光ケーブルの端末構造
【課題】ケーブル断面中心でない位置に複数のテンションメンバが配置された光ケーブルの端末構造を小型化すること。
【解決手段】ケーブル断面中心よりも外側に2本のテンションメンバ15を備えた光ケーブル10の端末にプーリングアイ20を固着する場合、2本のテンションメンバ15をケーブル断面中心に相当する位置で束ねた一本の牽引束15aを、プーリングアイ20の軸心に沿って形成されているテンションメンバ挿入孔21に挿入した後、プーリングアイ20に加圧を施してかしめ22を形成し、テンションメンバ15とプーリングアイ20を固着させることで、小型化を図った光ケーブルの端末構造1を形成した。
【解決手段】ケーブル断面中心よりも外側に2本のテンションメンバ15を備えた光ケーブル10の端末にプーリングアイ20を固着する場合、2本のテンションメンバ15をケーブル断面中心に相当する位置で束ねた一本の牽引束15aを、プーリングアイ20の軸心に沿って形成されているテンションメンバ挿入孔21に挿入した後、プーリングアイ20に加圧を施してかしめ22を形成し、テンションメンバ15とプーリングアイ20を固着させることで、小型化を図った光ケーブルの端末構造1を形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ケーブルの端末構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テンションメンバをケーブル断面中心に有する光ファイバケーブル用の牽引端末構造として、プーリングアイの挿入孔にテンションメンバを挿入した後、プーリングアイの複数箇所を油圧プレス機等でかしめるなどして、テンションメンバとプーリングアイとが固着されたものがある。そして、テンションメンバとプーリングアイとを固着する際、少なくとも隣り合うかしめ部分の加圧方向をそれぞれ異ならせることにより、テンションメンバとプーリングアイの固着力をより強固にし、その把持力を増強させた技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
このようにテンションメンバをケーブル断面中心に有する光ケーブルの場合、ケーブルから真っ直ぐに引き出したテンションメンバをプーリングアイに固着しやすく、その牽引端末構造は比較的シンプルで小型化しやすいものであった。
【0003】
一方、テンションメンバがケーブル断面中心ではない位置に配置されたケーブルがある。
そのようなケーブルの先端側外周に、複数の帯を螺旋状に巻回してケーブルグリップを固定してなる牽引端末構造が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
また、ケーブル断面中心ではない位置に配置された複数(例えば2本)のテンションメンバを個別に把持する牽引端末構造がある。
例えば、帯状平板によるU字構造を成す牽引端末の2箇所の把持部にそれぞれ1本ずつテンションメンバを固定してなる牽引端末構造が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
また例えば、2本のテンションメンバを1本ずつ挿入穴に収納した保持具をケーブルの先端側外周に配し、その保持具の外側に被牽引具を螺合してなる牽引端末構造が知られている(例えば、特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3418297号公報
【特許文献2】特公平6−45423号公報
【特許文献3】特開2005−121678号公報
【特許文献4】特開2010−217316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術(特許文献2)のケーブルグリップの場合、複数の帯をケーブルの外周に螺旋状に巻回することで、そのケーブルを把持する構造であるので、牽引端末構造が太くなってしまうという問題があった。
【0007】
また、上記特許文献3の場合、ケーブルが有するテンションメンバの数と同じ数の把持部が必要となり、その複数の把持部がケーブルの外周付近に配置されるため、牽引端末構造が太くなってしまうという問題があった。
また、上記特許文献4の場合、保持具及び被牽引具がケーブルの外周付近に配置されるため、牽引端末構造が太くなってしまうという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、ケーブル断面中心でない位置に複数のテンションメンバが配置された光ケーブルの端末構造を小型化することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
ケーブル断面中心よりも外側に複数のテンションメンバを備えた光ケーブルの端末に、テンションメンバ挿入孔を有するプーリングアイが固着された光ケーブルの端末構造であって、
前記光ケーブルの端末から所定長露出された前記複数のテンションメンバを前記ケーブル断面中心に相当する位置で束ねてなる牽引束が、前記テンションメンバ挿入孔に挿入されている前記プーリングアイを所定方向に加圧したかしめによって、前記複数のテンションメンバと前記プーリングアイが固着されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光ケーブルの端末構造において、
前記光ケーブルは光心線を備えており、前記光ケーブルの端末から所定長露出された前記光心線が、前記かしめが形成された前記プーリングアイの外周に固定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光ケーブルの端末構造において、
前記牽引束は、前記複数のテンションメンバが並行して引き揃えられて束ねられていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光ケーブルの端末構造において、
前記牽引束は、前記複数のテンションメンバが撚り合わされて束ねられていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の光ケーブルの端末構造において、
前記プーリングアイには複数のかしめが形成されており、少なくとも隣り合うかしめの加圧方向がそれぞれ異なっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ケーブル断面中心でない位置に複数のテンションメンバが配置された光ケーブルの端末構造を小型化することができ、光ケーブルを敷設する際の牽引力に十分に耐えうる牽引端末構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】光ケーブルであるスロットレス型光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図2】光ケーブルとプーリングアイを示す側面図である。
【図3】プーリングアイに光ケーブルのテンションメンバ(牽引束)を挿入した状態を一部破断視して示す側面図である。
【図4】テンションメンバ(牽引束)を挿入したプーリングアイにかしめを形成した状態を一部破断視して示す側面図である。
【図5】光ケーブルの端末にプーリングアイが固着された光ケーブルの端末構造を示す側面図である。
【図6】光ケーブルのテンションメンバを束ねた牽引束の変形例を一部破断視して示す側面図である。
【図7】光ケーブルの端末にプーリングアイを固着する比較例を示す図であり、2つの挿入孔を有するプーリングアイを示す側面図(a)、テンションメンバを挿入したプーリングアイにかしめを形成した状態を示す側面図(b)、かしめの加圧方向を示す説明図(c)である。
【図8】光ケーブルの端末にプーリングアイを固着する比較例を示す図であり、2つの挿入孔を有するプーリングアイを示す側面図(a)、テンションメンバを挿入したプーリングアイにかしめを形成した状態を示す側面図(b)、かしめの加圧方向を示す説明図(c)である。
【図9】光ケーブルの端末にプーリングアイを固着する本発明の変形例を示す図であり、8本のテンションメンバを備えた光ケーブルの断面図(a)、プーリングアイに光ケーブルのテンションメンバ(牽引束)を挿入した状態を一部破断視して示す側面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0017】
(実施形態1)
図1は、スロットレス型光ファイバケーブル(光ケーブル10)を示す断面図である。
このスロットレス型光ファイバケーブルは、ケーブル断面中心よりも外側に複数のテンションメンバを備えた光ケーブルである。
【0018】
光ケーブル10は、図1に示すように、例えば、10枚の光ファイバテープ心線11が積層された光心線積層体をケーブルの中心部に備えている。ここでの光心線積層体は、6枚の光ファイバテープ心線11の積層体を、対を成す2枚の光ファイバテープ心線11の積層体で挟んだ構造を有している。
なお、光ファイバテープ心線11(以下、光心線11)とは、複数本(図中4本)の光ファイバ心線を横一列に並べて樹脂で一体化したものである。
【0019】
光心線11の周囲には、例えば、4本の巻き付け材12を螺旋状に巻回してなる緩衝層が設けられている。
巻き付け材12は、例えばポリプロピレン繊維で構成されており、ポリプロピレン繊維からなる緩衝層が光心線11を覆っている。緩衝層には、複数のポリプロピレンフィラメントを撚り合わせた繊維紐、例えば、PPヤーン(ポリプロピレン・ヤーン)などを用いることができる。
この巻き付け材12(緩衝層)の周囲を囲繞するように、押え巻きテープ13が巻回されている。
【0020】
押え巻きテープ13の外側には、押出成形により形成された外被14が設けられている。
この外被14には、ケーブル断面中心を挟む配置に、2本のテンションメンバ15がケーブルの長手方向と平行に埋設されている。
外被14は、例えば、ポリエチレン系の合成樹脂材料で構成されている。
テンションメンバ15には、例えば、単鋼線、鋼撚線、FRP等を用いることができる。
【0021】
また、外被14内には、押え巻きテープ13の周面に沿い、2本の引裂紐16がケーブルの長手方向に埋設されている。この引裂紐16は、外被14の剥ぎ取りを容易にすべく設けられた部材である。
【0022】
次に、この光ケーブル10の端末にプーリングアイ20を固着してなる、光ケーブルの端末構造1について説明する。
【0023】
図2に示すように、プーリングアイ20は、一端側に牽引ロープを繋ぎ止めるためのロープ引止環部20aを有しており、他端側にテンションメンバ挿入孔21を有している。このテンションメンバ挿入孔21は、プーリングアイ20の軸心に沿う一箇所に形成されている。このプーリングアイ20は、光ケーブル10を牽引するために十分な強度を持った材質、例えば鉄などの金属からなる。
このプーリングアイ20を固着させる光ケーブル10として、外径が11mmであってテンションメンバ15の径が1mmの単鋼線を用いた。
【0024】
まず、図3に示すように、光ケーブル10の端末から所定長の外被14を剥ぎ取り、その光ケーブル10の端末にテンションメンバ15を露出させる。また、押え巻きテープ13および緩衝層(巻き付け材12)を外被切断箇所と同じ位置にて切断し、光心線11を露出させる。
次いで、露出された2本のテンションメンバ15をケーブル断面中心に相当する位置で一本に束ねた牽引束15aを、プーリングアイ20のテンションメンバ挿入孔21に挿入する。図3に示す牽引束15aは、2本のテンションメンバ15を並行させて引き揃えて束ねた牽引束である。
ここで、光ケーブル10において外被14および緩衝層が切断されている端面と、プーリングアイ20の後端部(テンションメンバ挿入孔21側の端部)との距離が近過ぎると、テンションメンバ15をケーブル断面中心に相当する位置に引き揃える際に曲げる曲率が大きくなり、テンションメンバ15が折れるなど破損してしまうことがある。また、後述する光心線11をプーリングアイ20の外周に沿わすことが困難になることがある。そのため、ケーブル端面(外被切断箇所)とプーリングアイ20の後端部との距離は、10〜15mm程度であることが好ましい。
【0025】
次いで、図4に示すように、牽引束15aがテンションメンバ挿入孔21に挿入されているプーリングアイ20を所定方向に加圧してかしめることによってかしめ22を形成し、テンションメンバ15とプーリングアイ20を固着する。
ここでは、プーリングアイ20に3箇所のかしめ22が形成されている。特に、少なくとも隣り合うかしめ22の加圧方向がそれぞれ異なるように、例えば、油圧プレス機やかしめ冶具(六角ダイス)等により加圧が施されてなるかしめ22が形成されている、例えば、図4中、中央側のかしめ22は牽引束15aを挟む上下方向の加圧によって形成されており、その両側の2つのかしめ22は牽引束15aを挟む左右方向の加圧によって形成されている。
なお、図4(図5)は、図3に示した光ケーブル10およびプーリングアイ20を、その軸線を中心に90度回転させた方向から視認した状態を示している。
【0026】
また、図4に示すように、露出された光心線11を5枚ずつの2束に分割したものを、プーリングアイ20の外周面に対してプーリングアイ20の長手方向に沿わす(縦ぞえする)。
更に、プーリングアイ20の外周面に沿わせた光心線11の上から、その光心線11を覆うように円筒状の熱収縮チューブ30を装着する。この熱収縮チューブ30を加熱して収縮させることによって、プーリングアイ20と熱収縮チューブ30の間に光心線11を挟み込み、その光心線11をかしめ22が形成されたプーリングアイ20の外周面に固定する。なお、熱収縮チューブ30は加熱収縮時に溶ける接着層を内面に有している。
こうして、図5に示すように、光ケーブル10の端末にプーリングアイ20が固着された、光ケーブルの端末構造1を組み上げることができる。
【0027】
このように、本発明に係る光ケーブルの端末構造1は、複数(2本)のテンションメンバ15をケーブル断面中心に相当する位置で束ねた一本の牽引束15aを、プーリングアイ20の軸心に沿って形成されているテンションメンバ挿入孔21に挿入する構成であるため、光ケーブル10に対して比較的細いプーリングアイ20を用いることができる。
そして、比較的細いプーリングアイ20に形成された一筋のテンションメンバ挿入孔21に牽引束15aを挿入し、テンションメンバ15とプーリングアイ20を固着してなる光ケーブルの端末構造1を小型化することができる。
また、プーリングアイ20に3箇所のかしめ22を形成して、テンションメンバ15とプーリングアイ20を固着しており、特に、隣り合うかしめ22の加圧方向がそれぞれ異なるようにかしめ22が形成されているので、テンションメンバ15とプーリングアイ20の固着力をより強固にし、その把持力を増強させることができる。その結果、光ケーブル10を敷設する際、光ケーブルの端末構造1を引き回すための牽引力に十分に耐えることができる。
【0028】
(実施形態2)
次に、本発明に係る光ケーブルの端末構造の実施形態2について説明する。なお、実施形態1と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
図6に示すように、露出された2本のテンションメンバ15をケーブル断面中心に相当する位置で撚り合わせて束ねた牽引束15bを、プーリングアイ20のテンションメンバ挿入孔21に挿入する構造であってもよい。なお、図6に示す牽引束15bは、2本のテンションメンバ15を20mmピッチで撚り合わせて束ねた牽引束である。
この牽引束15b以外の構成は、実施形態1の光ケーブルの端末構造1と同様の構成である。
このような牽引束15bをプーリングアイ20のテンションメンバ挿入孔21に挿入した後、かしめ22を形成してなる光ケーブルの端末構造であっても、実施形態1の光ケーブルの端末構造1と同様の効果が得られる。
また、2本のテンションメンバ15を撚り合わせて一体化した牽引束15bは、その剛性が増しており、テンションメンバ挿入孔21に挿入しやすいなどのメリットがある。
【0029】
次に、本発明に係る光ケーブルの端末構造1(実施形態1、実施形態2)の効果を確認すべく、以下の比較例1、比較例2をあわせて検証した。
【0030】
(比較例1)
図7(a)に示すように、比較例1に用いたプーリングアイ40は、光ケーブル10における2本のテンションメンバ15と同じ間隔をあけた二筋のテンションメンバ挿入孔41を有しており、図2に示したプーリングアイ20よりも太いものである。
そして、図7(b)に示すように、光ケーブル10の端末から所定長の外被14を剥ぎ取って露出された2本のテンションメンバ15を、その延長線上に対応する二筋のテンションメンバ挿入孔41に真っ直ぐに挿入する。
次いで、テンションメンバ15がテンションメンバ挿入孔41に挿入されているプーリングアイ40を所定方向に加圧してかしめることによって3箇所のかしめ42を形成し、テンションメンバ15とプーリングアイ40を固着する。例えば、図7(c)に示すように、中央側のかしめ42は六角ダイス60による上下方向の加圧によって形成されており、その両側の2つのかしめ42は六角ダイス60による左右方向の加圧によって形成されている。
そして、実施形態1と同様に、緩衝層(巻き付け材12)等を外被切断箇所と同じ位置にて切断して露出されている光心線11を5枚ずつの2束に分割したものを、プーリングアイ40の外周面に沿わせ、その光心線11の上から被せた円筒状の熱収縮チューブ30を加熱して収縮させることによって、プーリングアイ40と熱収縮チューブ30の間に光心線11を挟み込み、その光心線11をかしめ42が形成されたプーリングアイ40の外周面に固定する。
こうして、比較例1の光ケーブルの端末構造を組み上げた。
【0031】
(比較例2)
図8(a)に示すように、比較例2に用いたプーリングアイ50は、光ケーブル10における2本のテンションメンバ15と同じ間隔をあけた二筋のテンションメンバ挿入孔51を有しており、図2に示したプーリングアイ20よりも太く、その断面が略「8」字形状を呈するものである。
そして、図8(b)に示すように、光ケーブル10の端末から所定長の外被14を剥ぎ取って露出された2本のテンションメンバ15を、その延長線上に対応する二筋のテンションメンバ挿入孔51に真っ直ぐに挿入する。
次いで、テンションメンバ15がテンションメンバ挿入孔51に挿入されているプーリングアイ50を所定方向に加圧してかしめることによって3箇所のかしめ52を形成し、テンションメンバ15とプーリングアイ50を固着する。例えば、図8(c)に示すように、3箇所のかしめ52は、変形六角ダイス70による左右方向の加圧によって形成されている。
そして、実施形態1と同様に、緩衝層(巻き付け材12)等を外被切断箇所と同じ位置にて切断して露出されている光心線11を5枚ずつの2束に分割したものを、プーリングアイ50の外周面に沿わせ、その光心線11の上から被せた円筒状の熱収縮チューブ30を加熱して収縮させることによって、プーリングアイ50と熱収縮チューブ30の間に光心線11を挟み込み、その光心線11をかしめ52が形成されたプーリングアイ50の外周面に固定する。
こうして、比較例2の光ケーブルの端末構造を組み上げた。
【0032】
前述した実施形態1の光ケーブルの端末構造1に対応する実施例1、実施形態2に対応する実施例2、比較例1および比較例2に関し、テンションメンバの把持力(テンションメンバとプーリングアイの固着力)と、光ケーブルの端末構造の最大径の各項目についての評価結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に示した評価結果から明らかなように、実施例1および実施例2における光ケーブルの端末構造1の最大径は、比較例1および比較例2のものよりも細く、本発明に係る光ケーブルの端末構造1の小型化が図られていることがわかる。
これは、実施例1および実施例2のように、その軸心に沿う一筋のテンションメンバ挿入孔21を有するプーリングアイ20であれば、光ケーブル10に対して比較的細い形状とすることができ、光ケーブルの端末構造1を小型化することが可能になっていることによる。
これに対し、比較例1および比較例2のように、2本のテンションメンバ15と同じ間隔をあけた二筋のテンションメンバ挿入孔(41、51)を有するプーリングアイ(40、50)では、光ケーブル10に対して比較的太い形状になってしまうので、光ケーブルの端末構造の小型化に限界がある。
【0035】
また、表1に示した評価結果から明らかなように、テンションメンバの把持力についても、実施例1および実施例2における光ケーブルの端末構造1が優れていることがわかる。
これは、実施例1および実施例2のように、その軸心に沿う一筋のテンションメンバ挿入孔21に挿入された牽引束(テンションメンバ15)に対して圧力が集中するように、プーリングアイ20の外周からほぼ均等に加圧が施されたかしめ22が形成されていることによる。
これに対し、比較例1のように、プーリングアイ40の軸心から外側にずれた位置にあるテンションメンバ挿入孔41に挿入されたテンションメンバ15には、かしめ42を形成する際の加圧力を集中させることができず、テンションメンバとプーリングアイの固着力を実施例の端末構造ほど強くすることができなかったためである。
また、比較例2の場合、テンションメンバ挿入孔51に挿入されたテンションメンバ15に対してかしめ52を形成する際の加圧力を、比較例1よりも集中させることができるが、隣り合うかしめ52の加圧方向が同じであるため、実施例1および実施例2よりも劣る結果となった。
【0036】
以上のように、ケーブル断面中心よりも外側に複数(2本)のテンションメンバ15を備えた光ケーブル10の端末にプーリングアイ20を固着する場合、複数(2本)のテンションメンバ15をケーブル断面中心に相当する位置で束ねた一本の牽引束(15a、15b)を、プーリングアイ20の軸心に沿って形成されているテンションメンバ挿入孔21に挿入した後、プーリングアイ20に加圧を施してかしめ22を形成し、テンションメンバ15とプーリングアイ20を固着させるようにすれば、その牽引端末構造を小型化するとともに、光ケーブル10を敷設する際の牽引力に十分に耐えうる、光ケーブルの端末構造1を形成することができる。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、図9(a)に示すように、ケーブル断面中心よりも外側の外被14に8本のテンションメンバ15がケーブルの長手方向と平行に埋設されている光ケーブル10aと、プーリングアイ20とを固着してなる光ケーブルの端末構造1であってもよい。
この光ケーブル10aは、例えば、12枚の光心線11が積層された光心線積層体をケーブルの中心部に備え、その光心線11の周囲に、例えば、4本の巻き付け材12を螺旋状に巻回してなる緩衝層が設けられ、その緩衝層(巻き付け材12)の外側に押出成形により形成された外被14が設けられており、その外被14に8本のテンションメンバ15が埋設されている。
そして、図9(b)に示すように、光ケーブル10aの端末から所定長の外被14を剥ぎ取り、露出された8本のテンションメンバ15をケーブル断面中心に相当する位置で撚り合わせて束ねた牽引束15bを、プーリングアイ20のテンションメンバ挿入孔21に挿入し、そのプーリングアイ20にかしめ22を形成するようにすればよい。
また、実施形態1と同様に、緩衝層(巻き付け材12)等を外被切断箇所と同じ位置にて切断して露出されている光心線11を6枚ずつの2束に分割したものを、プーリングアイ20の外周面に沿わせ、その光心線11の上から被せた円筒状の熱収縮チューブ30を加熱して収縮させることによって、プーリングアイ20と熱収縮チューブ30の間に光心線11を挟み込み、その光心線11をかしめ22が形成されたプーリングアイ20の外周面に固定することで、光ケーブルの端末構造1を組み上げることができる。
【0038】
なお、一般的には、テンションメンバ15が太くなると、テンションメンバ15をケーブル断面中心に相当する位置に束ねて沿わせる作業が困難となるので、本発明を適用するスロットレス型光ファイバケーブル(光ケーブル)のテンションメンバ15の径は1.6mm以下であることが望ましい。
【0039】
また、ケーブル外径が小さい、あるいは外被14が薄い場合、テンションメンバ15同士をケーブル断面中心に沿わせた際、外被14が略楕円状に変形し、テンションメンバ15に急激な曲がりを加えることなくテンションメンバ15を束ねることができる。これに対し、ケーブル外径が大きくなる、あるいは外被14が厚くなると、外被14の剛性が上がるため、複数のテンションメンバ15同士をケーブル断面中心に沿わせる際に、外被14が切断された外被切断箇所(ケーブル端面)で露出されたテンションメンバ15の根元にて、テンションメンバ15に急激な曲がりが発生する。そのため、ケーブル外径は16mm以下、外被14の厚さは3.0mm以下であることが望ましい。
【0040】
なお、本発明の適用は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 光ケーブルの端末構造
10、10a 光ケーブル
11 光心線
12 巻き付け材
13 押え巻きテープ
14 外被
15 テンションメンバ
15a、15b 牽引束
16 引裂紐
20 プーリングアイ
21 テンションメンバ挿入孔
22 かしめ
30 熱収縮チューブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ケーブルの端末構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テンションメンバをケーブル断面中心に有する光ファイバケーブル用の牽引端末構造として、プーリングアイの挿入孔にテンションメンバを挿入した後、プーリングアイの複数箇所を油圧プレス機等でかしめるなどして、テンションメンバとプーリングアイとが固着されたものがある。そして、テンションメンバとプーリングアイとを固着する際、少なくとも隣り合うかしめ部分の加圧方向をそれぞれ異ならせることにより、テンションメンバとプーリングアイの固着力をより強固にし、その把持力を増強させた技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
このようにテンションメンバをケーブル断面中心に有する光ケーブルの場合、ケーブルから真っ直ぐに引き出したテンションメンバをプーリングアイに固着しやすく、その牽引端末構造は比較的シンプルで小型化しやすいものであった。
【0003】
一方、テンションメンバがケーブル断面中心ではない位置に配置されたケーブルがある。
そのようなケーブルの先端側外周に、複数の帯を螺旋状に巻回してケーブルグリップを固定してなる牽引端末構造が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
また、ケーブル断面中心ではない位置に配置された複数(例えば2本)のテンションメンバを個別に把持する牽引端末構造がある。
例えば、帯状平板によるU字構造を成す牽引端末の2箇所の把持部にそれぞれ1本ずつテンションメンバを固定してなる牽引端末構造が知られている(例えば、特許文献3参照。)。
また例えば、2本のテンションメンバを1本ずつ挿入穴に収納した保持具をケーブルの先端側外周に配し、その保持具の外側に被牽引具を螺合してなる牽引端末構造が知られている(例えば、特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3418297号公報
【特許文献2】特公平6−45423号公報
【特許文献3】特開2005−121678号公報
【特許文献4】特開2010−217316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術(特許文献2)のケーブルグリップの場合、複数の帯をケーブルの外周に螺旋状に巻回することで、そのケーブルを把持する構造であるので、牽引端末構造が太くなってしまうという問題があった。
【0007】
また、上記特許文献3の場合、ケーブルが有するテンションメンバの数と同じ数の把持部が必要となり、その複数の把持部がケーブルの外周付近に配置されるため、牽引端末構造が太くなってしまうという問題があった。
また、上記特許文献4の場合、保持具及び被牽引具がケーブルの外周付近に配置されるため、牽引端末構造が太くなってしまうという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、ケーブル断面中心でない位置に複数のテンションメンバが配置された光ケーブルの端末構造を小型化することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
ケーブル断面中心よりも外側に複数のテンションメンバを備えた光ケーブルの端末に、テンションメンバ挿入孔を有するプーリングアイが固着された光ケーブルの端末構造であって、
前記光ケーブルの端末から所定長露出された前記複数のテンションメンバを前記ケーブル断面中心に相当する位置で束ねてなる牽引束が、前記テンションメンバ挿入孔に挿入されている前記プーリングアイを所定方向に加圧したかしめによって、前記複数のテンションメンバと前記プーリングアイが固着されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光ケーブルの端末構造において、
前記光ケーブルは光心線を備えており、前記光ケーブルの端末から所定長露出された前記光心線が、前記かしめが形成された前記プーリングアイの外周に固定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光ケーブルの端末構造において、
前記牽引束は、前記複数のテンションメンバが並行して引き揃えられて束ねられていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光ケーブルの端末構造において、
前記牽引束は、前記複数のテンションメンバが撚り合わされて束ねられていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の光ケーブルの端末構造において、
前記プーリングアイには複数のかしめが形成されており、少なくとも隣り合うかしめの加圧方向がそれぞれ異なっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ケーブル断面中心でない位置に複数のテンションメンバが配置された光ケーブルの端末構造を小型化することができ、光ケーブルを敷設する際の牽引力に十分に耐えうる牽引端末構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】光ケーブルであるスロットレス型光ファイバケーブルを示す断面図である。
【図2】光ケーブルとプーリングアイを示す側面図である。
【図3】プーリングアイに光ケーブルのテンションメンバ(牽引束)を挿入した状態を一部破断視して示す側面図である。
【図4】テンションメンバ(牽引束)を挿入したプーリングアイにかしめを形成した状態を一部破断視して示す側面図である。
【図5】光ケーブルの端末にプーリングアイが固着された光ケーブルの端末構造を示す側面図である。
【図6】光ケーブルのテンションメンバを束ねた牽引束の変形例を一部破断視して示す側面図である。
【図7】光ケーブルの端末にプーリングアイを固着する比較例を示す図であり、2つの挿入孔を有するプーリングアイを示す側面図(a)、テンションメンバを挿入したプーリングアイにかしめを形成した状態を示す側面図(b)、かしめの加圧方向を示す説明図(c)である。
【図8】光ケーブルの端末にプーリングアイを固着する比較例を示す図であり、2つの挿入孔を有するプーリングアイを示す側面図(a)、テンションメンバを挿入したプーリングアイにかしめを形成した状態を示す側面図(b)、かしめの加圧方向を示す説明図(c)である。
【図9】光ケーブルの端末にプーリングアイを固着する本発明の変形例を示す図であり、8本のテンションメンバを備えた光ケーブルの断面図(a)、プーリングアイに光ケーブルのテンションメンバ(牽引束)を挿入した状態を一部破断視して示す側面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0017】
(実施形態1)
図1は、スロットレス型光ファイバケーブル(光ケーブル10)を示す断面図である。
このスロットレス型光ファイバケーブルは、ケーブル断面中心よりも外側に複数のテンションメンバを備えた光ケーブルである。
【0018】
光ケーブル10は、図1に示すように、例えば、10枚の光ファイバテープ心線11が積層された光心線積層体をケーブルの中心部に備えている。ここでの光心線積層体は、6枚の光ファイバテープ心線11の積層体を、対を成す2枚の光ファイバテープ心線11の積層体で挟んだ構造を有している。
なお、光ファイバテープ心線11(以下、光心線11)とは、複数本(図中4本)の光ファイバ心線を横一列に並べて樹脂で一体化したものである。
【0019】
光心線11の周囲には、例えば、4本の巻き付け材12を螺旋状に巻回してなる緩衝層が設けられている。
巻き付け材12は、例えばポリプロピレン繊維で構成されており、ポリプロピレン繊維からなる緩衝層が光心線11を覆っている。緩衝層には、複数のポリプロピレンフィラメントを撚り合わせた繊維紐、例えば、PPヤーン(ポリプロピレン・ヤーン)などを用いることができる。
この巻き付け材12(緩衝層)の周囲を囲繞するように、押え巻きテープ13が巻回されている。
【0020】
押え巻きテープ13の外側には、押出成形により形成された外被14が設けられている。
この外被14には、ケーブル断面中心を挟む配置に、2本のテンションメンバ15がケーブルの長手方向と平行に埋設されている。
外被14は、例えば、ポリエチレン系の合成樹脂材料で構成されている。
テンションメンバ15には、例えば、単鋼線、鋼撚線、FRP等を用いることができる。
【0021】
また、外被14内には、押え巻きテープ13の周面に沿い、2本の引裂紐16がケーブルの長手方向に埋設されている。この引裂紐16は、外被14の剥ぎ取りを容易にすべく設けられた部材である。
【0022】
次に、この光ケーブル10の端末にプーリングアイ20を固着してなる、光ケーブルの端末構造1について説明する。
【0023】
図2に示すように、プーリングアイ20は、一端側に牽引ロープを繋ぎ止めるためのロープ引止環部20aを有しており、他端側にテンションメンバ挿入孔21を有している。このテンションメンバ挿入孔21は、プーリングアイ20の軸心に沿う一箇所に形成されている。このプーリングアイ20は、光ケーブル10を牽引するために十分な強度を持った材質、例えば鉄などの金属からなる。
このプーリングアイ20を固着させる光ケーブル10として、外径が11mmであってテンションメンバ15の径が1mmの単鋼線を用いた。
【0024】
まず、図3に示すように、光ケーブル10の端末から所定長の外被14を剥ぎ取り、その光ケーブル10の端末にテンションメンバ15を露出させる。また、押え巻きテープ13および緩衝層(巻き付け材12)を外被切断箇所と同じ位置にて切断し、光心線11を露出させる。
次いで、露出された2本のテンションメンバ15をケーブル断面中心に相当する位置で一本に束ねた牽引束15aを、プーリングアイ20のテンションメンバ挿入孔21に挿入する。図3に示す牽引束15aは、2本のテンションメンバ15を並行させて引き揃えて束ねた牽引束である。
ここで、光ケーブル10において外被14および緩衝層が切断されている端面と、プーリングアイ20の後端部(テンションメンバ挿入孔21側の端部)との距離が近過ぎると、テンションメンバ15をケーブル断面中心に相当する位置に引き揃える際に曲げる曲率が大きくなり、テンションメンバ15が折れるなど破損してしまうことがある。また、後述する光心線11をプーリングアイ20の外周に沿わすことが困難になることがある。そのため、ケーブル端面(外被切断箇所)とプーリングアイ20の後端部との距離は、10〜15mm程度であることが好ましい。
【0025】
次いで、図4に示すように、牽引束15aがテンションメンバ挿入孔21に挿入されているプーリングアイ20を所定方向に加圧してかしめることによってかしめ22を形成し、テンションメンバ15とプーリングアイ20を固着する。
ここでは、プーリングアイ20に3箇所のかしめ22が形成されている。特に、少なくとも隣り合うかしめ22の加圧方向がそれぞれ異なるように、例えば、油圧プレス機やかしめ冶具(六角ダイス)等により加圧が施されてなるかしめ22が形成されている、例えば、図4中、中央側のかしめ22は牽引束15aを挟む上下方向の加圧によって形成されており、その両側の2つのかしめ22は牽引束15aを挟む左右方向の加圧によって形成されている。
なお、図4(図5)は、図3に示した光ケーブル10およびプーリングアイ20を、その軸線を中心に90度回転させた方向から視認した状態を示している。
【0026】
また、図4に示すように、露出された光心線11を5枚ずつの2束に分割したものを、プーリングアイ20の外周面に対してプーリングアイ20の長手方向に沿わす(縦ぞえする)。
更に、プーリングアイ20の外周面に沿わせた光心線11の上から、その光心線11を覆うように円筒状の熱収縮チューブ30を装着する。この熱収縮チューブ30を加熱して収縮させることによって、プーリングアイ20と熱収縮チューブ30の間に光心線11を挟み込み、その光心線11をかしめ22が形成されたプーリングアイ20の外周面に固定する。なお、熱収縮チューブ30は加熱収縮時に溶ける接着層を内面に有している。
こうして、図5に示すように、光ケーブル10の端末にプーリングアイ20が固着された、光ケーブルの端末構造1を組み上げることができる。
【0027】
このように、本発明に係る光ケーブルの端末構造1は、複数(2本)のテンションメンバ15をケーブル断面中心に相当する位置で束ねた一本の牽引束15aを、プーリングアイ20の軸心に沿って形成されているテンションメンバ挿入孔21に挿入する構成であるため、光ケーブル10に対して比較的細いプーリングアイ20を用いることができる。
そして、比較的細いプーリングアイ20に形成された一筋のテンションメンバ挿入孔21に牽引束15aを挿入し、テンションメンバ15とプーリングアイ20を固着してなる光ケーブルの端末構造1を小型化することができる。
また、プーリングアイ20に3箇所のかしめ22を形成して、テンションメンバ15とプーリングアイ20を固着しており、特に、隣り合うかしめ22の加圧方向がそれぞれ異なるようにかしめ22が形成されているので、テンションメンバ15とプーリングアイ20の固着力をより強固にし、その把持力を増強させることができる。その結果、光ケーブル10を敷設する際、光ケーブルの端末構造1を引き回すための牽引力に十分に耐えることができる。
【0028】
(実施形態2)
次に、本発明に係る光ケーブルの端末構造の実施形態2について説明する。なお、実施形態1と同様の構成については、同符号を付して説明を割愛する。
図6に示すように、露出された2本のテンションメンバ15をケーブル断面中心に相当する位置で撚り合わせて束ねた牽引束15bを、プーリングアイ20のテンションメンバ挿入孔21に挿入する構造であってもよい。なお、図6に示す牽引束15bは、2本のテンションメンバ15を20mmピッチで撚り合わせて束ねた牽引束である。
この牽引束15b以外の構成は、実施形態1の光ケーブルの端末構造1と同様の構成である。
このような牽引束15bをプーリングアイ20のテンションメンバ挿入孔21に挿入した後、かしめ22を形成してなる光ケーブルの端末構造であっても、実施形態1の光ケーブルの端末構造1と同様の効果が得られる。
また、2本のテンションメンバ15を撚り合わせて一体化した牽引束15bは、その剛性が増しており、テンションメンバ挿入孔21に挿入しやすいなどのメリットがある。
【0029】
次に、本発明に係る光ケーブルの端末構造1(実施形態1、実施形態2)の効果を確認すべく、以下の比較例1、比較例2をあわせて検証した。
【0030】
(比較例1)
図7(a)に示すように、比較例1に用いたプーリングアイ40は、光ケーブル10における2本のテンションメンバ15と同じ間隔をあけた二筋のテンションメンバ挿入孔41を有しており、図2に示したプーリングアイ20よりも太いものである。
そして、図7(b)に示すように、光ケーブル10の端末から所定長の外被14を剥ぎ取って露出された2本のテンションメンバ15を、その延長線上に対応する二筋のテンションメンバ挿入孔41に真っ直ぐに挿入する。
次いで、テンションメンバ15がテンションメンバ挿入孔41に挿入されているプーリングアイ40を所定方向に加圧してかしめることによって3箇所のかしめ42を形成し、テンションメンバ15とプーリングアイ40を固着する。例えば、図7(c)に示すように、中央側のかしめ42は六角ダイス60による上下方向の加圧によって形成されており、その両側の2つのかしめ42は六角ダイス60による左右方向の加圧によって形成されている。
そして、実施形態1と同様に、緩衝層(巻き付け材12)等を外被切断箇所と同じ位置にて切断して露出されている光心線11を5枚ずつの2束に分割したものを、プーリングアイ40の外周面に沿わせ、その光心線11の上から被せた円筒状の熱収縮チューブ30を加熱して収縮させることによって、プーリングアイ40と熱収縮チューブ30の間に光心線11を挟み込み、その光心線11をかしめ42が形成されたプーリングアイ40の外周面に固定する。
こうして、比較例1の光ケーブルの端末構造を組み上げた。
【0031】
(比較例2)
図8(a)に示すように、比較例2に用いたプーリングアイ50は、光ケーブル10における2本のテンションメンバ15と同じ間隔をあけた二筋のテンションメンバ挿入孔51を有しており、図2に示したプーリングアイ20よりも太く、その断面が略「8」字形状を呈するものである。
そして、図8(b)に示すように、光ケーブル10の端末から所定長の外被14を剥ぎ取って露出された2本のテンションメンバ15を、その延長線上に対応する二筋のテンションメンバ挿入孔51に真っ直ぐに挿入する。
次いで、テンションメンバ15がテンションメンバ挿入孔51に挿入されているプーリングアイ50を所定方向に加圧してかしめることによって3箇所のかしめ52を形成し、テンションメンバ15とプーリングアイ50を固着する。例えば、図8(c)に示すように、3箇所のかしめ52は、変形六角ダイス70による左右方向の加圧によって形成されている。
そして、実施形態1と同様に、緩衝層(巻き付け材12)等を外被切断箇所と同じ位置にて切断して露出されている光心線11を5枚ずつの2束に分割したものを、プーリングアイ50の外周面に沿わせ、その光心線11の上から被せた円筒状の熱収縮チューブ30を加熱して収縮させることによって、プーリングアイ50と熱収縮チューブ30の間に光心線11を挟み込み、その光心線11をかしめ52が形成されたプーリングアイ50の外周面に固定する。
こうして、比較例2の光ケーブルの端末構造を組み上げた。
【0032】
前述した実施形態1の光ケーブルの端末構造1に対応する実施例1、実施形態2に対応する実施例2、比較例1および比較例2に関し、テンションメンバの把持力(テンションメンバとプーリングアイの固着力)と、光ケーブルの端末構造の最大径の各項目についての評価結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に示した評価結果から明らかなように、実施例1および実施例2における光ケーブルの端末構造1の最大径は、比較例1および比較例2のものよりも細く、本発明に係る光ケーブルの端末構造1の小型化が図られていることがわかる。
これは、実施例1および実施例2のように、その軸心に沿う一筋のテンションメンバ挿入孔21を有するプーリングアイ20であれば、光ケーブル10に対して比較的細い形状とすることができ、光ケーブルの端末構造1を小型化することが可能になっていることによる。
これに対し、比較例1および比較例2のように、2本のテンションメンバ15と同じ間隔をあけた二筋のテンションメンバ挿入孔(41、51)を有するプーリングアイ(40、50)では、光ケーブル10に対して比較的太い形状になってしまうので、光ケーブルの端末構造の小型化に限界がある。
【0035】
また、表1に示した評価結果から明らかなように、テンションメンバの把持力についても、実施例1および実施例2における光ケーブルの端末構造1が優れていることがわかる。
これは、実施例1および実施例2のように、その軸心に沿う一筋のテンションメンバ挿入孔21に挿入された牽引束(テンションメンバ15)に対して圧力が集中するように、プーリングアイ20の外周からほぼ均等に加圧が施されたかしめ22が形成されていることによる。
これに対し、比較例1のように、プーリングアイ40の軸心から外側にずれた位置にあるテンションメンバ挿入孔41に挿入されたテンションメンバ15には、かしめ42を形成する際の加圧力を集中させることができず、テンションメンバとプーリングアイの固着力を実施例の端末構造ほど強くすることができなかったためである。
また、比較例2の場合、テンションメンバ挿入孔51に挿入されたテンションメンバ15に対してかしめ52を形成する際の加圧力を、比較例1よりも集中させることができるが、隣り合うかしめ52の加圧方向が同じであるため、実施例1および実施例2よりも劣る結果となった。
【0036】
以上のように、ケーブル断面中心よりも外側に複数(2本)のテンションメンバ15を備えた光ケーブル10の端末にプーリングアイ20を固着する場合、複数(2本)のテンションメンバ15をケーブル断面中心に相当する位置で束ねた一本の牽引束(15a、15b)を、プーリングアイ20の軸心に沿って形成されているテンションメンバ挿入孔21に挿入した後、プーリングアイ20に加圧を施してかしめ22を形成し、テンションメンバ15とプーリングアイ20を固着させるようにすれば、その牽引端末構造を小型化するとともに、光ケーブル10を敷設する際の牽引力に十分に耐えうる、光ケーブルの端末構造1を形成することができる。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、図9(a)に示すように、ケーブル断面中心よりも外側の外被14に8本のテンションメンバ15がケーブルの長手方向と平行に埋設されている光ケーブル10aと、プーリングアイ20とを固着してなる光ケーブルの端末構造1であってもよい。
この光ケーブル10aは、例えば、12枚の光心線11が積層された光心線積層体をケーブルの中心部に備え、その光心線11の周囲に、例えば、4本の巻き付け材12を螺旋状に巻回してなる緩衝層が設けられ、その緩衝層(巻き付け材12)の外側に押出成形により形成された外被14が設けられており、その外被14に8本のテンションメンバ15が埋設されている。
そして、図9(b)に示すように、光ケーブル10aの端末から所定長の外被14を剥ぎ取り、露出された8本のテンションメンバ15をケーブル断面中心に相当する位置で撚り合わせて束ねた牽引束15bを、プーリングアイ20のテンションメンバ挿入孔21に挿入し、そのプーリングアイ20にかしめ22を形成するようにすればよい。
また、実施形態1と同様に、緩衝層(巻き付け材12)等を外被切断箇所と同じ位置にて切断して露出されている光心線11を6枚ずつの2束に分割したものを、プーリングアイ20の外周面に沿わせ、その光心線11の上から被せた円筒状の熱収縮チューブ30を加熱して収縮させることによって、プーリングアイ20と熱収縮チューブ30の間に光心線11を挟み込み、その光心線11をかしめ22が形成されたプーリングアイ20の外周面に固定することで、光ケーブルの端末構造1を組み上げることができる。
【0038】
なお、一般的には、テンションメンバ15が太くなると、テンションメンバ15をケーブル断面中心に相当する位置に束ねて沿わせる作業が困難となるので、本発明を適用するスロットレス型光ファイバケーブル(光ケーブル)のテンションメンバ15の径は1.6mm以下であることが望ましい。
【0039】
また、ケーブル外径が小さい、あるいは外被14が薄い場合、テンションメンバ15同士をケーブル断面中心に沿わせた際、外被14が略楕円状に変形し、テンションメンバ15に急激な曲がりを加えることなくテンションメンバ15を束ねることができる。これに対し、ケーブル外径が大きくなる、あるいは外被14が厚くなると、外被14の剛性が上がるため、複数のテンションメンバ15同士をケーブル断面中心に沿わせる際に、外被14が切断された外被切断箇所(ケーブル端面)で露出されたテンションメンバ15の根元にて、テンションメンバ15に急激な曲がりが発生する。そのため、ケーブル外径は16mm以下、外被14の厚さは3.0mm以下であることが望ましい。
【0040】
なお、本発明の適用は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 光ケーブルの端末構造
10、10a 光ケーブル
11 光心線
12 巻き付け材
13 押え巻きテープ
14 外被
15 テンションメンバ
15a、15b 牽引束
16 引裂紐
20 プーリングアイ
21 テンションメンバ挿入孔
22 かしめ
30 熱収縮チューブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル断面中心よりも外側に複数のテンションメンバを備えた光ケーブルの端末に、テンションメンバ挿入孔を有するプーリングアイが固着された光ケーブルの端末構造であって、
前記光ケーブルの端末から所定長露出された前記複数のテンションメンバを前記ケーブル断面中心に相当する位置で束ねてなる牽引束が、前記テンションメンバ挿入孔に挿入されている前記プーリングアイを所定方向に加圧したかしめによって、前記複数のテンションメンバと前記プーリングアイが固着されていることを特徴とする光ケーブルの端末構造。
【請求項2】
前記光ケーブルは光心線を備えており、前記光ケーブルの端末から所定長露出された前記光心線が、前記かしめが形成された前記プーリングアイの外周に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の光ケーブルの端末構造。
【請求項3】
前記牽引束は、前記複数のテンションメンバが並行して引き揃えられて束ねられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ケーブルの端末構造。
【請求項4】
前記牽引束は、前記複数のテンションメンバが撚り合わされて束ねられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ケーブルの端末構造。
【請求項5】
前記プーリングアイには複数のかしめが形成されており、少なくとも隣り合うかしめの加圧方向がそれぞれ異なっていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の光ケーブルの端末構造。
【請求項1】
ケーブル断面中心よりも外側に複数のテンションメンバを備えた光ケーブルの端末に、テンションメンバ挿入孔を有するプーリングアイが固着された光ケーブルの端末構造であって、
前記光ケーブルの端末から所定長露出された前記複数のテンションメンバを前記ケーブル断面中心に相当する位置で束ねてなる牽引束が、前記テンションメンバ挿入孔に挿入されている前記プーリングアイを所定方向に加圧したかしめによって、前記複数のテンションメンバと前記プーリングアイが固着されていることを特徴とする光ケーブルの端末構造。
【請求項2】
前記光ケーブルは光心線を備えており、前記光ケーブルの端末から所定長露出された前記光心線が、前記かしめが形成された前記プーリングアイの外周に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の光ケーブルの端末構造。
【請求項3】
前記牽引束は、前記複数のテンションメンバが並行して引き揃えられて束ねられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ケーブルの端末構造。
【請求項4】
前記牽引束は、前記複数のテンションメンバが撚り合わされて束ねられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ケーブルの端末構造。
【請求項5】
前記プーリングアイには複数のかしめが形成されており、少なくとも隣り合うかしめの加圧方向がそれぞれ異なっていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の光ケーブルの端末構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2012−242527(P2012−242527A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110914(P2011−110914)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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