説明

光ケーブル用支持線剥取器

【課題】 外被を剥ぎ取るときに、光ファイバー線が損傷せず、施工者が怪我をする懸念がなく、外被屑が散乱しない光ケーブル用支持線剥取器を提供する。
【解決手段】 光ケーブル用支持線剥取器100は、筒体8と、筒体8の一端側に設けられ、分離溝22に沿って分離された光ケーブル16の支持線部分18を挿通する支持線挿通孔4を有する切り刃ユニット2と、切り刃ユニット2から所定の間隔を空けて筒体8の他端側に設けられ、支持線部分18の長手方向の位置を規制する位置規制部材10とを備え、切り刃ユニット2は、板状のベース部3と、ベース部3の筒体内方側に突出する円錐台部1とを一体に有し、支持線挿通孔4が円錐台部1の中心部において切り刃ユニット2を貫通するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバー線と支持線とが互いに平行な状態で外被で被覆され、この外被に光ファイバー線部分と支持線部分とを分離するための分離溝が形成された光ケーブルに用いる光ケーブル用支持線剥取器に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバー線と支持線とが互いに平行な状態で外被で被覆され、この外被に光ファイバー線部分と支持線部分とを分離するための分離溝が形成された光ケーブルを引き留め用金物に引き留める従来の方法を説明する。まず、光ファイバー線部分と支持線部分とを分離するための分離溝に沿って光ケーブルの一端から10cm程度、ニッパーで分離溝の外被を切断し、手作業により光ファイバー線部分を支持線部分から引き離し、その後、支持線部分の外被剥ぎ取り長(例えば約10cm)を計測し、次にカッター等で支持線部分の外被を外被剥ぎ取り長だけ剥ぎ取って支持線を露出させ、露出した支持線を引き留め用金物に挿入し、引き留めていた。光ケーブルの設置工事では、このような引き留め作業が多く発生する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記従来技術では、外被は支持線に強固に接着されており、その外被の剥ぎ取りにカッター等の汎用工具を使用しているため、支持線の外被の剥ぎ取りの際に、光ファイバー線が損傷し、施工者の怪我が懸念され、また外被屑が散乱し、清掃が困難になるという問題がある。
【0004】
また手作業により光ファイバー線部分を支持線部分から引き離すので、光ファイバー線部分にくせが付き、引き留め作業の後工程が行い難くなるという問題がある。
【0005】
さらに、ニッパーで分離溝の外被を切断し、手作業により引き離す作業は、非効率であるという問題もある。
【0006】
本発明の目的は、上記従来例の問題点を解決し得る光ケーブル用支持線剥取器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光ケーブル用支持線剥取器は、光ファイバー線と支持線とが互いに平行な状態で外被で被覆され、前記外被に光ファイバー線部分と支持線部分とを分離するための分離溝が形成された光ケーブルに用いる光ケーブル用支持線剥取器であって、筒体と、前記筒体の一端側に設けられ、前記分離溝に沿って分離された光ケーブルの支持線部分を挿通する支持線挿通孔を有する切り刃ユニットと、前記切り刃ユニットから所定の間隔を空けて前記筒体の他端側に設けられ、前記支持線部分の長手方向の位置を規制する位置規制部材とを備え、前記切り刃ユニットは、板状のベース部と、前記ベース部の筒体内方側に突出する円錐台部とを一体に有し、前記支持線挿通孔が前記円錐台部の中心部において切り刃ユニットを貫通するように構成されたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、分離溝に沿って分離された光ケーブルの支持線部分を、切り刃ユニットの支持線挿通孔に挿通し、その先端を位置規制部材に当てて支持線部分の外被の剥ぎ取り長さを規制する。そして支持線挿通孔に対して傾けた状態で支持線部分を引くと、円錐台部が支持線挿通孔と交わる部分が切刃を構成し、前記切刃が支持線部分の外被に喰い込んで外被内の支持線に到達し、外被を支持線から剥ぎ取ることができる。
【0009】
このように、支持線挿通孔に挿通した支持線部分を支持線挿通孔に対して傾けた状態で引くという安定した作業により、支持線部分の外被を容易に剥ぎ取ることができるので、光ファイバー線が損傷することがなく、施工者が怪我をするおそれもない。また剥ぎ取られた外被屑は筒体内に保持され、散乱することがない。
【0010】
筒体の側部に設けられ、光ケーブルをその幅方向の位置を規制して載置するガイド部と、前記筒体の側部に前記ガイド部に対して接離可能に支持され、かつ前記ガイド部上の光ケーブルの分離溝に喰い込む切り裂き刃を有するケーブル分離用レバーとをさらに備えることが好ましい。
【0011】
ガイド部上の光ケーブルの分離溝にケーブル分離用レバーの切り裂き刃を喰い込ませた状態で分離溝に沿って光ケーブルを引っ張ることにより、切り裂き刃が分離溝の外被を引き裂くので、ファイバー線部分と支持線部分とを容易に分離することができ、手作業で分離するときのように光ファイバー線部分にくせがつくことがないからである。
【0012】
位置規制部材は筒体に着脱自在なキャップにより構成されることが好ましい。キャップであれば、筒体から外すことにより筒体内に溜まった外被屑を容易に筒体の外へ除去することができるからである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光ケーブルの支持線部分の外被を剥ぎ取るときに、光ファイバー線が損傷せず、施工者が怪我をする懸念がなく、外被屑が散乱しない光ケーブル用支持線剥取器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
図1(a)は本実施の形態に係る光ケーブル用支持線剥取器100の外観を示す斜視図であり、図1(b)は図1(a)に示す断面1b−1bに沿った断面図である。図2は、図1(b)に示すA部の拡大図である。
【0016】
光ケーブル用支持線剥取器100は、透明な材料からなる円筒状の筒体8を備える。L字状のベースプレート12が、筒体8の一端とその側部の一部とを覆って設けられる。ベースプレート12は、筒体8の一端に対向する端部プレート35と、筒体8の側部に位置する側部プレート36とを有する。筒体8の外周面に嵌め合わされた短円筒状の筒体支持部23が、端面プレート35の筒体8に対向する対向面37に溶接により固定される。筒体8は、図示しないネジにより筒体支持部23に螺着される。端部プレート35は、筒体8の中心軸線9の周りに形成された孔28を有する。
【0017】
図3(a)は光ケーブル用支持線剥取器100が用いられる分離前の光ケーブル16の外観を示す斜視図であり、図3(b)は光ケーブル16の断面図であり、図3(c)は分離後の光ケーブル16の外観を示す斜視図である。
【0018】
光ケーブル16は、複数の光ファイバー線19と支持線21とが互いに平行な状態で外被20により被覆され、光ファイバー線19とその外被20とからなる光ファイバー線部分17と、支持線21とその外被20とからなる支持線部分18とを分離するための分離溝22が形成される。図3(b)の断面図は、8心SM型光ファイバーDRケーブルの例を示しており、光ファイバー線19は、例えば4本1組でテーピングされたものが2個設けられる。
【0019】
光ケーブル16は、光ケーブル用支持線剥取器100により、分離溝22に沿って光ファイバー線部分17と支持線部分18とに分離され、支持線部分18の外被20が剥ぎ取られる。
【0020】
端部プレート35の表面29に、切り刃ユニット2が孔28を覆って取り付けられる。切り刃ユニット2は、分離された支持線部分18を挿通する支持線挿通孔4を有し、円板状のベース部3と、ベース部3の筒体内方側に向かって孔28内で突出する円錐台部1とを一体に有する。ベース部3はボルト30により端部プレート35に取り付けられる。
【0021】
支持線挿通孔4は、円錐台部1の先端面25において切り刃ユニット2を貫通する。円錐台部1および支持線挿通孔4は、中心軸線9を中心に形成される。先端面25の外径D1は3.4mmであり、支持線挿通孔4の内径D2は3.3mmである。
【0022】
外周斜面6が内周側面5に対してなす角度αは、支持線部分18の外被20への前記切刃の喰い込み易さの観点から、50度以下であることが好ましく、前記切刃の強度の観点から35度以上であることが好ましい。支持線挿通孔4の筒体8と反対側の端部には、角度β=30度のテーパ27が形成される。テーパ27が形成されると、支持線挿通孔4に支持線部分18を挿入し易くなり、また支持線挿通孔4に挿通された支持線部分18を筒体8内で揺動させ易くなる。
【0023】
図4は、位置規制部材10と筒体8との関係を説明する斜視図である。位置規制部材10は、切り刃ユニット2から所定の間隔L3を空けて筒体8の他端に設けられる。所定の間隔L3は、切り刃ユニット2により剥ぎ取られる支持線部分18の外被20の長さに設定され、例えば10cmである。筒体8の他端の内周面には雌ネジ31が周設される。位置規制部材10は、短円柱状のつまみ部32を有する。つまみ部32の筒体8側の端面に、雌ネジ31に螺合する雄ネジ34が周設された短円柱状のネジ部33が設けられる。つまみ部32の外周側面には、ネジによる着脱時の操作者の指の滑り防止のための線状の溝が中心軸線9に平行に形成される。このように、位置規制部材10は筒体8にねじにより着脱自在に構成される。
【0024】
ネジ部33の端面は、切り刃ユニット2に対向する位置規制曲面26を構成する。位置規制曲面26は、支持線挿通孔4に挿通された支持線部分18の先端と当接して支持線部分18の長手方向の位置を規制し、図1(b)に破線で示すように支持線挿通孔4を中心に揺動する支持線部分18の先端に沿うように凹状に形成される。
【0025】
側部プレート36には、ガイド部13が設けられる。ガイド部13は、光ケーブル16を載置する載置部38と、図3(b)の矢印A1に示す光ケーブル16の幅方向の位置を規制するために載置部38の一端から直角に折り曲げられた折り曲げ部39とを有する。
【0026】
側部プレート36には、ケーブル分離用レバー14が支軸40の周りに回動自在に設けられる。ケーブル分離用レバー14には、載置部38上の光ケーブル16の分離溝22に喰い込む切り裂き刃15が、載置部38に対して接離可能に支持される。ケーブル分離用レバー14を回動させるための折り曲げ操作部41が、ケーブル分離用レバー14に設けられる。
【0027】
以上のように構成された光ケーブル用支持線剥取器100の動作を説明する。図5は、光ケーブル用支持線剥取器100の動作を説明するための斜視図である。
【0028】
まず図5に示すように、折り曲げ操作部41を掴んでケーブル分離用レバー14を矢印A2の方向に支軸40の周りに回動させ、切り裂き刃15をガイド部13の載置部38上から離間させる。そして、例えば光ケーブル16の一端から所定の長さだけ離れた部分を載置部38上に載置する。この所定の長さは、切り裂き刃15により分離溝22を分離する長さに相当し、例えば15cmである。次に、ケーブル分離用レバー14を矢印A3の方向に回動させ、載置部38上の光ケーブル16の分離溝22に切り裂き刃15を喰い込ませた状態で、載置部38上の光ケーブル16を分離溝22に沿って引っ張ると、切り裂き刃15は外被20を光ケーブル16の一端まで切り裂き、図3(c)に示すように光ファイバー線部分17と支持線部分18とが光ケーブルの一端から所定の長さだけ分離される。
【0029】
図6(a)は分離後剥ぎ取り前の支持線部分18の外観を示す斜視図であり、図6(b)は剥ぎ取り後の支持線部分18の外観を示す斜視図である。
【0030】
図6(a)に示す分離後の支持線部分18を支持線挿通孔4に挿通して、位置規制部材10の位置規制曲面26にその先端を当接させる。次に図1(b)に破線で示すように支持線部分18を支持線挿通孔4を中心に揺動させて中心軸線9に対して傾斜角γだけ傾け、支持線部分18の外被20を、支持線挿通孔4と先端面25とが交わる部分に当接させた状態で、支持線部分18を引くと、支持線挿通孔4、外周斜面6および先端面25で構成される切刃が支持線部分18の外被20に喰い込む。そして支持線21の表面に到達し、この支持線21の表面に沿って外被20を剥ぎ取る。さらに支持線部分18を引くと、支持線挿通孔4に挿通した支持線部分18の先端まで長さL3=10cm分の外被20を剥ぎ取ることができる。
【0031】
円環状の先端面25の半径方向の厚みD3(=(D1−D2)/2)は、0.05mm以下であることが好ましい。支持線挿通孔4、先端面25および外周斜面6で構成される切刃が、中心軸線9に対して傾けられた支持線部分18の外被20へ喰い込み易いからである。厚みD3はゼロであること、即ち、円錐台部1の外周斜面6と支持線挿通孔4の内周側面5とが交わる状態にあることがより好ましい。切刃が外周斜面6と内周側面5とで構成されて、最も鋭利になり、支持線部分18の外被20へ、より喰い込み易くなるからである。
【0032】
支持線部分18の中心軸線9に対する傾斜角rは、切り刃ユニット2の前記切刃の外被20に対する喰い込み易さの観点から、10度以上、30度以下が好ましい。
【0033】
そして、中心軸線9に垂直な方向から見て順次他の適当な方向に支持線部分18を傾けながら前記作業と同様にして外被20を剥ぎ取ると、図6(b)に示すように、360度すべての方向の外被20を剥ぎ取ることができ、支持線21を露出させることができる。
【0034】
なお、支持線部分18を順次各方向に傾けて外被20を剥ぎ取る替わりに、一定方向に傾けた支持線部分18を順次回動させながら外被20を剥ぎ取ってもよい。
【0035】
本実施の形態では、固定したガイド部13に対して切り裂き刃15を回動させる例を示したが、逆に、切り裂き刃を固定してガイド部を回動させてもよい。
【0036】
本実施の形態では筒体が透明な材料からなるため、筒体内の支持線部分を視認しながら作業できるので作業性が良好になる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、光ファイバー線と支持線とが互いに平行な状態で外被で被覆され、この外被に光ファイバー線部分と支持線部分とを分離するための分離溝が形成された光ケーブルに用いる光ケーブル用支持線剥取器に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】(a)は本実施の形態に係る光ケーブル用支持線剥取器の外観を示す斜視図であり、 (b)は(a)に示す断面1b−1bに沿った断面図である。
【図2】図1(b)に示すA部の拡大図である。
【図3】(a)は本実施の形態に係る光ケーブル用支持線剥取器による分離前の光ケーブルの外観を示す斜視図であり、 (b)は光ケーブルの断面図であり、 (c)は分離後の光ケーブルの外観を示す斜視図である。
【図4】本実施の形態に係る光ケーブル用支持線剥取器に設けられた位置規制部材と筒体との関係を説明する斜視図である。
【図5】本実施の形態に係る光ケーブル用支持線剥取器の動作を説明するための斜視図である。
【図6】(a)は本実施の形態に係る光ケーブル用支持線剥取器による剥ぎ取り前の支持線部分の外観を示す斜視図であり、 (b)は剥ぎ取り後の支持線部分の外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 円錐台部
2 切り刃ユニット
3 ベース部
4 支持線挿通孔
5 内周側面
6 外周斜面
8 筒体
9 中心軸線
10 位置規制部材
12 ベースプレート
13 ガイド部
14 ケーブル分離用レバー
15 切り裂き刃
16 光ケーブル
17 光ファイバー線
18 支持線部分
19 光ファイバー線
20 外被
21 支持線
22 分離溝
23 筒体支持部
25 先端面
26 位置規制曲面
27 テーパ
28 孔
100 光ケーブル用支持線剥取器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバー線と支持線とが互いに平行な状態で外被で被覆され、前記外被に光ファイバー線部分と支持線部分とを分離するための分離溝が形成された光ケーブルに用いる光ケーブル用支持線剥取器であって、
筒体と、前記筒体の一端側に設けられ、前記分離溝に沿って分離された光ケーブルの支持線部分を挿通する支持線挿通孔を有する切り刃ユニットと、前記切り刃ユニットから所定の間隔を空けて前記筒体の他端側に設けられ、前記支持線部分の長手方向の位置を規制する位置規制部材とを備え、前記切り刃ユニットは、板状のベース部と、前記ベース部の筒体内方側に突出する円錐台部とを一体に有し、前記支持線挿通孔が前記円錐台部の中心部において切り刃ユニットを貫通するように構成されたことを特徴とする光ケーブル用支持線剥取器。
【請求項2】
筒体の側部に設けられ、光ケーブルをその幅方向の位置を規制して載置するガイド部と、前記筒体の側部に前記ガイド部に対して接離可能に支持され、かつ前記ガイド部上の光ケーブルの分離溝に喰い込む切り裂き刃を有するケーブル分離用レバーとをさらに備える請求項1記載の光ケーブル用支持線剥取器。
【請求項3】
位置規制部材は筒体に着脱自在なキャップにより構成される請求項1または2記載の光ケーブル用支持線剥取器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−84949(P2006−84949A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−271443(P2004−271443)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000232494)日本電話施設株式会社 (12)
【出願人】(591083772)株式会社永木精機 (65)
【Fターム(参考)】