光ケーブル及びその製造方法
【課題】作業現場で刃物等を用いることなく、上巻テープ切断のための切裂き始端となる切欠きを得ることができ、安全で簡単にかつ容易に上巻テープの剥ぎ取りを行うことが可能な光ケーブルとその製造方法を提供する。
【解決手段】複数本の光ファイバ心線をスペーサ１２の溝１４に収納して、スペーサの外周に所定の傾斜角度で上巻テープ１５を巻付け、その外側をシース１６で被覆する光ケーブルで、上巻テープ１５の少なくとも一方の側縁に、切裂き応力集中個所Ｐを有する切欠き１７〜１７ｃが間欠的に入れられる。前記の切欠きの端部の開き幅ｄは、０.５ｍｍ以上あることが望ましく、また、上巻テープ１５と、スペーサ１２の色を異らせて、切欠き１７〜１７ｃの識別性を高めるようにする。
【解決手段】複数本の光ファイバ心線をスペーサ１２の溝１４に収納して、スペーサの外周に所定の傾斜角度で上巻テープ１５を巻付け、その外側をシース１６で被覆する光ケーブルで、上巻テープ１５の少なくとも一方の側縁に、切裂き応力集中個所Ｐを有する切欠き１７〜１７ｃが間欠的に入れられる。前記の切欠きの端部の開き幅ｄは、０.５ｍｍ以上あることが望ましく、また、上巻テープ１５と、スペーサ１２の色を異らせて、切欠き１７〜１７ｃの識別性を高めるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、複数本の光ファイバ心線を上巻テープで覆い、その外側をシースで被覆する光ケーブル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
近年の映像配信、ＩＰ電話、データ通信等のブロードバンドサービスの拡大により、光ファイバによる家庭向けのデータ通信サービス（ＦＴＴＨ：Fiber To The Home）の加入者が増加している。このＦＴＴＨでは、架空の幹線光ケーブルからドロップ光ケーブルを用いて加入者宅等に引き落されている。加入者宅への光ファイバの引き落しは、例えば、市街の電柱等に布設された幹線光ケーブルを、通常、クロージャと称されている接続函で分岐し、分岐された光ファイバ心線にドロップ光ケーブルを融着接続又は光コネクタを用いて接続している。
【０００３】
幹線光ケーブルは、図４（Ａ）に示すように、例えば、ＳＺ状に形成されて複数条の溝４を有する樹脂製のロッドからなるスペーサ２（スロットロッドとも言う）が用いられる。前記の溝４には、複数本の単心光ファイバ心線あるいは多心の光ファイバテープ心線３を収納し、スペーサ２の外周に上巻テープ５（押え巻とも言う）を巻き付けて光ファイバテープ心線３を覆っている。そして、上巻テープ５の外側を、押出し成形で形成されたシース６（外被とも言う）で被覆した形状のものが一般的である。
【０００４】
上述のような幹線光ケーブル１の途中部分から、光ファイバを加入者宅等に引き落すには、ケーブルに収納されている複数本の光ファイバ心線の内から、１本〜数本の光ファイバ心線を引出す分岐作業が行われる。この分岐（中間後分岐とも言われている）作業は、例えば、特許文献１に開示のように、光ケーブルの分岐部分のシース６を一定の長さ（５０ｃｍ程度）除去する。このシース６が除去された部分では、上巻テープ５が露出されるが、この上巻テープ５をニッパ７等より切裂き開始端を形成してから切断する。次いで、上巻テープ５を巻ほぐして剥ぎ取り、内部の光ファイバ心線３を取り出している。
【特許文献１】特開平８−２２０３９３号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
スペーサ上に巻き付けられた上巻テープ５は、光ファイバ心線が溝４から飛び出さないように保持し、また、シース６を成形する際の熱が光ファイバ心線に影響するのを抑制する熱絶縁用として、さらには、光ケーブル内への止水のための吸水用として機能させることができる。この上巻テープ５と光ファイバテープ心線３との間には、特に保護層のようなものが存在しないため、この上巻テープ５に、カッターやニッパー等の切裂き工具を差し込んでテープ切断の切裂き始端を得ようとすると、光ファイバテープ心線を傷つける恐れがある。また、光ファイバ心線の分岐作業は、電柱上やバケット車上というような作業環境の悪い状況で行うことが多く、できるだけ簡単で短時間に行えることが要望されている。
【０００６】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたもので、作業現場で刃物等を用いることなく、上巻テープ切断のための切裂き始端となる切欠きを得ることができ、安全で簡単にかつ容易に上巻テープの剥ぎ取りを行うことが可能な光ケーブルとその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明による光ケーブルは、複数本の光ファイバ心線をスペーサの溝に収納して、スペーサの外周に所定の傾斜角度で上巻テープを巻き着け、その外側をシースで被覆する光ケーブルで、上巻テープの少なくとも一方の側縁に、切裂き応力集中個所を有する切欠きが間欠的に入れられていることを特徴とする。前記の切欠きの端部の開き幅ｄは、０.５ｍｍ以上あることが望ましく、また、上巻テープと、スペーサの色を異らせて、切欠きの識別性を高めるようにする。
【発明の効果】
【０００８】
本発明によれば、光ケーブルのシースを除去し、露出された上巻テープ部分に切欠きが入れられて、摘みやすくなっている三角形状の突出片を起立させ、この突出片を手あるいは把持工具で引っ張ることにより、この切欠きの応力集中個所を切裂き始端として上巻テープを幅方向に容易に切断することができる。この結果、ケーブル内の光ファイバ心線を傷めることなく、上巻テープの剥ぎ取りを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００９】
図により本発明の実施の形態を説明する。図１は本発明による光ケーブルの概略を説明する図、図２は上巻テープの構成例を説明する図である。図中、１１は光ケーブル、１２はスペーサ、１３は光ファイバテープ心線、１４は溝、１５は上巻テープ、１６はシース、１７は切欠き、１８は突出片を示す。
【００１０】
本発明による光ケーブル１１は、例えば、図１（Ａ）及び図１（Ｂ）に示すように、図４（Ａ）で説明したのと同様な光ケーブルを対象とすることができ、ＳＺ状に形成された複数条の溝１４を有する樹脂製のロッドからなるスペーサ１２を用いて構成される。スペーサ１２の溝１４には、複数本の単心光ファイバ心線あるいは多心の光ファイバテープ心線１３が収納され、スペーサ１２の外周に上巻テープ１５が巻き着けられて、光ファイバテープ心線１３が覆われる。そして、上巻テープ１５の外側は、押出し成形によるシース１６で被覆される。
【００１１】
なお、スペーサ１２の外周で、かつ上巻テープ１５の内側に、ナイロン糸、プラスチックテープ等の粗巻きが施されることもある。この粗巻きは製造途中に溝１４から光ファイバ心線あるいは光ファイバテープ心線１３が飛び出すのを防ぐ目的で施されるが、一般的に間隔をあけて巻かれるものであり、光ファイバ心線あるいは光ファイバテープ心線１３を刃物から保護するものではない。上巻テープ１５は、通常の上巻テープと同様に、光ファイバ心線が溝１４から飛び出さないように保持し、また、シース１６を成形する際の熱が、光ファイバ心線に影響するのを抑制する熱絶縁用として、さらには、光ケーブル内への止水のための吸水用として機能させることができる。
【００１２】
上巻テープ１５には、例えば、テープ幅が１０ｍｍ〜２５ｍｍ程度のものが用いられ、開き巻き又は重ね巻きで巻き着けられる。この上巻テープ１５には、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の繊維からなる種々のものが用いられ、シース１６には、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂が用いられる。このシース１６は、スペーサ１２の外周に上巻テープ１５が巻き着けられてから、一旦ドラム等に巻き取られた後に、押出機に通して成形されるが、上巻テープ１５の巻き着けに引続いて連続的に成形されるようにしてもよい。
【００１３】
本発明においては、上記の上巻テープ１５の少なくとも一方の側縁部に、間欠的（所望の間隔をあけて）に切欠き１７を入れて、スペーサ１２に巻き着ける。切欠き１７は、図１（Ｃ）に示すように、切欠きの奥部に、引裂き時に応力が集中しやすい応力集中個所Ｐを有する形状で形成され、Ｖ字状の切欠き１７ａ、矩形状の切欠き１７ｂ、半円状の切欠き１７ｃ、等の種々の形状で形成することができる。なお、応力集中個所Ｐとしては、図１（Ｃ）に示すように、切欠きに角張った部位を設けることで、応力を集中しやすい点で好ましい。
【００１４】
上記のように切欠き１７が入れられた上巻テープ１５をスペーサ上に巻き着けることで、切欠き１７の角部分を手の爪等で引っ掻くことにより、切欠き１７によって形成された三角形状の突出片１８を起立させることが可能となる。この突出片１８は、切欠き１７の奥部（応力集中個所Ｐの位置）までの切込み幅Ｄを三角形の一辺とした大きさで、これを手で摘んだり、ペンチ等の把持工具で挟み込んで、テープ幅方向に引裂くことにより、応力集中個所Ｐを起点として切断が開始され、上巻テープ１５を幅方向に容易に切断することができる。
【００１５】
突出片１８の大きさは、切欠き１７の切込み幅Ｄによって異なるが、切込み幅があまり小さいと摘みにくく、摘めたとしてもテープ切断のための切裂力で滑ってしまう。したがって、切込み幅Ｄは、手（爪部分）で摘める範囲の２.０ｍｍ以上であることが望ましい。また、あまり切込み幅が大きいと、上巻テープの巻き着け時の引っ張り張力が低下して切断されやすくなると共に、光ケーブル製造時にローラ等への引っ掛かりが生じやすくなるので、５.０ｍｍ以下とするのが望ましい。
【００１６】
また、作業環境の明るさにもよるが、切欠き１７の位置がよく判らないことがある。切欠き１７の位置を、ケーブル分岐の作業者が容易に探せるように、例えば、切欠き１７の切り口の端部の開き幅ｄを０.５ｍｍ以上として、切り欠き位置を判別しやすいようにすることが望ましい。
【００１７】
また、スペーサ１２と上巻テープ１５の色が異なるようにすることで、切欠き１７の位置の判別性を高めるようにしてもよい。すなわち、例えば、スペーサ１２が白色なら上巻テープ１５を白以外の着色されたものを用い、また、上巻テープ１５が白色なら、スペーサ１２を白以外の着色されたものを用いる。これにより、上巻テープ１５の切欠き１７の部分を通して、外部にスペーサ１２の異なる色が表示され、切欠き１７の位置を示すことができる。
【００１８】
光ケーブル１１内の光ファイバ心線を取り出すために、シース１６を除去し、上巻テープ１５を剥ぎ取る際には、上巻テープ１５の側縁部に間欠的に形成された何れかの切欠き１７を選択する。次いで、その切欠き１７の切り口部分を手の爪等で引っ掻くことにより、三角形状の突出片１８を起立させる。そして、この突出片１８を摘んで、その切欠きの応力集中個所Ｐを切裂き始端として上巻テープ１５の幅方向に切裂いて、上巻テープ１５を切断する。また、突出片１８を手あるいは把持工具等で引っ張り上げ、光ファイバから離れた位置で、刃物等の工具で切断するようにしてもよい。次いで、切断されたテープ端をもとに上巻テープ１５を巻きほぐすことにより、スペーサ１２上から剥ぎ取る。
【００１９】
図２は、上記の切欠き１７を側縁部分に設けた上巻テープ１５の種々の構成例を示す図である。図２（Ａ）は、シース１６の成形方向を示すシースラインの進行方向に対して、切欠き１７を上巻テープ１５の左側縁（サプライ側）とする例である。切欠き１７がシースラインのサプライ側にある場合は、ライン中のローラ等によって引っ掛かりにくい方向にあり、シース成形時におけるテープ切断の発生を低減することができる。
【００２０】
図２（Ｂ）は、シース１６の成形方向を示すシースラインの進行方向に対して、切欠き１７を上巻テープ１５の右側縁（巻取り側）とする例である。切欠き１７がシースラインの巻取り側にある場合は、ローラ等により切欠き１７の部分が捲れやすく、捲れた突出片が折れ曲がった状態で被覆される。図２（Ａ）の例と比べてローラ等によって引っ掛かりが発生しやすく、テープ切断を生じやすくなるが、折れ曲がった突出片は、テープ剥ぎ取り時に識別しやすく、また摘みやすいという利点がある。
【００２１】
図２（Ｃ）は、シース１６の成形方向を示すシースラインの進行方向に対して、切欠き１７を上巻テープ１５の左側縁（サプライ側）と右側縁（巻取り側）の両側縁部に形成する例である。この場合は、開き巻きによる巻き着けに限られるが、切欠き１７が上巻テープ１５の両側縁にあると、上巻テープ剥ぎ取り際の、テープ切断の切裂き個所の選択の自由度が高くなり、作業性を向上することができる。
【００２２】
図３は、本発明における光ケーブルに用いる上巻テープの製造例を説明する図である。上述した上巻テープは、スペーサの溝内に光ファイバ心線またはテープ心線を収納すると同時に、溝からこれらが脱落しないようにスペーサの外周に螺旋状に巻き着けられる。上巻テープは、通常、ロール状に巻かれたものをサプライ軸に支持させてスペーサ上に繰り出されるが、上述した上巻テープの切欠きは、図３に示すように、ロール状に巻かれた状態で形成することにより、所定の間隔で効率よく製造することができる。
【００２３】
図３（Ａ）は、巻取り芯２０の外周に上巻テープ用のテープ材２１がロール巻きされた状態（例えば、１５ｍｍ幅のテープで、ロール外径５００ｍｍφ）で、ロール側面２２に放射状に切込み２３ａ（深さ、３ｍｍ程度）を入れる例である。また、この切込み２３ａは、図１（Ｃ）で説明したように、テープの幅方向に対してＶ字状、矩形状、半円状に切欠いて形成する。
【００２４】
切込み２３ａは、テープ材２１を繰り出したときに、所定の間隔をおいて形成された切欠き１７となる。放射状に切込み２３ａを入れることで、ロール巻きの内径側と外径側で、切欠き１７が形成される間隔は多少異なるが、比較的規則性のある間隔で形成することができ、開き幅、切欠き幅の制御も容易に行うことが可能となる。
【００２５】
図３（Ｂ）は、巻取り芯２０の外周に上巻テープ用のテープ材２１がロール状に巻かれた状態で、ロール側面２２に放射状に切込み２３ａと２３ｂを入れる例である。切込み２３ａは、図３（Ａ）の例と同じであるが、切込み２３ｂをロール巻きの外径側のみに入れている。これは、内径側になるにしたがって、切欠き１７が形成される間隔が狭まることから、内側の切込みを間引くことで、バランスさせるようにしている。
【図面の簡単な説明】
【００２６】
【図１】本発明による光ケーブルの概略を説明する図である。
【図２】本発明による上巻テープの構成例を説明する図である。
【図３】本発明の光ケーブルに用いる上巻テープの製造例を説明する図である。
【図４】従来の技術を説明する図である。
【符号の説明】
【００２７】
１１…光ケーブル、１２…スペーサ、１３…光ファイバテープ心線、１４…溝、１５…上巻テープ、１６…シース、１７〜１７ｃ…切欠き、１８…突出片、２０…巻取り芯、２１…テープ材、２２…ロール側面、２３ａ，２３ｂ…切込み。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、複数本の光ファイバ心線を上巻テープで覆い、その外側をシースで被覆する光ケーブル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
近年の映像配信、ＩＰ電話、データ通信等のブロードバンドサービスの拡大により、光ファイバによる家庭向けのデータ通信サービス（ＦＴＴＨ：Fiber To The Home）の加入者が増加している。このＦＴＴＨでは、架空の幹線光ケーブルからドロップ光ケーブルを用いて加入者宅等に引き落されている。加入者宅への光ファイバの引き落しは、例えば、市街の電柱等に布設された幹線光ケーブルを、通常、クロージャと称されている接続函で分岐し、分岐された光ファイバ心線にドロップ光ケーブルを融着接続又は光コネクタを用いて接続している。
【０００３】
幹線光ケーブルは、図４（Ａ）に示すように、例えば、ＳＺ状に形成されて複数条の溝４を有する樹脂製のロッドからなるスペーサ２（スロットロッドとも言う）が用いられる。前記の溝４には、複数本の単心光ファイバ心線あるいは多心の光ファイバテープ心線３を収納し、スペーサ２の外周に上巻テープ５（押え巻とも言う）を巻き付けて光ファイバテープ心線３を覆っている。そして、上巻テープ５の外側を、押出し成形で形成されたシース６（外被とも言う）で被覆した形状のものが一般的である。
【０００４】
上述のような幹線光ケーブル１の途中部分から、光ファイバを加入者宅等に引き落すには、ケーブルに収納されている複数本の光ファイバ心線の内から、１本〜数本の光ファイバ心線を引出す分岐作業が行われる。この分岐（中間後分岐とも言われている）作業は、例えば、特許文献１に開示のように、光ケーブルの分岐部分のシース６を一定の長さ（５０ｃｍ程度）除去する。このシース６が除去された部分では、上巻テープ５が露出されるが、この上巻テープ５をニッパ７等より切裂き開始端を形成してから切断する。次いで、上巻テープ５を巻ほぐして剥ぎ取り、内部の光ファイバ心線３を取り出している。
【特許文献１】特開平８−２２０３９３号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
スペーサ上に巻き付けられた上巻テープ５は、光ファイバ心線が溝４から飛び出さないように保持し、また、シース６を成形する際の熱が光ファイバ心線に影響するのを抑制する熱絶縁用として、さらには、光ケーブル内への止水のための吸水用として機能させることができる。この上巻テープ５と光ファイバテープ心線３との間には、特に保護層のようなものが存在しないため、この上巻テープ５に、カッターやニッパー等の切裂き工具を差し込んでテープ切断の切裂き始端を得ようとすると、光ファイバテープ心線を傷つける恐れがある。また、光ファイバ心線の分岐作業は、電柱上やバケット車上というような作業環境の悪い状況で行うことが多く、できるだけ簡単で短時間に行えることが要望されている。
【０００６】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたもので、作業現場で刃物等を用いることなく、上巻テープ切断のための切裂き始端となる切欠きを得ることができ、安全で簡単にかつ容易に上巻テープの剥ぎ取りを行うことが可能な光ケーブルとその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明による光ケーブルは、複数本の光ファイバ心線をスペーサの溝に収納して、スペーサの外周に所定の傾斜角度で上巻テープを巻き着け、その外側をシースで被覆する光ケーブルで、上巻テープの少なくとも一方の側縁に、切裂き応力集中個所を有する切欠きが間欠的に入れられていることを特徴とする。前記の切欠きの端部の開き幅ｄは、０.５ｍｍ以上あることが望ましく、また、上巻テープと、スペーサの色を異らせて、切欠きの識別性を高めるようにする。
【発明の効果】
【０００８】
本発明によれば、光ケーブルのシースを除去し、露出された上巻テープ部分に切欠きが入れられて、摘みやすくなっている三角形状の突出片を起立させ、この突出片を手あるいは把持工具で引っ張ることにより、この切欠きの応力集中個所を切裂き始端として上巻テープを幅方向に容易に切断することができる。この結果、ケーブル内の光ファイバ心線を傷めることなく、上巻テープの剥ぎ取りを行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００９】
図により本発明の実施の形態を説明する。図１は本発明による光ケーブルの概略を説明する図、図２は上巻テープの構成例を説明する図である。図中、１１は光ケーブル、１２はスペーサ、１３は光ファイバテープ心線、１４は溝、１５は上巻テープ、１６はシース、１７は切欠き、１８は突出片を示す。
【００１０】
本発明による光ケーブル１１は、例えば、図１（Ａ）及び図１（Ｂ）に示すように、図４（Ａ）で説明したのと同様な光ケーブルを対象とすることができ、ＳＺ状に形成された複数条の溝１４を有する樹脂製のロッドからなるスペーサ１２を用いて構成される。スペーサ１２の溝１４には、複数本の単心光ファイバ心線あるいは多心の光ファイバテープ心線１３が収納され、スペーサ１２の外周に上巻テープ１５が巻き着けられて、光ファイバテープ心線１３が覆われる。そして、上巻テープ１５の外側は、押出し成形によるシース１６で被覆される。
【００１１】
なお、スペーサ１２の外周で、かつ上巻テープ１５の内側に、ナイロン糸、プラスチックテープ等の粗巻きが施されることもある。この粗巻きは製造途中に溝１４から光ファイバ心線あるいは光ファイバテープ心線１３が飛び出すのを防ぐ目的で施されるが、一般的に間隔をあけて巻かれるものであり、光ファイバ心線あるいは光ファイバテープ心線１３を刃物から保護するものではない。上巻テープ１５は、通常の上巻テープと同様に、光ファイバ心線が溝１４から飛び出さないように保持し、また、シース１６を成形する際の熱が、光ファイバ心線に影響するのを抑制する熱絶縁用として、さらには、光ケーブル内への止水のための吸水用として機能させることができる。
【００１２】
上巻テープ１５には、例えば、テープ幅が１０ｍｍ〜２５ｍｍ程度のものが用いられ、開き巻き又は重ね巻きで巻き着けられる。この上巻テープ１５には、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の繊維からなる種々のものが用いられ、シース１６には、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂が用いられる。このシース１６は、スペーサ１２の外周に上巻テープ１５が巻き着けられてから、一旦ドラム等に巻き取られた後に、押出機に通して成形されるが、上巻テープ１５の巻き着けに引続いて連続的に成形されるようにしてもよい。
【００１３】
本発明においては、上記の上巻テープ１５の少なくとも一方の側縁部に、間欠的（所望の間隔をあけて）に切欠き１７を入れて、スペーサ１２に巻き着ける。切欠き１７は、図１（Ｃ）に示すように、切欠きの奥部に、引裂き時に応力が集中しやすい応力集中個所Ｐを有する形状で形成され、Ｖ字状の切欠き１７ａ、矩形状の切欠き１７ｂ、半円状の切欠き１７ｃ、等の種々の形状で形成することができる。なお、応力集中個所Ｐとしては、図１（Ｃ）に示すように、切欠きに角張った部位を設けることで、応力を集中しやすい点で好ましい。
【００１４】
上記のように切欠き１７が入れられた上巻テープ１５をスペーサ上に巻き着けることで、切欠き１７の角部分を手の爪等で引っ掻くことにより、切欠き１７によって形成された三角形状の突出片１８を起立させることが可能となる。この突出片１８は、切欠き１７の奥部（応力集中個所Ｐの位置）までの切込み幅Ｄを三角形の一辺とした大きさで、これを手で摘んだり、ペンチ等の把持工具で挟み込んで、テープ幅方向に引裂くことにより、応力集中個所Ｐを起点として切断が開始され、上巻テープ１５を幅方向に容易に切断することができる。
【００１５】
突出片１８の大きさは、切欠き１７の切込み幅Ｄによって異なるが、切込み幅があまり小さいと摘みにくく、摘めたとしてもテープ切断のための切裂力で滑ってしまう。したがって、切込み幅Ｄは、手（爪部分）で摘める範囲の２.０ｍｍ以上であることが望ましい。また、あまり切込み幅が大きいと、上巻テープの巻き着け時の引っ張り張力が低下して切断されやすくなると共に、光ケーブル製造時にローラ等への引っ掛かりが生じやすくなるので、５.０ｍｍ以下とするのが望ましい。
【００１６】
また、作業環境の明るさにもよるが、切欠き１７の位置がよく判らないことがある。切欠き１７の位置を、ケーブル分岐の作業者が容易に探せるように、例えば、切欠き１７の切り口の端部の開き幅ｄを０.５ｍｍ以上として、切り欠き位置を判別しやすいようにすることが望ましい。
【００１７】
また、スペーサ１２と上巻テープ１５の色が異なるようにすることで、切欠き１７の位置の判別性を高めるようにしてもよい。すなわち、例えば、スペーサ１２が白色なら上巻テープ１５を白以外の着色されたものを用い、また、上巻テープ１５が白色なら、スペーサ１２を白以外の着色されたものを用いる。これにより、上巻テープ１５の切欠き１７の部分を通して、外部にスペーサ１２の異なる色が表示され、切欠き１７の位置を示すことができる。
【００１８】
光ケーブル１１内の光ファイバ心線を取り出すために、シース１６を除去し、上巻テープ１５を剥ぎ取る際には、上巻テープ１５の側縁部に間欠的に形成された何れかの切欠き１７を選択する。次いで、その切欠き１７の切り口部分を手の爪等で引っ掻くことにより、三角形状の突出片１８を起立させる。そして、この突出片１８を摘んで、その切欠きの応力集中個所Ｐを切裂き始端として上巻テープ１５の幅方向に切裂いて、上巻テープ１５を切断する。また、突出片１８を手あるいは把持工具等で引っ張り上げ、光ファイバから離れた位置で、刃物等の工具で切断するようにしてもよい。次いで、切断されたテープ端をもとに上巻テープ１５を巻きほぐすことにより、スペーサ１２上から剥ぎ取る。
【００１９】
図２は、上記の切欠き１７を側縁部分に設けた上巻テープ１５の種々の構成例を示す図である。図２（Ａ）は、シース１６の成形方向を示すシースラインの進行方向に対して、切欠き１７を上巻テープ１５の左側縁（サプライ側）とする例である。切欠き１７がシースラインのサプライ側にある場合は、ライン中のローラ等によって引っ掛かりにくい方向にあり、シース成形時におけるテープ切断の発生を低減することができる。
【００２０】
図２（Ｂ）は、シース１６の成形方向を示すシースラインの進行方向に対して、切欠き１７を上巻テープ１５の右側縁（巻取り側）とする例である。切欠き１７がシースラインの巻取り側にある場合は、ローラ等により切欠き１７の部分が捲れやすく、捲れた突出片が折れ曲がった状態で被覆される。図２（Ａ）の例と比べてローラ等によって引っ掛かりが発生しやすく、テープ切断を生じやすくなるが、折れ曲がった突出片は、テープ剥ぎ取り時に識別しやすく、また摘みやすいという利点がある。
【００２１】
図２（Ｃ）は、シース１６の成形方向を示すシースラインの進行方向に対して、切欠き１７を上巻テープ１５の左側縁（サプライ側）と右側縁（巻取り側）の両側縁部に形成する例である。この場合は、開き巻きによる巻き着けに限られるが、切欠き１７が上巻テープ１５の両側縁にあると、上巻テープ剥ぎ取り際の、テープ切断の切裂き個所の選択の自由度が高くなり、作業性を向上することができる。
【００２２】
図３は、本発明における光ケーブルに用いる上巻テープの製造例を説明する図である。上述した上巻テープは、スペーサの溝内に光ファイバ心線またはテープ心線を収納すると同時に、溝からこれらが脱落しないようにスペーサの外周に螺旋状に巻き着けられる。上巻テープは、通常、ロール状に巻かれたものをサプライ軸に支持させてスペーサ上に繰り出されるが、上述した上巻テープの切欠きは、図３に示すように、ロール状に巻かれた状態で形成することにより、所定の間隔で効率よく製造することができる。
【００２３】
図３（Ａ）は、巻取り芯２０の外周に上巻テープ用のテープ材２１がロール巻きされた状態（例えば、１５ｍｍ幅のテープで、ロール外径５００ｍｍφ）で、ロール側面２２に放射状に切込み２３ａ（深さ、３ｍｍ程度）を入れる例である。また、この切込み２３ａは、図１（Ｃ）で説明したように、テープの幅方向に対してＶ字状、矩形状、半円状に切欠いて形成する。
【００２４】
切込み２３ａは、テープ材２１を繰り出したときに、所定の間隔をおいて形成された切欠き１７となる。放射状に切込み２３ａを入れることで、ロール巻きの内径側と外径側で、切欠き１７が形成される間隔は多少異なるが、比較的規則性のある間隔で形成することができ、開き幅、切欠き幅の制御も容易に行うことが可能となる。
【００２５】
図３（Ｂ）は、巻取り芯２０の外周に上巻テープ用のテープ材２１がロール状に巻かれた状態で、ロール側面２２に放射状に切込み２３ａと２３ｂを入れる例である。切込み２３ａは、図３（Ａ）の例と同じであるが、切込み２３ｂをロール巻きの外径側のみに入れている。これは、内径側になるにしたがって、切欠き１７が形成される間隔が狭まることから、内側の切込みを間引くことで、バランスさせるようにしている。
【図面の簡単な説明】
【００２６】
【図１】本発明による光ケーブルの概略を説明する図である。
【図２】本発明による上巻テープの構成例を説明する図である。
【図３】本発明の光ケーブルに用いる上巻テープの製造例を説明する図である。
【図４】従来の技術を説明する図である。
【符号の説明】
【００２７】
１１…光ケーブル、１２…スペーサ、１３…光ファイバテープ心線、１４…溝、１５…上巻テープ、１６…シース、１７〜１７ｃ…切欠き、１８…突出片、２０…巻取り芯、２１…テープ材、２２…ロール側面、２３ａ，２３ｂ…切込み。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
複数本の光ファイバ心線をスペーサの溝に収納して、前記スペーサの外周に所定の傾斜角度で上巻テープを巻付け、その外側をシースで被覆する光ケーブルであって、前記上巻テープの少なくとも一方の側縁に、応力集中個所を有する切欠きが間欠的に入れられていることを特徴とする光ケーブル。
【請求項２】
前記切欠きの端部の開き幅ｄが、０.５ｍｍ以上であることを特徴とする請求項１に記載の光ケーブル。
【請求項３】
前記上巻テープと、前記スペーサの色が異っていることを特徴とする請求項１または２に記載の光ケーブル。
【請求項１】
複数本の光ファイバ心線をスペーサの溝に収納して、前記スペーサの外周に所定の傾斜角度で上巻テープを巻付け、その外側をシースで被覆する光ケーブルであって、前記上巻テープの少なくとも一方の側縁に、応力集中個所を有する切欠きが間欠的に入れられていることを特徴とする光ケーブル。
【請求項２】
前記切欠きの端部の開き幅ｄが、０.５ｍｍ以上であることを特徴とする請求項１に記載の光ケーブル。
【請求項３】
前記上巻テープと、前記スペーサの色が異っていることを特徴とする請求項１または２に記載の光ケーブル。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２００９−１０３７７７（Ｐ２００９−１０３７７７Ａ）
【公開日】平成２１年５月１４日（２００９．５．１４）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００７−２７３４３４（Ｐ２００７−２７３４３４）
【出願日】平成１９年１０月２２日（２００７．１０．２２）
【出願人】（０００００２１３０）住友電気工業株式会社 (12,747)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年５月１４日（２００９．５．１４）
【国際特許分類】
【出願日】平成１９年１０月２２日（２００７．１０．２２）
【出願人】（０００００２１３０）住友電気工業株式会社 (12,747)
【Ｆターム（参考）】
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