説明

像加熱装置

【課題】ベルト方式の像加熱装置において、通常通紙時(像加熱時)における充分な熱効率を維持しつつ、紙詰まり時に加熱源を接触や異物付着から保護することができる像加熱装置を提供する。
【解決手段】紙詰まり時に紙の暴走によってベルト部材の外面が変形され加熱源に向かう方向にあって加熱源の手前位置に設けられ、ベルト部材の変形に対して加熱源をベルト部材の長手方向に渡って保護する線材を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やLBP等、電子写真方式・静電記録方式等の作像プロセスを採用した画像形成装置に使用される像加熱装置に関する。像加熱装置としては、記録材上に形成した未定着トナー画像を固着画像として加熱定着する定着装置や、記録材に定着された画像を加熱することにより画像の光沢度を増大させる光沢度増大装置等を挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式、静電記録方式等を採用する画像形成装置に具備される像加熱装置としては、熱ローラ方式が用いられている。しかしながら、熱ローラ方式の像加熱装置においては、熱容量の大きな熱ローラを加熱するため、多大な電力と時間を必要とする。これに対して、近年増大している省エネ、クイックスタートへの需要にこたえるため、加熱ベルトを用いた、ベルト方式の像加熱装置が提案されている(特許文献1)。
【0003】
このベルト方式の像加熱装置について、図8を用いて説明する。加熱ベルト42(図中では加熱ベルト42の内部を示すため、長手方向の途中まで切断している)と加圧部材41は、不図示の圧印加手段により圧接配置される。そして、加熱ベルト42の内面で加圧部材41との対向部にバックアップ部材としての摺動部材47が、加圧部材41に加熱ベルト42を密着従動させるために設けられる。そして、加熱ベルト42の内側で加熱ベルト42から離間した位置に、加熱ベルト42の内面42aおよび摺動部材47を加熱するための加熱源45が配置される。
【0004】
摺動部材47は、加熱ベルト42と加圧部材41との間に均一なニップ部Nを形成するため、摺動部材ホルダ43に支持され、摺動部材ホルダ43は、さらに摺動部材ホルダ43を長手均一に加圧するための支持部材46によって加圧支持されている。ここで、加熱源45としてはハロゲンランプ等が用いられ、加熱源45はその輻射熱によって加熱ベルト42の内面42a及び摺動部材ホルダ43に設けられたスリット43aを通して摺動部材47に熱を伝える。加熱ベルト42の内面42aは、伝熱効率を上げる為に黒色に着色されている。
【0005】
また熱効率を確保するために、支持部材46は長手方向のほぼ全域に開口部46aを有している。加熱源45から発せられる輻射熱が、直接加熱ベルト42の内面42aを熱することとなるように、加熱ベルト42の内面42aに対して加熱源45は、開口部46aにより露出している。
【0006】
ところで、別の従来技術として、加熱源と加熱ベルトの間に、ベルト走行方向に対して斜角をなす複数の熱透過部を備える補強部材を設けることで、ベルト幅方向における均等な加熱を図る定着装置が知られる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−93141号公報
【特許文献2】特開2009−104114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示される像加熱装置(図9の像加熱装置40)においては、加熱ベルト42に対して加熱源45は露出した構成となってしまうため、次のような問題が発生する。これを図9を用いて説明する。図9(a)は記録材Pが矢印Aの方向より像加熱装置40を通過する様子を示す。図9(b)は記録材Pの先端が加熱ベルト42から分離できずに像加熱装置内で紙詰まりを発生させてしまった様子を示す。
【0009】
図9(b)に示すように、像加熱装置内で紙詰まりが発生すると、加熱ベルト42に対して加熱源45は露出した構成であるため、アコーディオン状に詰まった紙によって加熱ベルト42が変形し、加熱ベルト42と加熱源45が接触してしまうおそれがある。このとき、詰まった紙の量が多ければ、加熱ベルト42と加熱源45は強く接触し、加熱源としてハロゲンランプが用いられる場合には、ハロゲンランプ表面のガラスを物理的に破損してしまう恐れがある。
【0010】
また、物理的破損までに至らない場合でも、ハロゲンランプに接触すると接触部分の熱が奪われ、加熱ベルトが接触した部分と接触していない部分で温度差が生じてしまう。ハロゲンランプは動作時、瞬時に高温になるため、加熱ベルトが接触した部分と接触していない部分での温度差が熱膨脹率の差を誘発することでガラス破損に至る可能性が高くなってしまう。
【0011】
また、ベルト内面のグリス等の異物が加熱源に飛んで付着することでも、同様に加熱源6が破損する恐れがある。更に、加熱ベルトが内側へ凹んだ際に折れや亀裂が入ると、加熱ベルトの均一な加熱ができなくなる。さらに、加熱ベルトの温度を正確に検出することが困難となり、定着性能に問題が生じる。今後、像加熱装置の小型化が進むと、加熱ベルトの内壁と加熱源6の距離が近くなるため、より一層この問題点が顕著化する。
【0012】
これに対し、特許文献2に示す構成であれば、像加熱装置内で紙詰まりが発生しても、詰まった紙によって加熱ベルトが変形し、加熱ベルトあるいはグリス等の異物と熱源が接触してしまうという可能性は小さくなる。
【0013】
しかしながら、特許文献2では、梯子状で幅広の遮蔽部が、加熱源と加熱ベルト内面の間に配置されるため、即ち、充分な開口部を形成できないため、加熱源から加熱ベルトを加熱する熱効率は大幅に低下してしまう。そして、特許文献2では、梯子状で幅広の遮蔽部を備える支持部材が摺動部材ホルダの加圧支持部材を兼用するため、加圧による変形が生じ易い。このため、支持部材と加熱源との距離は、支持部材が確実に加熱源に触れない距離に配置しなければならず、装置の小型化を阻害してしまう。
【0014】
本発明の目的は、ベルト方式の像加熱装置において、通常通紙時(像加熱時)における充分な熱効率を維持しつつ、紙詰まり時に加熱源を接触や異物付着から保護することができる像加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の代表的な構成は、加圧部材と、前記加圧部材に外接して回転走行する可撓性のベルト部材と、前記ベルト部材の内面に接触し前記ベルト部材と前記加圧部材とでニップ部を形成するバックアップ部材と、前記ベルト部材の内側で前記ベルト部材から離間した位置に設けられ、前記ベルト部材の内面を加熱する加熱源と、を有し、前記ニップ部に画像を担持した記録紙を通紙して加熱する像加熱装置であって、紙詰まり時に紙の暴走によって前記ベルト部材の外面が変形され前記加熱源に向かう方向にあって前記加熱源の手前位置に設けられ、前記ベルト部材の変形に対して前記加熱源を前記ベルト部材の長手方向に渡って保護する線材を有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の他の代表的な構成は、加圧部材と、前記加圧部材に外接して回転走行する可撓性のベルト部材と、前記ベルト部材の内面に接触し前記ベルト部材と前記加圧部材とでニップ部を形成するバックアップ部材と、前記ベルト部材の内側で前記ベルト部材から離間した位置に設けられ、前記ベルト部材の内面を加熱する加熱源と、を有し、前記ニップ部に画像を担持した記録紙を通紙して加熱する像加熱装置であって、紙詰まり時に紙の暴走によって前記ベルト部材の外面が変形され前記加熱源に向かう方向にあって前記加熱源の手前位置に設けられ、前記ベルト部材の変形に対して前記加熱源を前記ベルト部材の長手方向に渡って保護するバネ状の線材と、前記ベルト部材および前記加熱源を保持すると共に、紙詰まりを検知した場合に前記ベルト部材および前記加熱源に対して前記線材を前記長手方向に圧縮可能とするように保持するフランジ部材と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ベルト方式の像加熱装置において、通常通紙時(像加熱時)における充分な熱効率を維持しつつ、紙詰まり時に加熱源を接触や異物付着から保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る像加熱装置の概略断面図、(b)は第1の実施形態に係る像加熱装置を紙搬送方向から見た概略断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る像加熱装置を搭載した画像形成装置の概略断面図である。
【図3】(a)は本発明の第2の実施形態に係る像加熱装置の像加熱時における紙搬送方向から見た概略断面図、(b)は紙詰まり時における紙搬送方向から見た概略断面図である。
【図4】第1、第2の実施形態の保護部材に関する他の形態を示す概略断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る像加熱装置の概略断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る像加熱装置の紙搬送方向から見た概略断面図である。
【図7】第3の実施形態の保護部材の変形例を示す図である。
【図8】従来例を示す像加熱装置の概略斜視図である。
【図9】(a)は従来例において通常時の像加熱装置の概略断面図、(b)は紙詰まりが発生した際の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
《第1の実施形態》
(画像形成装置)
図2を用いて、本実施形態に係る像加熱装置を搭載した画像形成装置の概略を説明する。図2に示す画像形成装置は、電子写真画像形成プロセスを利用した単色カラー(ブラック)の画像形成装置である。この画像形成装置において、画像を形成する画像形成部1が装置内部中央に配置されている。画像形成部1は、像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(以下、感光体ドラムという)2の周囲に、帯電器3、現像装置4、ドラムクリーニング装置5がそれぞれ設置されており、画像形成部1の上方には露光装置6が設置されている。現像装置4には単色カラートナー(ブラックトナー)が収納されている。
【0020】
感光体ドラム2は、負帯電のOPC感光体でアルミニウム製のドラム基体上に光導電層を有しており、駆動装置(不図示)によって矢印方向(時計回り)に所定のプロセススピードで回転駆動される。帯電手段としての帯電器3は、帯電バイアス電源(不図示)から印加される帯電バイアスによって感光体ドラム2表面を負極性の所定電位に均一に帯電する。現像装置4は、感光体ドラム2上に形成される各静電潜像にブラックトナーを付着させてトナー像として現像(可視像化)する。
【0021】
現像装置4による現像方法としては、例えばトナー粒子に対して磁性キャリアを混合したものを現像剤として用いて磁気力によって搬送し、感光体ドラム2に対して接触状態で現像する2成分接触現像法を用いることができる。
【0022】
転写手段としての転写ローラ31は弾性部材で構成されており、転写部Teにて感光体ドラム2に当接している。尚、ここでは転写手段として、転写ローラ31を使用したが、トナー像を転写材に転写する際に高圧が印加され、かつ感光ドラム2に対して当接する転写ブレードとしてもよい。ドラムクリーニング装置5は、感光体ドラム2表面にそれぞれ残った転写残トナーを除去して回収する。
【0023】
露光装置6では、画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザ光がレーザ出力部(不図示)から出力され、高速回転するポリゴンミラー(不図示)等を介して感光体ドラム2表面を露光する。これにより、帯電器3で帯電された感光体ドラム2表面に画像情報に応じた各色の静電潜像を形成する。
【0024】
給紙ユニット20は、給紙カセット21、ピックアップローラ対22、搬送ガイド23、レジストローラ対24、転写前搬送ガイド25からなり、給紙カセット21内の記録材Pを給紙して転写部Teまで搬送する。
【0025】
また転写部Teの通紙方向下流側には、熱源を内包する加熱ベルト42と加圧ローラ41を有する像加熱装置40が設置され、転写部Teと像加熱装置40の間に定着前搬送ガイド32が配置されている。さらに像加熱装置40の通紙方向下流側には排紙ローラ対52および像加熱装置40から搬送される記録材Pを排紙ローラ対52に案内するための排紙搬送ガイド51が設置されている。
【0026】
(画像形成動作)
次に、上記した画像形成装置による画像形成動作について説明する。画像形成開始信号が発せられると、所定のプロセススピードで回転駆動される感光ドラム2は、それぞれ帯電器3によって一様に負極性に帯電される。そして、露光装置6は、出力画像の画像信号をレーザ出力部(不図示)にて光信号にそれぞれ変換し、変換された光信号であるレーザ光は帯電された感光ドラム2上をそれぞれ走査露光して静電潜像を形成する。
【0027】
そして、まず感光ドラム2上に形成された静電潜像に、感光ドラム2の帯電極性(負極性)と同極性の現像バイアスが印加された現像装置4によりブラックトナーを付着させて、トナー像として可視像化する。一方、感光ドラム2上に可視像化されたトナー像先端が転写部Teに移動されるタイミングに合わせて、給紙カセット21からピックアップローラ対22によって記録材Pが給紙される。そして、搬送ガイド23を経由してレジストローラ24に達し、感光ドラム2上に形成されたトナー像とタイミングを合わせて転写部Teに搬送される。
【0028】
そして、転写部Teに搬送された記録材Pに、転写バイアス(トナーと逆極性(正極性))が印加された転写ローラ31によりブラックのトナー像が記録材P上に転写される。トナー像が形成された記録材Pは像加熱装置40に搬送されて、加熱ベルト42を備える加熱ユニットと加圧ローラ41を備える加圧ユニット間の定着ニップでトナー像を加熱、加圧して記録材P表面に熱定着させる。定着ユニット40を通過した記録材Pは、排紙搬送ガイド51を経由した後、排紙ローラ対52によって機外の排紙トレイ53に排紙され、一連の画像形成動作を終了する。
【0029】
(像加熱装置)
次に、本実施形態に係る像加熱装置の特徴的な部分について、図1を用いて説明する。加圧部材としての加圧ローラ41に外接して回転走行する可撓性のベルト部材である加熱ベルト42は、バックアップ部材としての摺動板47と加圧ローラ41に圧接配置される。摺動板47は加熱ベルト42の内面に接触し、加熱ベルト42と加圧ローラ41とでニップ部Nが形成され、このニップ部Nに画像を担持した記録紙が通紙され、加熱されることで固着画像が得られる。
【0030】
加熱ベルト42は少なくともポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK等の耐熱性樹脂またはニッケルやSUSといった金属製の基材上に離型層を設けることにより構成されている。耐熱性樹脂の厚みは30〜200μmであり、表層はフッ素系樹脂がコーティングされている。また、金属製の基材の厚みは30μm〜100μmとし、弾性層として100〜1000μmの厚みのシリコーンゴム層を設けている。
【0031】
さらに表面の離型層として、フッ素樹脂チューブを被覆している。また、加熱ベルト42裏面には、耐熱性の黒色塗料を塗布し、熱源からの熱を効率よく吸収する構成としている。加圧ローラ41は、芯材上に弾性層、離型層を設けることにより構成される。例えば、芯材として、鉄製の芯金、弾性層として、発泡シリコーンゴム層を設けた上に、フッ素樹脂チューブの離型層を設けたものを用いている。
【0032】
摺動板47は、幅5〜20mm、長さ200〜400mm、厚み0.5〜2mm程度の金属板、セラミック板等の板材を用いる。ニップ部Nでの圧力分布を変化させる凹凸形状等を設けても構わない。また、板材にフッ素樹脂等の樹脂コーティングまたはガラスコーティング等を設けても構わない。本実施形態においては、摺動板47は、幅10mm、長さ270mm、厚み1mmのアルミ平板表面にフッ素樹脂コーティングを施したものを用いている。
【0033】
摺動板ホルダ43は、耐熱樹脂、金属等により構成され、摺動板47を保持する。また、加熱源45の輻射熱Hを摺動板47に直接輻射するために、長手方向にスリット開口43aが配置されている。摺動板ホルダ43は、加熱ベルト42の回転軌道を確保するためのガイド機能も備えている。
【0034】
(加熱源および加熱源の保護)
図1で、加熱源45は、加熱ベルト42の内側で加熱ベルト42から離間した位置、好ましくは中心部付近に設けられる。加熱源45としては、ランプヒータ、電熱線または抵抗パターンが備えられた面状発熱体等が主に用いられるが、本実施形態においては、円筒状のハロゲンランプを用いている。また加熱源45の発熱により輻射熱Hが加熱ベルト42の内面42aのうち、摺動板ホルダ43によってガイドされていない部分のほぼ全域と、摺動板ホルダ43に設けられたスリット開口43aを通して摺動板47を加熱するようになっている。
【0035】
支持部材46は、加熱源45からの輻射熱Hを加熱ベルト42の内面42aに輻射するための開口部46aを長手方向に略全域にわたり有している。なお、支持部材46は、金属、耐熱性の高い樹脂等により形成され、不図示の圧印加手段により長手方向の両端部で加圧される。支持部材46を介して長手方向に均一に摺動板ホルダ43が加圧され、バックアップ部材としての摺動板47により加熱ベルト42と加圧ローラ41との間に、均一なニップ部Nが形成される。
【0036】
図1(a)の保護部材44は、加熱源の外周面に沿ってらせん状に形成されたバネ状の部材であり、直径0.5〜3mmの金属線材から構成される。紙詰まり時に紙の暴走によって加熱ベルト42の外面が変形され、加熱源45に向かう方向にあって加熱源45の手前位置に相当するらせん状の部位が、加熱ベルト42の変形に対して加熱源45を加熱ベルト42の長手方向に渡って保護する機能を有する。ここで、図1(a)に示すように、保護部材44と加熱源45との距離D2よりも、保護部材44と摺動板ホルダ43が有する突き当て部43bとの距離D1が短く設定されている。
【0037】
これにより、紙詰まり時に保護部材44が変形した場合にも、保護部材44が加熱源45に接触する手前で保護部材44が突き当て部43bに接触することで、保護部材44と加熱源45の接触が回避される。この突き当て部43bは、保護部材44の外径に沿う形で、長手方向略全域に設けられる。
【0038】
次に、保護部材44に関してさらに図1(b)を用いて説明する。図1(b)は図1(a)における紙搬送方向上流側(矢印Aの方向)から見た像加熱装置の概略断面図である。図1(b)は長手方向の片端のみ示しているが、省略した反対側の形状も基本的に対称構成となる。保護部材44は、通常通紙時(像加熱時)にピッチC1の幅を有しており、ピッチC1の幅(開口部の幅に相当)は加熱源45からの輻射熱が概ね加熱ベルト内面42aに達することができるように設定されている。また、保護部材44の端部はフランジ部材48における接続部48aにおいてフランジ部材48と接続されている。
【0039】
フランジ部材48は、金属、耐熱性の高い樹脂等により形成され、接続部48aにおいて保護部材44と、接続部48bにおいて加熱源45と、接続部48cにおいて加熱ベルト42とそれぞれ接続されている。更に、接続部48dにおいて像加熱装置の側板49と接続され、側板49に対して、加熱源45と加熱ベルト42と保護部材44を一体的に支持している。
【0040】
本実施形態によれば、加熱源45をらせん状に形成されたバネ状の保護部材44により内包することによって、像加熱装置内で紙詰まりが発生した場合、詰まった紙が加熱ベルト42の外面を変形させ、加熱ベルト42と加熱源45が接触してしまうことを防止する。それと共に、らせん形状の線材からなる保護部材44によって、線材による遮蔽部と隣接するように開口部が存在する関係上、通常加熱時には開口部を介して、加熱源45が加熱ベルト42に与える輻射熱の熱効率を十分確保することができる。
【0041】
また、加熱ベルト42と加熱源45と保護部材44を、同一のフランジ部材48で支持することにより、加熱ベルト42と加熱源45、および保護部材44の相対位置を精度よく出すことができる。そして、加熱ベルト42、加熱源45および保護部材44との隙間を必要最小限に設定することができるため、像加熱装置の小型化を促進することが可能となる。
【0042】
更に、摺動板ホルダ43に設けた突き当て部43bと保護部材44との距離を、保護部材44と加熱源45との距離より小さくする。これによって、紙詰まりが発生した場合に、詰まった紙が加熱ベルト42を変形させ、さらに保護部材44を変形させたとしても、加熱源45を確実に保護することができる。保護部材44は、加熱源45に接触する前に摺動板ホルダ43の突き当て部43bに突き当るからである。
【0043】
なお、本実施形態においては、保護部材44として断面形状が円形である金属線材を用いたが、図4の保護部材401に示すように、断面形状が長方形である金属線材でも効果があることは言うまでもない。このとき、保護部材401の断面形状の長方形の長辺が、加熱源45からの輻射熱が加熱ベルト42の内面42aに輻射する方向に対して平行に、長方形の短辺が輻射方向に対して垂直になるように配置することが好ましい。長方形の長辺が輻射方向に対して垂直になるように配置する場合に対して、遮蔽幅が少なくなり熱効率が良いからである。
【0044】
これにより、断面形状が長方形である本実施形態においては、加熱源45からの加熱ベルト42の内面42aに対する輻射領域を減らさずに、保護部材44の強度をより向上させることができる。
【0045】
《第2の実施形態》
次に、図3を用いて、保護部材が圧縮可能な本実施形態について説明する。図3(a)は、図1(b)と同様、紙搬送方向上流側(矢印Aの方向)から見た像加熱装置の通常通紙時(像加熱時)の概略断面図である。図3(a)は長手方向の片端のみ示しているが、省略した反対側の形状も基本的に対称構成となる。図3(a)において、フランジ部材48の内部には押圧部材400が配置され、押圧部材400はフランジ部材48と長手方向に可動可能なように構成されている。押圧部材400は接続部400aにおいて保護部材44と接続している。また押圧部400の可動時の様子を図3(b)に示す。
【0046】
図3(b)において、押圧部材400の押圧部400bを不図示の押圧手段が矢印E方向に押圧する。すると押圧部材400を介して保護部材44も矢印Eの方向に収縮する。従って、保護部材44は、押圧前の状態ではピッチC2の幅を有しており、押圧されることによってピッチC3の幅に変化するように構成されている。不図示の押圧手段が押圧部材400を押圧するタイミングとしては、像加熱装置内に配された紙詰まり検知手段(不図示)によって、紙詰まりが発生したことを検知すると、押圧手段が動作して押圧部材400を図3(b)のように押圧するように設定されている。
【0047】
以上のように本実施形態においては、加熱源を内包した、らせん状に形成されたバネ状の保護部材のピッチを、通常通紙時(像加熱示時)にはより幅広くとることによって、加熱源が加熱ベルトに与える輻射熱の熱効率をより向上させることができる。また、像加熱装置内で紙詰まりが発生した場合、押圧部材によって保護部材を押圧し、らせん状に形成されたバネ状の保護部材のピッチをより狭くさせる。これによって、詰まった紙が加熱ベルトを変形させ、加熱ベルトと加熱源が接触してしまうのをより確実に防止することができる。
【0048】
即ち、本実施形態では、保護部材を押圧する部材を設け、金属線材からなるバネ状の保護部材の線間のすき間を通常通紙時(像加熱示時)は広く、紙詰まり発生時は狭く変化させる。このことにより、通常通紙時(像加熱示時)の輻射熱効率をより向上させ、かつ紙詰まり時の加熱源の保護性能をより向上させることができる。
【0049】
なお、本実施形態においても、図4に示したように断面形状が長方形である保護部材401を用いても同様の効果があることは言うまでもない。また、保護部材401の断面形状の長方形の長辺が、加熱源45からの輻射熱が加熱ベルト内面42aに輻射する方向に対して平行に、長方形の短辺が輻射方向に対して垂直になるように配置することが好ましい。加熱源45からの加熱ベルト42の内面42aに対する輻射領域を減らさずに保護部材401の強度を向上させることができ、紙詰まりに伴う加熱ベルトの変形による加熱ベルトと加熱源の接触をより確実に防止することが可能となるからである。
【0050】
《第3の実施形態》
次に、図5、図6を用いて、加熱源45の外周面に沿った所定平面内で直線状に形成された金属線材を保護部材とする本実施形態について説明する。図5は図1(a)と同様、像加熱装置の拡大概略断面図である。本実施形態の特徴的な部分は、加熱源45と加熱ベルト42との間に略直線でかつ長手方向に渡って全域に張架されている金属線材402を少なくとも一つ有していることである。金属線材402は、紙詰まり発生時に詰まった紙が加熱ベルト42を変形させ、加熱ベルト42が加熱源45に触れてしまわないように、ニップ部Nの通紙方向下流の加熱ベルト42と加熱源45の間に配置されている。
【0051】
また、紙詰まり発生箇所が特定領域に限らない場合においては、金属線402を複数本配置した方が望ましい。さらに金属線材402は、加熱ベルト42の変形に耐えうるように線径0.5mm〜3mm程度に設定され、かつ、加熱ベルト42の変形に伴って、金属線材402が加熱源に触れないように、加熱源との距離を保って設定されている。
【0052】
図6を用いて更に説明する。図6は紙搬送方向上流側(矢印Aの方向)から見た像加熱装置の概略断面図である。図6は長手方向の片端のみ示しているが、省略した反対側の形状も基本的に対称構成となる。金属線材402は、フランジ部材48に対して、接続部48aにて結合している。この時、金属線材402は、加熱ベルト42の変形による撓みや、加熱ベルト内部部品の熱膨脹による変形にも考慮したうえで、不図示の張架手段により、適切な張力が常時加わるよう、張架されている。
【0053】
またフランジ部材48は、加熱源45、加熱ベルト42ともそれぞれ、接続部48bおよび接続部48cにおいて接続されており、金属線材402、加熱源45、加熱ベルト42を一体的に保持している。
【0054】
以上のように本実施形態においては、加熱源と加熱ベルトの間に略直線の金属線材を少なくとも一つ長手方向全域に張架する。これによって、像加熱装置内で紙詰まりが発生した場合、詰まった紙が加熱ベルトを変形させ、加熱ベルトと加熱源が接触してしまうのを金属線材が防止する。それと共に、金属線材を張架する構成をとることによって通常加熱時には加熱源が加熱ベルトに与える輻射熱の熱効率を十分確保することができる。
【0055】
また、加熱ベルトと加熱源と金属線材を同一のフランジ部材で支持する。これにより、加熱ベルトと加熱源、および金属線材の相対位置を精度よく出すことができ、加熱ベルト、加熱源および金属線材との隙間を必要最小限に設定することができるため、像加熱装置の小型化を促進することが可能となる。
【0056】
更に、金属線材を適度な張力で張架することにより、紙詰まりが発生した場合に、詰まった紙が加熱ベルトを変形させ、さらに金属線材に接触したとしても、金属線材が加熱源に触れることはなく、加熱源を確実に保護することができる。
【0057】
なお、本実施形態においては、保護部材として断面形状が円形である金属線材を用いたが、第1の実施形態と同様、断面形状が長方形である金属板材でも効果があることは言うまでもない。このとき金属板材の断面形状の長方形の長辺が、加熱源45からの輻射熱が加熱ベルト内面42aに輻射する方向に対して平行に、長方形の短辺が輻射方向に対して垂直になるように配置すると好ましい。加熱源45からの加熱ベルト42の内面42aに対する輻射領域を減らさずに金属板材の強度を向上させることができ、紙詰まりに伴う加熱ベルトの変形による加熱ベルトと加熱源の接触をより確実に防止することが可能となるからである。
【0058】
(変形例1)
加熱源の保護部材としての線材に関し、第1、第2の実施形態では、らせん状に形成し、また第3の実施形態では、加熱源の外周面に沿った所定平面内で直線状に形成したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、図7に示すように、バネ状で圧縮可能な金属線材Xを加熱源の外周面に沿った所定平面内で鋸歯状に形成しても良い。この場合、紙詰まり時に紙の暴走によってベルト部材の外面が変形され加熱源に向かう方向で、加熱源への接触を回避するための幅Wを広げることができる。また、紙詰まり時に長手方向に圧縮させれば、ピッチLを通常通紙時(像加熱時)に対して小さくでき、加熱源の保護をより図ることができる。
【0059】
(変形例2)
また、上述した実施形態では、線材として金属線材を用いたが、本発明はこれに限らず、硬質な樹脂など強度の比較的高い材種であれば、紙詰まり時の加熱源の保護を図ることができる。更に、保護部材が、加熱源からの輻射熱を少なくとも一部透過させる材料(金属材料も含む)からなる線材であれば、像加熱時の熱効率をより高めることができる。線材からなる保護部材が加熱源を保護する機能と、熱効率を高める機能を兼ね備えることとなるからである。
【符号の説明】
【0060】
41・・加圧ローラ、42・・加熱ベルト、43・・摺動板ホルダ、44・・保護部材、45・・加熱源、46・・支持部材、47・・摺動板、48・・フランジ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧部材と、
前記加圧部材に外接して回転走行する可撓性のベルト部材と、
前記ベルト部材の内面に接触し前記ベルト部材と前記加圧部材とでニップ部を形成するバックアップ部材と、
前記ベルト部材の内側で前記ベルト部材から離間した位置に設けられ、前記ベルト部材の内面を加熱する加熱源と、を有し、
前記ニップ部に画像を担持した記録紙を通紙して加熱する像加熱装置であって、
紙詰まり時に紙の暴走によって前記ベルト部材の外面が変形され前記加熱源に向かう方向にあって前記加熱源の手前位置に設けられ、
前記ベルト部材の変形に対して前記加熱源を前記ベルト部材の長手方向に渡って保護する線材を有することを特徴とする像加熱装置。
【請求項2】
加圧部材と、
前記加圧部材に外接して回転走行する可撓性のベルト部材と、
前記ベルト部材の内面に接触し前記ベルト部材と前記加圧部材とでニップ部を形成するバックアップ部材と、
前記ベルト部材の内側で前記ベルト部材から離間した位置に設けられ、前記ベルト部材の内面を加熱する加熱源と、を有し、
前記ニップ部に画像を担持した記録紙を通紙して加熱する像加熱装置であって、
紙詰まり時に紙の暴走によって前記ベルト部材の外面が変形され前記加熱源に向かう方向にあって前記加熱源の手前位置に設けられ、
前記ベルト部材の変形に対して前記加熱源を前記ベルト部材の長手方向に渡って保護するバネ状の線材と、
前記ベルト部材および前記加熱源を保持すると共に、紙詰まりを検知した場合に前記ベルト部材および前記加熱源に対して前記線材を前記長手方向に圧縮可能とするように保持するフランジ部材と、
を有することを特徴とする像加熱装置。
【請求項3】
前記線材は、前記加熱源の外周面に沿ってらせん状に形成された線材であり、紙詰まり時に紙の暴走によって前記ベルト部材の外面が変形され前記加熱源に向かう方向にあって前記加熱源の手前位置に相当する部位が前記ベルト部材の変形に対して前記加熱源を前記ベルト部材の長手方向に渡って保護する機能を有することを特徴とする請求項1または2に記載の像加熱装置。
【請求項4】
前記線材は、前記加熱源の外周面に沿った所定平面内で直線状もしくは鋸歯状に形成された線材であることを特徴とする請求項1または2に記載の像加熱装置。
【請求項5】
前記線材は、金属線材であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項6】
前記線材は、前記加熱源からの輻射熱を少なくとも一部透過させる材料からなる線材であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項7】
前記バックアップ部材は、前記線材が変形した時に突き当る突き当て部を備え、前記線材と前記突き当て部との距離は、前記線材と前記加熱源との距離よりも短いことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の像加熱装置。
【請求項8】
前記加熱源は、ハロゲンランプであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の像加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−114036(P2013−114036A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260162(P2011−260162)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】