説明

充電装置

【課題】充電装置において、セキュリティ性を向上させることにある。
【解決手段】充電装置30において受信されるビークルID信号Sveに含まれるビークルIDコードの妥当性が確認されないとき、車両10への電力供給が遮断される。従って、正規でない車両に充電ケーブル5が接続された状態においては、ビークルIDコードの妥当性が確認されない。よって、充電装置30から正規でない車両に電力が供給されることが抑制される。これにより、例えば充電中の車両から給電プラグ36を取り外して別の車両の充電口に装着されても、同車両に給電されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のバッテリへ電力を供給する充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力により走行可能とされる電気自動車やハイブリッドカーが注目されている。これら車両は、車載バッテリを備える。そして、車外に設けられる充電スタンド等の外部電源から充電ケーブルを介して車載バッテリに電力が供給される。具体的には、充電ケーブルは、その一端が充電スタンドの本体に連結されるとともに、その他端には給電プラグが設けられている。この給電プラグが車両の外側面等に設けられるインレット(充電口)に接続されることで、充電スタンド及び車両は導通状態となる。この状態において、充電スタンドの本体からの電力を、充電ケーブルを介して車載バッテリに充電することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−161898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車載バッテリの充電には、ガソリン車のガソリン補給に比べて長い時間を要する。従って、給電プラグをインレットに接続して充電を開始した後、その状態で車両を長時間放置するケースが多くなる。また、充電が完了している場合であっても、乗車予定時刻に合わせて事前に空調を行う予備冷暖房の電力源を確保するために、給電プラグをインレットに接続した状態に保つこともある。このため、例えば、充電中や予備冷暖房中の車両から給電プラグを取り外して、これが別の車両のインレットに装着されて盗電されるおそれがある。また、充電中等でなくても、同様に不正に給電プラグが車両のインレットに装着されて盗電されるおそれがある。
【0005】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、セキュリティ性を向上させた充電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、車両に接続される充電ケーブルを介して同車両に電力を供給して充電を行う充電装置において、前記車両からのIDコードを含む無線信号を受信する受信アンテナと、前記受信した無線信号に含まれるIDコードの妥当性の判断を行う照合部と、前記照合部においてIDコードの妥当性が確認されないとき、前記充電ケーブルを通じた前記車両への電力供給を規制する電力供給制御部と、を備えたことをその要旨としている。
【0007】
同構成によれば、無線信号に含まれるIDコードの妥当性が確認されないとき、車両への電力供給が規制される。従って、充電ケーブルが正規でない車両に接続された場合にはIDコードの妥当性が確認されず、充電装置から正規でない車両に電力が供給されることが抑制される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の充電装置において、前記無線信号はユーザに携帯される電子キー及び車両間での車両ドアの施解錠に係る通信において車両から送信される信号であることをその要旨としている。
【0009】
既存の電子キーシステムにおいて、車両から電子キーに対してIDコードを含む無線信号が送信される。上記構成によれば、充電装置はこの無線信号を利用して車両を認証する。すなわち、照合部によりIDコードの妥当性が確認される。そして、IDコードの妥当性が確認されない場合、電力供給制御部により車両への充電が規制される。このため、電子キーシステムを備えた車両に新たな構成を追加することなく、充電装置において充電を行う車両が正規のものであるか否かの判断ができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の充電装置において、前記充電ケーブルの前記車両への接続の有無を検知する検知センサを備え、前記電力供給制御部は、充電中に前記検知センサを通じて前記充電ケーブルの前記車両への接続が解除された旨認識したとき、前記充電ケーブルへの電力供給を規制することをその要旨としている。
【0011】
同構成によれば、充電ケーブルの車両への接続が解除されたとき、充電装置から車両への電力供給が規制される。従って、正規の車両の充電中に、正規でない車両に充電ケーブルが挿し替えられた場合であっても、正規でない車両に電力が供給されることはない。よって、より確実に充電装置から正規でない車両に電力が供給されることが抑制される。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の充電装置において、前記充電ケーブルには車両に挿し込まれる給電プラグを設け、前記受信アンテナは前記給電プラグに設けられることをその要旨としている。
【0013】
同構成によれば、無線信号を受信する受信アンテナは車両に挿し込まれる給電プラグに設けられる。よって、車両から送信される無線信号をより確実に受信することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、充電装置において、セキュリティ性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】車両、電子キー及び充電装置の構成図。
【図2】車両の上面図。
【図3】車両、充電装置、電子キーから送信される各種信号のタイミングチャート。
【図4】充電制御プログラムの処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明にかかる充電装置を具体化した第1の実施形態について図1〜図4を参照して説明する。
図1に示すように、電気自動車である車両10は、駐車場に備え付けられる充電装置30により充電が行われる。充電装置30は、その本体から車両10側に延出する充電ケーブル5を備え、同充電ケーブル5の先端には給電プラグ36が設けられている。給電プラグ36は、ユーザに把持された状態で車両10の外面に設けられる充電口10aに挿入される。これにより、充電ケーブル5を介して充電装置30及び車両10は導通状態となる。充電ケーブル5は、電力線の他、後述する給電プラグ36に設けられる受信アンテナ37aやプラグ検出スイッチ32からの信号を充電装置30の本体側に送信する信号線を備え、それら線が束ねられて外周が樹脂にて被覆されている。
【0017】
車両10は、車両側制御部11と、充電回路12と、バッテリユニット13と、モータ14とを備える。充電回路12は、充電ケーブル5を通じて車両10に供給される交流電力を直流電力に変換して、その直流電力をバッテリユニット13に供給する。これにより、バッテリユニット13は充電される。車両側制御部11は、充電回路12を通じてバッテリユニット13への充電電力に係る制御を行う。また、車両側制御部11は、バッテリユニット13を通じて、モータ14への電力供給を制御する。モータ14に電力が供給されることで、モータ14の出力軸を介して駆動輪が駆動される。これにより、車両10は走行可能となる。また、バッテリユニット13は電圧センサ13aを備え、同電圧センサ13aの検出結果は車両側制御部11に出力される。車両側制御部11は、電圧センサ13aの検出結果に基づきバッテリユニット13の蓄電量を認識する。
【0018】
また、車両側制御部11は、不揮発性のメモリ11aを備え、同メモリ11aには車両10に個別に設定されたキーIDコード、及びビークルIDコード等が記憶されている。
車両10には、ユーザに携帯される電子キー20との間での通信を通じて車両ドアの施解錠が可能とされる電子キーシステムが搭載されている。すなわち、車両10は、送信回路18と、送信アンテナ18aと、受信アンテナ17aと、受信回路17と、ドアロック装置16と、ドアハンドルスイッチ19とを備えている。送信回路18は、車両側制御部11から入力される要求信号を所定周波数の電波に変調する。本実施形態では所定周波数は、LF(Low Frequency)帯の周波数である。送信アンテナ18aは、送信回路18により変調された要求信号を車両周辺に送信する。
【0019】
図2に示すように、送信回路18及び送信アンテナ18aは、車両ドアのドアハンドルに内蔵されている。要求信号は、車両10上方からみて、ドアハンドルを中心として車外側に半円状に設定される通信エリア50に送信される。また、各ドアハンドルには、ドアハンドルスイッチ19が設けられている。図1に示すように、ドアハンドルスイッチ19が操作されると、その旨の操作信号が車両側制御部11に出力される。
【0020】
電子キー20は、キー側制御部21と、送信回路28と、送信アンテナ28aと、受信アンテナ27aと、受信回路27とを備えている。キー側制御部21は、不揮発性のメモリ21aを備え、このメモリ21aには車両10のメモリ11aと同様にキーIDコード、ビークルIDコード等が記憶されている。受信アンテナ27aは、車両10から送信されてくる要求信号を受信する。受信回路27は、受信アンテナ27aにより受信された要求信号を復調して、この復調された要求信号をキー側制御部21に出力する。
【0021】
キー側制御部21は、受信回路27から要求信号が入力された旨認識したとき、メモリ21aに記憶されるキーIDコードを含む応答信号を生成するとともに、その応答信号を送信回路28に出力する。送信回路28は、キー側制御部21から入力された応答信号を所定周波数の電波に変調する。本実施形態では所定周波数はRF(Radio Frequency)帯の周波数である。送信アンテナ28aは、送信回路28により変調された応答信号を送信する。
【0022】
車両10の受信アンテナ17aは、電子キー20からの応答信号を受信する。受信回路17は、受信アンテナ17aを通じて受信された応答信号を復調して、この復調された応答信号を車両側制御部11に出力する。
【0023】
車両側制御部11は、入力された応答信号を認識し、同応答信号に含まれているキーIDコードと、メモリ11aに記憶されるキーIDコードとの照合を行う。車両側制御部11は、キーIDコードの照合が成立したとき、解錠許可状態となる。車両側制御部11は、解錠許可状態において、ドアハンドルスイッチ19が操作された旨の操作信号を受けると、ドアロック装置16を介して車両ドアを解錠する。
【0024】
ここで、正確には要求信号及び応答信号は、それぞれ単一の信号ではなく、複数の信号からなる。すなわち、要求信号は、図3に示すように、ウェイク信号Swkと、ビークルID信号Sveと、チャレンジ信号Sccとからなる。また、応答信号はアック信号Sacと、レスポンス信号Sreとからなる。
【0025】
車両10は、図3の上段に示すように、通信エリア50に電子キー20が存在するか否かを確認すべく、送信アンテナ18aからウェイク信号Swkを断続的に発信させる。このウェイク信号Swkは、待機状態にある電子キー20を起動状態とする指令信号であって、一定の時間間隔をおいて送信アンテナ18aから繰り返し発信される。
【0026】
電子キー20は、通信エリア50に進入して、このウェイク信号Swkを受信すると、待機状態から起動状態に動作状態が切り換わる。電子キー20は、図3の中段に示すように、正常に起動状態をとると、その旨を通知すべく車両10に向けてアック信号Sacを送信する。
【0027】
車両10は、アック信号Sacを受信すると、電子キー20が通信エリア50に存在すると判断する。そして、車両10は、車両に固有のビークルIDコードを含むビークルID信号Sveを送信する。
【0028】
電子キー20は、ビークルID信号Sveを受信すると、同ビークルID信号Sveに含まれるビークルIDコードの照合を行う(ビークルID照合)。具体的には、キー側制御部21は、ビークルID信号Sveに含まれるビークルIDコードと、メモリ21aに記憶されるビークルIDコードとの照合を通じて、車両10が正規の車両であるか否か判断する。キー側制御部21は、ビークルID照合が成立したとき正規の車両である旨判断し、ビークルID照合が成立しないとき正規の車両でない旨判断する。このように、ビークルID照合を行うことで、電子キー20の周囲に複数の車両が存在して、同複数の車両から要求信号を受信する状況になっても、電子キー20は自身に対応する正規車両のみとビークルID信号Sveの受信以降の通信を行うことができる。
【0029】
電子キー20は、図3の中段に示すように、ビークルID照合が成立した事を認識すると、その旨を通知すべく車両10に向けてアック信号Sacを送信する。
車両10は、ビークルID信号Sveを発信した後に正常にアック信号Sacを受信すると、電子キー20との間でビークルID照合が成立したとして、通信エリア50内に存在する電子キー20が自身とペアをなすものであると認識する。
【0030】
車両10は、ビークルID照合が成立した事を認識すると、次にチャレンジ信号Sccを送信する。チャレンジ信号Sccは、乱数として用いるチャレンジコードと、車両10側に登録された電子キー20のキー番号とからなる。
【0031】
電子キー20は、車両10からチャレンジ信号Sccを受信すると、この時に受け付けたキー番号と自身に登録されたキー番号とを照らし合わせて番号照合を行い、自身が通信対象であるか否かを判断する。なお、この番号照合は、通信相手の電子キー20についてマスター又はサブのキー種を判定する照合である。
【0032】
この番号照合が成立した電子キー20は、自身のメモリ21aに記憶されたキーIDコード及びレスポンスコードを含ませたレスポンス信号Sreを送信する。レスポンスコードは、チャレンジコードを、暗号鍵を用いて暗号化したコードである。
【0033】
車両10は、レスポンス信号Sreを受信すると、レスポンス照合及びキーID照合を行う。具体的には、車両側制御部11は、チャレンジ信号Sccを発信する際、自身が持つ暗号鍵によってチャレンジコードを暗号化することにより、自らもレスポンスコードを生成する。そして、車両側制御部11は、電子キー20からレスポンス信号Sreを受信すると、レスポンス信号Sreのレスポンスコードと、自身が演算したレスポンスコードとの照合を行う(レスポンス照合)。車両10は、このレスポンス照合が成立することを確認すると、レスポンス信号Sreに含まれるキーIDコードと、メモリ11aに記憶されるキーIDコードとの照合を行う(キーID照合)。
【0034】
車両10は、レスポンス照合及びキーID照合が成立することを確認すると、これを以てID照合が成立したとして処理する。ID照合が成立した場合には、車両側制御部11は、解錠許可状態となる。車両側制御部11は、解錠許可状態において、ドアハンドルスイッチ19が操作された旨の操作信号を受けると、ドアロック装置16を介して車両ドアを解錠する。
【0035】
次に、充電装置30の構成について説明する。
図1に示すように、充電装置30は、スイッチ素子39と、充電側制御部31と、受信回路37と、受信アンテナ37aと、送信回路38と、送信アンテナ38aと、登録スイッチ33と、プラグ検出スイッチ32とを備える。プラグ検出スイッチ32、受信アンテナ37aは給電プラグ36に設けられ、その他は充電装置30の本体に設けられる。
【0036】
充電側制御部31は、メモリ31aを備え、同メモリ31aには車両固有のビークルIDコード、充電制御プログラム等が記憶されている。メモリ31aには、充電装置30を通じた充電が許可された複数車両のビークルIDコードを記憶することができる。
【0037】
スイッチ素子39は、オン、オフ間で状態が切り替わることで、商用電源2から充電ケーブル5への電力供給を許可又は遮断する。また、プラグ検出スイッチ32は、給電プラグ36の充電口10aへの挿込の有無を検出する。プラグ検出スイッチ32の検出結果は、充電ケーブル5を介して充電側制御部31に出力される。なお、図1においては、プラグ検出スイッチ32及び充電側制御部31間の信号線は省略されている。
【0038】
充電側制御部31は、プラグ検出スイッチ32を通じて給電プラグ36が充電口10aに挿し込まれたことを認識すると、受信アンテナ37aをスリープ状態から受信待機状態とする。また、充電側制御部31は、プラグ検出スイッチ32を通じて給電プラグ36が充電口10aから引き抜かれたことを認識すると、受信アンテナ37aを受信待機状態からスリープ状態とする。受信アンテナ37aは、受信待機状態となることで車両10からのウェイク信号Swkを受信可能となる。このように、受信待機状態とする期間を、給電プラグ36が充電口10aに挿し込まれている期間に限定することで、受信待機に係る消費電力を抑制することができる。受信アンテナ37aは、受信したウェイク信号Swkを充電ケーブル5の信号線を介して受信回路37に出力する。受信回路37は、ウェイク信号Swkを復調して、この復調した信号を充電側制御部31に出力する。
【0039】
充電側制御部31は、ウェイク信号Swkを認識すると、アック信号Sacを生成して送信回路38に出力する。送信回路38は、アック信号SacをRF帯の電波に変調し、この変調されたアック信号Sacを、送信アンテナ38aを介して車両10に送信する。
【0040】
充電装置30は、図3の下段に示すように、ウェイク信号Swkに対するアック信号Sacのみを発信し、電子キー20と異なって、その後、ビークルID信号Sveに対するアック信号Sac、チャレンジ信号Sccに対するレスポンス信号Sreを送信することはない。
【0041】
車両10は、上記電子キー20との通信と同様に、アック信号Sacに対してビークルID信号Sveを送信する。充電装置30の受信回路37は、受信アンテナ37aを介して受信したビークルID信号Sveを復調して、この復調した信号を充電側制御部31に出力する。充電側制御部31は、ビークルID信号Sveを認識すると、照合部34を介して同ビークルID信号Sveに含まれるビークルIDコードと、メモリ31aに記憶されるビークルIDコードとの照合を行う(ビークルID照合)。ここで、メモリ31aには複数のビークルIDコードが記憶されている場合がある。この場合、メモリ31aに記憶される何れかのビークルIDコードがビークルID信号Sveに含まれるビークルIDコードと一致すればビークルID照合が成立したと判断される。充電側制御部31は、ビークルID照合が成立すると、給電プラグ36が挿し込まれた車両は正規のものであるとして、電力供給制御部35を介してスイッチ素子39をオフ状態からオン状態とする。スイッチ素子39がオン状態とされることで、商用電源2からの電力が充電ケーブル5を介して車両10に供給される。これにより、充電装置30による正規の車両10への充電が可能となる。ここで、正規の車両10とは、メモリ31aにビークルIDコードが記憶されている車両10をいう。
【0042】
充電側制御部31は、ビークルID照合が成立しないとき、給電プラグ36が挿し込まれた車両は正規のものでないとして、電力供給制御部35を介してスイッチ素子39をオフ状態に維持する。スイッチ素子39がオフ状態に維持されることで、商用電源2から充電ケーブル5への電力供給も遮断された状態に維持される。これにより、充電装置30による正規でない車両への充電、すなわち盗電が抑制される。
【0043】
このように、充電装置30は、車両10との通信を行う。このとき、車両10では電子キー20と通信するときと同様の処理が行われる。よって、電子キーシステムを搭載する車両に新たな構成や新たな制御を追加することなく、車両10及び充電装置30間の通信を行うことができる。
【0044】
充電側制御部31は、プラグ検出スイッチ32を通じて充電口10aから給電プラグ36が引き抜かれたことを認識すると、スイッチ素子39をオン状態からオフ状態とする。なお、このとき、すでにスイッチ素子39がオフ状態であれば、その状態が維持される。これにより、正規の車両への充電中に給電プラグ36が正規でない車両へ挿し替えられた場合に、正規でない車両への充電を防止することができる。給電プラグ36が引き抜かれてスイッチ素子39がオフ状態とされた場合には、再びビークルID照合が成立しない限り、スイッチ素子39がオン状態とされることはない。
【0045】
また、図2に示すように、車両10の周辺には通信エリア50が形成される。この通信エリア50は、充電口10aを含むように設定されている。よって、たとえ充電装置30の本体が通信エリア50外に存在する場合であっても、充電口10aに給電プラグ36が挿し込まれることで、受信アンテナ37aは車両10からのウェイク信号Swk、ビークルID信号Sveを確実に受信することができる。これにより、例えば、受信アンテナ37aを充電装置30の本体に設けた場合に比べて、受信アンテナ37aが他の車両からのウェイク信号Swkを受信することが防止される。また、通信エリア50を充電装置30の本体を含むように大きく形成する必要がない。
【0046】
次に、充電装置30への車両の登録方法について説明する。車両登録は、メモリ31aに車両のビークルIDコードが記憶されることで行われる。具体的には、登録スイッチ33の操作を通じて充電側制御部31を通常モードから登録モードとする。この登録スイッチ33の操作を通じた登録モードへの切り替えは、例えば暗証番号やキー等により特定の人のみによって可能とされている。通常モードとは、上述のようにビークルID照合を行うモードである。登録モードにおいて、充電装置30は、上述と同様に、給電プラグ36が充電口10aに挿入されると、ウェイク信号Swkを受信し、アック信号Sacを送信する。この後、充電装置30はビークルID信号Sveを受信する。充電側制御部31は、ビークルID信号Sveに含まれるビークルIDコードをメモリ31aに記憶する。そして、登録スイッチ33の操作を通じて登録モードから通常モードへの切り替えが行われる。以上で、車両登録作業は完了となる。
【0047】
次に、充電側制御部31が実行する充電制御プログラムについて説明する。当該プログラムは、図4のフローチャートに示される処理手順に従って実行される。当該プログラムは、プラグ検出スイッチ32を通じて充電口10aへの給電プラグ36の挿込が認識されたとき開始される。このとき、スイッチ素子39はオフ状態である。
【0048】
まず、車両10からのウェイク信号Swkが受信されるか否かが判断される(S101)。ウェイク信号Swkの受信がない旨判断された場合(S101でNO)、給電プラグ36が挿入された車両には電子キーシステムが搭載されておらず、当然そのビークルIDコードが登録されていないとして、スイッチ素子39をオフ状態に保ったまま(S105)、当該プログラムが終了される。
【0049】
ウェイク信号Swkの受信があった旨判断された場合(S101でYES)、アック信号Sacが送信される(S102)。そして、アック信号Sacに対するビークルID信号Sveが受信されると(S103)、それに含まれるビークルIDコードと、メモリ31aに記憶されるビークルIDコードとの照合が行われる(S104)。
【0050】
ビークルID照合が成立しない旨判断されると(S104でNO)、給電プラグ36が挿入された車両は正規の車両でないとして、スイッチ素子39のオフ状態が保たれる(S105)。これにより、正規でない車両への充電が規制された状態で、当該プログラムが終了される。ビークルID照合が成立した旨判断されると(S104でYES)、給電プラグ36が挿入された車両は正規の車両であるとして、スイッチ素子39がオフ状態からオン状態とされる(S106)。これにより、正規の車両への充電が開始され、充電が完了するのを待つ(S107でNO)。充電が完了したとき(S107でYES)、当該プログラムが終了される。ここで、充電完了とは、例えば、電圧センサ13aを通じてバッテリユニット13が満充電状態となった旨認識されたときである。
【0051】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)充電装置30において受信されるビークルID信号Sveに含まれるビークルIDコードの妥当性が確認されないとき、車両10への電力供給が遮断される。従って、正規でない車両に充電ケーブル5が接続された状態においては、ビークルIDコードの妥当性が確認されない。よって、充電装置30から正規でない車両に電力が供給されることが抑制される。これにより、例えば充電中や上記背景技術で説明した予備冷暖房中の車両から給電プラグ36を取り外して別の車両の充電口に装着されても、同車両に給電されない。これにより、盗電が防止されるため、セキュリティ性が向上する。
【0052】
(2)一般的な電子キーシステムにおいて、車両10から電子キー20に対してビークルIDコードを含むビークルID信号Sveが送信される。本例において、充電装置30はこのビークルID信号Sveを利用して照合部34を通じてビークルIDコードの妥当性を確認し、ビークルIDコードの妥当性が確認できない場合、電力供給制御部35を通じて車両10への電力供給を遮断する。このため、一般的な電子キーシステムを備えた車両に新たな構成を追加することなく、充電装置30において充電を行う車両が正規のものであるか否かの判断ができる。
【0053】
(3)充電ケーブル5の車両10への接続が一度解除されると、スイッチ素子39がオフ状態とされる。従って、正規の車両の充電中に、正規でない車両に充電ケーブル5が挿し替えられた場合であっても、正規でない車両に電力が供給されることはない。よって、より確実に充電装置30から正規でない車両に電力が供給されることが抑制される。
【0054】
(4)要求信号(ウェイク信号Swk、ビークルID信号Sve)を受信する受信アンテナ37aは車両の充電口10aに挿し込まれる給電プラグ36に設けられる。よって、車両から送信される要求信号をより確実に受信することができる。
【0055】
(5)給電プラグ36は、地上に固定される充電装置30の本体に比べて、衝撃等が加わることが多い。よって、受信アンテナ37aのみを給電プラグ36に設け、受信回路37を充電装置30の本体に設けることで、衝撃等に伴う同受信回路37の不具合を抑制することができる。
【0056】
(6)近年、充電口に挿し込まれた給電プラグの充電中における不正な引き抜きを防止するロック構造が検討されている。本構成においても、給電プラグの挿し替えに伴う盗電を抑制できるものの、給電プラグを無理に引き抜くことやロック構造自体の破壊等により盗電されるおそれがある。その点、本例においては、正規でない車両に給電プラグが挿し込まれた場合であっても、給電プラグ36への給電が行われないため、より確実に盗電を抑制できる。また、上記ロック構造を車両10に追加する必要がない。
【0057】
(7)充電装置30及び車両10間で通信を行うため、電子キー20を携帯してなくても、正規の車両10への充電を行うことができる。
(8)受信アンテナ37aの受信待機状態とする期間を、給電プラグ36が充電口10aに挿し込まれている期間に限定することで、受信待機に係る消費電力を抑制することができる。また、ユーザの意図なく、給電プラグ36が通信エリア50に進入して、充電装置30からの充電が可能となることが抑制される。
【0058】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態においては、受信アンテナ37aは給電プラグ36に設けられていた。しかし、受信アンテナ37aは充電装置30の本体に設けられていてもよい。この場合、通信エリア50内に充電装置30の本体を設ける、換言すると、そのように車両10を駐車する必要がある。
【0059】
・上記実施形態においては、プラグ検出スイッチ32を通じて給電プラグ36が充電口10aから引き抜かれたことが認識されていた。しかし、プラグ検出スイッチ32を省略して構成してもよい。この場合、充電側制御部31は、充電ケーブル5と車両10との導通状態を監視して給電プラグ36が充電口10aから引き抜かれた旨を認識する。この場合、充電装置30の本体、例えばスイッチ素子39に隣接する位置に電流センサを設け、この電流センサの検出結果に基づき導通状態を監視する。この場合、スイッチ素子39がオフ状態にあるとき、給電プラグ36が充電口10aへ挿入されても導通状態とならないため、給電プラグ36の充電口10aへの挿入を認識できない。よって、この場合、受信アンテナ37aを常時受信待機状態とし、充電制御プログラムはウェイク信号Swkを受信したとき、すなわち図4のステップS101から開始されるようにすることが好ましい。
【0060】
さらに、充電側制御部31は、導通状態及びプラグ検出スイッチ32の両方で給電プラグ36が充電口10aから引き抜かれたことを認識してもよい。これにより、充電中における給電プラグ36の引き抜きがより確実に認識される。
【0061】
また、給電プラグ36の引き抜きは認識できなくてもよい。この場合、例えば、充電装置30は、電圧センサ13aを通じてバッテリユニット13が満充電状態となった旨認識したときスイッチ素子39をオフ状態とし、再度ビークルID照合が成立したとき、スイッチ素子39をオン状態とする。
【0062】
・上記実施形態においては、充電装置30は、ビークルID信号Sveに含まれるビークルIDコードを利用して充電する対象が正規の車両であるか否かを判断していた。しかし、充電装置30は、ビークルID照合だけでなく、キーID照合及びレスポンス照合が成立したとき、正規の車両であるとしてスイッチ素子39をオン状態としてもよい。ここで、キーID照合及びレスポンス照合は車両10において行われる。従って、車両10は、図3に2点鎖線で示すように、両照合が成立したとき、その旨を含む照合成立信号Sokを送信する。充電装置30は、照合成立信号Sokを認識したとき、スイッチ素子39をオン状態とする。このように、充電装置30は、ビークルID照合のみならず、キーID照合及びレスポンス照合を通じて正規の車両であるか否かを判断することで、その判断をより正確にすることができる。
【0063】
・また、例えば、ウェイク信号SwkにIDコードを含ませて送信させてもよい。この場合、充電装置30は、ウェイク信号Swkに含まれるIDコードの照合を行い、照合が成立した場合にはスイッチ素子39をオフ状態からオン状態とする。この場合、充電装置30において、アック信号Sacを送信する構成、すなわち送信回路38及び送信アンテナ38aを省略することができる。また、図4のフローチャートにおけるステップS102及びステップS103を省略することができ、ステップ104においてウェイク信号Swkに含まれるIDコードの照合が行われる。
【0064】
さらに、充電装置30は、電子キーシステムにおける車両10からの信号を利用しなくてもよい。この場合、車両10からは電子キーシステムにおける信号とは別にIDコードを含む無線信号が送信される。
【0065】
・上記実施形態においては、照合部34及び電力供給制御部35を単一の充電側制御部31として設けたが、照合部34及び電力供給制御部35を別々に設けてもよい。
・上記実施形態においては、車両10は電気自動車であったが、ガソリン及び電気の双方で走行可能とされるハイブリッドカーであってもよい。
【0066】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
(イ)請求項1〜4のいずれか一項に記載の充電装置において、前記充電装置は送信アンテナを備え、前記車両から送信されるウェイク信号を、前記受信アンテナを通じて受信すると、ウェイク信号を受信した旨のアック信号を前記送信アンテナを通じて車両に送信し、前記車両は前記アック信号を受信すると前記無線信号を送信する充電装置。
【符号の説明】
【0067】
5…充電ケーブル、10…車両、20…電子キー、30…充電装置、37a…受信アンテナ、34…照合部、35…電力供給制御部、36…給電プラグ、39…スイッチ素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に接続される充電ケーブルを介して同車両に電力を供給して充電を行う充電装置において、
前記車両からのIDコードを含む無線信号を受信する受信アンテナと、
前記受信した無線信号に含まれるIDコードの妥当性の判断を行う照合部と、
前記照合部においてIDコードの妥当性が確認されないとき、前記充電ケーブルを通じた前記車両への電力供給を規制する電力供給制御部と、を備えた充電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の充電装置において、
前記無線信号はユーザに携帯される電子キー及び車両間での車両ドアの施解錠に係る通信において車両から送信される信号である充電装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の充電装置において、
前記充電ケーブルの前記車両への接続の有無を検知する検知センサを備え、
前記電力供給制御部は、充電中に前記検知センサを通じて前記充電ケーブルの前記車両への接続が解除された旨認識したとき、前記充電ケーブルへの電力供給を規制する充電装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の充電装置において、
前記充電ケーブルには車両に挿し込まれる給電プラグを設け、
前記受信アンテナは前記給電プラグに設けられる充電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−16132(P2012−16132A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148920(P2010−148920)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】