説明

光コネクタの接続構造

【課題】振動や衝撃に強い光コネクタの接続構造を提供すること。
【解決手段】第1ガイドスリーブを有する第1ハウジングを備える第1光コネクタと、光ファイバケーブルの先端に取り付けられたフェルールと、前記フェルールが挿通固定される挿通穴と前記挿通穴に連通した第2ガイドスリーブとを有する第2ハウジングとを備える第2光コネクタと、を備え、前記第1光コネクタと前記第2光コネクタとが嵌合したときに、前記第1ガイドスリーブには前記フェルールの先端部が嵌合し、前記第2ガイドスリーブの内側には前記第1ガイドスリーブが嵌合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタの接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の車両内での制御信号、画像信号、音声信号等の通信情報量の増大に伴い、情報信号の伝送に使用される伝送路にも、従来のメタルケーブルに代えて光ファイバケーブルが用いられるようになってきている(特許文献1、2参照)。光ファイバケーブルは、メタルケーブルのように通信速度の高速化により周囲にノイズを放出するという問題もないため、高速、大容量の情報通信に適する信号伝送路である。
【0003】
光ファイバケーブルは、その端部に光コネクタを備えている。光コネクタは、光ファイバケーブルの先端に取り付けられるフェルール等を有する端子(光ファイバ端子)と、この光ファイバ端子を保持し、他の光コネクタ等と嵌合して接続するための構造を有するハウジングとを備えている。一方、通信を行なう装置にも光コネクタが備えられており、光コネクタ同士を嵌合することによって、光ファイバケーブルと、通信を行なう装置とを接続することができる。また、光ファイバケーブル同士の接続も光コネクタの嵌合によって実現される。光ファイバケーブル同士の接続はWire to Wire接続と呼ばれる(特許文献3、4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−107573号公報
【特許文献2】特許第3813496号公報
【特許文献3】特開2002−318328号公報
【特許文献4】特開2002−333548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、光ファイバケーブルを車両内のワイヤーハーネスに適用する場合、ワイヤーハーネスにより通信を行なう装置は、ルーフ部、フロア部、エンジン周り、インパネ周り等の車両の各構成単位に配置されている。したがって、各構成単位に配置された通信装置間を接続するワイヤーハーネスにおいて、特にWire to Wire接続に使用される光コネクタは、車両の製造の際のアセンブリ工程や組付け工程、あるいは点検整備等の際に何度も着脱を繰り返され、その際に引っ張り等の強い衝撃を受ける場合がある。また、光コネクタは、車両の走行時の振動、衝撃等も受けることとなる。したがって、特に車両内で使用される光コネクタの接続構造については、振動や衝撃に強いことが特に要求されている。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、振動や衝撃に強い光コネクタの接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る光コネクタの接続構造は、第1ガイドスリーブを有する第1ハウジングを備える第1光コネクタと、光ファイバケーブルの先端に取り付けられたフェルールと、前記フェルールが挿通固定される挿通穴と前記挿通穴に連通した第2ガイドスリーブとを有する第2ハウジングとを備える第2光コネクタと、を備え、前記第1光コネクタと前記第2光コネクタとが嵌合したときに、前記第1ガイドスリーブには前記フェルールの先端部が嵌合し、前記第2ガイドスリーブの内側には前記第1ガイドスリーブが嵌合することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る光コネクタの接続構造は、上記の発明において、前記第1光コネクタの前記第1ハウジングの内側には前記第2光コネクタの前記第2ハウジングが嵌合することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る光コネクタの接続構造は、上記の発明において、前記第1ガイドスリーブにはスリットが形成されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る光コネクタの接続構造は、上記の発明において、前記第2ハウジングは、前記フェルールが挿入される側から該フェルールの先端側に向かって延伸するように設けられ、先端側にラッチ穴が形成されたアーム部を有し、前記第1ハウジングは、ラッチ突起を有し、前記第2ハウジングと前記第1ハウジングとを嵌合した場合に、前記ラッチ突起が前記ラッチ穴に係合されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る光コネクタの接続構造は、上記の発明において、前記第1ハウジングは、前記フェルールが挿入される側から該フェルールの先端側に向かって延伸するように設けられ、先端側にラッチ穴が形成されたアーム部を有し、前記第2ハウジングは、ラッチ突起を有し、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとを嵌合した場合に、前記ラッチ突起が前記ラッチ穴に係合されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る光コネクタの接続構造は、上記の発明において、前記アーム部は前記挿通穴の延伸方向に略平行に延伸しており、前記挿通穴側に向かって押下しながら前記嵌合を行うことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る光コネクタの接続構造は、上記の発明において、前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングの一方には、少なくとも2つの係止穴が設けられ、前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングの他の一方には、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとを嵌合したときに前記係止穴に係合するように設けられた少なくとも2つの係止突起が設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る光コネクタの接続構造は、上記の発明において、前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングを嵌合するときに前記ハウジングの一方が他方をガイドするためのガイド構造を備えていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る光コネクタの接続構造は、上記の発明において、前記第2ハウジングに前記フェルールを固定するための固定部材を備え、前記フェルールは、前記固定部材が挿入される溝が設けられていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る光コネクタの接続構造は、上記の発明において、前記第2ハウジングは、前記フェルールの先端面側への移動を規制する規制面を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る光コネクタの接続構造は、上記の発明において、前記フェルールは、前記第2ハウジングの前記規制面に当接して前記フェルールの先端面側への移動を規制するための鍔部を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る光コネクタの接続構造は、上記の発明において、前記第1光コネクタは、光ファイバケーブルの先端に取り付けられたフェルールを備え、前記第1ハウジングは、前記第1ガイドスリーブに連通し、前記フェルールが挿通固定される挿通穴を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、振動や衝撃に強い光コネクタの接続構造を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、実施の形態1に係る光コネクタの接続構造の使用状態を模式的に示す図である。
【図2】図2は、実施の形態1に係る光コネクタの接続構造の分解図である。
【図3】図3は、光コネクタに挿通されるフェルール付の光ファイバケーブルの模式的な斜視図である。
【図4】図4は、オス型光コネクタの模式的な斜視図である。
【図5】図5は、メス型光コネクタの模式的な斜視図である。
【図6】図6は、図4に示すオス型光コネクタと図5に示すメス型光コネクタとを接続した状態を示す模式的な斜視図である。
【図7】図7は、図4に示すオス型光コネクタのハウジングの構造を示す模式図である。
【図8】図8は、図7に示すハウジングの断面図である。
【図9】図9は、図5に示すメス型光コネクタのハウジングの構造を示す模式図である。
【図10】図10は、図9に示すハウジングの断面図である。
【図11】図11は、図6に示す接続状態の模式的な平面図である。
【図12】図12は、図6に示す接続状態の模式的な側面図である。
【図13】図13は、図11のI−I線断面図である。
【図14】図14は、図12のJ−J線断面図である。
【図15】図15は、図12のK−K線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して本発明に係る光コネクタの接続構造の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各層の厚みと幅との関係、各層の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0022】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る光コネクタの接続構造の使用状態を模式的に示す図である。図1は、車載通信システム100を示している。この車載通信システム100は、通信を行う装置に備えられた制御基板101と制御基板102とがコネクタ付光ファイバケーブル103、104を介して接続し、相互に制御信号の通信を行うものである。
【0023】
制御基板101、102は、それぞれメス型のコネクタ構造を備えたFOT(Fiber Optical Transceiver)101a、102aを搭載している。コネクタ付光ファイバケーブル103は、オス型光コネクタ10が、光ファイバケーブル1の両端に取り付けられたものである。コネクタ付光ファイバケーブル104は、オス型光コネクタ10と、メス型光コネクタ20とが、光ファイバケーブル1の各端部に取り付けられたものである。そして、コネクタ付光ファイバケーブル103、104のオス型光コネクタ10がそれぞれFOT101a、102aに接続され、接続構造が形成される。また、コネクタ付光ファイバケーブル103のもう一方のオス型光コネクタ10とコネクタ付光ファイバケーブル104のメス型光コネクタ20が接続され(すなわちWire to Wire接続し)、接続構造が形成される。これによって、制御基板101、102間にコネクタ付光ファイバケーブル103、104による信号伝送路が形成されて、高速、大容量の通信を行うことができる。
【0024】
図2は、実施の形態1に係る光コネクタの接続構造の分解図である。図2に示すように、オス型光コネクタ10は、2芯構造の光ファイバケーブル1の各先端に取り付けられた2つのフェルール2が挿通されるハウジング11と、フェルール2をハウジング11に固定するための固定部材12とを有している。メス型光コネクタ20は、2芯構造の光ファイバケーブル1の各先端に取り付けられた2つのフェルール2を挿通するハウジング21と、フェルール2をハウジング21に固定するための固定部材12とを有している。
【0025】
光ファイバケーブル1は、光ファイバ1aaと、光ファイバ1aaの外周に長手方向に沿って形成されて光ファイバ1aaを被覆する素線被覆部1abとからなる光ファイバ素線1aと、光ファイバ素線1aの外周に長手方向に沿って配置された抗張力体1bと、抗張力体1bの外周を長手方向に沿って覆う外被覆部1cとを備えている。抗張力体1bは、たとえばケブラー(登録商標)等のアラミド樹脂繊維からなり、光ファイバ素線1aの外周を囲むように配置している。また、素線被覆部1abはたとえばポリアミド樹脂からなる。そして、光ファイバケーブル1の先端で素線被覆部1abと外被覆部1cとが一部除去され、光ファイバ1aa、素線被覆部1ab、および抗張力体1bがそれぞれ所定の長さだけ外部に露出するようになっている。
【0026】
光ファイバ1aaは、石英系ガラスからなるコア部と、コア部の外周に形成された、コア部よりも屈折率が低い硬質プラスチックからなるクラッド部とからなる、いわゆるHCS(Hard Clad Silica)光ファイバである。コア部のコア径はたとえば200μm、クラッド部のクラッド径はたとえば230μmであり、850nmの光信号を低損失、広帯域で伝送し、かつ低曲げ損失であり、繰り返しの曲げ、引っ張り動作にも強いように設計されている。
【0027】
図3は、オス型光コネクタ10およびメス型光コネクタ20に挿通されるフェルール付の光ファイバケーブルの模式的な斜視図である。図2、3を参照してフェルール付の光ファイバケーブルについて説明する。
【0028】
フェルール2は、全体的に円筒形状を有しており、先端部2aと、外周に沿って形成された鍔部2bと、本体部2cと、台座部2dと、光ファイバ固定部材2eとを備えている。フェルール2はたとえば耐熱性、機械強度、成型性に優れるポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)からなる。先端部2aは先端面2aaを有している。台座部2dは先端面2aaと反対側の端部に位置しており、外周に沿ってフランジ部2daが形成されている。本体部2cと鍔部2bとの間には外周に沿って溝部2gが形成されている。
【0029】
また、フェルール2には先端面2aaから台座部2dまで貫通するように、光ファイバケーブル1の先端部を挿通するための挿通穴が形成されている。挿通穴の直径は、先端部2aでは光ファイバ1aaの外径と略一致するか僅かに大きく設定されており、その他の部分(ただし後述する開口穴2caを除く)では光ファイバ素線1aの外径と略一致するか僅かに大きく設定されている。また、先端面2aaには光ファイバ1aaの端面が、先端面2aaと略同一面となるように露出している。
【0030】
光ファイバ固定部材2eは樋形状であり、光ファイバ素線1aを把持するための溝を有している。また、フェルール2の本体部2cの側面側には、光ファイバ固定部材2eを挿入するための開口穴2caが形成されている。開口穴2caは、光ファイバ固定部材2eを挿入したときに、開口穴2caの内側壁と光ファイバ固定部材2eの外側壁とが略隙間無く接触するような形状とされている。また、開口穴2caは、光ファイバケーブル1の先端部を挿通するための挿通穴と連通しており、フェルール2に挿通された光ファイバケーブル1の素線被覆部1abの部分が露出する程度の深さまで形成されている。光ファイバ固定部材2eは開口穴2caに挿入されて光ファイバ素線1aの外周を把持し、光ファイバ素線1aをフェルール2に固定している。
【0031】
かしめリング3は、第1かしめ部3aと、第2かしめ部3bと、第1かしめ部3aと第2かしめ部3bとを接続する渡り部3cとを備えている。かしめリング3はたとえばアルミニウム等の金属材料からなる。第1かしめ部3aはフェルール2をかしめる部分である。第2かしめ部3bは光ファイバケーブル1の外被覆部1cをかしめる部分である。渡り部3cはフェルール2の台座部2dのフランジ部2daと干渉しないように窪んだ形状をしている。図2に示すように第1かしめ部3aと第2かしめ部3bとはU字形状であるが、かしめることによって図3の第1かしめ部3aのような円筒状の形状となる。かしめリング3はフェルール2と光ファイバケーブル1の外被覆部1cとをかしめ、フェルール2と光ファイバケーブル1とを強固に固定している。また、抗張力体1bは第1かしめ部3aによってフェルール2の台座部2dに固定されている。これによって、フェルール2と光ファイバケーブル1とは一体化してより強固になり、振動や衝撃に強くなる。
【0032】
また、かしめリング3の第2かしめ部3bには保護ブーツ4がかぶせられる。保護ブーツ4は、たとえばゴムや弾性を有するプラスチックからなるものであり、フェルール2と光ファイバケーブル1との接続部が許容半径よりも小さい曲げ径で折れ曲がるのを防止しており、これによって光ファイバ素線1aが折損することを防止している。
【0033】
図4は、オス型光コネクタ10の模式的な斜視図である。第2光コネクタであるオス型光コネクタ10は、2芯構造の光ファイバケーブル1の各先端に取り付けられた2つのフェルール2がハウジング11に挿通されて、フェルール2が固定部材12によってハウジング11に固定されることによって構成されている。なお、図2にも示すように、固定部材12は3つの突出部12aを有している。突出部12aの厚さはフェルール2の溝部2gの幅と略一致するかわずかに薄く設定されている。フェルール2がハウジング11に固定された状態では、突出部12aの間の2つの間隙にフェルール2が配置される。
【0034】
図5は、メス型光コネクタ20の模式的な斜視図である。第1光コネクタであるメス型光コネクタ20は、2芯構造の光ファイバケーブル1の各先端に取り付けられた2つのフェルール2がハウジング21に挿通されて、フェルール2が固定部材12によってハウジング21に固定されることによって構成されている。
【0035】
そして、図6に示すように、オス型光コネクタ10とメス型光コネクタ20とが接続されて、本実施の形態1に係る接続構造が形成される。
【0036】
つぎに、オス型光コネクタ10のハウジング11の構成について具体的に説明する。図7は、オス型光コネクタ10のハウジング11の構造を示す模式図である。図7(a)は平面図、図7(b)は底面図、図7(c)は背面図、図7(d)は左側面図、図7(e)は正面図である。なお、ハウジング11の右側面図は左側面図と対称である。また、図8は、ハウジング11の断面図である。図8(a)はA−A線断面図、図8(b)はB−B線断面図、図8(c)はC−C線断面図である。
【0037】
ハウジング11は、2芯構造の光ファイバケーブル1の各先端に取り付けられた2つのフェルール2を挿通するため長手方向に互いに平行に形成された2つの挿通穴11aと、ハウジング11の底面から上面に貫通し、かつ挿通穴11aに連通するように形成され、固定部材12を挿入するための開口部11bと、幅方向略中央において長手方向の背面側(フェルール2が挿入される側)から正面側(フェルール2の先端側)に向かって延伸するように設けられた弾性を有するアーム部11cと、アーム部11cを引っ掛けて止めるための掛止部11dと、アーム部11cの先端側に形成されたラッチ穴11eと、を備えている。アーム部11cは挿通穴11aの延伸方向に略平行に延伸している。アーム部11cには凹凸状の釦部11fが形成されている。挿通穴11aの内壁には、フェルール2の鍔部2bの前端面に当接してフェルール2の前端面側への移動を規制する規制面11gが形成されている。また、ハウジング11は、さらに挿通穴11aに連通するガイドスリーブ11hと、上面側と底面側とにそれぞれ2つずつ形成された合計4つの係止突起11iと、左右側面のそれぞれに形成されたガイドレール凹部11j(図4も参照)とを備えている。
【0038】
つぎに、メス型光コネクタ20のハウジング21の構成について具体的に説明する。図9は、メス型光コネクタ20のハウジング21の構造を示す模式図である。図9(a)は平面図、図9(b)は底面図、図9(c)は正面図、図9(d)は右側面図、図9(e)は背面図である。なお、ハウジング21の左側面図は右側面図と対称である。また、図10は、ハウジング21の断面図である。図10(a)はD−D線断面図、図10(b)はE−F−G−H線断面図である。
【0039】
ハウジング21は、2芯構造の光ファイバケーブル1の各先端に取り付けられた2つのフェルール2を挿通するため長手方向に平行に形成された2つの挿通穴21aと、ハウジング21の底面から上面に貫通し、かつ挿通穴21aに連通するように形成され、固定部材12を挿入するための開口部21bと、挿通穴21aから先端方向に連通し、オス型光コネクタ10が挿入され収容される収容部21cとを備えている。また収容部21cの内側には、オス型光コネクタ10が挿入された場合にラッチ穴11eと嵌合するための固定構造としてのラッチ突起21dが形成されている。また、挿通穴21aの内壁にはフェルール2の鍔部2bの前端面に当接してフェルール2の前方への移動を規制する規制面21eが形成されている。また、ハウジング21は、さらに挿通穴21aに連通するガイドスリーブ21fと、上面側と底面側とにそれぞれ2つずつ形成された合計4つの係止穴21gと、収容部21cの左右内側面のそれぞれに形成されたガイドレール凸部21hとを備えている。なお、ガイドスリーブ21fにはスリット21iが形成されている。
【0040】
ハウジング11、21はたとえばPPS、ポリブチレンテレフタレート(PBT)からなる。また、車内での利用を考慮すると耐熱性で熱膨張率の小さい樹脂が好ましい。
【0041】
つぎに、オス型光コネクタ10とメス型光コネクタ20との接続構造について具体的に説明する。図11は、オス型光コネクタ10とメス型光コネクタ20との接続状態の模式的な平面図である。図12は、オス型光コネクタ10とメス型光コネクタ20との接続状態の模式的な側面図である。図13は、図11のI−I線断面図である。図14は、図12のJ−J線断面図である。図15は、図12のK−K線断面図である。
【0042】
オス型光コネクタ10において、2つのフェルール2は、ハウジング11の2つの挿通穴11aにそれぞれ挿通されている。そして、固定部材12が開口部11bに挿入されて、固定部材12の3つの突出部12aが、2つのフェルール2を挟む両側および2つのフェルール2の間の3箇所において溝部2gに嵌合し、かつ各突出部12aの先端に形成された係止爪がハウジング11の上側の開口部11bに係止されている。これによって、2つのフェルール2がハウジング11に固定される。このとき、フェルール2の鍔部2bの前端面は規制面11gに当接し、フェルール2の先端面方向への移動は規制されているため、フェルール2の先端面2aaを所望の位置に設定することができる。
【0043】
同様に、メス型光コネクタ20において、2つのフェルール2は、ハウジング21の2つの挿通穴21aにそれぞれ挿通されている。そして、固定部材12が開口部21bに挿入されて、固定部材12の3つの突出部12aが、2つのフェルール2を挟む両側および2つのフェルール2の間の3箇所において溝部2gに嵌合し、かつ各突出部12aの先端に形成された係止爪がハウジング21の上側の開口部21bに係止されている。これによって、2つのフェルール2がハウジング21に固定される。このとき、フェルール2の鍔部2bの前端面は規制面21eに当接し、フェルール2の先端面方向への移動は規制されているため、フェルール2の先端面2aaを所望の位置に設定することができる。
【0044】
オス型光コネクタ10とメス型光コネクタ20とを接続するときには、オス型光コネクタ10のアーム部11cの釦部11fを押してアーム部11cを押下しながら、オス型光コネクタ10をメス型光コネクタ20の収容部21cに挿入する。なお、アーム部11cは挿通穴11aの延伸方向に略平行に延伸しており、かつアーム部11cを挿通穴11a側に押下しながら収容部21cに挿入するような構造としているので、オス型光コネクタ10には上方向への余分な突出部がなく、かつメス型光コネクタ20の収容部21cも余分な突出部を受け入れるための突出した空間を設けなくても良い。その結果、オス型光コネクタ10とメス型光コネクタ20、およびその接続構造は全体的な高さが低くなる。挿入されたオス型光コネクタ10は、ラッチ穴11eにラッチ突起21dが嵌合することによって係止される。これによって、オス型光コネクタ10およびメス型光コネクタ20のそれぞれのフェルール2の先端面2aa同士が突き合され、光ファイバ1aa同士が光学的に接続される。
【0045】
また、オス型光コネクタ10をメス型光コネクタ20の収容部21cに挿入すると、メス型光コネクタ20のガイドスリーブ21fにはオス型光コネクタ10のフェルール2の先端部2aが嵌合し、オス型光コネクタ10のガイドスリーブ11hの内側にはメス型光コネクタ20のガイドスリーブ21fが嵌合する。このように、メス型光コネクタ20のガイドスリーブ21fにはオス型光コネクタ10のフェルール2の先端部2aが嵌合し、さらにその上からオス型光コネクタ10のガイドスリーブ11hが嵌合するという、互い違いの嵌合構造によって、嵌合構造を確実にし、振動や衝撃による光ファイバ1aa同士の光軸ずれが防止される。なお、ガイドスリーブ21fにはスリット21iが形成されているため、ガイドスリーブ11hに挿入し易くなっており、接続の作業性が向上する。
【0046】
また、ハウジングに関しては、ガイドスリーブとは逆に、メス型光コネクタ20のハウジング21にオス型光コネクタ10のハウジング11が嵌合する構造となっている。このように、ハウジングとガイドスリーブとでは嵌合する側とされる側との関係が逆になっているので、嵌合構造がより確実になり、振動や衝撃による光ファイバ1aa同士の光軸ずれがよりいっそう防止される。
【0047】
さらに、オス型光コネクタ10をメス型光コネクタ20に挿入すると、ハウジング11のガイドレール凹部11jとハウジング21のガイドレール凸部21hとが嵌合し、オス型光コネクタ10がガイドされるので、オス型光コネクタ10をメス型光コネクタ20に挿入しやすく、接続の作業性が向上する。
【0048】
さらに、オス型光コネクタ10をメス型光コネクタ20に接続した状態では、オス型光コネクタ10の4つの係止突起11iがメス型光コネクタ20の4つの係止穴21gに係止される。これによって、オス型光コネクタ10とメス型光コネクタ20との接続強度が補助されて、いっそう振動や衝撃に強くなる。
【0049】
なお、オス型光コネクタ10とメス型光コネクタ20との接続を外すときは、オス型光コネクタ10のアーム部11cの釦部11fを押してアーム部11cを押下し、ラッチ穴11eとラッチ突起21dとの係止を解くことによって、接続を外すことができる。係止突起11iと係止穴21gとの係止が手作業で外れる程度の強度となるように係止突起11iの高さや形状を設定することが好ましい。なお、係止突起11iと係止穴21gとの組み合わせは、4組に限らず、少なくとも2組であればよい。
【0050】
以上のように、オス型光コネクタ10とメス型光コネクタ20との接続構造は、振動や衝撃に強くなるので、たとえば100Nもの引っ張り張力にも耐えることができ、接続信頼性が高いものとなる。
【0051】
なお、オス型光コネクタ10とメス型光コネクタ20とを接続した場合には、対向するフェルール2の先端面2aa間には所定の幅の間隙を形成してもよい。このように間隙を形成することによって、たとえば振動、衝撃などによってフェルール2が振動したり、製造、整備工程等でオス型光コネクタ10とメス型光コネクタ20との着脱を繰り返したとしても、フェルール2の先端面2aaに露出した光ファイバ1aaの端面同士が擦れ合うことがないので、端面が破損したりキズがついたりすることが防止される。
【0052】
間隙の幅はたとえば500μm以下であるが、好ましくは30〜300μmとし、光ファイバ1aaのコア径、開口数、光ファイバ1aaのピストニングなどに応じて、光ファイバケーブル1同士が低光損失で接続されるように設定される。なお、オス型光コネクタ10とメス型光コネクタ20とは、固定部材12、およびフェルール2の鍔部2bと規制面11g、21eとによって、フェルール2が先端方向に移動することが確実に規制され、かつフェルール2は一体に形成されており、フェルール2と光ファイバ1aaの位置のずれが起こらない。したがって、このオス型光コネクタ10とメス型光コネクタ20とを接続したものに振動、衝撃が加わっても、間隙は維持されるので、先端面2aa同士が接触することはなく、光ファイバ1aaの端面が破損したりキズがついたりすることが防止される。本実施の形態において間隙に起因する光損失を防止するために、光ファイバ1aaとして50〜250μm、特には160〜220μmのコア径を有するものを用い、800〜1300μmの波長のマルチモード通信システムで利用すると都合が良い。
【0053】
なお、上記実施の形態では、ハウジング11には、アーム部11cと、アーム部11cの先端側に形成されたラッチ穴11eとが備えられ、ハウジング21は、ラッチ穴11eと嵌合するための固定構造としてのラッチ突起21dが形成されていたが、これとは逆に、ハウジング21にアーム部11cと、アーム部11cの先端側に形成されたラッチ穴11eとを形成し、ハウジング11に、ラッチ穴11eと嵌合するための固定構造としてのラッチ突起21dを形成してもよい。
【0054】
また、上記実施の形態では、抗張力体として樹脂繊維を用いた光ファイバケーブルを使用しているが、光ファイバケーブルとしてはたとえば金属やFRPなどからなるワイヤー状の抗張力体を用いたものでもよい。
【0055】
また、上記実施の形態に係る光コネクタにおいて、着脱等の際に光コネクタ内に埃や塵、水分が侵入すると、光コネクタの接続光損失が増加するおそれがある。したがって、光コネクタ内にゴムのカバー等の防塵あるいは防水のための構造を設けることが好ましい。
【0056】
また、上記実施の形態は、2芯の光ファイバケーブルを用いたものであるが、本発明はこれに限らず、1芯または3芯以上の多芯の光ファイバケーブルを用いてもよい。
【0057】
また、上記実施の形態は、メス型光コネクタのハウジングにフェルール付光ファイバケーブルが挿入されたものであるが、上記実施の形態のメス型光コネクタのハウジング構造を図1に示すFOTに適用してもよい。
【0058】
また、上記実施の形態では、メス型コネクタのガイドスリーブにはオス型光コネクタのフェルールの先端部が嵌合し、オス型光コネクタのガイドスリーブの内側にはメス型コネクタのガイドスリーブが嵌合している。しかしながら、本発明はこれに限られず、オス型コネクタのガイドスリーブにはメス型光コネクタのフェルールの先端部が嵌合し、メス型光コネクタのガイドスリーブの内側にはオス型コネクタのガイドスリーブが嵌合する構造にしてもよい。
【0059】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1 光ファイバケーブル
1a 光ファイバ素線
1aa 光ファイバ
1ab 素線被覆部
1b 抗張力体
1c 外被覆部
2 フェルール
2a 先端部
2aa 先端面
2b 鍔部
2c 本体部
2ca 開口穴
2d 台座部
2da フランジ部
2e 光ファイバ固定部材
2g 溝部
3 かしめリング
3a 第1かしめ部
3b 第2かしめ部
3c 渡り部
4 保護ブーツ
10 オス型光コネクタ
11、21 ハウジング
11a、21a 挿通穴
11b、21b 開口部
11c アーム部
11d 掛止部
11e ラッチ穴
11f 釦部
11g、21e 規制面
11h、21f ガイドスリーブ
11i 係止突起
11j ガイドレール凹部
12 固定部材
12a 突出部
20 メス型光コネクタ
21 ハウジング
21c 収容部
21d ラッチ突起
21g 係止穴
21h ガイドレール凸部
21i スリット
100 車載通信システム
101、102 制御基板
101a、102a FOT
103、104 コネクタ付光ファイバケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ガイドスリーブを有する第1ハウジングを備える第1光コネクタと、
光ファイバケーブルの先端に取り付けられたフェルールと、前記フェルールが挿通固定される挿通穴と前記挿通穴に連通した第2ガイドスリーブとを有する第2ハウジングとを備える第2光コネクタと、
を備え、前記第1光コネクタと前記第2光コネクタとが嵌合したときに、前記第1ガイドスリーブには前記フェルールの先端部が嵌合し、前記第2ガイドスリーブの内側には前記第1ガイドスリーブが嵌合することを特徴とする光コネクタの接続構造。
【請求項2】
前記第1光コネクタの前記第1ハウジングの内側には前記第2光コネクタの前記第2ハウジングが嵌合することを特徴とする請求項1に記載の光コネクタの接続構造。
【請求項3】
前記第1ガイドスリーブにはスリットが形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光コネクタの接続構造。
【請求項4】
前記第2ハウジングは、前記フェルールが挿入される側から該フェルールの先端側に向かって延伸するように設けられ、先端側にラッチ穴が形成されたアーム部を有し、
前記第1ハウジングは、ラッチ突起を有し、
前記第2ハウジングと前記第1ハウジングとを嵌合した場合に、前記ラッチ突起が前記ラッチ穴に係合されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の光コネクタの接続構造。
【請求項5】
前記第1ハウジングは、前記フェルールが挿入される側から該フェルールの先端側に向かって延伸するように設けられ、先端側にラッチ穴が形成されたアーム部を有し、
前記第2ハウジングは、ラッチ突起を有し、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとを嵌合した場合に、前記ラッチ突起が前記ラッチ穴に係合されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の光コネクタの接続構造。
【請求項6】
前記アーム部は前記挿通穴の延伸方向に略平行に延伸しており、前記挿通穴側に向かって押下ながら前記嵌合を行うことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の光コネクタの接続構造。
【請求項7】
前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングの一方には、少なくとも2つの係止穴が設けられ、前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングの他の一方には、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとを嵌合したときに前記係止穴に係合するように設けられた少なくとも2つの係止突起が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の光コネクタの接続構造。
【請求項8】
前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングを嵌合するときに前記ハウジングの一方が他方をガイドするためのガイド構造を備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の光コネクタの接続構造。
【請求項9】
前記第2ハウジングに前記フェルールを固定するための固定部材を備え、前記フェルールは、前記固定部材が挿入される溝が設けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の光コネクタの接続構造。
【請求項10】
前記第2ハウジングは、前記フェルールの先端面側への移動を規制する規制面を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の光コネクタの接続構造。
【請求項11】
前記フェルールは、前記第2ハウジングの前記規制面に当接して前記フェルールの先端面側への移動を規制するための鍔部を有することを特徴とする請求項10に記載の光コネクタの接続構造。
【請求項12】
前記第1光コネクタは、光ファイバケーブルの先端に取り付けられたフェルールを備え、前記第1ハウジングは、前記第1ガイドスリーブに連通し、前記フェルールが挿通固定される挿通穴を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の光コネクタの接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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