説明

充填材含有熱可塑性樹脂成形体の製造方法

【課題】充填材の高充填された熱可塑性樹脂組成物の押出成形体について、スムーズに賦形でき、しかも生産性に優れる製造方法を提供する。
【解決手段】充填材の含有量が熱可塑性樹脂組成物全量に対し容量比で40〜80%である熱可塑性樹脂組成物を押出機1で混練したのち、押出成形用金型2から押出し、次いで押出物を、金型の下流側に配設された少なくとも一対以上の回転機構4に挟みこむようにして、賦形することを特徴とする充填材含有熱可塑性樹脂成形体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填材含有熱可塑性樹脂成形体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂の押出成形法においては、押出機内で混練した熱可塑性樹脂を金型から吐出し、冷却されたサイジング金型を通過させて賦形する手法が一般的に行われている。
【0003】
しかしながら、このような押出成形法における賦形手法は、充填材を高充填した熱可塑性樹脂組成物に用いると、熱可塑性樹脂組成物の溶融張力が小さいため、サイジング金型通過時にかかる抵抗と引取機による引取力によって熱可塑性樹脂組成物が千切れやすいといった問題がある。
【0004】
こういった問題を解決するために、押出機に取り付けられた賦形型の先端に冷却金型を直結して成形する方法いわゆる固化押出成形法がある。例えば、木粉を充填した熱可塑性樹脂組成物の固化押出成形法であって、固化押出した成形品の表面を加熱処理し、凹凸粗面を形成する手法が提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、固化押出成形法は押出機に直結された金型で冷却が行われるために背圧が高くなりやすく、また、金型内で樹脂を固化させる必要があるために、金型による冷却能力の律速のため生産性に乏しくなるといった問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開2002−79567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情の下、充填材の高充填された熱可塑性樹脂組成物の押出成形体について、スムーズに賦形でき、しかも生産性に優れる製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、充填材を高充填した熱可塑性樹脂組成物を押出機で混練したのち、金型から押出し、次いで押出物を金型の下流側に配設された回転機構に挟みこむことで賦形し、冷却固化させることにより、上記課題が達成されることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、充填材の含有量が熱可塑性樹脂組成物全量に対し容量比で40〜80%である熱可塑性樹脂組成物を押出機で混練したのち、押出成形用金型から押出し、次いで押出物を、金型の下流側に配設された少なくとも一対以上の回転機構に挟みこむようにして、賦形することを特徴とする充填材含有熱可塑性樹脂成形体の製造方法が提供される。
【0009】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、回転機構が、ローラーであることを特徴とする製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明の第3の発明によれば、第1または2の発明において、賦形断面が1つの略長方形のみで構成されないことを特徴とする製造方法が提供される。
【0011】
また、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、賦形断面が異型形状または中空形状であることを特徴とする製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、押出物を中空状とし、回転機構通過中の中空部の形崩れを防止する手段を設けたことを特徴とする製造方法が提供される。
【0013】
また、本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、上記手段が、金型に直結され、金型内から回転機構側へ突出して延設されたコア部によるものであることを特徴とする製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明の第7の発明によれば、第5または6の発明において、上記手段が、気体または液体の圧入によるものであることを特徴とする製造方法が提供される。
【0015】
また、本発明の第8の発明によれば、第7の発明において、コア部に貫通孔を開設し、コア部先端に中空部に対する栓を接続し、前記貫通孔を通じてコア先端と栓とに挟まれた空間に気体または液体を圧入することを特徴とする製造方法が提供される。
【0016】
また、本発明の第9の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、熱可塑性樹脂組成物を、回転機構通過中、吸引力によって回転機構に押し当てることを特徴とする製造方法が提供される。
【0017】
また、本発明の第10の発明によれば、第9の発明において、回転機構をボックス内に設置し、ボックス内を減圧することを特徴とする製造方法が提供される。
【0018】
また、本発明の第11の発明によれば、第1〜10のいずれかの発明において、回転機構を、それを通過する熱可塑性樹脂組成物の温度よりも低い温度に設定し、その温度を押出方向に向かって徐々に低くなるように制御することを特徴とする製造方法が提供される。
【0019】
また、本発明の第12の発明によれば、第1〜11のいずれかの発明において、熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする製造方法が提供される。
【0020】
また、本発明の第13の発明によれば、第1〜12のいずれかの発明において、充填材が、フライアッシュであることを特徴とする製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の製造方法によれば、充填材の高充填された熱可塑性樹脂組成物の押出成形において、スムーズに賦形でき、しかも生産性に優れるという顕著な効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の製造方法は、充填材を所定割合含有する熱可塑性樹脂組成物を押出機で混練したのち、押出成形用金型から押出し、次いで押し出された混練物を、金型の下流側に配設された少なくとも一対以上の回転機構に挟みこむようにして、賦形して、成形体とすることで特徴付けられる。
【0023】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂は特に限定されず、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ABS、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、アクリル樹脂等が挙げられ、これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱可塑性樹脂としては、比較的熱安定性のよいオレフィン系樹脂が好適に用いられる。
【0024】
本発明で用いられる充填材も特に限定されず、例えば木粉や竹繊維といった植物片や、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ウォラストナイト、ガラス繊維、水酸化マグネシウム、高炉スラグ、フライアッシュ等が挙げられ、これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
充填材としては、球状で高充填しやすいフライアッシュが好適に用いられる。
【0025】
充填材の含有量は、熱可塑性樹脂組成物全量に対し、容量比で、通常40〜80%の範囲、好ましくは45〜70%、より好ましくは55〜65%の範囲で選ばれる。
この含有量が40%より少ないと、熱可塑性樹脂組成物の粘度が低すぎて、異型成形が難しく、金型通過後の変形が大きかったり、回転機構に熱可塑性樹脂が付着したりする惧れがあるし、また、80%を超えても熱可塑性樹脂中に充填材を分散することが難しく、成形品の物性を著しく損なう惧れがある。
【0026】
回転機構はローラー、ベルトコンベア、キャタピラ等特に限定されないが、機構が簡便であり、自走する必要がないために、ローラーを複数個並列することが望ましい。
【0027】
賦形形状は特に限定されず、シート状に限らず、賦形断面が1つの略長方形のみで構成されない形状、例えば円形状や、サッシや雨樋のような異型形状や、パイプのような円筒形状や、中空角柱形状のような中空形状などであってもよい。図1に賦形形状とそれに対応する回転機構としてのローラー(4)の各種例を模式図で示す。
【0028】
賦形形状が中空形状の場合には形崩れ防止手段を講じるのが好ましい。形崩れ防止手段としては特に限定されないが、金型に直結され、金型内から回転機構側へ突出して延設されたコア部により、金型からの押出物をローラーに押し当てるようにして賦形したり、気体または液体の圧入、特に空圧により、形崩れを防止したりするのが望ましい。特に、空圧による形崩れ防止は低抵抗であるために好適である。
【0029】
空圧を与える手法としては、コア部に貫通孔を設け、これに連通するように、コア部を金型に結合させるためのブリッジ部に、先端は金型外に連通する貫通孔を設けることでエアーを吹き込む手法がある。適度な空圧を与えるには、コア先端に取り付けられたチェーンや紐等の先端に栓を取り付け、前記貫通孔を通じてコア先端と栓とに挟まれた空間にエアーを吹き込むのが好ましい。栓は抵抗を少なくするために、中空部のサイズよりも若干小さくしたり、穴を設けて空圧を調整したりするようにするのがよい。
このような製造方法に用いて好適な装置の一例を図3に示す。図3において、1は押出機、2は金型、3はコア部、4はローラー、5は貫通孔、6はブリッジ部、7は栓、8は引取機である。
その他、金型からの押出物が、回転機構通過中、吸引力によって回転機構に押し当てられるようにすることもでき、例えばローラー自体をボックス内に設置し、ボックス内を減圧することで金型からの押出物をローラーに押し当てるようにしてもよい。
【0030】
ローラー等の回転機構は、それを通過する熱可塑性樹脂組成物の温度よりも低い温度に設定し、しかもその温度を押出方向に向かって徐々に低くなるように制御するのが好ましく、例えば熱可塑性樹脂組成物が通過する入り口から出口に向かって徐々に低温となるように制御することが望ましい。急激に冷却すると入り口付近で表面が完全に固化してしまい、後続の回転機構で寸法精度が出しにくくなる恐れがある。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの例によって何ら限定されるものではない。
【0032】
実施例1
熱可塑性樹脂としてポリエチレンとポリプロピレンが混合されたリサイクル樹脂を用いた。リサイクル樹脂40体積%に対してJISII種フライアッシュを60体積%充填してなる樹脂組成物を、90mmの2軸異方向押出機を用いて混練し80kg/hで押し出した。金型出口での樹脂温度を180℃となるように設定したところ、樹脂圧は4MPaであった。金型からの吐出物は、その上下面をローラーで挟み込み、入り口のローラーは160℃、出口のローラーは80℃となるようにエアーで空冷し、また、金型のコア部からエアーを吹き込み、中空部を膨らませてローラーに押し当てて賦形し、寸法精度の良好な中空部を有する角材を得た。賦形時における断面概略図を図2に示す。なお、図2中、4はローラーである。
【0033】
比較例1
同一形状の金型の先端に100mmの冷却金型を連結し、固化押出をしたところ、押出量20kg/hで許容樹脂圧の35MPaを超え、成形不能となった。
【0034】
これより、充填材の高充填された熱可塑性樹脂組成物の押出成形において、比較例では、早期に成形不能となるのに対し、実施例では、賦形時に比較例よりも高速で押し出してもスムーズに賦形でき生産性に優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の製造方法は、充填材の高充填された熱可塑性樹脂組成物の押出成形において高速成形が可能で生産性に優れるなど、産業上大いに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】賦形形状とそれに対応する回転機構の各種例を示す模式図。
【図2】実施例1での賦形時における断面概略図。
【図3】本発明の製造方法に用いられる装置の一例の模式図。
【符号の説明】
【0037】
1 押出機
2 金型
3 コア部
4 ローラー
5 貫通孔
6 ブリッジ部
7 栓
8 引取機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填材の含有量が熱可塑性樹脂組成物全量に対し容量比で40〜80%である熱可塑性樹脂組成物を押出機で混練したのち、押出成形用金型から押出し、次いで押出物を、金型の下流側に配設された少なくとも一対以上の回転機構に挟みこむようにして、賦形することを特徴とする充填材含有熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
【請求項2】
回転機構が、ローラーであることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
賦形断面が1つの略長方形のみで構成されないことを特徴とする請求項1または2記載の製造方法。
【請求項4】
賦形断面が異型形状または中空形状であることを特徴とする請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
押出物を中空状とし、回転機構通過中の中空部の形崩れを防止する手段を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
上記手段が、金型に直結され、金型内から回転機構側へ突出して延設されたコア部によるものであることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
上記手段が、気体または液体の圧入によるものであることを特徴とする請求項5または6に記載の製造方法。
【請求項8】
コア部に貫通孔を開設し、コア部先端に中空部に対する栓を接続し、前記貫通孔を通じてコア先端と栓とに挟まれた空間に気体または液体を圧入することを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
押出物を、回転機構通過中、吸引力によって回転機構に押し当てることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
回転機構をボックス内に設置し、ボックス内を減圧することを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
回転機構を、それを通過する熱可塑性樹脂組成物の温度よりも低い温度に設定し、その温度を押出方向に向かって徐々に低くなるように制御することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
充填材が、フライアッシュであることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−178972(P2009−178972A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−20872(P2008−20872)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】