説明

偽造防止用媒体及びその製造方法

【課題】本発明は、商品券、小切手、株券などの有価証券類や、保険証書、領収書などの証書類、チケット、IDカードなどに用いる安価で、セキュリティー性に優れ、デザイン自由度の高い偽造防止用媒体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】基材(1)の少なくとも片面に、透かし画像形成用インキを用いて形成した印刷透かし画像(2)と、真贋識別用インキを用いて形成した電子透かし形態の情報を有する電子透かし画像(5)とが印刷されていることを特徴とする偽造防止用媒体であり、また、その印刷方式がグラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、オフセット印刷方式のいずれかの印刷方式であることを特徴とする偽造防止用媒体の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品券、小切手、株券などの有価証券類や、保険証書、領収書などの証書類、チケット、IDカードなどに関し、特に、偽造防止策が要求される偽造防止用媒体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、商品券、小切手、株券などの有価証券類や、保険証書、領収書などの証書類、チケット、IDカードなどに用いられている偽造防止用媒体は、あらかじめ用紙に透かしを施したり、ホログラムスレッドなどを漉き込んだりした用紙や、後工程にてホログラム箔を転写した用紙やカードなど、比較的高価な媒体が多いのが現状である。
【0003】
例えば、商品券、小切手、株券などの有価証券類や、保険証書、領収書などの証書類、チケット等の改ざん、偽造などによる不正使用を防止する方法としては、主に偽造することが困難な前述の透かし、ホログラムスレッド、ホログラム箔などを形成し、目視により真贋を判定できるようにして不正使用を防止する。また、IDカード等の場合は、ストライプ状の磁気記録部分またはIDカードに埋め込まれたICチップのICメモリ部分に記録されたキー情報と、使用者が入力する暗証番号とに基づいて、正当な使用者であるか否かの判定を行なって不正使用を防止する、等が行なわれている。
【0004】
前述の透かし入り用紙を用いた偽造防止用媒体は、図3に示すように、用紙の抄造段階で透かし(7)が施される。例えば、透かし(7)となる部分の紙厚を薄くして白透かしとする方法や紙厚を厚くして黒透かしとする方法がある。図3(a)は、ダンディロールによる白透かし用紙を製造する模式図であり、図3(b)は、用紙に凹凸が形成された状態を示す模式図であり、図3(c)は、凹凸が形成された状態の用紙の表面をプレスし、透かし(7)が形成された状態を示す模式図である。図4に示すような、従来の透かし(7)入り用紙を用いた偽造防止用媒体(A)は、このためには大規模な設備を必要とし、一般の人々がこれらを容易にまねすることは困難であるため、有効な偽造防止策となっている。
【0005】
次に、ホログラムスレッドを漉き込んだ用紙を用いた偽造防止用媒体は、図5に示すように、ホログラムスレッド(8)、すなわちスレッドの表面または裏面にホログラム(または光回折格子)パターンを有するスレッドで、用紙には、該スレッド(8)が露出した部分と該スレッド(8)を間歇的に覆う被覆部(9)とから形成されている。このようなホログラムスレッド(8)が用紙に漉き込まれている偽造防止用媒体(A)(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。
【0006】
基材フィルム上に設けるホログラム層(または光回折格子層であってもよい)は、基材フィルム上に、紫外線硬化型樹脂組成物などのホログラム形成層を塗布した後、別の工程でレジスト樹脂にホログラム露光を行いエッチングによりパターン形成したホログラム型版をニッケルメッキしてメッキ面にホログラムマイクロエンボスを移し取って作製したホログラム型版を押し付けてホログラムを複製することが行なわれる。ホログラム型取りした塗工樹脂に対しては紫外線を照射して硬化させる。連続した工程では、ホログラム型版はロール状に形成される。
【0007】
尚、紫外線硬化型樹脂組成物としては、不飽和エチレン系モノマーと不飽和エチレン系オリゴマーを適宜混合したものに増感剤を添加した組成物などが使用される。ホログラム層形成は、光硬化以外の工程でも可能であり、この場合には、アクリル樹脂、ポリスチレ
ン樹脂、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂も使用される。ホログラム層自体は5μm以下の厚みに形成するのが通常である。このような、ホログラムパターンを有するスレッドは複製が困難であるため、偽造防止効果がより高いと言える。
【0008】
次に、図6に示すように、用紙(1)上にホログラム箔(10)が転写された偽造防止用媒体(A)(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。
【0009】
しかしながら、いずれの偽造防止用媒体(A)を利用した方法は、製作費用が高価になる問題点と、これらの偽造防止用媒体(A)を作製する際に予めデザインを決めておく必要があり、作製者固有のデザインや急なデザイン変更に対応できないといった問題点がある。
【0010】
一方、IDカードに形成されたストライプ状の磁気記録部分またはIDカードに埋め込まれたICチップのICメモリ部分に記録されたキー情報と、使用者が入力する暗証番号とに基づいて、正当な使用者であるか否かの判定を行なって不正使用を防止する方法の場合は、IDカードのリーダーライターを使用すると、磁気記録部分またはICメモリ部分に記録された情報は簡単に読み取ることができ、また簡単に複製することもできる。これにより、読み取った情報を解析して不正使用することが行なわれる。また、偽造したIDカードを大量に作成することができる。
【0011】
以下に先行技術文献を示す。
【特許文献1】特開2000−290896号公報
【特許文献2】特開平9−6218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決しようとするものであり、安価で、セキュリティー性に優れ、デザイン自由度の高い偽造防止用媒体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、本発明の請求項1に係る発明は、基材(1)の少なくとも片面に、透かし画像形成用インキを用いて形成した印刷透かし画像(2)と、真贋識別用インキを用いて形成した電子透かし形態の情報を有する電子透かし画像(5)とが印刷されていることを特徴とする偽造防止用媒体である。
【0014】
本発明の請求項2に係る発明は、基材(1)の少なくとも片面に、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、オフセット印刷方式のいずれかの印刷方式により、印刷透かし画像(2)を透かし画像形成用インキで印刷することを特徴とする偽造防止用媒体の製造方法である。
【0015】
本発明の請求項3に係る発明は、基材(1)の少なくとも片面に、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、オフセット印刷方式のいずれかの印刷方式により、電子透かし形態の情報を有する電子透かし画像(5)を真贋識別用インキで印刷することを特徴とする偽造防止用媒体の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の偽造防止用媒体は、基材の少なくとも片面に、透かし画像形成用インキを用いて形成した印刷透かし画像と、真贋識別用インキを用いて形成した電子透かし形態の情報
を有する電子透かし画像とがグラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、オフセット印刷方式のいずれかの印刷方式により、印刷されていることにより、安価で、セキュリティー性に優れ、デザイン自由度の高い偽造防止用媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態を図1及び図2に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明に係る偽造防止用媒体の1実施例を示す平面図であり、図2は本発明に係る偽造防止用媒体のその他の実施例を示す平面図である。
【0019】
本発明に係る1実施例の偽造防止用媒体(A)を、例えば、図1に示す、商品券に適用した場合について説明する。
【0020】
基材(1)の少なくとも片面に、透かし画像形成用インキを用いて形成した印刷透かし画像(2)と、真贋識別用インキを用いて形成した電子透かし形態の情報を有する電子透かし画像(5)とが印刷されており、さらに文字・画像などの一般印刷データが通常の印刷インキで印刷されている偽造防止用媒体(A)である。
【0021】
前記一般印刷データとしては、この商品券の場合は、商品券のタイトル、商品券の発行番号(4)、デパート名である。
【0022】
次に、真贋識別用の情報を商品券の発行番号1を使用してなる印刷透かし画像(2)は、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、オフセット印刷方式のいずれかの印刷方式により、透かし画像形成用インキを用いて任意の位置に印刷している。
【0023】
前記印刷透かし画像(2)は、前述の発行番号1に限らず、図形、記号、文字、絵柄等の適宜形状パターンを用いても構わない。また、基材(1)面の1箇所乃至2箇所以上複数箇所に設けることができる。
【0024】
前記透かし画像形成用インキは、基材(1)の繊維質に浸透して、該印刷透かし画像(2)の部分に透明感を付与し、該印刷透かし画像(2)の無い部分との間に適度の透光性の差異を生じさせ、それによって該印刷透かし画像(2)を形成する。
【0025】
引き続いて、真贋識別用の電子透かし形態の情報は、同様に前記商品券の発行番号1を使用し、発行者の印影(3)に埋め込み、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、オフセット印刷方式のいずれかの印刷方式により、真贋識別用インキを用いて印刷して、電子透かし画像(5)を形成している。このようにしてなる真贋識別用の電子透かし形態の情報は、肉眼では識別不可能である。
【0026】
ここで電子透かしについて説明しておく。電子透かしとは、画像データなどに埋め込み隠し持たせた何らかの情報のことである。何らかの情報とは、例えば、発行番号に限らず、デパート名をコード化したもの、ロゴ・マーク、などである。また、電子透かし形態の情報を、発行者の印影(3)ではなくデパート名に埋め込んでも良い。
【0027】
電子透かしは、デジタル著作物を不正利用(例えば、不正コピー)から保護するために利用することができ、そのため発展した技術でもある。この目的においては、(1)著作物を劣化させずに埋め込み情報を取り去ることが極めて困難である。(2)著作物における埋め込み情報の有無や位置を知ることが極めて困難である。(3)著作物が埋め込み情報を有する場合においても元々の著作物の状態が保たれる、というような特徴が求められる。
【0028】
本発明においては、主として前述の(2)の特徴が求められる。さらに本発明においては、(4)仮に埋め込み情報が抽出されたとしてもその埋め込み情報の解読が極めて困難である。(5)印刷した画像に埋め込み情報を隠し持たせその画像を読み取って得た画像データから埋め込み情報を抽出できる、というような特徴が求められる。多くの電子透かしの形態が知られているが、このような特徴を有すれば、本発明において埋め込み情報における電子透かしの形態については特に限定はない。周知の電子透かしの形態を埋め込み情報の形態として適用することができる。
【0029】
本発明に係る1実施例においては、前述したように、基材(1)の少なくとも片面に、透かし画像形成用インキを用いて形成した印刷透かし画像(2)の他に、画像データ(発行者の印影)(3)の領域内に電子透かし形態の情報を有する電子透かし画像(5)を真贋識別用インキで印刷することが好ましい。
【0030】
このように、画像データ(3)の領域内に存在する電子透かし形態の情報は、そのものの存在する部位も判り難くすることができる。このような電子透かし画像(5)が商品券に形成されているから偽造が極めて困難な商品券を提供することができる。
【0031】
また、前記電子透かし形態の情報は、発行番号1(4)の情報であるようにしたものである。このように該電子透かし形態の情報から発行番号1(4)の情報を得ることができる。
【0032】
図1に示すように、電子透かし形態にする情報は、発行番号1(4)である。すなわち、基材(1)表面に画像データ(発行者の印影)(3)の領域内に、発行番号1(4)からなる真贋識別用の電子透かし形態の情報を埋め込んだ電子透かし画像(5)が印刷されている。
【0033】
このように発行番号1(4)は、画像データ(発行者の印影)(3)の領域内に電子透かし形態の情報として埋め込まれることにより、電子透かし情報そのものの存在の有無が判り難い上に画像において電子透かし情報が存在する部位も判り難くすることができる。
【0034】
また、画像データ(発行者の印影)(3)を置き換えて商品券を偽造するような場合には、電子透かし形態の情報としての発行番号1(4)の情報が全面的に消失し、偽造した痕跡が残ることとなる。これにより偽造商品券を検出することができる。
【0035】
すなわち、商品券の全体をスキャナーで読み取り、該商品券の全体の画像データを得る。その画像データにおいて発行者の印影の部分だけをトリミングし、発行者の印影の画像データを得る。その発行者の印影の画像データをその電子透かし情報検出システムにおいて処理する。これにより、電子透かし情報が検出されない場合には、その商品券は偽商品券である。
【0036】
一方、これにより、発行番号1が検出された場合には、その検出された発行番号1と、商品券上に印刷されている発行番号1との照合を行なう。ここで照合の結果が一致していれば、その商品券は真商品券であり、一致していない場合には、その商品券は偽商品券である。
【0037】
前記印刷透かし画像(2)と電子透かし画像(5)は、ともにグラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、オフセット印刷方式のいずれかの印刷方式により形成されるため、比較的細かな画像や複雑な画像も入れられるのでセキュリティー性を高めることができる。また、このように印刷透かし画像(2)と電子透かし画像(5)のふたつを組み合わせることにより、より一層の偽造防止効果を向上させることが可能となる。
【0038】
また、両方の画像(2、5)共、印刷方式で形成するので、比較的、価格も安くでき、作製者固有のデザインや急なデザイン変更に対応できる自由度の高い偽造防止用媒体(A)を作製することができる。
【0039】
前記グラビア印刷方式とは、鉄製の円筒(シリンダー)表面上に銅メッキを施して下地を形成し、該銅メッキ面上に剥離層を設け、更に銅メッキをして、その表面を鏡面状に研磨した銅面に彫刻方式や腐食方式により、凹部(セル)を作成し、該セル内のグラビア印刷インキを基材面に転移させ、調子物でもカラフルに印刷ができ、且つ訴求効果も高い印刷方式である。
【0040】
次に、フレキソ印刷方式とは、感光性樹脂凸版からなる印刷版を使用し、液状で速乾性のフレキソインキを用いて印刷する方式である。
【0041】
次に、オフセット印刷方式とは、画線部を3μm程度低くした平凹版やPS版、或いは水なし平版を使用し、オフセットインキを用いて印刷する方式である。
【0042】
次に、本発明に係る偽造防止用媒体(A)の製造に用いられる材料について詳細に説明する。
【0043】
まず、前記基材(1)としては、みつまた、木綿、マニラ麻、亜麻などの繊維を用いた有価証券などの用紙、木材パルプ系の天然繊維を用いた天然和紙、木材パルプ系の天然繊維と合成繊維を用いた混抄和紙、合成繊維のみを用いた合成和紙などの用紙が印刷透かし適性が良く、好ましく使用できる。また、木材パルプ系の天然繊維を用いたコート紙、アート紙などの用紙、カード用紙も使用可能であるが、一般的に印刷インキの吸収が非常に少ない傾向があり、プラスチック基材に比べるとやや好ましいが、印刷透かしにはやや不適である。
【0044】
該基材(1)の厚さ、硬さ、或いは色調などは、用途に応じて適宜設定できるが、該透かし画像形成用インキを用紙の表面に適用することによって適度の透光性の差異が生じ、それによって印刷透かし画像(2)が形成される程度の適度な厚さと、繊維密度を備えた基材(1)であることが必要であり、厚さは特に限定されない。また、基材(1)の色調は特に限定されないが、例えば、白色調、淡色調、明色調などである。
【0045】
具体的には、一例として、偽造防止を必要とする債券、株券、小切手、商品券などの有価証券に使用される用紙、預金通帳などの頁の構成用紙、チケット、IDカードなどに使用する用紙、その他の偽造防止を必要とするような用紙である。
【0046】
尚、本発明においては、前記用紙として、製紙工程の段階で透かし画像を設けない用紙、或いは適宜に透かし画像を入れた用紙を使用することも可能であり、また、用紙面には、予め、彩色紋様や細線紋様などの紋様、唐草紋様、文字、数字などが印刷形成されていてもよい。
【0047】
前記透かし画像形成用インキとしては、例えば、ボイル油を主成分とする印刷インキ、或いは、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂などの熱硬化性樹脂、又は紫外線により重合硬化する紫外線硬化型樹脂、又はポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂などの熱可塑性樹脂を主体とする樹脂をインキバインダー又はインキビヒクルとする印刷インキを使用することができ、また、p−ニトロベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェートなどのカチオン重合
開始剤及びビスフェノールA−エピクロルヒドリン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂を主成分とする樹脂組成物、及び必要に応じて、反応性希釈剤、有機溶剤、可塑剤など揮発性、又は非揮発性の非反応性希釈剤などを添加した紫外線照射によりカチオン重合し得るエポキシ系樹脂組成物を印刷インキとして使用できる。
【0048】
次に、電子透かし形態の情報を印刷する真贋識別用インキとしては、例えば、通常の白色光によるスキャナーの読み取りでは読み取ることができず、色に応じた単色光による読み取りによって読み取り可能となるドロップアウトカラーインキや励起波長が異なる視認困難なステルスインキ(例えば、波長の異なる赤外線で励起されて前記赤外線と同一波長の赤外線をそれぞれ発する複数の赤外線ステルスインキや、波長の異なる紫外線で励起されて前記紫外線と同一波長の紫外線をそれぞれ発する複数の紫外線ステルスインキ、あるいは前記赤外線ステルスインキと前記紫外線ステルスインキの組み合わせたもの)などを使用することができる。
【0049】
以上のように、基材(1)の少なくとも片面に、透かし画像形成用インキを用いて形成した印刷透かし画像(2)と、真贋識別用インキを用いて画像データ(発行者の印影)(3)の領域内に電子透かし形態の情報を有する電子透かし画像(5)とが印刷されていることにより、安価で、セキュリティー性に優れ、デザイン自由度の高い偽造防止用媒体(A)を得ることができるものである。
【0050】
本発明に係るその他の実施例の偽造防止用媒体(A)は、例えば、図2に示すように、テープ状の磁気層(M)を有するIDカードの基材(1)の少なくとも片面に、透かし画像形成用インキを用いて形成した印刷透かし画像(2)と、真贋識別用インキを用いて画像データ(顔写真)(11)の領域内に電子透かし形態の情報を有する電子透かし画像(13)とが印刷されており、さらに一般印刷データとして、ID番号(12)と所持者名(14)が通常の印刷インキで印刷されている偽造防止用媒体(A)である。
【0051】
前記印刷透かし画像(2)と電子透かし画像(13)は、ともに前述の印刷方式によって形成されるため、比較的細かな画像や複雑な画像も入れられるのでセキュリティー性を高めることができる。また、このように印刷透かし画像(2)と電子透かし画像(13)のふたつを組み合わせることにより、より一層の偽造防止効果を向上させることが可能となる。
【0052】
このように、画像データ(顔写真)(11)の領域内に存在する電子透かし形態の情報は、そのものの存在する部位も判り難くすることができる。このような電子透かし画像(13)がIDカードに形成されていることから偽造が極めて困難なIDカードが提供される。
【0053】
また、前記電子透かし形態の情報はID情報であるようにしたものである。このように電子透かし形態の情報からID情報を得ることができる。
【0054】
図2に示すように、電子透かし形態にする情報は、ID番号10(12)である。すなわち、基材(1)表面に顔写真の画像データ(11)領域内に、ID番号10(12)からなる真贋識別用の電子透かし形態の情報を埋め込んだ電子透かし画像(13)が印刷されている。
【0055】
このようにID番号10(12)は、顔写真の画像データ(11)領域内に電子透かし形態の情報として埋め込まれる。電子透かし形態の情報をこの位置に形成することにより、電子透かし情報そのものの存在の有無が判り難い上に画像において電子透かし情報が存在する部位も判り難くすることができる。
【0056】
また、顔写真を置き換えてIDカードを偽造するような場合には、電子透かし形態の情報としてのID番号10(12)の情報が全面的に消失し、偽造した痕跡が残ることとなる。これにより偽造IDカードを検出することができる。
【0057】
すなわち、IDカードの全体をスキャナーで読み取り、該IDカードの全体の画像データを得る。その画像データにおいて顔写真の部分だけをトリミングし、顔写真の画像データを得る。その顔写真の画像データをその電子透かし情報検出システムにおいて処理する。これにより、電子透かし情報が検出されない場合には、そのIDカードは偽カードである。
【0058】
一方、これにより、ID番号10(12)が検出された場合には、その検出されたID番号10(12)と、IDカード上に印刷されているID番号10(12)との照合を行なう。照合の結果が一致していれば、そのIDカードは真カードであり、一致していない場合には、そのIDカードは偽カードである。
【0059】
さらに、別の真贋判定の方法としては、磁気ID情報と電子透かしID情報とを入力して、それらを照合する。電子透かしID情報抽出手段による電子透かしID情報の抽出が行なえないか、または、磁気ID情報と電子透かしID情報とが一致しない場合には、そのIDカードは偽カードであると判定される。磁気ID情報と電子透かしID情報とが一致している場合には、そのIDカードは真カードであると判定される。
【実施例】
【0060】
以下に、本発明の偽造防止用媒体(A)について、具体的に実施例を挙げて、さらに詳しく説明するが、それに限定されるものではない。
【0061】
<実施例1>
みつまた繊維を用いた有価証券用紙からなる基材(1)表面に、一般印刷データとして、タイトル名(商品券)、発行番号1(4)とデパート名(丸越デパート)を通常のオフセットインキを用いてオフセット印刷した。引き続いて、透かし画像形成用インキを用いて発行番号1からなる印刷透かし画像(2)と、真贋識別用インキを用いて発行番号1からなる電子透かし形態の情報を埋め込んだ電子透かし画像(5)を印刷し偽造防止用媒体(A)を得た。
【0062】
<評価>
実施例1の商品券は、印刷方式によって印刷透かし画像(2)と電子透かし形態の情報を埋め込んだ電子透かし画像(5)とが組み合わされ形成されているのでセキュリティー性に優れ、デザイン自由度の高いものであった。また、印刷方式のため安価に製造することができた。
【0063】
<実施例2>
カード用紙からなる基材(1)表面に、テープ状の磁気層(M)を設け、且つ一般印刷データとして、ID番号10(12)と所持者(凸版太郎)名(14)を通常のオフセットインキを用いてオフセット印刷した。引き続いて、透かし画像形成用インキを用いてID番号10からなる印刷透かし画像(2)と、真贋識別用インキを用いてID番号10からなる電子透かし形態の情報を埋め込んだ顔写真からなる電子透かし画像(13)を印刷し偽造防止用媒体(A)を得た。
【0064】
<評価>
実施例2のIDカードは、印刷方式によって印刷透かし画像(2)と電子透かし形態の情報を埋め込んだ電子透かし画像(13)とが組み合わされ形成されているのでセキュリティー性に優れ、デザイン自由度の高いものであった。また、印刷方式のため安価に製造することができた。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る偽造防止用媒体の1実施例を示す平面図である。
【図2】本発明に係る偽造防止用媒体のその他の実施例を示す平面図である。
【図3】従来の透かし入り用紙を製造する工程を説明する模式図である。
【図4】従来の透かし入り用紙を用いた偽造防止用媒体の1実施例を示す平面図である。
【図5】従来のホログラムスレッドを漉き込んだ用紙を用いた偽造防止用媒体の1実施例を示す平面図である。
【図6】従来のホログラム箔を転写した用紙を用いた偽造防止用媒体の1実施例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0066】
1・・・基材
2・・・印刷透かし画像
3・・・画像データ(発行者の印影)
4・・・発行番号1
5・・・電子透かし画像
7・・・透かし
8・・・ホログラムスレッド
9・・・被覆部
10・・・ホログラム箔
11・・・画像データ(顔写真)
12・・・ID番号10
13・・・電子透かし画像
14・・・所持者名
A・・・偽造防止用媒体
M・・・磁気層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも片面に、透かし画像形成用インキを用いて形成した印刷透かし画像と、真贋識別用インキを用いて形成した電子透かし形態の情報を有する電子透かし画像とが印刷されていることを特徴とする偽造防止用媒体。
【請求項2】
基材の少なくとも片面に、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、オフセット印刷方式のいずれかの印刷方式により、印刷透かし画像を透かし画像形成用インキで印刷することを特徴とする偽造防止用媒体の製造方法。
【請求項3】
基材(1)の少なくとも片面に、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、オフセット印刷方式のいずれかの印刷方式により、電子透かし形態の情報を有する電子透かし画像を真贋識別用インキで印刷することを特徴とする偽造防止用媒体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−62417(P2008−62417A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−239986(P2006−239986)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】