説明

光コネクタ

【課題】光コネクタを組み立てた光ドロップケーブルや光インドアケーブルの保守時において、光ファイバの心線特定を短時間で実施できるようにする。
【解決手段】スリーブ状のハウジング2内に、内蔵光ファイバ33の一部を内挿固定したフェルール3と、フェルール3から突出した内蔵光ファイバ33の突出部分、及び、内蔵光ファイバ33の突出部分に突き合わせ接続された光ファイバ13aを半割り構造の一対の素子41,42に挟み込むと共に、一対の素子41,42に装着されたスリーブ状のスリーブ状バネ43の弾性力によってクランプ固定するクランプ部4とを設けた光コネクタ1を構成する。そして、一対の素子41,42を可視光が透過可能な透光性材料によって形成し、さらに、素子41,42側からハウジング2側に向かう前記可視光をハウジング2の外方に放光させるようにハウジング2を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現場組立型の光コネクタに関し、特に光ファイバ内蔵型の光コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの先端部への組立作業を接続現場にて行うことが可能な光コネクタとしては、例えば特許文献1のように、フェルールに予め内蔵光ファイバを内挿固定したものがある。この種の光コネクタは、成端すべき光ファイバの先端部をフェルール後端から突出する内蔵光ファイバの端部に突き合わせ接続し、この突き合わせ部分を含む光ファイバ及び内蔵光ファイバの端部をクランプ部によりクランプすることで突き合わせ接続状態を維持するように構成されている。これらフェルール及びクランプ部は、フェルールの先端が外方に露出するように光コネクタのハウジング内に収容されている。
また、この種の光コネクタのハウジング内には、フェルールとの間にクランプ部が位置するように配されて、光ファイバを引き留める引留部も設けられている。
【0003】
ところで、上述した現場組立型の光コネクタは、現場において光ファイバの長さを設定する必要がある場合、具体的には、例えば架空光通信網に設けられる架空クロージャから、家屋の外壁に設置されるキャビネット内の接続箇所まで引き落とす光ドロップケーブルを布設する場合に使用することが多い。また、この光コネクタは、キャビネット内の接続箇所において光ドロップケーブルにコネクタ接続されて家屋内に引き込む光インドアケーブルを布設する場合にも使用されることがある。
これら光ドロップケーブルや光インドアケーブルの布設工事や保守(点検、撤去、交換)等の種々の光ファイバ施工において、光ファイバに通信光や試験光が導通しているかを確認する必要がある。なお、この導通確認は、例えば架空クロージャ内において多数の光ファイバの中から作業対象の光ファイバを特定する心線特定等を目的として実施することもある。
【0004】
なお、上記導通確認の具体的手法として、特許文献1には、ハウジング内の光ファイバを湾曲させることで、この湾曲部分から漏れる試験光をハウジングに形成された専用の窓部(貫通孔)を通じて目視することが記載されている。この導通確認手法においては、作業者が引留部をクランプ部に近づけるように移動させることで、クランプ部と引留部との間に位置する光ファイバを湾曲させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−033195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光ドロップケーブルや光インドアケーブルの保守時における光ファイバの心線特定に際しては、多数の光コネクタを個別に操作する必要があるため、光ファイバの心線特定を短時間で実施することができない、という問題がある。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、光ファイバの心線特定を短時間で実施することが可能な光コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る光コネクタは、スリーブ状のハウジング内に、内蔵光ファイバの一部を内挿固定したフェルールと、当該フェルールから突出した前記内蔵光ファイバの突出部分、及び、当該内蔵光ファイバの突出部分に突き合わせ接続された別の光ファイバを半割り構造の一対の素子に挟み込むと共に、前記一対の素子に装着されたスリーブ状バネの弾性力によってクランプ固定するクランプ部と、を設けて構成され、少なくとも前記一対の素子の一方が、可視光を透過させる透光性材料によって形成され、前記ハウジングが、一方の素子側から前記ハウジング側に向かう前記可視光を前記ハウジングの外方に放光させるように形成されていることを特徴とする。
【0009】
そして、前記光コネクタにおいては、前記ハウジングの少なくとも一部が、前記透光性材料によって形成されていることが好ましい。
【0010】
さらに、前記光コネクタにおいては、前記ハウジングが、前記フェルールを収容するスリーブ状のプラグフレームと、該プラグフレームの後端に係合して取り付けられると共に前記クランプ部を収容するスリーブ状のストップリングとを備え、前記ストップリングが前記透光性材料によって形成され、前記ストップリングの後端が、前記クランプ部の後端よりも突出していることがより好ましい。
【0011】
また、前記光コネクタにおいては、前記ストップリングの後端には、前記光ファイバを前記ハウジングに引き留める引留機構が連ねて設けられ、当該引留機構の一部が、前記透光性材料によって前記ストップリングと一体に形成されていてもよい。
【0012】
さらに、前記光コネクタにおいては、前記一対の素子の外面に対面する前記スリーブ状バネの内面が、前記可視光を反射させる光反射面をなしていてもよい。
【0013】
また、前記光コネクタにおいては、前記一対の素子の隙間に、屈折率整合剤が充填されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本願発明によれば、光コネクタに取り付けられた光ファイバあるいは内蔵光ファイバに試験光としての可視光を入射すると、可視光が光ファイバと内蔵光ファイバとの突き合わせ部分から透光性材料からなる素子内に漏れ、この漏れ光が透光性材料からなる素子を透過した上で、ハウジングを通過して外方に放光される。
すなわち、光ドロップケーブルや光インドアケーブルの保守時における光ファイバの心線特定に際しては、従来のように光ファイバを湾曲させなくても、試験光を放光する光コネクタを目視により探すだけで、特定の光ファイバを簡単に探し出すことができる。したがって、光ファイバの心線特定を短時間で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る光コネクタの一実施形態を示す横断面図である。
【図2】図1の光コネクタに内蔵されているクランプ部付きフェルールを示す斜視図である。
【図3】図2のクランプ部付きフェルールのクランプ部を構成する各素子の合わせ面を示す図である。
【図4】図1の光コネクタのハウジングの外観を示す平面図である。
【図5】図1の光コネクタにおいて、クランプ部に楔部材を挿入した状態を示す断面図である。
【図6】図1の光コネクタにおいて、クランプ部から楔部材を引き抜いた後の状態を示す断面図である。
【図7】図1の光コネクタの引留機構を示す斜視図である。
【図8】図1の光コネクタの引留機構を示す縦断面図である。
【図9】図1の光コネクタに適用可能な光ファイバケーブルの一例を示す斜視図である。
【図10】図6のクランプ部の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る光コネクタの一実施形態を、図1〜9に基づいて説明する。なお、以下の説明において、フェルールの先端方向(図1において左側方向)を前方といい、後端方向(図1において右側方向)を後方ということがある。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の光コネクタ1は、光ファイバケーブル11の先端に組み立てることができる。
光ファイバケーブル11としては、図9に例示するように、断面略矩形のものを用いることができる。ここに例示する光ファイバケーブル11は、光ファイバ裸線13aを樹脂コーティングしてなる被覆光ファイバ13(光ファイバ心線、光ファイバ素線)と、抗張力体15とを樹脂被覆材17(以下、外被17と呼ぶ。)によって一括被覆することで構成されている。また、図示例においては、光ファイバケーブル11の先端部から被覆光ファイバ13が口出しされている。また、被覆光ファイバ13の先端部からは光ファイバ裸線13aが口出しされている。
【0018】
なお、図示例の光ファイバケーブル11では、その上面17aから下面17bに至る高さ寸法H1が、側面17c,17c間の幅寸法W1よりも小さく設定されているが、幅寸法W1と同等、あるいは、幅寸法W1よりも大きくなるように設定されてもよい。また、図示例では、被覆光ファイバ13が単心の光ファイバ心線をなしているが、これに限ることは無い。
さらに、光ファイバケーブル11の外皮17の上面17a及び下面17bには、引き裂き用のノッチ17dが形成されていてもよい。このノッチ17dを利用することで、光ファイバケーブル11の先端部から被覆光ファイバ13を容易に口出しすることができる。
以下の説明においては、これら光ファイバケーブル11や、被覆光ファイバ13、光ファイバ裸線13aのことを単に光ファイバと称することがある。
【0019】
図1に示すように、光コネクタ1は、スリーブ状のハウジング2と、ハウジング2内に設けられたフェルール3及びクランプ部4と、ハウジング2に対してフェルール3及びクランプ部4を前方に付勢するコイルスプリング5(付勢手段)と、ハウジング2の後方側に連ねて設けられて光ファイバケーブル11をハウジング2に引き留める引留機構6とを備えている。
ハウジング2は、フェルール3の軸回りの回転を規制するようにフェルール3を収容するスリーブ状のプラグフレーム21と、プラグフレーム21の後端に係合して取り付けられ、クランプ部4を収容するスリーブ状のストップリング22とを備えている。すなわち、プラグフレーム21及びストップリング22は、光コネクタ1の前端側から後方に向けて順番に配列されている。
プラグフレーム21の両側部には、コネクタ接続等の際にプラグフレーム21を挿入するアダプタ、ソケット、レセプタクル等の受けハウジング(不図示)に係止するためのラッチ23が形成されている。また、ストップリング22の周壁部には、図4〜6に示すように、その径方向に貫通する孔が楔部材19を差し込む差込口25として形成されている。
【0020】
図1〜3に示すように、フェルール3は、先端に接続端面31aを有する円筒状のキャピラリ部31と、キャピラリ部31の後端部に設けられたフランジ部32とを備えている。
キャピラリ部31にはその中心軸線方向に延びる微細孔34が形成され、この微細孔34に内蔵光ファイバ33の先端部が内挿固定されるようになっている。なお、図示例における内蔵光ファイバ33は、光ファイバケーブル11の光ファイバ裸線13aに相当するものとして記載されているが、例えば光ファイバ心線、光ファイバ素線等であってもよい。また、以下の説明においては、内蔵光ファイバ33のことを単に光ファイバと称することがある。
【0021】
クランプ部4は、接続端面31aの反対側に位置するフェルール3の後端側に配置されており、フェルール3のフランジ部32から光コネクタ1の後端側へ向かって延びる延出部41に複数の部材を組み付けて構成されている。以下、クランプ部4が組み立てられているフェルール3を、「クランプ部付きフェルール7」と称して説明する場合がある。
クランプ部付きフェルール7のクランプ部4は、スリーブ状のストップリング22に対してその軸方向に移動自在としてストップリング22内に収容されている。なお、この収容状態においては、ストップリングの後端がクランプ部の後端よりも後方に突出している。
【0022】
クランプ部4は、前述した延出部41(以下、ベース側素子41とも呼ぶ。)と、延出部41の合わせ面44a上に配置された蓋側素子42と、これらベース側素子41及び蓋側素子42の外面に装着された断面コ字形のスリーブ状バネ43(コ字形バネ)とを備えた構造になっている。なお、蓋側素子42は、延出部41の合わせ面44a全体に対面するように一つだけ設けられてもよいが、ここでは図示例のように、光コネクタ1の前後方向に配列された二つの蓋側素子42A,42Bとして説明する。
【0023】
延出部41は、クランプ部4を構成する半割り構造の素子の一方(以下、素子41と称する場合もある。)をなしており、二つの蓋側素子42A,42Bは、クランプ部4を構成する半割り構造の素子の他方(以下、素子42と称する場合もある。)を構成している。すなわち、クランプ部4は、一対の素子41,42の間に光ファイバを挟み込んで、スリーブ状バネ43の弾性力によって光ファイバをクランプ固定する構造を呈している。なお、二つの蓋側素子42A,42Bは、一方の蓋側素子42Aが他方の蓋側素子42Bよりもフェルール3側に位置するように配列されている。
【0024】
スリーブ状バネ43は、その軸方向中央部に形成されたスリット43aによって光コネクタ1の前後方向に2分されている。スリット43aは、二つの蓋側素子42A,42B間の隙間付近に位置合わせされているため、スリット43aの両側に位置するスリーブ状バネ43の各部分は、スリーブ状バネ43の弾性力を二つの蓋側素子42A,42Bに別個に作用させる独立したバネとして機能するようになっている。したがって、一方の蓋側素子42Aと延出部41の組、他方の蓋側素子42Bと延出部41の組は、それぞれ独立したクランプ部4としても機能し得る。
なお、スリーブ状バネ43の形状は、断面コ字形に限らず、断面C形のものなど、各種採用可能である。
このスリーブ状バネ43を一対の素子41,42に装着した状態においては、図2及び図6に示すように、スリーブ状バネ43の周方向の両端間の開口に、クランプ部4の長手方向(光コネクタ1の前後方向)にわたって延びる一対の素子41,42間の隙間及びその両側に位置する一対の素子41,42の各外面の一部が露出している。また、図1,2に示すように、一対の素子41,42の後方側の端面が、スリーブ状バネ43の後端側の開口から外方に露出している。
【0025】
コイルスプリング5は、クランプ部4の後端をストップリング22の後端部に対して光コネクタ1の先端方向に押圧することで、クランプ部付きフェルール7全体を光コネクタ1の先端側に付勢するものである。このコイルスプリング5は、例えば、光コネクタ1を別の光コネクタ(不図示)と接続する際に、フェルール3を相手側の光コネクタに突き合わせる力を付与する役割を果たす。
なお、フェルール3のフランジ部32が、コイルスプリング5の付勢力によってハウジング2内に突設されたプラグフレーム21のストッパ部24に当接している状態においては、クランプ部付きフェルール7が、ストップリング22に対して光コネクタ1の先端側に移動しないように規制されている。
【0026】
以上のように構成されるクランプ部付きフェルール7において、フェルール3に内挿固定された内蔵光ファイバ33の後端部33aは、図1,3,6に示すように、フェルール3の後端から突出して、クランプ部4の一対の素子41,42(図示例では、延出部41及び一方の蓋側素子42A)の間に挿入されている。さらに、内蔵光ファイバ33の後端部は、クランプ部4の一対の素子41,42の一方又は両方の合わせ面44a,44b,44c(図示例では、延出部41の合わせ面44aのみ)に形成された調心溝45に収納されて精密に位置決め調心される。
なお、図5,6においては、調心溝45がV溝とされているが、例えば、U溝、丸溝(断面半円形の溝)等の任意の形状とされていてよい。
【0027】
また、図1,3に示すように、クランプ部4には、その後端部側から一対の素子41,42(延出部41及び他方の蓋側素子42B)の間に挿入される外部光ファイバ13の先端部(図示例では、光ファイバ裸線13a)を調心溝45に導く導入溝46a,46bが形成されている。導入溝46a,46bは、調心溝45よりもクランプ部4の後端側にずれた位置において、一対の素子41,42の一方又は両方の合わせ面(図示例では、延出部41及び他方の蓋側素子42Bの両方の合わせ面44a,44c)に形成されている。また、導入溝46a,46bは、クランプ部4の後端部に開口しており、この開口部分からフェルール3側に向けて延びるように形成されている。そして、延出部41の導入溝46aのフェルール3側の端部は調心溝45に連なっている。
なお、図示例における一対の導入溝46a,46bは、同一形状に形成され、一対の素子41,42(延出部41及び他方の蓋側素子42B)を重ねた状態において互いに丁度対面するようになっている。
【0028】
図1,7,8に示すように、引留機構6は、本体部61と、光ファイバケーブル11を保持する光ファイバ保持体62(把持部材)と、光ファイバ保持体62を引き留める引留カバー63(引留手段)とを備えている。そして、引留機構6の一部をなす本体部61は、同一材料によってストップリング22の後端に一体に形成され、光コネクタ1の前後方向に延びる長板状の底板64と、その両側縁に立設された一対の側板65とを備えている。
光ファイバ保持体62は、光ファイバケーブル11やその一部(図示例では外部光ファイバ13)を挿入可能な筒状に形成されており、例えばその全体が樹脂成形されたヒンジ開閉式の狭持片によって光ファイバケーブル11の被覆を把持するように構成されている。なお、図示例における光ファイバ保持体62の内面は、図9に示す光ファイバケーブル11の断面外形に対応するように断面略矩形に形成されている。
【0029】
そして、図8に示すように、光ファイバ保持体62の互いに対向する一対の内面の前端側には、それぞれ光ファイバケーブル11の被覆17の前端が突き当てられるストッパ突起66が形成されている。なお、これら一対のストッパ突起66,66の隙間は、光ファイバケーブル11の外部光ファイバ13を挿通できる程度の大きさに設定されている。
一方、光ファイバ保持体62の一対の内面の後端側には、それぞれ光ファイバケーブル11の上面17a及び下面17bを押圧して保持する保持突起67が複数(図示例では3つずつ)形成されている。各内面に形成された複数の保持突起67は、光コネクタ1の前後方向に互いに間隔を空けて配列されている。また、各保持突起67は、光コネクタ1の前後方向に直交する各内面の幅方向にわたって形成されているため、光ファイバケーブル11の幅方向にわたって上面17a及び下面17bに当接することができる。
なお、光ファイバ保持体62のうち、上述した一対の内面に隣り合って光ファイバケーブル11の側面17cに当接する他の内面は、平坦に形成されている(図1参照)。
【0030】
図7,8に示すように、引留カバー63は、天板68と、天板68の両側縁に設けられた一対の側板69とを備えている。また、引留カバー63は、両側板69の長手方向一端部に形成された軸部70においてストップリング22に対して回動自在に取り付けられ、開位置(図8における二点鎖線位置)と閉位置(図8における実線位置)との間で回動可能となっている。さらに、引留カバー63は、光ファイバ保持体62が本体部61の底板64上に配された状態で、閉位置まで回動させることで光ファイバ保持体62を収納できる。そして、閉位置では、引留カバー63の長手方向他端部に形成された引留用突起71によって、光ファイバ保持体62の後方移動が規制される。
【0031】
以上のように構成された光コネクタ1においては、ハウジング2のストップリング22、フェルール3のフランジ部32、クランプ部4を構成する一対の素子41,42、引留機構6の本体部61がそれぞれ可視光を透過させる透光性材料によって形成されている。なお、具体的な透光性材料としては、例えばポリエーテルイミド(PEI)等の樹脂材料が挙げられる。
また、ハウジング2のプラグフレーム21、フェルール3のキャピラリ部31、引留機構6の光ファイバ保持体62及び引留カバー63が、例えば黒色等に色づけされて可視光を透過させない不透明材料によって形成されている。なお、具体的な不透明材料としては、例えばポリエーテルイミド等の樹脂材料が挙げられる。
そして、クランプ部4を構成するスリーブ状バネ43は、例えばSUS等の金属材料からなり、一対の素子41,42の外面に対面するスリーブ状バネ43の内面が、少なくとも可視光を反射する光反射面を呈している。
【0032】
以上のように構成された光コネクタ1を光ファイバケーブル11に組み立てる場合には、予め光ファイバケーブル11の先端部から被覆光ファイバ13を口出しし、また、例えば被覆光ファイバ13の先端部から光ファイバ裸線13aを口出しした状態で、光ファイバ保持体62を光ファイバケーブル11の先端部に取り付ける。次いで、引留カバー63を開位置に配した状態で、光ファイバ保持体62が本体部61の底板64上に配されるように、光ファイバ裸線13aが露出されている先端を、ストップリング22の後端部の開口部22aから一対の素子41,42間に挿入する。
【0033】
この挿入に際しては、図1,5に示すように、予めストップリング22の差込口25から楔部材19を差し込んだ上で、スリーブ状バネ43の弾性力に抗するように楔部材19を一対の素子41,42の間に圧入しておく。これにより、一対の素子41,42間が開放されて、一対の素子41,42間への外部光ファイバ13や光ファイバ裸線13aの挿入が可能となる。この状態において、外部光ファイバ13の先端(図示例では、光ファイバ裸線13a)が内蔵光ファイバ33の後端部33aに対して突き合わせ接続されるように、外部光ファイバを一対の素子間に挿入すればよい。なお、図1における符号8は、光ファイバ裸線13aと内蔵光ファイバ33との突き合わせ部分を示している。その後、図6に示すように、一対の素子41,42間から楔部材19を引き抜く。この際には、スリーブ状バネ43の弾性力によって一対の素子41,42間が閉じられて、一対の素子41,42間に挟み込まれた外部光ファイバ13の先端及び内蔵光ファイバ33がクランプ固定されることになる。
最後に、引留カバー63を閉位置に配して光ファイバ保持体62の移動を規制することで、光ファイバケーブル11に対する光コネクタ1の組み立てが完了する。
【0034】
次に、以上のように光コネクタ1に光ファイバケーブル11を取り付けた状態において、光ファイバケーブル11の導通確認を行う方法の一例について説明する。
光ファイバケーブル11の導通確認を行う場合には、光コネクタ1に取り付けられた光ファイバケーブル11の先端部の反対側に位置する光ファイバケーブル11の端部側から試験光としての可視光(例えば赤い光)を入射すればよい。この際、光ファイバケーブル11の光ファイバ裸線13aに支障が無ければ、入射された可視光が光ファイバ裸線13aと内蔵光ファイバ33との突き合わせ部分8から一対の素子41,42内に漏れ光として漏れる。そして、この漏れ光が一対の素子41,42内を透過した上で、ハウジング2のストップリング22を通過して光コネクタ1の外方に放光される。
【0035】
なお、本実施形態の光コネクタ1において、一対の素子41,42内から光コネクタ1の外方に至る漏れ光の経路には、例えば以下の二種類が挙げられる。
一つ目の経路は、図1,8に示すように、一対の素子41,42内に漏れた漏れ光が、一対の素子41,42内をクランプ部4の長手方向に透過してクランプ部4の後端から後方に出射する経路C1である。この場合、漏れ光は、クランプ部4よりも後方に位置するストップリング22内、あるいはこれに加えて引留機構6の本体部61を透過した後に、光コネクタの外方に放光できるため、不透明材料であるプラグフレーム21の後端側から離れた位置において前記漏れ光を視認することが可能となる。
【0036】
より詳細に説明すれば、プラグフレーム21が本実施形態のように可視光を通さない不透明材料によって形成されている場合、あるいは、プラグフレーム21が例えば透光性材料によって形成されていても、コネクタ接続等によりアダプタ、ソケット、レセプタクル等の受けハウジング内に入り込む場合には、プラグフレーム21によって覆われたストップリング22部分を目視できないことがあるが、ストップリング22の一部がクランプ部4の後端よりも突出していることで、上述した経路C1によって漏れ光を容易に目視することが可能となる。
また、クランプ部4の後端から出射する漏れ光は、ストップリング22の外面から放光するだけでなく、ストップリング22の後端に連ねて形成された引留機構6の本体部61内を透過して本体部61の外面からも放光できるため、漏れ光が光コネクタ1の外面のより広い範囲において発光しているように視認できる。
【0037】
二つ目の経路は、図6,8に示すように、一対の素子41,42内に漏れた漏れ光が、一対の素子41,42内を光ファイバの径方向外側に透過することでクランプ部4の側部から外方に出射する経路C2である。
より具体的に説明すれば、この経路C2では、漏れ光がクランプ部4の長手方向にわたって延びるスリーブ状バネ43の周方向の両端間の開口を介してクランプ部4の外側に出射された後、例えば、ストップリング22の差込口25を介して外方に放光することができる。また、漏れ光は、例えば、スリーブ状バネ43の周方向の両端間の開口やスリーブ状バネ43のスリット43aを介してクランプ部4の外側に出射された後、ストップリング22内を透過して外方に放光することもできる。
そして、漏れ光が上述した二つの経路C1,C2のいずれを通って放光される場合でも、漏れ光が一対の素子41,42内を透過する際には、スリーブ状バネ43の内面に到達しても吸収されること無く反射するため、一対の素子41,42内を透過する漏れ光の光量が減衰することを抑制して、より明るい漏れ光を光コネクタ1の外方に放光することができる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の光コネクタ1によれば、光ファイバ裸線13aと内蔵光ファイバ33との突き合わせ部分から一対の素子41,42内に漏れる可視光(漏れ光)を、光コネクタ1の外方まで導くことができる。このため、例えば光ドロップケーブルや光インドアケーブルをなす光ファイバケーブル11の保守時における光ファイバ(光ファイバケーブル11)の心線特定に際しては、従来のように光コネクタ内の光ファイバを湾曲させなくても、試験光を放光する光コネクタ1を目視により探すだけで、特定の光ファイバを簡単に探し出すことができる。したがって、光ファイバの心線特定を短時間で実施することができる。
【0039】
また、ハウジング2の一部をなすストップリング22が透光性材料によって形成されていることで、素子内からハウジング2側に向けて放光された可視光がハウジング2内を透過できるため、ハウジング2内から外方に放光される可視光の方向が、例えば差込口25の形成位置等のハウジング2の形状によって限定されない。すなわち、ハウジング2の形状に依存することなく、ハウジング2内から外方に向かう所望の方向に可視光を放光できるため、光ファイバケーブル11の導通確認をより短時間で実施することが可能となる。
さらに、上記実施形態の構成では、光コネクタ1の構成部品のうち、一対の素子41,42、及び、ストップリング22のみを透光性材料によって形成し、残りの構成部品は従来と同様に不透明材料により形成することができるため、光コネクタ1の製造コスト削減も図ることができる。
【0040】
また、本実施形態の光コネクタ1を用いれば、上述した光ファイバケーブル11の導通確認だけではなく、例えば光コネクタ1を介して光ファイバケーブル11にコネクタ接続された別個の光ファイバ(例えば、光ファイバケーブル11、光ファイバ心線、光ファイバ素線、光ファイバ裸線等)の導通確認も行うことが可能である。この場合には、別個の光ファイバ側から内蔵光ファイバ33と光ファイバ裸線13aとの突き当て部分に向けて可視光を入射すればよい。
【0041】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば図10に示すように、一対の素子41,42の隙間には、屈折率整合剤81が充填されていてもよい。なお、一対の素子41,42の隙間に充填される屈折率整合剤81の屈折率は、一対の素子41,42とほぼ同じであることがより好ましい。
この構成では、前記隙間が空気(大気)である場合と比較して、透光性材料からなる一対の素子41,42の屈折率との差を無くす、あるいは、差を小さくできる。このため、漏れ光が素子41,42と前記隙間との境界において反射することを抑制して、突き合わせ部分8から一対の素子41,42内に漏れる漏れ光を効率よく光コネクタ1の外方に放光することができる。このことは、例えば経路C1(図1参照)のように、突き合わせ部分8から一対の素子41,42の後端に至るまで、一対の素子41,42内を透過する漏れ光の経路が長い場合に特に有効であり、より明るい漏れ光を光コネクタ1の外方に放光することが可能となる。
なお、図10においては、光ファイバ裸線13aや内蔵光ファイバ33と各素子41,42との隙間(例えば光ファイバ裸線13aや内蔵光ファイバ33と調心溝45との隙間等)にも、屈折率整合剤81が充填されている。
【0042】
さらに、上記実施形態においては、光コネクタ1の構成部品の一部(プラグフレーム21、キャピラリ部31、光ファイバ保持体62及び引留カバー63)が、それぞれ不透明材料によって形成されるとしたが、例えばスリーブ状バネ43を除く前記構成部品の全てが透光性材料によって形成されても構わない。この場合には、可視光が光コネクタの外面のさらに広い範囲において発光しているように視認できる。
【0043】
また、上記実施形態においては、一対の素子41,42が透光性材料によって形成されるとしたが、例えば一対の素子41,42の一方(延出部41、若しくは、二つの蓋側素子42A,42B)を透光性材料によって形成し、他方を不透明材料によって形成しても構わない。また、例えば延出部41及び一方の蓋側素子42Aの一方のみを透光性材料によって形成してもよい。これら場合でも、上記実施形態の場合と同様に、光ファイバ裸線13aと内蔵光ファイバ33との突き合わせ部分8からの漏れ光を、一対の素子41,42の一方に透過させることで外方に放光することができる。
【0044】
さらに、上記実施形態においては、ストップリング22、一対の素子41,42、本体部61の各部材全体が、透光性材料によって形成されるとしたが、少なくとも透光性材料からなるクランプ部4の素子内からハウジング2側に向けて出射された漏れ光がハウジング2内を透過して外方に放光されればよい。すなわち、例えば透光性材料及び不透明材料の両方を用いた二色成形等により、上述した各部材の一部のみを透光性材料によって形成すると共に各部材の残部を不透明材料によって形成してもよい。より具体的に説明すれば、一体に形成されるハウジング2のストップリング22及び引留機構6の本体部61について、例えばストップリング22を透明材料によって形成し、本体部61を不透明材料によって形成してもよい。
このような構成であっても、素子内からハウジング2側に向けて出射された漏れ光がハウジング2内を透過できるため、ハウジング2内から外方に放光される可視光の方向が、例えば差込口25の形成位置等のハウジング2の形状によって限定されない。すなわち、ハウジング2の形状に依存することなく、ハウジング2内から外方に向かう所望の方向に可視光を放光できるため、光ファイバケーブル11の導通確認をより短時間で実施することが可能となる。
【0045】
さらに、上記実施形態のように、ストップリング22に差込口25が形成されている場合には、図6に示すように、素子側からハウジング2側に向かう漏れ光がストップリング22の差込口25を通過してハウジング2の外方に放光できるため、例えばハウジング2全体が不透明材料であっても構わない。ただし、この場合には、ハウジング2から外方に出射する漏れ光の方向がハウジング2の形状(具体的には、ストップリング22の差込口25の形成位置)に依存するため、ストップリング22を透光性材料によって形成することがより好ましい。
【0046】
また、クランプ部4において、内蔵光ファイバ33の後端部33aには、光ファイバケーブル11の光ファイバ裸線13aが突き合わせ接続されるとしたが、例えば光ファイバ心線、光ファイバ素線等の外部光ファイバが突合せ接続されてもよい。
さらに、引留機構6は、光ファイバケーブル11を引き留めることに限らず、例えば外部光ファイバ13を引き留めてもよい。言い換えれば、光ファイバ保持体62は、外部光ファイバ13を挟み込んで保持するように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…光コネクタ、2…ハウジング、3…フェルール、4…クランプ部、6…引留機構、13…外部光ファイバ(光ファイバ)、13a…光ファイバ裸線(光ファイバ)、21…プラグフレーム、22…ストップリング、33…内蔵光ファイバ、41…延出部(素子)、42…蓋側素子(素子)、43…スリーブ状バネ、81…屈折率整合剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリーブ状のハウジング内に、内蔵光ファイバの一部を内挿固定したフェルールと、
当該フェルールから突出した前記内蔵光ファイバの突出部分、及び、当該内蔵光ファイバの突出部分に突き合わせ接続された別の光ファイバを半割り構造の一対の素子に挟み込むと共に、前記一対の素子に装着されたスリーブ状バネの弾性力によってクランプ固定するクランプ部と、を設けて構成され、
少なくとも前記一対の素子の一方が、可視光を透過させる透光性材料によって形成され、
前記ハウジングが、一方の素子側から前記ハウジング側に向かう前記可視光を前記ハウジングの外方に放光させるように形成されていることを特徴とする光コネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングの少なくとも一部が、前記透光性材料によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光コネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングが、前記フェルールを収容するスリーブ状のプラグフレームと、該プラグフレームの後端に係合して取り付けられると共に前記クランプ部を収容するスリーブ状のストップリングとを備え、
前記ストップリングが前記透光性材料によって形成され、
前記ストップリングの後端が、前記クランプ部の後端よりも突出していることを特徴とする請求項2に記載の光コネクタ。
【請求項4】
前記ストップリングの後端には、前記光ファイバを前記ハウジングに引き留める引留機構が連ねて設けられ、
当該引留機構の一部が、前記透光性材料によって前記ストップリングと一体に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の光コネクタ。
【請求項5】
前記一対の素子の外面に対面する前記スリーブ状バネの内面が、前記可視光を反射させる光反射面をなしていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光コネクタ。
【請求項6】
前記一対の素子の隙間に、屈折率整合剤が充填されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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