説明

光ケーブルの製造方法および光ケーブル

【課題】 光ケーブルの製造方法において、テープ状光ファイバ心線の表面に塗布する粉体の吸湿性を小さくする。
【解決手段】 テープ状光ファイバ心線1の集合工程をにおいて、粉体塗布装置7において、タルクを含んだ空気流を導入して、その表面にタルクを塗布する。導入されるタルクの吸湿性、流動性を改善するために、表面処理剤としてシランカップリング剤を添加したタルクを用いる。シランカップリング剤の添加により、シランカップリング剤の表面処理がなされ、タルク微粒子表面に撥水性を与える被膜が形成される。それにより、集合治具8に粉体が詰まることを抑制でき、また、テープ状光ファイバ心線への塗布むらを回避することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にタルクを塗布したテープ状光ファイバ心線を積層して収容した光ケーブルおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多心数の光ファイバ心線を収容した光ケーブルとして、テープ状光ファイバ心線の複数枚を積層して集合した集合体を用いた光ケーブルが用いられている。テープ状光ファイバ心線は、複数の光ファイバ心線を並列に配置して、これら心線の外側に一括被覆をしたものである。このような光ケーブルを製造するにあたって、テープ状光ファイバ心線の複数枚を積層して集合する工程において、テープ状光ファイバ心線の供給装置から集合点までのテープ状光ファイバ心線のパスライン中に粉体塗布槽を設けておき、この塗布槽の中に気体を吹き込んで粉体を流動化し、テープ状光ファイバ心線の表面に粉体を塗布して、テープ状光ファイバ心線相互間の摩擦を減少させることが特許文献1に開示されている。
【0003】
図1は、テープスロット型光ケーブルの一例の横断面図である。図中、1はテープ状光ファイバ心線、2は溝付スペーサ、3は収納溝、4は抗張力体、5は上巻きテープ、6は外部シースである。溝付スペーサ2は、合成樹脂で成型され、中心に抗張力体4が設けられ、外周に複数の収納溝3、この例では5本の収納溝3が螺旋状に形成されている。なお、収納溝3は、一方向に螺旋状に形成されてもののほか、一定の周期で、螺旋の方向が反転する、いわゆるSZ溝のものもある。収納溝3には、複数枚のテープ状光ファイバ心線1が積層されて収容されている。その外周には、上巻きテープ5が巻かれ、その上に塩化ビニル、ポリエチレン等の外部シース6が押し出し成型で施されている。
【0004】
図2は、図1の光ケーブルの製造工程におけるテープ状光ファイバ心線の集合工程を説明するための概略構成図である。図中、1はテープ状光ファイバ心線、2は溝付スペーサ、7は粉体塗布装置、8は集合治具、9は粉体である。
【0005】
図示しない心線供給部から供給されたテープ状光ファイバ心線1には、テープ状光ファイバ心線相互間の摩擦を減少させるため、粉体塗布装置7で、気体流に混合されたタルク等の滑性を与える粉体9がテープ状光ファイバ心線1の表面に塗布される。粉体が塗布されたテープ状光ファイバ心線の複数枚を溝付スペーサ2の収納溝3へ収納するため、集合治具8でスタック状に整列させる。
【特許文献1】特許第3309876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図3は、集合治具の一例の説明図である。集合治具は、複数枚のテープ状光ファイバ心線が積層された状態の周囲形状に対応するスリット上の通路が形成されたもので、この通路を通過させることによって、積層形状を規制するものである。この例では、図3(A)に示すように、集合治具8は、上部材8aと下部材8bとが嵌合された状態で通路が形成される。図3(B)は、構造を説明するために、上部材8aと下部材8bとをずらせた状態を図示した斜視図であり、上部材8aと下部材8bとが嵌合して、長手方向に摺動するように結合され、下部材8bに形成された溝の上部が上部材8aで覆われて通路が形成される様子が分かる。この通路の前方の入口から挿入された複数枚のテープ状光ファイバ心線1は、図3(A)に示すように、通路の後部から出ると、積層形状が規制されることになる。
【0007】
上述したように、テープ状光ファイバ心線相互間の摩擦を減少させるため、テープ状光ファイバ心線にタルクを塗布しているが、タルクは、吸湿性大のため、高湿度下で流動性が低下して、集合治具に粉体が詰まり、テープ状光ファイバ心線の通過抵抗が増加して、テープ状光ファイバ心線に過大な伸び歪が加わることや、粉体塗布槽の中で粉体が流動化されにくくなって、塗布不良が起きることが問題になっている。これらの問題のため、テープ状光ファイバ心線を適正な歪状態で溝付スペーサーへ収納できなくなり、ケーブルの伝送特性が悪化する。また、集合治具にタルクが詰まると、集合機を停止して、頻繁に手入れをしなければならないという問題があった。
【0008】
従来は、タルクのタンク内を乾燥させたりしたが、タンクを出たタルクはすぐに吸湿するため、乾燥状態を維持することが困難である。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、光ケーブルの製造方法において、タルクそのものの吸湿性を小さく改質したタルクを用いる製造方法および光ケーブルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、光ファイバ心線をテープ状にユニット化した複数枚のテープ状光ファイバ心線の表面に粉体を塗布した後、積層してテープ状光ファイバ心線を集合する光ケーブルの製造方法において、前記粉体としてシランカップリング剤が添加されたタルクを用いることを特徴とするものである。
【0011】
前記シランカップリング剤が添付されたタルクにおけるシランカップリング剤の添加量が0.5〜5%とすることができる。また、前記シランカップリング剤として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用いることができる。
【0012】
また、本発明は、光ケーブルにおいて、上記タルクが塗布されたテープ状光ファイバ心線が積層されて収容されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、タルクそのものの吸湿性を小さく改質したタルクを用いるので、集合治具に粉体が詰まることを抑制でき、また、テープ状光ファイバ心線への塗布むらを回避することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、光ケーブルの製造工程において用いるタルクとして、シランカップリング剤を添加することによる表面処理を施して、タルク微粒子表面に撥水性の被膜を形成することにより、吸湿性が小さく改質されたタルクを用いることによって、集合治具に粉体が詰まることを抑制でき、また、テープ状光ファイバ心線への塗布むらを回避することができる。
【実施例1】
【0015】
本発明は、集合工程に導入されるテープ状光ファイバ心線として、少なくとも一方の表面にシランカップリング剤が添加されたタルクが塗布されたテープ状光ファイバ心線を用いる。
【0016】
図1に示すようなテープスロット型光ケーブルの集合工程、例えば、図2に示すテープ状光ファイバ心線の集合工程をにおいて、粉体塗布装置7において、タルクを含んだ気体流、例えば空気流とともに導入されるタルクとして、吸湿性、流動性を改善するための表面処理剤としてシランカップリング剤を添加したタルクを用いる。シランカップリング剤の添加により、シランカップリング剤の表面処理がなされ、タルク微粒子表面に撥水性を与える被膜が形成される。
【0017】
図4は、シランカップリング剤をタルクに添加する処理方法の一例の説明図である。タルクを撹拌した状態で、シランカップリング剤の原液または溶液を滴下または噴霧して添加する。添加後に後撹拌を行なって、篩いに通して、凝結したものを除いて表面処理が施されたタルクを得ることができる。3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとビニルトリメトキシシランを使用し、これを添加したタルクをテープ状光ファイバ心線に図2の方法で塗布し、相対湿度80%のもとでテープ状光ファイバ心線の集合を行ない、集合治具へのタルクの詰まり頻度を測定した。実験結果を図5に示す。なお、実験は、4cタイプのテープ状光ファイバ心線を5枚積層し15個の収納溝をもつ300心型SZケーブルにて評価を行なった。
【0018】
シランカップリング剤の添加量が0.5〜5.0%で良好な結果が得られたが、1.0〜5.0%がより望ましい結果であるといえる。3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとビニルトリメトキシシランのいずれも同程度の結果を示したが、ビニルトリメトキシシランは有害性があるので、製造工程によっては、問題を生じるので、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが有効である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】テープスロット型光ケーブルの一例の横断面図である。
【図2】図1の光ケーブルの製造工程におけるテープ状光ファイバ心線の集合工程を説明するための概略構成図である。
【図3】集合治具の一例の説明図である。
【図4】シランカップリング剤をタルクに添加する処理方法の一例の説明図である。
【図5】実験結果の説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1…テープ状光ファイバ心線、2…溝付スペーサ、3…収納溝、4…抗張力体、5…上巻きテープ、6…外部シース、7…粉体塗布装置、8…集合治具、9…粉体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線をテープ状にユニット化した複数枚のテープ状光ファイバ心線の表面に粉体を塗布した後、積層してテープ状光ファイバ心線を集合する光ケーブルの製造方法において、前記粉体としてシランカップリング剤が添加されたタルクを用いることを特徴とする光ケーブルの製造方法。
【請求項2】
前記シランカップリング剤が添付されたタルクにおけるシランカップリング剤の添加量が0.5〜5%であることを特徴とする請求項1に記載の光ケーブルの製造方法。
【請求項3】
前記シランカップリング剤が3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランであることを特徴とする請求項1または2に記載の光ケーブルの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタルクが塗布されたテープ状光ファイバ心線が積層されて収容されていることを特徴とする光ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−3579(P2006−3579A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179214(P2004−179214)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】