説明

光コネクタ接続キット

【課題】作業時にアダプタモジュールの上段と下段との間の光ファイバの隙間を拡張できるようにする。
【解決手段】複数のアダプタ2aを一列に配列したアダプタモジュール2を少なくとも2段以上配列した状態で支持構造物例えばトレー6に搭載して多数の光ファイバ3を光コネクタ接続可能とする光コネクタ接続キットにおいて、アダプタモジュール2の前方に配置され横一列に並ぶアダプタ2aに接続される光ファイバ3が掛けられる棒状のハンガー部4aを有するファイバハンガー4を備え、ファイバハンガー4はアダプタモジュール2よりも前方に突出して支持構造物たるトレー6に回転自在に支持される基端部4bを中心にアダプタ2aに沿って水平な先端側のハンガー部4aを上方に跳ね上げ可能にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構内外での光コネクタ接続に用いられる光コネクタ接続キットに関する。さらに詳述すると、本発明は、光コネクタ接続に用いられるアダプタモジュールを上下あるいは左右に多段に集積した高密度配線状態で光コネクタ接続を行う光コネクタ接続キットに関するものである。尚、本明細書において光ファイバとは、特に断りがない限り、光コネクタ接続される全ての光ファイバ、例えば光ファイバ心線や光ファィバコードなどを総称するものとして使用している。
【背景技術】
【0002】
現在の通信系統において用いられている光成端架や構内キャビネットにおいては、アダプタモジュールに各々接続された光ファイバのキンクなどを避けるため、光接続処理を行うトレイの下に1トレイ分(1ユニット分)の空間を使って光ファイバを引き回すだけのコード配線トレイを用意するようにしている。
【0003】
また、光配線盤においては、配線トレイの代わりに、上下の成端ユニット・成端箱の前方でかつ間に成端ユニットから引き出された光ファイバを載せる配線ダクトが備えられることもある(特許文献1)。この場合、光ファイバは、一旦下に垂らされてからラックの横に引き回すための配線ダクトに載せられ、ラックの横に引き回されてからラックの側方の引っかけ部に引っ掛けられて他の設備などに導くように設けられている。
【0004】
一方、近年の通信用光ケーブルの普及により、増大する光コネクタ接続に対処するため構内外での光コネクタ接続の高密度化が要求されている。例えば、光成端架や構内キャビネットなどにおける光接続処理においても、あるいは局内に配置された光分岐接続装置、光接続箱、光配線架などにおける光ファイバの分岐においても、光接続処理用の光コネクタの薄型化とアダプタモジュールの高密度化が求められている。このため、光接続処理用のアダプタモジュールと光コネクタとを薄型化してトレイなどの筐体に収納した薄板状のパッケージ・光接続箱とするだけでなく、それらを架台などに隙間無く多段に並べて配設することが望まれる。例えば、線路側光ファイバと伝送装置側光ファイバとを切替可能に接続する光配線盤などにおいては、配線箱を薄型化して光ファイバの配線の高密度化を達成しようとする場合には、多数のアダプタを隙間無く密に配列させたアダプタモジュールを2段以上重ねて配置する接続箱の採用や、あるいは接続箱を薄型にして密に多段に重ねることが考えられる。
【0005】
【特許文献1】特開2003−222731
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、局内設備の小型化並びに高密度化のために、薄板状のパッケージとして架台に多数並べて配設するようにした光配線架としても、1つの配線ダクトの上に2段分の多数の光ファイバが載せられて引き回されると、光ファイバの輻輳を招いて光ファイバ同士の絡み合いを引き起こしたり、上段に属する光ファイバと下段に属する光ファイバとの間での線の特定を難しくする問題がある。つまり、各光ファイバを区分けするためにタグなどがつけられていても、輻輳する線の間に埋もれて対応するタグの識別とそれを判読することは難しいという問題を有している。
【0007】
加えて、接続関係の切替あるいは接続された光ファイバの交換などの切替作業や、新規光ファイバの追加工事などにおいて、狭い空間に高密度で配置されているアダプタモジュールとそれから引き出される多数の光ファイバとが輻輳した状態では、間違って他の光ファイバを取り外したり、切替えたり、さらには傷つけて遮断する事故を招く虞がある。
【0008】
また、複雑に絡み合う光ファイバを選り分けながら目的とするアダプタと光ファイバとを探し出すことは作業性を著しく悪化させる問題がある。しかも、1人の作業員が多数の光ファイバを選り分けた状態を維持しながら作業を進めることは、作業能率を著しく悪化させ、引いては作業ミスを惹き起こす恐れがある。特に、多数のアダプタを隙間無く密に配列させたアダプタモジュールを2段以上重ねて配置する接続箱の場合には、左右(横)だけでなく上下にも隙間ができないため、一層作業性などが悪化する問題がある。
【0009】
さらに、光コネクタの薄型化とアダプタモジュールの高密度化により光コネクタ接続の高密度化を図っても、上のコネクタと下のコネクタとの間隔が近すぎると、全て配線されたときにコネクタや接続関係が見えない問題がある。しかも、回線を表示する様々な札(タグ)が配線ダクトや配線トレイの上に重なって煩雑となるため、互いに邪魔となって見づらいという問題がある。
【0010】
そこで本発明は、作業時にはアダプタモジュールの上段と下段との間の隙間を拡張できる光コネクタ接続キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するため、本発明は、複数のアダプタを一列に配列したアダプタモジュールを少なくとも2段以上配列した状態で支持構造物に搭載して多数の光ファイバを光コネクタ接続可能とする光コネクタ接続キットにおいて、アダプタモジュールの前方に配置され横一列に並ぶアダプタに接続される光ファイバが掛けられる棒状のハンガー部を有するファイバハンガーを備え、ファイバハンガーはアダプタモジュールよりも前方に突出して支持構造物に回転自在に支持される基端部を中心にアダプタに沿って水平な先端側のハンガー部を上方に跳ね上げ可能にしている。
【0012】
ここで、本発明の光コネクタ接続キットは、多数のアダプタを並べて構成されるアダプタモジュールを上下あるいは左右に多段に集積させて高密度配線しようとするものに対しその支持形態や装置構成には関係なく適用可能であり、例えばラックに対し引き出し可能なトレイに搭載したり、あるいはラックに固定されたトレイに搭載したり、構内キャビネット内に若しくはラックやキャビネットを用いずにトレイ自体を多段に重ねて互いに連結することにより集積したものであっても実施可能である。また、アダプタモジュールは1つの最小単位の支持構造物例えばトレイ・光接続箱に対して少なくとも2段以上配列しても良いし、それよりも大きな単位の支持構造物例えば多数のトレイ・光接続箱をラック等に搭載した光配線架などにおいて1段ずつ搭載したトレイを多段配置することによって全体として少なくとも2段以上配列した状態を構成するようにしても良い。また、ファイバハンガーは対応するアダプタモジュール毎あるいは横に集積された多段のアダプタモジュールを横一列に連ねるアダプタの並び毎に配置すれば足りる。
【0013】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の光コネクタ接続キットにおいて、ファイバハンガーが上方へ跳ね上げられたときにファイバハンガーを支持構造物に固定する係止手段を有することが好ましい。
【0014】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の光コネクタ接続キットにおいて、ファイバハンガーのハンガー部から横に引き回された光ファイバを把持するファイバクランプをハンガー部と横並びに支持構造物に備えるものであることが好ましい。
【0015】
また、請求項4記載の発明にかかる本発明の光コネクタ接続キットは、支持構造物がラックに対して出入り自在に設けられるトレイであり、その上にアダプタモジュールが少なくとも2段配置されると共に上下に積み重ねられたアダプタモジュールとアダプタモジュールとの間あるいは横方向に重ねられた複数のアダプタモジュールを横断するアダプタの列と列の間にハンガー部が配置されるようにファイバハンガーが少なくとも1つ搭載され、かつファイバハンガーが上方へ跳ね上げられたときに該ファイバハンガーをトレイに固定する係止手段を少なくとも1つ備え、作業対象となるトレイがラックから引き出された状態で作業対象となるアダプタモジュールあるいはアダプタ列の上のアダプタモジュールあるいはアダプタ列に接続された光ファイバを掛けるファイバハンガーを上方へ跳ね上げて作業対象となるアダプタモジュールあるいは複数のアダプタモジュールを横断するアダプタ列に接続されたコネクタ並びに光ファイバを露出させて作業空間を形成するものであることが好ましい。 また、この光コネクタ接続キットの場合、トレイの先端にファイバハンガーに掛けられて横に引き回された光ファイバをファイバハンガーの側方で把持するファイバクランプを備えることが好ましい。
【0016】
また、請求項6記載の発明にかかる光コネクタ接続キットは、支持構造物がラックに対して固定される複数のトレイあるいは互いに連結固定される複数のトレイであり、その上にアダプタモジュールが1段配置されると共にトレイまたはラックのいずれかにファイバハンガーとファイバハンガーが上方へ跳ね上げられたときに該ファイバハンガーをトレイまたはラックのいずれかに固定する係止手段とを備え、作業対象となるトレイの上のトレイのファイバハンガーを上方へ跳ね上げて作業対象となるアダプタモジュールとこれに接続されたコネクタ並びに光ファイバを露出させて作業空間を形成するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の光コネクタ接続キットによれば、ファイバハンガーを跳ね上げることにより、上段のアダプタモジュールと下段のアダプタモジュールとの間あるいは横方向に重ねられた複数のアダプタモジュールを横断するアダプタの列と列の間に隙間を空けて下段のアダプタモジュールあるいはアダプタの列のコネクタを露出することができるので、光ファイバ心線の切替作業などを容易なものとできる。しかも、跳ね上げられたファイバハンガーによって、上側のアダプタモジュールあるいはアダプタの列と下側のアダプタモジュールあるいはアダプタの列との区分け並びにそれらに接続されたコネクタと光ファイバとの識別ができると共に心線同士の輻輳あるいは絡み合いを整理できるため、目的とするアダプタに接続された光ファイバの特定を容易にする。勿論、各光ファイバを区分けするタグなどの識別とその判読も容易となる。これらにより、作業性が著しく向上する。
【0018】
さらに請求項2記載の光コネクタ接続キットによれば、ファイバハンガーを係止手段を乗り越える高さまでファイバハンガーを跳ね上げたときには、ファイバハンガーから手を離しても係止手段の位置に保持することができるので、一人で作業するときに便利である。
【0019】
さらに請求項3記載の光コネクタ接続キットによれば、ファイバハンガーに掛けられて横に引き回された光ファイバを横並びに支持構造物に備えられたファイバクランプで把持するようにしているので、光接続処理を行うトレイの下にトレイの1ユニット分の空間を使って用意していたコード配線トレイが不要となるので、その分だけ高密度化が可能となる。しかも、配線トレイの代わりに左右(横)にコードを引き回して固定するので、光ファイバの輻輳が少なく煩雑とならないし、光ファイバ心線の損傷を招くことなく作業を容易なものとできる。
【0020】
さらに請求項4記載の光コネクタ接続キットによれば、配線作業をするときには、トレイをラックから引き出すことによりアダプタモジュール並びにファイバハンガーをラックの外に引き出し他のアダプタモジュールと離隔させると共に上下の空間に他のアダプタモジュールや光接続箱が存在しない所でファイバハンガーの跳ね上げを行うことができるので、上段のアダプタモジュールあるいはアダプタの列と下段のアダプタモジュールあるいはアダプタの列との間の隙間を小さくして設備の高密度化を図りながらも、他のトレイの光ファイバに妨げられることなく跳ね上げ量を大きくできるので、上段のアダプタモジュールあるいはアダプタの列と下段のアダプタモジュールあるいはアダプタの列との間に手や工具を挿入できる十分な隙間を空けて下段のアダプタモジュールあるいはアダプタの列のコネクタを露出することができ、光ファイバの切替作業などを一層容易なものとできる。
【0021】
さらに請求項5記載の光コネクタ接続キットによれば、トレイの先端にファイバクランプを備えてファイバハンガーに掛けられて横に引き回された光ファイバを把持するようにしているので、トレイの出し入れに拘わらず光ファイバの固定位置とアダプタとの位置関係が変更されない。したがって、ファイバクランプからアダプタまでの光ファイバの長さを最小限のものとできるので、光ファイバの垂れ下がり量を少なくすることができる。したがって、下の段のアダプタモジュールあるいはアダプタの列の前に垂れ下がる光ファイバの長さを少なくし、光ファイバの輻輳を少なくして煩雑とならないにできる。
【0022】
さらに請求項6記載の光コネクタ接続キットによれば、作業対象となるトレイの上のトレイの光ファイバをファイバハンガーの跳ね上げにより持ち上げて作業対象となるアダプタモジュールとこれに接続されたコネクタ並びに光ファイバを露出させて作業空間を形成することができるので、上段のアダプタモジュールと下段のアダプタモジュールとの間の隙間を小さくして設備の高密度化を図りながらも、上段のアダプタモジュールと下段のアダプタモジュールとの間に手や工具を挿入できる十分な隙間を空けて下段のアダプタモジュールのコネクタを露出することができ、光ファイバの切替作業などを一層容易なものとできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1〜図7に本発明の光コネクタ接続キットをラック搭載型の接続箱に適用した実施の一形態を示す。この光コネクタ接続キットは、複数のアダプタを一列に配列したアダプタモジュールを少なくとも2段以上多段配列した状態で支持構造物に搭載して多数の光ファイバを光コネクタ接続可能とするものである。本実施形態の場合、アダプタモジュール2の前方(ラック26内の光接続箱1に向かって手前側)で横一列に並ぶアダプタ2aに接続された光ファイバ3が掛けられる棒状のファイバハンガー4と、このファイバハンガー4を上方に跳ね上げた状態で保持するための係止手段5とをトレイ6に備えている。
【0025】
接続箱1は、アダプタモジュール2並びにその他の必要な装備を搭載するトレイ6と、該トレイ6を摺動可能に支持する基体7と、該基体7をラック26に取り付けるための取付板8とから構成されている。基体7とその上に載置されるトレイ6とは互いに連結されておらず、自重による摩擦でトレイ6が基体7上の任意の位置で係止する構造となっている。この基体7とトレイ6とは、図5に示すように、両側が内向きに折れ曲がっている基体7の両側縁の立ち上がり部分(本明細書では側壁と呼ぶ)7aに、外向きに両側が折れ曲がっているトレイ6の両側縁の立ち上がり部分(本明細書では側壁と呼ぶ)6aが互いに対向するようにかみ合わされて保持されている。
【0026】
基体7の側壁7aの前方側には、トレイ6の抜け落ちを防止するためのストッパピン9が内側に向けて突出するように備えられ、該ストッパピン9とトレイ6の抜けだし方向において係合する舌片状のストッパ片10がトレイ6の側壁6aの後端に備えられている。したがって、トレイ6の後端のストッパ片10がストッパピン9に到達するまで、トレイ6を手前側(ラック前方)へ引き出すことができる。尚、ストッパ片10はトレイ6の側壁6aの後端を外側に折り曲げることで一体的に形成されているが、別部材で構成されたストッパ片をビス止めやかしめ、接着などで固着するようにしても良い。
【0027】
また、基体7の先端縁部に沿って収納状態にあるトレイ6の固定を図る機構が備えられている。本実施形態の場合、基体7の先端縁に沿って係止用孔11(あるいは凹部)が設けられ、その係止用孔11に係合する係止用突起12がトレイ6の先端縁に沿って設けられている。具体的には、基体7の先端縁の両端に形成されている2箇所の係止用孔11と、トレイ6の両端に先端縁の両端に形成されている2箇所の係止用突起12とが備えられ、基体7の係止用孔11にトレイ6の係止用突起12が嵌入することによりトレイ7の前後方向への移動が阻止されるように設けられている。トレイ6の係止用突起12は、トレイ引き出し方向に向けて基体7の下に沈み込むように傾斜しており、先端縁が基体7の前縁部に当接することによってトレイ6の飛び出しを防ぐように設けられている。
【0028】
トレイ6には、アダプタ2aを固定するアダプタ保持プレート13と、トレイ後方から導入された光ファイバ(図示省略)とアダプタに接続されるコネクタ付き光ファイバ(図示省略)とを融着させた光ファイバのスリーブ(図示省略)を固定するスリーブホルダー14と、アダプタ保持プレート13からスリーブホルダー14の上方を覆う一部開閉可能なカバー(図示省略)を支えるガイドプレート15と、収容する光ファイバを固定するクランプ17を備えると共に、ケーブルの余長部を収納する空間を適宜形成している。本実施形態のアダプタ保持プレート13は、50個ずつのデュプレックス型コネクタ27を横一列に上下に接続可能とする多数のアダプタ2aを装着するアダプタ挿入口13aを備えており、2組のアダプタモジュール2u,2dを上下に配置して合計100心の光ファイバの光接続を可能とするものである。尚、横一列に多数のアダプタ2aを配置して成る2段のアダプタモジュール2(2u,2d)は、図示していないが、基体7の後端のケーブル引き入れ/引き出し口から導入あるいは引き出される光ファイバと融着された光ファイバのコネクタが接続されている。
【0029】
尚、光ファイバを固定するクランプ17は、弾力的に光ファイバを挟持して固定するものであり、例えば樹脂ばね構造のとフックとを利用して開閉可能としたものであり、弾力性に富む発泡性ゴム板を内張りしたものである。
【0030】
基体7の後端のケーブル引き入れ/引き出し口には、光ファィバ(図示省略)を支える樹脂板製の光ファイバ弾性支持シート18が取り付けられている。この光ファイバ弾性支持シート18は、光ファイバにかかる力で撓むことによって垂れ下がる光ファイバに過度な曲げが生じてキンクするのを防ぐものである。本実施形態の光ファイバ弾性支持シート18は、先端側に向かうほど撓みやすくして光ファイバのキンクに対処できるようにするため、適宜孔18bをあけて撓み易くしている。さらに、光ファイバ弾性支持シート18は、その前端の両端にケーブル引き出し方向に突出する突起18aを備え、載置された光ファイバの幅方向への移動を規制して、当該シート18の上から光ファイバが滑落するのを防ぐようにしている。
【0031】
トレイ6には、ファイバハンガー4が揺動自在に備えられている。ファイバハンガー4は、上側のアダプタモジュール2uと下側のアダプタモジュール2dとの間にハンガー部4aが水平に姿勢を保つように配置されており、上側のアダプタモジュール2uに接続されるコネクタ27の光ファイバ3uと下側のアダプタモジュール2dに接続される光ファイバ3dとを分離するためのものである。本実施形態におけるファイバハンガー4は、断面円形の棒材の両端を90°内側に折り曲げてアーム部分4cを形成すると共にその折り曲げたアーム部分4cの端部をさらに90°外側に折り曲げて光ファイバ3uを掛けるハンガー部4aと平行な回転軸部4bを一体に形成したものである。ファイバハンガー4は、両端の回転軸部4bをトレイ6の側壁6aの孔6bに差し込むことにより、孔6bを中心にアーム部分4cを回転可能に設け、アダプタモジュールよりも前方に突出している先端側のハンガー部4aを上方に跳ね上げ可能に設けられている。また、ファイバハンガー4は、トレイ6の側壁6aに設けられている係止用突起25に当接することによって、それよりも下へ移動することが妨げられ、ハンガー部4cがほぼ水平に姿勢が保たれている。本実施形態の場合、係止用突起25は例えばトレイ6の側壁6aを内側へ切り起こすことによって簡易に形成されているが、場合によってはビスやリベットなどを用いることによって形成しても良い。ここで、棒状のファイバハンガー4の場合、光ファイバをマジックテープ(登録商標)などの把持部材を利用して直接クランプできるので、回線を表示する様々な札(タグ)が1つの平面上に重なって煩雑となることがない。
【0032】
トレイ6の側壁6aの前端側にはファイバハンガー4が上方へ跳ね上げられたときにその位置にファイバハンガー4を固定する係止手段5が備えられている。係止手段5は例えば板ばね材料で構成されており、ファイバハンガー4を止めたい位置に屈曲したばね部5aが位置するように取り付けられている。係止手段5は、板ばね材料を曲げ加工することでへの字形に屈曲したばね部5aを備え、トレイ6の側壁6aにビス止めされている。したがって、ファイバハンガー4が跳ね上げられる際に、屈曲したばね部5aを弾性変形させながら通過することによってばね部5aよりも上へファイバハンガー4が持ち上げられる。この状態で作業者がファイバハンガー4を放すと、自重や光ファイバの重さで軸部4bを中心に下向きにファイバハンガー4が回転して落下するが、ばね部5aに引っかかってその位置に止まる。そして、さらにファイバハンガー4を押し下げる強い外力が付加されたときには、係止手段5のばね部5aが弾性変形してファイバハンガー4の通過を許容するため、ファイバハンガー4が水平位置まで重力落下して初期位置に復帰する。なお、本実施例では係止手段5を弾性変形し易い板ばね材料で形成して、剛性を必要とするトレイ6に対してビス止めにより固定するようにしているが、必ずしも係止手段5を弾性部材で形成することはなく、例えば、トレイ6の側壁6aを切り起こして側壁6aの内側へ突出させた切り起こし(図示省略)でファイバハンガー4を支えるようにしても良い。この場合、トレイと同材質の切り起こしは剛性が高いため、ファイバハンガー4を通過させる際にファイバハンガー4側をトレイ6の側壁6aから離れる方向に弾性変形させることにより切りおこし部(図示省略)を通過させるようにしても良い。ファイバハンガー4側の弾性変形によりファイバハンガー4の跳ね上げを許容し、ファイバハンガー4が自由落下するときにはトレイ側壁6aからの切り起こしによる係止手段に引っかかり、それより下への降下を妨げる。
【0033】
また、トレイ6の側壁6aの先端にはアダプタモジュール2の前面からラックの支柱側の側方に引き回された光ケーブルを束ねて固定・支持するファイバクランプ19が備えられている。このファイバクランプ19は、例えばコの字形の樹脂板から成る樹脂ばね構造を呈する支持体19aと、該本体19aの内側に配置されて光ファイバを挟みつけて固定する弾力性に富む発泡性ゴム板19bとで構成され、コの字形の本体19aの開口端側が自由に開閉できる構造となっているため、上下のゴム板19bの間にファイバを引き込むことでゴム板19bの間で弾力的にファイバを挟みつけるように挟持するように設けられている。このファイバクランプ19は、図示していないがトレイの両側壁の前端にそれぞれ装備されており、この場合には配線を左右に2分することができので、ファイバの輻輳を一層緩和できる。しかしながら、ファイバクランプ19は必ずしも左右に装備されなくとも良く、場合によってはいずれか一方の側壁に設けるようにしても良い。本実施形態の場合、ファイバクランプ19は後付でトレイ6に着脱自在に固定される構造とされている。即ち、L形を成す支持金具20の端部にL形の係止片21を設けると共にコーナ寄りの位置に着脱可能な固定具例えばナイラッチ(登録商標)を備え、係止片21をトレイ6の側壁6aの係止用孔23に通して引っ掛けた状態でトレイ側壁6aの固定用孔24にナイラッチ(登録商標)22を挿入して固定するように設けられている。ナイラッチ(登録商標)を挿入して22は、径方向に弾性変形可能なグロメットとその内方に形成されている貫通孔に挿入されるプランジャーとの組み合わせから成る固定具であり、固定用孔24にグロメット部分を挿入してからプランジャを押し込むことで拡径して孔24に係合させるものである。因みに、このナイラッチ(登録商標)と類似する商品としてニフラッチ((株)ニフコの登録商標)などもある。
【0034】
さらにファイバクランプ19はトレイ6の先端に装備してトレイ6と共に移動するようにしても良いが、場合によっては固定された部材例えばラック26に取り付けるようにしても良い。いずれにしてもファイバハンガー4に掛けられて横に引き回された光ファイバをアダプタモジュールの側方で把持するために、横に引き回されたファイバの下への垂れ下がりを防ぐことができる。また、横に引き回された光ファイバをトレイ6の側端あるいはラック26上で把持して固定するため、トレイ6を引き出すときに光ファイバが突っ張ったり、キンクする恐れがなくなる。
【0035】
以上のように構成された光コネクタ接続キットにおいて、光ファイバ3の接続を切り替えたり、新規配線を増設したりする場合には、まず、作業対象となるトレイ6の先端を基体7から僅かに持ち上げて係止用突起12を基体7の係止用孔11より外してから手前側に引き出す。このとき、トレイ6は自重による摩擦でラック26に取り付けられた基体7に固定されているので、持ち上げれば容易に移動させ得る。そして、任意の位置で手を離すと、そこで停止・固定させられる。このため、作業時に地震などが起きても、一挙にトレイ6が飛び出す恐れがなく、安全に作業が実施できる。
【0036】
多段の光接続箱1の中から任意のユニットの光ファイバの接続を切り替える場合には、コネクタ27を抜き差ししようとするアダプタモジュールの直ぐ上のファイバハンガー4を跳ね上げて作業対象となるアダプタモジュールの上のアダプタモジュールに接続された全ての光ファイバを持ち上げる。そして、作業対象となるアダプタモジュールの前に作業空間を形成して上との干渉をなくし、手や工具が入るようにする。この状態でファイバハンガー4を係止手段5のばね部5aに引っ掛けてその位置に固定してから必要な作業を行う。
【0037】
ここで、アダプタ2aに接続したコネクタ27の光ファイバ3の引き回しは、ファイバハンガー4よりも上のアダプタ2aに接続されているコネクタ27のファイバ3uはファイバハンガー4の上に載せ、下のファイバ3dはファイバハンガー4の下を潜らせる。そして、例えばトレイ6の中央よりも右半分に位置する光ファイバを右端のファイバクランプ19側へ引き回してクランプさせ、左半分に位置する光ファイバを左端のファイバクランプ19側へ引き回してクランプさせ、ラックの横にケーブルを引き回す。
【0038】
そして、作業が完了すると、ファイバハンガー4を係止手段5のばね部5aを乗り越えさせて引き下げ、元位置に戻して水平に保持する。その後、トレイ6を基体7内に押し込んでラック26内に収納させる。トレイ6は係止用突起12の前後方向の傾斜面を利用して、自ら基体7に対して浮上してから係止用孔11に落ち込み所定位置にセットされる。
【0039】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば本実施形態では、支持構造物がラックに対して出入り自在に設けられたトレイであって1つのトレイ6に上下2列のアダプタモジュール2u,2dを搭載した光成端箱1をラック26に多段に収納した光先端架を例に挙げて主に説明したが、これに特に限られるものではない。本発明は、アダプタモジュールを支持構造物に少なくとも2段以上搭載して多数の光ファイバを光コネクタ接続可能とする構造において有用であり、それは1つのトレイに複数のアダプタモジュールを搭載する場合のみならず、1列のアダプタモジュールを搭載したトレイ・光成端箱をラック等に多段に搭載して全体としてアダプタモジュールを少なくとも2段以上配列した状態の支持構造物とした成端架あるいはその他の光接続架や構内キャビネットなどにおいて適用する場合も含まれる。即ち、本発明は、一列のアダプタモジュールを搭載したトレイ・光接続箱を多段に集積した成端架においても、上のユニット(光接続箱)の配線で下のユニット(光接続箱)のコネクタ27などが隠れるため、多段の中の仕切りとして、ユニットとユニットとの間にファイバハンガー4並びに係止手段5を備えるケースもある。1段のアダプタモジュールを搭載するユニット・光接続箱でも、下のユニットとの間が高密度化により狭くなってくると、接続されたコネクタ27・アダプタ2aのモジュールの位置よりも下に配置されるファイバハンガー4が光ファイバ3を跳ね上げることにより、下のユニットとの分離が可能となり、より光接続の高密度化が可能となる。この場合には、図示していないが、便宜のため図1〜図7を援用して説明すれば、例えばトレイ6毎に1列のアダプタモジュール2とファイバハンガー4及び係止手段5を備え、作業をしようとする光成端箱の上の成端箱のファイバハンガーを跳ね上げることにより、作業対象となるトレイに搭載されているアダプタモジュールやコネクタ、光ファイバを露出させて作業空間を確保する。このように1トレイ1モジュールとする場合には、ファイバハンガー4及び係止手段5は、トレイ6に設けずにラック26に装備するようにしても良い。勿論、1つのトレイに3段以上のアダプタモジュールを搭載するようにしても良い。この場合には、各段のアダプタモジュールの間にそれぞれファイバハンガー4と係止手段5を備えることが好ましい。
【0040】
また、本発明の光コネクタ接続キットは、必ずしもラックに対して出入り自在に設けられたトレイにアダプタモジュールを搭載する場合のみならず、ラックに固定される複数のトレイのそれぞれにアダプタモジュールを搭載する場合や、ラックやキャビネットという支持構造物を使わずにトレー自体を多段に集積して互いに連結することによって1つの光接続装置を構成することもある。この場合には、ファイバハンガー4や係止手段5を取り付ける支持構造物としては、トレーそのものだけで成立する。つまり、本発明は、ファイバハンガー4及び必要あれば係止手段5を搭載したトレイ・光接続箱1によってのみ成立し、これを多段に集積させることによって成端架とすることも可能である。
【0041】
また、本実施形態では光成端架に適用した例を対象に説明したが、一列に配置されている複数のアダプタをトレイあるいはその他の筐体に搭載して薄板状のパッケージとして上下方向にあるいは左右方向に多数並べて配設するようにしたあらゆる光配線装置類において実施可能である。即ち、構内外での光コネクタ接続処理例えば光成端架や、光配線架、構内キャビネットなどにおける光コネクタの薄型化とアダプタモジュールの高密度化において有益である。つまり、本発明は、一旦下に光ファイバ線を垂らしてから横に(振る)もってくる構造の配線を伴うあらゆる光接続機器に対して適用可能である。
【0042】
また、本発明は、多数のアダプタを並べて構成されるアダプタモジュールを上下あるいは左右に多段に集積させて高密度配線しようとするものに対しその支持形態や装置構成には関係なく適用可能であり、例えば特開2003−222731の光配線盤のように、多数のアダプタを縦に並べた縦型のアダプタモジュールを左右(横)方向に多数並べた高密度配線状態の光配線装置にも適用可能であり、この場合には横並びのアダプタモジュールを水平に横切るファイバハンガーを横一列に連なるアダプタの並び毎に配置することによって、ファイバハンガーよりも上側のアダプタの列と下側のアダプタの列との間でそれぞれ接続されている光ファイバの区分け・整理を可能としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の光コネクタ接続キットを成端箱に適用した一実施形態を示す左斜め前方から見た斜視図である。
【図2】同成端箱の右斜め前方から見た斜視図である。
【図3】同成端箱のファイバハンガーの支持構造を部分的に拡大して示す左斜め前方から見た斜視図である。
【図4】同成端箱のファイバハンガーの反対側の支持構造を部分的に拡大して示す左斜め前方から見た斜視図である。
【図5】同成端箱の側部の一方を横断面図で、他方を正面図として示すトレイの支持構造の概略説明図である。
【図6】同成端箱のファイバハンガーを持ち上げた状態を部分的に拡大して示す左斜め前方から見た斜視図である。
【図7】同成端箱の右斜め前方から見た拡大部分斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
1 光接続箱
2 アダプタモジュール
2a アダプタ
2u 上段のアダプタモジュール
2d 下段のアダプタモジュール
3 光ファイバ
3u 上段の光ファイバ
3d 下段の光ファイバ
4 ファイバハンガー
4a ハンガー部
4b 回転軸部
4c アーム部分
5 係止手段
5a ばね部
6 トレイ
7 基体
19 ファイバクランプ
26 ラック
27 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアダプタを一列に配列したアダプタモジュールを少なくとも2段以上配列した状態で支持構造物に搭載して多数の光ファイバを光コネクタ接続可能とする光コネクタ接続キットにおいて、前記アダプタモジュールの前方に配置され横一列に並ぶ前記アダプタに接続される前記光ファイバが掛けられる棒状のハンガー部を有するファイバハンガーを備え、前記ファイバハンガーは前記アダプタモジュールよりも前方に突出して前記支持構造物に回転自在に支持される基端部を中心に前記アダプタに沿って水平な先端側の前記ハンガー部を上方に跳ね上げ可能なものである光コネクタ接続キット。
【請求項2】
前記ファイバハンガーが上方へ跳ね上げられたときに前記ファイバハンガーを前記支持構造物に固定する係止手段を有する請求項1記載の光コネクタ接続キット。
【請求項3】
前記ファイバハンガーの前記ハンガー部から横に引き回された光ファイバを把持するファイバクランプを前記ハンガー部と横並びに前記支持構造物に備えるものである請求項1または2記載の光コネクタ接続キット。
【請求項4】
前記支持構造物はラックに対して出入り自在に設けられるトレイであり、その上に前記アダプタモジュールが少なくとも2段配置されると共に上下に積み重ねられた前記アダプタモジュールとアダプタモジュールとの間あるいは横方向に重ねられた複数の前記アダプタモジュールを横断する前記アダプタの列と列の間に前記ハンガー部が配置されるように前記ファイバハンガーが少なくとも1つ搭載され、かつ前記ファイバハンガーが上方へ跳ね上げられたときに該ファイバハンガーを前記トレイに固定する係止手段を少なくとも1つ備え、作業対象となるトレイが前記ラックから引き出された状態で作業対象となるアダプタモジュールあるいはアダプタ列の上のアダプタモジュールあるいはアダプタ列に接続された光ファイバを掛ける前記ファイバハンガーを上方へ跳ね上げて作業対象となるアダプタモジュールあるいは複数のアダプタモジュールを横断するアダプタ列に接続されたコネクタ並びに光ファイバを露出させて作業空間を形成するものである請求項1記載の光コネクタ接続キット。
【請求項5】
前記トレイの先端に前記ファイバハンガーに掛けられて横に引き回された前記光ファイバを前記ファイバハンガーの側方で把持するファイバクランプを備えるものである請求項4記載の光コネクタ接続キット。
【請求項6】
前記支持構造物はラックに対して固定される複数のトレイあるいは互いに連結固定される複数のトレイであり、その上に前記アダプタモジュールが1段配置されると共に前記トレイまたはラックのいずれかにファイバハンガーと前記ファイバハンガーが上方へ跳ね上げられたときに該ファイバハンガーを前記トレイまたは前記ラックのいずれかに固定する係止手段とを備え、作業対象となるトレイの上のトレイの前記ファイバハンガーを上方へ跳ね上げて作業対象となるアダプタモジュールとこれに接続されたコネクタ並びに光ファイバを露出させて作業空間を形成するものである請求項1記載の光コネクタ接続キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−115962(P2009−115962A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287356(P2007−287356)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(591236172)株式会社ハタ研削 (20)
【出願人】(503320061)株式会社エネルギア・コミュニケーションズ (92)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】