説明

元素分析によって実施される遺伝子発現アッセイ

遺伝子発現分析のための方法およびキットが開示される。本方法は、プローブとして元素タグ付きオリゴヌクレオチドを利用し、それらは元素分析によってその後分析される。ビーズなどの元素標識支持体を用いる生体分子の分析と、その後の元素分析のための方法およびキットも開示される。元素分析は、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)を用いて実施することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、元素タグで標識された、または元素吸収支持体と結合した相補的オリゴヌクレオチドを用いる遺伝子発現分析のための、元素分析を使用する迅速で感度の良いアッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
この出願は、2006年2月13日に出願の「ICP−MSによる金属タグ付きオリゴヌクレオチド遺伝子発現分析」という名称の米国特許仮出願第60/772,588号明細書への優先権を主張し、その全体の内容は本明細書で参照により組み込まれる。
【0003】
本特許文書の開示の一部は、著作権保護の対象となる内容を含む。著作権者は、それが特許商標局の特許ファイルまたは記録で公表される場合、任意の者による特許文書または特許開示の複製に異議申立をしないが、そうでない場合はいかなる全ての著作権を留保する。
【0004】
生物学的な「試料」は、分析を必要とする生物学的性質の任意の試料を指す。例えば、試料には、動物、植物、真菌または細菌の生体分子、組織、流体および細胞が含まれてもよい。それらには、ウイルス起源の分子が含まれてもよい。一般的な試料には、それらには限定されないが、痰、血液、血液細胞(例えば、白血球)、組織または細針生検試料、尿、腹膜液および胸膜液、またはそれらからの細胞が含まれる。生体試料には、組織学的目的のためにとられる凍結切片などの組織切片も含まれてもよい。生体試料の他の一般的な源は、遺伝子発現状態を操作して遺伝子間の関係を探究することができる、ウイルスおよび動物、植物、細菌、真菌の細胞培養である。他の例は、当分野の技術者に公知である。
【0005】
「RNA試料」は、生体試料のリボ核酸(RNA)調製物である。それは、成熟mRNAだけでなく、RNAプロセシング中間体および発生期の前mRNA転写産物も含む。例えば、ポリ(T)カラムで精製された総mRNAは、ポリ(A)テールを有するRNA分子を含む。それらのポリA+RNA分子は、成熟mRNA、RNAプロセシング中間体、発生期の転写産物または分解中間体でもよい。
【0006】
本明細書で用いる「核酸」は、任意のDNAまたはRNAまたはDNA/RNAハイブリッド分子などの、一本鎖または二本鎖の形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのポリマーを指す。この用語は、それらに限定されないが、ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA、プラスミドDNA、葉緑体DNA、cDNA、増幅されたDNAもしくはRNA断片、総RNA、メッセンジャーRNA、核内低分子RNAを含む、任意のDNAを指す。
【0007】
「オリゴヌクレオチド」は、長さが2から約1000のヌクレオチド、より一般的には長さが2から約500のヌクレオチドの一本鎖核酸である。それは、「ロック核酸」分子(LNA)を含むこともできる。
【0008】
「LNA」は、リボース糖のフラノース環が、O2’,C4’−メチレン橋の導入によってRNAを模倣する高次構造に化学的に閉じ込められる結果、相補的DNAおよびRNA分子に対する先例のないハイブリダイゼーション親和性がもたらされる、二環式の高親和性RNA類似体を指す。短いLNA改変オリゴヌクレオチドの熱安定性および改善されたミスマッチ識別により、それらは、一塩基多型(SNP)遺伝子タイピングアッセイ、アンチセンスベースの遺伝子抑制および遺伝子発現プロファイリングに役立つようになった。
【0009】
「標的核酸」は、相補的オリゴヌクレオチドプローブが特異的にハイブリダイズする核酸(しばしば、生体試料から導かれ、したがって核酸試料とも称される)を指す。標的核酸は、任意の核酸供給源(例えば、それらに限定されないが、化学合成、増幅反応、法医学試料、その他)に由来するものとすることができる。検出するのは1つまたは複数の標的核酸の存在または非存在であり、または、定量するのは1つまたは複数の標的核酸の量である。検出する標的核酸は、それらが特異的に結合(ハイブリダイズ)する対応するオリゴヌクレオチドプローブの核酸配列に相補的であるヌクレオチド配列を優先的に有する。用語標的核酸は、プローブが特異的にハイブリダイズするより大きな核酸の特定の部分配列、または、その存在度(濃度)および/または発現レベルの検出が望まれる全体の配列(例えば遺伝子またはmRNA)を指すことができる。この定義の他の変形形態は、当分野の技術者に公知である。
【0010】
「プローブ」は、相補的塩基対形成、通常水素結合形成を通して相補的配列の標的核酸と結合する核酸を指す。本明細書で用いるように、オリゴヌクレオチドプローブには、当業者に公知のように、天然塩基(すなわち、A、G、CもしくはT)または修飾塩基(例えば、それらに限定されないが、7−デアザグアノシン、イノシン、その他)が含まれてもよい。さらに、オリゴヌクレオチドプローブ中の塩基は、それがハイブリダイゼーションを妨害しない限り、ホスホジエステル結合以外の結合で結合してもよい。ゆえに、オリゴヌクレオチドプローブは、構成塩基がホスホジエステル結合ではなくペプチド結合により結合するペプチド核酸であることができる。特定の転写産物の発現は、複数のプローブ、一般的に、5、10、15、20、30または40個のプローブによって検出することができる。各プローブは、転写産物の異なる小領域を標的にすることができる。しかし、プローブは標的領域上で重なってもよい。プローブは、マサチューセッツ工科大学(MIT)からのPrimer3などの選択プログラムを用いて選択または設計することができる。本発明によると、プローブは3’もしくは5’末端で、またはオリゴヌクレオチドの中央で、元素タグで標識されてもよい。一実施形態では、プローブは末端の1つを通して、支持体に固定化される。プローブの他の例は、当分野の技術者に公知である。
【0011】
「支持体」は、例えば、それらに限定されないが、ピロール−2,5−ジオン(マレイミド)、スルホン酸アニオンまたはp−(クロロメチル)スチレンによって官能化された表面である。支持体は、例えば、合成膜、ビーズ(ポリスチレン、アガロース、シリカ、その他)、プラスチックマイクロウェルの平面、ガラススライド、反応管、その他であることができる(これらに限定されない)。支持体の機能は、プローブまたは標的分子の結合のための固相の働きをすることである。当業者に公知であるこの定義の他の変形形態において、支持体は、2つの異なる物質の状態、すなわち、液体および固体、固体および固体、液体および液体、液体および気体、気体および固体、その他の間の任意の表面を意味する。
【0012】
「支持体と結合した」は、共有結合、水素結合、イオン相互作用、疎水性相互作用による結合、または、支持体、例えばビーズと結合したリガンド結合分子との特異的相互作用のためのオリゴヌクレオチドプローブの末端に結合した特異的リガンドを用いた結合を含めて、それと直接的または間接的に結合したことを意味する。例えば、そのようなシステムには、プローブがビオチン部分を運び、支持体がストレプトアビジンでコーティングされる、ビオチン−ストレプトアビジンが含まれてもよい。支持体へのオリゴヌクレオチドプローブの共有結合性化学結合は、アミドリン酸エステル結合を通して、核酸上の5’リン酸からコーティングされた支持体へかけて達成することができる。支持体への結合は、プローブの二本鎖部分および標的の間に空間を提供するための、スペーサー分子によって達成することができる(Lockhart, D. J., Chee, M., Dunderson, K., Lai, C., Wodicka, L., Cronin, M. T., Lee, D., Tran, H. M., Matsuzaki, H., Gall, G. H., Barone, A. D., Mcgall, G. H., Chaoqiang, L., and Lee, D. H. Identifying differences in nucleic acid levels between samples - using arryays comprising probe oligo:nucleotide(s) which can form hybrid duplexes with nucleic acids in the samples. AFFYMETRIX INC, Lockhart, D. J., Chee, M., Guderson, K., Lai, C., Wodiccka, L., Cronin, M. T., Lee, D. H., Tran, H. M., Matsuzaki, H., Mcgall, G. H., and Barone, A. D. [特許文献1−9]参照)。支持体へのオリゴヌクレオチドの固定化のためのそのような方法は、当技術分野で確立されている(非特許文献1−3参照)。当業者に公知であるこの定義の他の変形形態において、支持体への結合は、2つの異なる物質の状態、すなわち、液体および固体、固体および固体、液体および液体、液体および気体、気体および固体、その他の間の境界への機能的結合を意味する。
【0013】
「元素標識されたビーズ」は、1つもしくは多くの同位体を有する元素または多数の元素を機能的に組み込むかまたは吸収する、一種の支持体ビーズ(例えば、それらに限定されないが、ポリスチレン、アガロース、シリカ、その他)である。関連する技術分野の技術者に公知であるように、元素は化学種(chemical moiety)の原子的部分であることができる。
【0014】
「特有に標識されたビーズ」は、元素分析により、1種の元素で標識された1種のビーズを他の任意の種類の前記元素と識別可能であるようにビーズに吸収させた、1つまたは複数の元素の1つまたは複数の同位体の多数の原子の物理的実体を指す。特有に標識された支持体のそれぞれは、特定の標的核酸と特異的にハイブリダイズすることができる類似したまたは異なる多数のオリゴヌクレオチドを有する。
【0015】
「元素タグ」は、支持体分子構造に結合した1つまたは多くの同位体を有する1つの元素原子または多数の元素原子を含む化学種である。元素タグは、タグを基質に結合する手段も含み、その例には、(それらに限定されないが)ピロール−2,5−ジオン(マレイミド)、スルホン酸アニオンまたはp−(クロロメチル)スチレン(チオールに対しては、それぞれN末端またはC末端)が含まれてもよい。元素タグは、その元素組成または同位体組成が他のタグと異なるので、同じ試料中の他の多数の元素タグと識別可能であり得る。
【0016】
「遷移元素」は、以下の原子番号、21〜29、39〜47、57〜79および89を有する任意の元素を意味する。遷移元素には、希土類元素、ランタニドおよび貴金属が含まれる。(Cotton and Wilkinson、1972)。
【0017】
「親和性生成物」または「親和性試薬」は、それぞれの標的分子(ペプチド、抗原、小分子、その他)と高特異的非共有結合を形成することが公知である生体分子(抗体、アプタマー、レクチン、配列特異的結合ペプチド、その他)を指す。特有の元素タグで標識された親和性試薬は、独特(unique)であり、かつ同じ試料中の他の多数の元素タグと識別可能である元素タグで標識された親和性生成物である。
【0018】
「特異的にハイブリダイズする」は、あるいは、その配列が複合混合物(例えば全細胞)のDNAまたはRNAに存在する場合の、ストリンジェント条件下での特定のヌクレオチド配列との核酸分子の優先的な結合、二重化またはハイブリダイゼーションを指す。ハイブリダイゼーション条件の最適化は当分野の技術者に公知であり、特許文献15にレビューされている(Rosenberg, M., Debouck, C., and Bergsma, D. Methods and compsns. For identifying genes which are differentially expressed - in a normal healthy animal and an animal having a selected disease or infection. SITHKLINE BEECHAM CORP.[特許文献10−12]参照)。用語「ストリンジェント条件」は、プローブがその標的部分配列に優先的にハイブリダイズし、他の配列にはより小さい程度でしか、または全くハイブリダイズしない条件を指す。ストリンジェント条件は配列依存性であって、異なる状況では異なる。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。一般的に、ストリンジェント条件は、短いプローブ(例えば10から50個のヌクレオチド)については、pHが7.0から8.3で塩濃度が少なくとも約0.01から1.0MのNa+(または他の塩)であり、温度が少なくとも約30℃であるものである。当業者に公知であるように、ストリンジェント条件は、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加で達成することもできる。
【0019】
「in situハイブリダイゼーション」は、相補的な一本鎖核酸プローブおよび内因性の標的の間のハイブリダイゼーション反応が、標的核酸の精製を伴わない特別調製の細胞または組織学的切片中で実施されるハイブリダイゼーション技術を指す。
【0020】
「バックグラウンド信号強度」は、標的核酸および標識オリゴヌクレオチド(例えば、オリゴヌクレオチドプローブ、対照プローブ、その他)の間の非特異的結合または他の相互作用から生じるハイブリダイゼーションシグナルを指す。
【0021】
「ミスマッチプローブ」は、プローブの目標とされる標的以外の試料中の核酸との非特異的結合またはクロスハイブリダイゼーションのための対照を提供する。
【0022】
「オリゴ(dT)n元素タグ」は、オリゴ(dT)−LNA複合体の場合のように、(n)個のデオキシチミジン三リン酸ヌクレオシドおよび追加のヌクレオシドを含む金属標識オリゴヌクレオチドであり、mRNAのポリアデニル化領域のためのハイブリダイゼーションプローブとして用いられる。デオキシチミジン三リン酸ヌクレオシドの数は、約6から約50の範囲内であることができる。
【0023】
「元素分析」は、試料をその元素組成および、ある場合には同位体組成について分析する方法である。元素分析は、いくつかの方法、例えば、原子の外部電子構造を精査するフレーム原子吸光、黒鉛炉原子吸光および誘導結合プラズマ原子発光などの光学原子分光学;原子の質量を精査する誘導結合質量分析などの質量分析原子分光学;蛍光X線分析、荷電粒子励起X線分析、X線光電子分光および原子の内部電子構造を精査するオージェ電子分光法によって達成することができる。
【0024】
「元素アナライザー」は、元素分析方法の1つを使用する、試料の原子組成の定量化のための機器である。
【0025】
「粒子元素」分析は、液体中に分散した粒子(例えば、緩衝液中のビーズ)で構成される分析試料を、個別粒子について(例えば、ビーズ別に)原子組成を記録するように調べる方法である。分析機器の例は、質量分析計ベースのフローサイトメーターである。
【0026】
「溶液元素分析」は、分析試料を、原子組成を試料の全量で平均するような方法で調べる方法である。
【0027】
「内部標準」は、未知試料に加えられる、分析物と異なる既知の量の化合物と定義される。分析物からのシグナルを内部標準からのシグナルと比較し、分析物の存在量を見いだす。質量分析定量化を実施するときに、内部標準を用いることができる。内部標準は、当業者に公知である他の手段によって用いることもできる。
【0028】
「固定および透過化」は、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、ホルマリン、エタノール、メタノール、その他などの剤による細胞成分の化学的架橋、および、界面活性剤による細胞膜の穴形成を指す。適当な界面活性剤は、非イオン性界面活性剤の中から容易に選択することができる。望ましくは、これらの界面活性剤は、約0.001%から約0.1%の濃度で用いられる。用いることができる一の界面活性剤は、トリトンX−100(Sigma T9284)である。他の適当な界面活性剤の例には、IgepalおよびNonidet P−40が含まれる。他の適当な界面活性剤は、当業者が容易に選択することができる。
【0029】
ヒトゲノム解析計画は、多種類のヒト疾患の診断および治療の助けとなる豊富な遺伝子配列情報へのアクセスを開放した。しかし、医療における遺伝子プロファイリングは、既存の方法の微調整および感度の良い頑健な新技術の導入を必要とする。何千もの遺伝子を一斉に監視するためのゲノムスクリーニング法には、DNAマイクロアレイ、ディファレンシャルディスプレイおよび遺伝子発現の連続分析(SAGE)のような技術が含まれる。全てのアレイの基本原理は、試料RNAから生成された蛍光またはビオチン標識cRNAまたはcDNA種の、固体支持体に結合したオリゴヌクレオチドまたは相補的DNA分子とのハイブリダイゼーションである。現在、遺伝子チップアレイが、用いられる主なプラットホームであり、そこでは、スライドグラス表面が基質であり、蛍光が検出方法である(非特許文献4−6、Wang, D., Li, G., Ma, X., Liu, C., Zhou, Y., and Cheng, J. Detecting a target nucleic acid molecule, for use in clinical diagnosis, comprises incubating the cell lysate, without nucleic acid purification, with a nucleic acid probe, allowing hybridization. UNIV QINGHUA and CAPITAL BIOCHIP CO LTD. [特許文献13−15]参照)。平面マイクロアレイに代わるものは、Luminex、BD Biosciences、Illuminaおよび他の多くのものによって開発されているビーズアレイである。マイクロスフェアアレイは、ビーズに異なる比率の蛍光染料もしくは量子ドットの組合せを含浸させることによって、または、ビーズ表面に物理的にバーコードをエッチングすることによって作製される(非特許文献7参照)。マイクロアレイは、基本的に個々の多くの細胞からの累積シグナルを表し、単細胞に関する情報の消失を含む。異種細胞集団から得られるゲノム情報が特定の癌細胞の遺伝子プロフィールに干渉するので、試料の調製および普遍的な標準品が重要である。
【0030】
DNA診断法は、アッセイの感度および特異性を高めるために、通常、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または他の類似した増幅技術による標的配列の増幅を含む。PCR方法(Mullis, K. B., Arnheim, N., Siki, R. K., Erlich, H. A., Horn, G. T., Scharf, S. J., Banks, Mullis, K., and Keichi, Saiki R. Process for amplifying detecting or cloning nucleic acid sequences - useful in disease diagnosis and in prepn. Of transforming vectors. CETUS CORP, HOFFMANN LA ROCHE & CO AG, and HOFFMANN LA, R. O. C. H. [特許文献16−48]参照)においては、標的配列の反対側の相補鎖の上の領域に相補的な2つのプライマー配列を調製する。過剰なデオキシヌクレオシド三リン酸を、耐熱性のDNAポリメラーゼ(例えばTaqポリメラーゼ)とともに反応混合物に加える。標的配列が試料中に存在する場合、プライマーは標的に結合し、ポリメラーゼは、ヌクレオチドを付け加えることによって標的配列に沿ってプライマーを伸長させる。反応混合物の温度を上下させることによって、伸長したプライマーの反応生成物は標的から解離し、新しい標的になる。過剰なプライマーが標的および反応生成物に結合し、この過程は繰り返される。
【0031】
単細胞内の核酸の多重化検出のためにいくつかの方法が存在するが、それらは、現在、定量化を大量の多重化と組み合わせていない。半定量的in situハイブリダイゼーション組織化学(ISH)は、単細胞で特定のRNA配列の存在を検出し、その相対的存在度を推定するために用いられる技術である(非特許文献8および9参照)。シグナルの可視化は、通常、色素生産性基質または蛍光色素によって達成され、多重化には容易に適合しない。細胞遺伝学者は、固定された生物構造および生細胞の両方でハイブリダイゼーションにより相補的配列を視覚化するために蛍光標識核酸を用いる、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)と呼ばれる独特の染色体特性評価方法も開発した(非特許文献10−12参照)。RNA FISHは、細胞の区画内でその転写部位へのmRNAの位置を特定することが目的である。高度コンピュータ蛍光顕微鏡検査法および多重オリゴマーDNAプローブを使用するLevskyおよび同僚による研究(非特許文献13参照)は、in vitro培養細胞の核内で11個の遺伝子の同時FISHプロフィールを生成する実現可能性を証明した。さらに、経時ビデオ顕微鏡検査を用いて、生細胞で誘導可能な転写部位のアレイ、mRNA合成およびタンパク質生成物を視覚化することが可能であった(非特許文献14参照)。RNA種の定量分析のために、フーリエ分光法に基づくスペクトルの画像化(SIm)が提案された(非特許文献15参照)。RNAの相対量は、異なるチロシンキナーゼ遺伝子に特異的な6個の特有に標識されたcDNAプローブとハイブリダイズさせることによって検出され、スペクトル画像は、予め記録した参照スペクトルおよびデコンボリューションソフトウェアを用いて分析した。フローサイトメトリーと組み合わせた定量的蛍光in situハイブリダイゼーション(Q−FISH)はフロー−FISHと呼ばれ、常用分析および迅速分析のために最適化された条件を用いる、白血病細胞系でのテロメア長の研究にも適用された(非特許文献16参照)。
【0032】
ゆえに、単細胞での遺伝子およびタンパク質発現分析のための非常に高感度の、定量的および多重システムの開発は、分子的研究および診断のための捉えどころのない目標のままである。目的特異的試薬と組み合わせ元素分析は、この目標を達成する可能性を有する。
【0033】
マイクロスフェアまたはビーズは、イムノアッセイの界面化学を支持するための魅力的な選択肢である。96ウェルプレートに準じた方法で、様々な組成物、コーティングまたはコンジュゲート群を構築するかまたは加え、必要とされる界面化学を提供することができる。マイクロスフェアの利点の1つは、反応混合物の容積あたりの反応表面積を増加させる能力であり、そのことは、イムノアッセイの能力およびダイナミックレンジポテンシャルを高める信頼できる手段を提供する。下記の実施例では、イムノアッセイをICP−MS検出と結合した(非特許文献17参照)。当初多重パラメータ細胞分析のために開発されたフローサイトメトリーも、マイクロスフェアの表面にコンジュゲートした抗原およびオリゴヌクレオチドプローブを検出するために広く使われる(非特許文献18参照)。
【0034】
蛍光色素発光検出に基づく従来のマイクロスフェア技術は、ゲノムおよびプロテオームの機能を精査する手段として、大きな将来性を有すると考えられる。特有に標識されたビーズの粒子元素分析は、遺伝子発現研究、臨床診断および癌研究に革命をもたらす準備が整っている。埋め込まれた金属を有するポリスチレンビーズを、薄いポリシラン層でコーティングして、結合相クロマトグラフィーで通常用いられる元素リーチングを予防する。ポリスチレンビーズは、スチレンをモノマーとして、過硫酸カリウムまたはベンゾイルペルオキシドを重合剤とする従来の乳化重合によって調製する。対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(相補的プローブ)を、共有結合的に表面に固定化する。粒子は、同じ遺伝子のために、1つまたは複数(非特許文献5参照)の異なる相補的オリゴヌクレオチドプローブを運ぶことができる。ハイブリダイゼーションは、標的識別のために元素タグが添加される生体試料(標的遺伝子)から単離されたmRNAまたはPCR生成物で実施される。粒子は、1つずつフロー−元素分析、例えばフロー−ICP−MSにかけて、粒子カテゴリーを特定し、遺伝子発現レベルを定量する。1元素(Eu)を吸収させ、カルボキシル残基で誘導体化したマイクロスフェアがSeradyn社から入手可能であり、出願人の教示で原理実験の証明として試験される。元素の化学的性質はICP−MSによるその検出にとって重要ではないので、元素タグのための要件は蛍光タグに対するものに比較して緩和されている。この方法の原理は、元素タグが、再現性のある、好ましくは、多くの数の原子の所与の同位体を含有することを必要とする。組み込まれる同一の原子の数の再現性は定量分析の基本であり、それらの原子の数の増加は感度を直線的に向上させる。
【0035】
新規フローベースのICP−MS機器を、粒子元素分析による単一の白血病細胞の遺伝子発現プロファイリングのために用いることができる。この目的のために、豊富なmRNA種をin situハイブリダイゼーションによって検出することができる。多重化は、ICP−MS機器によって特異的に特定することができる異なる希少金属元素タグでオリゴヌクレオチドプローブを標識することによって達成することができる。RNA検出の感度は、転写産物につき3から8個のオリゴヌクレオチドプローブを用い、各プローブは所与の元素の複数のタグで標識することによって改善することができる。いくつかの遺伝子による多重化実験の前に、各転写産物を別々にハイブリダイズして、発現レベルが多重化とは無関係にあることを保証する。個々の細胞は、約10,000種のmRNAを発現し、総RNA量が約1〜10pgであると推定される。白血病患者試料では、中程度に豊富な転写産物は1細胞につき20から100コピー数であり、非常に豊富なものは1000コピー数を超える融合転写産物である。フロー−ICP−MSによる単細胞RNAプロファイリングと前に実施したマイクロアレイ分析との直接比較は、新規方法を検証する役目を果たすことができる。対象の遺伝子の選択は、NCBI(非特許文献19)、Integrated Molecular Analysis of Genomes and their Expression(IMAGE)ConsortiumおよびThe Institute for Genomic Research(非特許文献20)などの公開されているデータベースの助けを借りて実施することができる。さらに、元素タグ付き相補的オリゴヌクレオチドを用い、均一な細胞試料(培養細胞系、ブラスト危機の患者からの白血病試料)で実施されるin situハイブリダイゼーションを溶液ICP−MSによって分析し、試料全体で平均した平均遺伝子発現プロフィールを判定することができる(略図を図2Aで示す)。
【0036】
ビオチンで標識したいくつかの白血病関連遺伝子(G−CSF受容体、Bax、Bcl−2、c−Fos、その他)に対する既製のcDNAハイブリダイゼーションプローブが、市販元(Maxim Biotech社、GeneDetect社)および研究室から得ることができる。オリゴヌクレオチドプローブは、融点(Tm)、50%G+C含量、プローブの所望の長さなどの、当業者に公知である最適なハイブリダイゼーションパラメータを有する配列を選択する、ソフトウェアアルゴリズム(市販および公開されている)を用いて設計される。選択過程では、プローブの間のヘアピン構造および二量体の形成を最小にし、他の標的配列との交差相同性を減少させる試みがなされる。オリゴヌクレオチドは、当技術分野で公知である標準の方法によって、例えば、自動DNA合成装置(例えば、Biosearch、Applied Biosystems、その他から市販される)の使用によって合成することができる。例として、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、Steinら(非特許文献21参照)の方法によって合成することができる。出願人の教示では、カルボキシルまたはアミノアリルで改変したオリゴヌクレオチドは、官能化学を通して元素タグまたは特有に標識された支持体、例えばビーズに結合することができる。DNA鎖の5’末端に官能基を置き、適当な試薬を用いて改変DNAを特異標識支持体、例えばビーズの表面に結合することは、支持体への核酸の共有結合を可能にする。例えば、アミンタグ付きDNAをカルボキシル改変粒子に結合するために、カルボジイミド(EDC)化学を用いることができる。
【0037】
【特許文献1】欧州特許出願公開第880598号明細書
【特許文献2】国際公開第97/27317号パンフレット
【特許文献3】オーストラリア特許出願公開第9722533号明細書
【特許文献4】米国特許第6344316号明細書
【特許文献5】特表2002−515738号公報
【特許文献6】米国特許出願公開第2003/64364号明細書
【特許文献7】米国特許第658711号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2005/158772号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2005/191646号明細書
【特許文献10】国際公開第95/21944号パンフレット
【特許文献11】欧州特許出願公開第743989号明細書
【特許文献12】特表平9−508800号公報
【特許文献13】国際公開第2005/017193号パンフレット
【特許文献14】オーストラリア特許出願公開第2003257371号明細書
【特許文献15】カナダ特許出願公開第1580283号明細書
【特許文献16】欧州特許出願公開第200362号明細書
【特許文献17】特公平04−067957号明細書
【特許文献18】特公平04−067960号明細書
【特許文献19】欧州特許第200362号明細書
【特許文献20】オーストラリア特許出願公開第8655322号明細書
【特許文献21】オーストラリア特許出願公開第8655323号明細書
【特許文献22】特開昭61−274697号公報
【特許文献23】特開昭62−000281号公報
【特許文献24】デンマーク特許出願公開第8601448号明細書
【特許文献25】デンマーク特許出願公開第8601449号明細書
【特許文献26】米国特許第4683195号明細書
【特許文献27】米国特許第4683202号明細書
【特許文献28】スペイン特許公開第8706822号明細書
【特許文献29】スペイン特許公開第8706823号明細書
【特許文献30】南アフリカ共和国特許公開第8602334号明細書
【特許文献31】南アフリカ共和国特許公開第8602335号明細書
【特許文献32】スペイン特許公開第8800356号明細書
【特許文献33】スペイン特許公開第8800357号明細書
【特許文献34】カナダ特許出願公開第1237685号明細書
【特許文献35】米国特許第4800159号明細書
【特許文献36】米国特許第4683202号明細書
【特許文献37】イスラエル特許出願公開第78281号明細書
【特許文献38】カナダ特許第1291429号明細書
【特許文献39】イスラエル特許出願公開第78284号明細書
【特許文献40】独国特許第3687537号明細書
【特許文献41】特開昭60−07166号公報
【特許文献42】デンマーク特許第171160号明細書
【特許文献43】デンマーク特許第171161号明細書
【特許文献44】特許第24546576号明細書
【特許文献45】アイルランド特許第83456号明細書
【特許文献46】アイルランド特許第83464号明細書
【特許文献47】米国特許第4683195号明細書
【特許文献48】カナダ特許第1340121号明細書
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【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
本発明は、何十万ものmRNA分子の迅速分析において、より高い感度および正確度を提供する。それは、mRNA標的の蛍光標識化を排除することによって、遺伝子発現レベルの検出の向上した効率および正確度をさらに提供し、同時に生体試料でRNAレベルの定量的なハイスループット測定を確実にする。本発明は、他の核酸、例えばゲノムDNAを検出するために用いることもできる。例えば、単一のDNA鎖を一方の端の元素タグに結合させ、全分子を、特有に標識された支持体(例えばビーズ)に連結した相補的オリゴヌクレオチドとハイブリダイズさせる。
【課題を解決するための手段】
【0039】
出願人の教示のこれらおよび他の特徴は、本明細書で示される。
【0040】
出願人の教示の一態様は、細胞分析のための方法であって、(a)細胞または細胞性粒子を提供するステップと、(b)細胞または細胞性粒子を固定するステップと、(c)細胞または細胞性粒子を標的核酸に特異的なプローブと一緒にハイブリダイゼーション溶液中でインキュベートするステップであって、前記プローブは特有の元素タグで標識され、前記タグの1種で標識された前記プローブの1種が、異なる種類の前記タグで標識された他の任意の種類の前記プローブと元素分析によって識別可能であるステップと、(d)ストリンジェントな洗浄条件によって、ハイブリダイズしなかったプローブを、標的核酸にハイブリダイズしたプローブから分離するステップと、(e)細胞または細胞性粒子を元素分析によって分析して、プローブを特定し、標的核酸に結合したプローブを定量化するステップとを含む方法を提供することである。特異的な元素タグで標識した2つ以上の特異的なプローブを、2つ以上の標的核酸とハイブリダイズさせることができる。標的核酸は、細胞内核酸分子、マトリックスRNA、マイクロRNA、遺伝子転写物前駆体RNA、メッセンジャーRNA、トランスポートRNA、リボソームRNA、染色体DNA、ミトコンドリアDNA、葉緑体DNA、ウイルスDNA、ウイルスRNA、細菌DNA、細菌RNAおよびプラスミドDNAからなる群から選択することができる。本方法は、表面および/もしくは細胞内タンパク質分子、表面および/もしくは細胞内脂質分子、表面および/もしくは細胞内多糖類分子、ならびに/または表面および/もしくは細胞内小分子の同時分析をさらに含むことができる。小分子は、ビタミン、ホルモン、ハプテンおよびヌクレオシド(例えばATP、ADP、環状AMPおよびNADH)からなる群から選択することができる。
【0041】
上の態様に加えて、細胞または細胞性粒子は、表面または/および細胞内分子に特異的な親和性試薬と反応させ、前記親和性試薬は、元素タグの1種で標識された前記親和性試薬の1種が他の任意の種類の前記タグと元素分析によって識別可能であるように、支持体分子構造に結合した1つまたは複数の元素の1つまたは複数の同位体の多数の原子の化学種を含む元素タグで標識され、その後、結合した親和性試薬から未結合の親和性試薬を分離することができる。表面または/および細胞内分子は、タンパク質、脂質、多糖類および/または小分子とすることができる。親和性試薬は、抗体、アプタマー、レクチンおよび小分子からなる群から選択することができる。細胞は、動物、植物、細菌または真菌の全細胞とすることができる。細胞性粒子は、単離染色体、単離核、単離ミトコンドリア、単離葉緑体、単離ウイルスおよび単離細菌からなる群から選択することができる。プローブは、オリゴヌクレオチドプローブ、ロックド核酸(LNA)分子、ペプチド核酸(PNA)分子、プラスミドDNA、増幅DNA、増幅、RNA断片およびゲノムDNA断片からなる群から選択することができる。
【0042】
出願人の教示の他の態様は、生体分子の均質分析(homogenous analysis)のための方法であって、(a)元素タグで標識された親和性試薬及び特有のタグ付き粒子とともに生体分子をインキュベートするステップであって、親和性試薬と生体分子との結合を可能にする条件下、前記タグの1種で標識された特前記粒子の1種が、他の種類の前記タグで標識された他の任意の種類の前記粒子と元素分析によって識別可能であるステップと、(b)結合した生体分子を有する粒子を未結合の粒子から分離するステップと、(c)結合粒子を粒子元素分析で測定するステップであって、粒子を液体中に分散させて個別粒子の原子および同位体の組成を定量的に測定し、それによって前記粒子に結合した生体分子の種類および数が検出されるステップとを含む方法を提供することである。粒子は、ビーズとすることができる。生体分子は、組織試料または細胞試料からのものでよい。試料は、動物試料、植物試料、細菌試料および真菌試料からなる群から選択してもよい。生体分子は、mRNA、タンパク質、脂質、多糖類および小分子からなる群から選択することができる。生体分子と親和性試薬との結合は、特有のタグ付きマイクロスフェアに結合したオリゴヌクレオチドとmRNA分子とのハイブリダイゼーションを含むことができる。オリゴヌクレオチドは、いくつかのデオキシチミジン三リン酸ヌクレオシドと、特有のタグ付きマイクロスフェアに結合した相補的核酸プローブとを含むことができる。相補的核酸プローブは、オリゴヌクレオチド、LNA、PNAおよびプラスミドDNAからなる群から選択することができる。生体分子は、タンパク質、脂質、多糖類および小分子からなる群から選択することができ、それらは、特有のタグ付きマイクロスフェアに結合した元素タグ付き親和性試薬と結合する。親和性試薬は、抗体、アプタマーおよびレクチン、核酸、結合ペプチド、タンパク質受容体およびリン脂質からなる群から選択することができる。
【0043】
出願人の教示の他の態様は、試料中の元素の検出および測定のためのキットであって、測定される元素は、対象の核酸に相補的な特異的プローブに結合した元素タグであり、(a)相補的プローブを直接的にタグ付けするための元素タグと、(b)相補的プローブとを含むキットである。キットは、i)プローブを元素タグで直接的にタグ付けし;ii)細胞または細胞性粒子を固定および透過化し;iii)細胞または細胞性粒子を元素タグ付きプローブと一緒にハイブリダイゼーション溶液中でインキュベートし;iv)結合したプローブを未結合のプローブから分離し;v)ハイブリダイズした物質を有する細胞または細胞性粒子を溶解し;vi)元素タグ付きプローブを検出および測定するための説明書をさらに含むことができる。検出および測定は、容積元素分析または粒子元素分析によって行うことができる。
【0044】
出願人の教示の他の態様は、試料中の元素の検出および測定のためのキットであって、測定される元素は、対象の核酸に相補的な特異的プローブに結合した元素タグであり、(a)元素タグでタグ付けされる相補的プローブ、を含むキットを提供することである。キットは、i)細胞または細胞性粒子を固定および透過化し;ii)細胞または細胞性粒子を元素タグ付きプローブと一緒にハイブリダイゼーション溶液中でインキュベートし;iii)結合したプローブを未結合のプローブから分離し;iv)ハイブリダイズした物質を有する細胞または細胞性粒子を溶解し;v)元素タグ付きプローブを検出および測定するための説明書をさらに含むことができる。
【0045】
上記のキットは、多数の核酸と相補的な多数の特異的プローブと、各種類のプローブを特有に標識するための多数の特有の元素タグとをさらに含むことができる。上記のキットは、(a)タンパク質、脂質、多糖類および小分子からなる群から選択される細胞内または細胞外の生体分子のための親和性試薬と、(b)生体分子のための親和性試薬を標識するための元素タグとをさらに含むことができる。キットは、(i)生体分子のための親和性試薬をタグ付けし;(ii)細胞または細胞性粒子を生体分子のための親和性試薬と一緒にインキュベートし;(iii)結合した生体分子のための親和性試薬を未結合の生体分子のための試薬から分離し;(iv)結合した生体分子のための試薬を検出および測定するための説明書を含むことができる。最後に、キットは、多数の生体分子に特異的な多数の試薬と、各種類の生体分子のための各種類の親和性試薬を特有に標識するための多数の元素タグとを含むことができる。
【0046】
出願人の教示の他の態様は、元素の検出および測定のためのキットであって、測定される元素は、識別可能な元素標識された粒子に結合したオリゴ(dT)nに結合した元素タグであり、(a)オリゴ(dT)nを直接的にタグ付けするための元素タグと、(b)オリゴ(dT)nと、(c)多数の識別可能な元素標識された粒子と、(d)多数の相補的プローブとを含むキットを提供することである。キットは、i)多数の相補的プローブを識別可能な元素標識された粒子に直接的に結合させ;ii)核酸の精製を実施し;(iii)元素タグをオリゴ(dT)nに結合させ;iv)相補的プローブを元素タグ付きオリゴ(dT)nと反応させ;v)識別可能な元素標識された粒子に結合した元素タグ付きオリゴ(dT)nに結合した相補的プローブを溶液中で標的核酸とハイブリダイズさせ;vi)結合した粒子を未結合の粒子から分離し;vii)結合した粒子を粒子元素分析によって検出および測定するための説明書をさらに含むことができる。粒子は、ビーズとすることができる。多数の相補的プローブは、識別可能な元素タグで直接的にタグ付けすることができる。
【0047】
出願人の教示の他の態様は、元素の検出および測定のためのキットであって、測定される元素は識別可能な元素標識された粒子に結合したオリゴ(dT)nに結合した元素タグであり、(a)オリゴ(dT)nを直接的にタグ付けするための元素タグと、(b)オリゴ(dT)nと、(c)多数の識別可能な元素標識された粒子に結合した多数の相補的プローブとを含むキットを提供することである。キットは、i)核酸の精製を実施し;(ii)元素タグをオリゴ(dT)nに結合させ;iii)相補的プローブを元素タグ付きオリゴ(dT)nと反応させ;iv)識別可能な元素標識された粒子に結合した元素タグ付きオリゴ(dT)nに結合した相補的プローブを溶液中で標的核酸とハイブリダイズさせ;v)結合した粒子を未結合の粒子から分離し;vi)結合した粒子を粒子元素分析によって検出および測定するための説明書をさらに含むことができる。
【0048】
出願人の教示の他の態様は、元素の検出および測定のためのキットであって、測定される元素は、オリゴ(dT)nに結合した元素タグおよび相補的プローブに結合した特有に標識された粒子の元素であり、(a)元素タグで標識されたオリゴ(dT)nと、(b)多数の特有に標識された粒子に結合した多数の相補的プローブとを含むキットである。キットは、i)核酸の精製を実施し;ii)特有に標識された粒子に結合した相補的プローブを精製核酸とハイブリダイズさせ;iii)特有に標識された粒子を金属タグ付きオリゴ(dT)nと反応させ;iv)結合した粒子を未結合の粒子から分離し;v)結合した粒子の元素を粒子元素分析によって検出および測定するための説明書をさらに含む。
【0049】
さらなる態様において、粒子は固体支持体で置換することができる。例えば、支持体は平らな(例えばガラスもしくはプラスチック)プレート、ウェルプレート、プローブ(試料中に挿入されたもの)または他の固体材料でもよいであろう。この場合、その位置(プレートまたはウェルプレート上の)がそれに結合した相補的プローブの同一性を示すことができるであろうから、固体表面は必ずしも元素標識する必要はない。説明書は上記の(i)から(v)と同様であるが、この場合、オリゴ(dT)nに結合した元素だけを測定する。
【0050】
上記のキットは、解離溶液、核酸結合膜を有するスピンカラム、生体試料からの核酸の単離および精製のための精製カラム、精製核酸の増幅のための試薬および溶液、標準、希釈緩衝液、解離緩衝液、洗浄緩衝液、ハイブリダイゼーション緩衝液ならびにアッセイ緩衝液からなる群から選択される、試薬および装置をさらに含むことができる。内因性の核酸は、形態学的に無傷の細胞で、in situで増幅することができる。元素は、質量分析計を用いて測定することができる。元素は、同位体またはイオンであってもよい。元素は、遷移元素、貴金属、ランタニド、希土類元素、金、銀、プラチナ、ロジウム、イリジウムおよびパラジウムからなる群から選択することができる。元素には、複数の元素および/または複数の同位体および/または同位体の複数の原子が含まれてもよい。親和性生成物は、抗体、Fab’、アプタマー、抗原、ホルモン、成長因子、受容体、タンパク質および核酸からなる群から選択することができる。キットは、粒子元素分析のための説明書を含むこともできる。
【0051】
当業者は、以下に記す図面は図解だけが目的であることを理解するであろう。図面は、出願人の教示の範囲をいかようにも限定するものではない。本発明は、例示的であって限定的なものではない図面で図示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
本発明は、元素タグの使用を含む。出願人の教示の方法で使用する元素の選択は、好ましくは、調査試料中でのその自然存在度および、その元素が調査試料に毒性であるかどうかに基づいて選択される。
【0053】
遷移および希土類群のほとんどの金属は、出願人の教示での使用が予想される。細胞傷害性が低いかまたは無細胞傷害性であり、増殖培地および生体試料中の存在度が低い元素を選択することが賢明である。例えば、バナジウムおよび水銀はある細胞に毒性となりうるが、Fe、CuおよびZnは一部の細胞培地中に高濃度で存在することがある。他方、例えばPr、Ho、Tb、Laに対しては、哺乳動物細胞は通常十分耐えることができ、しかも環境中に豊富に存在しない。
【0054】
試料中に天然に存在する元素とタグ物質とを区別するために、タグ元素の普通でない同位体組成物を用いることができる。タグ元素の相対的な存在度が、所与の分析試料中の元素の相対的な存在度と十分に異なることが有利である。「十分に異なる」は、本発明の方法の下で、分析試料中に含まれるバックグラウンド元素を超えて標的元素タグを検出することが可能なことを意味する。実際、試料を分析するために有利に用いることができるものは、タグ付け用元素および試料マトリックスの元素間比の差である。
【0055】
分析の間に干渉シグナルを生成しない(すなわち、同じ質量を有することによる重複シグナルを有しない)、元素タグを選択することが可能である。したがって、1つの試料で2つ以上の分析的測定を同時に実施することができる。さらに、同じ原子の多くのコピーを含有する元素タグを作製することができるので、測定するシグナルを大幅に増幅することができる。
【0056】
出願人の教示の態様は、本教示の範囲をいかようにも限定するものと解釈されてはならない以下の実施例に照らして、さらに理解することができる。
【0057】
(実施例1)
ワークフローチャートを図5で提示する一実施形態では、ICP−MS検出のためのin situハイブリダイゼーションは、先ず、標的の染色体および染色体外の核酸を相補的プローブとのハイブリダイゼーションに利用できるようにするような方法で組織または細胞試料を処理し(固定/透過化処理);次に、試料を、異なる元素タグで標識し、対象の遺伝子に相補的なプローブまたは複数のプローブに曝露させ;第3に、試料を洗浄して過剰な未結合の非特異的に相互作用するプローブを除去し;最後に、試料を粒子または溶液元素分析にかけることによって実施される。
【0058】
(実施例2)
ICP−MSによる元素標識されたビーズ遺伝子分析(ワークフローチャートを図6で示す)のために、総RNAを生体試料から単離し、オリゴヌクレオチドプローブにコンジュゲートした特有に標識されたビーズとハイブリダイズさせ、元素タグ付きオリゴ(dT)20プローブを混合物に加え、最後に、ビーズを単一粒子ICP−MS分析にかける。
【0059】
当技術分野で公知である方法を用いて、総RNAを所与の試料から単離する。例えば、哺乳動物の組織からのRNAの単離のために、酸性のグアニジウム−フェノール−クロロホルム抽出方法を用いることができ、または、TRIzol試薬(GIBCOL Life Technologies)などの市販試薬を用いることができる。さらに、メッセンジャーRNAは、オリゴdTカラムクロマトグラフィーによって、または、(dT)n磁性ビーズを用いることにより単離することができる(例えば、Sambrook et al.(非特許文献22)、F.Ausubel et al.(非特許文献23)を参照)。都合のよいことに、総RNAは、例えば、RNeasy総RNA単離キット(QIAGEN)を用いて哺乳動物細胞から単離することができる。Rneasy総RNA単離キットを用いるTRIzol抽出のエタノール沈殿工程の後の第2のクリーンアップは、有益であることができる。1ラウンドのRNA増幅が、必要とされよう(Ambionキット)。これはアンチセンス(aRNA)プールを提供することを、当業者は理解する。アンチセンスRNAを標的核酸として用いる場合、オリゴヌクレオチドプローブは、アンチセンス核酸の部分配列に相補的なものが選択される。反対に、標的核酸プールがセンス核酸のプールである場合、オリゴヌクレオチドプローブは、センス核酸の部分配列に相補的なものが選択される。最後に、核酸プールが二本鎖である場合、標的核酸はセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含むので、プローブはセンスまたはアンチセンスのいずれかでよい。
【0060】
発現レベル対照は、生体試料で構成的に発現される遺伝子と特異的にハイブリダイズするプローブであり、標準化のために用いられる。構成的に発現される実質的にいかなる遺伝子も、発現レベル対照に適当な標的を提供する。一般的に、発現レベル対照プローブは、それらに限定されないが、β−アクチン遺伝子、転移受容体遺伝子、GAPDH遺伝子、HPRT、CPB、G6PD、28S rRNAなどを含む、構成的に発現される「ハウスキーピング遺伝子」の部分配列に相補的な配列を有する。
【0061】
本発明の方法は、細菌の同定、法科学および遺伝子およびタンパク質発現の同時分析のためのタンパク質検出と一緒に、核酸検出のために用いることができる。
【0062】
当業者に公知であるように、本方法は、ビーズまたは粒子の代わりに支持体を、例えばスライド、プレートまたはウェルを用いることもできる。
【0063】
この方法の変形形態では、生体分子(例えば、それらに限定されないが、タンパク質、脂質、多糖類)は、生体分子に対して「親和性試薬」でコーティングされた特有のタグ付き支持体と結合する元素タグで標識される特異的小分子(例えば、それらに限定されないが、薬剤、ホルモン、フェロモン、糖)と結合する。次に、支持体を元素分析によって分析して、前記生体分子と小分子(例えば、受容体結合の場合、成長因子)との反応を特定する。この場合、小分子は直接的にタグ付けされており、小分子分析物の認識は、元素標識されたビーズへの親和性試薬を通してのそれらの結合によるものであり、ビーズ元素のサインと小分子のタグサインとの併存は、小分子を確認および定量する。
【0064】
(実施例3)
他の実施形態では、第1の一連の実施例を、検出器として従来のICP−MS測定器を用い、および市販の金属(ランタニド)含有親和性試薬を用いて実施した。他の金属を用いることができること、および、元素分析のための他の機器を用いることができることを理解されたい。ヒト白血病細胞の特定の疾患関連遺伝子とin situでハイブリダイズするように設計されたビオチン化アンチセンスオリゴヌクレオチドプローブを使用した実験を用いた。プローブは、ランタニド標識ストレプトアビジンとの結合によって特定した(図2Aを参照)。
【0065】
ICP−MS検出でin situハイブリダイゼーションを実施することの可能性を、モデルヒト白血病細胞系で試験し、図1で示すように結果をフローサイトメトリーと比較した。実験は、その後ICP−MS遺伝子発現分析のために用いた懸濁細胞のための最適な固定および透過化条件およびin situハイブリダイゼーションパラメータを定めるために実施した。図1(凡例)で示すようにKG−1A細胞を固定し、次に、500ng/mlのビオチン化28S rRNAプローブ(5’−ビオチン−ATCCAACGCTTGGTGAATTC−3’、ヒト28SリボソームRNA GI:337381)またはナンセンスビオチン化プローブ(B/A;陰性対照)を有するハイブリダイゼーション溶液でインキュベートした。洗浄およびブロッキングの後、ストレプトアビジン−PerCP(ペリジンクロロフィル−aタンパク質で標識したストレプトアビジン)を加えた。図1Aは、FACSCalibur(BD Biosciences)フローサイトメーターで得られた蛍光強度のヒストグラムを示す。図1Bは、ICP−MS容量一括分析を示す。ハイブリダイズさせた細胞をストレプトアビジン−Tb(DELFIA)と反応させ、洗浄し、1ppbのIr(イリジウム内部標準)を含む濃HClで溶解した。フローサイトメトリー(FCM)およびICP−MSによって検出されるヒト28S rRNAには、明白なハイブリダイゼーションシグナルがある。ゆえに、金属で標識した第2の親和性試薬(ストレプトアビジン−Tb)を用いて、ICP−MSによって白血病細胞で非常に豊富な構成的転写産物を首尾よく特定するための実験条件を確立した。
【0066】
(実施例4)
次の実施形態は、ICP−MS検出によるin situハイブリダイゼーションが、中程度に豊富な白血病特異的遺伝子種を検出するのに十分高感度であることを証明する。この目的のために、b3a2遺伝子によってコードされるBCR/Abl発癌性キナーゼを発現することが知られているヒト慢性骨髄性白血病細胞系(K562)およびアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた。実験の概略図を図2Aに示す。我々は、5’−ビオチン化BCR/Abl特異的アンチセンスプローブ(BCR/ABL)、5’−ビオチン化28S rRNAプローブ(陽性対照)およびビオチン化ナンセンスプローブ(B/A)を用いて、K562細胞およびKG−1A細胞(急性骨髄性白血病モデル細胞系、BCR/Abl転写産物を発現しない)でb3a2融合遺伝子の発現を比較した。図1で記載されているように細胞を固定、透過化し、次に、別々の細胞試料を、ビオチン化BCR/Abl、28S rRNA、ナンセンスプローブまたはプローブなしを含有するハイブリダイゼーション溶液でインキュベートした。洗浄およびブロッキングの後、ストレプトアビジン−Tbを加えた。標識細胞をHCl/Irで溶解し、全試料(試料につき0.3e6 KG1a細胞および3e6 K562細胞)を従来のICP−MS機器による元素分析にかけた、溶液元素分析によって分析を行った。結果を図2Bに示す。左のグラフは、KG−1a細胞の28S rRNAのレベルは非常に高いが、BCR/Ablプローブからのシグナルはナンセンス(B/A)および陰性対照(ctrl)応答のレベルにあることを証明する。他方、K562細胞(図2Bの右のグラフ)は、BCR/Ablプローブと強くハイブリダイズし、その強さは28S rRNAとよりも約14倍弱い。ゆえに、ICP−MSは、K562細胞でBCR/Abl遺伝子レベルを確実に検出する。
【0067】
(実施例5)
他の実施形態では、粘着性A431ヒト表皮癌細胞を用いてin situハイブリダイゼーション実験を実施した。これらの細胞は、上皮成長因子受容体(EGFR)を過剰発現させることが知られている。細胞を組織培養グレードの96多重ウェルプレートに播種し、2日間付着および増殖させた(ウェルにつき約75e3細胞)。図1の凡例の方法(4)に従って細胞を固定、透過化し、洗浄し、ビオチン、28S rRNA、EGFR、D−サイクリンおよびB/Aで5’標識したアンチセンスオリゴヌクレオチドプローブとウェル内でハイブリダイズさせた。各プローブのために、3反復のウェルを設定した。プローブを、ストレプトアビジン−Tbと反応させた。洗浄後、細胞をHCL/Irで溶解し、溶液ICP−MSによって分析した。図3から明白であるように、A431細胞は大量のEGFR mRNA、相当低いレベルのD−サイクリン(全ての細胞が増殖したわけではない)を発現させ、陽性プローブ28S rRNAに対して頑健な応答を示す。
【0068】
(実施例6)
以下の実験は、同じ細胞でタンパク質および遺伝子の発現を同時に検出する出願人の教示の特異な能力を例示する(図7を参照)。この目的のために、高レベルのp210 BCR/Ablタンパク質を発現させるK562モデル細胞系を用いた。BCR/Ablタンパク質を認識する一次抗体(Cell Signalling Technol.社)またはアイソタイプ対照IgGを、PermFlow溶液(InVirion社)で固定、透過化した細胞に適用した。次に、細胞をPBSで洗浄し、二次的抗ウサギEuコンジュゲート体(DELFIA、Perkin Elmer)と反応させた(図4Bを参照)。免疫標識後、細胞をDAKO in situハイブリダイゼーション溶液(DAKO社)でプレハイブリダイズさせ、5’−ビオチン化−28SリボソームRNAアンチセンスプローブと、または陰性対照として5’−ビオチン化−B/Aナンセンスプローブと室温で2時間ハイブリダイズさせた。非特異的ハイブリダイゼーションを最小にするために、4×SSC、2×SSC、0.2×SSCおよびPBSによるストリンジェントな洗浄を実施した。最後に、細胞をストレプトアビジン−Tbコンジュゲート体(DELFIA)と一緒にインキュベートし、HCl/Irで溶解した(図4A)。図4Aおよび図4Bの比較から明白であるように、BCR/Ablタンパク質発現(Eu)のために染色し、リボソーム遺伝子発現(Tb)のために探査した細胞は、IgG対照およびB/Aプローブのために染色した細胞よりも有意に強いシグナルを与えた。
【0069】
キット:
本発明は、本発明の方法を実施するための成分を含むキットも提供する。
【0070】
例えば、試料中の元素の検出および測定のためのキットであって、測定される元素は、対象の核酸に相補的な特異的プローブに結合した元素タグであり、(a)相補的プローブを直接的にタグ付けするための元素タグと、(b)相補的プローブとを含むキットが提供される。キットは、i)プローブを元素タグで直接的にタグ付けし;ii)細胞または細胞性粒子を固定および透過化し;iii)細胞または細胞性粒子を元素タグ付きプローブと一緒にハイブリダイゼーション溶液中でインキュベートし;iv)結合したプローブを未結合のプローブから分離し;v)ハイブリダイズした物質を有する細胞または細胞性粒子を溶解し;vi)元素タグ付きプローブを検出および測定するための説明書をさらに含むことができる。検出および測定は、溶液元素分析または粒子元素分析によって行うことができる。
【0071】
試料中の元素の検出および測定のためのキットであって、測定される元素は、対象の核酸に相補的な特異的プローブに結合した元素タグであり、(a)元素タグでタグ付けされた相補的プローブを含むキットも提供される。キットは、i)細胞または細胞性粒子を固定および透過化し;ii)細胞または細胞性粒子を元素タグ付きプローブと一緒にハイブリダイゼーション溶液中でインキュベートし;iii)結合したプローブを未結合のプローブから分離し;iv)ハイブリダイズした物質を有する細胞または細胞性粒子を溶解し;v)元素タグ付きプローブを検出および測定するための説明書をさらに含むことができる。
【0072】
上記のキットは、多数の核酸に相補的な多数の特異的プローブと、各種類のプローブを特有に標識するための多数の特有の元素タグとをさらに含むことができる。上記のキットは、(a)タンパク質、脂質、多糖類および小分子からなる群から選択される細胞内または細胞外の生体分子のための親和性試薬と、(b)生体分子のための親和性試薬を標識するための元素タグとをさらに含むことができる。キットは、(i)生体分子のための親和性試薬をタグ付けし;(ii)細胞または細胞性粒子を生体分子のための親和性試薬と一緒にインキュベートし;(iii)結合した生体分子のための親和性試薬を未結合の生体分子のための試薬から分離し;(iv)結合した生体分子のための試薬を検出および測定するための説明書を含むことができる。最後に、キットは、多数の生体分子に特異的な多数の試薬と、各種類の生体分子のための各種類の親和性試薬を特有に標識するための多数の元素タグとを含むことができる。
【0073】
元素の検出および測定のための他のキットであって、測定される元素は、オリゴ(dT)nに結合した元素タグおよび特有に標識された粒子の元素であり、(a)オリゴ(dT)nを直接的にタグ付けするための元素タグと、(b)オリゴ(dT)nと、(c)多数の特有に標識された粒子と、(d)多数の相補的プローブと、を含むキットが提供される。キットは、i)多数の相補的プローブを特有に標識された粒子に直接的に結合させ;ii)核酸の精製を実施し;(iii)元素タグをオリゴ(dT)nに結合させ;iv)特有に標識された粒子に結合した相補的プローブを精製核酸とハイブリダイズさせ;iii)結合した特有に標識された粒子を金属タグ付きオリゴ(dT)nと反応させ;iv)結合した粒子を未結合の粒子から分離し;v)結合した粒子の元素を粒子元素分析によって検出および測定するための説明書をさらに含むことができる。粒子は、ビーズとすることができる。さらなる態様で、粒子は固体支持体で置換することができる。例えば、支持体は平らな(例えばガラスもしくはプラスチック)プレート、ウェルプレート、プローブ(試料中に挿入されたもの)または他の固体材料でもよいであろう。この場合、(プレートまたはウェルプレート上の)その位置がそれに結合した相補的プローブの同一性を示すことができるであろうから、固体表面は必ずしも元素標識する必要はない。説明書は上記の(i)から(v)に類似するが、この場合、オリゴ(dT)nに結合した元素だけを測定する。
【0074】
元素の検出および測定のための他のキットであって、測定される元素は、識別可能な元素標識された粒子に結合したオリゴ(dT)nに結合した元素タグであり、(a)オリゴ(dT)nを直接的にタグ付けするための元素タグと、(b)オリゴ(dT)nと、(c)多数の識別可能な元素標識された粒子に結合した多数の相補的プローブと、を含むキットが提供される。キットは、i)核酸の精製を実施し;(ii)元素タグをオリゴ(dT)nに結合させ;iii)相補的プローブを元素タグ付きオリゴ(dT)nと反応させ;iv)識別可能な元素標識された粒子に結合した元素タグ付きオリゴ(dT)nに結合した相補的プローブを、溶液中で標的核酸とハイブリダイズさせ;v)結合した粒子を未結合の粒子から分離し;vi)結合した粒子を粒子元素分析によって検出および測定するための説明書をさらに含むことができる。
【0075】
さらなる態様において、粒子は固体支持体で置換することができる。例えば、支持体は平らな(例えばガラスもしくはプラスチック)プレート、ウェルプレート、プローブ(試料中に挿入されたもの)または他の固体材料でもよい。この場合、(プレートまたはウェルプレート上の)その位置がそれに結合した相補的プローブの同一性を示すことができるであろうから、固体表面は必ずしも元素標識する必要はない。説明書は上記の(i)から(v)に類似するが、この場合、オリゴ(dT)nに結合した元素だけを測定する。
【0076】
上記のキットは、解離溶液、核酸結合膜を有するスピンカラム、生体試料からの核酸の単離および精製のための精製カラム、精製核酸の増幅のための試薬および溶液、標準、希釈緩衝液、解離緩衝液、洗浄緩衝液、ハイブリダイゼーション緩衝液ならびにアッセイ緩衝液からなる群から選択される、試薬および装置をさらに含むことができる。内因性の核酸は、形態学的に無傷の細胞で、in situで増幅することができる。元素は、質量分析計を用いて測定することができる。元素は、同位体またはイオンとすることができる。元素は、貴金属、ランタニド、希土類元素、金、銀、プラチナ、ロジウム、イリジウムおよびパラジウムからなる群から選択することができる。元素には、複数の元素および/または複数の同位体および/または同位体の複数の原子が含まれてもよい。親和性生成物は、抗体、Fab’、アプタマー、抗原、ホルモン、成長因子、受容体、タンパク質および核酸からなる群から選択することができる。キットは、粒子元素分析のための説明書を含むこともできる。
【0077】
キットは、次の成分を含むことができる。
(a)in situ増幅試薬
(b)核酸精製試薬およびデバイス
(c)in situハイブリダイゼーション緩衝液
(d)固定および透過化溶液
(e)洗浄溶液
(f)溶解試薬
【0078】
出願人の教示は、上で開示される方法を提供する。本方法は、
(a)多重化
(b)タンパク質および遺伝子の発現の同時分析
(c)増幅ステップを含む、または含まない方法
(d)高コストのポリメラーゼ酵素が不要の低コスト分析
(e)単細胞の遺伝子分析
(f)遺伝子発現の絶対定量化
を可能にする。
【0079】
本開示で引用した全ての参考文献は、その全体において本明細書で参照により組み込まれる。
【0080】
出願人の教示が様々な実施形態とともに記載されるが、出願人の教示がそのような実施形態に限定されることを意図するものではない。それに反し、当分野の技術者が理解するように、出願人の教示は様々な代替形態、改変形態および同等物を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】(A)3つの異なる条件下でビオチン化アンチセンスオリゴヌクレオチド(「オリゴ」)を用いた、28S rRNAのin situハイブリダイゼーションおよびフローサイトメトリー検出を示す図。(1)−ナンセンスビオチン化オリゴヌクレオチド(「オリゴ」)とハイブリダイズさせた陰性対照細胞に対応する、(2)−4%パラホルムアルデヒドにより15分間固定し、その後、プロテイナーゼK(5U/ml)により室温で15分間処理し、28S rRNAオリゴとハイブリダイズさせた細胞、(3)−4%パラホルムアルデヒドにより15分間およびプロテイナーゼK(5U/ml)により37℃で15分間処理し、28S rRNAオリゴとハイブリダイズさせた細胞、(4)−4%パラホルムアルデヒドにより15分間固定し、次に0.3%トリトンX100で、次にプロテイナーゼK(5U/ml)により37℃で15分間処理し、28S rRNAオリゴとハイブリダイズさせた細胞。(4)によって表される条件は、追加実験のために選択された。(B)フローサイトメトリー(左グラフ)およびICP−MS(右グラフ)によって分析した28S rRNA in situハイブリダイゼーションの比較を示す図。
【図2】ICP−MSによる白血病細胞におけるBCR/Abl(破過点クラスター領域/アベルソン白血病)遺伝子発現分析を示す図。(A)固定化/透過化細胞とBCR/Abl融合遺伝子のためのビオチン化オリゴヌクレオチドプローブとのin situハイブリダイゼーションの概略図。ビオチンは、テルビウム(Tb)で標識したストレプトアビジン(StrAv)によって特定される。細胞ペレットをHClで溶解し、溶液元素ICP−MS分析によって分析する。(B)BCR/Ablアンチセンス、28S rRNA(陽性対照)およびナンセンスオリゴプローブ(B/A)およびゼロプローブ(ctrl)とハイブリダイズさせたKG−1a細胞(左グラフ)およびK562細胞(右グラフ)の実験結果、バックグラウンドおよびナンセンスプローブ応答値は差し引いた。試料は、3反復で実施した。データは、テルビウム(Tb)対イリジウム(Ir)内部標準シグナルの標準化比として提示する。
【図3】ICP−MSによる接着性癌細胞における上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子発現分析を示す図。A431細胞を、EGFR、D−サイクリン、28S rRNA(陽性対照)およびナンセンス陰性対照B/Aに対する遺伝子特異プローブとハイブリダイズさせた。(B/Aは、陰性対照として用いるランダムな名称を有するランダムなオリゴである)試料は、3反復で実施した。データは、テルビウム(Tb)対イリジウム(Ir)内部標準シグナルの標準化比として提示する。
【図4】ICP−MSによるK562白血病細胞におけるタンパク質および遺伝子発現同時分析を示す図。(A)28S rRNAおよびナンセンスオリゴプローブ(B/A)とのin situハイブリダイゼーション、(B)BCR/Ablタンパク質の免疫標識およびハイブリダイゼーションの間の陰性対照IgG値。試料は、3反復で実施した。データは、ユーロピウム(Eu)またはテルビウム(Tb)対イリジウム(Ir)内部標準シグナルの標準化比として提示する。
【図5】in situハイブリダイゼーションおよびICP−MSによる遺伝子発現分析のワークフローチャートを示す図。
【図6】粒子元素分析による元素標識されたビーズ遺伝子発現分析のワークフローチャートを示す図。
【図7】ICP−MSによる遺伝子およびタンパク質発現同時分析のワークフローチャートを示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞分析のための方法であって、
(a)細胞または細胞性粒子を提供するステップと、
(b)細胞または細胞性粒子を固定および透過化するステップと、
(c)細胞または細胞性粒子を標的核酸に特異的なプローブと一緒にハイブリダイゼーション溶液中でインキュベートするステップであって、前記プローブは特有の元素タグで標識され、前記タグの1種で標識された前記プローブの1種が、異なる種類の前記タグで標識された他の任意の種類の前記プローブと元素分析によって識別可能であるステップと、
(d)ストリンジェントな洗浄条件によって、ハイブリダイズしなかったプローブを、前記標的核酸にハイブリダイズしたプローブから分離するステップと、
(e)細胞または細胞性粒子を元素分析によって分析して、プローブを特定し、前記標的核酸に結合したプローブを定量するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
特異的な元素タグで標識した2つ以上の特異的なプローブを、2つ以上の標的核酸とハイブリダイズさせることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的核酸は、細胞内核酸分子、マトリックスRNA、マイクロRNA、遺伝子転写物前駆体RNA、メッセンジャーRNA、トランスポートRNA、リボソームRNA、染色体DNA、ミトコンドリアDNA、葉緑体DNA、ウイルスDNA、ウイルスRNA、細菌DNA、細菌RNAおよびプラスミドDNAからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
表面および/または細胞内タンパク質分子の同時分析をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
表面および/または細胞内脂質分子の同時分析をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
表面および/または細胞内多糖類分子の同時分析をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ビタミン、ホルモン、ハプテンおよびヌクレオシドからなる群から選択される表面および/または細胞内の小分子の同時分析をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ヌクレオシドは、ATP、ADP、環状AMPおよびNADHからなる群から選択されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(b)の後、細胞または細胞性粒子を表面または/および細胞内タンパク質に特異的な親和性試薬と反応させ、前記親和性試薬は、元素タグの1種で標識された前記親和性試薬の1種が他の任意の種類の前記タグと元素分析によって識別可能であるように支持体分子構造に結合した1つまたは複数の元素の1つまたは複数の同位体の多数の原子の化学種を含む元素タグで標識されており、
その後、結合した親和性試薬を未結合の親和性試薬から分離することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記親和性試薬は、抗体、アプタマー、レクチンおよび小分子からなる群から選択されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(b)の後、細胞または細胞性粒子を表面または/および細胞内分子に特異的な親和性試薬と反応させ、前記親和性試薬は前記タグの1種で標識された前記親和性試薬の1種が他の任意の種類の前記タグと元素分析によって識別可能であるように、元素タグで標識されており、
その後、未結合の親和性試薬を結合した親和性試薬から分離することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記表面または/および細胞内分子は脂質であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記表面または/および細胞内分子は多糖類であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記表面または/および細胞内分子は小分子であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記親和性試薬は、抗体、アプタマー、レクチンおよび小分子からなる群から選択されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞は、動物、植物、細菌または真菌の全細胞であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞性粒子は、単離染色体、単離核、単離ミトコンドリア、単離葉緑体、単離ウイルスおよび単離細菌からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記プローブは、オリゴヌクレオチドプローブ、ロックド核酸(LNA)分子、ペプチド核酸(PNA)分子、プラスミドDNA、増幅DNAもしくはその断片、増幅RNAもしくはその断片、RNA断片およびゲノムDNA断片からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
溶液中の生体分子の均質分析のための方法であって、
(a)元素タグで標識された親和性試薬及び特有のタグ付き支持体とともに生体分子をインキュベートするステップであって、親和性試薬と生体分子との結合を可能にする条件下、1種の前記タグで標識された1種の前記支持体が、異なる種類の前記タグで標識された他の任意の種類の前記支持体と元素分析によって識別可能であるステップと、
(b)結合した生体分子を有する支持体を未結合の支持体から分離するステップと、
(c)結合した支持体を粒子元素分析によって測定するステップであって、支持体を液体中に分散させて個別の支持体の原子および同位体の組成を定量的に測定し、それによって前記支持体に結合した生体分子の種類および数が検出されるステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
前記支持体は、粒子、マイクロスフェアおよびビーズからなる群から選択されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記生体分子は、組織試料または細胞試料からのものであることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記試料は、動物試料、植物試料、細菌試料および真菌試料からなる群から選択されることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記生体分子は、mRNA、タンパク質、脂質、多糖類および小分子からなる群から選択されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記生体分子と親和性試薬との結合は、特有のタグ付きマイクロスフェアに結合したオリゴヌクレオチドとmRNA分子とのハイブリダイゼーションを含むことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記オリゴヌクレオチドは、いくつかのデオキシチミジン三リン酸ヌクレオシドと、特有のタグ付きマイクロスフェアに結合した相補的核酸プローブとを含むことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記相補的核酸プローブは、オリゴヌクレオチド、LNA、PNAおよびプラスミドDNAからなる群から選択されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
生体分子を特異的小分子と結合させ、その後、元素分析により前記生体分子と前記小分子との反応を特定することをさらに含み、前記小分子は、生体分子のための親和性試薬でコーティングされた特有のタグ付き支持体に結合する元素タグで標識されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記親和性試薬は、抗体、アプタマーおよびレクチン、核酸、結合ペプチド、タンパク質受容体、リン脂質からなる群から選択されることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
試料中の元素の検出および測定のためのキットであって、測定される元素は、対象の核酸に相補的な特異的プローブに結合した元素タグであり、
(a)相補的プローブを直接的にタグ付けするための元素タグと、
(b)相補的プローブと
を含むことを特徴とするキット。
【請求項30】
i)プローブを元素タグで直接的にタグ付けし;ii)細胞または細胞性粒子を固定および透過化し;iii)細胞または細胞性粒子を元素タグ付きプローブと一緒にハイブリダイゼーション溶液中でインキュベートし;iv)結合したプローブを未結合のプローブから分離し;v)ハイブリダイズした物質を有する細胞または細胞性粒子を溶解し;vi)元素タグ付きプローブを検出および測定するための説明書をさらに含むことを特徴とする請求項29に記載のキット。
【請求項31】
試料中の元素の検出および測定のためのキットであって、測定される元素は、対象の核酸に相補的な特異的プローブに結合した元素タグであり、
(a)元素タグでタグ付けされた相補的プローブ
を含むことを特徴とするキット。
【請求項32】
i)細胞または細胞性粒子を固定および透過化し;ii)細胞または細胞性粒子を元素タグ付きプローブと一緒にハイブリダイゼーション溶液中でインキュベートし;iii)結合したプローブを未結合のプローブから分離し;iv)ハイブリダイズした物質を有する細胞または細胞性粒子を溶解し;v)元素タグ付きプローブを検出および測定するための説明書をさらに含むことを特徴とする請求項31に記載のキット。
【請求項33】
前記検出および測定は溶液元素分析によって行われることを特徴とする請求項30に記載のキット。
【請求項34】
前記検出および測定は粒子元素分析によって行われることを特徴とする請求項30に記載のキット。
【請求項35】
多数の核酸と相補的な多数の特異的プローブと、各種類のプローブを特有に標識するための多数の特有の元素タグとをさらに含むことを特徴とする請求項29から34のいずれか一項に記載のキット。
【請求項36】
(i)タンパク質、脂質、多糖類および小分子からなる群から選択される、細胞内または細胞外の生体分子のための親和性試薬と、
(ii)生体分子のための親和性試薬を標識するための元素タグと
をさらに含むことを特徴とする、請求項29から35のいずれか一項に記載のキット。
【請求項37】
(i)生体分子のための親和性試薬をタグ付けし;(ii)細胞または細胞性粒子を生体分子のための親和性試薬と一緒にインキュベートし;(iii)結合した生体分子のための親和性試薬を未結合の生体分子のための試薬から分離し;(iv)結合した生体分子のための試薬を検出および測定するための説明書をさらに含むことを特徴とする請求項36に記載のキット。
【請求項38】
多数の生体分子のための多数の特異的試薬と、各種類の生体分子のための各種類の親和性試薬を特有に標識するための多数の元素タグとを含むことを特徴とする請求項37に記載のキット。
【請求項39】
元素の検出および測定のためのキットであって、測定される元素は、オリゴ(dT)nに結合した元素タグおよび相補的プローブに結合した特有に標識された支持体の元素であり、
(a)オリゴ(dT)nを直接的にタグ付けするための元素タグと、
(b)オリゴ(dT)nと、
(c)少なくとも1つの特有に標識された支持体と、
(d)多数の相補的プローブと
を含むことを特徴とするキット。
【請求項40】
i)多数の相補的プローブを特有に標識された支持体に直接的に結合させ;ii)核酸の精製を実施し;(iii)元素タグをオリゴ(dT)nに結合させ;iv)特有に標識された支持体に結合した相補的プローブを精製核酸とハイブリダイズさせ;iii)結合した特有に標識された支持体を金属タグ付きオリゴ(dT)nと反応させ;iv)未結合の核酸を結合した核酸から分離し;v)結合した支持体の元素を元素分析によって検出および測定するための説明書をさらに含むことを特徴とする請求項39に記載のキット。
【請求項41】
多数の支持体が存在し、当該支持体が粒子またはビーズであることを特徴とする請求項39または40のいずれか一項に記載のキット。
【請求項42】
前記多数の相補的プローブは、識別可能な元素タグによって直接的にタグ付けされることを特徴とする請求項39に記載のキット。
【請求項43】
元素の検出および測定のためのキットであって、測定される元素は、オリゴ(dT)nに結合した元素タグおよび相補的プローブに結合した特有の標識された支持体の元素であり、
(a)オリゴ(dT)nを直接的にタグ付けするための元素タグと、
(b)オリゴ(dT)nと、
(c)少なくとも1つの特有に標識された支持体に結合した多数の相補的プローブと
を含むことを特徴とするキット。
【請求項44】
i)核酸の精製を実施し;(ii)元素タグをオリゴ(dT)nに結合させ;iii)相補的プローブを元素タグ付きオリゴ(dT)nと反応させ;iv)特有に標識された支持体に結合した相補的プローブを精製核酸とハイブリダイズさせ;iii)結合した特有に標識された支持体を金属タグ付きオリゴ(dT)nと反応させ;iv)未結合の核酸を結合した核酸から分離し;v)結合した支持体の元素を元素分析によって検出および測定するための説明書をさらに含むことを特徴とする請求項43に記載のキット。
【請求項45】
元素の検出および測定のためのキットであって、測定される元素は、オリゴ(dT)nに結合した元素タグおよび相補的プローブに結合した特有に標識された支持体の元素であり、
(a)元素タグで標識されたオリゴ(dT)nと
(b)少なくとも1つの特有に標識された支持体に結合した多数の相補的プローブと
を含むことを特徴とするキット。
【請求項46】
i)核酸の精製を実施し;ii)特有に標識された支持体に結合した相補的プローブを精製核酸とハイブリダイズさせ;iii)結合した特有に標識された支持体を金属タグ付きオリゴ(dT)nと反応させ;iv)未結合の核酸を結合した核酸から分離し;v)結合した支持体の元素を元素分析によって検出および測定するための説明書をさらに含むことを特徴とする、請求項45に記載のキット。
【請求項47】
前記支持体はビーズであることを特徴とする請求項39に記載のキット。
【請求項48】
解離溶液、核酸結合膜を有するスピンカラム、生体試料からの核酸の単離および精製のための精製カラム、精製核酸の増幅のための試薬および溶液、標準、希釈緩衝液、解離緩衝液、洗浄緩衝液、ハイブリダイゼーション緩衝液ならびにアッセイ緩衝液からなる群から選択される試薬および装置をさらに含むことを特徴とする請求項29または39に記載のキット。
【請求項49】
内因性の核酸は、形態学的に無傷の細胞でin situで増幅されることを特徴とする請求項29に記載のキット。
【請求項50】
前記元素は質量分析計を用いて測定されることを特徴とする請求項29から50に記載のキット。
【請求項51】
前記元素は同位体であることを特徴とする請求項29から50に記載のキット。
【請求項52】
前記元素は、貴金属、遷移元素、希土類元素、金、銀、プラチナ、ロジウム、イリジウムおよびパラジウムからなる群から選択されることを特徴とする請求項29から50に記載のキット。
【請求項53】
前記元素は複数の元素を含むことを特徴とする請求項29から50に記載のキット。
【請求項54】
前記元素は複数の同位体を含むことを特徴とする請求項29から50に記載のキット。
【請求項55】
前記元素は同位体の原子を複数含むことを特徴とする請求項29から50に記載のキット。
【請求項56】
前記親和性生成物は、抗体、Fab’、アプタマー、抗原、ホルモン、成長因子、受容体、タンパク質および核酸からなる群から選択されることを特徴とする請求項36から39に記載のキット。
【請求項57】
粒子元素分析のための説明書が含まれることを特徴とする請求項29から50に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−526242(P2009−526242A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554570(P2008−554570)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【国際出願番号】PCT/CA2007/000223
【国際公開番号】WO2007/093050
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(508245644)
【Fターム(参考)】