説明

光コネクタ及び光コネクタの組立方法

【課題】簡易な構造により良好なPC接続を実現可能な光コネクタ及び光コネクタの組立方法を提供する。
【解決手段】光ファイバの一端側を保持するフェルールと、フェルールから延出する光ファイバを保持・固定する光ファイバ把持部と、を備えた光コネクタにおいて、光ファイバはフェルールの先端から所定の突出量ΔLだけ突出した状態で光ファイバ把持部により固定される。そして、接続先と光ファイバが接続される際に、光ファイバがフェルール端面まで押圧され、当該光ファイバの先端から光ファイバ把持部の固定端までの間で撓むことなく弾性変形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ用の光コネクタ及び光コネクタの組立方法に関し、特に光ファイバをPC(Physical Contact)接続する際に有用な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、FTTH(Fiber To The Home)等の普及によって光通信網が一般家庭などで多数用いられるに伴い、ユーザ宅などの接続現場で簡単に組み立て可能なメカニカルスプライス型の光ファイバコネクタ(以下、光コネクタ)が開発され、実用化されている(例えば特許文献1〜4)。
【0003】
特許文献1に記載の光コネクタは、フェルールに短尺の光ファイバ(以下、内蔵光ファイバ)を予め装着しておき、接続しようする光ファイバ(以下、接続光ファイバ)を内蔵光ファイバに突き当てて接続することで組み立てられる。この場合、内蔵光ファイバの端面をフェルール端面とともに高精度に研磨しておくことにより、接続先(例えば光コネクタ)との良好なPC接続が実現される。
一方、特許文献2〜4には、内蔵光ファイバレス構造の光コネクタが開示されている。この種の光コネクタの場合、接続光ファイバを光コネクタ内で座屈させることにより発生する押圧力を利用して、接続先とのPC接続が実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−139891号公報
【特許文献2】特開2008−292710号公報
【特許文献3】特開2009−128422号公報
【特許文献4】特開2010−96981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の光コネクタにおいては、内蔵光ファイバをフェルールに装着して位置決め固定した後に、フェルール端面とともに光ファイバ端面を研磨する必要があるため、製造コストが非常に高くなるという問題がある。
また、特許文献2〜4に記載の光コネクタにおいては、光ファイバを座屈させることにより発生する押圧力が弱すぎると良好なPC接続が得られない。そのため、フェルール端面に整合シートを貼着して反射減衰量を低減させたり、接続光ファイバの端面を特定の形状に研磨したりしなければならない。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、簡易な構造により良好なPC接続を実現可能な光コネクタ及び光コネクタの組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、光ファイバの一端側を保持するフェルールと、
前記フェルールから延出する前記光ファイバを保持・固定する光ファイバ把持部と、を備え、
前記光ファイバが前記フェルールの先端から所定の突出量ΔLだけ突出した状態で前記光ファイバ把持部により固定され、
接続先と前記光ファイバが接続される際に、前記光ファイバが前記フェルール端面まで押圧され、当該光ファイバの先端から前記光ファイバ把持部の固定端までの間で撓むことなく弾性変形することを特徴とする光コネクタである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光コネクタにおいて、前記光ファイバの先端から前記光ファイバ把持部の固定端までの距離をLとしたとき、前記光ファイバが弾性変形したときの歪ΔL/Lが0.06%以上であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の光コネクタにおいて、前記突出量ΔLが10μm以上30μm以下であることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れか一項に記載の光コネクタにおいて、前記光ファイバと前記接続先とがPC接続することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4の何れか一項に記載の光コネクタの組立方法であって、
前記光ファイバの一端側を前記フェルールに挿通し、前記フェルールの先端から前記突出量ΔLより長く突出させる工程と、
前記光ファイバの先端に位置決め部材を当接させて前記光ファイバを撓ませながら押し戻す工程と、
前記光ファイバの突出量が前記突出量ΔLとなった時点で、前記光ファイバ把持部により前記光ファイバを固定する工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光ファイバ同士をPC接続する際に、接続光ファイバが弾性変形することにより非常に大きな押圧力が発生するので、良好なPC接続を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る光コネクタの概略構成を示す図である。
【図2】接続先とPC接続したときの光コネクタの状態を示す図である。
【図3】接続光ファイバF1の歪みεと押圧力Fの関係を示す図である。
【図4】第1実施形態に係る光コネクタ10の組立工程の一例について示す図である。
【図5】第1実施形態に係る光コネクタ10の組立工程の一例について示す図である。
【図6】第2実施形態に係る光コネクタの概略構成を示す図である。
【図7】接続先とPC接続する際の接続光ファイバF1が撓み可能な空間長(間隔)と座屈力(座屈荷重)との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るメカニカルスプライス型の光コネクタ(例えばSCコネクタ)の概略構成を示す図である。本実施形態では、接続光ファイバF1として、外径125μmの裸光ファイバに、一次被覆(例えばUV樹脂被覆、被覆外径250μm)を施した単心光ファイバを用いた場合について説明する。
【0015】
図1に示すように、光コネクタ10は、フェルール101、ベース部材102、ファイバ押え部材103、104及びクランプ部材105等を備えて構成されている。
フェルール101は、例えばジルコニア等のセラミック材料で構成された略円柱状の部材であり、中心軸に沿って細孔101aが形成されている。接続光ファイバF1の一端側(被覆を除去された裸ファイバ部分)が、この細孔101aに挿通され保持される。
【0016】
ベース部材102は、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS:Polyphenylene sulfide)又はポリエーテルイミド(PEI:Polyetherimide)等の樹脂材料で構成された略半円筒状の部材である。ベース部材102は、フェルール101を保持するフェルール保持部、接続光ファイバF1の裸ファイバ部(被覆を除去した部分)を保持する裸ファイバ保持部、接続光ファイバF1の被覆ファイバ部(一次被覆が施されたままの部分)を保持する被覆ファイバ保持部に区画される。
ベース部材102のフェルール保持部には鍔部102aが形成されており、この鍔部102aにフェルール101が嵌合され、保持される。なお、ベース部材102とフェルール101を接着して固定してもよい。
【0017】
ベース部材102の裸ファイバ保持部、被覆ファイバ保持部の表面には、長手方向に沿って断面V字状のファイバ固定溝102b、102cが形成されている。なお、ファイバ固定溝102b、102cは、断面U字状又は断面台形状でもよく、接続光ファイバF1をファイバ押え部材103、104との間で狭持して固定できる形状であれば特に制限されない。
具体的には、接続光ファイバF1の裸ファイバ部が載置されるファイバ固定溝102bは裸光ファイバの外径(例えば125μm)に対応する小径用溝となっており、被覆ファイバ部が載置されるファイバ固定溝102cは接続光ファイバF1の被覆外径(例えば250μm)に対応する大径用溝となっている。また、ファイバ固定溝(大径用溝)102cの入口は、接続光ファイバF1を挿入しやすいように、外側に向けて拡径されている。
【0018】
ファイバ押え部材103、104は、例えばPPS又はPEI等の樹脂材料で構成された蓋部材であり、ベース部材102のファイバ固定溝102b、102cに対向して配置される。具体的には、ファイバ押え部材103はファイバ固定溝(小径用溝)102bを覆うようにベース部材102上に載置され、ファイバ押え部材104はファイバ固定溝(大径用溝)102cを覆うようにベース部材102上に載置される。ファイバ押え部材103,104の内面と、ベース部材102のファイバ固定溝102b、102cにより挟まれた空間が、接続光ファイバF1の挿入路となる。
【0019】
クランプ部材105は、例えばステンレス等の金属材料で構成された断面C字状(コ字状)の部材であり、側面の一部が開放されている。クランプ部材105は、ベース部材102にファイバ押え部材103、104を載置した状態で、これらを押圧狭持する。このとき、ベース部材102とファイバ押え部材103の接合面、及びベース部材102とファイバ押え部材104の接合面は、クランプ部材105の開口から外部に露呈され、楔(図示略)を挿入できる状態となる。
接続光ファイバF1の裸ファイバ部がベース部材102とファイバ押え部材103によって保持され、接続光ファイバF1の被覆ファイバ部がベース部材102とファイバ押え部材104によって保持・固定される。つまり、ベース部材102,ファイバ押え部材103,104,及びクランプ部材105により、フェール101から延出する接続光ファイバF1を保持・固定する光ファイバ把持部が構成されている。
【0020】
ベース部材102にフェルール101、ファイバ押え部材103,104,クランプ部材105が取り付けられてなる光ファイバ装着部は、コイルばね107により一定の荷重で押圧された状態でフレーム106に固定される。具体的には、ベース部材102の後端にコイルばね107及びストップリング108が配置され、ストップリング108を前方(フェルール101側)に移動させることによりコイルばね107が圧縮される。そして、ストップリング108の係止片をフレーム106の係止孔に係止させることにより、光ファイバ接続部11は押圧された状態でフレーム106に固定される。
フレーム106とストップリング108でいわゆるハウジングが構成され、フレーム106の先端部が接続先(例えば光コネクタ)とのインターフェースとなる。また、フレーム106及びストップリング108の外側にはスライダ109が摺動可能に配設され、いわゆるスライドロック構造が構成されている。
【0021】
本実施形態では、接続光ファイバF1が、フェルール101の先端から所定の突出量ΔLだけ突出した状態で、光ファイバ把持部により固定されている。また、光ファイバ把持部では、接続光ファイバF1が、長手方向に移動はもとより弾性変形も不能に固定されている。
したがって、図2に示すように、接続先(例えば光コネクタ)とPC接続する場合、接続光ファイバF1はフェルール101の端面まで押し戻されることとなる。このとき、接続光ファイバF1の先端から光ファイバ把持部の固定端Pまでの間(距離L)で、接続光ファイバF1が撓むことなく弾性変形する。つまり、接続光ファイバF1は、先端から光ファイバ把持部の固定端Pまでの間で弾性変形して突出量ΔLを吸収することになる。
【0022】
ここで、接続光ファイバF1が弾性変形することにより発生する押圧力Fは、接続光ファイバF1の裸光ファイバのヤング率をE、断面積をS、歪みをε(=ΔL/L)としたとき、F=ε×S×Eで表される。接続光ファイバF1の裸光ファイバ径が125μm、ヤング率Eが72GPaの場合、接続光ファイバF1の歪みεと押圧力Fの関係は図3に示すようになる。
【0023】
一般に、良好なPC接続を実現するためには押圧力Fが0.5N以上であることが必要とされる。これを満たすには、図3より接続光ファイバF1の歪みεが0.06%以上であればよいことになる。すなわち、光コネクタ10においては、接続先とPC接続する際の接続光ファイバF1の歪みεが0.06%以上となるように、接続光ファイバF1の先端から光ファイバ把持部の固定端Pまでの距離Lと、接続光ファイバF1の突出量ΔLが設定される。
【0024】
ただし、接続光ファイバF1の突出量ΔLが大きすぎると、接続光ファイバF1の端面が損傷しやすくなり取り扱いが困難となる。そこで、接続光ファイバF1の突出量ΔLは30μm以下であることが望ましい。また、光コネクタ10の構造上、接続光ファイバF1の先端から光ファイバ把持部の固定端Pまでの距離Lは制限されるので、接続光ファイバF1の突出量ΔLは10μm以上とするのが望ましい。
【0025】
本実施形態の光コネクタ10においては、接続光ファイバF1の挿入を容易化するためにベース部材102とファイバ押え部材103で形成されるファイバ挿出口は前方(光コネクタ10の先端側)に向けて拡径され、逆にフェルール101のファイバ挿入口は前方に向けて縮径されている。つまり、この部分の内径は接続光ファイバF1の裸光ファイバ径より大きいため、接続光ファイバF1が撓み可能な空間が形成されているといえる。
接続光ファイバF1が接続先とPC接続する際に撓まないためには、このような撓み可能な空間がない方が好ましい。しかし、部品の構成上、接続光ファイバF1が撓み可能な空間が形成されてしまう場合には、空間長を適宜に短く調整することで対応すればよい。例えば、外径125μmの裸光ファイバの場合、空間長が5mm以下であれば1Nの力がかかっても座屈することはない(図7参照)。なお、図7において、光ファイバの座屈力Pは、P=4π2EI/L2(E:光ファイバのヤング率、I:断面2次モーメント、L:光ファイバ長)で表される。外径125μmの裸光ファイバの場合、E=76GPa、I=1.2×10-174である。
【0026】
また、接続光ファイバF1を接続先とPC接続する際に、接続光ファイバF1が長手方向にずれないためには、接続光ファイバF1の弾性変形により生じる押圧力Fより、接続光ファイバF1とベース部材102、ファイバ押え部材103との間の摩擦力(=μN、μ:部材の摩擦係数、N:クランプ力)が大きくなるようにする必要がある。
【0027】
図4,5は、第1実施形態に係る光コネクタ10の組立工程の一例について示す図である。ここでは、位置決め部材53を用いて接続光ファイバF1の突出量ΔLを制御する場合について説明する。
図4、5に示すように、位置決め部材53は、割スリーブ等を取り付けるために光コネクタ1の先端部に設けられた係合空間に嵌合可能な蓋部材である。位置決め部材53には、フェルール11の外径と略同一の第1内径を有する第1内径部53aと、第1内径より小さく接続光ファイバF1の裸光ファイバ径より大きな第2内径を有する第2内径部53bが段状に連設されている。また、第2内径部53bの高さが、接続光ファイバF1の突出量ΔLに応じて設定されている。
【0028】
光コネクタ10を組み立てる場合、まず、接続光ファイバF1の先端から所定長(例えば20〜25mm)だけ外被を除去する。このときの外被除去長により、接続光ファイバF1の突出量が決定される。
一方、光コネクタ10の本体においては、フェルール101が固定されたベース部材102のファイバ固定溝102b、102cに、ファイバ押え部材103、104を対向させて配置する。また、ベース部材102とファイバ押え部材103、104の周囲にクランプ部材105を嵌め込んで、光ファイバ装着部を組み立てる。この光ファイバ装着部をフレーム106に挿入し、コイルばね107を介してストップリング108で固定する。そして、外部に露呈されているベース部材102とファイバ押え部材103、104の接合面に楔(図示略)を押入し、接合面をわずかに離間させ、接続光ファイバF1を挿入可能な状態とする。
【0029】
次に、図4に示すように、先端部の外被が除去された接続光ファイバF1を、ガイド部材51に沿って光コネクタ1内に挿入する。具体的には、接続光ファイバF1の被覆ファイバ部の端面がベース部材102の小径用溝102bに到達し、それ以上挿入不能となるまで、接続光ファイバF1を挿入する。このとき、接続光ファイバF1の先端は、フェルール11の先端からΔLよりも長く突出した状態となる。この状態で、ガイド蓋52により接続光ファイバF1を把持して固定する。
【0030】
次に、接続光ファイバF1の端面に付着した塵埃をエア等で除去した後、図5に示すように、位置決め部材53を光コネクタ1の先端部に嵌め込み、第1内径部53aと第2内径部53bの境界となる段部がフェルール101の端面に突き当たるまで挿嵌する。接続光ファイバF1は、ガイド蓋52により押さえ付けられてガイド部材51に固定されているので、位置決め部材53により押し戻されると撓みが形成される。この状態で楔を除去し、接続光ファイバF1を光コネクタ10に固定する。
【0031】
位置決め部材53を取り外して、光コネクタ10の組み立てが完了する。接続光ファイバF1は、位置決め部材53の第2内径部53bの高さ分だけフェルール101の端面から突出することになる。つまり、第2内径部53bの高さをΔLとしておけば、接続光ファイバF1の最終的な突出量を容易にΔLに制御することができる。
なお、接続相手とPC接続する際には、接続光ファイバF1の端面を清掃しておくのが望ましい。
【0032】
このように、第1実施形態の光コネクタ10は、接続光ファイバF1の一端側を保持するフェルール101と、フェルール101から延出する接続光ファイバF1を保持・固定する光ファイバ把持部(ベース部材102,ファイバ押え部材103,104、及びクランプ部材105)とを備えている。また、接続光ファイバF1がフェルール101の先端から所定の突出量ΔLだけ突出した状態で光ファイバ把持部により固定されている。
そして、接続先(例えば光コネクタ)と接続光ファイバF1がPC接続される際に、接続光ファイバF1がフェルール101の端面まで押圧され、接続光ファイバF1の先端から光ファイバ把持部の固定端Pまでの間で撓むことなく弾性変形する。
光コネクタ10によれば、フェルール101の端面から接続光ファイバF1を所定の突出量ΔLだけ突出させるという簡易な構造により、非常に大きな押圧力を得ることができ、良好なPC接続を実現することができる。
【0033】
また、光コネクタ10においては、接続光ファイバF1が弾性変形したときの歪みε(=ΔL/L)が0.06%以上となっているので、0.5N以上の押圧力が確実に得られることとなり、良好なPC接続が実現される。
【0034】
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態に係る光コネクタの概略構成を示す図である。図6において、第1実施形態の光コネクタ10の構成要素と同一又は対応する構成要素には先頭数字を「2」で置き換えた符号を付し、重複する説明については省略する。
【0035】
第2実施形態の光コネクタ20において、フェルール201は有蓋円筒状の部材であり、蓋部には中心軸に沿って細孔201aが形成されている。このフェルール201の中空部に、接続光ファイバF1が所定の押圧荷重で挿入されることに伴い当該接続光ファイバF1の被覆を除去する被覆除去部材210と、接続光ファイバF1を被覆除去部材210に案内するファイバガイド部材211が内蔵されている。
なお、被覆除去部材210及びファイバガイド部材211は、フェルール201とは別の部材としてもよいし、フェルール201と一体的に成型してもよい。また、ファイバガイド部材211は省略することもできる。
【0036】
被覆除去部材210は、例えばステンレス等の金属材料又はジルコニア等のセラミック材料又はPPS等の合成樹脂材料で構成されており、中心軸に沿って接続光ファイバF1の裸光ファイバを挿通可能な裸光ファイバ挿通孔210aが形成されている。裸光ファイバ挿通孔210aは、接続光ファイバF1の裸光ファイバ径よりも大きく、接続光ファイバF1の被覆外径よりも小さく形成されている。つまり、接続光ファイバF1を被覆除去部材210に挿入しようとすると、接続光ファイバF1の被覆が裸光ファイバ挿通孔210aの挿入口の周縁に当接し、さらに押圧すると被覆が剥離、除去されるようになっている。
なお、被覆除去部210の詳細な構成については、本出願人が先に出願した特願2010−127235号に開示されている。
【0037】
ファイバガイド部材211は、被覆除去部材211に接続光ファイバF1を案内する部位である。ファイバガイド部材211は、略円柱形状を有し、中心軸に沿って接続光ファイバF1の被覆ファイバ部を挿通可能な被覆ファイバ挿通孔211aが形成されている。つまり、被覆ファイバ挿通孔211aは、接続光ファイバF1の被覆外径よりも大きく形成されている。
【0038】
被覆除去部材210とファイバガイド部材211は、裸ファイバ挿通孔210aと被覆ファイバ挿通孔211aの中心軸が一致した状態で所定長だけ離間して配置される。被覆除去部材210とファイバガイド部材211の間の空間に、接続光ファイバF1の除去された被覆が収容されることになる。
【0039】
また、第2実施形態では、ベース部材102は、フェルール201を保持するフェルール保持部、接続光ファイバF1の被覆ファイバ部を保持する被覆ファイバ保持部に区画される。ベース部材102のフェルール保持部には凸部202aが形成されており、この凸部202aがフェルール101の中空部に挿嵌されることで、フェルール201を保持する。
【0040】
ベース部材202の被覆ファイバ保持部の表面には、長手方向に沿ってファイバ固定溝202cが形成されている。ファイバ固定溝102cは接続光ファイバF1の被覆外径(例えば250μm)に対応する大径用溝となっている。また、ファイバ固定溝(大径用溝)202cの入口は、接続光ファイバF1を挿入しやすいように、外側に向けて拡径されている。
このベース部材202のファイバ固定溝202cに対向してファイバ押え部材203が配置される。ファイバ押え部材203の内面と、ベース部材202のファイバ固定溝202cにより挟まれた空間が、接続光ファイバF1の挿入路となる。
【0041】
光コネクタ20は、第1実施形態の光コネクタ10と同様にして組み立てられる。このとき、接続光ファイバF1の挿入作業に伴い被覆除去部材210に接続光ファイバF1が圧入されると、接続光ファイバF1の被覆が自動的に除去される。したがって、光コネクタ20の組み立て作業が格段に容易化される。
【0042】
光コネクタ20においては、第1実施形態の光コネクタ10と同様に、接続光ファイバF1がフェルール201の先端から所定の突出量ΔLだけ突出した状態で光ファイバ把持部(ベース部材202,ファイバ押え部材203,及びクランプ部材205)により固定されている。
そして、接続先(例えば光コネクタ)と接続光ファイバF1がPC接続される際に、接続光ファイバF1がフェルール201の端面まで押圧され、接続光ファイバF1の先端から光ファイバ把持部の固定端Pまでの間で撓むことなく弾性変形する。
光コネクタ20によれば、フェルール201の端面から接続光ファイバF1を所定の突出量ΔLだけ突出させるという簡易な構造により、非常に大きな押圧力を得ることができ、良好なPC接続を実現することができる。
【0043】
また、光コネクタ20においては、接続先とPC接続する際の接続光ファイバF1の歪みεが0.06%以上となるように、接続光ファイバF1の先端から光ファイバ把持部の固定端Pまでの距離Lと、接続光ファイバF1の突出量ΔLが設定される。この場合、第1実施形態と異なり、接続光ファイバF1の先端から光ファイバ把持部の固定端Pまでの部分には、裸ファイバ部と被覆付きファイバ部が混在するが、接続先とPC接続する際には被覆材料のヤング率はガラスのヤング率と比較して極めて小さいので無視できる。
【0044】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、第2実施形態では、被覆除去部材210及びファイバガイド部材211をフェルール201に内蔵するようにしたが、被覆除去部材210及びファイバガイド部材211をベース部材202に載置して固定するようにしてもよい。この場合、被覆除去部材210及びファイバガイド部材211は、ベース部材202とは別の部材としてもよいし、ベース部材202と一体的に成型してもよい。
【0045】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0046】
10 光コネクタ
101 フェルール
101a 細孔
102 ベース部材
102a 鍔部
102b ファイバ固定溝(小径用溝)
102c ファイバ固定溝(大径用溝)
103 ファイバ押え部材
104 ファイバ押え部材
105 クランプ部材
106 フレーム
107 コイルばね
108 ストップリング
109 スライダ
F1 接続光ファイバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの一端側を保持するフェルールと、
前記フェルールから延出する前記光ファイバを保持・固定する光ファイバ把持部と、を備え、
前記光ファイバが前記フェルールの先端から所定の突出量ΔLだけ突出した状態で前記光ファイバ把持部により固定され、
接続先と前記光ファイバが接続される際に、前記光ファイバが前記フェルール端面まで押圧され、当該光ファイバの先端から前記光ファイバ把持部の固定端までの間で撓むことなく弾性変形することを特徴とする光コネクタ。
【請求項2】
前記光ファイバの先端から前記光ファイバ把持部の固定端までの距離をLとしたとき、前記光ファイバが弾性変形したときの歪ΔL/Lが0.06%以上であることを特徴とする請求項1に記載の光コネクタ。
【請求項3】
前記突出量ΔLが10μm以上30μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光コネクタ。
【請求項4】
前記光ファイバと前記接続先とがPC接続することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の光コネクタ。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の光コネクタの組立方法であって、
前記光ファイバの一端側を前記フェルールに挿通し、前記フェルールの先端から前記突出量ΔLより長く突出させる工程と、
前記光ファイバの先端に位置決め部材を当接させて前記光ファイバを撓ませながら押し戻す工程と、
前記光ファイバの突出量が前記突出量ΔLとなった時点で、前記光ファイバ把持部により前記光ファイバを固定する工程と、を備えることを特徴とする光コネクタの組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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