説明

偽造防止媒体とその判別方法

【課題】不可視情報に赤外光を照射した際に、少なくとも2つの異なる波長帯域で発光する物質を含む第1領域による情報と、その発光波長の一方を吸収する物質を含む第2領域によるその一方の発光の遮断によって、3つの情報が判読できる媒体を実現する。
【解決手段】基材上に、赤外光の照射により可視光及び赤外光の波長帯域を発光する物質を含む第1領域からなる発光画像部と、前記発光画像部上の一部に、前記照射光を透過し、前記発光波長帯域の赤外光の波長帯域は透過し、前記発光波長帯域の可視光の波長帯域は吸収する物質を含む第2領域により隠蔽する隠蔽画像部を積層する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行券や証券等の偽造防止が必要とされる媒体とその判別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銀行券や証券等の偽造防止が必要な印刷物については、蛍光インキを可視または不可視の状態で印刷し、特定の方法で蛍光を確認することにより印刷物の真偽を判別する方法や、赤外光を吸収又は反射するインキを印刷し、赤外光を照射した際に目視と異なる情報を得ることで真偽判別するものが知られている。
【0003】
その一例として、紫外光や赤外光で励起される蛍光インキを使用した識別符号を印刷し、識別符号は機械で読み取ることができるが、可視光では見ることができない印刷を施した証紙類がある。(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、赤外光を吸収する印刷部を基材に形成し、前記印刷部上に紫外光又は赤外光により励起されて赤外光を発する蛍光体(赤外発光蛍光体)を用いた印刷部を重ねた印刷物がある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、基材上に異なる波長の光で異なる色に蛍光発光する複数の蛍光インキを複数の帯域に印刷する方法や、蛍光インキと赤外吸収インキを複数の帯域に印刷する方法がある(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
また、励起光の波長と蛍光波長とが共に赤外光帯域にある蛍光体を含有する蛍光インキで識別用の符号を基材の少なくとも一方の面に設け、当該基材面に励起光の波長と蛍光波長の両波長を透過可能とし、可視光の一部を吸収する隠蔽層を設けたカードと、当該カードに付与された蛍光インキによる情報をマスクを介して識別する技術がある(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平09−160495号公報
【特許文献2】特開2001−96889号公報
【特許文献3】特開2002−326443号公報
【特許文献4】特許第2862315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、一般に用いられる偽造防止用蛍光印刷物や前記記載の特開平09−160495号公報は、励起光を照射した際における発光の有無又は符号を読取るだけのものであり、蛍光発光により得ることができる情報は1種類のみである。
【0009】
また、前記記載の特開2001−96889号公報は、赤外光を吸収するインキを赤外発光蛍光体により隠蔽する技術であり、赤外光の吸収により得られる情報は隠蔽された赤外吸収インキによる1種類である。また、上に重ねて印刷する赤外発光蛍光体で情報を付与したとしても、得られる情報は2種類であるため、使用するインキより多くの情報を付与することはできなかった。
【0010】
また、前記記載の特開2002−326443号公報は、発光特性の異なる蛍光インキ又は赤外吸収インキを複数の帯域に印刷することで2種類以上の蛍光発光、又は赤外吸収による情報を付与することが可能であるが、そのためには付与する情報と同じ数以上のインキを使用する必要がある。更に、発光特性の異なる蛍光インキを2種類以上混合して印刷した場合は、異なる波長帯域で蛍光発光を確認できるが、いずれの情報も同一となるため、蛍光発光による情報は1種類であった。
【0011】
また、前記記載の特許第2862315号公報は、カードに付与できる情報は蛍光インキによる1種類だけであった。
【0012】
本発明は、前述した問題点を解決することを目的としたもので、赤外光の照射により、可視光及び赤外光を発光する発光物質を含むインキと、その可視発光を吸収する物質を含むインキを組み合せて2つの画像を形成し、2種類のインキにより付与した2つの情報で3種類の情報を実現させ、インキの数を増やすことなく印刷物により多くの情報を付与するとともに、付与された複数の情報をそれぞれ異なる手段で検出することで、これまでより高い偽造防止効果を有する媒体及びその判別方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、基材上に赤外光の照射により可視光及び赤外光の波長帯域で発光する発光物質を含む発光画像部と、前記発光画像部上の少なくとも一部を積層するように、可視光を吸収し、赤外光は透過する物質を含む隠蔽画像部とを有する偽造防止媒体において、前記隠蔽画像部は、可視光下により視認でき、前記発光画像部は、赤外光を照射した場合に、隠蔽画像部以外が可視画像として視認できるとともに、赤外光の波長以下をカットするフィルタを介した場合に赤外画像を表出することを特徴とする偽造防止媒体である。
【0014】
また、本発明は、基材上に赤外光の照射により可視光及び赤外光の波長帯域で発光する発光物質を含む発光画像部と、前記発光物質と前記発光波長帯域の赤外光は透過し、前記透過する発光波長とは異なる前記発光波長帯域の可視光を吸収する物質との混合物を含む隠蔽画像部とを有する偽造防止媒体において、前記発光画像部は、赤外光を照射した場合に、可視画像として視認できるとともに、照射赤外光の波長以下をカットするフィルタを介した場合に赤外画像を表出し、前記隠蔽画像部は、可視光下により視認できるとともに、照射赤外光の波長以下をカットするフィルタを介した場合に赤外画像を表出することを特徴とする偽造防止媒体である。
【0015】
また、本発明は、前記発光画像部を無色、透明、又は基材と同色若しくは同一色彩であることを特徴とする偽造防止媒体である。
【0016】
また、本発明は、前記発光物質が波長980nm付近の赤外光の照射により、540nmから560nmの可視光波長帯域及び1000nmから2000nmの赤外光波長帯域で発光することを特徴とする偽造防止媒体である。
【0017】
また、本発明は、基材上に赤外光の照射により可視光及び赤外光の波長帯域で発光する発光物質を含む発光画像部と、前記発光画像部上の少なくとも一部を積層するように、可視光を吸収し、赤外光は透過する物質を含む隠蔽画像部とを有する媒体、又は前記発光物質と前記発光波長帯域の赤外光は透過し、前記透過する発光波長とは異なる前記発光波長帯域の可視光を吸収する物質との混合物を含む隠蔽画像部と前記発光画像部を有する媒体の真偽判別方法であって、前記媒体に波長980nm付近の赤外光を照射する照射工程と、
前記媒体の前記照射赤外光下における、前記発光画像部の可視画像を表示する第一の表示工程と、前記媒体の前記照射赤外光下における、前記波長980nm付近以下をカットした前記発光画像部及び隠蔽画像部の赤外画像を表示する第二の表示工程と前記第一の表示工程により表示される可視画像と前記第二の表示工程により表示される赤外画像との二つの画像と、真正物の画像とを比較する判別工程とにより、媒体の真偽を判別することを特徴とする真偽判別方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の偽造防止媒体は、隠蔽画像部の可視情報と、発光画像部における可視光発光による情報と赤外発光による情報を付与することができるため、二種類のインキで三種類の情報を付与することができる。また、肉眼による真偽判別と機械読み取りによる真偽判別を行うことができるため、より高い偽造防止効果を有する。
【0019】
また、可視光で観察できる画像と赤外モニタで観察する異なる観察画像を表示することができるため、容易に真偽判別を行うことができるとともに、可視光下で情報を確認することは困難であり、優れた偽造防止効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態による偽造防止媒体とその判別方法について図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は以下に述べる実施するための最良の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の色々な実施の形態が含まれる。
【0021】
図1は、基材に発光画像部を形成した平面図である。図2は、図1の発光画像部上に隠蔽画像部を形成した本発明の偽造防止媒体の一実施例を示す平面図である。図3は、図2に示す偽造防止媒体のA―B間の断面図である。図4は、図2の偽造防止媒体に赤外光を照射した場合における可視画像の見え方を示した平面図である。図5は、図1の偽造防止媒体に赤外光を照射した場合における赤外画像の見え方を示した平面図である。図6は、本発明の偽造防止媒体の真偽判別装置の一実施例を示す概略図である。図7は、基材に発光画像部と隠蔽画像部を形成した本発明の偽造防止媒体の一実施例を示す平面図である。図8は、図7の偽造防止媒体に赤外光を照射した場合における可視画像の見え方を示した平面図である。図9は、図7の偽造防止媒体に赤外光を照射した場合における赤外画像の見え方を示した平面図である。
【0022】
本発明の偽造防止媒体1は、基材9上に、赤外光の照射により可視光の波長帯域及び前記照射光と異なる赤外光の波長帯域の少なくとも2つの異なる波長帯域の光を発光する物質を含む第1領域からなる発光画像部2と、発光画像部2上の一部に、照射赤外光を透過し、発光波長帯域の少なくとも一つの赤外光の波長帯域は透過し、透過する赤外光の発光波長帯域とは異なる可視光の発光波長帯域の少なくとも一つを吸収する物質を含む第2領域により隠蔽する隠蔽画像部10を積層し、可視光下により視認できる隠蔽画像部10と、照射赤外光により、視認できる発光画像部2の隠蔽画像部10を除く可視画像7並びに照射赤外光の中心波長以下をカットするシャープカットフィルタ4を介した赤外カメラ5により顕像する発光画像部2全体の赤外画像8からなることを特徴とする偽造防止媒体である。
【0023】
また、本発明の偽造防止媒体11は、基材12上に、赤外光の照射により少なくとも2つの異なる可視及び赤外の波長帯域を発光する物質を含む発光画像部13と、照射赤外光を透過し、発光波長帯域の少なくとも一つの赤外光は透過し、透過する発光波長帯域とは異なる発光波長帯域の少なくとも一つの可視光を吸収する物質と前記発光物質を混合した混合物を含む隠蔽画像部14を形成し、可視光下により視認できる隠蔽画像部14と、照射赤外光により、視認できる発光画像部13の可視画像15と、照射赤外光の中心波長以下をカットするシャープカットフィルタ4を介した赤外カメラ5により顕像する発光画像部13の赤外画像16及び隠蔽画像部14の赤外画像16からなる偽造防止媒体である。
【0024】
また、本発明の媒体の真偽判別方法は、発光画像部2と隠蔽画像部10とを有する偽造防止媒体1において、偽造防止媒体1に照射光源3から波長980nm付近の赤外光を照射する照射工程と、波長980nm付近の赤外光を照射した場合における隠蔽画像部10を積層した部分を除く発光画像部2の540nmから560nmの波長帯域の可視画像7を表示する第一の表示工程と、照射赤外光の980nmの波長以下をカットするシャープカットフィルタ4を介した赤外カメラ5により顕像する発光画像部2全体の1000nmから2000nmの波長帯域の赤外画像8を表示する第二の表示工程と、第一の表示工程により表示される可視画像7と第二の表示工程により表示される赤外画像8との二つの画像が表示されることにより真正物と判断する判別工程とにより、媒体の真偽を判別する真偽判別方法である。
【0025】
また、本発明の媒体の真偽判別方法は、発光画像部13と隠蔽画像部14とを有する偽造防止媒体11において、偽造防止媒体11に照射光源3から波長980nm付近の赤外光を照射する照射工程と、波長980nm付近の赤外光を照射した場合における発光画像部13の540nmから560nmの波長帯域の可視画像15を表示する第一の表示工程と、照射赤外光の980nmの波長以下をカットするシャープカットフィルタ4を介した赤外カメラ5により顕像する発光画像部13及び隠蔽画像部14の1000nmから2000nmの赤外の波長帯域の赤外画像16を表示する第二の表示工程と、第一の表示工程により表示される可視画像15と第二の表示工程により表示される赤外画像16との二つの画像が表示されることにより真正物と判断する判別工程とにより、媒体の真偽を判別する真偽判別方法である。
【0026】
更に、本発明の偽造防止媒体の真偽判別装置を説明すると、偽造防止媒体1、11に赤外光を照射する光源3と、照射光源3による赤外光の中心波長以下の光をカットするシャープカットフィルタ4と、シャープカットフィルタ4を介して発光画像部2、13と隠蔽画像部10、14を撮像する赤外カメラ5と、赤外カメラ5の撮像を表示するモニタ6とにより構成され、可視光下により観察できる隠蔽画像部10、14と、赤外の照射光により観察できる発光画像部2の隠蔽画像部10を除く可視画像7又は可視画像15と、赤外の照射光によりシャープカットフィルタ4を介した赤外カメラ5で撮像し、その撮像をモニタ6により表示した発光画像部2全体の赤外画像8、又は発光画像部13及び隠蔽画像部14の赤外画像16とを表出させることにより真偽判別を行う真偽判別装置である。
【0027】
図1は、基材9上に、例えば「森」の文字からなる発光画像部2を形成した平面図である。図2は、図1の発光画像部2上の一部に遮蔽画像部10を形成した本発明の偽造防止媒体の一実施例を示す平面図であるが、偽造防止媒体1は基材9、「森」の文字からなる発光画像部2の一部を隠蔽する「木」の文字である隠蔽画像部10から成り立っている。なお、更に詳細に説明すると、図3の断面図に示すように偽造防止媒体1は、基材9上に発光画像部2を形成し、発光画像部2の一部に隠蔽画像部10を積層している。
【0028】
図7は、基材11上に、例えば「林」の文字からなる発光画像部13と「木」の文字からなる隠蔽画像部14を形成した平面図である。
【0029】
偽造防止媒体1、11の基材9、12は特に限定されず、紙、合成紙、プラスチック、木材、ガラス又は樹脂などを使用することができる。
【0030】
発光画像部2、13に用いられる発光物質は、有機又は無機の赤外蛍光体などを使用することができる。
【0031】
発光画像部2、13の形成は、基材9、12に上記蛍光体と顔料、分散剤、溶剤、消泡剤等を混合したインキをスクリーン印刷方法等の公知の印刷方法により設けることができる。なお、発光画像部2、13は、可視光下で視認不可能にする必要があるため、無色又は透明あるいは基材と同一色であることが好ましい。また、絵柄などについては、特に限定されない。
【0032】
隠蔽画像部10、14に用いられる吸収物質は、可視光を吸収し、赤外光を透過する物質を使用する。例えば、赤外光を透過する着色インキに通常用いられる赤外透過性顔料を使用することができる。これらの赤外透過性顔料は、赤外帯域に吸収がなければよく、通常のシアン、マゼンタ、イエローなどの顔料を使用することができる。
【0033】
隠蔽画像部10、14の形成は、上記赤外透過性顔料と分散剤、溶剤、消泡剤等を混合したインキをスクリーン印刷方法等の公知の印刷方法により設けることができる。なお、隠蔽画像部10、14は、可視光下において視認可能とする必要があるため、有色であることが好ましい。また、絵柄などについては、特に限定されない。
【0034】
図4は、図1の偽造防止媒体1に赤外光を照射した場合における可視画像7の見え方を示した平面図である。
【0035】
偽造防止媒体1に赤外光を照射した場合は、図4に示すように隠蔽画像部10の「木」の文字に覆われた部分は吸収物質により可視光が吸収され、可視画像7は隠蔽画像部10に覆われていない部分である「林」の文字のみ観察することができる。
【0036】
図5は、図1の偽造防止媒体1に赤外光を照射した場合における赤外画像8の見え方を示した平面図である。
【0037】
図5に示すように、偽造防止媒体1に赤外光を照射した場合は、隠蔽画像部10の「木」の文字に覆われた部分は赤外光を透過するため、隠蔽画像部10に覆われた部分を含む全体である赤外画像8の「森」の文字を赤外光の中心波長以下の帯域をカットするシャープカットフィルタを介した赤外カメラによるモニタにより観察することができる。
【0038】
なお、可視光下では、図2に示すように可視光下の偽造防止媒体1の隠蔽画像部10である「木」の文字のみ観察することができる。
【0039】
したがって、図2に示すように可視光下の偽造防止媒体1の隠蔽画像部10と、図4に示すように赤外光を照射して観察できる隠蔽画像部10を除く可視画像7を表示する第一の表示工程と、図5に示す赤外光の照射光による赤外画像8を表示する第二の表示工程とによって、媒体の真偽を判別することができる。
【0040】
図8は、図7の偽造防止媒体11に赤外光を照射した場合における可視画像15の見え方を示した平面図である。
【0041】
偽造防止媒体11に赤外光を照射した場合は、図8に示すように可視画像15である「林」の文字のみ観察することができる。
【0042】
図9は、図7の偽造防止媒体11に赤外光を照射した場合における赤外画像16の見え方を示した平面図である。
【0043】
図9に示すように、偽造防止媒体11に赤外光を照射した場合は、隠蔽画像部14の「木」の文字の部分は赤外光を透過するため、隠蔽画像部14と発光画像部13による赤外画像16の「森」の文字を赤外光の中心波長以下の帯域をカットするシャープカットフィルタを介した赤外カメラによるモニタにより観察することができる。
【0044】
なお、可視光下では、図7に示すように可視光下の偽造防止媒体11の隠蔽画像部14である「木」の文字のみ観察することができる。
【0045】
したがって、図7に示すように可視光下の偽造防止媒体11の隠蔽画像部14と、図8に示すように赤外光を照射して観察できる可視画像15を表示する第一の表示工程と、図9に示す赤外光の照射光による赤外画像16を表示する第二の表示工程とによって、媒体の真偽を判別することができる。
【0046】
図6は、本発明の偽造防止媒体の真偽判定装置の一実施例を示す概略図であり、本発明の偽造防止媒体1に赤外光を照射する光源3と、赤外の照射光の中心波長以下の波長帯域の光をカットするシャープカットフィルタ4と、そのシャープカットフィルタ4を介した赤外カメラ5と、赤外カメラ5の撮像を表示するモニタ6により構成される。
【0047】
図6に示すように、本発明の偽造防止媒体1に光源3から赤外光を照射した場合には、可視画像7を目視により観察することができる。また、照射光以下の波長の光をカットするフィルタ4を介した赤外カメラ5の撮像を表示するモニタ6によって、赤外発光画像8を観察することができる。
〔実施例〕
【0048】
以下、上記の本発明の偽造防止媒体について具体的な実施例を挙げ、詳細に説明する。
【0049】
(実施例1)
2種類のインキを使用した偽造防止媒体を例にして説明する。2種類のインキの内一方は無色蛍光グラビアインキであり、可視光下では視認不可能であるが、波長980nmの赤外光を照射すると波長550nmの可視光と、波長1000nmから2000nmの赤外光を発光する材料を配合した。もう一方は、赤色の赤外透過性グラビアインキであり、波長550nm以下の可視光を吸収する材料を配合した。
【0050】
無色蛍光グラビアインキを以下のとおり配合した。
[無色蛍光グラビアインキ]
赤外蛍光体(LUMILUXGrnunUC2:ハネウェル社製) 10重量部
ロジン変性フェノール樹脂 40重量部
トルエン 50重量部
【0051】
赤外透過性赤色グラビアインキを以下のとおり配合した。
[赤外透過性赤色グラビアインキの組成]
パーマネントレッド4R顔料 10重量部
ロジン変性フェノール樹脂 40重量部
トルエン 50重量部
【0052】
実施例1の偽造防止媒体は、シート状の基材上に上記配合の無色蛍光グラビアインキを用いて発光画像部をグラビア印刷法により印刷を施し、次に上記配合の赤色の赤外透過性グラビアインキを用いてグラビア印刷法により発光画像部の上に隠蔽画像部を部分的に重ねて印刷した。
【0053】
可視光下では、隠蔽画像部のみ視認できたが、波長980nmの赤外光を照射すると隠蔽画像部と重なっていない部分のみ波長550nmの可視画像を観察することができた。同様に波長980nmの赤外光を照射してシャープカットフィルタを介した赤外カメラによるモニタで観察すると隠蔽画像部と重なっている部分の波長1000nmから2000nmの赤外画像が観察できた。
【0054】
以上のように、可視光下による隠蔽画像部と、発光画像部の隠蔽画像部を除く波長550nmの可視画像と、赤外光のモニタによる波長1000nmから2000nmの赤外画像とを表示することにより、真偽の判別を行うことができた。
【0055】
本実施例における真偽判別装置は、波長980nmを中心波長とする赤外光を照射する光源と、波長980nm以下の光をカットするシャープカットフィルタを介した赤外カメラと、赤外カメラの撮像を表示する赤外光のモニタにより構成した。
【0056】
真偽判別装置を用いた場合には、波長980nmの赤外光を照射すると隠蔽画像部と重なっていない部分の波長550nmの可視画像と、赤外光のモニタによる波長1000nmから2000nmの赤外画像を観察することができた。なお、当然ながら赤外光を消した場合には、隠蔽画像部のみ観察することができた。
【0057】
(実施例2)
次に、赤色蛍光体とマゼンタトナーを使用した偽造防止媒体を例にして説明する。実施例2の偽造防止媒体は、基材上に赤外蛍光体(LUMILUXGrnunUC2:ハネウェル社製)を含む透明フィルムでラミネートを施して発光画像部を形成し、コピー・FAX用の赤色トナー(キャノン社製)を含む透明フィルムでラミネートした隠蔽画像部を発光画像部上の一部へ部分的に重ねて形成した。
【0058】
実施例2の偽造防止媒体において、可視光下では、隠蔽画像部のみ観察できたが、波長980nmの赤外光を照射すると隠蔽画像部と重なっていない部分のみ波長550nmの可視画像を観察することができた。同様に波長980nmの赤外光を照射した赤外光のモニタによる観察では、隠蔽画像部と重なっている部分の波長1000nmから2000nmの赤外画像が観察できた。
【0059】
(実施例3)
次に、2種類のインキを使用した偽造防止媒体を例にして説明する。2種類のインキの内一方は無色蛍光グラビアインキであり、可視光下では視認不可能であるが、波長980nmの赤外光を照射すると波長550nmの可視光と、波長1000nmから2000nmの赤外光を発光する材料を配合した。もう一方は、赤色の赤外透過性グラビアインキと無色蛍光グラビアインキとを混合したインキとした。
【0060】
無色蛍光グラビアインキを以下のとおり配合した。
[無色蛍光グラビアインキ]
赤外蛍光体(LUMILUXGrnunUC2:ハネウェル社製) 10重量部
ロジン変性フェノール樹脂 40重量部
トルエン 50重量部
【0061】
赤外透過性赤色グラビアインキと無色蛍光グラビアインキを以下のとおり配合した。
[赤外透過性赤色グラビアインキと無色蛍光グラビアインキの組成]
パーマネントレッド4R顔料 5 重量部
赤外蛍光体(LUMILUXGrnunUC2:ハネウェル社製) 5 重量部
ロジン変性フェノール樹脂 40重量部
トルエン 50重量部
【0062】
実施例3の偽造防止媒体は、シート状の基材上に上記配合の無色蛍光グラビアインキを用いて発光画像部をグラビア印刷法により印刷を施し、次に上記配合の赤色の赤外透過性グラビアインキと無色蛍光グラビアインキを用いてグラビア印刷法により基材上に印刷した。
【0063】
可視光下では、隠蔽画像部のみ視認できたが、波長980nmの赤外光を照射すると波長550nmの可視画像を観察することができた。同様に波長980nmの赤外光を照射してシャープカットフィルタを介した赤外カメラによるモニタで観察すると波長1000nmから2000nmの赤外画像が観察できた。
【0064】
以上のように、発光画像部の波長550nmの可視画像と、赤外光のモニタによる波長1000nmから2000nmの赤外画像とを表示することによって、真偽の判別を行うことができた。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】基材上に発光画像部を形成した平面図である。
【図2】図1の発光画像部上の一部に遮蔽画像部を形成した偽造防止媒体の平面図である。
【図3】図2に示す偽造防止媒体のA―B間の断面図である。
【図4】図2に示す偽造防止媒体の可視画像の観察図である。
【図5】図2に示す偽造防止媒体の赤外画像の観察図である。
【図6】本発明の偽造防止媒体の真偽判別装置の概略図である。
【図7】基材上に発光画像部と遮蔽画像部を形成した偽造防止媒体の平面図である。
【図8】図7に示す偽造防止媒体の可視画像の観察図である。
【図9】図7に示す偽造防止媒体の赤外画像の観察図である。
【符号の説明】
【0066】
1、11 偽造防止媒体
2、13 発光画像部
3 赤外光を照射する光源
4 照射赤外光の中心波長以下の光をカットするシャープカットフィルタ
5 赤外カメラ
6 モニタ
7、15 可視画像
8、16 赤外画像
9、12 基材
10、14 隠蔽画像部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に赤外光の照射により可視光及び赤外光の波長帯域で発光する発光物質を含む発光画像部と、
前記発光画像部上の少なくとも一部を積層するように、可視光を吸収し、赤外光は透過する物質を含む隠蔽画像部とを有する偽造防止媒体において、
前記隠蔽画像部は、可視光下により視認でき、前記発光画像部は、赤外光を照射した場合に、隠蔽画像部以外が可視画像として視認できるとともに、赤外光の波長以下をカットするフィルタを介した場合に赤外画像を表出することを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項2】
基材上に赤外光の照射により可視光及び赤外光の波長帯域で発光する発光物質を含む発光画像部と、
前記発光物質と前記発光波長帯域の赤外光は透過し、前記透過する発光波長とは異なる前記発光波長帯域の可視光を吸収する物質との混合物を含む隠蔽画像部とを有する偽造防止媒体において、前記発光画像部は、赤外光を照射した場合に、可視画像として視認できるとともに、照射赤外光の波長以下をカットするフィルタを介した場合に赤外画像を表出し、前記隠蔽画像部は、可視光下により視認できるとともに、照射赤外光の波長以下をカットするフィルタを介した場合に赤外画像を表出することを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項3】
前記発光画像部を無色、透明、又は基材と同色若しくは同一色彩であることを特徴とする請求項1又は2記載の偽造防止媒体。
【請求項4】
前記発光物質は波長980nm付近の赤外光の照射により、540nmから560nmの可視光波長帯域及び1000nmから2000nmの赤外光波長帯域で発光することを特徴とする請求項1、2、3のいずれかに記載の偽造防止媒体。
【請求項5】
基材上に赤外光の照射により可視光及び赤外光の波長帯域で発光する発光物質を含む発光画像部と、
前記発光画像部上の少なくとも一部を積層するように、可視光を吸収し、赤外光は透過する物質を含む隠蔽画像部とを有する媒体、又は前記発光物質と前記発光波長帯域の赤外光は透過し、前記透過する発光波長とは異なる前記発光波長帯域の可視光を吸収する物質との混合物を含む隠蔽画像部と前記発光画像部を有する媒体の真偽判別方法であって、
前記媒体に波長980nm付近の赤外光を照射する照射工程と、
前記媒体の前記照射赤外光下における、前記発光画像部の可視画像を表示する第一の表示工程と、
前記媒体の前記照射赤外光下における、前記波長980nm付近以下をカットした前記発光画像部及び隠蔽画像部の赤外画像を表示する第二の表示工程と
前記第一の表示工程により表示される可視画像と前記第二の表示工程により表示される赤外画像との二つの画像と、
真正物の画像とを比較する判別工程とにより、
媒体の真偽を判別することを特徴とする真偽判別方法。











【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−76028(P2006−76028A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259932(P2004−259932)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】