説明

光−電気装置の導電性ポリマー組成物

本発明は、有機発光装置に使用される導電性組成物であって、共役主鎖を有するポリカチオン、ポリカチオンの電荷をバランスするポリアニオン、および前記ポリマー主鎖からの分岐された側基を含む正孔輸送層を含み、各側基は1または2以上のXY基を含み、XYは完全にイオン化されるような高分離定数を有する基を表す導電性組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ポリマー組成物および導電性ポリマー組成物を含む光−電気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光−電気装置の1つの種類は、発光または光検出のための有機材料を使用するものである。これらの装置の基本構造は、発光層への負電荷(電子)注入用カソードと正電荷(正孔)注入用アノードの間に挟まれる発光層、例えば、ポリフェニレンビニレン(PPV)またはポリフルオレンである。電子および正孔は有機層で結合して光子を生成する。WO90/13148においては、有機発光材料はポリマーである。US4,539,507においては、有機発光材料は(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)のような低分子材料として知られている種類である。実用的な装置においては、電極の1つは透明であり、光子を装置から逃がすことを可能にする。
【0003】
典型的な有機発光装置(OLED)は、インジウム錫酸化物(ITO)のような透明アノードでコーティングされたガラスまたはプラスチック基板上に形成される。少なくとも1つの電子発光有機材料の薄膜の1層は、第1電極を覆う。最終的に、カソードは電子発光有機材料層を覆う。カソードは、通常、金属または合金であり、アルミニウムのような単一層またはカルシウムおよびアルミニウムのような複合層を含む。
【0004】
動作については、正孔がアノードを貫通して装置に注入され、電子がカソードを貫通して装置に注入される。正孔と電子は有機層中で結合して励起子を形成し、次いで、放射性崩壊して光を生成する。
【0005】
これらの装置は、ディスプレイとして大きな可能性を有している。しかしながら、いくつかの重要な問題がある。1つは、特に外的電力効率および外的量子効率によって測定される装置の効率性を高めることである。他の問題は、ピーク効率が得られる電圧を最適化(最小化)することである。他は、装置の寿命を延ばすことである。
【0006】
この目的のため、1または2以上のこれらの問題を解決するため、上述した基本的な装置構造の多くの改良がなされてきた。例えば、正孔輸送層は正孔を発光有機層に輸送するのを助けるためにアノードと発光有機層の間に供給される。また、電子輸送材料層が電子を発光有機層に輸送するのを助けるためにカソードと発光有機層の間に供給される。
【0007】
他のこのような改良は、発光有機層と電極の1つの間の層の提供である。このような導電ポリマー層の提供は、立ち上がり電圧、低電圧での装置の輝度、装置の効率、寿命および安定性を改良することができる。
【0008】
Chem.Mater.2004,16,708−716は、電子注入層としての使用に適すると言われている2つの共役されたフルオレンポリエレクトロライトを開示している(2頁、4頁)。
【0009】
アノードと発光有機層の間の正孔注入層として使用に適した導電性ポリマーの1例としては、ポリスチレンスルホン酸ドープポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT−PSS)がある(EP0,686,662を参照)。この組成物は、中間イオン化ポテンシャル(アノードのイオン化ポテンシャルと発光体のイオン化ポテンシャルの中間)として4.8eVよりやや大を提供し、これは、正孔が光−電子装置の隣接層中のアノードから有機発光材料または正孔輸送材料のような材料のHOMOレベルに到達するのを助ける。PEDOT−PSSは、より頑丈な層を提供するために架橋を形成するエポキシ−シランを含む。通常、装置中のPEDOT/PSS層は、約50nmの厚さである。この層の導電性は層の厚さに依存する。
【0010】
PEDOTおよびPSSの化学構造は下記のように知られている。
【0011】
【化1】

【0012】
PEDOT−PSS組成物中において、PEDOTは酸化されて正孔輸送体として働くポリマーラジカルカチオンを生成する。酸化されたジオキシチオフェンは、これを安定化するアニオンを必要とし、これはPSSである。PSSはイオン化してPEDOTの電荷を安定化するために対イオンとして働くポリマーアニオンを生成する。
【0013】
PEDOT:PSSは水溶解性で、したがって溶液プロセス性がある。ITOアノードと発光層(または、存在するならば正孔輸送層)の間のPEDOT:PSSの供給は、ITOから発光層への正孔の注入を増加させ、ITOアノード表面を平坦化し、局地的な短絡電流を防止しながら、アノード表面を横切る電荷注入のエネルギー相違を効率的に生成する。
【0014】
装置の層中のPEDOT:PSSを変えることによって装置の機能特性を有効に変えることができることがわかった。
【0015】
PEDOT:PSSの比率を1:2.5とすることによってプロセス性の安定した溶液を提供する。すなわち、溶液中のこれ以上の比率のPSSを有する材料である。低い濃度においては、溶液から出てしまう。しかしながら、1:2.5の比率においては、導電性は非常に高く、例えば、前述したように層地中の電極配線間でショートを生じるので、ある種の光−電子装置には使用できない。
【0016】
実用上は、過剰なPSS(すなわち、PEDOTの電荷をバランスするのに必要とされる量より過剰な量)は装置特性を改良することができ、US6605823に開示されるように寿命を延ばすことができる。さらに、過剰なPSSは組成物をインクジェット印刷しやすくすることができる。「過剰なPSS」とは、PEDOTが溶液から沈殿するのを防ぐに必要な量を超えるPSSを意味する。したがって、PEDOT:PSS比率、1:6、1:16またはこれ以上のような過剰なPSSの使用は実用上の装置においては有益である。
【0017】
上記から、装置の製造の容易性および良好な特性と寿命を有する装置を製造するために
過剰なPSSは有利であることが明らかである。しかしながら、さらに装置の寿命を延ばし、製造プロセスを容易および安価にする要望が常に存在する。あるいは、過剰なPSSを有するPEDOT−PSS系に替わるものが求められている。理論に拘束されないならば、前述のPEDOT−PSS系を使用した装置の寿命に対するあり得る限界は、このような過剰なPSSの供給が組成物を強い酸性にしてしまうことである。これはいくつかの問題をもたらし得る。例えば、ITOに接触する高濃度の強酸は、インジウム、錫および酸素成分のPEDOTへの放出を伴うITOのエッチングを引き起こし、これを覆う発光ポリマーを劣化させる。さらに、この酸は発光ポリマーと相互作用して装置特性に有害な電荷分離をもたらす。
【0018】
近年、PSSに対する代替の研究がなされてきた。例えば、WO04/029128は、OLEDのバッファー層(正孔輸送層)としてポリチオフェンの水溶性分散物および少なくとも1つのコロイド形成高分子酸の使用を開示する。特に、PEDT/Nafion(登録商標)(弗化スルホン酸)組成物が開示されている。
【特許文献1】米国6605823号明細書
【特許文献2】国際公開04/029128号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、前述したPEDOT−PSS系の代替、好ましくは、良好な装置特性、寿命および製造の容易性をもたらすものの提供が望まれている。
【0020】
上記に概略述べた1または2以上の問題を解決することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の第1の側面は、次の成分を含む、OLEDに使用される導電性組成物を提供することにある。
【0022】
共役主鎖を有するポリカチオン、
ポリカチオンの電荷をバランスするポリアニオン、
前記ポリマー主鎖からの分岐された側基を含む半導体正孔輸送ポリマーを含み、各側基はそれぞれ1または2以上のXY基を含み、XYは完全にイオン化されるような高分離定数を有する基を表す。
【0023】
本発明の組成物は、OLEDの正孔注入層としてPEDOT/PSSに対する魅力的な代替物であることが見出された。本発明は少ないPSSの使用またはPSSを使用しないことを可能にするので、過剰なPSSに関連する問題は大幅に取り除くことができる。
【0024】
組成物は水溶性である。溶解性は、組成物における適切な成分およびその割合の選択によって調整される。有利には、本発明の組成物は、半導体有機材料の蒸着に通常使用される非極性溶媒に通常溶解しない。これは、装置の次の層が、本発明の組成物の層の上にその完全性を損なわずに、このような非極性溶媒中の溶液から蒸着できることを意味する。これは、蒸着後に層を架橋する必要性を省き、層を厚くすることができる。
【0025】
有利には、正孔輸送ポリマーが、最近使用されるPSSより高い分子重量を有して製造される。製造方法の制限のため、最近使用されるPSSは分子重量約70000、および寿命に悪影響を及ぼして発光層に拡散する低Mw分率を有する。例えば、WO00/53656に開示されるようなスズキ重合のような正孔輸送ポリマーの製造方法は、70000を超える、好ましくは少なくとも100000の分子重量の正孔輸送材料の製造を提供する。
【0026】
ポリカチオンは、好ましくは、ポリチオフェンのような酸化ポリマーを含む。より好ましくは、ポリカチオンは、酸化導電性ポリ(ジオキシチオフェン)のような酸化導電性ポリチオフェン誘導体を含む。最も好ましくは、ポリカチオンは酸化導電性ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)を含む。
【化2】

【0027】
正孔輸送ポリマーは、既に公知の正孔注入組成物中の過剰なポリアニリン(通常、PSS)の少なくとも一部を代替するために、特に組成物の導電性を調整するために効果的に使用される。既に公知の正孔注入組成物中の過剰なポリアニオンの一部または全部が代替される。ポリカチオン:正孔輸送ポリマーの比率は特定に用途に応じて変化される。既に公知の組成物中の過剰なポリアニオンの全てを正孔輸送ポリマーがポリスチレンスルホン酸を使用して代替するとき、この組成物はイオン化されていない形(非イオン化ポリスチレンスルホン酸)のポリスチレンスルホン酸を含まない。
【0028】
ポリアニオンは、イオン化されない形の正孔輸送層を含むことができる。ポリアニオンが正孔輸送ポリマー中でイオン化されない形であるとき、この組成物は正孔輸送ポリマーのイオン化された形以外のポリアニオン含む必要がある。
【0029】
正孔輸送ポリマーが既に公知の組成物中の全てのポリアニオンおよびそのイオン化されない過剰物に代替するとき、本発明の正孔輸送ポリマーはポリカチオンが溶液から析出するのを防ぎ、導電性を調整する。
【0030】
あるいは、ポリアニオンはPSSのような他のポリマーのイオン化された形またはWO04/029128に開示されるポリマーの1つを含むことができる。
【0031】
ポリカチオン、ポリアニオンおよび正孔輸送ポリマーは組成物中で物理的に混合されていることがわかる。
正孔輸送ポリマーは領域を有し、各領域は、他の領域のHOMOおよびLUMOエネルギーレベルと異なるHOMOエネルギーレベルおよびLUMOエネルギーレベルを有する。区別されたHOMOおよびLUMOエネルギーレベルによって、各領域は機能的に区別される。
【0032】
正孔輸送ポリマーは、1または2以上の正孔輸送領域を有することができる。正孔輸送ポリマーまたは正孔輸送ポリマー中の正孔輸送領域は、好ましくは、少なくとも4.8eV、より好ましくは4.8〜6eVの範囲、さらに好ましくは4.8〜5.5eV範囲のHOMOエネルギーレベルを有する。
【0033】
正孔輸送ポリマーは、好ましくは、アリールまたはヘテロアリール繰返し単位(Ar)を有する。アリールまたはヘテロアリール繰返し単位は、ポリマー主鎖中に存在することができる。アリールまたはヘテロアリール繰返し基は、ポリマー主鎖からの分岐状側基として存在することができる。
【0034】
Arがポリマー主鎖からの分岐状側基として存在するとき、この側基はポリマー中の非共役または共役領域に付着することができる。
【0035】
正孔輸送ポリマーの主鎖は、共役領域を有することができる。共役領域は、非共役領域によって分断される。主鎖は完全に共役されるか、または非共役である。共役領域は、主鎖中に1または2以上の共役基を有する。非共役領域は主鎖中の1または2以上の非共役基からなる。
【0036】
正孔輸送ポリマーは、1または2以上のXY基を含む側基を含み、XYは完全にイオン化されるような高い解離定数を有する基を表す。通常、XY基は、組成物の水溶解性を高める。
【0037】
XYはポリマー主鎖の非共役領域からの分岐状基であるとことができる。
【0038】
XYはポリマー主鎖の共役領域からの分岐状基であるとことができる。
【0039】
XYは完全にイオン化されるような高い解離定数を有する基を表す。好ましくは、解離定数Kaは10-12より大きい。XYは強酸または塩を表す。
【0040】
XYはSO3Yを表すことができる。対イオンYはH(すなわち、スルホン酸)または金属カチオン、特に、KまたはNaであることができる。
【0041】
XYはカルボン酸またはアクリル酸を表すことができる。
【0042】
XYは4級塩、例えば、一般式
【化3】

を表すことができ、Xはハロゲン、好ましくは、BrまたはテトラフルオロボタートBF4-またはハキサフルオロホスフェートBF6-のようなアニオンを表す。R2、R3およびR4は独立してアルキル、好ましくは、C1〜C10アルキル、より好ましくはメチルを表す。
【0043】
好ましい4級塩は、
【化4】

である。
【0044】
XYが塩、特に、スルホネート塩または4級塩を表すとき、正孔輸送ポリマーの利点は正孔輸送ポリマーがPSSより弱酸性であることである。上記のように、PSSの酸性はOLEDの種々の劣化メカニズムの要因であること考えられている。
【0045】
ポリマー中のAr繰返し単位は有利にポリマー中の機能繰返し基となることができる。言い換えると、Ar繰り返し基はポリマー中の正孔輸送特性を高めることができる。これは、電荷輸送特性を有しないPSSに対する本ポリマーのさらなる利点を与える。ポリマー主鎖中にAr繰返し単位が存在するとき、主鎖に沿って正孔輸送特性を高めることができる。
【0046】
Arは任意の適切なアリールまたはヘテロアリール基を表すことができる。Arは、任意に置換されるアリール基、特に、フルオレン(特に、2,7−結合フルオレン)、スピロフルオレン、インデノフルオレン、フェニレンまたはフェニレンビニレンを表すことができる。Arは、任意に置換されたヘテロアリール基、特にチオフェンまたはベンゾチアジアゾールを表すことができる。Arは任意に置換される(例えば、アルキル化された)トリアリールアミン基、特にトリフェニルアミンを表すことができる。Arは任意に置換されるカルバゾール基を表すことができる。Arは、正孔輸送ポリマーのための望まれる電荷輸送および/または発光特性によって選択される。
【0047】
Arは置換されることができる。置換基の例としては、可溶性基、フッ素、ニトロまたはシアノのような電子誘引基、およびポリマーのガラス転移温度(Tg)を高める置換基
が挙げられる。
【0048】
ポリマーに正孔輸送特性を与えるために、Arは任意に置換されるトリアリールアミンまたは任意に置換されるカルバゾールを含むことが好ましい。
【0049】
1つの態様において、正孔輸送ポリマーは式1を有する繰返し側基を含む。
【化5】

Arはアリールまたはヘテロアリール基を表し、XYは完全にイオン化(X-+)されるように、高い解離定数を有する基を表す。
【化6】

式2の場合、ポリマーは関連のカチオンを有するポリアニオンとして存在する。関連するカチオンは前駆体ポリマーをそのポリカチオンに酸化することができる。したがって、正孔輸送ポリマーがポリマー前躯体からポリカチオンと共に組成物中に存在するとき、ポリアニオンおよびポリカチオンが形成される。したがって、正孔輸送ポリマーは既知の正孔注入組成物中のPSSの過剰分だけでなく全てを代替するのに使用される。本発明の正孔輸送ポリマーが既知の組成物中の全てのポリアニオンおよびこの非イオン化過剰物に代替するとき、本発明の正孔輸送ポリマーはポリカチオンを安定化してポリカチオンが溶液から析出するのを防ぎ、また、導電性を調整する。
【0050】
Arはフェニルまたはビフェニルを表すことができる。繰返し側基は式4または5を有することができる。
【化7】

7はHまたは置換基を表すことができる。置換基の例としては、C1-20アルキルまたはアルコキシのような可溶性基、フッ素、ニトロまたはシアノのような電子誘引基、およびポリマーのガラス転移温度(Tg)を高める置換基が挙げられる。
【0051】
Arはトリフェニルアミンを表すことができる。繰返し側基は式6を有することができる。
【化8】

【0052】
1つの実施態様において、繰返し側基は主鎖中の非共役基からの分岐である。例えば、正孔輸送ポリマーは式7の繰返し単位を有することができる。
【化9】

側基Ar−XYが上記のいずれか、例えば、式8または9で示されるように定義される。
【化10】

【0053】
正孔輸送ポリマーは、式7〜9のいずれか1つで示される第1繰返し単位および第2繰返し単位を含むコポリマーを含むことができる。第2の繰返し単位は式10または11を有することができる。
【化11】

Arは本明細書のいずれかで定義されるものである。
【化12】

7はHまたは置換基を表す。置換基の例としては、C1-20アルキルまたはアルコキシのような可溶性基、フッ素、ニトロまたはシアノのような電子誘引基、およびポリマーのガラス転移温度(Tg)を高める置換基が挙げられる。
【0054】
非共役主鎖の一部または全部を有するポリマーは、繰返し単位、例えば、アクリレート基またはビニル基に付着する不飽和基を通して主鎖の非共役部を形成する繰返し単位を重合することによって形成される。不飽和基は、スペーサー基によって機能的繰返し単位から分離されている。このタイプのポリマーは、例えば、WO96/20253に開示されている。
【0055】
1つの実施態様において、正孔輸送ポリマーは一般式12を有する繰返し単位を含む。
【化13】

Arはアリールまたはヘテロアリール基を表す。R1は、任意の有機結合基を表し、XYは完全にイオン化(X-+)されるように、高い解離定数を有する基を表す。
【化14】

式13の場合、ポリマーは関連のカチオンを有するポリアニオンとして存在する。関連するカチオンは前駆体ポリマーをそのポリカチオンに酸化することができる。したがって、正孔輸送ポリマーがポリマー前躯体からポリカチオンと共に組成物中に存在するとき、ポリアニオンおよびポリカチオンが形成される。したがって、正孔輸送ポリマーは既知の正孔注入組成物中のPSSの過剰分だけでなく全てを代替するのに使用される。本発明の正孔輸送ポリマーが既知の組成物中の全てのポリアニオンおよびこの非イオン化過剰物に代替するとき、本発明の正孔輸送ポリマーはポリカチオンを安定化してポリカチオンが溶液から析出するのを防ぎ、また、導電性を調整する。
【0056】
この実施態様において、XYを含む側基はポリマー主鎖の共役領域からの分岐である。
【0057】
1はXYとAr間の共役を分断する基を含むことができる。
【0058】
1は、2以上のXY基、例えば2つのXY基で置換されることができる。
【0059】
好ましい結合基は、フェニルのようなアリールおよびヘテロアリール、アルキル基、例えば、(CH2)n(nは2〜10、好ましくは2〜4)、アルコキシ基、例えば、O(CH2)n’(n’は2〜10、好ましくは4)、ペルフルオロアルキル基、例えば、(CF2)n2(n2は、2〜10)およびペルフルオロアルコキシ基、例えば、O(CF2)n3(n3は2〜10)を含む。
【0060】
式12〜14のArは、本明細書のいずれかで定義されるアリールまたはヘテロアリール基を表すことができる。
【0061】
Arはビフェニルを表すことができる。式12を含む繰返し単位は式15を有することができる。
【化15】

1およびXYは本明細書のいずれかで定義されるものである。
【0062】
好ましくは、式16または17を与える結合基R1はない。
【化16】

XYは本明細書のいずれかで定義されるものである。
【0063】
【化17】

【0064】
Arはフルオレンを表すことができる。式12を有する繰返し単位は式18または19を含むことができる。
【化18】

1およびXYは本明細書のいずれかで定義されるものである。
【化19】

1およびXYは本明細書のいずれかで定義されるものであり、R5およびR6はHまたは置換基を表す。置換基の例としては、C1-20アルキルまたはアルコキシのような溶解性基、フッ素、ニトロまたはシアノのような電子誘引基、およびポリマーのガラス転移温度(Tg)を高める置換基が挙げられる。
【0065】
好ましくは、R1結合基は式18および19に存在する。
【0066】
式12を有する繰返し単位は式20〜26の1つを含むことができる。
【化20】

【化21】

上式においてn2は、上記に定義されるものである。
【0067】
【化22】

【化23】

【化24】

上式においてnは、上記に定義されるものである。
【0068】
【化25】

上式においてn’は、上記に定義されるものである。
【0069】
【化26】

上式においてR5およびR6は、上記に定義されるものである。
【0070】
Arはフェニルを表すことができる。式12を含む繰返し単位は式27を有することができる。
【化27】

1およびXYは本明細書のいずれかで定義されるものであり、RはHまたは置換基を表す。置換基の例としては、C1-20アルキルまたはアルコキシのような溶解性基、フッ素、ニトロまたはシアノのような電子誘引基、およびポリマーのガラス転移温度(Tg)を高める置換基が挙げられる。
【0071】
例えば、式12を有する繰返し単位は式28を有することができる。
【化28】

Rは式27に関連して定義され、nは上記で定義されるものである。
【0072】
式12を有する繰返し単位は式29を有することができる。
【化29】

1およびXYは本明細書のいずれかで定義されるものである。
【0073】
例えば、式12を含む繰返し単位は式30を有することができる。
【化30】

【0074】
Arはトリフェニルアミンを表すことができる。式12を含む繰返し単位は式31を含むことができる。
【化31】

1およびXYは本明細書のいずれかで定義されるものである。
【0075】
例えば、式12を含む繰返し単位は式32、33または34を含むことができる。
【化32】

【化33】

【化34】

7は、Hまたは置換基を表すことができる。置換基の例としては、C1-20アルキルまたはアルコキシのような溶解性基、フッ素、ニトロまたはシアノのような電子誘引基、およびポリマーのガラス転移温度(Tg)を高める置換基が挙げられる。
【0076】
式31のR1はフェニルまたはビフェニルを表すことができる。
【0077】
式12の繰返し単位に加えて、ポリマーは1または2以上の追加のアリールまたはヘテロアリール繰返し単位を含むことができる。この追加の繰返し単位は、電荷輸送および/または発光特性をさらに調整するために選択される。例えば、ポリマーは正孔輸送を促進するためにトリアリールアミン繰返し単位を含むことができる。
【0078】
トリアリールアミン繰返し単位は式35〜40から選択されることができる。
【化35】

【0079】
A’、B’、A、B、CおよびDは、Hまたは置換基から独立して選択される。より好ましくは、1または2以上のA’、B’、A、B、CおよびDは、任意に置換される、分岐または直鎖アルキル、アリール、ペルフルオロアルキル、チオアルキル、シアノ、アルコキシ、ヘテロアリール、アルキルアリールおよびアリールアルキル基からなる群より選択される。最も好ましくは、A’、B’、AおよびBは、C1-10アルキルである。
【0080】
繰返し単位35〜40の1または2以上のフェニル基は任意に結合され得る。これらのフェニル基は、直鎖によって、あるいは1または2以上の原子を含む2価の結合基によって結合され得る。例えば、結合基は酸素または硫黄原子を含むことができる。
【0081】
望ましくは、正孔輸送ポリマーはトリアリールアミン繰返し単位およびフルオレン繰返し単位を含むことができる。ポリマーはABコポリマーである。
【0082】
本発明の組成物は、既知の装置における正孔注入層および正孔輸送層の機能を効果的に結合することができ、これによって装置構造を簡略化することができる。多くの問題は、有機溶媒から複数の有機層を蒸着することによってOLEDを製造する間に生じるため、これはとりわけ優位である。特に、有機層の完全性は、その上の次の有機層の溶液蒸着によって失われるかまたは損傷され得る。
【0083】
上記のいずれかで定義される正孔輸送ポリマーは、式41を有するフルオレン繰返し単位を含むことができる。
【化36】

上記式において、R5およびR6は、水素または任意に置換されるアルキル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアリールアルキルから独立して選択される。より好ましくは、R5およびR6の少なくとも1つは、任意に置換されるC4−C20アルキルまたはアリール基を含む。最も好ましくは、R5およびR6はn−オクチルを表す。
【0084】
正孔輸送ポリマーはトリアリールアミン繰返し単位、すなわち、式18〜26の1つの第1フルオレン繰返し単位、および任意に本明細書のいずれかで定義される第2フルオレン繰返し単位を含むことができる。トリアリールアミン繰返し単位:第1フルオレン繰返し単位:第2フルオレン繰返し単位の好ましい割合は、50:30:20である。
【0085】
正孔輸送ポリマーはトリアリールアミン繰返し単位および式15〜17の1つのビフェニル繰返し単位を含むことができる。
【0086】
正孔輸送ポリマーはフルオレン繰返し単位および式27〜30の1つのフェニル繰返し単位を含むことができる。
【0087】
正孔輸送ポリマーは直鎖ポリマーを含むことができる。好ましくは、直鎖ポリマーの繰返し単位の少なくとも5%はポリマー主鎖に沿って共役されている。
【0088】
正孔輸送ポリマーは式42を有することができる。
【化37】

【0089】
式42の正孔輸送ポリマーは式43を有するポリマーから誘導される。
【化38】

【0090】
式43を有するポリマーはモノマー(1)を共重合することによって製造され得る。
【化39】

【0091】
正孔輸送ポリマーは式44を有することができる。
【化40】

【0092】
式44を有する正孔輸送ポリマーはモノマー(2)を共重合することによって製造され得る。
【化41】

【0093】
正孔輸送ポリマーは式45を有することができる。
【化42】

【0094】
スルホネート含有モノマーは、Macromolecules 1998,31,964−974の方法によって、O(CH23SO3Naの代わりにO(CH24SO3Na側基を使用する適正な改良によって製造することができる。
【0095】
本発明の正孔輸送ポリマーはデンドリマーを含むことができる。デンドリマーは、樹木類似のポリマーで、中心核から放射するデンドロンを含む。通常、少なくとも3つのデンドロンを有する。分岐の単位はデンドロン中の繰返し単位であり得る。各デンドロンは主鎖を有する、側基は主鎖から分岐している。
【化43】

【0096】
デンドリマーの核は、式46または47を含むことができる。
【化44】

【0097】
各デンドロンはトリアリールアミン繰返し単位を含むことができる。各デンドロンは、トリアリールアミン繰返し単位およびフルオレン繰返し単位を含むことができる。各デンドロンはチオフェン繰返し単位、任意にトリアリールアミンおよび/またはフルオレン繰返し単位と共にチオフェン繰返し単位を有することができる。
追加の材料、特にポリマーが組成物中に存在することができる。例えば、追加の正孔輸送、電子輸送および/または発光材料を組成物中の混合することができる。
【0098】
本発明の組成物は物理的または化学的プロセスによって製造することができる。
物理的プロセスについて
本発明の組成物は半導体正孔輸送ポリマーとポリカチオン/バランスするポリアニオンを物理的に混合することによって製造することができる。例えば、前述の公知文献に記載されるように、PEDOT:PSSに加えられる過剰なPSSの一部または全部は半導体正孔輸送ポリマーに取り替えられ得る。例えば、正孔輸送ポリマーは、HC Starck of Leverkusen,GermanyからBaytron P@として販売されているPEDOT:PSS組成に混合することができる。
化学的プロセスについて
半導体正孔輸送ポリマーの存在の下、対応するモノマーの重合によってポリカチオンが製造される。例えば、PEDOT:PSSの重合は、S.Kirchmer & Reuter,J.Mater.Chem.2005(15),077−2088およびこれが引用する文献に記載されており、PSSの存在下エチレンジオキシチオフェンの酸化重合によって製造される。本発明の例示の組成物は、エチレンジオキシチオフェンが半導体正孔輸送ポリマーの存在下で重合される類似のプロセスによって製造される。この化学プロセスによれば、電荷バランスポリアニオンPSSまたは過剰なPSSを含まない(もし、望むなら過剰なPSSは加えられるが)導電性組成物が提供される。
【0099】
本発明の組成物は電気装置、特に、OLEDのような光−電子装置に使用されるものと考えられる。本発明の組成物は、正孔注入、および任意に正孔輸送および/または発光材料として使用され、典型的には、正孔注入または発光層のようなアノードに隣接する層にある。
【0100】
本発明の第2の側面によれば、本発明の第1の実施態様における正孔輸送ポリマーに関連して記載される構造を有するポリマーが提供される。
【0101】
本発明の第3の側面は、次のものを含むOLEDを提供する。
アノード、
カソード、
前記アノードと前記カソードの間に位置する発光層、および
前記アノードと前記発光層の間に位置する正孔注入層を含み、正孔注入層は本発明の第1の側面の組成物を含むことを特徴とする。
【0102】
本発明の第4の側面によれば、本発明の第2の側面に関連して記載されるポリマーの製造方法が提供される。最初に、正孔輸送ポリマーが前躯体の形で用意される。
【0103】
これらのポリマーの好ましい製造方法は、例えば、WO00/53656に記載されるスズキ重合および、例えば、T.Yamamoto,“Electrically Conducting And Thermally Stable n−Conjugated Poly(arylene)s Prepared by Organometallic Processes”,Progress in Polymer Science 1993,17,1153−1205に記載されるヤマモト重合である。これらの重合技術は、両者とも、金属錯体触媒の金属原子がアリール基とモノマーの脱離基の間に挿入される「金属挿入」によって行われる。ヤマモト重合の場合、ニッケル錯体触媒が使用される。スズキ重合の場合、パラジウム錯体が使用される。
【0104】
例えば、ヤマモト重合による直鎖ポリマーの合成においては、2つの反応性ハロゲン基を有するモノマーが使用される。同様に、スズキ重合法においては、少なくとも1つの反応基はボロン酸またはボロンエステルのようなボロン誘導基であり、他の反応基はハロゲンである。好ましいハロゲンは、塩素、臭素およびヨウ素であり、最も好ましくは臭素である。
【0105】
したがって、本出願を通じて例示される繰返し単位およびアリール基を含む末端基は適切な脱離基を有するモノマーから導入されることがわかる。
【0106】
スズキ重合は、部分規則、ブロックおよび不規則コポリマーを製造するために使用される。特に、ホモポリマーまたは不規則コポリマーは、1つの反応基がハロゲンであり、他の反応基がボロン誘導基であるとき製造することができる。あるいは、ブロックまたは部分規則、特にABコポリマーは、第1モノマーの2つの反応基がボロンであり、第2モノマーの2つの反応基がハロゲンであるとき製造することができる。
【0107】
ハロゲンに対する代替として、金属挿入に参加することができる他の離脱基は、トシレート、メシレート、フェニルスルホネートおよびトリフレートを含む。
【0108】
第2の側面の方法のポリマーの製造方法は、式48または49を有することができる。
【化45】

【0109】
上記式において、Ar、R1、XおよびYは、上記のいずれかで定義される。LおよびL’は、重合反応に参加するに適切な反応基である。また、(XY)’は、XYの前駆体を表し、重合後XYに変換され得る。
【0110】
LおよびL’は、Brを表すことができる。
【0111】
好ましいモノマーは、式60〜68の1つに示される構造を含むものを含む。
【化46】

【化47】

【化48】

【化49】

【化50】

【化51】

【化52】

【化53】

【化54】

【化55】

【化56】

【化57】

【化58】

【化59】

【化60】

【化61】

【化62】

【化63】

【化64】

【0112】
主鎖の一部または全部が共役されているポリマーは、繰返し単位に付着する不飽和基、例えば、アクリレート基またはビニル基によって、主鎖の非共役部を形成する繰返し単位を重合することによって形成され得る。不飽和基は、スペーサー基により機能的繰り返し単位から分離されている。このタイプのポリマーは、例えば、WO96/20253に開示されている。
【0113】
本発明の第5の側面によれば、例えば、本明細書で記載されるOLEDのような電気装置が提供され、この装置においては、本発明の組成物がスピンコート、インクジェット印刷またはロール印刷によって蒸着される。本発明の組成物は水溶液または他の適切な溶媒によって蒸着される。
【0114】
第3の側面に関連して定義されるOLEDの製造において、第5の側面の方法は次の工程を含む。
(a)第1溶媒中の第1の側面に関連して定義される組成物を含む溶液を蒸着することによって正孔−注入層を形成する工程、および
(b)第2の溶媒中の発光材料を含む溶液を蒸着することによって正孔注入層上に発光層を形成する工程。
【0115】
第1の側面に関連して定義される組成物および典型的な発光材料の異なる溶解特性からにて、第1の側面の組成物は第2の溶媒に溶解しない。第1の溶媒は水であることができる。第2の溶媒は共通の有機溶媒であることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0116】
本発明の実施態様は、図面を参照して説明される。
【0117】
図1は、本発明の実施態様の有機発光装置を示す。
【0118】
図1に示される装置は、透明ガラスまたはプラスチック基板1、インジウム錫酸化物のアノード2およびカソード5を含む。電子発光装置4は、アノード2とカソード5の間に供給される。本発明の実施態様によれば、本発明の組成物の正孔注入層3がアノード2と電子発光層4の間に供給される。
【0119】
電荷輸送、電子注入、または電荷遮断層のような追加の層がアノード2とカソード3の間に配置される。
【0120】
アノード2と電子発光層3の間に配置される正孔注入層3は好ましくは5.5eV以下、より好ましくは約4.8〜5.5eVのHOMOレベルを有する。
【0121】
もし存在するならば、電子発光層4およびカソード5の間に配置される電子輸送層は好ましくは約3〜3.5eVのLUMOレベルを有する。
【0122】
電子発光層4は、電子発光材料単独からなるか、または1または2以上の追加の材料と結合した電子発光材料を含むことができる。特に、電子発光材料は、例えば、WO99/48160に開示される正孔および/または電子輸送材料と混合することができる。あるいは、電子発光材料は電荷輸送材料と共有結合される。
【0123】
カソード5は、電子発光層に電子の注入を可能にする仕事関数を有する材料から選択される。カソードと電子発光層の間の有害な相互作用の可能性のような他の要因もカソードの選択に影響する。カソードはアルミニウムのような単一材料からなることができる。あるいは、複数の金属、例えば、WO98/10621に開示されるカルシウムとアルミニウムの2層、WO98/84759、Phys.Lett.2002,81(4),634およびWO02/84759に開示されるバリウム元素、あるいはWO00/48258に開示される弗化リチウムまたはAppl.Phys.Lett.2001,79(5),2001に開示される弗化バリウムのような電子注入を促進するための誘電体材料層を含むことができる。電子の装置への効率的な注入を促進するために、カソードは好ましくは2.5eV未満、より好ましくは3.2eV未満、最も好ましくは3eV未満の仕事関数を有する。
【0124】
光学装置は湿気および酸素に敏感である。したがって、基板は湿気および酸素が装置に浸入するのを防ぐ良好な遮断特性を有することが好ましい。基板は、通常、ガラスであるが、特に、装置の柔軟性が望まれる場合は他の基板も使用することができる。例えば、適切な基板は、プラスチックと遮断層に交互の基板を開示するUS6268695またはEP0949850に開示される薄いガラスとプラスチックのラミネートが挙げられる。
【0125】
装置は、湿気および酸素の浸入を防ぐためのカプセル材(図示しない)で封止されることが好ましい。適切なカプセル材は、例えば、ガラスのシート、WO01/81649に開示されるポリマーと誘電体層の交互層のような適切な遮断特性を有する薄膜を含む。基板またはカプセル材を貫通する環境の湿気および/または酸素の吸収のためのゲッター材料は基板およびカプセル材の間に配置されることができる。
【0126】
実用の装置において、光が吸収される(光応答装置の場合)または発光される(OLEDの場合)ように半透明である。アノードが透明である場合、典型的にはインジウム錫酸化物を有する。透明カソードの例は、例えば、GB2348316に開示されている。
【0127】
図1の実施態様は、最初に基板上のアノードを形成し、続いて、電子発光層とカソードの蒸着することによって形成される。しかしながら、本発明の装置は、最初に基板上のカソードを形成し、続いて電子発光層およびアノードを蒸着することによっても形成され得る。
【0128】
多くのポリマーは、発光体および/または電荷輸送体として有用である。これらの例は下記に示されている。
【0129】
下記に述べる繰返し単位は、ポリマーのブレンド中のおよび/またはコポリマー中のホモポリマーとして供給される。本発明の実施態様の導電性ポリマー組成物はこのような組合せで使用されることが明らかである。特に、本発明の導電性ポリマー層は、望まれる導電性、HOMOおよびLUMOを得るために、装置中に利用される特定の発光および電荷輸送層に関連して調整される。
【0130】
ポリマーは、アリーレン繰返し単位、特に、J.Appl.Phys.1996,79,934に開示される1,4−フェニレン繰返し単位、EP0842208に開示されるフルオレン繰り返した単位、例えば、Macrimolecules 2000,33(6),2016−2020に開示されるインデノフルオレン繰返し単位、例えば、EP0707020に開示されるスピロフルオレン繰返し単位から選択される第1繰返し単位を有することができる。置換基の例としては、C1-20アルキルまたはアルコキシ、フッ素、ニトロまたはシアノのような電子誘引基、およびポリマーのガラス転移温度を高める置換基が挙げられる。
【0131】
特に、好ましいポリマーは、任意に置換された2,7−結合フルオレン、最も好ましくは式(41)の繰返し単位を含む。
【0132】
第1繰返し単位を含むポリマーは、装置のどの層に使うかおよび共繰り返し単位の性質に応じて、正孔輸送、電子輸送および発光機能の1または2以上を提供する。
【0133】
9,9−ジアルキルフルオレン−2,7−ジイルのホモポリマーのような第1繰返し単位が電子輸送を提供するために利用され得る。
【0134】
第1繰返し単位およびトリアリールアミン繰返し単位を含むコポリマーは正孔輸送および/または発光を提供するために利用され得る。
【0135】
このタイプの特に好ましい正孔輸送ポリマーは、第1繰返し単位およびトリアリールアミン繰返し単位のABコポリマーである。
【0136】
第1繰返し単位およびヘテロアリール繰返し単位を含むコポリマーは電荷輸送または発光のために利用される。好ましいヘテロアリール繰返し単位は式69〜83から選択される。
【0137】
【化65】

上記式において、R7およびR8は同じか異なり、それぞれ独立して水素または置換基、好ましくは、アルキル、アリール、ペルフルオロアルキル、チオアルキル、シアノ、アルコキシ、ヘテロアリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルである。製造の容易のためには、R7およびR8は好ましくは同じである。より好ましくは、これらは同じであり、それぞれフェニル基である。
【0138】
【化66】

【化67】

【化68】

【0139】
電子発光ポリマーは、電子発光領域並びに、例えば、WO00/55927およびUS6353083に開示されるような正孔輸送領域および電子輸送領域の少なくとも1つを含むことができる。正孔輸送領域および電子輸送領域の1つだけが供給される場合、電子発光領域は他の正孔輸送および電子輸送機能を提供することができる。
【0140】
このようなポリマー内の異なる領域は、US6353083に示されるように、ポリマーの主鎖に沿って、またはWO01/62869に示されるように、ポリマー主鎖からの分岐状の基として供給される。
【0141】
これらのポリマーの好ましい製造方法は、例えば、WO00/53656に記載されるスズキ重合、および例えば、T.Yamamoto,“Electrically Conducting And Thermally Stable π−Conjugated Poly(arylene)s Prepared by Organometallic Processes”,Progress in Polymer Science 1993,17,1153−1205に記載されるヤマモト重合である。これらの重合技術は、共に、金属錯体触媒がモノマーのアリール基と脱離基の間に挿入される「金属挿入」によって行われる。ヤマモト重合の場合、ニッケル錯体触媒が使用され、スズキ重合の場合、パラジウム錯体触媒が使用される。
【0142】
例えば、ヤマモト重合による直鎖ポリマーの合成においては、2つの反応性ハロゲン基を有するモノマーが使用される。同様に、スズキ重合の方法によれば、少なくとも1つの反応基はホウ酸またはホウ素エステルのようなホウ素誘導基であり、他の反応基はハロゲンである。好ましいハロゲンは塩素、臭素およびヨウ素であり、最も好ましくは臭素である。
【0143】
したがって、本明細書で例示されるようなアリール基を含む繰返し単位および末端基は適切な離脱基を有するモノマーから導入されることがわかる。
【0144】
スズキ重合は、部分規則、ブロックおよび不規則コポリマーを製造するために使用され得る。特に、ホモポリマーまたは不規則コポリマーは、1つの反応基がハロゲンであり、他の反応基がホウ素誘導基であるとき製造される。規則交互、ブロックまたは部分規則、特にABコポリマーは、第1モノマーの2つの反応基がホウ素であり、第2モノマーに2つの反応基がハロゲンであるとき製造される。
【0145】
ハロゲンに変わる金属挿入に参加することができる他の脱離基は、トシレート、メシレート、フェニルスルホネートおよびトリフレートを含む。
【0146】
単一ポリマーまたは複数のポリマーは溶液から蒸着される。ポリアリレーン、特に、ポリフルオレンの適切な溶媒は、トルエンおよびキシレンのようなモノ−またはポリ−アルキルベンゼンを含む。特に好ましい溶液蒸着技術はスピンコートおよびインクジェット印刷である。
【0147】
スピンコートは、電子発光材料のパターニングが不必要、例えば、発光製品または単純なモノクロ区域ディスプレイのような装置に特に適している。
【0148】
インクジェット印刷は、高度情報コンテンツディスプレイ、特にフルカラーディスプレイに特に適している。OLEDのインクジェット印刷は、例えば、EP0880303に記載されている。
【0149】
装置の複数層が溶液プロセスで形成されると、当業者は隣接する層が相互に混合するのを防止する技術、例えば、次の層の蒸着前に1つの層を架橋するか、または第1の層が形成される材料が第2の層を蒸着するために使用される溶媒に溶解しないように隣接する材料を選択することに気づく。
【0150】
燐光性材料もまた有用であり、いくつかの用途においては蛍光性材料より好ましい。燐光性材料の1つのタイプは、ホストおよびホスト中の燐光性発光体を含む。発光体はホストに結合されることができ、または混合物中の分離した要素として供給される。
【0151】
燐光性発光体のための多くのホスト材料が、CBPとして知られる4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル)、Ikai et al.(Appl.Phys.Lett.,79No.2,2001,156)の開示されるTCTAとして知られる(4,4’,4”−トリス(カルバゾール−9−イル)トリフェニルアミン)、およびMTDATAとして知られるトリス−4−(N−3−メチルフェニル−N−フェニル)フェニルアミンのようなトリアリールアミンを含む。ホモポリマーはホスト材料として知られ、特に、例えば、Appl.Phys.Lett.2000,77(15),280に開示されるポリ(ビニルカルバゾール)、Synth.Met.2001,116,379,Phys.Rev.B2001,63,235206およびAppl.Phys.Lett.2003,82(7),1006に開示されるポリフルオレン、Adv.Mater.1999,11(4),285に開示されるポリ[4−(N−4−ビニルベンジロキシエチル,N−メチルアミノ)−N−(2,5−ジ−第3級−ブチルフェニルナフタルイミド)並びにJ.Mater.Chem.2003,13,50−55に開示されるポリ(パラ−フェニレン)がある。
【0152】
好ましい燐光性金属錯体は、任意に置換される式84の錯体を含む。
【化69】

Mは金属であり、L1、L2およびL3はそれぞれ配位基である。qは整数である。rおよびsはそれぞれ独立して0または整数である。(a.q)+(b.r)+(c.s)の総計はM上で有効な配位子の数である。aはL1上の配位子の数であり、bはL2上の配位子の数であり、cはL3上の配位子の数である。
【0153】
重金属元素Mは強いスピン軌道カップリングを誘引し、項間交差を可能にし、3重項状態からの発光(燐光)を可能にする、適切な重金属元素は次のものである。
【0154】
セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、ジスプロジウム、ツリウム、エルビウムおよびネオジウムのようなランタニド金属、および
特に、2族および3族のd−ブロック金属、すなわち、元素39〜48および72〜80、特に、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、オスミウム、プラチナおよび金。
【0155】
f−ブロック金属のための適切な配位基としては、カルボン酸、1,3−ジケトネート、水酸化カルボン酸、アクリルフェノールおよびイミノアシル基を含むシッフ塩基のような酸素または窒素寄与系がある。知られているように、発光ランタニド金属錯体は、金属イオンの1重項励起状態より高い3重項励起状態レベルを有する感光基を必要とする、発光は、金属のf−f遷移からであり、そのため、発光色は金属の選択によって決められる。鋭い発光は通常狭く、ディスプレイ製品に有用な純粋な発光色をもたらす。
【0156】
d−ブロック金属は、ポルフィリンまたは式(85)の2座配位子のような炭素または窒素ドナーを有する有機金属錯体を形成する。
【化70】

Ar9およびAr10は同じか異なり、任意に置換されるアリールまたはヘテロアリールから独立して選択される。X1およびY1は同じか異なり、炭素または窒素から独立して選択される。Ar9およびAr10は互いに縮合することができる。X1が炭素、およびY1が窒素であるリガンドは特に好ましい。
【0157】
2座配位子の例としては下記に例示されるものである。
【化71】

【0158】
各Ar9およびAr10は1または2以上の置換基を有することができる。特に好ましい置換基は、WO02/45466、WO02/44189、US2002−117662およびUS2002−182441に開示されるように、錯体の発光を青色シフトするのに使用されるフッ素またはトリフルオロメチル、JP2002−324679に開示されるアルキルまたはアルコキシ基、WO02/81448に開示されるように、発光材料として使用されるとき錯体の正孔輸送を促進するために使用されるカルバゾール、WO02/68435およびEP1245659に開示されるような追加の基の付着のためのリガンドを機能化する働きをする臭素、塩素またはヨウ素、並びにWO02/66552に開示されるような金属錯体の溶液プロセス性を得るまたは高めるために使用されるデンドロンである。
【0159】
d−ブロック金属元素と共に使用されるのに適した他のリガンドは、ジケトネート、特に、アセチルアセトネート(acac)、トリアリールホスフィンおよびピリジンであり、それぞれ置換され得るものである。
【0160】
主要なグループの金属錯体はリガンド系、または電荷転移発光を示す。これらの錯体においては、発光色はリガンドおよび金属の選択によって決められる。
【0161】
ホスト材料および金属錯体は物理的な混合の形で結合され得る。あるいは、金属錯体はホスト材料に化学的に結合される。ポリマーホスト材料の場合、金属錯体は、ポリマー主鎖に付着する置換基として化学的に結合されるか、ポリマー中の繰返し単位として組み込まれるか、または例えば、EP1245659、WO02/31896、WO03/18653およびWO03/22908に開示されるように、ポリマーの末端基として供給される。
【0162】
このようなホスト材料−発光体系は燐光性装置に限定されない。広い範囲の燐光性低分子重量金属錯体が公知であり、有機発光装置に示されている(例えば、Macromol.Sym.125(1997)1−48,083,634およびUS−A5,432,014参照)。
【0163】
広い範囲の燐光性低分子重量金属錯体が本発明で使用できる。好ましい例は、トリス−(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウムである。2価または3価の金属のための適切なリガンドは、オキシノイド、例えば、酸素−窒素または酸素−酸素寄与原子を有するもの、通常、置換酸素原子を有する環状窒素原子または8−ヒドロキシキノレートおよびヒドロキシキノクサリノール−10−ヒドロキシベンゾ(h)キノリナートのような置換酸素原子を有する置換窒素原子または酸素原子、ベンザゾール(III)、シッフ塩基、アゾインドール、クロモネ誘導体、3−ヒドロキシフラボン、およびサリチレートアミノカルボキシレートおよびエステルカルボキシレートのようなカルボン酸である。任意の置換基は、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、シアノ、アミノ、アミド、スルホニル、カルボニル、アリールまたは発光色を改良することができる(ヘテロ)芳香環上のヘテロアリールである。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】本発明の実施態様の有機発光装置を示す。
【符号の説明】
【0165】
1 透明ガラスまたはプラスチック基板1
2 アノード
3 正孔注入層
4 電子発光装置
5 カソード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機発光装置に使用される導電性組成物であって、
共役主鎖を有するポリカチオン、
前記ポリカチオンの電荷をバランスするポリアニオン、および
前記ポリマー主鎖から分岐された側基を含む半導体正孔輸送ポリマーを含み、
各側基はそれぞれ1または2以上のXY基を含み、XYは完全にイオン化されるような高分離定数を有する基を表す導電性組成物。
【請求項2】
前記ポリカチオンは、酸化された導電性ポリ(チオフェン)を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリカチオンは、酸化された導電性ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)を含む請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は実質的に非イオン化ポリスチレンスルホン酸を含まない請求項1ないし3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリアニオンは前記正孔輸送ポリマーのイオン化された形を含む請求項1ないし4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリアニオンは高分子酸を含む請求項1ないし5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリアニオンはポリスチレンスルホン酸(PSS)のイオン化された形を含む請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記正孔輸送ポリマーはアリールまたはヘテロアリール繰返し基(Ar)を含む請求項1ないし7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
Arは、フルオレン、スピロフルオレン、インデノフルオレン、フェニレン、フェニレンビニレン、チオフェン、ベンゾチアジアゾールまたはトリアリールアミン基を表す請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
Arは、フルオレン、スピロフルオレン、インデノフルオレン、フェニレン、フェニレンビニレン、チオフェン、ベンゾチアジアゾールまたはトリアリールアミンを表す請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記正孔輸送ポリマーは式(1)を有する繰返し側基を含む請求項10に記載の組成物であって、
【化1】

Arはアリールまたはヘテロアリール基を表し、XYは完全にイオン化されるような高分離定数を有する基を表す請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記側基はポリマー主鎖中の非共役領域に付着されている請求項10または11に記載の組成物。
【請求項13】
前記正孔輸送ポリマーは式(7)の繰返し単位を有する請求項12に記載の組成物であって、
【化2】

上記式中の側基Ar−XYは、請求項1,9,10または11のいずれかで定義されるものである組成物。
【請求項14】
Arがポリマー主鎖中に存在している請求項8または9に記載の組成物。
【請求項15】
前記正孔輸送ポリマーは式(12)を有する繰返し単位を含み、
【化3】

1は任意の有機結合基を表し、ArおよびXYは、請求項1,9,10または11のいずれかで定義されるものである請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
1は、XYとAr間の共役部を破断する基を有する請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
1は、アリール、ヘテロアリール、アルキル、アルコキシおよびペルフルオロアルコキシから選択される請求項15または16に記載の組成物。
【請求項18】
前記ポリマーは1または2以上の追加のアリールまたはヘテロアリール繰返し単位を含む請求項15ないし17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
前記追加の繰返し単位はトリアリールアミン繰返し単位またはフルオレン繰返し単位である請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記正孔輸送ポリマーは直鎖ポリマーを含む請求項1ないし19のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
アノード、カソード、前記アノードと前記カソードの間に位置する発光層、および前記アノードと前記発光層の間に位置する正孔注入層を含む有機発光装置において、前記正孔注入層は、請求項1ないし20のいずれかで定義される組成物を含むことを特徴とする有機発光装置。
【請求項22】
請求項21で定義される有機発光装置の製造方法であって、スピンコート、インクジェット印刷またはロール印刷によって請求項1ないし20のいずれかで定義される組成物を層として蒸着する工程を含む製造方法。
【請求項23】
請求項21に記載される有機発光装置の製造方法であって、
(a)第1の溶媒中に請求項1ないし20のいずれかに記載される組成物を含む溶液を蒸着することによって正孔輸送層を形成する工程、および
(b)第2の溶媒中に発光材料を含む溶液を蒸着することによって前記正孔輸送層の上に発光層を形成する工程を含む製造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−501259(P2009−501259A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520961(P2008−520961)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002643
【国際公開番号】WO2007/007117
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(503419985)シーディーティー オックスフォード リミテッド (21)
【出願人】(597063048)ケンブリッジ ディスプレイ テクノロジー リミテッド (152)
【Fターム(参考)】