説明

光センサおよび電子機器

【課題】性能を低下させることなく光センサの小型化を図る。
【解決手段】フォトダイオードPD1は、P基板1上に形成されたN拡散層12の表面(受光面)に、P拡散層(不純物拡散層)からなる抵抗15とN拡散層からなるカソード13とを形成する。この抵抗15は、屈曲したジグザグの帯状に形成されている。この抵抗15により、フォトダイオードPD1を流れる光電流を電圧に変換する。このように、電流−電圧変換用の抵抗15をフォトダイオードPD1上に形成することにより、フォトダイオードPD1を含む光センサを小型化することができる。また、抵抗15の一端を接地することにより、抵抗15を電磁シールドとして機能させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検知や物理量検出を光学的に行なうための受光回路を有する光センサおよびその光センサを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
物体検知に用いられるフォトンタラプタ等の光センサは、装置において、検知対象に向けて必要数配置されている。例えば、複写機では、機内のさまざまな箇所を移動する用紙を検知するため、光センサが数十個と多数使用されている。したがって、装置の小型化や動作の安定化を図るため、小型且つ安価で高性能な光センサが求められる。
【0003】
その解決策として、小型化については、特許文献1に開示されている技術が挙げられる。特許文献1には、フォトダイオードと高利得アンプとを1チップ化した受光ICが開示されている。この受光ICは、サイズを小さくするために、フォトダイオード上に酸化膜を介して透光性のポリシリコンからなる抵抗をアンプの帰還抵抗として形成している。
【0004】
また、高性能化については、特許文献2〜4に開示されている技術が挙げられる。
【0005】
特許文献2には、フォトダイオードの表面領域に形成されたP拡散層(P型不純物)が電磁ノイズを除去する電磁シールドとして機能することが記載されている。また、特許文献2には、上記のP拡散層を設けることにより形成された新たなフォトダイオードと、すでにP基板上に形成されているフォトダイオードとを並列接続することにより、フォトダイオード部の受光電流を増加させることが記載されている。
【0006】
図8は、特許文献1に開示されているフォトダイオードと類似する構造を有するフォトダイオードの断面構造を示している。
【0007】
例えば、図8(a)および(b)に示すように、フォトダイオードPD101は、P基板101上にN拡散層102が形成されることにより構成されている。フォトダイオードPD101において、N拡散層102の周辺部には、カソードを構成するN拡散層103が形成される一方、P基板101におけるN拡散層102の周囲には、アノード104がP拡散層により形成され、接地電位GNDに固定されている。また、フォトダイオードPD101の受光表面となるN拡散層102の上面には、P拡散層からなる電磁シールド105が形成され、GND電位に固定されている。
【0008】
特許文献3には、受光部の表面領域に形成されたP型不純物領域によって電磁ノイズを除去するシールド部が、受光部の表面領域を部分的に覆うように形成されていることが記載されている。これにより、シールド部と受光部との接触に起因して生じる自発ノイズが過度に生じることがなく、光検出感度を向上させることができる。
【0009】
特許文献4には、PN接合を構成する表面側の半導体領域の導伝型(例えばN型)と逆の導伝型の半導体領域(例えばP型不純物)が、フォトダイオードの表面に格子状もしくはストライプ状に形成されていることが記載されている。これにより、フォトダイオードの表面に形成された半導体領域が電磁シールドとして機能する。また、この半導体領域が格子状もしくはストライプ状に形成されることにより、PN接合の面積を縮小することができる。これにより、接合容量の増大を抑制し、S/Nの低下を抑制するので、効果的に電磁シールドを行なうことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5-259498号公報(1993年10月8日公開)
【特許文献2】特開平7−30143号公報(1995年1月31日公開)
【特許文献3】特開平10−303450号公報(1998年11月13日公開)
【特許文献4】特開平9−23023号公報(1997年1月21日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載されたような抵抗を形成するには、拡散工程だけでなく、ポリシリコン抵抗を形成する工程が必要である。しかも、抵抗を透光性のある材料を使って形成したとしても、反射や屈折などによる光量の低下が懸念される。
【0012】
また、フォトダイオード上に抵抗と特許文献2〜4に記載されたような電磁シールドとを形成しようとすると、それぞれが異なる領域に形成されるので、フォトダイオードの面積が大きくならざるを得ない。
【0013】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、性能を低下させることなく光センサの小型化を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る光センサは、上記の課題を解決するために、フォトダイオードと、該フォトダイオードに流れる電流を電圧に変換する抵抗とを備えた光センサにおいて、上記の課題を解決するために、上記電流をn倍(n>1)に増幅して前記抵抗に流す電流増幅手段を備え、上記抵抗が上記フォトダイオード上に形成された不純物拡散層からなり、その一端が接地されていることを特徴としている。
【0015】
上記の構成では、抵抗の一端が接地されていることにより、受光素子として通常アノードが接地されるフォトダイオードと抵抗とが並列となる。これにより、カレントミラー回路等で構成される電流増幅手段を用いて、フォトダイオードに流れる電流がn倍に増幅され、この増幅後の電流が抵抗によって電圧に変換される。それゆえ、電流−電圧変換用の抵抗がフォトダイオードと異なる領域に形成される従来の光センサと比べて、面積を小さくすることができる。また、抵抗は、不純物拡散層(例えばP拡散層)からなるので、光量の低下を招くことがないし、その一端が接地されていることにより、電磁シールドとしても機能する。
【0016】
上記光センサにおいて、上記抵抗は屈曲した形状に形成されていることが好ましい。これにより、抵抗が高抵抗に形成されることから、十分な光信号を得ることができる。
【0017】
上記抵抗が屈曲していることから、その屈曲した部分の不純物拡散層が近接する状態となり、電位反転が生じやすくなる。そこで、屈曲した部分の間をシールドするシールド部が上記フォトダイオード上に形成されていることにより、屈曲した部分の間がシールドされるので、電位反転を防止することができる。
【0018】
また、上記光センサにおいて、上記フォトダイオード上に形成されたP拡散層と上記フォトダイオードにおけるN拡散層からなるカソードとのPN接合により容量が形成されていることが好ましい。このように容量をフォトダイオード上に形成することにより、容量がフォトダイオードと異なる領域に形成される従来の光センサと異なり、光センサの面積を大きくすることなく容量を形成できる。
【0019】
上記抵抗と上記容量とが直列に接続されていることにより、その合成容量が抵抗と並列に接続されることになる。これにより、光センサの周波数特性をコントロールできるだけでなく、ノイズ除去率を調整することができる。
【0020】
本発明に係る電子機器は、上記のいずれかの光センサを備えていることを特徴としている。これにより、回路規模が小さく、且つ高性能の光センサを電子機器に配置することができる。したがって、電子機器における光センサの占有容積を小さくし、且つ電子機器の機能を向上させることができるので、有益である。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、上記のように構成されることにより、回路規模が小さく、且つ高機能の光センサを実現することができるという効果を奏する。また、本発明により、光センサを備える電子機器の大型化の抑制および高機能化を容易に図ることができ、特に、当該光センサを多数備える電子機器においては、その効果が顕著である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態1に係る光センサの受光回路の構成を示す回路図である。
【図2】(a)は上記光センサにおけるフォトダイオード(第1のフォトダイオード)の構造を示す平面図であり、(b)は(a)のB−B線矢視断面図である。
【図3】(a)は上記光センサにおける他のフォトダイオード(第2のフォトダイオード)の構造を示す平面図であり、(b)は(a)のC−C線矢視断面図である。
【図4】本発明の実施形態2に係る光センサの受光回路の構成を示す回路図である。
【図5】本発明の実施形態3に係る光センサの受光回路の構成を示す回路図である。
【図6】(a)は図5の光センサにおけるフォトダイオード(第3のフォトダイオード)の構造を示す平面図であり、(b)は(a)のD−D線矢視断面図である。
【図7】本発明の実施形態4に係る複写機の内部構成を示す正面図である。
【図8】(a)は背景技術に係るフォトダイオードの構造を示す平面図であり、(b)は(a)のA−A線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[実施形態1]
本発明の実施形態1について図1〜図3に基づいて説明すると、以下の通りである。
【0024】
〔光センサの構成〕
図1は、本実施形態の光センサ1の受光回路の構成を示す。
【0025】
光センサ1は、図1に示す受光回路を備えている。光センサ1の受光回路は、フォトダイオードPD1(またはフォトダイオードPD2)、pchMOSトランジスタTr1,Tr2(以降、単にpchトランジスタTr1,Tr2と称する)、nchMOSトランジスタTr3(以降、単にnchトランジスタTr3と称する)、抵抗R0およびコンデンサC1を備えている。
【0026】
なお、光センサ1は、フォトダイオードPD1の代わりにフォトダイオードPD2を備えていてもよい。しかしながら、光センサ1の説明においては、便宜上、フォトダイオードPD1についてのみ記載するものとし、フォトダイオードPD2についての記載は省略する。
【0027】
フォトダイオードPD1は、入射光の強度に応じた光電流を出力電流として発生する。フォトダイオードPD1のアノードは接地電位GNDが付与されるグランドに接続され、カソードはpchトランジスタTr1のドレインに接続される。抵抗R0は、後述するようにフォトダイオードPD1上に形成され、一端がグランドに接続されている。また、抵抗R0にはコンデンサC1が並列に接続されている。コンデンサC1は、動作周波数特性の調整やノイズ除去のために設けられている。
【0028】
pchトランジスタTr1,Tr2のソースは、ともに基準電位Vrefが付与される電源ラインに接続され、ゲートが互いに接続されている。また、pchトランジスタTr1は、ドレインとゲートとが互いに接続されている。さらに、pchトランジスタTr2のドレインは抵抗R0の他端およびnchトランジスタTr3のゲートに接続されているに接続されている。
【0029】
上記のように接続されるpchトランジスタTr1,Tr2は、カレントミラー回路を構成している。pchトランジスタTr1,Tr2のサイズ(チャネル幅)比が1:n(1<n)に設定されていることにより、pchトランジスタTr2には、pchトランジスタTr1に流れる電流I1のn倍の値の電流I2が流れる。
【0030】
nchトランジスタTr3のドレインは電源ラインに接続され、ソースがグランドに接続されている。また、nchトランジスタTr3のドレインから出力電圧Voutが出力される。
【0031】
〔光センサの動作〕
上記のように構成される光センサ1においては、受光時に、微小な電流I1(光電流,フォトダイオード電流)がフォトダイオードPD1に流れる。この微小な電流I1は、pchトランジスタTr1,Tr2からなるカレントミラー回路によりn倍の大きさの電流I2となって抵抗R0に流れ、抵抗R0により電圧に変換されて、nchトランジスタTr3のゲートに入力される。nchトランジスタTr3のゲート電圧がスレッシュホールドレベルを越える電圧値を示す電流I1が流れた時点で、nchトランジスタTr3がONして出力が反転することにより、光検知信号として出力電圧Voutが出力される。
【0032】
上記の光センサ1では、フォトダイオードPD1と抵抗R0とが並列に設けられている。これにより、それぞれにカレントミラー回路を構成するpchトランジスタTr1,Tr2を接続できるので、上記のように電流を増幅することが可能となる。
【0033】
また、フォトダイオードPD1とフォトダイオードPD1上に形成される抵抗R0との間には、寄生フォトダイオードPD0が生じている。この寄生フォトダイオードPD0に流れる電流は、電流I2に合流して、抵抗R0で電圧に変換される電流量を増大させる。したがって、S/Nを上昇させることができ、有益である。
【0034】
〔第1のフォトダイオードの詳細〕
ここで、上記のフォトダイオードPD1について詳細に説明する。
【0035】
図2(a)は、本実施形態のフォトダイオードPD1の平面構造を示し、図2(b)は、図2(a)のB−B線矢視断面構造を示す。
【0036】
図2(a)および(b)に示すように、フォトダイオードPD1は、P基板11上に形成されており、N拡散層12と、カソード13と、アノード14と、抵抗15とを備えている。
【0037】
N拡散層12は、P基板11上に形成されており、P基板11とでPN接合を形成している。N拡散層12の表面(受光面)には、P拡散層からなる抵抗15とN拡散層からなるカソード13とが形成されている。カソード13は、抵抗15を取り囲むように形成されている。
【0038】
P基板11には、P拡散層によりアノード14が形成されている。このアノード14は、N拡散層12を取り囲むように形成されており、電気的には接地電位GNDに固定されている。
【0039】
抵抗15は、光センサ1における抵抗R0を構成しており、P拡散層(不純物拡散層)によってN拡散層12において形成されている。この抵抗15は、屈曲したジグザグの帯状に形成されている。また、抵抗15は、図示はしないが櫛状に形成されていてもよい。
【0040】
上記のように構成されるフォトダイオードPD1では、フォトダイオードPD1上に部分的に形成されたP拡散層によって抵抗15を形成している。このように、P拡散層を回路素子として利用することにより、受光ICとして構成される光センサ1の面積を縮小することができる。具体的には、受光回路を含めて0.5mm角で光センサ1を形成することができる。
【0041】
このように小型化された光センサ1は、1チップで形成することができるので、耐ノイズ性を向上させることができ、有益である。また、抵抗15は、フォトダイオードPD1上にP拡散層により形成されるので、電磁シールドとしても機能する。
【0042】
また、特許文献1でも記載されているように、フォトダイオードに流れる光電流は微小であり、数MΩの抵抗にて電圧変換し、光検知を行なう必要がある。このため、上記のように、フォトダイオードPD1上に形成された抵抗15を電流−電圧変換に用いることにより、抵抗をフォトダイオードと別の領域に形成する構成と比べて、面積効率が非常に向上するので、有益である。しかも、抵抗15は、屈曲した形状により高抵抗に形成されるので、フォトダイオード面積に対する抵抗15の面積比率から、10MΩ程度の抵抗値を有することが可能である。したがって、十分な光信号を得ることができる。
【0043】
但し、抵抗15を形成するP拡散層は、カソード13(N拡散層)の電位より低いことが必要である。これは、前述の寄生フォトダイオードPD0においてフォトダイオードPD1のカソード13へ電流が流れることを防止するためである。また、光入射により、抵抗15とカソード13との間のPN接合において微小の受光電流が流れることに注意して用いる必要がある。これらは、後述する第2のフォトダイオードでも同様である。
【0044】
〔第2のフォトダイオードの詳細〕
続いて、上記の光センサ1に適用できる他のフォトダイオードについて詳細に説明する。
【0045】
図3(a)は、本実施形態のフォトダイオードPD2の平面構造を示し、図3(b)は、図3(a)のC−C線矢視断面構造を示す。
【0046】
図3(a)および(b)に示すように、フォトダイオードPD2は、P基板21上に形成されており、N拡散層22と、カソード23と、アノード24と、抵抗25と、電磁シールド26とを備えている。
【0047】
N拡散層22は、P基板21上に形成されており、P基板21とでPN接合を形成している。N拡散層22の表面(受光面)には、P拡散層からなる抵抗25とN拡散層からなるカソード23とが形成されている。カソード23は、矩形状に形成されるN拡散層22の一辺側の端部に配置されている。
【0048】
P基板21には、P拡散層によりアノード24が形成されている。このアノード24は、N拡散層22を取り囲むように形成されており、電気的には接地電位GNDに固定されている。
【0049】
抵抗25は、光センサ1における抵抗R0を構成しており、P拡散層(不純物拡散層)によってN拡散層22において形成されている。この抵抗25は、前述のフォトダイオードPD1における抵抗15と同様、屈曲したジグザグの帯状に形成されている。
【0050】
電磁シールド26は、P拡散層によってN拡散層22において形成されている。この電磁シールド26は、外周部26aと突出部26b(シールド部)とを有している。外周部26aは、抵抗25の周囲をカソード23が配置されている側を除いた三方で取り囲むようにして帯状に形成されている。突出部26bは、屈曲した抵抗25のコ字状に形成される凹部より内側の領域に、当該凹部と間隔をおいて外周部26aから突出するように帯状に伸びて形成されている。
【0051】
上記のように構成されるフォトダイオードPD2では、フォトダイオードPD2上に部分的に形成されたP拡散層によって抵抗25を形成している。このように、P拡散層を回路素子として利用することにより、受光ICとして構成される光センサ1の面積を縮小することができ、有益である。
【0052】
また、フォトダイオードD2上に形成された抵抗25を電流−電圧変換に用いることにより、フォトダイオードPD1と同様、面積効率が非常に向上するので、有益である。しかも、抵抗25は、屈曲した形状により高抵抗に形成されることから、フォトダイオードPD1と同様、フォトダイオード面積に対し、10MΩ程度の抵抗値を有する形成することが可能である。したがって、十分な光信号を得ることができる。
【0053】
さらに、フォトダイオードD2は、抵抗25の凹部に電磁シールド26の突出部26bが配置されている。これにより、抵抗25の凹部で近接しているP拡散層間で生じる電磁ノイズを突出部26bから外周部26aへ逃がすので、P拡散層間の電位反転の発生を防止することができる。この結果、抵抗25内のチャンネル反転による抵抗値の変動を抑制することが可能となる。
【0054】
[実施形態2]
本発明の実施形態2について図4に基づいて説明すると、以下の通りである。
【0055】
なお、本実施形態において、実施形態1における構成要素と同等の機能を有する構成要素については、同一の符号を付記して、その説明を省略する。
【0056】
〔光センサの構成〕
図4は、本実施形態の光センサ2の受光回路の構成を示す。
【0057】
光センサ2は、図4に示す受光回路を備えている。光センサ2の受光回路は、光センサ1と同様、フォトダイオードPD1(またはフォトダイオードPD2)、抵抗R0、コンデンサC1、pchトランジスタTr1,Tr2およびnchトランジスタTr3を備えている。また、上記の受光回路は、ダミーフォトダイオードPD11、抵抗R10、コンデンサC11、pchMOSトランジスタTr11,Tr12(以降、単にpchトランジスタTr11,Tr12と称する)およびnchMOSトランジスタTr13(以降、単にnchトランジスタTr13と称する)を備えている。さらに、上記の受光回路は差動増幅器21を備えている。
【0058】
なお、フォトダイオードPD1,PD2、抵抗R0、コンデンサC1、pchトランジスタTr1,Tr2およびnchトランジスタTr3については、光センサ1において対応する回路素子と同様に接続される。したがって、ここでは、その接続構成についての説明を省略する。
【0059】
ダミーフォトダイオードPD2は、迷光によるノイズの発生を防止するために、迷光によるノイズ成分を相殺する目的で設けられている。ダミーフォトダイオードPD10のアノードはグランドに接続され、カソードはpchトランジスタTr11のドレインに接続される。抵抗R10は、抵抗R0がフォトダイオードPD1上に形成されるのと同様に、ダミーフォトダイオードPD11上に形成され、一端がグランドに接続されている。また、抵抗R10にはコンデンサC11が並列に接続されている。コンデンサC11は、コンデンサC1と同様、動作周波数特性の調整やノイズ除去のために設けられている。
【0060】
pchトランジスタTr11,Tr12のソースは、ともに電源ラインに接続され、ゲートが互いに接続されている。また、pchトランジスタTr11は、ドレインとゲートとが互いに接続されている。さらに、pchトランジスタTr12のドレインは抵抗R10の他端およびnchトランジスタTr13のゲートに接続されている。nchトランジスタTr13のドレインは電源ラインに接続され、ソースがグランドに接続されている。
【0061】
上記のように接続されるpchトランジスタTr11,Tr12は、カレントミラー回路(電流増幅手段)を構成している。pchトランジスタTr11,Tr12のサイズ(チャネル幅)比が1:n(1<n)に設定されていることにより、pchトランジスタTr12には、pchトランジスタTr11に流れる電流I11のn倍の値の電流I12が流れる。
【0062】
差動増幅器21は、pchMOSトランジスタTr21,Tr22(以降、単にpchトランジスタTr21,Tr22と称する)、抵抗R21〜R23および定電流源CS21,CS22を有している。この差動増幅器21は、nchトランジスタTr3の出力電圧とnchトランジスタTr13の出力電圧との差を増幅して差動出力電圧を出力する。
【0063】
pchトランジスタTr21は、ゲートがnchトランジスタTr3のドレインに接続され、ドレインが抵抗R21を介して接地され、ソースが定電流源CS21を介して電源ラインに接続される。一方、pchトランジスタTr22は、ゲートがnchトランジスタTr13のドレインに接続され、ドレインが抵抗R22を介して接地され、ソースが定電流源CS22を介して電源ラインに接続される。
【0064】
定電流源CS21とpchトランジスタTr21のソースとの接続点、および定電流源CS22とpchトランジスタTr22のソースとの接続点の間には、抵抗R23が接続されている。また、定電流源CS23は、電源ラインとnchトランジスタTr3のドレインとの間に接続され、当該ドレインおよび抵抗R0に定電流を流す。また、定電流源CS24は、電源ラインとnchトランジスタTr13のドレインとの間には接続され、当該ドレインおよび抵抗R10に定電流を流す。
【0065】
上記の差動増幅器において、pchトランジスタTr21,Tr22のゲートがそれぞれ差動入力部となっている。また、抵抗R21とpchトランジスタTr21のドレインとの間から、差動出力電圧として正の値の出力電圧Vout1が出力される。一方、抵抗R22とpchトランジスタTr22のドレインとの間から、差動出力電圧として負の値の出力電圧Vout2が出力される。
【0066】
〔光センサの動作〕
上記のように構成される光センサ2においては、前述の光センサ1と同様に、受光時に、微小な電流I1がフォトダイオードPD1に流れると、カレントミラー回路により流れるn倍の大きさの電流I2が抵抗R0により電圧に変換される。この電圧がnchトランジスタTr3のゲートに入力されることで、nchトランジスタTr3から出力された出力電圧は差動増幅器21のpchトランジスタTr21のゲートに入力される。
【0067】
一方、受光時に、迷光による微小な電流I11がフォトダイオードPD11に流れると、カレントミラー回路により流れるn倍の大きさの電流I12が抵抗R10により電圧に変換される。この電圧がnchトランジスタTr13のゲートに入力されることで、nchトランジスタTr13から出力された出力電圧は差動増幅器21のpchトランジスタTr22のゲートに入力される。
【0068】
差動増幅器21では、pchトランジスタTr21,Tr22の差動トランジスタ対により、2つの入力電圧に対して差動増幅動作が行なわれる。この結果、出力電圧Vout1,Vout2が得られる。
【0069】
上記の光センサ2でも、光センサ1と同様、フォトダイオードPD1と抵抗R0とが並列に設けられている。これにより、それぞれにカレントミラー回路を構成するpchトランジスタTr1,Tr2を接続できるので、上記のように電流を増幅することが可能となる。
【0070】
また、ダミーフォトダイオードPD11とフォトダイオードPD11上に形成される抵抗R10との間には、寄生フォトダイオードPD0と同様な寄生フォトダイオードPD10が生じている。この寄生フォトダイオードPD10に流れる電流も、電流I2と同様に電流I12に合流して、抵抗R10で電圧に変換される電流量を増大させる。したがって、S/Nを上昇させることができる。
【0071】
さらに、光センサ2では、フォトダイオードPD1側の出力電圧とダミーフォトダイオードPD11側の出力電圧との差動増幅を行なうことにより、ノイズ成分を除去することができる。
【0072】
[実施形態3]
本発明の実施形態3について図5,図6に基づいて説明すると、以下の通りである。
【0073】
〔光センサの構成〕
図5は、本実施形態の光センサ3の受光回路の構成を示す。
【0074】
図5に示すように、光センサ3の受光回路は、光センサ1と同様に、pchトランジスタTr1,Tr2、nchトランジスタTr3および抵抗R0を備えているが、フォトダイオードPD1の代わりにフォトダイオードPD3を備えている。また、光センサ3はコンデンサC0を備えている。
【0075】
フォトダイオードPD3も、フォトダイオードPD1と同様、入射光の強度に応じた光電流を出力電流として発生する。フォトダイオードPD3のアノードはグランドに接続され、カソードはpchトランジスタTr1のドレインに接続される。抵抗R0は、後述するようにフォトダイオードPD3上に形成され、一端がグランドに接続されている。
【0076】
pchトランジスタTr1,Tr2は、フォトダイオードPD1におけるpchトランジスタTr1,Tr2と同様に接続されてカレントミラー回路を構成している。したがって、光センサ3においても、pchトランジスタTr1に流れる電流のn倍の値の電流が抵抗R0に流れる。
【0077】
また、コンデンサC0は、一端がpchトランジスタTr1のドレインに接続され、他端がpchトランジスタTr2のドレインに接続されている。このコンデンサC0は、抵抗R0と同様、後述するようにフォトダイオードPD3上に形成されている。コンデンサC0は、動作周波数特性の調整やノイズ除去のために設けられている。
【0078】
〔光センサの動作〕
上記のように構成される光センサ3においては、前述の光センサ1と同様に、受光時に、微小な電流がフォトダイオードPD1に流れると、カレントミラー回路により流れるn倍の大きさの電流が抵抗R0により電圧に変換される。この電圧がnchトランジスタTr3のゲートに入力されることで、光検知信号として出力電圧Voutが出力される。
【0079】
上記の光センサ3でも、光センサ1と同様、フォトダイオードPD3と抵抗R0とが並列に設けられている。これにより、それぞれにカレントミラー回路を構成するpchトランジスタTr1,Tr2を接続できるので、上記のように電流を増幅することが可能となる。
【0080】
また、ダイオードPD3とフォトダイオードPD3上に形成される抵抗R0との間には、寄生フォトダイオードPD0と同様な寄生フォトダイオードPD01が生じている。一方、ダイオードPD3とフォトダイオードPD3上に形成されるコンデンサC0との間には、寄生フォトダイオードPD02が生じている。これらの寄生フォトダイオードPD01,02に流れる電流も、pchトランジスタTr2に流れる電流に合流して、抵抗R0で電圧に変換される電流量を増大させる。したがって、S/Nを上昇させることができる。
【0081】
さらに、光センサ3では、コンデンサC0がフォトダイオードPD3の有する容量と直列に接続されると、その合成容量が抵抗R0と並列に接続されることになる。これにより、光センサ3の周波数特性をコントロールできるだけでなく、ノイズ除去率を調整することも可能となり、有益である。
【0082】
〔第3のフォトダイオードの詳細〕
続いて、上記の光センサ3に適用できるフォトダイオードについて詳細に説明する。
【0083】
図6(a)は、本実施形態のフォトダイオードPD3の平面構造を示し、図6(b)は、図6(a)のD−D線矢視断面構造を示す。
【0084】
図6(a)および(b)に示すように、フォトダイオードPD3は、P基板31上に形成されており、N拡散層32と、カソード33と、アノード34と、抵抗35と、容量電極36とを備えている。
【0085】
N拡散層32は、P基板31上に形成されており、P基板31とでPN接合を形成している。N拡散層32の表面(受光面)には、P拡散層からなる抵抗35と、容量電極36と、カソード33とが形成されている。カソード33は、抵抗35および容量36を取り囲むようにN拡散層により形成されている。
【0086】
P基板31には、P拡散層によりアノード34が形成されている。このアノード34は、N拡散層32を取り囲むように形成されており、電気的には接地電位GNDに固定されている。
【0087】
抵抗35は、光センサ3における抵抗R0を構成しており、P拡散層(不純物拡散層)によってN拡散層32において形成されている。この抵抗35は、前述のフォトダイオードPD1における抵抗15と同様、屈曲したジグザグの帯状に形成されている。
【0088】
容量電極36は、P拡散層(不純物拡散層)によってN拡散層32において形成されている。この容量電極36は、カソード33(N拡散層)との間で容量を形成しており、この容量が光センサ3におけるコンデンサC0を構成している。また、容量電極36は、抵抗35と間隔をおいて隣接して配置されており、矩形状に形成されている。
【0089】
上記のように構成されるフォトダイオードPD3でも、フォトダイオードPD1,PD2と同様、フォトダイオードPD3上に部分的に形成されたP拡散層によって抵抗35を形成している。このように、P拡散層を回路素子として利用することにより、受光ICとして構成される光センサ3の面積を縮小することができ、有益である。
【0090】
また、フォトダイオードD3上に形成された抵抗35を電流−電圧変換に用いることにより、フォトダイオードPD1と同様、面積効率が非常に向上するので、有益である。しかも、抵抗35は、屈曲した形状により高抵抗に形成されることから、フォトダイオードPD1と同様、十分な光信号を得ることができる。
【0091】
さらに、フォトダイオードPD3においては、カソード33と容量電極36とのPN接合により容量が形成される。そこで、容量電極36を矩形状に形成してその面積を大きくすることにより、フォトダイオードPD3の面積に対し、数十pF程度の十分な容量値を得ることができる。従来の受光ICでは、容量がフォトダイオード外に形成されるので、数pFでも受光ICに対する容量の面積比率が非常に大きいため、全体の面積が大きくなっていた。これに対し、上記のように容量をフォトダイオードPD3上に形成することは、光センサ3の面積を大きくすることなく容量を形成でき、有益である。
【0092】
しかも、フォトダイオードPD3においては、カソード33を形成するN拡散層が容量の一部を兼ねている。そこで、容量電極36を形成するP拡散層と抵抗35を形成するP拡散層の一端とを接続して、さらに抵抗35を形成するP拡散層の他端を接地することにより、図5に示すような回路が構成される。これにより、容量(コンデンサC0)に流れる微小フォトダイオード電流も抵抗35(抵抗R0)により光電変換できるので、有益である。
【0093】
さらに、フォトダイオードPD3が本来有する容量と上記の容量との合成容量、および抵抗35により周波数特性やノイズ除去特性を調整できるので、有益である。
【0094】
[実施形態4]
本発明の実施形態4について図7に基づいて説明すると、以下の通りである。
【0095】
〔光センサの電子機器への適用〕
実施形態1〜3の光センサ1〜3は、物体の検知や各種の物理量の検出を光学的に行なう必要がある各種の電子機器に適用可能である。例えば、物体検知や物体動作速度を検出する装置として、高感度が必要とされるフォトインタラプタを用いている複写機、プリンタ、携帯機器、モーターを用いた電気製品等に光センサ1〜3を用いると好適である。また、煙センサ、近接センサ、測距センサ等で高感度を要するもの、もしくは光センサにおいて、十分な容積を確保できないもの等に光センサ1〜3を用いても好適である。
【0096】
〔複写機の構成〕
ここで、光センサを用いた電子機器の具体例として複写機について説明する。図7は、当該複写機の内部構成を示す正面図である。
【0097】
図7に示すように、複写機41は、本体42の上部に設けられる原稿台43に載置された用紙に光源ランプ44の光を照射し、原稿からの反射光をミラー群45およびレンズ46を介して帯電された感光体ドラム47に照射して露光する。また、複写機41は、露光により感光体ドラム47に形成された静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成する。さらに、複写機41は、手差し給紙トレイ48や給紙カセット49,50から搬送系51を介して供給される用紙に感光体ドラム47上のトナー像を転写させ、さらに定着装置52にてトナー像を定着させた後、本体42の外部に排出する。
【0098】
上記のように構成される複写機41においては、各部の位置や用紙の通過を検出するために光センサS1〜S12が配置されている。
【0099】
光センサS1〜S4は、原稿の光走査方向に移動するミラー群45の一部の位置を検出するために配置されている。光センサS5,S6は、ミラー群45の一部とともに移動するレンズ46の位置を検出するために配置されている。光センサS7は、感光体ドラム47の回転位置を検出するために配置されている。
【0100】
光センサS8は、手差し給紙トレイ48上の用紙の有無を検出するために配置されている。光センサS9は、上段の給紙カセット49から給紙された用紙の搬送の有無を検出するために配置されている。光センサS10は、下段の給紙カセット50から給紙された用紙の搬送の有無を検出するために配置されている。
【0101】
光センサS11は、感光体ドラム47からの用紙の分離を検出するために配置される。光センサS12は、複写機41の外部への用紙の排出を検出するために配置される。
【0102】
上記のように、複写機41は、多数の光センサS1〜S12を有している。そこで、これらの光センサS1〜S12として、前述の各実施形態の光センサ1〜4を用いることにより、光センサS1〜S12による複写機41の大型化抑制および高機能化を図ることができる。
【0103】
なお、上記の例では、便宜上、光センサS1〜S12を挙げて説明したが、実際の複写機には、より多数の光センサが用いられていることが多い。したがって、このような電子機器には、上記の効果がより顕著となる。
【0104】
[実施形態の総括]
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、物体検出、物体動作速度を検出する装置として、高感度が必要とされるフォトインタラプタを用いている複写機、プリンタ、携帯機器、モーターを用いた電気製品等に好適に利用することができる。また、本発明は、煙センサ、近接センサ、測距センサ等で高感度が必要なもの、もしくは光センサにおいて、十分な容積を確保できないもの等にも好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0106】
1〜3 光センサ
11 P基板
21 P基板
31 P基板
12 N拡散層
22 N拡散層
32 N拡散層
13 カソード
23 カソード
33 カソード
14 アノード
24 アノード
34 アノード
15 抵抗(不純物拡散層)
25 抵抗(不純物拡散層)
35 抵抗(不純物拡散層)
26 電磁シールド
26b 突出部
36 容量電極
41 複写機(電子機器)
C0 コンデンサ(容量)
I1 電流
I2 電流
PD1 フォトダイオード
PD2 フォトダイオード
PD3 フォトダイオード
R0 抵抗
S1〜S12 光センサ
Tr1,Tr2 pchMOSトランジスタ(電流増幅手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトダイオードと、該フォトダイオードに流れる電流を電圧に変換する抵抗とを備えた光センサにおいて、
上記電流をn倍(n>1)に増幅して前記抵抗に流す電流増幅手段を備え、
上記抵抗は、上記フォトダイオード上に形成された不純物拡散層からなり、その一端が接地されていることを特徴とする光センサ。
【請求項2】
上記抵抗は屈曲した形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光センサ。
【請求項3】
上記抵抗の屈曲した部分の間をシールドするシールド部が上記フォトダイオード上に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の光センサ。
【請求項4】
上記フォトダイオード上に形成されたP拡散層と上記フォトダイオードにおけるN拡散層からなるカソードとのPN接合により容量が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光センサ。
【請求項5】
上記抵抗と上記容量とが直列に接続されていることを特徴とする請求項4に記載の光センサ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光センサを備えていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−104657(P2012−104657A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251841(P2010−251841)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】