7に示すλ/4位相差層23を透過する。この直線偏光は、λ/4位相差層23の進相軸nA23に対して観察者側から見て時計回りに45°傾いた偏光面を持つ。したがって、λ/4位相差層23は、この直線偏光を左円偏光へと変換する。
【0115】
光反射層22は、この左円偏光を反射して、右円偏光へと変換する。λ/4位相差層23は、この右円偏光を直線偏光へと変換する。
【0116】
この直線偏光は、直線偏光フィルム51の透過軸OPと直交する偏光面を有しているので、直線偏光フィルム51を透過できない。
【0117】
以上の理由から、直線偏光フィルム51を介して偽造防止媒体30を図9の配置で観察すると、観察者は、第1光反射領域11bからの反射光を知覚できない。
【0118】
次に、第3光反射領域13による光反射について説明する。
第3光反射領域13による光反射は、図8の配置の場合と同様である。すなわち、直線偏光フィルム51を介して偽造防止媒体30を図9の配置で観察すると、観察者は、第3光反射領域13からの反射光を知覚する。
【0119】
以上の理由から、図9の配置で直線偏光フィルム51を介して偽造防止媒体30を観察すると、第1光反射領域11bは暗部として見え、第3光反射領域13は第1光反射領域11bと比べて明るく見える。
【0120】
図9の状態から、直線偏光フィルム51のみを観察者側から見て時計回りに45°回転させると、直線偏光フィルムの透過軸OPとλ/4位相差層23の進相軸nA23とが直交するので、偽造防止媒体30が表示する画像は図8と同じになる。この状態からさらに直線偏光フィルム51のみを観察者側から見て時計回りに45°回転させると、直線偏光フィルムの透過軸OPとλ/4位相差層23の進相軸nA23とは45°の角度をなすので、偽造防止媒体30が表示する画像は図9と同じになる。すなわち、直線偏光フィルム51のみを観察者側から見て時計回りに45°回転させる毎に、第1光反射領域11bの明暗が切り替わる。一方、第3光反射領域13の明度は、直線フィルムを回転させても変わらない。
【0121】
したがって、この偽造防止媒体30を支持させた物品と偽造品などの非真正品とを肉眼で判別できない場合であっても、検証具51などの偏光子を使用することによりそれらを判別することができる。例えば、検証具51を介して観察することによりコントラスト比が変化する第1光反射領域11および第3光反射領域13を、真正であるか否かが未知の物品が含んでいない場合には、その物品は非真正品であると判断することができる。
【0122】
偽造防止媒体30と検証具51との配置に応じた表示画像の変化は、偽造防止媒体30の複写物で再現することはできない。また、偽造防止媒体30の複製は困難である。したがって、偽造防止媒体30を使用すると、高い偽造防止効果を達成することが可能となる。
【実施例】
【0123】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0124】
(実施例)
厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用意した。次に、光反射性顔料層を形成すべく、このフィルムの片面に、シルクスクリーン法を用いた印刷法により、以下の組成のパールインキを塗布した。
【0125】
顔料(商品名:イリオジン201 メルク(株)製) 8重量%
ワニス(商品名:SS66 東洋インキ製造(株)製) 50重量%
溶剤(商品名:S718溶剤 東洋インキ製造(株)製) 42重量%
次に、λ/4位相差層を形成すべく、光反射性顔料層上に、以下の組成の液晶層用インキを硬化膜厚が約0.5μmとなるようグラビア印刷した。
【0126】
液晶(商品名:パリオカラー LC242 BASF(株)製) 30重量%
重合開始剤(商品名:イルガキュア184 チバガイギー(株)製) 1.5重量%
溶剤(50重量部のトルエンと50重量部のメチルエチルケトンとの混合液) 68.5重量%
この塗膜を100℃で1分間の乾燥に供した後、高圧水銀灯にて500mJ/cm2の光照射を行って塗膜を硬化させた。これにより、λ/4位相差層を得た。
【0127】
次に、ロールエンボス法を用いて、λ/4位相差層上にホログラムレリーフパターンを形成した。
【0128】
次に、光吸収層を形成すべく、ポリエチレンテレフタレートフィルムの光反射性顔料層を形成した面と反対の面に、以下の組成の墨インキを硬化膜厚が約2μmとなるようにグラビア印刷した。
【0129】
墨インキ(商品名:ファインスターRコンク墨 東洋インキ製造(株)製)
次に、この塗膜を80℃で30秒間の乾燥に供した。これにより、光吸収層を得た。
【0130】
以上のようにして、偽造防止媒体を製造した。
【0131】
この偽造防止媒体に白色光を照射しながら肉眼で観察したところ、全面から金色の色相が確認できた。また、λ/4位相差層が形成された領域からは、干渉による色相のグラデーションを確認できた。
【0132】
次に、この偽造防止媒体と第1実施形態で説明した検証具50とを、検証具50のλ/4位相差層が偽造防止媒体と向き合うように重ね合わせ、この状態で検証具50に白色光を照射しながら偽造防止媒体を観察した。その結果、偽造防止媒体のうちλ/4位相差層が形成された領域は明部として見え、λ/4位相差層が形成されていない領域は暗部として見えた。
【0133】
次に、この偽造防止媒体をカラーコピーし、この複写物についても、検証具50を用いて上記と同じ方法で観察した。その結果、明暗の変化は確認できなかった。
【0134】
(参考例)
厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用意した。次に、回折格子形成層を形成すべく、このフィルムの片面に、グラビア印刷により、以下の組成の回折格子形成層用インキを塗布した。この塗膜は、乾燥膜厚が3μmとなるように形成した。
【0135】
アクリルポリオール(商品名:ダイヤナール LR209 三菱レイヨン(株)製) 80重量%
イソシアネート硬化剤(商品名:デュラネート 24A−100 旭化成(株)製) 20重量%
次に、この塗膜を80℃で1分間の乾燥に供した。これにより、回折格子形成層を得た。
【0136】
次に、40℃で3日間のエージング処理を行いロールエンボス法を用いて、回折格子形成層上にホログラムレリーフパターンを形成した。
【0137】
次に、回折格子形成層の全面に、真空蒸着法を用いて、光反射層として厚さが50μmのアルミニウム蒸着層を形成した。
【0138】
次に、液晶配向膜を形成すべく、バーコート法を用いて、アルミニウム蒸着面の全面に配向膜用インキを塗布した。この塗膜は、乾燥膜厚が3μmとなるように形成した。この配向膜用インキの組成を以下に示す。
【0139】
PVA樹脂(商品名:ポバール117 クラレ(株)製) 10重量%
溶剤(95重量部の水と5重量部のイソプロピルアルコールとの混合液) 90重量%
塗膜を100℃で2分間の乾燥に供した後、この塗膜にラビング処理を施した。ラビング布としては、吉川化工(株)製のFINE PUFF YA−20−Rを使用した。これにより、配向膜を得た。
【0140】
次に、λ/4位相差層を形成すべく、液晶配向膜の表面のうち、回折格子形成層のホログラムレリーフパターンが形成されていない部分に対応した領域のみに液晶層用インキをグラビア印刷した。λ/4位相差層の材料には実施例で使用したのと同じものを使用した。また、λ/4位相差層の形成には、実施例と同じ方法を用いた。
【0141】
以上のようにして、偽造防止媒体を製造した。
【0142】
この偽造防止媒体を白色光を照射しながら肉眼で観察したところ、λ/4位相差層が形成されていない領域では、干渉による色相のグラデーションが確認できた。また、λ/4位相差層が形成された領域は、白色に見えた。
【0143】
次に、この偽造防止媒体と検証具である直線偏光フィルムとを、直線偏光フィルムの透過軸と偽造防止媒体が含むλ/4位相差層の進相軸とが平行になるように重ね合わせ、この状態で直線偏光フィルムに白色光を照射しながら偽造防止媒体を観察した。その結果、偽造防止媒体の全面から反射光を知覚できた。
【0144】
次に、先の状態から、直線偏光フィルムのみを観察者側から見て時計回りに45°回転させたこと以外は上記と同様の条件のもとで、偽造防止媒体を観察した。その結果、λ/4位相差層が形成されていない領域では反射光を知覚できたが、λ/4位相差層が形成された領域では反射光を知覚できなかった。
【0145】
続いて、先の状態から、直線偏光フィルムのみを観察者側から見て時計回りにさらに45°回転させたこと以外は上記と同様の条件のもとで、偽造防止媒体を観察した。その結果、偽造防止媒体の全面から反射光を知覚できた。
【0146】
その後、直線偏光フィルムのみを観察者側から見て時計回りに45°回転させる毎に、λ/4位相差層が形成された領域の明暗が入れ替わった。
【0147】
次に、この偽造防止媒体をカラーコピーし、この複写物についても、検証具を用いて上記と同じ方法で観察した。その結果、明暗の変化は確認できなかった。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明の第1実施形態の偽造防止媒体を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す偽造防止媒体のII−II線に沿った断面図。
【図3】図1および図2に示す偽造防止媒体と検証具とを重ねた場合に観察可能な画像の一例を概略的に示す平面図。
【図4】本発明の第2実施形態の偽造防止媒体を概略的に示す平面図。
【図5】図4に示す偽造防止媒体と検証具とを重ねた場合に観察可能な画像の一例を概略的に示す平面図。
【図6】参考例の偽造防止媒体を概略的に示す平面図。
【図7】図6に示す偽造防止媒体のVII−VII線に沿った断面図。
【図8】図6および図7に示す偽造防止媒体と直線偏光フィルムとを重ねた場合に観察可能な画像の一例を概略的に示す平面図。
【図9】図6および図7に示す偽造防止媒体と直線偏光フィルムとを重ねた場合に観察可能な画像の他の例を概略的に示す平面図。
【符号の説明】
【0149】
10…偽造防止媒体、11…第1光反射領域、12…第2光反射領域、13…第3光反射領域、20…偽造防止媒体、21…基材、22…光反射層、23…λ/4位相差層、24…回折格子、25…光吸収層、26…回折格子形成層、27…液晶配向膜、30…偽造防止媒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射層と、前記光反射層の前面と向き合い、ネマチック液晶材料またはスメクチック液晶材料からなり、一方の主面にレリーフ型の回折格子が形成された位相差層とを含んだことを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項2】
前記回折格子は、前記主面の一部のみに形成されたことを特徴とする請求項1記載の偽造防止媒体。
【請求項3】
前記光反射層の前方に位置しかつ前記位相差層と向き合った光透過性の着色層をさらに具備したことを特徴とする請求項1または2記載の偽造防止媒体。
【請求項4】
前記光反射層は、干渉色を呈する反射層を含んでいることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の偽造防止媒体。
【請求項5】
真正であるか否かが未知の物品を真正品と非真正品との間で判別する方法であって、
前記真正品は請求項1から4のいずれか1項記載の偽造防止媒体を支持した物品であり、
前記真正であるか否かが未知の物品が、偏光子を介して観察することで可視化する潜像を含んでいない場合には、前記真正であるか未知の物品は非真正品であると判断することを含んだことを特徴とする判別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−183832(P2008−183832A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−20008(P2007−20008)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】