説明

光コネクタの補助部品外れ防止構造

【課題】光コネクタ用キャップによって光コネクタのフェルールの先端面側を覆いながら補助部品の外れを防止することができる光コネクタの補助部品外れ防止構造を得る。
【解決手段】光コネクタ用キャップ40は、被覆部42が光コネクタ10のハウジング14の長手方向の一端側でフェルール12の先端面12Aを覆うと共に、被覆部42に一体に形成された装着部46が、ハウジング14の長手方向の一端側における外周面14Bに嵌合によって密接状態で装着可能となっている。また、装着部46に一体に形成された規制部52は、装着部46のハウジング14への装着状態で楔26に密接状態で接して楔26の移動を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタに対し着脱可能に装着される光コネクタ用キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
光コネクタにおいては、光コネクタ用クサビ等の補助部品が一体的に設けられたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような光コネクタのフェルールの先端面側には未接続時にキャップが装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−121794公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、キャップが装着されていても、補助部品の操作部の押圧等は可能であるため、誤って操作部を押す等して補助部品を外してしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、光コネクタのフェルールの先端面側を覆いながら、補助部品の外れを防止することができる光コネクタ用キャップを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明の光コネクタ用キャップは、光ファイバを内蔵したフェルールと、前記フェルールの一部を長手方向の一端側に収納するハウジングと、を備えると共に光コネクタ組立補助用の補助部品が相対移動可能に取り付けられる光コネクタに対し、着脱可能に装着される光コネクタ用キャップであって、前記ハウジングの長手方向の一端側で前記フェルールの先端面を覆う被覆部と、前記被覆部に一体的に設けられ、前記ハウジングの長手方向の一端側における外周面に嵌合によって装着可能な装着部と、前記装着部に一体的に設けられ、前記装着部の前記ハウジングへの装着状態で前記補助部品に接して前記補助部品の移動を規制する規制部と、を有する。
【0007】
請求項1に記載する本発明の光コネクタ用キャップによれば、被覆部がハウジングの長手方向の一端側でフェルールの先端面を覆うと共に、被覆部に一体的に設けられた装着部が、ハウジングの長手方向の一端側における外周面に嵌合によって装着可能となっている。また、装着部に一体的に設けられた規制部は、装着部のハウジングへの装着状態で補助部品に接して補助部品の移動を規制する。このため、光コネクタ用キャップの装着部が光コネクタのハウジングに装着されることによって、フェルールの先端面が覆われつつ、補助部品の外れが防止される。
【0008】
請求項2に記載する本発明の光コネクタ用キャップは、請求項1記載の構成において、前記補助部品は、前記ハウジングの他端側に支持される支点回りに回転移動可能とされる部品であり、前記規制部は、前記装着部の前記ハウジングへの装着状態で前記補助部品の作用点側の部位に接して前記補助部品の移動を規制する。
【0009】
請求項2に記載する本発明の光コネクタ用キャップによれば、補助部品がハウジングの他端側に支持される支点回りに回転移動可能となっているのに対して、規制部は、装着部のハウジングへの装着状態で補助部品の作用点側の部位に接して補助部品の移動を規制する。このため、装着部がハウジングへ装着された状態では、仮に補助部品をハウジングに対して支点回りに回転移動させようとしても、規制部の比較的小さな反力によって補助部品の移動が規制される。
【0010】
請求項3に記載する本発明の光コネクタ用キャップは、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記被覆部が前記フェルールの先端面側に向けられる凹部を備えると共に、前記凹部の開口内周面の内径が前記装着部の内周面の内径よりも小径とされ、前記被覆部の前記凹部の開口内周面と前記装着部の内周面とを接続する接続面が、前記ハウジングの長手方向の一端側の部位と当接することによって、前記光コネクタに装着される状態の位置決めがなされる。
【0011】
請求項3に記載する本発明の光コネクタ用キャップによれば、被覆部がフェルールの先端面側に向けられる凹部を備えると共に、凹部の開口内周面の内径が装着部の内周面の内径よりも小径となっている。また、被覆部の凹部の開口内周面と装着部の内周面とを接続する接続面が、ハウジングの長手方向の一端側の部位と当接することによって、光コネクタに装着される状態の光コネクタ用キャップの位置決めがなされる。このため、装着部がハウジングの長手方向の一端側における外周面に嵌合によって装着された場合には、被覆部とフェルールの先端面との干渉が容易に回避されながら、規制部によって補助部品の移動が規制される。
【0012】
請求項4に記載する本発明の光コネクタ用キャップは、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の構成において、前記規制部は、前記装着部の外周面をガイド面として前記ハウジングの長手方向に沿って前記装着部に対して相対移動可能なスライダの一部を構成し、前記装着部の前記ハウジングへの装着状態で前記被覆部側の退避位置へ移動可能とされている。
【0013】
請求項4に記載する本発明の光コネクタ用キャップによれば、規制部は、装着部の外周面をガイド面としてハウジングの長手方向に沿って装着部に対して相対移動可能なスライダの一部を構成しており、装着部のハウジングへの装着状態で被覆部側の退避位置へ移動可能となっている。このため、規制部を退避位置へ移動させて補助部品と接しない状態にすれば、被覆部でフェルールの先端面を覆った状態を維持しつつ、補助部品をハウジングに対して相対移動させることが可能となる。
【0014】
請求項5に記載する本発明の光コネクタ用キャップは、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の構成において、前記規制部は、前記装着部側の軸線回りに回転移動可能な蓋部の一部を構成し、前記装着部の前記ハウジングへの装着状態で前記被覆部側の退避位置へ移動可能とされている。
【0015】
請求項5に記載する本発明の光コネクタ用キャップによれば、規制部は、装着部側の軸線回りに回転移動可能な蓋部の一部を構成しており、装着部のハウジングへの装着状態で被覆部側の退避位置へ移動可能となっている。このため、規制部を退避位置へ移動させて補助部品と接しない状態にすれば、被覆部でフェルールの先端面を覆った状態を維持しつつ、補助部品をハウジングに対して相対移動させることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の光コネクタ用キャップによれば、光コネクタのフェルールの先端面側を覆いながら、補助部品の外れを防止することができるという優れた効果を有する。
【0017】
請求項2に記載の光コネクタ用キャップによれば、光コネクタ用キャップが光コネクタに装着された状態では、仮に補助部品をハウジングに対して支点回りに回転移動させようとしても、規制部の比較的小さな反力によって補助部品の移動を規制することができるという優れた効果を有する。
【0018】
請求項3に記載の光コネクタ用キャップによれば、装着部がハウジングの長手方向の一端側における外周面に嵌合によって装着された場合には、被覆部とフェルールの先端面との干渉が容易に回避されながら、規制部によって補助部品の移動を規制することができるという優れた効果を有する。
【0019】
請求項4に記載の光コネクタ用キャップによれば、スライダの一部を構成する規制部を退避位置へ移動させて補助部品と接しない状態にすれば、被覆部でフェルールの先端面を覆った状態を維持しつつ、補助部品をハウジングに対して相対移動させることが可能となるという優れた効果を有する。
【0020】
請求項5に記載の光コネクタ用キャップによれば、蓋部の一部を構成する規制部を退避位置へ移動させて補助部品と接しない状態にすれば、被覆部でフェルールの先端面を覆った状態を維持しつつ、補助部品をハウジングに対して相対移動させることが可能となるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光コネクタ用キャップを光コネクタに装着される前の状態で示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る光コネクタ用キャップを光コネクタに装着された状態で示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る光コネクタ用キャップを光コネクタに装着された状態で示す断面図である(光コネクタは側面図で示す。)。図3(A)は楔が取り付けられた光コネクタに光コネクタ用キャップが装着された状態を示す。図3(B)は楔が取り付けられていない光コネクタに光コネクタ用キャップが装着された状態を示す。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る光コネクタ用キャップが装着される光コネクタを示す側面図である。図4(A)は光ファイバが光コネクタに固定される前の状態を示す。図4(B)は光ファイバが光コネクタに固定された状態を示す。
【図5】図1の矢印5方向から見た状態の光コネクタを示す平面図である(二点鎖線で示す楔を透視した状態で示している。)。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る光コネクタ用キャップの正面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る光コネクタ用キャップの背面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る光コネクタ用キャップの左側面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る光コネクタ用キャップの平面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る光コネクタ用キャップの底面図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る光コネクタ用キャップを光コネクタに装着した状態で示す断面図である(光コネクタは側面図で示す。)。図11(A)は規制部が楔の移動を制限している状態を示す。図11(B)は規制部が楔に接しない退避位置へ移動した状態を示す。図11(C)は楔の挿入刃が抜き去られた状態を示す。
【図12】本発明の第3の実施形態に係る光コネクタ用キャップを光コネクタに装着した状態で示す断面図である(光コネクタは側面図で示す。)。図12(A)は規制部が楔の移動を制限している状態を示す。図12(B)は規制部が楔に接しない退避位置へ移動した状態を示す。図12(C)は楔の挿入刃が抜き去られた状態を示す。
【図13】本発明の第4の実施形態に係る光コネクタ用キャップを光コネクタに装着される前の状態で示す斜視図である。
【図14】本発明の第4の実施形態に係る光コネクタ用キャップを光コネクタに装着された状態で示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る光コネクタ用キャップについて図1〜図11を用いて説明する。
【0023】
図1には、光コネクタ用キャップ40(以下、単に「キャップ40」ともいう。)が光コネクタ10に装着される前の状態が斜視図にて示され、図2には、キャップ40が光コネクタ10に装着された状態が斜視図にて示されている。これらの図に示されるように、光コネクタ10には光コネクタ組立補助用の補助部品としての楔26が取り付けられるようになっている。また、図2に示されるように、キャップ40は、楔26が取り付けられた状態の光コネクタ10に装着可能とされている。
【0024】
まず、光コネクタ10の構成について簡単に説明する。図5には、図1の矢印5方向から見た状態の光コネクタ10が示されている。なお、図5では、二点鎖線で示す楔26を透視した状態で示している。図5に示されるように、光コネクタ10は、略角筒状のハウジング14を備えており、ハウジング14の長手方向の一端側(図中の左側)にはフェルール12の一部が収納されている。フェルール12には、光ファイバが内蔵されており、先端面12A側がハウジング14から突出している。
【0025】
ハウジング14の内側には、基板18が配置されており、基板18には、接続する光ファイバが保持される溝部が形成されている。また、基板18は、前記溝部が形成された面が蓋部材20によって覆われている。蓋部材20及び基板18の外周側には、断面C字形状の押圧部材22が被せられており、押圧部材22は、蓋部材20を基板18側に向けて押圧している。蓋部材20及び基板18との対向部に対応するようにハウジング14には楔挿入口16が貫通形成されている。
【0026】
次に、楔26の構成について簡単に説明する。楔26は、基板18と蓋部材20との間隔を押し広げるための部材であり、楔挿入口16から基板18と蓋部材20との間に差し込まれて基板18と蓋部材20との間隔を押し広げる挿入刃28を備えている。
【0027】
図4には、楔26が光コネクタ10に取り付けられた状態の側面図が示されている。図4(B)に示されるように、挿入刃28は、保持片30の裏面から突出して形成されており、保持片30の基端側には作業者操作用の操作部32が保持片30と一体に形成されている。また、図1に示されるように、操作部32の両サイドからは挟持部34が垂下されて形成されており、これらの挟持部34は光コネクタ10のハウジング14の側面を挟持するようになっている。図4(B)に示されるように、操作部32の裏面側には、ハウジング14の他端側の上面に接触して支持される支点36(回転中心となる直線状の支持部)が設けられており、この支点36回りに楔26が回転移動可能とされている。すなわち、楔26は、ハウジング14に対して相対移動可能に取り付けられている。
【0028】
なお、図中右側に図示された光ファイバ24は、光コネクタ10のハウジング14内において、フェルール12の光ファイバと接続するものである。すなわち、図4(A)のように、楔26が基板18(図5参照)と蓋部材20(図5参照)との間隔を押し広げた状態で、光ファイバ24の先端側が光コネクタ10のハウジング14内に挿入され、光ファイバ24とフェルール12の光ファイバとが接続された状態で図4(B)に示されるように、楔26の挿入刃28が抜き去られて光ファイバ24は光コネクタ10に保持されるようになっている。
【0029】
次に、図1等に示される本実施形態に係るキャップ40の構成について説明する。なお、図6〜図11は、キャップ40の六面図であり、図6はキャップ40の正面図、図7はキャップ40の背面図、図8はキャップ40の左側面図、図9はキャップ40の平面図、図10はキャップ40の底面図をそれぞれ示している。なお、右側面図は、左側面図(図8)と対称に表れるので省略する。
【0030】
図1及び図2に示されるように、キャップ40は、光コネクタ10に対し着脱可能に装着されるようになっており、光コネクタ10におけるハウジング14の長手方向の一端側(図中の左側)でフェルール12の先端面12Aを覆う被覆部42を備えている。被覆部42は、有底角筒状に形成され、図3(A)に示されるように、フェルール12の先端面12A側に向けられる凹部44を備えている。
【0031】
被覆部42の凹部44の開口側には、矩形筒状の装着部46が被覆部42に一体に形成されて(一体的に設けられて)いる。装着部46は、ハウジング14の長手方向の一端側(図中の左側)における外周面14Bに嵌合によって(密接状態で)装着可能となっている。また、装着部46の内周面46Aと被覆部42における凹部44の内周面44Aとの境界部は、段差状とされている。すなわち、凹部44の開口内周面144の内径D1が装着部46の内周面46Aの内径D2よりも小径とされている。被覆部42の凹部44の開口内周面144と装着部46の内周面46Aとを接続する接続面48が、ハウジング14の長手方向の一端側の先端面部14Aと当接することによって、光コネクタ10に装着される状態のキャップ40の位置決めがなされる。
【0032】
図1に示されるように、装着部46の被覆部42側とは反対側には、張出部50が装着部46に一体に形成されて(一体的に設けられて)いる。張出部50は、装着部46の筒軸方向に対して直交する方向に切断したときにできる軸直角断面の形状が、ハット形状の左右両端側を垂下させたような形状となっている。すなわち、張出部50は、上壁を構成する規制部52と、規制部52の両サイドからそれぞれ垂下された垂下部54と、垂下部54の下端から互いに離反する方向へ屈曲されて形成された水平部56と、水平部56の両サイドからそれぞれ垂下された側壁部58と、を備えている。ここで、側壁部58は、装着部46における側壁部146の延長部を構成し、水平部56は、装着部46における上壁部246の延長部を構成している。
【0033】
ここで、図3(A)に示されるように、規制部52は、装着部46のハウジング14への装着状態で楔26の保持片30(作用点側の部位)の表面に接して(密接状態で)楔26の移動を規制するようになっている。つまり、規制部52によってキャップ40には楔26の離脱を防止する機能が付加されている。規制部52を備えた張出部50の形状は、楔26の挿入刃28が光コネクタ10に差し込まれた状態での光コネクタ10の上面位置と楔26の保持片30の上面位置とに応じて設定されている。
【0034】
なお、図1に示されるように、側壁部58の下部側には、光コネクタ10の設置時に治具との干渉を避けるために切欠部58Aが形成されている。また、キャップ40の内側において、光コネクタ10のフェルール12の先端側には、図1に二点鎖線で示される保護キャップ59が装着されていてもよい。
【0035】
(作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0036】
図3(A)に示されるように、本実施形態に係るキャップ40では、被覆部42がハウジング14の長手方向の一端側(図中の左側)でフェルール12の先端面12Aを覆うと共に、被覆部42に一体に形成された装着部46が、ハウジング14の長手方向の一端側における外周面14Bに嵌合によって密接状態で装着可能となっている。また、装着部46に一体に形成された規制部52は、装着部46のハウジング14への装着状態で楔26に密接状態で接して楔26の移動を規制する。このため、キャップ40の装着部46が光コネクタ10のハウジング14に装着されることによって、フェルール12の先端面12Aが覆われつつ、挿入刃28が抜け(楔26の外れ)が防止される。
【0037】
ここで、対比構造と比較しながら補足説明すると、例えば、規制部52が形成されていないような対比構造のキャップでは、楔(26)の操作部(32)を誤って押してしまうと、挿入刃(28)が抜けて(楔(26)が外れて)しまうことになる。そして、楔(26)の挿入刃(28)が半差しの状態で光ファイバが挿入されると接続不良が発生してしまう。これに対して、本実施形態に係るキャップ40では、挿入刃28が抜けが防止されるので、挿入刃28の半差しに起因した光ファイバの接続不良を防止することができる。一方、挿入刃(28)の抜けを防止するために、例えば、テープや結束バンドで楔(26)を規制するような他の構成では、挿入刃(28)を抜き去る際に抜きにくくなる他、テープの場合には糊が楔(26)についてしまう不都合もあり、さらに、新たなゴミが発生してしまう等の問題も生じることになる。これに対して、本実施形態に係るキャップ40では、このような問題も生じない。
【0038】
また、図4(A)及び図4(B)に示されるように、楔26がハウジング14の他端側(図中の右側)に支持される支点36(図4(B)参照)回りに回転移動(回動)可能となっているのに対して、図3(A)に示されるように、規制部52は、装着部46のハウジング14への装着状態で楔26の作用点側となる保持片30の表面に密接状態で接して楔26の移動を規制する。このため、装着部46がハウジング14へ装着された状態では、仮に楔26をハウジング14に対して支点36回りに回転移動させようとしても、規制部52の比較的小さな反力によって楔26の移動が規制される。
【0039】
また、本実施形態に係るキャップ40では、被覆部42の凹部44の開口内周面144と装着部46の内周面46Aとを接続する接続面48が、ハウジング14の長手方向の一端側の先端面部14Aと当接することによって、光コネクタ10に装着される状態のキャップ40の位置決めがなされる。このため、装着部46がハウジング14の長手方向の一端側における外周面14Bに嵌合によって密接状態で装着された場合には、被覆部42とフェルール12の先端面12Aとの干渉が容易に回避されながら、規制部52によって楔26の移動が規制される。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係る光コネクタ用キャップ40によれば、光コネクタ10のフェルール12の先端面12A側を覆いながら、楔26の外れを防止することができる。
【0041】
なお、本実施形態に係る光コネクタ用キャップ40は、装着部46がハウジング14の一端側の外周面14Bに嵌合によって密接状態で装着されるので、図3(B)に示されるように、光コネクタ10から楔26(図3(A)参照)が取り外された状態においても、光コネクタ10に装着することができる。
【0042】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る光コネクタ用キャップ60(以下、単に「キャップ60」という。)について、図11を用いて説明する。図11には、光コネクタ10に装着された状態のキャップ60が断面図にて示されている。図11に示されるように、キャップ60は、規制部64がスライダ62の一部を構成している点で、第1の実施形態に係るキャップ40(図3等参照)とは異なる。他の構成は、第1の実施形態とほぼ同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
図11(A)に示されるように、規制部64は、装着部46に一体的に設けられ、装着部46のハウジング14への装着状態で楔26に密接状態で接して楔26の移動を規制するようになっている。図11(A)及び図11(B)に示されるように、規制部64は、装着部46の外周面46Bをガイド面としてハウジング14の長手方向に沿って装着部46に対して相対移動可能なスライダ62の一部を構成しており、図11(B)に示されるように、装着部46のハウジング14への装着状態で被覆部42側の退避位置(楔26に接しない位置)へ移動可能とされている(伸縮構造の採用)。
【0044】
また、装着部46及びスライダ62には、図11(A)に示される規制部64が楔26の移動を規制する規制位置にある状態で互いに係合する係合部(図示省略)が形成されている。前記係合部が互いに係合した状態では、所定値以上の力を加えない限りスライダ62が装着部46に対して相対移動しないようになっている。
【0045】
本実施形態の構成によれば、前述した第1の実施形態と同様の作用及び効果が得られるうえに、規制部64を退避位置へ移動させれば、図11(C)に示されるように、被覆部42でフェルール12の先端面12Aを覆った状態を維持しつつ、楔26をハウジング14に対して相対移動させることが可能となる。
【0046】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係る光コネクタ用キャップ70(以下、単に「キャップ70」という。)について、図12を用いて説明する。図12には、光コネクタ10に装着された状態のキャップ70が断面図にて示されている。図12に示されるように、キャップ70は、規制部74が蓋部72の一部を構成している点で、第1の実施形態に係るキャップ40(図3等参照)とは異なる。他の構成は、第1の実施形態とほぼ同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0047】
図12(A)に示されるように、規制部74は、装着部46に一体的に設けられ、装着部46のハウジング14への装着状態で楔26に密接状態で接して楔26の移動を規制するようになっており、蓋部72の一部を構成している。図12(A)及び図12(B)に示されるように、蓋部72は、装着部46側の基端部(装着部46との接続部)にインテグラルヒンジ76が形成されており、このインテグラルヒンジ76の軸線回りに回転移動可能とされている。これにより、図12(B)に示されるように、規制部74は、装着部46のハウジング14への装着状態で被覆部42側の退避位置(楔26に接しない位置)へ移動可能とされている。
【0048】
また、蓋部72の基端部裏面側には、係合凹部72Aが形成されている。この係合凹部72Aに対応して装着部46側には、係合凸部78が形成されており、図12(A)に示される規制部74が楔26の移動を規制する規制位置にある状態で係合凹部72Aが係合凸部78と係合するようになっている。係合凹部72Aと係合凸部78とが係合した状態では、所定値以上の力を加えない限り蓋部72が装着部46に対して相対移動しないようになっている。
【0049】
本実施形態の構成によれば、前述した第1の実施形態と同様の作用及び効果が得られるうえに、規制部74を退避位置へ移動させれば、図12(C)に示されるように、被覆部42でフェルール12の先端面12Aを覆った状態を維持しつつ、楔26をハウジング14に対して相対移動させることが可能となる。
【0050】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態に係る光コネクタ用キャップ80(以下、単に「キャップ80」という。)について、図13及び図14を用いて説明する。図13には、キャップ80が光コネクタ10に装着される前の状態が斜視図にて示され、図14には、キャップ80が光コネクタ10に装着された状態が斜視図にて示されている。これらの図に示されるように、キャップ80は、光コネクタ10に取り付けられた補助部品としてのガイド付治具94の変位をも規制している点で、第1の実施形態に係るキャップ40(図1等参照)とは異なる。他の構成は、第1の実施形態とほぼ同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
図13に示されるように、光コネクタ10は、光コネクタ組立補助用のガイド付治具94上に配置されている。ガイド付治具94は、光コネクタ10の長手方向と同じ方向を長手方向として配置されている。ガイド付治具94の長手方向の一端側(図中の左側)には、光コネクタ10の両サイドを挟むリブ96が形成され、ガイド付治具94の長手方向の中間部には、光コネクタ10を両サイドから挟んで保持する爪部98A、98Bが形成されている。これらにより、光コネクタ10にガイド付治具94が取り付けられているが、光コネクタ10やガイド付治具94に所定値以上の荷重が加わることによって、ガイド付治具94は、光コネクタ10のハウジング14に対して外れる方向へ相対移動可能とされている。
【0052】
ガイド付治具94の長手方向の他端側(図中の右側)には、接続する光ファイバ24(図4(B)参照)をガイドするためのガイド部100が形成されている。
【0053】
一方、キャップ80における装着部46の被覆部42側とは反対側には、張出部82が装着部46に一体に形成されて(一体的に設けられて)いる。張出部82は、上壁を構成する第一規制部84と、第一規制部84の両サイドからそれぞれ垂下された垂下部86と、垂下部86の下端から互いに離反する方向へ屈曲されて形成された水平部88と、水平部88の両サイドからそれぞれ垂下された側壁部90と、側壁部90の下端同士を連結して下壁を構成する第二規制部92と、を備えている。
【0054】
ここで、一対の側壁部90間の寸法は、ガイド付治具94における長手方向の一端側の幅寸法(長手方向に直交する水平方向の寸法)より若干大きく設定されている。また、図14に示されるように、装着部46のハウジング14への装着状態では、第一規制部84が楔26の保持片30(作用点側の部位)の表面に密接状態で接して楔26の移動を規制すると共に、第二規制部92がガイド付治具94の長手方向における一端側の底部に密接状態で接してガイド付治具94の外れる方向への移動を規制するようになっている(離脱防止機能)。
【0055】
上記構成によっても、前述した第1実施形態と同様の作用及び効果が得られるうえ、ガイド付治具94の外れを防止することができる。
【0056】
[実施形態の補足説明]
なお、請求項2記載の「支点」は、必ずしも特定の点に限定されず、上記実施形態のような特定の点を含む線(直線状の支持部)を含む。また、請求項2記載の「作用点」は、必ずしも特定の点に限定されず、特定の点を含む線や上記実施形態のような特定の点を含む面を含む。
【符号の説明】
【0057】
10 光コネクタ
12 フェルール
12A フェルールの先端面
14 ハウジング
26 楔(補助部品)
36 支点
40 光コネクタ用キャップ
42 被覆部
44 凹部
46 装着部
46A 装着部の内周面
46B 装着部の外周面
48 接続面
52 規制部
60 光コネクタ用キャップ
62 スライダ
64 規制部
70 光コネクタ用キャップ
72 蓋部
74 規制部
80 光コネクタ用キャップ
84 第一規制部(規制部)
92 第二規制部(規制部)
94 ガイド付治具(補助部品)
144 凹部の開口内周面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを内蔵したフェルールと、前記フェルールの一部を長手方向の一端側に収納するハウジングと、を備えると共に光コネクタ組立補助用の補助部品が相対移動可能に取り付けられる光コネクタに対し、着脱可能に装着される光コネクタ用キャップであって、
前記ハウジングの長手方向の一端側で前記フェルールの先端面を覆う被覆部と、
前記被覆部に一体的に設けられ、前記ハウジングの長手方向の一端側における外周面に嵌合によって装着可能な装着部と、
前記装着部に一体的に設けられ、前記装着部の前記ハウジングへの装着状態で前記補助部品に接して前記補助部品の移動を規制する規制部と、
を有する光コネクタ用キャップ。
【請求項2】
前記補助部品は、前記ハウジングの他端側に支持される支点回りに回転移動可能とされる部品であり、
前記規制部は、前記装着部の前記ハウジングへの装着状態で前記補助部品の作用点側の部位に接して前記補助部品の移動を規制する請求項1記載の光コネクタ用キャップ。
【請求項3】
前記被覆部が前記フェルールの先端面側に向けられる凹部を備えると共に、前記凹部の開口内周面の内径が前記装着部の内周面の内径よりも小径とされ、
前記被覆部の前記凹部の開口内周面と前記装着部の内周面とを接続する接続面が、前記ハウジングの長手方向の一端側の部位と当接することによって、前記光コネクタに装着される状態の位置決めがなされる請求項1又は請求項2に記載の光コネクタ用キャップ。
【請求項4】
前記規制部は、前記装着部の外周面をガイド面として前記ハウジングの長手方向に沿って前記装着部に対して相対移動可能なスライダの一部を構成し、前記装着部の前記ハウジングへの装着状態で前記被覆部側の退避位置へ移動可能とされている請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の光コネクタ用キャップ。
【請求項5】
前記規制部は、前記装着部側の軸線回りに回転移動可能な蓋部の一部を構成し、前記装着部の前記ハウジングへの装着状態で前記被覆部側の退避位置へ移動可能とされている請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の光コネクタ用キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−59139(P2011−59139A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205250(P2009−205250)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【特許番号】特許第4630380号(P4630380)
【特許公報発行日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】