説明

光スイッチ、光シリアル−パラレル変換器、並列ビット遅延可変・波長変換回路及び光時間スイッチ

【課題】自己保持型とすることで消費電力が少なく、しかも高速でかつ実用性の高い低損失な光スイッチを提供すること。
【解決手段】本発明の光スイッチは、石英基板101、第1、第2入力導波路102a、102b、第1方向性結合器103、マッハツェンダー干渉回路の第1、第2アーム導波路104a、104b、第2方向性結合器105、第1、第2出力導波路106a、106b、及び相変化材料部100からなる。波長0.78ミクロンの制御光(アモルファス→結晶遷移用)パルス(パルス幅20ns、パルス強度5mW)を照射する。制御光パルス照射によって、相変化材料部109は結晶状態に相変化し、光スイッチはバー状態に遷移する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信ネットワークノードにおけるスイッチング処理回路に適用して有効な光スイッチ、光シリアル−パラレル変換器、並列ビット遅延可変・波長変換回路及び光時間スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
図10aは、従来の光スイッチの構成と動作メカニズムを示す図である。この従来の光スイッチは、入力導波路102、2×2の第1方向性結合器103、2本の単一モード導波路104、2×2の第2方向性結合器105、及び出力導波路106から構成される。材質は石英である。2本の単一モード導波路104の片側に温度を制御するためのヒータ電極150が具備されている。ヒータ電極150に電流を流して加熱し温度を変化させると、ヒータ電極150近傍の単一モード導波路104bの屈折率が変化する。そのため、単一モード導波路104間の光波に位相差が生じ、2つの出力導波路106に結合する比率が変化する。適切な駆動条件を選べば、ヒータ電極150に流れる電流のオンオフで光路をスイッチングすることが可能である。
【0003】
他に、ニオブ酸リチウム導波路、PLZT導波路、半導体導波路で構成され、これらに印加する電圧を変えてこれらの導波路の屈折率を変化させ、スイッチングを行う光スイッチもある。しかし、これらの光スイッチには自己保持機能がないため、スイッチの状態を維持するために常に電流を流すか常に電圧を印加する必要がある。このため、消費電力が高い欠点を有している。
【0004】
図10bは、フォトクロミック材料を利用して自己保持機能を持つ従来の光スイッチの構成を示す図である。この従来の光スイッチは、石英基板101の上に石英クラッド163を形成し、更にその上に石英コア162を形成し、その石英コア162を覆うクラッドとして一部にフォトクロミッククラッド161を適用する構造をしており、そのフォトクロミック材料により自己保持型の光スイッチを実現している。フォトクロミック材料は、第1の波長の光を照射すると状態1から状態2に、第2の波長の光を照射すると状態2から状態1に変化する材料である。どちらの状態も準安定であるので、これらの状態変化に伴って屈折率が変化するので、フォトクロミック材料を導波路に利用して自己保持型光スイッチを構成することができる(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、分子の配向変化を伴うためスイッチング速度が遅いこと(数秒以上)、及び2つの異なる波長の光がスイッチングに必要であることが欠点である。
【0005】
また、光導波膜の上にカルコゲナイド膜を形成した光スイッチもある(例えば、特許文献1参照)。一般にカルコゲナイド材料は屈折率が3.5〜4.0程度であり最も屈折率が大きい材料系の一つである。このため、光導波膜が半導体又は他のカルコゲナイド材料など同様に大きい屈折率を持つ材料でない場合は、伝搬する光はほとんどカルコゲナイド膜に集中する。例えば、光通信波長帯である波長1.55ミクロンにおいて代表的光導波路材料である石英ガラス、及びポリマーの屈折率は1.45-1.70であり、ニオブ酸リチウムの屈折率は2.2である。このため、伝搬光がカルコゲナイド層に集中することによる伝搬損失及びカルコゲナイド膜のある部分とない部分でのモードフィールド形状の不整合による損失が避けられない。
【0006】
また、光導波路中に溝を形成し、この溝部分にカルコゲナイド膜を形成した光スイッチもある(例えば、特許文献2参照)。この場合は、カルコゲナイド膜でない光導波路部分の屈折率がカルコゲナイドと同程度でない場合に、屈折率不整合による反射が生じ、光回路の特性が劣化する。すなわち、石英ガラス、ポリマー、又は、ニオブ酸リチウム等の酸化物材料による光導波路との組合せでは高性能な光回路を構成することができない。
【特許文献1】特開昭62−295005号公報
【特許文献2】特開平4−304414号公報
【非特許文献1】海老澤他、「自己保持型フォトクロミック高分子搭載マッハツェンダ光スイッチ」,電子情報通信学会技術研究報告,1996年10月,第96巻,第284号,OME96-64
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来の光スイッチは消費電力が少ない自己保持型にすると、高速性に劣ったり、光の伝播損失が大きいために、実用性に欠けていた。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、自己保持型とすることで消費電力が少なく、しかも高速でかつ実用性の高い低損失な光スイッチ、光シリアル−パラレル変換器、並列ビット遅延可変・波長変換回路及び光時間スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光スイッチは、基板と、該基板上に形成されているクラッドと、該クラッドの中に形成され、該クラッドと共に導波路を構成するコアと、前記クラッドの中に前記コアに沿って形成され、光学的厚さが動作波長の1/2以下であり、光照射、電圧印加又は電流注入によって相状態が制御されて前記導波路の屈折率を変化させる相変化材料部とを備える。
【0010】
また、前記相変化材料部は、テトラヘドラル系材料、Ge-Sb-Te系カルコゲナイド系材料、Sb-Te系カルコゲナイド系材料、又は、As2Se3、若しくはAs2S3のカルコゲナイド材料
を含むことが望ましい。
【0011】
また、前記相変化材料部の相変化材料は、10nm〜200nmの直径の粒子、又は、10nm〜200nmの幅の細線からなることで、相転移時間を短縮し高速スイッチを構成することができる。
【0012】
また、光スイッチの構成は、第1入力導波路、第1方向性結合器、2つの単一モードアーム導波路、第2方向性結合器、及び出力導波路がこの順に接続され、前記単一モードアーム導波路の片方又は両方に前記相変化材料部が設けられたマッハツェンダー型、第1入力導波路、第1マルチモード干渉型結合器、2つの単一モードアーム導波路、第2マルチモード干渉型結合器、及び出力導波路がこの順に接続され、前記単一モードアーム導波路の片方又は両方に前記相変化材料部が設けられたマッハツェンダー型、第1入力導波路、Y分岐導波路、及び出力導波路がこの順に接続され、前記Y分岐導波路の片方又は両方に前記相変化材料部が設けられたY分岐型、又は、第1入力導波路、方向性結合器、及び出力導波路がこの順に接続され、前記方向性結合器の片方又は両方に前記相変化材料部が設けられた方向性結合型のいずれかであることが望ましい。
【0013】
また、光スイッチ制御光を前記相変化材料部に導く、第2入力導波路と結合器とを備えることで、制御光導波・照射部も含めた集積化がされるので、光スイッチを小型装置化するのに有効である。
【0014】
また、前記基板に対向して配置され前記相変化材料部を制御する光スイッチ制御光を発光する面型レーザアレイを備えることで、高密度に光源を配置することが可能で、かつ、高速で光パルスを発生することが可能な面型レーザアレイを利用するため、大規模な光スイッチを構成することが可能である。
【0015】
また、本発明の光シリアル−パラレル変換器は、直列に接続されている複数の1入力2出力構成の前記光スイッチと、隣接する該光スイッチ間を接続し、光伝搬時間が光信号のクロック周期に等しい導波路と、前記光スイッチからの各出力導波路として設けられている遅延導波路とを備え、光信号をシリアル−パラレル変換するものである。
【0016】
また、本発明の並列ビット遅延可変・波長変換回路は、並列に接続されている複数の1入力2出力構成の前記光スイッチと、該光スイッチのそれぞれに各々のスイッチ状態を読み出す光パルスを供給する読出パルス光源と前記光スイッチのそれぞれに各々のスイッチ状態をリセットする光パルスを供給するリセットパルス光源とを備える。
【0017】
また、本発明の光時間スイッチは、前記光シリアル−パラレル変換器と、該光シリアル−パラレル変換器の出力光を受ける前記並列ビット遅延可変・波長変換回路と、該並列ビット遅延可変・波長変換回路の出力光を受ける、前記光シリアル−パラレル変換器の入出力を逆にした光パラレル−シリアル変換器と、を備える。
【0018】
また、本発明の光スイッチは、フォトニック結晶導波路と、該フォトニック結晶導波路の光路に沿って形成され、光学的厚さが動作波長の1/2以下であり、光照射、電圧印加又は電流注入によって相状態が制御されて前記フォトニック結晶導波路の屈折率を変化させる相変化材料部とを備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記の通りである。
【0020】
メモリ性のある相変化材料を利用した光スイッチであるため、スイッチの状態を維持するために通電や光照射を維持する必要がない自己保持型動作が可能で低消費電力な光スイッチを構成することができる。メモリ性を活用すれば、スイッチ状態と対応させて光情報を記録することが可能であり、読み出し光の出力位置によって記憶した光情報を読み出すことが可能となる。入出力と制御を光で行う全光型の光メモリが構成可能であり、光通信に有用な可変遅延機能(本光スイッチを通過するのに要する遅延時間を変える機能)、時間スイッチ機能(情報を担う光パルスのタイムスロットを交換する機能)、波長変換機能(入力光の波長と出力光の波長を異ならせる機能)を同時に実現することが可能である。また、カルコゲナイド等の相変化材料は、結晶からアモルファス状態にはナノ秒以下の早さで変化し、アモルファス状態から結晶への変化も数十ナノ秒で行われる。そのため、熱効果型又はフォトクロミック材料を利用した従来スイッチよりも高速なスイッチングが可能である。また、フォトクロミック材料と異なり、単一の波長の光で異なる状態間をスイッチングできる特徴を有するため、単一の光源のパルス光のパルス幅と強度を制御することによってスイッチングが可能である。さらに、高強度の光を利用すれば、多光子吸収によって、制御される信号光として用いられる透明波長帯の光を制御光として用いることも可能である。また、制御光を相変化材料部に照射するために導波路を集積することによって小型化を図ることもできる。また、面型レーザアレイを制御光源として利用することによって、多数の光スイッチを高密度に集積した大規模光スイッチを駆動することも可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【実施の形態1】
【0022】
図1a〜図1jは、本発明の実施の形態1による光スイッチの構成を示す図である。図1aは、その上面図である。本実施の形態1の光スイッチは、石英基板101、第1、第2入力導波路102a、102b、第1方向性結合器103、マッハツェンダー干渉回路の第1、第2アーム導波路104a、104b、第2方向性結合器105、第1、第2出力導波路106a、106b、及び領域としての相変化材料部100からなる。この領域としての相変化材料部100の詳細は以下に示す。
【0023】
図1bは、図1aのAA’における断面図である。この断面における本実施の形態1の光スイッチは、石英基板101、クラッド107、コア108、相変化材料部109、及び封止用樹脂110からなる。封止用樹脂110は、クラッド107と同等の屈折率を有し、相変化材料部109をクラッド107の中に封止すると共にクラッドの一部としても機能するものであり、石英ガラス等樹脂以外の材料が利用できることは言うまでもない。相変化材料部109の厚さは、動作波長/(2×屈折率)以下に設定し、相変化材料部109の層のみで伝搬する導波モードが存在しないようにする。相変化材料として、アモルファスシリコン、アモルファスゲルマニウム、アモルファスガリウムアンチモン、アモルファスガリウムヒ素、アモルファスインジウムセレン、アモルファスガリウムセレンなどのテトラヘドラル系材料、Ge2Sb2Te5、Ge6Sb2Te9等のGe-Sb-Te系カルコゲナイド系材料、Sb-Te系カルコゲナイド系材料、又は、As2Se3、As2S3等のカルコゲナイド材料が好適である。
【0024】
第1、第2方向性結合器103、105は、1:1の分岐比を持つ。相変化材料部109がアモルファス状態にあり、入力光の波長(1.55ミクロン)において第1アーム導波路104a及び第2アーム導波路104bの光学長が等しいと仮定する。このとき、第1入力導波路102aに入力した光は、第2出力導波路106bから出力され、第2入力導波路102bに入力した光は、第1出力導波路106aから出力されるクロス状態にある。このとき、波長0.78ミクロンの制御光(アモルファス→結晶遷移用)パルス(パルス幅20ns、パルス強度5mW)を照射する。相変化材料の状態遷移に対応する屈折率変化量は大きく、0.1程度である。このため、コア108と相変化材料部109の間隔に依存するが、第1アーム導波路104aにおける位相変化をπとするには、相変化材料部109の導波路方向の長さ(又は、照射領域)は、50ミクロン程度でよい。制御光パルス照射によって、相変化材料部109は結晶状態に相変化し、光スイッチはバー状態に遷移する。光ディスクメモリで実用化されているように、本材料の結晶状態の寿命は年単位であり、光スイッチのバー状態は外部からの保持エネルギーなしで長時間維持される。また、波長0.78ミクロンの制御光(結晶→アモルファス遷移用)パルス(パルス幅1ns、パルス強度20mW)を照射すれば、相変化材料部109は再びアモルファス状態に変化し、スイッチはクロス状態に遷移する。このようにして可逆的な自己保持型光スイッチとして動作する。照射パルス幅の最適値は材料組成、材料系の選択により変えることが可能である。また、アモルファスと結晶との明確な境界は定義によって異なる。光スイッチとして動作するためには、十分な屈折率変化が得られれば良く、必ずしもアモルファスと結晶との相変化が必要なわけではない。アモルファス状態〜別のアモルファス状態、結晶性の異なる結晶状態間の変化であっても、照射する光パルスのパルス幅と照射強度を調整し、十分な屈折率変化が得られればよいことは言うまでもない。また、ピコ秒・フェムト秒の超短パルスを利用すれば、吸収係数の小さい長波長帯(透明波長帯)の光を用いても、多光子吸収を利用してスイッチングできることは言うまでもない。
【0025】
図1c−図1gも、図1aのAA’における断面図であるが、別の実施例である。
図1cの構成は、コア側壁近傍にも相変化材料を配置した構成である。
図1dの構成は、コアの斜め上方2カ所に分けて相変化材料を配置した構成である。
図1eの構成は、コアの斜め下方2カ所に分けて相変化材料を配置した構成である。
図1fの構成は、相変化材料部の幅をコア幅よりも狭くした構成である。
図1gの構成は、相変化材料部をコアの側壁近傍のみに配置した構成である。
図1c−図1eの構成では、図1bの構成よりもTM/TE波間の動作特性の差の少ない偏波依存性の少ないスイッチング特性が得られる。
図1f、図1gの構成では、逆にTM/TE波間の動作特性の差の大きい偏波依存性の大きいスイッチング特性が得られる。
図1h、図1iは、図1b及び図1fの上面図である。図1hと図1iは別の実施例を示すが、いずれも相変化材料部109への入出力端で徐々に層幅を変化させて屈折率の不整合を減らすことができる。
【0026】
図1jは、実施の形態1の別の実施例を示す上面図である。本実施例の光スイッチは、光パルスでなく、電気配線111を流れる電流パルスのパルス幅と電流値を制御して駆動する構成である。相変化材料部109の長さを50ミクロン、幅を20ミクロン、厚さを0.2ミクロンとするとき、(アモルファス→結晶遷移用)電流パルス(パルス幅20ns、電流値2mA)、(結晶→アモルファス遷移用)電流パルス(パルス幅1ns、パルス強度30mA)が利用される。
【実施の形態2】
【0027】
図2a〜図2dは、本発明の実施の形態2による光スイッチの構成を示す上面図である。
【0028】
図2aは、相変化材料部を2つのアーム導波路に対称的に配置した構成である。対称的構造であるため、各アーム導波路の伝搬損失を等しくすることが容易であり、光スイッチの消光比を高くすることが可能である。また、両方のアーム導波路に光を照射し、一方をアモルファスから結晶に、もう一方を結晶からアモルファスに変化させ、プッシュプル動作させることも可能である。
【0029】
図2bは、方向性結合器の光結合部分に相変化材料部を設けた構成である。作製精度が要求されるが、反面、小型化に適している。
【0030】
図2cは、Y分岐構造の一部に相変化材料部を設けた構成である。Y分岐型スイッチはいわゆるディジタル型入出力特性を有しているので、スイッチング動作するためには、屈折率変化がしきい値以上であれば大きくても良い。すなわち、制御光パルスのパルス幅とパルス強度に対するトレランスが大きい。他に示したスイッチ構造では、屈折率変化が最適値を超えると、逆に消光比が劣化するので、制御光パルスのパルス幅とパルス強度に対するトレランスが小さい。
【0031】
図2dは、方向性結合器の代わりに多モード干渉型光結合器を用いた構成である。多モード干渉型光結合器130を用いることにより方向性結合器よりも小型化し、作製誤差に対するトレランスも大きい利点がある。
【実施の形態3】
【0032】
図3は、本発明の実施の形態3による光スイッチの構成を示す断面図である。本実施の形態3の光スイッチでは、相変化材料部109を概ね10nm-200nm幅の細線又は、直径10nm-200nmの島状の粒子に加工する。相変化材料部109の相変化特性はその粒径によって大きく変化する。このように微細化することによって、相転移時間を短縮し高速スイッチを構成することができる。
【実施の形態4】
【0033】
図4a〜図4cは、本発明の実施の形態4による光スイッチの構成を示す上面図である。本実施の形態4の光スイッチでは、制御光を石英基板101の外側から照射するのでなく、制御光を導波する導波路112と、相変化材料部100に結合する結合器113を有している。本実施の形態は、制御光導波・照射部も含めた集積化がされるので、光スイッチを小型装置化するのに有効である。
【実施の形態5】
【0034】
図5は、本発明の実施の形態5による光スイッチの構成を示す斜視図である。本実施の形態5の光スイッチは、面型レーザアレイ114、レンズアレイ115、及び光スイッチ116を備える。本実施の形態は、制御光を面型レーザアレイ114から光スイッチ116に照射する。スイッチ規模が大きくなると、制御光を各要素スイッチに照射する光学系や導波路が複雑になり、交差も増えるなどの問題が生じる。本構成では、高密度に光源を配置することが可能で、かつ、高速で光パルスを発生することが可能な面型レーザアレイ114を利用するため、大規模な光スイッチを構成することが可能である。
【実施の形態6】
【0035】
図6a〜図6cは、本発明の実施の形態6による光スイッチの構成及び動作を示す図である。本実施の形態6の光スイッチは、1×2光スイッチ117、及び遅延導波路118を備える。本実施の形態では、N−1個の1×2光スイッチ117を直列に接続し(本実施の形態ではN=4)、1:N光シリアル−パラレル変換器又はN:1光パラレル−シリアル変換器を構成している。時間軸上でNチャネルのビット多重された信号が本1:N光シリアル−パラレル変換器に入射したと仮定する。隣接光スイッチ間の距離は、信号のビット間周期で光が導波路を伝搬する距離に等しく設定されている。そのため、ある瞬間に第2〜第Nビットの光パルスがそれぞれ第1〜第N−1番目の光スイッチに同時に入射する。このタイミングに合わせて各スイッチを駆動し、ビット間周期経過後に、スイッチの状態を元に戻す。このようにして、入射したNチャネルのビット多重された信号は並列に展開される。また、これらのパルスが同時に1:N光シリアル−パラレル変換器から出力されるように、各経路に遅延導波路118が設けてある。これらの動作を分かり易くするためにタイミングチャートを図6b、図6cに示す。図6bは、時間軸上のNチャネルのビット多重された信号、及び光路上のNチャネルのビット多重されたシリアル信号が光スイッチによってパラレル信号に展開される様子を示す。図6cは、時間軸上のオン及びオフ制御光パルスを示す。本変換器は、逆方向から並列光パルスを入射すれば、N:1光パラレル−シリアル変換器として動作することは言うまでもない。また、相変化光スイッチが電流駆動型である場合、電気パルスによって相変化光スイッチを駆動する構成が可能であることは言うまでもない。
【実施の形態7】
【0036】
図7a、図7bは、本発明の実施の形態7による光スイッチの構成及び動作を示す図である。本実施の形態7の光スイッチは、1×2光スイッチ119、波長変換器120、リセットパルス光源121、及び読み出しパルス光源122を備える。本実施の形態では、N−1個の1×2光スイッチ119を並列に接続し、別のリセットパルス光源121、読み出しパルス光源122を組み合わせた並列ビット遅延可変・波長変換回路である。波長変換器120は、並列に入射される1550nmの信号光パルスを、書き込み可能な775nmに波長変換し、1×2光スイッチ119に入射する。これらの信号光パルスによって、1×2光スイッチ119は「0」状態から「1」状態に遷移する。適当なタイミングで照射される制御光としての読み出しパルスは、1×2光スイッチ119が「1」状態であれば、出力される。また「0」状態(入射信号光パルスがないとき)は、出力されない。読み出しパルスのタイミングを調整し、信号光パルスの遅延を制御することが、並列の各ビットに関して可能である。ここで、信号光パルスの情報(パルスの有無)が読み出しパルスに載せ替えられる。また、信号光パルスと同じ波長の読み出しパルスを利用することも可能であるし、異なる波長の読み出しパルスを利用することも可能である。後者の場合は、時間遅延だけでなく波長変換も行われる。もちろん、ビット毎に異なる読み出し波長の光源を利用しても良い。また、入射信号光パルスの強度が十分に強い場合は、相変化材料部109における多光子吸収によって、スイッチングされるので、波長変換は不要であることは言うまでもない。図7bは、そのタイミングチャートを示す。時間軸上における、書き込みパルス、スイッチ状態、リセットパルス、読み出しパルス、及び出力パルスを示す。また、光スイッチが電流駆動型である場合、波長変換の代わりに光電変換回路を利用して電気パルスに変換して相変化光スイッチを駆動する構成が可能であることは言うまでもない。
【実施の形態8】
【0037】
図8は、本発明の実施の形態8による光スイッチの構成を示す図である。本実施の形態8の光スイッチは、実施の形態6と実施の形態7を組み合わせて構成した光時間スイッチである。クロック周波数f0でNビット時間多重された信号を1:Nシリアル−パラレル変換器141で並列に展開し、並列ビット遅延可変回路であるNチャネル光メモリ142で各チャネル間の時間軸上での入れ替えを行い、N:1パラレル−シリアル変換器143によってシリアル信号として出力する。
【実施の形態9】
【0038】
図9は、本発明の実施の形態9による光スイッチの構成を示す上面図である。本実施の形態9の光スイッチは、フォトニック結晶導波路を利用し、光スイッチの小型化を行う構成であり、2次元スラブ型フォトニック結晶123、及び相変化材料部124を備える。フォトニック結晶は、屈折率の異なった2つ以上の材料(一方は空気でも可)が、空間的な対称性・規則性を有して、配置された周期構造を有する材料である。フォトニック結晶では、フォトニックバンドギャップ(PBG)に対応した波長の光は通さないが、その他の波長は透過させることができる。そこで、フォトニック結晶に欠陥を導入すると、欠陥位置で、PBGの波長を有する光でも、フォトニック結晶中で光が存在しえるようになる。この性質を利用して、フォトニック結晶中に線状の欠陥を導入したり、連続的に配置された点欠陥を導入することにより、光の欠陥伝播を利用した光導波路が実現できる。2次元スラブ型フォトニック結晶123は、例えば、Si基板上にSiO2層を設け、その上にSi層を形成し、多数のホール又はピラー(pillar:円柱)を周期的に配置して構成される。相変化材料部124は、Si層上に堆積しても良いし、Si層をエッチングして堆積しても良い。本実施の形態9の構成は、フォトニック結晶によるマッハツェンダー干渉型光スイッチとなっている。
【0039】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1a】本発明の実施の形態1による光スイッチの構成を示す上面図である。
【図1b】本発明の実施の形態1による光スイッチの構成を示す断面図である。
【図1c】本発明の実施の形態1による光スイッチの構成を示す断面図である。
【図1d】本発明の実施の形態1による光スイッチの構成を示す断面図である。
【図1e】本発明の実施の形態1による光スイッチの構成を示す断面図である。
【図1f】本発明の実施の形態1による光スイッチの構成を示す断面図である。
【図1g】本発明の実施の形態1による光スイッチの構成を示す断面図である。
【図1h】本発明の実施の形態1による光スイッチの構成を示す上面図である。
【図1i】本発明の実施の形態1による光スイッチの構成を示す上面図である。
【図1j】本発明の実施の形態1による光スイッチの構成を示す上面図である。
【図2a】本発明の実施の形態2による光スイッチの構成を示す上面図である。
【図2b】本発明の実施の形態2による光スイッチの構成を示す上面図である。
【図2c】本発明の実施の形態2による光スイッチの構成を示す上面図である。
【図2d】本発明の実施の形態2による光スイッチの構成を示す上面図である。
【図3】本発明の実施の形態3による光スイッチの構成を示す断面図である。
【図4a】本発明の実施の形態4による光スイッチの構成を示す上面図である。
【図4b】本発明の実施の形態4による光スイッチの構成を示す上面図である。
【図4c】本発明の実施の形態4による光スイッチの構成を示す上面図である。
【図5】本発明の実施の形態5による光スイッチの構成を示す斜視図である。
【図6a】本発明の実施の形態6による光スイッチの構成を示す図である。
【図6b】本発明の実施の形態6による光スイッチの動作を示す図である。
【図6c】本発明の実施の形態6による光スイッチの動作を示す図である。
【図7a】本発明の実施の形態7による光スイッチの構成を示す図である。
【図7b】本発明の実施の形態7による光スイッチの動作を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態8による光スイッチの構成を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態9による光スイッチの構成を示す上面図である。
【図10a】従来の光スイッチの構成と動作メカニズムを示す図である。
【図10b】フォトクロミック材料を利用して自己保持機能を持つ従来の光スイッチの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
100 相変化材料部
101 石英基板
102 入力導波路
103 第1方向性結合器
104 単一モード導波路
105 第2方向性結合器
106 出力導波路
107 クラッド
108 コア
109 相変化材料部
110 封止用樹脂
111 電気配線
112 導波路
113 結合器
114 面型レーザアレイ
115 レンズアレイ
116 光スイッチ
117 1×2光スイッチ
118 遅延導波路
119 1×2光スイッチ
120 波長変換器
121 リセットパルス光源
122 読み出しパルス光源
123 2次元スラブ型フォトニック結晶
124 相変化材料部
130 多モード干渉型光結合器
141 1:Nシリアル−パラレル変換器
142 Nチャネル光メモリ
143 N:1パラレル−シリアル変換器
150 ヒータ電極
161 フォトクロミッククラッド
162 石英コア
163 石英クラッド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
該基板上に形成されているクラッドと、
該クラッドの中に形成され、該クラッドと共に導波路を構成するコアと、
前記クラッドの中に前記コアに沿って形成され、光学的厚さが動作波長の1/2以下であり、光照射、電圧印加又は電流注入によって相状態が制御されて前記導波路の屈折率を変化させる相変化材料部と
を備えることを特徴とする光スイッチ。
【請求項2】
前記相変化材料部は、
テトラヘドラル系材料、
Ge-Sb-Te系カルコゲナイド系材料、
Sb-Te系カルコゲナイド系材料、又は、
As2Se3、若しくはAs2S3のカルコゲナイド材料
を含むことを特徴とする請求項1記載の光スイッチ。
【請求項3】
前記相変化材料部の相変化材料は、10nm〜200nmの直径の粒子、又は、10nm〜200nmの幅の細線からなることを特徴とする請求項1又は2記載の光スイッチ。
【請求項4】
光スイッチの構成は、
第1入力導波路、第1方向性結合器、2つの単一モードアーム導波路、第2方向性結合器、及び出力導波路がこの順に接続され、前記単一モードアーム導波路の片方又は両方に前記相変化材料部が設けられたマッハツェンダー型、
第1入力導波路、第1マルチモード干渉型結合器、2つの単一モードアーム導波路、第2マルチモード干渉型結合器、及び出力導波路がこの順に接続され、前記単一モードアーム導波路の片方又は両方に前記相変化材料部が設けられたマッハツェンダー型、
第1入力導波路、Y分岐導波路、及び出力導波路がこの順に接続され、前記Y分岐導波路の片方又は両方に前記相変化材料部が設けられたY分岐型、又は、
第1入力導波路、方向性結合器、及び出力導波路がこの順に接続され、前記方向性結合器の片方又は両方に前記相変化材料部が設けられた方向性結合型
のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の光スイッチ。
【請求項5】
光スイッチ制御光を前記相変化材料部に導く、第2入力導波路と結合器とを備えることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の光スイッチ。
【請求項6】
前記基板に対向して配置され前記相変化材料部を制御する光スイッチ制御光を発光する面型レーザアレイを備えることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の光スイッチ。
【請求項7】
直列に接続されている複数の1入力2出力構成の請求項1乃至6いずれかに記載の光スイッチと、
隣接する該光スイッチ間を接続し、光伝搬時間が光信号のクロック周期に等しい導波路と、
前記光スイッチからの各出力導波路として設けられている遅延導波路と
を備え、光信号をシリアル−パラレル変換することを特徴とする光シリアル−パラレル変換器。
【請求項8】
並列に接続されている複数の1入力2出力構成の請求項1乃至6いずれかに記載の光スイッチと、
該光スイッチのそれぞれに各々のスイッチ状態を読み出す光パルスを供給する読出パルス光源と、
前記光スイッチのそれぞれに各々のスイッチ状態をリセットする光パルスを供給するリセットパルス光源と
を備えることを特徴とする並列ビット遅延可変・波長変換回路。
【請求項9】
請求項7記載の光シリアル−パラレル変換器と、
該光シリアル−パラレル変換器の出力光を受ける請求項8記載の並列ビット遅延可変・波長変換回路と、
該並列ビット遅延可変・波長変換回路の出力光を受ける、請求項7記載の光シリアル−パラレル変換器の入出力を逆にした光パラレル−シリアル変換器と
を備えることを特徴とする光時間スイッチ。
【請求項10】
フォトニック結晶導波路と、
該フォトニック結晶導波路の光路に沿って形成され、光学的厚さが動作波長の1/2以下であり、光照射、電圧印加又は電流注入によって相状態が制御されて前記フォトニック結晶導波路の屈折率を変化させる相変化材料部と
を備えることを特徴とする光スイッチ。


【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図1c】
image rotate

【図1d】
image rotate

【図1e】
image rotate

【図1f】
image rotate

【図1g】
image rotate

【図1h】
image rotate

【図1i】
image rotate

【図1j】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図2c】
image rotate

【図2d】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図4c】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6a】
image rotate

【図6b】
image rotate

【図6c】
image rotate

【図7a】
image rotate

【図7b】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10a】
image rotate

【図10b】
image rotate


【公開番号】特開2006−184345(P2006−184345A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−375180(P2004−375180)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】