説明

偽造防止用積層構造体

【課題】高解像度で耐熱性に優れ、偽造も困難である認証画像を示すとともに、流用が困難である偽造防止用積層構造体の提供。
【解決手段】粘着強度が異なる領域を複数有するパターン化粘着層又は応力によって光学異方性を発現する層などの光学的応力感応層、及び複屈折性が異なる領域をパターン状に有するパターン化光学異方性層を含む積層構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は偽造防止用積層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
模造が困難な画像を表示するシールは物品に貼付されることによって物品の偽造防止のために役立つが、シール形態であるために、偽物品への流用も考えられる。流用防止のための技術として、特許文献1においては部分形成剥離層を含む脆性シールが開示されている。真偽判定のための屈折率が異なる複数のセラミック材料を積層してなる機能層に部分的の機能層の一部を剥離できる部分形成剥離層を設け、シールを剥離したあとは、その剥離部分と剥離部分の光学特性の差異により可視化される表示が目印となって、流用を防止するものである。しかし、屈折率が異なる積層体は、偏光板等により明確に判別できる潜像を有するものではなく、真偽判定への適用に最適なものとはいえない。
【0003】
また、特許文献2においては、基材上に設けられたホログラムにより真偽判定を行うシールにおいて、基材とホログラム形成層との接着力が相違する面を基材の処理(例えばコロナ処理)により設ける技術が開示されている。処理部分と非処理部分の接着性の差異によりシールの剥離時にシールの破壊が生じるものである。しかし、ホログラムは技術の普及に伴い製造が容易になり、目視用のホログラムは真正のものと区別の付かないものが製造されるようになってきている。
【0004】
偏光板により潜像が可視化される複屈折パターンは、真贋の認証画像としての利用が提案されている(特許文献3)ものの一つである。しかし、真偽判定への適用に耐える、高解像度で耐熱性に優れる複屈折パターンを有し、かつ、偽物品への流用が防止できる複屈折パターンを有するシールは知られていない。
【特許文献1】特開平8−95491号公報
【特許文献2】特開平9−244519号公報
【特許文献3】特開2007−1130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、高解像度で耐熱性に優れ、偽造も困難である認証画像を示すとともに、流用が困難である偽造防止用の積層構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は下記[1]〜[9]を提供するものである。
[1]光学的応力感応層と、複屈折性の異なる領域をパターン状に有するパターン化光学異方性層とを含む積層構造体。
[2]反射層を含む請求項1に記載の積層構造体。
[3]複屈折性の異なる領域はレターデーションが異なる領域である[1]又は[2]に記載の積層構造体。
[4]パターン化光学異方性層が下記の工程をこの順に含む方法で製造される[1]〜[3]のいずれか一項に記載の積層構造体:
(1)反応性基を有する高分子を含む光学異方性層を含む複屈折パターン作製材料を用意する工程;
(2)複屈折パターン作製材料に、パターン状の熱処理またはパターン状の電離放射線照射を行う工程;
(3)光学異方性層中の残りの反応性基を反応もしくは失活させる工程。
【0007】
[5]光学的応力感応層が、応力によって光学異方性を発現する層である[1]〜[4]のいずれか一項に記載の積層構造体。
[6]粘着層を有する[1]〜[5]のいずれか一項に記載の積層構造体。
[7]光学的応力感応層が、粘着強度が異なる領域を複数有するパターン化粘着層である[1]〜[4]のいずれか一項に記載の積層構造体。
[8]光学的応力感応層が、粘着層とパターン状の剥離層とを含む[1]〜[4]のいずれか一項に記載の積層構造体。
[9]偽造防止用シールとして用いられる[6]〜[8]のいずれか一項に記載の積層構造体。
【発明の効果】
【0008】
本発明により流用を防止できる複屈折パターンを有する積層構造体が提供される。本発明の積層構造体は偽造防止用シールとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0010】
本明細書において、「積層構造体」とは、平面状またはシート状の形状を有する構造体を意味する。本発明において、積層構造体は特に接着剤又は粘着剤を用いて物品に接着又は粘着することのできる構造体であることが好ましい。また本発明においては、積層構造体自体が粘着層を有し、粘着力を有する形態になっていることも好ましい。粘着層は積層構造体を物品に接着させることが可能なものであってもよい。
【0011】
本明細書において、複屈折パターンとは、複屈折性の異なる領域を複数含むパターンを意味する。複屈折パターンは、通常、パターン化光学異方性層、すなわち、複屈折性が異なる領域を複数含む層を有する。複屈折性が異なる領域はレターデーション及び/又は光軸方向が互いに異なる領域であればよく、レターデーションが互いに異なる領域であることが好ましい。また、上記領域は積層構造体の法線方向から複屈折パターンを観察した場合に認識されるものであるため、積層構造体平面の法線と平行な面により分割された領域となっていればよい。
本明細書において、レターデーション又はReは面内のレターデーションを表す。面内のレターデーション(Re(λ))はKOBRA 21ADHまたはWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。本明細書におけるレターデーション又はReは、R、G、Bに対してそれぞれ611±5nm、545±5nm、435±5nmの波長で測定されたものを意味し、特に色に関する記載がなければ545±5nmまたは590±5nmの波長で測定されたものを意味する。
【0012】
本明細書において、角度について「実質的に」とは、厳密な角度との誤差が±5°未満の範囲内であることを意味する。さらに、厳密な角度との誤差は、4°未満であることが好ましく、3°未満であることがより好ましい。レターデーションについて「実質的に」とは、レターデーションが±5%以内の差であることを意味する。さらに、Reが実質的に0でないとは、Reが5nm以上であることを意味する。また、屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域の任意の波長を指す。なお、本明細書において、「可視光」とは、波長が400〜700nmの光のことをいう。
【0013】
本明細書において、「光学的応力感応層」とは、応力を光学的に検知可能な性質を示す層を意味する。本発明の積層構造体において光学的応力感応層は剥離を検知するための層として設けられる。
【0014】
本明細書において、「レターデーション消失温度」とは光学異方性層を20℃の状態より毎分20℃の速度で昇温させた際に、ある温度において該光学異方性層のレターデーションが該光学異方性層の20℃時のレターデーションの30%以下となる温度のことをいう。
【0015】
なお、本明細書において、「レターデーション消失温度が250℃以下の温度域にない」とは、上記のように光学異方性層を250℃まで昇温させても光学異方性層のレターデーションが20℃時のレターデーションの30%以下とならないことを意味する。
【0016】
[複屈折パターン作製材料]
図1は複屈折パターン作製材料のいくつかの例の概略断面図である。複屈折パターン作製材料は複屈折パターンを作製する為の材料であり、所定の工程を経ることで複屈折パターンを作製することができる材料である。図1(a)に示す複屈折パターン作製材料は支持体11上に光学異方性層12を有する例である。図1(b)に示す複屈折パターン作製材料は配向層13を有する例である。配向層13は、光学異方性層12として液晶性化合物を含む溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、熱または電離放射線照射して重合固定化したものを用いる場合に、液晶性化合物の配向を助けるための層として機能する。
【0017】
図1(c)に示す複屈折パターン作製材料はさらに支持体11の上に反射層35を有する例である。図1(d)に示す複屈折パターン作製材料は支持体11の下に反射層35を有する例である。図1(e)に示す複屈折パターン作製材料は転写材料を用いて作られたために支持体11と光学異方性層12の間に転写接着層14を有する例である。図1(f)に示す複屈折パターン作製材料は光学異方性層を複数(12F、12S)有する例である。図1(g)に示す複屈折パターン作製材料は自己支持性の光学異方性層12の下に反射層35を有する例である。
【0018】
図1(h)に示す複屈折パターン作製材料は、図1(a)に示す複屈折パターン作製材料の支持体11と光学異方性層12との間に光学的応力感応層として、応力によって光学異方性を発現する層10を有する例である。また、図1(i)に示す複屈折パターン作製材料は、図1(h)に示す例において、さらに反射層を有する例である。
【0019】
[転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料]
図2は転写材料として用いられる本発明の複屈折パターン材料のいくつかの例の概略断面図である。複屈折パターン作製材料を転写材料として用いることによって、所望の支持体上に光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料、複数の光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料、または複屈折パターンを有する層を複数有する物品の作製を容易に行うことができる。
【0020】
図2(a)に示す複屈折パターン作製材料は仮支持体21上に光学異方性層12を有する例である。図2(b)に示す複屈折パターン作製材料はさらに光学異方性層12の上に転写接着層14を有する例である。図2(c)に示す複屈折パターン作製用材料はさらに転写接着層14の上に表面保護層18を有する例である。図2(d)に示す複屈折パターン作製材料はさらに仮支持体21と光学異方性層12の間に仮支持体上配向層22を有する例である。図2(e)に示す複屈折パターン作製材料はさらに仮支持体21と仮支持体上配向層22の間に力学特性制御層23を有する例である。図2(f)に示す複屈折パターン作製材料は光学異方性層を複数(12F、12S)有する例である。図2(g)に示す複屈折パターン作製材料は、光学的応力感応層として応力によって光学異方性を発現する層10を有する例である。
【0021】
[複屈折パターン]
図3は複屈折パターン作製材料を用いた製造方法により得られる複屈折パターンのいくつかの例の概略断面図である。複屈折パターンは少なくとも一層のパターン化光学異方性層112を有する。本明細書において「パターン化光学異方性層」とは「複屈折性が異なる領域をパターン状に有する光学異方性層」を意味する。図3(a)に示す複屈折パターンはパターン化光学異方性層112のみから成る例である。図に示す露光部112−Aと未露光部112−Bは異なる複屈折性を有する。なお、パターン化光学異方性層における領域ごとの異なる複屈折性はパターン加熱等によって形成したものであってもよい。図3(b)に示す複屈折パターンは支持体11上に支持体側から順に反射層35、転写接着層14およびパターン化光学異方性層112を有する例である。複屈折パターンはパターン化光学異方性層を複数層有していてもよい。パターン化光学異方性層を複数有することによってさらに複雑な潜像を与えることができる。
【0022】
図3(c)に示す複屈折パターンは光学異方性層を複数層積層した後にパターン露光を行い同一のパターンを与えた例である。このような例は例えば一層の光学異方性層では出せないような大きなレターデーションを有する領域を含むパターンを作製するのに有用である。図3(d)に示す複屈折パターンは複数の光学異方性層に互いに独立したパターンを与えた例である。例えばレターデーションあるいは遅相軸の向きが互いに異なる光学異方性層を2層以上設け、それぞれに独立したパターンを与えたい時に有用な例である。互いに独立したパターンは、例えば光学異方性層を形成する工程(転写含む)、レターデーションが異なる領域を形成するためのパターン露光またはパターン加熱などの処理を行う工程、ベークなどの後処理の工程をこの順に複数回繰り返して形成することができる。図3(e)に示す複屈折パターンは光学異方性層形成(転写含む)とパターン露光を交互に必要数行った後に一度のベークでパターン化した例である。同様の方法によって、工程負荷の大きいベークの回数を最小限に抑えた上で、互いに異なるレターデーションを持った領域を必要な数だけ作製することができる。
図3(f)及び図3(g)は、光学的応力感応層として応力によって光学異方性を発現する層10をパターン化光学異方性層に隣接して有する例である。
【0023】
[複屈折パターンを有する積層構造体]
図4−6に本発明の積層構造体の例の概略断面図をそれぞれ示す。複屈折パターン5は、例えば、上記図3に例示した複屈折パターンのいずれかであればよい。
図4は複屈折パターンの支持体側に光学的応力感応層として粘着強度が異なる領域を複数有するパターン化粘着層6を設けた例である。このようなパターン化粘着層により粘着させることによって、積層構造体を剥す際に、複屈折パターンによる潜像に歪みが生じ、再利用による転用を困難にさせることができる。また、粘着強度が、複屈折パターン又は複屈折パターンにおける支持体を破断させる力よりも強い領域と、弱い領域とを有するパターン化粘着層を用いることによって、積層構造体を剥す際に、複屈折パターンを破断させることができる。
【0024】
図5は光学的応力感応層として粘着層と粘着層の一部の面に剥離層とを含む層を用いた例である。剥離層部分のみ、積層構造体を剥す際の粘着層と複屈折パターンとの剥離が容易になって、複屈折パターンによる潜像に歪みが生じ、再利用による転用を困難にさせることができる。また、粘着層の粘着強度を、複屈折パターン又は複屈折パターンにおける支持体を破断させる力よりも強くすることによって、この粘着層によって物品に粘着された積層構造体を剥す際に、複屈折パターンを破断させることができる。
【0025】
図6は光学的応力感応層として、応力によって光学異方性を発現する層を用いた例である。該層は、積層構造体を剥がす際の応力によって光学異方性を発現するため、物品に粘着又は接着された積層構造体を一度剥がしたあとに複屈折パターンを別の物品に用いても、光学異方性を発現した上記層があることによって、剥がす前の潜像と同じ潜像を与えることができず、結果的に転用が不可能となる。
【0026】
[複屈折パターンの作製方法]
複屈折パターンは、例えば光学異方性層を有する複屈折パターン作製材料を用意する工程、レターデーションが異なる領域を形成するためのパターン露光またはパターン加熱などの処理を行う工程、をこの順に含む方法で作製することができる。
以下、複屈折パターン作製材料、複屈折パターンの製造方法につき、詳細に説明する。ただし、本発明はこの態様に限定されるものではなく、他の態様についても、以下の記載および従来公知の方法を参考にして実施可能であって、本発明は以下に説明する態様に限定されるものではない。
【0027】
[光学異方性層]
複屈折パターン作製材料における光学異方性層は、位相差を測定したときにReが実質的に0でない入射方向が一つでもある、即ち等方性でない光学特性を有する層である。また、前記光学異方性層は、レターデーション消失温度を有することが好ましい。光学異方性層がレターデーション消失温度を有することによって、例えばパターン加熱により光学異方性層の一部の領域のレターデーションを消失させることが可能である。レターデーション消失温度は20℃より大きく250℃以下であることが好ましく、40℃〜245℃であることがより好ましく、50℃〜245℃であることがさらに好ましく、80℃〜240℃であることが最も好ましい。
【0028】
また、複屈折パターン作製材料における光学異方性層としては、複屈折パターン作製材料に露光を行う事によりレターデーション消失温度が上昇する光学異方性層を用いることが好ましい。この結果として、パターン露光による露光部と未露光部とでレターデーション消失温度に差が生じることとなり、未露光部のレターデーション消失温度より高く露光部のレターデーション消失温度より低い温度でベークを行う事により未露光部のレターデーションのみを選択的に消失させることが可能となる。
【0029】
複屈折パターン作製材料における光学異方性層は高分子を含むことが好ましい。高分子を含むことにより、複屈折性、透明性、耐溶媒性、強靭性および柔軟性といった異なった種類の要求を満たすことができる。該光学異方性層中の高分子は未反応の反応性基を有することが好ましい。露光により未反応の反応性基が反応して高分子鎖の架橋が起こり、その結果としてレターデーション消失温度の上昇が起こりやすくなると考えられるためである。
【0030】
光学異方性層の製法としては特に限定されないが、少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、熱または電離放射線照射して重合固定化して作製する方法;少なくとも2つ以上の反応性基を有するモノマーを重合固定化した層を延伸する方法;高分子からなる層にカップリング剤を用いて反応性基を導入した後に延伸する方法;または高分子からなる層を延伸した後にカップリング剤を用いて反応性基を導入する方法などが挙げられる。
また、後述するように、光学異方性層は転写により形成されたものであってもよい。
【0031】
[液晶性化合物を含有する組成物を重合固定化してなる光学異方性層]
光学異方性層の製法として少なくとも1つの反応性基を有する液晶性化合物を含んでなる溶液を塗布乾燥して液晶相を形成した後、熱または電離放射線照射して重合固定化して作製する場合について以下に説明する。本製法は、後述する高分子を延伸して光学異方性層を得る製法と比較して、薄い膜厚で同等のレターデーションを有する光学異方性層を得ることが容易である。
【0032】
[液晶性化合物]
一般的に、液晶性化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、いずれの液晶性化合物を用いることもできるが、棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物を用いるのが好ましい。2種以上の棒状液晶性化合物、2種以上の円盤状液晶性化合物、又は棒状液晶性化合物と円盤状液晶性化合物との混合物を用いてもよい。温度変化や湿度変化を小さくできることから、反応性基を有する棒状液晶性化合物または円盤状液晶性化合物を用いて形成することがより好ましく、少なくとも1つは1液晶分子中の反応性基が2以上あることがさらに好ましい。液晶性化合物は二種類以上の混合物でもよく、その場合少なくとも1つが2以上の反応性基を有していることが好ましい。
【0033】
液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有する高分子を含む光学異方性層を作製することが可能となる。用いる重合条件としては重合固定化に用いる電離放射線の波長域でもよいし、用いる重合機構の違いでもよいが、好ましくは用いる開始剤の種類によって制御可能な、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基の組み合わせがよい。前記ラジカル性の反応性基がアクリル基および/またはメタクリル基であり、かつ前記カチオン性基がビニルエーテル基、オキセタン基および/またはエポキシ基である組み合わせが反応性を制御しやすく特に好ましい。
【0034】
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。上記高分子液晶性化合物は、低分子の反応性基を有する棒状液晶性化合物が重合した高分子化合物である。特に好ましく用いられる上記低分子の反応性基を有する棒状液晶性化合物としては、下記一般式(I)で表される棒状液晶性化合物である。
一般式(I):Q1−L1−A1−L3−M−L4−A2−L2−Q2
式中、Q1およびQ2はそれぞれ独立に、反応性基であり、L1、L2、L3およびL4はそれぞれ独立に、単結合または二価の連結基を表す。A1およびA2はそれぞれ独立に、炭素原子数2〜20のスペーサ基を表す。Mはメソゲン基を表す。
以下に、上記一般式(I)で表される反応性基を有する棒状液晶性化合物についてさらに詳細に説明する。式中、Q1およびQ2は、それぞれ独立に、反応性基である。反応性基の重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。換言すれば、反応性基は付加重合反応または縮合重合反応が可能な反応性基であることが好ましい。以下に反応性基の例を示す。
【0035】
【化1】

【0036】
1、L2、L3およびL4で表される二価の連結基としては、−O−、−S−、−CO−、−NR2−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CO−NR2−、−NR2−CO−、−O−CO−、−O−CO−NR2−、−NR2−CO−O−、およびNR2−CO−NR2−からなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R2は炭素原子数が1〜7のアルキル基または水素原子である。前記式(I)中、Q1−L1およびQ2−L2−は、CH2=CH−CO−O−、CH2=C(CH3)−CO−O−およびCH2=C(Cl)−CO−O−CO−O−が好ましく、CH2=CH−CO−O−が最も好ましい。
【0037】
1およびA2は、炭素原子数2〜20を有するスペーサ基を表す。炭素原子数2〜12のアルキレン基、アルケニレン基、およびアルキニレン基が好ましく、特にアルキレン基が好ましい。スペーサ基は鎖状であることが好ましく、隣接していない酸素原子または硫黄原子を含んでいてもよい。また、前記スペーサ基は、置換基を有していてもよく、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素)、シアノ基、メチル基、エチル基が置換していてもよい。
Mで表されるメソゲン基としては、すべての公知のメソゲン基が挙げられる。特に下記一般式(II)で表される基が好ましい。
一般式(II):−(−W1−L5n−W2
式中、W1およびW2は各々独立して、二価の環状アルキレン基もしくは環状アルケニレン基、二価のアリール基または二価のヘテロ環基を表し、L5は単結合または連結基を表し、連結基の具体例としては、前記式(I)中、L1〜L4で表される基の具体例、−CH2−O−、および−O−CH2−が挙げられる。nは1、2または3を表す。
【0038】
1およびW2としては、1,4−シクロヘキサンジイル、1,4−フェニレン、ピリミジン−2,5−ジイル、ピリジン−2,5ジイル、1,3,4−チアジアゾール−2,5−ジイル、1,3,4−オキサジアゾール−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、ナフタレン−1,5−ジイル、チオフェン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイルが挙げられる。1,4−シクロヘキサンジイルの場合、トランス体およびシス体の構造異性体があるが、どちらの異性体であってもよく、任意の割合の混合物でもよい。トランス体であることがより好ましい。W1およびW2は、それぞれ置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、シアノ基、炭素原子数1〜10のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基など)、炭素原子数1〜10のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基など)、炭素原子数1〜10のアシル基(ホルミル基、アセチル基など)、炭素原子数1〜10のアルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基など)、炭素原子数1〜10のアシルオキシ基(アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基など)、ニトロ基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基などが挙げられる。
前記一般式(II)で表されるメソゲン基の基本骨格で好ましいものを、以下に例示する。これらに上記置換基が置換していてもよい。
【0039】
【化2】

【0040】
以下に、前記一般式(I)で表される化合物の例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、一般式(I)で表される化合物は、特表平11−513019号公報(WO97/00600)に記載の方法で合成することができる。
【0041】
【化3】

【0042】
【化4】

【0043】
【化5】

【0044】
【化6】

【0045】
【化7】

【0046】
【化8】

【0047】
本発明の他の態様として、前記光学異方性層にディスコティック液晶を使用した態様がある。前記光学異方性層は、モノマー等の低分子量の液晶性ディスコティック化合物の層または重合性の液晶性ディスコティック化合物の重合(硬化)により得られるポリマーの層であるのが好ましい。前記ディスコティック(円盤状)化合物の例としては、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physicslett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルなどを挙げることができる。上記ディスコティック(円盤状)化合物は、一般的にこれらを分子中心の円盤状の母核とし、直鎖のアルキル基やアルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基等の基(L)が放射線状に置換された構造であり、液晶性を示し、一般的にディスコティック液晶とよばれるものが含まれる。ただし、このような分子の集合体が一様に配向した場合は負の一軸性を示すが、この記載に限定されるものではない。また、本発明において、円盤状化合物から形成したとは、最終的にできた物が前記化合物である必要はなく、例えば、前記低分子ディスコティック液晶が熱、光等で反応する基を有しており、結果的に熱、光等で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失ったものも含まれる。
【0048】
本発明では、下記一般式(III)で表わされるディスコティック液晶性化合物を用いるのが好ましい。
一般式(III): D(−L−P)n
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Pは重合性基であり、nは4〜12の整数である。
前記式(III)中、円盤状コア(D)、二価の連結基(L)および重合性基(P)の好ましい具体例は、それぞれ、特開2001−4837号公報に記載の(D1)〜(D15)、(L1)〜(L25)、(P1)〜(P18)が挙げられ、同公報に記載される円盤状コア(D)、二価の連結基(L)および重合性基(P)に関する内容をここに好ましく適用することができる。
上記ディスコティック化合物の好ましい例としては特開2007−121986号公報の[0045]〜[0055]に記載の化合物を挙げることができる。
【0049】
光学異方性層は、液晶性化合物を含有する組成物(例えば塗布液)を、後述する配向層の表面に塗布し、所望の液晶相を示す配向状態とした後、該配向状態を熱又は電離放射線の照射により固定することで作製された層であるのが好ましい。
液晶性化合物として、反応性基を有する円盤状液晶性化合物を用いる場合、水平配向、垂直配向、傾斜配向、およびねじれ配向のいずれの配向状態で固定されていてもよい。尚、本明細書において「水平配向」とは、棒状液晶の場合、分子長軸と支持体の水平面が平行であることをいい、円盤状液晶の場合、円盤状液晶性化合物のコアの円盤面と支持体の水平面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が10度未満の配向を意味するものとする。傾斜角は0〜5度が好ましく、0〜3度がより好ましく、0〜2度がさらに好ましく、0〜1度が最も好ましい。
【0050】
液晶性化合物を含む組成物からなる光学異方性層を2層以上積層する場合、液晶性化合物の組み合わせについては特に限定されず、全て円盤状液晶性化合物からなる層の積層体、全て棒状性液晶性化合物からなる層の積層体、円盤状液晶性化合物を含む組成物からなる層と棒状性液晶性化合物を含む組成物からなる層の積層体であってもよい。また、各層の配向状態の組み合わせも特に限定されず、同じ配向状態の光学異方性層を積層してもよいし、異なる配向状態の光学異方性層を積層してもよい。
【0051】
光学異方性層は、液晶性化合物および下記の重合開始剤や他の添加剤を含む塗布液を、後述する所定の配向層の上に塗布することで形成することが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0052】
[液晶性化合物の配向状態の固定化]
配向させた液晶性化合物は、配向状態を維持して固定することが好ましい。固定化は、液晶性化合物に導入した反応性基の重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれるが、光重合反応がより好ましい。光重合反応としては、ラジカル重合、カチオン重合のいずれでも構わない。ラジカル光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。カチオン光重合開始剤の例には、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系等を例示する事ができ、有機スルフォニウム塩系、が好ましく、トリフェニルスルフォニウム塩が特に好ましい。これら化合物の対イオンとしては、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロフォスフェートなどが好ましく用いられる。
【0053】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。液晶性化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、10mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、25〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は10〜1000mW/cm2であることが好ましく、20〜500mW/cm2であることがより好ましく、40〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0054】
[ラジカル性の反応性基とカチオン性の反応性基を有する液晶化合物の配向状態の固定化]
前述したように、液晶性化合物が重合条件の異なる2種類以上の反応性基を有することもまた好ましい。この場合、条件を選択して複数種類の反応性基の一部種類のみを重合させることにより、未反応の反応性基を有する高分子を含む光学異方性層を作製することが可能である。このような液晶性化合物として、ラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶性化合物(具体例としては例えば、前述のI−22〜I−25)を用いた場合に特に適した重合固定化の条件について以下に説明する。
【0055】
まず、重合開始剤としては重合させようと意図する反応性基に対して作用する光重合開始剤のみを用いることが好ましい。すなわち、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合にはラジカル光重合開始剤のみを、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合にはカチオン光重合開始剤のみを用いることが好ましい。光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜8質量%であることがより好ましく、0.5〜4質量%であることが特に好ましい。
【0056】
次に、重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。この際、照射エネルギーおよび/または照度が強すぎるとラジカル性反応性基とカチオン性反応性基の両方が非選択的に反応してしまう恐れがある。したがって、照射エネルギーは、5mJ/cm2〜500mJ/cm2であることが好ましく、10〜400mJ/cm2であることがより好ましく、20mJ/cm2〜200mJ/cm2であることが特に好ましい。また照度は5〜500mW/cm2であることが好ましく、10〜300mW/cm2であることがより好ましく、20〜100mW/cm2であることが特に好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。
【0057】
また光重合反応のうち、ラジカル光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害され、カチオン光重合開始剤を用いた反応は酸素によって阻害されない。従って、液晶性化合物としてラジカル性の反応基とカチオン性の反応基を有する液晶化合物を用いてその反応性基の片方種類を選択的に重合させる場合、ラジカル性の反応基を選択的に重合させる場合には窒素などの不活性ガス雰囲気下で光照射を行うことが好ましく、カチオン性の反応基を選択的に重合させる場合には敢えて酸素を有する雰囲気下(例えば大気下)で光照射を行うことが好ましい。
【0058】
[水平配向剤]
前記光学異方性層の形成用組成物中に、特開2007−121986号公報の[0068]〜[0072]に記載の一般式(1)〜(3)で表される化合物および下記一般式(4)のモノマーを用いた含フッ素ホモポリマーまたはコポリマーの少なくとも一種を含有させることで、液晶性化合物の分子を実質的に水平配向させることができる。
【0059】
【化9】

【0060】
式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子を表し、Zは水素原子またはフッ素原子を表し、mは1以上6以下の整数、nは1以上12以下の整数を表す。一般式(4)を含む含フッ素ポリマー以外にも、塗布におけるムラ改良ポリマーとして特開2005−206638および特開2006−91205に記載の化合物を水平配向剤として用いることができ、それら化合物の合成法も該明細書に記載されている。
水平配向剤の添加量としては、液晶性化合物の質量の0.01〜20質量%が好ましく、0.01〜10質量%がより好ましく、0.02〜1質量%が特に好ましい。なお、前記一般式(1)〜(4)にて表される化合物は、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0061】
[延伸によって作製される光学異方性層]
光学異方性層は高分子の延伸によって作製されたものでもよい。前述したように光学異方性層は少なくとも1つの未反応の反応性基を持つ事が好ましいが、このような高分子を作製する際にはあらかじめ反応性基を有する高分子を延伸してもよいし、延伸後の光学異方性層にカップリング剤などを用いて反応性基を導入してもよい。延伸法によって得られる光学異方性層の特長としては、コストが安いこと、及び自己支持性を持つ(光学異方性層の形成及び維持に支持体を要しない)ことなどが挙げられる。
【0062】
[光学異方性層の後処理]
作製された光学異方性層を改質するために、様々な後処理を行ってもよい。後処理としては例えば、密着性向上の為のコロナ処理や、柔軟性向上の為の可塑剤添加、保存性向上の為の熱重合禁止剤添加、反応性向上の為のカップリング処理などが挙げられる。また、光学異方性層中の高分子が未反応の反応性基を有する場合、該反応性基に対応する重合開始剤を添加することも有効な改質手段である。例えば、カチオン性の反応性基とラジカル性の反応性基を有する液晶性化合物をカチオン光重合開始剤を用いて重合固定化した光学異方性層に対してラジカル光重合開始剤を添加することで、後にパターン露光を行う際の未反応のラジカル性の反応性基の反応を促進することができる。可塑剤や光重合開始剤の添加手段としては、例えば、光学異方性層を該当する添加剤の溶液に浸漬する手段や、光学異方性層の上に該当する添加剤の溶液を塗布して浸透させる手段などが挙げられる。また、光学異方性層の上に他の層を塗布する際にその層の塗布液に添加剤を添加しておき、光学異方性層に浸漬させる方法もあげられる。
【0063】
[複屈折パターン作製材料]
複屈折パターン作製材料は複屈折パターンを作製する為の材料であり、所定の工程を経る事で複屈折パターンを得る事ができる材料である。複屈折パターン作製材料は通常、フィルム、またはシート形状であればよい。複屈折パターン作製材料は前述の光学異方性層のほかに、様々な副次的機能を付与することが可能である機能性層を有していてもよい。機能性層としては、支持体、配向層、反射層、後粘着層などが挙げられる。また、転写材料として用いられる複屈折パターン作製用材料、又は転写材料を用いて作製された複屈折パターン作製材料などにおいて、仮支持体、転写接着層、または力学特性制御層を有していてもよい。
【0064】
[支持体]
複屈折パターン作製材料は力学的な安定性を保つ目的で支持体を有してもよい。複屈折パターン作製材料に用いられる支持体には特に限定はなく、剛直なものでもフレキシブルなものでもよいが、本発明の積層構造体が用いられる物品への接着または粘着に適した支持体が好ましい。剛直な支持体としては特に限定はないが表面に酸化ケイ素皮膜を有するソーダガラス板、低膨張ガラス、ノンアルカリガラス、石英ガラス板等の公知のガラス板、アルミ板、鉄板、SUS板などの金属板、樹脂板、セラミック板、石板などが挙げられる。フレキシブルな支持体としては特に限定はないがセルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーなどのプラスチックフィルムや紙、アルミホイル、布などが挙げられる。取扱いの容易さから、剛直な支持体の膜厚としては、100〜3000μmが好ましく、300〜1500μmがより好ましい。フレキシブルな支持体の膜厚としては、3〜500μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。支持体は後に述べるベークで着色したり変形したりしないだけの耐熱性を有することが好ましい。また、支持体が後述の反射層を兼ねていてもよい。
【0065】
[配向層]
上記した様に、光学異方性層の形成には、配向層を利用してもよい。配向層は、一般に支持体もしくは仮支持体上又は支持体もしくは仮支持体上に塗設された下塗層上に設けられる。配向層は、その上に設けられる液晶性化合物の配向方向を規定するように機能する。配向層は、光学異方性層に配向性を付与できるものであれば、どのような層でもよい。配向層の好ましい例としては、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理された層、無機化合物の斜方蒸着層、およびマイクログルーブを有する層、さらにω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライドおよびステアリル酸メチル等のラングミュア・ブロジェット法(LB膜)により形成される累積膜、あるいは電場あるいは磁場の付与により誘電体を配向させた層を挙げることができる。
【0066】
配向層用の有機化合物の例としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリビニルピロリドン、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリカーボネート等のポリマーおよびシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。好ましいポリマーの例としては、ポリイミド、ポリスチレン、スチレン誘導体のポリマー、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよびアルキル基(炭素原子数6以上が好ましい)を有するアルキル変性ポリビニルアルコールを挙げることができる。
【0067】
配向層の形成には、ポリマーを使用するのが好ましい。利用可能なポリマーの種類は、液晶性化合物の配向(特に平均傾斜角)に応じて決定することができる。例えば、液晶性化合物を水平に配向させるためには配向層の表面エネルギーを低下させないポリマー(通常の配向用ポリマー)を用いる。具体的なポリマーの種類については液晶セルまたは光学補償シートについて種々の文献に記載がある。例えば、ポリビニルアルコールもしくは変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸もしくはポリアクリル酸エステルとの共重合体、ポリビニルピロリドン、セルロースもしくは変性セルロース等が好ましく用いられる。配向層用素材には液晶性化合物の反応性基と反応できる官能基を有してもよい。反応性基は、側鎖に反応性基を有する繰り返し単位を導入するか、あるいは、環状基の置換基として導入することができる。界面で液晶性化合物と化学結合を形成する配向層を用いることがより好ましく、かかる配向層としては特開平9−152509号公報に記載されており、酸クロライドやカレンズMOI(昭和電工(株)製)を用いて側鎖にアクリル基を導入した変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。配向層の厚さは0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜2μmであることがさらに好ましい。配向層は酸素遮断膜としての機能を有していてもよい。
【0068】
また、LCDの配向層として広く用いられているポリイミド膜(好ましくはフッ素原子含有ポリイミド)も有機配向層として好ましい。これはポリアミック酸(例えば、日立化成工業(株)製のLQ/LXシリーズ、日産化学(株)製のSEシリーズ等)を支持体面に塗布し、100〜300℃で0.5〜1時間焼成した後、ラビングすることにより得られる。
【0069】
また、前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を利用することができる。即ち、配向層の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
【0070】
また、無機斜方蒸着膜の蒸着物質としては、SiO2を代表とし、TiO2、ZnO2等の金属酸化物、あるいやMgF2等のフッ化物、さらにAu、Al等の金属が挙げられる。尚、金属酸化物は、高誘電率のものであれば斜方蒸着物質として用いることができ、上記に限定されるものではない。無機斜方蒸着膜は、蒸着装置を用いて形成することができる。フィルム(支持体)を固定して蒸着するか、あるいは長尺フィルムを移動させて連続的に蒸着することにより無機斜方蒸着膜を形成することができる。
【0071】
[反射層]
複屈折パターン作製材料は、反射層を有していてもよい。反射層としては特に限定されないが、例えばアルミや銀などの金属層が挙げられる。
【0072】
[2層以上の光学異方性層]
複屈折パターン作製材料は、光学異方性層を2層以上有してもよい。2層以上の光学異方性層は法線方向に互いに隣接していてもよいし、間に別の機能性層を挟んでいてもよい。2層以上の光学異方性層をは互いにほぼ同等のレターデーションを有していてもよく、異なるレターデーションを有していてもよい。また遅相軸の方向が互いにほぼ同じ方向を向いていてもよく、異なる向きを向いていてもよい。
【0073】
[複屈折パターン作製材料の作製方法]
複屈折パターン作製材料を作製する方法としては特に限定されないが、例えば、支持体上に光学異方性層を直接形成する、別の複屈折パターン作製材料を転写材料として用いて支持体上に光学異方性層を転写する、自己支持性の光学異方性層として形成する、自己支持性の光学異方性層上に他の機能性層を形成する、自己支持性の光学異方性層に支持体に貼合する、などの方法が挙げられる。このうち光学異方性層の物性に制約を加えないという点からは支持体上に光学異方性層を直接形成する方法と転写材料を用いて支持体上に光学異方性層を転写する方法が好ましく、さらに支持体に対する制約が少ない点から転写材料を用いて支持体上に光学異方性層を転写する方法がより好ましい。
【0074】
光学異方性層を2層以上含む複屈折パターン作製材料を作製する方法としては、複屈折パターン作製材料上に光学異方性層を直接形成する、別の複屈折パターン作製材料を転写材料として用いて複屈折パターン作製材料上に光学異方性層を転写するなどの方法が挙げられる。このうち複屈折パターン作製材料を転写材料として用いて複屈折パターン作製材料上に光学異方性層を転写する方法がより好ましい。
以下に、転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料について説明する。なお、転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料は、後述の実施例などにおいて「複屈折パターン作製用転写材料」という場合がある。
【0075】
[仮支持体]
転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料は仮支持体を有することが好ましい。仮支持体は、透明でも不透明でもよく特に限定はない。仮支持体を構成するポリマーの例には、セルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート)、ポリオレフィン(例、ノルボルネン系ポリマー)、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(例、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリスルホン、ノルボルネン系ポリマーが含まれる。製造工程において光学特性を検査する目的には、透明支持体は透明で低複屈折の材料が好ましく、低複屈折性の観点からはセルロースエステルおよびノルボルネン系が好ましい。市販のノルボルネン系ポリマーとしては、アートン(JSR(株)製)、ゼオネックス、ゼオノア(以上、日本ゼオン(株)製)などを用いることができる。また安価なポリカーボネートやポリエチレンテレフタレート等も好ましく用いられる。
【0076】
[転写用接着層]
転写材料は転写接着層を有することが好ましい。転写接着層としては、透明で着色がなく、十分な転写性を有していれば特に制限はなく、感光性樹脂層、粘着剤による粘着層、感圧性樹脂層、感熱性樹脂層などが挙げられるが、耐ベーク性から感光性もしくは感熱性樹脂層が望ましい。
【0077】
感光性樹脂層は、感光性樹脂組成物よりなり、ポジ型でもネガ型でもよく特に限定はなく、市販のレジスト材料を用いることもできる。転写接着層として用いられる場合、光照射によって接着性を発現することが好ましい。また、感光性樹脂層は少なくともポリマーと、モノマー又はオリゴマーと、光重合開始剤又は光重合開始剤系とを含む樹脂組成物から形成するのが好ましい。ポリマー、モノマー又はオリゴマー、及び光重合開始剤又は光重合開始剤系については、特開2007−121986号公報の[0082]〜[0085]の記載を参照することができる。
【0078】
感光性樹脂層は、ムラを効果的に防止するという観点から、適切な界面活性剤を含有させることが好ましい。界面活性剤としては、特開2007−121986号公報の[0095]〜[0105]の記載を参照することができる。
【0079】
粘着層のための粘着剤としては、例えば、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性や接着性の粘着特性を示すものが好ましい。具体的な例としては、アクリル系ポリマーやシリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、合成ゴム等のポリマーを適宜ベースポリマーとして調製された粘着剤等が挙げられる。粘着剤層の粘着特性の制御は、例えば、粘着剤層を形成するベースポリマーの組成や分子量、架橋方式、架橋性官能基の含有割合、架橋剤の配合割合等によって、その架橋度や分子量を調節するというような、従来公知の方法によって適宜行うことができる。
【0080】
感圧性樹脂層としては、圧力をかけることによって接着性を発現すれば特に限定はなく、感圧性接着剤には、ゴム系,アクリル系,ビニルエーテル系,シリコーン系の各粘着剤が使用できる。粘着剤の製造段階,塗工段階の形態では、溶剤型粘着剤,非水系エマルジョン型粘着剤,水系エマルジョン型粘着剤,水溶性型粘着剤,ホットメルト型粘着剤,液状硬化型粘着剤,ディレードタック型粘着剤等が使用できる。ゴム系粘着剤は、新高分子文庫13「粘着技術」(株)高分子刊行会P.41(1987)に記述されている。ビニルエーテル系粘着剤は、炭素数2〜4のアルキルビニルエーテル重合物を主剤としたもの,塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体,酢酸ビニル重合体,ポリビニルブチラール等に可塑剤を混合したものがある。シリコーン系粘着剤は、フィルム形成と膜の凝縮力を与えるためゴム状シロキサンを使い、粘着性や接着性を与えるために樹脂状シロキサンを使ったものが使用できる。
【0081】
感熱性樹脂層としては、熱をかけることによって接着性を発現すれば特に限定はなく、感熱性接着剤としては、熱溶融性化合物、熱可塑性樹脂などを挙げることができる。前記熱溶融性化合物としては、例えば、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂の低分子量物、カルナバワックス、モクロウ、キャンデリラワックス、ライスワックス、及び、オウリキュリーワックス等の植物系ワックス類、蜜ロウ、昆虫ロウ、セラック、及び、鯨ワックスなどの動物系ワックス類、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、エステルワックス、及び、酸化ワックスなどの石油系ワックス類、モンタンロウ、オゾケライト、及びセレシンワックスなどの鉱物系ワックス類等の各種ワックス類を挙げることができる。さらに、ロジン、水添ロジン、重合ロジン、ロジン変性グリセリン、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性ポリエステル樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、及びエステルガム等のロジン誘導体、フェノール樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、シクロペンタジエン樹脂、芳香族炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、及び脂環族系炭化水素樹脂などを挙げることができる。
【0082】
なお、これらの熱溶融性化合物は、分子量が通常10,000以下、特に5,000以下で融点もしくは軟化点が50〜150℃の範囲にあるものが好ましい。これらの熱溶融性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、前記熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン系共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、及びセルロース系樹脂などを挙げることができる。これらのなかでも、特に、エチレン系共重合体等が好適に使用される。
【0083】
[力学特性制御層]
転写材料の、仮支持体と光学異方性層の間には、力学特性や凹凸追従性をコントロールするために力学特性制御層を形成することが好ましい。力学特性制御層としては、柔軟な弾性を示すもの、熱により軟化するもの、熱により流動性を呈するものなどが好ましく、熱可塑性樹脂層が特に好ましい。熱可塑性樹脂層に用いる成分としては、特開平5−72724号公報に記載されている有機高分子物質が好ましく、ヴイカーVicat法(具体的にはアメリカ材料試験法エーエステーエムデーASTMD1235によるポリマー軟化点測定法)による軟化点が約80℃以下の有機高分子物質より選ばれることが特に好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレンと酢酸ビニル或いはそのケン化物の様なエチレン共重合体、エチレンとアクリル酸エステル或いはそのケン化物、ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニルおよびそのケン化物の様な塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデン共重合体、ポリスチレン、スチレンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なスチレン共重合体、ポリビニルトルエン、ビニルトルエンと(メタ)アクリル酸エステル或いはそのケン化物の様なビニルトルエン共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ブチルと酢酸ビニル等の(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル共重合体ナイロン、共重合ナイロン、N−アルコキシメチル化ナイロン、N−ジメチルアミノ化ナイロンの様なポリアミド樹脂等の有機高分子が挙げられる。
【0084】
[中間層]
転写材料においては、複数の塗布層の塗布時、および塗布後の保存時における成分の混合を防止する目的から、中間層を設けることが好ましい。該中間層としては、特開平5−72724号公報に「分離層」として記載されている、酸素遮断機能のある酸素遮断膜や、前記光学異方性形成用の配向層を用いることが好ましい。これらの内、特に好ましいのは、ポリビニルアルコールもしくはポリビニルピロリドンとそれらの変性物の一つもしくは複数を混合してなる層である。前記熱可塑性樹脂層や前記酸素遮断膜、前記配向層を兼用することもできる。
【0085】
[層の形成方法]
光学異方性層、感光性樹脂層、転写接着層、後述の接着層および所望により形成される配向層、熱可塑性樹脂層、力学特性制御層および中間層等の各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、スリットコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)により、塗布により形成することができる。二以上の層を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
また、光学異方性層上に塗布する層(例えば転写接着層)の塗布の際には、その塗布液に可塑剤や光重合開始剤を添加することにより、それらの添加剤の浸漬による光学異方性層の改質を同時に行ってもよい。
【0086】
[転写材料を被転写材料上に転写する方法]
転写材料を支持体(基板)等の被転写材料上に転写する方法については特に制限されず、基板上に上記光学異方性層を転写できれば特に方法は限定されない。例えば、フィルム状に形成した転写材料を、転写接着層面を被転写材料表面側にして、ラミネータを用いて加熱および/又は加圧したローラー又は平板で圧着又は加熱圧着して、貼り付けることができる。具体的には、特開平7−110575号公報、特開平11−77942号公報、特開2000−334836号公報、特開2002−148794号公報に記載のラミネータおよびラミネート方法が挙げられるが、低異物の観点で、特開平7−110575号公報に記載の方法を用いるのが好ましい。
被転写材料としては、支持体、支持体及び他の機能性層を含む積層体、又は複屈折パターン作製材料が挙げられる。
【0087】
[転写に伴う工程]
複屈折パターン作製用転写材料を被転写材料上に転写した後、仮支持体は剥離してもよく、しなくともよい。ただし剥離しない場合には仮支持体がその後のパターン露光に適した透明性やベークに耐え得る耐熱性などを有していることが好ましい。また、光学異方性層と一緒に転写される不要の層を除去する工程があってもよい。例えば配向層としてポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンの共重合体を用いた場合には、弱アルカリ性の水系現像液での現像により配向層より上の層の除去が可能である。現像の方式としては、パドル現像、シャワー現像、シャワー&スピン現像、ディップ現像等、公知の方法を用いることができる。現像液の液温度は20℃〜40℃が好ましく、また、現像液のpHは8〜13が好ましい。
【0088】
また転写後、必要に応じて仮支持体の剥離や不要層の除去を行った後の表面に他の層を形成してもよい。あるいは必要に応じて仮支持体の剥離や不要層の除去を行った後の表面に転写材料を転写してもよい。この際に用いる転写材料は先に転写した転写材料と同じでもよく、異なってもよい。また、先に転写した転写材料の光学異方性層の遅相軸と新たに転写する転写材料の光学異方性層と遅相軸は互いに同じ向きでもよく、異なる向きでもよい。前述のように、複数層の光学異方性層を転写する事は遅相軸の向きを揃えた複数層の光学異方性層を積層した大きなレターデーションを持つ複屈折パターンや遅相軸の向きの異なる複数層を積層した特殊な複屈折パターンの作製などに有用である。
【0089】
[複屈折パターンの作製]
複屈折パターン作製材料を用いて、パターン状の熱処理またはパターン状の電離放射線照射を行う工程、及び光学異方性層中の残りの未反応の反応性基を反応もしくは失活させる工程をこの順に含む方法を行う事によって、複屈折パターンを作製することができる。特に光学異方性層がレターデーション消失温度を有し、かつ該レターデーション消失温度が電離放射線照射(あるいはレターデーション消失温度以下の熱処理)によって上昇する場合、容易に複屈折パターンを作製することができる。
【0090】
パターン状の電離放射線照射としては、例えば、露光(パターン露光)が挙げられる。その後光学異方性層中の残りの未反応の反応性基を反応もしくは失活させる工程としては全面露光または全面熱処理(ベーク)を行えばよい。省コスト化の為には、未露光部のレターデーション消失温度より高く露光部のレターデーション消失温度より低い温度への加熱がそのまま反応の為の熱処理も兼ねられることが好ましい。
【0091】
パターン状の熱処理としては、先に一部領域の加熱をレターデーション消失温度近くの温度で行ってレターデーションを低下ないしは消失させ、その後にレターデーション消失温度より低い温度で光学異方性層中の残りの未反応の反応性基を反応もしくは失活させる工程(全面露光ないしは全面加熱)を行って複屈折パターンを得る手法もある。この場合には先に加熱された部分のみがレターデーションを失ったパターンを得る事が可能である。
【0092】
[パターン露光]
複屈折パターンを作製するためのパターン露光は、複屈折パターン作製材料につき、複屈折性を残したい領域を露光するように行う。露光部の光学異方性層はレターデーション消失温度が上昇する。パターン露光の手法としてはマスクを用いたコンタクト露光、プロキシ露光、投影露光などでもよいし、レーザーや電子線などを用いてマスクなしに決められた位置にフォーカスして直接描画してもよい。前記露光の光源の照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。感光性樹脂層により同時に段差を形成する場合には樹脂層を硬化しうる波長域の光(例えば、365nm、405nmなど)を照射することも好ましい。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、青色レーザー等が挙げられる。好ましい露光量としては通常3〜2000mJ/cm2程度であり、より好ましくは5〜1000mJ/cm2程度、さらに好ましくは10〜500mJ/cm2程度、最も好ましくは10〜100mJ/cm2程度である。
【0093】
複屈折パターン作製材料にパターン露光を行って得られた積層体の上に新たな複屈折パターン作製用転写材料を転写し、その後に新たにパターン露光を行ってもよい。この場合、一度目及び二度目ともに未露光部である領域(通常レターデーション値が一番低い)、一度目に露光部であり二度目に未露光部である領域、及び、一度目及び二度目ともに露光部である領域(通常レターデーション値が一番高い)でベーク後に残るレターデーションの値を効果的に変えることができる。なお、一度目に未露光部であり二度目に露光部である領域は、二度目の露光により一度目及び二度目ともに露光部である領域と同様となると考えられる。同様にして転写とパターン露光を交互に三度、四度と行うことにより、四つ以上の領域を作ることも容易にできる。
【0094】
[全面熱処理(ベーク)]
パターン露光された複屈折パターン作製材料に対して50℃以上400℃以下、好ましくは80℃以上400℃以下に加熱を行うことにより複屈折パターンを作製することができる。複屈折パターン作製に用いる複屈折パターン作製材料の有する光学異方性層の露光前のレターデーション消失温度をT1[℃]、露光後のレターデーション消失温度をT2[℃]とした場合(レターデーション消失温度が250℃以下の温度域にない場合はT2=250とする)、ベーク時の温度はT1℃以上T2℃以下が好ましく、(T1+10)℃以上(T2−5)℃以下がより好ましく、(T1+20)℃以上(T2−10)℃以下が最も好ましい。
ベークによって複屈折パターン作製材料中の未露光部のレターデーションが低下し、一方で先のパターン露光でレターデーション消失温度が上昇した露光部はレターデーションの低下が小さく、もしくは全く低下しないかあるいは上昇し、結果として未露光部のレターデーションが露光部のレターデーションに比較して小さくなり複屈折パターン(パターン化光学異方性層)が作製される。
【0095】
また、ベークを行った複屈折パターン材料の上に新たな複屈折パターン作製用転写材料を転写し、その後に新たにパターン露光とベークを行ってもよい。この場合、一度目及び二度目ともに未露光部である領域、一度目に露光部であり二度目に未露光部である領域、一度目に未露光部であり二度目に露光部である領域(1度目の未露光部のレターデーションはベークによりすでに消失)、一度目及び二度目ともに露光部である領域で、二度目のベーク後に残るレターデーションの値を効果的に変えることができる。この手法は、例えば互いに遅相軸の方向が異なる複屈折性を持つ二つの領域を互いに重ならない形で作りたい時に有用である。
【0096】
[パターン状熱処理(熱パターン書き込み)]
パターン状熱処理の際の加熱温度は、加熱部と非加熱部のレターデーションに差異を生じさせる温度であればよく、特に限定されない。特に加熱部のレターデーションを実質的に0nmとしたい場合には、用いられる複屈折パターン作製材料の光学異方性層のレターデーション消失温度以上の温度で加熱することが好ましい。また一方で、加熱温度は光学異方性層の燃焼や着色の生じる温度未満であることが好ましい。一般的には120℃〜260℃程度の加熱を行えばよく、150℃〜250℃がより好ましく、180℃〜230℃がさらに好ましい。
【0097】
複屈折パターン作製材料の一部を加熱する方法は特に限定されないが、加熱体を複屈折パターン作製材料に接触させて行う方法、加熱体を複屈折パターン作製材料のごく近傍に位置させて行う方法、ヒートモード露光を用いて複屈折パターン作製材料を部分加熱する方法などが挙げられる。
【0098】
[レターデーション消失温度以下での全面熱処理(ベーク)ないしは全面露光による反応処理]
前記パターン状熱処理が行われた光学異方性層において熱処理が行われなかった領域は、レターデーションを有しつつも未反応の反応性基を残しており、未だ不安定な状態である。未処理領域に残存する未反応の反応性基を反応もしくは失活させるために、全面熱処理ないしは全面露光による反応処理を行うことが好ましい。
【0099】
全面熱処理による反応処理は、用いられる複屈折パターン作製材料の光学異方性層のレターデーション消失温度より低い温度で、かつ未反応の反応性基の反応もしくは失活が効率よく進む温度であることが好ましい。一般的に120〜180℃程度の加熱を行えばよく、130〜170℃がより好ましく、140〜160℃がさらに好ましいが、必要とされる複屈折性(レターデーション)や用いる光学異方性層の熱硬化反応性によって適した温度は異なる。熱処理の時間は特に限定されないが、1分以上5時間以内が好ましく、3分以上3時間以内がより好ましく、5分以上2時間以内が特に好ましい。
【0100】
全面熱処理の代わりに、全面露光によっても反応処理を行うことができる。この際の光源の照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。感光性樹脂層により同時に段差を形成する場合には樹脂層を硬化しうる波長域の光(例えば、365nm、405nmなど)を照射することも好ましい。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、青色レーザー等が挙げられる。好ましい露光量としては通常3〜2000mJ/cm2程度であり、より好ましくは5〜1000mJ/cm2程度、さらに好ましくは10〜500mJ/cm2程度、最も好ましくは10〜300mJ/cm2程度である。
【0101】
[仕上げ熱処理]
前節までの工程で作製された複屈折パターンの安定性をさらに高めたい場合、固定化された後にまだ残存している未反応の反応性基をさらに反応させて耐久性を増したり、材料中の不要な成分を気化あるいは燃焼させて除いたりする目的の為に仕上げ熱処理を行ってもよい。特にパターン露光と加熱全面露光、あるいはパターン状熱処理と全面露光で複屈折パターンを作製した場合には効果的である。仕上げ熱処理の温度としては180〜300℃程度の加熱を行えばよく、190〜260℃がより好ましく、200〜240℃がさらに好ましい。熱処理の時間は特に限定されないが、1分以上5時間以内が好ましく、3分以上3時間以内がより好ましく、5分以上2時間以内が特に好ましい。
【0102】
[複屈折パターン]
複屈折パターン作製材料に上述のように露光及びベークを行って得られる複屈折パターンは通常はほぼ無色透明で、反射層がある場合はその色を示すことがあるのみの一方で、二枚の偏光板で挟まれた場合、あるいは反射層と偏光板とで挟まれた場合においては特徴的な明暗、あるいは色を示し容易に目視で認識できる。この性質を生かして、上記の製造方法により得られる複屈折パターンは、例えば偽造防止手段として利用することができる。すなわち複屈折パターンは通常は目視ではほぼ不可視な一方で、偏光板を介することで容易に多色の画像が識別可能となる。複屈折パターンは偏光板を介さずにコピーしても何も映らず、逆に偏光板を介してコピーすると永続的な、つまりは偏光板無しでも目視可能なパターンとして残る。従って複屈折パターンの複製は困難である。このような複屈折パターンの作製法は広まっておらず、材料も特殊であることから、偽造防止手段として用いるに適していると考えられる。
【0103】
[複屈折パターンに積層される機能性層]
複屈折パターン作製材料は、上述のように複屈折性パターンを作製された後に、さらに様々な機能を持った機能性層を積層されていてもよい。機能性層としては、特に限定されるものではないが、例えば表面の傷つきを防止するハードコート層や、複屈折パターンの視認を容易にする反射層などがあげられる。識別を容易とする為、特に複屈折パターンの下に反射層を有することが好ましい。
【0104】
[複屈折パターンを有する積層構造体の作製方法]
本発明の積層構造体は、剥離されたことを視覚化するための光学的応力感応層を、上記のように作製した複屈折パターンに設けることにより形成することができる。本発明の積層構造体は、さらに必要に応じて、物品に貼付するための粘着層を有していてもよい。また、光学的応力感応層が粘着層を兼ねていてもよい。
【0105】
[粘着層]
粘着層を形成する材料としては上記に限らず、アルミ箔を変質させたり、冒すものでなければ特に限定されるものではない。例えば、ブチルゴム系、天然ゴム系、シリコン系、ポリイソブチル系等の粘着成分と、アルキルメタクリレート、ビニルエステル、アクリルニトリル、スチレン、ビニルモノマー等の凝集成分と、不飽和カルボン酸、ヒドロキシル基含有モノマー、アクリルニトリル等に代表される改質成分や重合開始剤、可塑剤、硬化剤、硬化促進剤、酸化防止剤等の添加剤を必要に応じて添加した粘着層を形成するこができる。具体的には、接着剤に微球を添加したもの(日本カーバイド社製B-7589)や、接着剤に硬化剤を添加したもの(2エチルヘキシルアクリレート等のガラス転移温度が低いアクリル樹脂をエマルジョン化したもの)等を用いることができる。
なお、粘着層を有しない本発明の積層構造体を物品に粘着させる場合の接着剤としては、上記の粘着層を形成する組成物と同様の組成物を用いればよい。また、市販の接着剤を適宜選択して用いてもよい。
【0106】
[パターン化粘着層]
粘着層を粘着強度の異なる領域を有するパターン化粘着層とし、光学的応力感応層としてもよい。パターン化粘着層を設けることにより剥離により複屈折パターンが歪む等変化するか、又は複屈折パターンが破断する脆性の積層構造体を形成することができる。パターン化粘着層は上記のように形成される粘着層形成用組成物から粘着強度の異なる2種以上を選択して形成すればよい。組成物の粘着強度は粘着成分、または粘着成分の濃度などで調整することができる。パターン化粘着層における最大粘着強度は、反射層を破断させる力よりも強く、最小粘着強度は、反射層を破断させる力よりも弱いことが好ましい。
【0107】
なお、パターン化粘着層は応力によって光学異方性を発現する層を兼ねていてもよい。
パターン化粘着層が選択された剥離剤を用いて処理された場合には、反射層の破断などの剥離検知の効果がないまま、積層構造体が剥離される場合も考えられる。そのため、パターン化粘着層作成のために選択した粘着層形成用組成物に対して剥離作用を有する剥離剤が予測できる場合には、その剥離剤に含まれる有機溶媒などの成分に触れることにより、膨潤して複屈折の変化や膨潤するものや白化・黄変等を引き起こす層を積層構造体に追加しておくことも好ましい。
【0108】
[剥離層]
粘着層と剥離層とを組み合わせて、粘着強度の異なる領域を与える光学的応力感応層とすることもできる。すなわち、粘着層上にパターン状の剥離層を設けて、剥離層形成部分と剥離層非形成部分とを粘着層上に存在させることにより、粘着強度の差異を設け、複屈折パターンによる潜像に歪みが生じさせることもできる。
剥離層は、粘着層からみて複屈折パターン側または積層構造体が物品に粘着される側のいずれに設けられていてもよいが、複屈折パターン側に設けられていることが好ましい。また、剥離層と粘着層とは互いに接触していることが好ましい。
剥離層を形成する材料としてはアルミ箔と粘着性が悪いアクリル樹脂、塩化ゴム系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、セルロース系樹脂、塩素化プロピレン樹脂あるいはシリコーン樹脂などの樹脂や、これらにシリコンオイル、脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛を混入した樹脂、あるいは無機フィラー等を多量に混入した脆弱な樹脂等があげられる。
【0109】
なお、転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料は仮支持体の上に(パターン状でない)剥離層を有してもよい。剥離層は仮支持体と剥離層間の、あるいは剥離層とその直上層の間の密着力を制御し、光学異方性層を転写した後の仮支持体の剥離を助ける役目を負う。また前述の他の機能層、例えば配向層や力学特性制御層などが剥離層としての機能を有してもよい。
【0110】
[応力によって光学異方性を発現する層]
応力によって光学異方性を発現する層としては、例えば、剥離時の引張り動作による延伸や光弾性の様な応力により複屈折を発現し、剥離後も発現した複屈折が残留する層や、応力によって層形状が変形することにより視認時の光路を変化させる層などが挙げられる。
応力によって光学異方性を発現する層の作製のための材料、及び作製方法は特に限定されない。応力によって光学異方性を発現する層が設けられる位置は、剥離による応力を受けて光学異方性を発現することができ、かつ、剥離後の複屈折パターンが与える潜像に影響を与えることが出来る位置であれば特に限定されないが、パターン化光学異方性層の近傍、特にパターン化光学異方性層に隣接する位置にあることが好ましい。また、視認側の配置よりも、剥離動作によってより大きな応力を受けやすい支持体側の配置が好ましい。
【0111】
応力によって光学異方性を発現する層は上記のように作製された複屈折パターン上に設ければよい。設けられた応力によって光学異方性を発現する層の上には、さらに必要に応じて反射層又は反射機能を有する支持体、及び粘着層を設けることができる。
応力によって光学異方性を発現する層は図1(h)、図1(i)、及び図2(g)で示したように複屈折パターン作成材料において、光学異方性層に隣接する位置に設けられていることも好ましい。パターン化光学異方性層に隣接する位置に設けることが容易になるからである。ただし、この場合、応力によって光学異方性を発現する性質がパターン化光学異方性層の作製工程における処理によって、消失しないものである必要がある。
【0112】
[表面保護層]
粘着層などの樹脂層の上には、貯蔵の際の汚染や損傷から保護する為に薄い表面保護層(保護フィルム)を設けることが好ましい。表面保護層の性質は特に限定されず、仮支持体と同じか又は類似の材料からなってもよいが、隣接する層(例えば粘着層)から容易に分離されねばならない。表面保護層の材料としては例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、シリコン紙、ポリオレフィンもしくはポリテトラフルオロエチレンシートが適当である。
【0113】
[積層構造体が粘着される物品]
積層構造体が粘着される物品としては特に限定されないが、例えば、インクジェット用カートリッジなどが挙げられる。
反射層を有する積層構造体は多くの物品に粘着が可能で、偏光板一枚で潜像の可視化が可能であるため好ましい。
反射層を有しない形態で作製された積層構造体は透明の物品に粘着して使用することができる。反射層を有しない形態で作製された積層構造体における複屈折パターンは吸収軸が略直交になるように重ねた2枚の偏光板の間に積層構造体を配置した状態で潜像が可視化されるように設計されていることが好ましい。
【実施例】
【0114】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0115】
(力学特性制御層(熱可塑性樹脂層)用塗布液CU−1の調製)
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、熱可塑性樹脂層用塗布液CU−1として用いた。
──────────────────────────────────――――――
力学特性制御層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────――――――
メチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体
(共重合組成比(モル比)=55/30/10/5、重量平均分子量=10万、Tg≒70℃)
5.89
スチレン/アクリル酸共重合体(共重合組成比(モル比)=65/35、重量平均分子量=1万、Tg≒100℃)
13.74
BPE−500(新中村化学(株)製) 9.20
メガファックF−780−F(大日本インキ化学工業(株)社製) 0.55
メタノール 11.22
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 6.43
メチルエチルケトン 52.97
──────────────────────────────────――――――
【0116】
(配向層用塗布液AL−1の調製)
下記の組成物を調製し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、中間層/配向層用塗布液AL−1として用いた。
──────────────────────────────────――
中間層/配向層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────――
ポリビニルアルコール(PVA205、クラレ(株)製) 3.21
ポリビニルピロリドン(Luvitec K30、BASF社製) 1.48
蒸留水 52.1
メタノール 43.21
──────────────────────────────────――
【0117】
(光学異方性層用塗布液LC−1の調製)
下記の組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液LC−1として用いた。
LC−1−1は特開2004−123882に記載の方法を基に合成した。LC−1−1は2つの反応性基を有する液晶化合物であり、2つの反応性基の片方はラジカル性の反応性基であるアクリル基、他方はカチオン性の反応性基であるオキセタン基である。
LC−1−2はTetrahedron Lett.誌、第43巻、6793頁(2002)に記載の方法に準じて合成した。
【0118】

──────────────────────────────────――――
光学異方性層用塗布液組成(質量%)
──────────────────────────────────――――
棒状液晶(LC−1−1) 19.57
水平配向剤(LC−1−2) 0.01
カチオン系光重合開始剤
(Cyracure UVI6974、ダウ・ケミカル製) 0.40
重合制御剤(IRGANOX1076、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 0.02
メチルエチルケトン 80.0
─────────────────────────────────────――
【0119】
【化10】

【0120】
(複屈折パターン作製用転写材料TR−1の作製)
厚さ100μmの易接着ポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインA4100、東洋紡績(株)製)の仮支持体の上に、ワイヤーバーを用いて順に、力学特性制御層用塗布液CU−1、配向層用塗布液AL−1を塗布、乾燥した。乾燥膜厚はそれぞれ14.6μm、1.6μmであった。次いで、ワイヤーバーを用いて光学異方性層用塗布液LC−1を塗布、膜面温度105℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、空気下にて160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射してその配向状態を固定化して厚さ2.4μmの光学異方性層を形成した。この際用いた紫外線の照度はUV−B領域(波長280nm〜320nmの積算)において50mW/cm2、照射量はUV−B領域において35mJ/cm2であった。
【0121】
上記で形成した光学異方性層上に転写接着層用塗布液AD−1を塗布、乾燥して1.0μmの転写接着層を形成した後に保護フィルム(厚さ12μmのポリプロピレンフィルム)を圧着し、複屈折パターン作製用転写材料TR−1を作製した。
(複屈折パターン作製用転写材料TR−6の作製)
光学異方性層の厚みを1.2μmにした以外はTR−1と同様にして、複屈折パターン作製用転写材料TR−6を作製した。
【0122】
(反射層を有する複屈折パターンBP−9の作製)
アルミ箔を耐熱テープでガラスに仮止めした基板を作製し、この基板を基板予備加熱装置で100℃2分加熱した。
複屈折パターン作製用転写材料TR−1の保護フィルムを剥離後、ラミネータ((株)日立インダストリイズ製(LamicII型))を用い、前記100℃で2分間加熱した基板に、ゴムローラー温度130℃、線圧100N/cm、搬送速度1.4m/分でラミネートした。
ラミネート後、仮支持体を剥離した後の基板に対してミカサ社製M−3LマスクアライナーとフォトマスクIV(図7)を用いて露光量50mJ/cm2でパターン露光を行った。
【0123】
露光後の基板に再度同様の手法で複屈折パターン作製用転写材料TR−6をラミネートした。この際、先にラミネートした光学異方性層と後にラミネートした光学異方性層の両者の遅相軸方向が概ね一致するように注意した。
ラミネート後、仮支持体を剥離した後の基板に対してミカサ社製M−3LマスクアライナーとフォトマスクV(図8)を用いて露光量50mJ/cm2でパターン露光を行った。さらに230℃のクリーンオーブンで1時間のベークを行った後に複屈折パターンの積層されたアルミ箔をガラス板から外し、本発明の反射層上多色複屈折パターンBP−9を作製した。BP−9の上に偏光板を介して観察されるパターンの拡大図を図9に示す。図中、地のアルミ箔が銀色を呈するのに対し、格子部は紺色、斜線部は黄色ないし橙色を呈する二色のパターンが観察される。
【0124】
[例1]
上記で得られた複屈折パターンのアルミ箔側に、粘着力が異なる2種の接着剤をパターン状に塗布し、さらに塗布面にPETフィルムを保護フィルムとして設けて保存した。作製したシールの、保護フィルムを剥がして型紙に粘着させた。アルミ箔を手がかりに剥がそうとしたところ粘着力が強い接着剤、日本合成化学工業(株)製 コーポニール5411の塗布部分に複屈折パターン層の一部が残り、粘着力が弱い接着剤、日本合成化学工業(株)製 コーポニールN-3495HSの塗布部分のみが剥がれて、複屈折パターンが破断した。
【0125】
[例2]
上記で得られた複屈折パターンのアルミ箔側に、記組成の剥離層形成用組成物を部分的に覆うように塗布し、110℃で乾燥させ、脆性剥離層を形成した。
──────────────────────────────────―
剥離層形成用組成物 (質量%)
──────────────────────────────────―
アクリル樹脂 (PMMA:メタクリル酸メチル樹脂)
25
トルエン 30
メチルエチルケトン 30
メチルイソブチルケトン 15
──────────────────────────────────―

剥離層を形成したアルミ箔上に、下記組成の粘着層を塗布、110℃で乾燥させ、粘着層を形成した。
──────────────────────────────────―
(粘着層形成用組成物) (質量%)
──────────────────────────────────―
アクリル系粘着剤 (日本合成化学工業(株)製 コーポニールNS-004)
24
メチルエチルケトン 38
トルエン 38
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【0126】
さらに粘着層上にPETフィルムを保護フィルムとして設けて保存した。
作製したシールのPETフィルムを剥がして粘着層が型紙の面になるように型紙に貼り付け、アルミ箔を手がかりに剥がそうとしたところ、剥離層未塗布部分にアルミ箔及び複屈折パターンが残り、剥離層塗布部分のみが剥がされて複屈折パターンが破断した。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】複屈折パターン作製材料の例を示す概略断面図である。
【図2】転写材料として用いられる複屈折パターン作製材料の例の概略断面図である
【図3】複屈折パターンの例の概略断面図である。
【図4】本発明の積層構造体の例(パターン化粘着層を用いた例)の概略断面図およびこの積層構造体が剥がされる状態を模式的に示した図である。
【図5】本発明の積層構造体の例(剥離層及び粘着層を用いた例)の概略断面図およびシールとして用いられた、この積層構造体が剥がされる状態を模式的に示した図である。
【図6】本発明の積層構造体の例(応力によって光学異方性を発現する層を用いた例)の概略断面図およびシールとして用いられた、この積層構造体が剥がされる状態を模式的に示した図である。
【図7】実施例で用いたフォトマスクIVの形状を示す図である。白色部が露光部、黒色部が未露光部である。
【図8】実施例で用いたフォトマスクVの形状を示す図である。白色部が露光部、黒色部が未露光部である。
【図9】実施例で作製した複屈折パターンを偏光板を介して観察した場合に観察されるパターンの拡大図である。
【符号の説明】
【0128】
5 複屈折パターン
6 パターン化粘着層
7 剥離層
8 粘着層
9 光学的応力感応層
10 応力によって光学異方性を発現する層
10´ 応力によって光学異方性を発現した 10の層
11 支持体または基板
12 光学異方性層
12A 光学異方性層の露光部
12B 光学異方性層の未露光部
12F 第一光学異方性層
12S 第二光学異方性層
13 配向層(支持体上)
14 転写用接着層
14F 第一転写接着層
14S 第二転写接着層
14T 第三転写接着層
18 表面保護層
21 仮支持体
22 配向層(仮支持体上)
22F 仮支持体上第一配向層
22S 仮支持体上第一配向層
23 力学特性制御層
112 パターン化光学異方性層
112−A パターン化光学異方性層(露光部)
112−B パターン化光学異方性層(未露光部)
112F―A パターン化第一光学異方性層(露光部)
112F―B パターン化第一光学異方性層(未露光部)
112S―A パターン化第二光学異方性層(露光部)
112S―B パターン化第二光学異方性層(未露光部)
112T―A パターン化第三光学異方性層(露光部)
112T―B パターン化第三光学異方性層(未露光部)
35 反射層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的応力感応層と、複屈折性の異なる領域をパターン状に有するパターン化光学異方性層とを含む積層構造体。
【請求項2】
反射層を含む請求項1に記載の積層構造体。
【請求項3】
複屈折性の異なる領域はレターデーションが異なる領域である請求項1又は2に記載の積層構造体。
【請求項4】
パターン化光学異方性層が下記の工程をこの順に含む方法で製造される請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層構造体:
(1)反応性基を有する高分子を含む光学異方性層を含む複屈折パターン作製材料を用意する工程;
(2)複屈折パターン作製材料に、パターン状の熱処理またはパターン状の電離放射線照射を行う工程;
(3)光学異方性層中の残りの反応性基を反応もしくは失活させる工程。
【請求項5】
光学的応力感応層が、応力によって光学異方性を発現する層である請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層構造体。
【請求項6】
粘着層を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層構造体。
【請求項7】
光学的応力感応層が、粘着強度が異なる領域を複数有するパターン化粘着層である請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層構造体。
【請求項8】
光学的応力感応層が、粘着層とパターン状の剥離層とを含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層構造体。
【請求項9】
偽造防止用シールとして用いられる請求項6〜8のいずれか一項に記載の積層構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−300923(P2009−300923A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157696(P2008−157696)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】