説明

充填バルブ

【課題】充填バルブの開度を最大限並びに最小限の2種類を選択し得るのみならず、それぞれの開度を液体の特性に対応して一定の範囲内で独立に調節可能な充填バルブを提供する。
【解決手段】液バルブ5と、小径ピストン42と、小径ピストン42の移動を規制する大径ピストン41と、小径ピストン及び大径ピストンを移動させる圧気ポートと、シリンダ本体31の位置規制部に当接することにより大径ピストンの移動位置を規制するストッパ82と、前記位置規制部とストッパ82との間隔を調節する調節機構とを備えた充填バルブ1において、弁体ロッドの上端と小径ピストンと一体のロッド軸下端を連結し、ロッド軸に取付けられ前記位置規制部に当接することにより小径ピストンの移動を規制するストッパ81と、前記位置規制部と両ストッパとの間隔を調節する調節機構を備え、充填バルブ1の動作を全開用又は部分開用に変更し、夫々独立して調節可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状飲料及び調味料等、粘度の異なる液体を容器へ充填する充填バルブに関し、より詳しくは、充填バルブの開度を最大限並びに最小限の2種類を選択し得るのみならず、それぞれの開度を液体の特性に対応して一定の範囲内で独立に調節することが可能な充填バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
液体を容器に無菌充填するための可変量充填ノズル、または可変開度無菌充填バルブに関する公知技術は、特許文献1に開示されている。即ち、無菌雰囲気内で稼動させる当該バルブにおいて、ピストンロッドとケーシングの上端に設けられた貫通孔の隙間から放出される汚染物質を、ケーシング上端に設けた主キャップによって防ぎ、無菌雰囲気が汚染されることを防ぐ発明について説明されているが、当該充填バルブの駆動シリンダ及び大・小2組のピストン並びにピストンロッドの構造・作用についても詳細に記述されている。
即ち、当該バルブのケーシングには、下端部に吐出口が形成され、また下端部の側壁に液体の入口ポートが開口されている。前記吐出口には固定弁座が形成されており、この固定弁座に対し、前記小ピストンに固定されているピストンロッド及び、その先端に形成された可動弁体が上方から臨ませて配設されている。
【0003】
前記ケーシングの中間部には、大口径及び小口径の2つのシリンダが上部及び下部に隣接して形成されており、それぞれに大径ピストン及び小径ピストンが嵌入されている。前記小径ピストンの下、大径ピストンの上、及び両ピストンの間には、圧縮空気が出入する空気室が形成されており、大径ピストン及び小径ピストンは、圧縮空気の制御により独立して上下運動をすることが可能になっている。
前記大径ピストンには、上方に延びてケーシングの上端を貫通して外部に突出するピストンロッドが固定されており、該ピストンロッドの上端部に設けられたストッパと当該ケーシングに螺合された調整キャップにより、該大径ピストンの上下運動の下限が規定されるようになっている。
【0004】
前記可動弁体は、小径ピストンに固定されたピストンロッドの下端に形成され、該ピストンロッドの上端はケーシングの中間部まで延びているので、前記大径ピストンが下限にある時には、該ピストンロッドの上端が大径ピストンの下面に当接するので、小径ピストンのストロークが規制され、前記可動弁体の開度が制限される。
他方、大径ピストンが、大口径シリンダの上端部に当接して上限位置にある時には、小径ピストンも前記小口径シリンダの上端部に当接する上限の位置を占めることができ、前記可動弁体に最大限、即ち100%の開度を与えることとなる。
従って、特許文献1の発明では、充填ノズル全開による最大吐出流量は、前記小口径シリンダの長さ寸法によって決定されており変更できないが、前記大径ピストンを降下させた場合には、小径ピストンのストロークが規制され、前記可動弁体の開度が制限されるので、該充填ノズルの部分開、即ち小吐出流量の調節は有効に行なえる。
【0005】
特許文献2は、特許文献1と同様の無菌充填バルブの構造・作用を開示しているが、主として、ピストンロッドとケーシングの貫通孔の隙間から放出される汚染物質によって、無菌雰囲気が汚染されるのを防ぐために、当該バルブのケーシング上端に設ける密閉用のキャップの改善を提案している。
即ち、該ピストンロッド上端部に設けられた調整用ナット(ストッパ)と、当該筒状部材(ケーシング)に螺合されたカップ状部材(調整キャップ)により、充填バルブの開度に係る小吐出流量の調整に際し、前記密閉用のキャップを取付けたまま、該筒状部材(ケーシング)に螺合されたカップ状部材(調整キャップ)を、締め込み或いは緩める調整ができる、変形可能な密閉用のキャップにする発明である。
【特許文献1】特許2808212号公報(図1)
【特許文献2】特開2004−250036号公報(図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示された充填ノズルは、実質的には無菌充填バルブのことであるが、その吐出流量が調整可能な小吐出流量と、調整不可能な最大吐出流量の2段階に変えられるものの、粘度の異なる液体を充填装置の許容する所定時間内に充填する場合には、同一液圧力、同一バルブ開度では、最大吐出流量が変ってしまうため充填時間も変化し、前記所定時間内に収まらないことがある。さりとて、最初から過剰な吐出流量のバルブを選定すると、充填中の気泡の巻き込み、或いは充填精度の制御困難等の問題を生ずるので、根本的対策として、シリンダ寸法を変更する必要が生ずる。シリンダ寸法を変更することは、当該充填バルブ全体を交換することを意味し、相当の手間と時間を要するばかりでなく、小吐出流量の調整基準が変ってしまう不都合を持っている。従って、当該充填バルブの最大吐出流量を独立に調節できるようにする必要がある。
また、特許文献2に開示されている充填バルブは、前記密閉用のキャップを除いたバルブ本体が特許文献1のものと同一であり、最大吐出流量の調節ができないことは明らかである。
【0007】
なお、特許文献1,2を通して、小吐出流量の調整については、無菌雰囲気内に少なくとも無菌処理をした人手を、場合によっては無菌工具等を入れて行なう必要があると述べており、準備に手間がかかり、且つ作業性も悪いと言う問題を抱えることが判る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題点に対し、本発明は以下の各手段により課題の解決を図る。
(1)第1の手段の充填バルブは、充填液通路を開閉する可動弁体と固定弁座からなる液バルブと、シリンダ本体内に上下方向に移動可能に配置され前記液バルブの弁体ロッドに連結された小径ピストンと、前記シリンダ本体内に上下方向に移動可能に配置され前記小径ピストンの移動を規制する大径ピストンと、前記小径ピストン及び大径ピストンを移動させる圧気ポートと、前記大径ピストンのシリンダ本体から突出した部分に取付けられシリンダ本体の位置規制部に当接することにより大径ピストンの移動位置を規制するストッパと、前記位置規制部と該ストッパとの間隔を調節する調節機構とを備えた充填バルブにおいて、前記弁体ロッドの上端と前記小径ピストンと一体のロッド軸下端を軸継手等による連結構造とし、前記ロッド軸のシリンダ本体から突出した部分に取付けられシリンダ本体の位置規制部に当接することにより小径ピストンの移動を規制するストッパと、前記位置規制部と該ストッパとの間隔を調節する調節機構を備え、充填バルブの動作を全開用及び部分開用の2段階に変えるとともに、夫々独立して調節可能なことを特徴とする。
【0009】
(2)第2の手段の充填バルブは、上記第1の手段の充填バルブにおいて、前記液バルブを収納するバルブ本体の下部のみが、無菌若しくは清浄な雰囲気内に露出されて、清浄な液体を清浄な容器に充填することが可能な構成を有することを特徴とする特徴とする。
(3)第3の手段の充填バルブは、上記第2の手段の充填バルブにおいて、バルブ本体の中間部には、充填液の吐出口を含めた弁体下部を無菌若しくは清浄な充填雰囲気内に露出できるように、弁軸に垂直な取り付け面を有するフランジを備え、該バルブ本体と前記シリンダ本体、小径ピストン、大径ピストン等からなる空気圧シリンダとの間には、両者を連結すると同時に、前記無菌雰囲気から隔離された開口部から人手或いは通常の工具を用いて、前記小径ピストンと一体のピストンロッドの貫通部ボスに螺合された調整キャップを上下に調節可能にするための開口結合構造体を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の構成による充填バルブによれば、次のような直接的効果が得られ、充填装置の稼動効率と充填精度を向上することができる。
(1)請求項1に係わる発明は、充填バルブの動作を制御する空気圧シリンダの小径ピストンロッドのストロークを、全開用及び部分開用の2段階に変えられるように構成するとともに、前記2段階のストロークのそれぞれを、独立に調節可能にすることにより、同一充填バルブで、異なる特性の液体を所定時間内に精度良く充填することを可能にする効果がある。充填バルブの最大吐出流量を独立に調節できるようにするための構造を組み込み、且つ前記調節を容易に行なうことを可能にする効果がある。
(2)請求項2に係わる発明は、充填バルブ本体と、動作を制御する空気圧シリンダ部分を区別することにより、清浄な雰囲気に露出される部分と、外部雰囲気に露出される部分とを区別して、該バルブの保全性を改善する効果がある。
【0011】
(3)請求項3に係わる発明は、充填バルブ本体の下部(特に充填する液体に接触する部分)のみを清浄な無菌雰囲気内に露出し、空気圧シリンダ及び開口結合構造体を連結したバルブ本体上部を、無菌雰囲気外に垂直に設置することを可能にし、当該充填バルブの調節及び保全を通常の工具、及び特段の殺菌処理を施していない人手によって、簡単且つ容易に実施できるようにする効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態を図により説明する。図1は、本発明の充填バルブ組立の正面断面図である。図2は、前記充填バルブ組立の一部分を成す空気圧シリンダの正面断面図である。図3〜図7は、図2の空気圧シリンダを反時計方向に90°回転した状態において、種々のバルブ開度を与えるときのピストン並びにピストンロッドの位置を示しており、図3はバルブ全閉(開度=0%)、図4はバルブ全開(開度=100%)、図5はバルブ全開を調節した状態(開度は、調節代により決定する)、図6はバルブ部分開の調節前の状態(開度=0%)、図7はバルブ部分開を調節した状態(開度は、調節代により決定する)を示す正面断面図である。図8は、本発明の充填バルブを複数備え付けた無菌充填装置の概略構造を示す正面断面図である。
【0013】
図1において、充填バルブ1は、開口結合構造体2並びに軸継手17により、空気圧シリンダ3に連結されており、且つ充填液供給装置(図示せず)よりの充填液供給管が給液パイプ11cに接続され、圧縮空気の給排気配管(図示せず)が圧気ポート(小径ピストン側圧気ポート)A,B(中央圧気ポート),C(大径ピストン側圧気ポート)に接続された上で、無菌充填装置60(図8参照)に取り付けられて稼動するように構成されている。
充填バルブ1は、バルブ本体11の下部の弁吐出口11a、上部の弁軸ガイド11d、中間部の弁取付フランジ11b、並びに給液パイプ11c等から構成されており、内部には弁軸10、弁体ロッド13、絞り14、可動弁体15等が軸方向に移動可能に組み込まれている。なお、弁軸10の上端は、前記軸継手17により、空気圧シリンダ3の第2ロッド軸34と緊密に連結されている。
【0014】
可動弁体15は、前記弁吐出口11aの直上に設けられた固定弁座11eに密着或いは隙間を隔てて対峙することにより、給液パイプ11c経由で供給される充填液の流路を閉止或いは開く液バルブの機能を備えている。
また、弁体ロッド13は、下端に可動弁体15が、また、上端部には絞り14を備えた軸状の部品であり、螺子によって弁軸10に、緊密に連結されている。
なお、弁軸ガイド11dと前記絞り14の間には、充填液の流路を外部雰囲気から隔離するベローズ16が備えられており、弁体ロッド13が上下動するたびに弁軸10と弁軸ガイド11dの隙間から外部雰囲気が漏れ入り、清浄な充填液を汚染することを防止している。
【0015】
図2は、空気圧シリンダ3の正面断面図である。シリンダ本体31の内部には、小径ピストン42が嵌入されている小口径の開孔31aと、それに隣接する上部に大口径の開孔31bが設けてあり、大径ピストン41が嵌入されている。小径ピストン42から垂直に下方に延びる第2ロッド軸34は、軸継手17によって弁軸10、弁体ロッド13に連結し、下端の可動弁体15まで一体の軸のごとく構成されているので、前記小径ピストン42を空気圧により上下に作動させることにより、充填バルブ1の全閉、部分開、及び全開等の動作を行なわせることができる。
また、当該第2ロッド軸34の下端部には、ワッシャー43及びナット55から成るストッパ81が設けてある。該ストッパ81は、シリンダ本体31の下端部に固定された第2ロッド軸端面ボス33に螺合されている調整キャップ36に当接可能に対峙させられているので、前記調整キャップ36に備えられた螺子回転調整手段50を利用し、該調整キャップ36の上下位置を変更することにより、小径ピストン42の上限位置を規制することが可能になっている。
【0016】
前記大径ピストン41から垂直に上方に延びる第1ロッド軸35は、当該シリンダ本体31の上端面に固定された第1ロッド軸端面ボス32から外部に突出し、ワッシャー43、ナット55、キャップナット56から成るストッパ82を備えている。
前記第1ロッド軸端面ボス32には調整キャップ36が螺合されているので、該調整キャップ36に備えられた螺子回転調整手段50の発するクリック感或いは音を計数しながら、当該調整キャップ36の回転数、即ち上下位置を調節し、前記大径ピストン41が圧気ポートCから供給される空気圧によって下降した場合に、前記ストッパ82の当接位置を調節するようにしておき、大径ピストン41の下限位置を規制することが可能になっている。
なお、第1ロッド軸側の調整キャップ及び第2ロッド軸側の調整キャップは、後述するように通常の手作業で容易に調整ができるように充填液並びに無菌雰囲気から隔離された空間内に設けられている。
【0017】
図3〜図7に基づいて本発明の充填バルブ1と空気圧シリンダ3の作用を説明する。
図3は、充填バルブ1が全閉するように調節されて、待機中の空気圧シリンダ3の状態を示す断面図である。(稼働時は、当該シリンダの軸線は垂直になるが、説明の都合上シリンダ軸線を水平にして図示している。図4〜図7も全て同様である。)
図3において、前記第1ロッド軸35のストッパ82と調整キャップ36の隙間はd1であり、前記第2ロッド軸34のストッパ81と調整キャップ36の隙間はd2で、第2ロッド軸端面ボス33と調整キャップ36の間隔はb2である。空気圧力は、中央の圧気ポートBを経由してシリンダ内に作用し、大径ピストン41及び小径ピストン42を左右に押し離しており、小径ピストン42は右限に押し付けられ、第2ロッド軸34も右方向(稼動状態では下方向)に移動し、可動弁体15(図1参照)は固定弁座11eに密着するので、充填バルブ1は全閉状態である。
この時の小口径の開孔31aの行程長さは、充填バルブ1の全開に相当するSmaxとなる。
【0018】
図4は、空気圧力が右端の圧気ポートAを経由して小径ピストン42に作用し、当該ピストン42を左方向に押し付け、第2ロッド軸34を前記Smaxのストロークで左方向(稼動状態では上方向)に移動し、可動弁体15(図1参照)は固定弁座11eより最も離れるので、充填バルブ1は全開となる。第2ロッド軸34側の調整キャップ36の位置は、間隔b2のままで変わらない。
なお、この状態において大径ピストン41は図3の状態を保っており、小径ピストン42の動作には何の制約も与えない。
図5は、図3の状態において、螺子回転調整手段50を操作して第2ロッド軸34側の調整キャップ36を回転させ、調節代a2だけ右方向(稼動状態では下方向)に移動させ、その後に圧気ポートAを経由して小径ピストン42に空気圧力を作用させた状態を示す。このときは、小径ピストン42並びに第2ロッド軸34のストロークは、調整キャップ36に制約されてSmax−a2となり、充填バルブ1の開度は1−(a2/Smax)となる。大径ピストン41及び第1ロッド軸35は、図4と同じである。
【0019】
本発明の充填バルブの全開ストロークSmax及び前記調節ストロークSmax−a2の適用の仕方について説明する。充填バルブ1が充填する液体食品の内,粘度の高いもの(例えば、ソース、食用油、濃厚ジュース等)について、所定の充填時間以内に、所定量の食品が充填できる全開ストロークをSmaxと定める。実際には、事前テストにより、若干の余裕を持ってSmaxを把握しておき、これに適合する充填バルブを選定することとなる。
次に、通常の粘度の液体食品(例えば、緑茶・紅茶、清涼飲料、清酒等)については、Smaxのストロークでは過剰流量のために、充填中の気泡の巻き込み、或いは充填精度の制御が困難等の問題が生ずる。この問題を解決するためには、実液テストにより調節代a2の最適量を決定し、第2ロッド軸34側の調整キャップ36を回転させることにより、充填バルブ1の開度を調節すればよい。
【0020】
図6は、充填バルブが部分開するように設定されているものの、前記第1ロッド軸側の調整キャップは調節されて無く、大径ピストンと小径ピストンがそれぞれのストップピン45,46(図7参照)を介して押し合うため、部分開が行なわれぬ場合の空気圧シリンダ3の状態を示す断面図である。
図6において、前記第1ロッド軸35のストッパ82と調整キャップ36の隙間は無し(零)であり、前記第2ロッド軸34のストッパ81と調整キャップ36の隙間はd2、第1ロッド軸端面ボス32と調整キャップ36の間隔はb1である。空気圧力は、左右の圧気ポートC及びAを経由してシリンダ内に作用し、大径ピストン41及び小径ピストン42を中央部に押し付けているが、受圧面積の大きい大径ピストン41の力が勝り、前記ストップピン45,46を介して小径ピストン42を右限に押し付け、第2ロッド軸34も右方向(稼動状態では下方向)に移動し、可動弁体15(図1参照)は固定弁座11eに密着するので、充填バルブ1は全閉状態である。即ち、部分開の調節は、開度0%から始められることとなる。
【0021】
図7は、図6の状態で、螺子回転調整手段50を操作して第1ロッド軸35側の調整キャップ36をa1だけ、左方向(稼動状態では上方向)に移動させた時の空気圧シリンダ13の状態を示す断面図である。
大径ピストン41には、圧気ポートCを通じて空気圧がかかっており右方向(稼動状態では下方向)に移動しようとするが、第1ロッド軸35のストッパ82が調整キャップ36に当接して、大径ピストン41は右端部にa1の距離を置いて停止する。一方、小径ピストン42の右方には、圧気ポートAを通じて空気圧がかかっており、左方向(稼動状態では上方向)に移動しようとするが、該ピストン42から左方に突出するストップピン46が、大径ピストン41から右方に突出するストップピン45に当接して、移動量はa1だけに規制される。
従って、この時の小径ピストン42のストロークは、充填バルブ1の部分開に相当するa1となる。
【0022】
一般に、液体の充填バルブにおいて、部分開充填、即ち小流量充填は、液充填工程の最初と最後に必要になるもので、弁全開或いは全開に近い調節ストロークにより、最初の小流量充填は、気泡の巻き込みを防ぐために実施し、その後、液を大流量で短時間に充填し、最後に、充填量の精度を出すために、部分開の小流量で液の補充をするためである。液の充填装置には、重量計測システム或いは流量計測システムが付設されており、充填を監視していて規定量近くの手前で充填量を少なくし、不足する液量を小流量で充填する方法で、充填量の精度を確保する方式が一般的に行なわれている。
従って、部分開のバルブ開度調節は、充填液の特性、前記補充量及び容時間等に対応して必要不可欠であり、且つ前記Smax或いはSmax−a2に影響を受けない独自の機能が必要である。
【0023】
図8は、本発明の充填バルブを複数備え付けた無菌充填装置の概略構造を示す正面断面図であり、当該装置は通常の食品包装作業場の無塵雰囲気の中に設置されるものである。
無菌充填装置60は、充填バルブ1等を取り付ける回転体61の周囲、上面及び下面を無菌チャンバ65で包囲した構造を持ち、当該チャンバ65と、回転体61の天蓋61c、側板61b、台盤61a、胴61d及び上部水封シール67、下部水封シール66等で密封する空間(図8において、ハッチングを施された空間)が無菌雰囲気に保たれている。
回転体61の下部を占める円筒形の胴61dの下端には、旋回台ベアリング63が備えられており、回転体61を水平面上で旋回自在に支持するとともに、該ベアリング外輪に設けられたリングギアに駆動装置70の出力ギア71が噛み合い駆動することによって、当該回転体61は水平面内で旋回する。64は給液管で、ロータリジョイント61eと給液パイプ11c間に接続されている。
【0024】
前記回転体61の台盤61aの外周近くには、旋回軸を中心とする円周上に、等ピッチで複数の充填バルブ1が垂直に取り付けられており、前記弁取付フランジ11bより下の部分、即ち弁吐出口11aのみが前記無菌雰囲気中に露出されている。
回転する胴61dには、前記弁吐出口11aに相応する位置に容器把持手段62が付設されており、容器Vは無菌充填装置60の入口(図示せず)を通過してから出口(図示せず)に至るまで、支持されて回転体61並びに台盤61aとともに旋回するので、この間に充填バルブ1は、全開若しくは調節開で効率よく充填し、充填精度を出すための部分開充填に切り換えれば、清浄な充填液を清浄な容器に無菌雰囲気で、良好な精度で充填することが可能である。
【0025】
充填バルブ1の全開、調節開、部分開度の調節、及び清掃、修理或いは交換等の調整及び保全作業について、無菌充填装置60の特徴的な方法を簡単に説明する。
本無菌充填装置60は、複数の支柱68によって高床式の構造になっており、許可された運転若しくは保全作業員が、作業場の床上に設けられている充填装置の出入口(図示せず)から、回転体61の内側に入ることが可能になっている。回転体61の内側は、前記無菌雰囲気より隔離されているので、人手や工具の無菌化処理が不要となり、該作業員は所定の服装のまま、要すれば手工具を用いて支持台69の上に立って作業をすることができることから準備に手間取ることもなく、作業性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態に係わる充填バルブ組立の正面断面図である。
【図2】図1の充填バルブ組立の一部分を成す空気圧シリンダの正面断面図である。
【図3】図2の空気圧シリンダにおいて、バルブ全閉(開度=0%)のときのピストン並びにピストンロッドの位置を示す正面断面図である。
【図4】図2の空気圧シリンダにおいて、バルブ全開(開度=100%)のときのピストン並びにピストンロッドの位置を示す正面断面図である。
【図5】図4のバルブ全開の状態において、第2ロッド軸側の調整キャップ位置を調節して、当該バルブの開度を100%未満(開度は、調節代により決定する)に変更したときのピストン並びにピストンロッドの位置を示す正面断面図である。
【図6】図2の空気圧シリンダにおいて、バルブ部分開の調節前の状態(開度=0%)のときのピストン並びにピストンロッドの位置を示す正面断面図である。
【図7】図6のバルブ部分開を調節した状態(開度は、調節代により決定する)を示す正面断面図である。
【図8】本発明の充填バルブを複数備え付けた無菌充填装置の概略構造図に、充填容器と運転要員若しくは保全要員の外形を追記した正面断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1…充填バルブ、
2…開口結合構造体、
3…空気圧シリンダ、
5…液バルブ、
10…弁軸、
11…バルブ本体、
11a…弁吐出口、
11b…弁取付フランジ、
11e…固定弁座、
13…弁体ロッド、
15…可動弁体、
17…軸継手、
31…シリンダ本体、
32…第1ロッド軸端面ボス、
33…第2ロッド軸端面ボス、
34…第2ロッド軸、
35…第1ロッド軸、
36…調整キャップ、
41…大径ピストン、
42…小径ピストン、
43…ワッシャー
50…螺子回転調整手段、
55…ナット、
56…キャップナット、
60…無菌充填装置、
81、82…ストッパ、
V…充填容器、
A…小径ピストン側圧気ポート、
B…中央圧気ポート、
C…大径ピストン側圧気ポート、
Smax…充填バルブ全開に相当する空気圧シリンダのストローク、
a1…充填バルブ部分開の開度調節代、
a2…充填バルブ全開の開度調節代、
b1…第1ロッド軸側調整キャップの調整前間隔、
b2…第2ロッド軸側調整キャップの調整前間隔、
d1…第1ロッド軸側調整キャップとワッシャーの作動前間隔、
d2…第2ロッド軸側調整キャップとワッシャーの作動前間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填液通路を開閉する可動弁体と固定弁座からなる液バルブと、シリンダ本体内に上下方向に移動可能に配置され前記液バルブの弁体ロッドに連結された小径ピストンと、前記シリンダ本体内に上下方向に移動可能に配置され前記小径ピストンの移動を規制する大径ピストンと、前記小径ピストン及び大径ピストンを移動させる圧気ポートと、前記大径ピストンのシリンダ本体から突出した部分に取付けられシリンダ本体の位置規制部に当接することにより大径ピストンの移動位置を規制するストッパと、前記位置規制部と該ストッパとの間隔を調節する調節機構とを備えた充填バルブにおいて、
前記弁体ロッドの上端と前記小径ピストンと一体のロッド軸下端を軸継手等による連結構造とし、前記ロッド軸のシリンダ本体から突出した部分に取付けられシリンダ本体の位置規制部に当接することにより小径ピストンの移動を規制するストッパと、前記位置規制部と該ストッパとの間隔を調節する調節機構を備え、充填バルブの動作を全開用及び部分開用の2段階に変えるとともに、夫々独立して調節可能なことを特徴とする充填バルブ。
【請求項2】
請求項1の充填バルブにおいて、前記液バルブを収納するバルブ本体の下部のみが、無菌若しくは清浄な雰囲気内に露出されて、清浄な液体を清浄な容器に充填することが可能な構成を有することを特徴とする充填バルブ。
【請求項3】
請求項2の充填バルブにおいて、バルブ本体の中間部には、充填液の吐出口を含めた弁体下部を無菌若しくは清浄な充填雰囲気内に露出できるように、弁軸に垂直な取り付け面を有するフランジを備え、該バルブ本体と前記シリンダ本体、小径ピストン、大径ピストン等からなる空気圧シリンダとの間には、両者を連結すると同時に、前記無菌雰囲気から隔離された開口部から人手或いは通常の工具を用いて、前記小径ピストンと一体のピストンロッドの貫通部ボスに螺合された調整キャップを上下に調節可能にするための開口結合構造体を有することを特徴とする充填バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−52780(P2010−52780A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221158(P2008−221158)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(505193313)三菱重工食品包装機械株式会社 (146)
【Fターム(参考)】