光センサ
【課題】従来の光センサよりも大幅にコンパクト化でき、ノイズに強く確実な検出が可能であり、使用環境に制約がほとんどない光センサを提供する。
【解決手段】2個の発光色の異なる発光チップ2a、2bあるいは3個の発光色が赤2r、青2b、緑2gの発光チップを1個の発光ダイオード内に組込まれた多チップ発光ダイオードであって、一の発光チップを受光素子として用い、他の発光チップを光源として用いる。光源用発光チップが放射した光を受光用発光チップが受光すると、発光ダイオードの入力端子間に起電力が生じるので、受光の有無により被検出物の存否を検知することができる。光源用に緑色の発光チップを用い、受光用に赤色の発光チップを用いると最も光起電力が高い。物体検出や液面検出に汎用的に使える。
【解決手段】2個の発光色の異なる発光チップ2a、2bあるいは3個の発光色が赤2r、青2b、緑2gの発光チップを1個の発光ダイオード内に組込まれた多チップ発光ダイオードであって、一の発光チップを受光素子として用い、他の発光チップを光源として用いる。光源用発光チップが放射した光を受光用発光チップが受光すると、発光ダイオードの入力端子間に起電力が生じるので、受光の有無により被検出物の存否を検知することができる。光源用に緑色の発光チップを用い、受光用に赤色の発光チップを用いると最も光起電力が高い。物体検出や液面検出に汎用的に使える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光センサに関する。さらに詳しくは、物体検出や液面検出、パターン読出しなどに利用できる光センサに関する。
【背景技術】
【0002】
光センサの使用例の一例として液面レベル検出があるが、こうした液面レベルのモニタリングや制御は、工業分野とくに化学製品製造プロセスや石油精製プラントなどにおいてきわめて重要な基本技術である。
液面検出に用いられている方法としては、古典的な(1)フロート(浮子)法以外に、(2)光学的手法、(3)液体の導電性を利用する方法、(4)インダクタンスや容量の変化を調べる電磁気的手法、(5)超音波法、(6)圧力検出式などがある。
このうち前記(3)はイオン溶液のような導電性の液体には適用可能であるが、非電解質溶液(油、アルコールなど)には使えない。また、イオン性溶液に通電すると電気分解が起き、ガスの発生や化学反応物質の生成、電極部の腐食などが起きる。前記(4)の方法では高い検出精度や分解能を得るのは難しく、前記(5)は汎用性や小型化の点で問題がある。前記(6)の圧力検出式は堅固な構造を有するが形状が大きく重いなどの問題がある。そして、前記(2)の光学的手法では、光源としてレーザ、受光素子にフォトダイオードやフォトトランジスタなどを用いるため高い精度を得ることは可能であるが、次のような問題がある。
【0003】
1)まず、光を照射する発光素子の外に照射光を受光する受光素子を必要とするため、コンパクト化に制限がある(非特許文献1,2,3)。
たとえば、図12の(A)図に示すように、直接受光方式では被検出物体Sを挟んで両側に光源Lsと受光素子Laを配置する必要が生ずる。同(B)図に示すように、光反射方式では、被検出物体Sの片面側に斜めに配置した光源Lsと受光素子Laとを要する。同(C)図に示す光ファイバ方式では、光源Lsおよび受光素子Laと被検出物体Sの間を光ファイバfで接続するが、光源Lsと受光素子Laの2部材を要することに変わりはない。同(D)図に示すように、ペン型バーコードリーダは、LED光源Lsと受光素子Laをペン型ホルダーh内にタンデムに配置している。
これらの構成から明らかなように、いずれの検出方式でも、光源Lsと受光素子Laからなる2部材を必須とするし、被検出物体Sの両側に配置空間を要したり、片側であっても斜めに配置するなど、やはり占有スペースを大きくとる。また、ペン型ケースも2部材を収納するので長さが長くなる。要するに、その構成は、コンパクト化に限度が存する。
2)また、従来技術で受光素子として多用されているシリコン−フォトダイオード(以下Si−PDという)は、波長0.30μmの近紫外から1μm前後の近赤外まで広い受光帯域を持っているが、これは反面では不要な光信号やノイズを拾い易いという短所となる。換言すれば、検知動作が不正確になりやすい。
3)さらに、レーザ光源を用いる場合は、その寿命に限度があり、かつクリーンな環境が要求されるので、使用上の制限が多く、汎用的に使用しにくいという問題がある。
【0004】
【非特許文献1】「機械技術者のためのセンサ技術入門」103頁 佐野清人著 昭和59年5月15日初版発行 日刊工業新聞社発行
【非特許文献2】「やさしいセンサ技術」38頁 自動化技術編集部編 1988年8月1日8版発行 株式会社工業調査会発行
【非特許文献3】「図解メカトロニクス入門シリーズ センサ入門」150〜151頁 雨宮好文著 昭和58年9月30日第1版発行 株式会社オーム社発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、従来の光センサよりも大幅にコンパクト化でき、ノイズに強く確実な検出が可能であり、使用環境に制約がほとんどない光センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の光センサは、2以上の発光チップが1個の発光ダイオード内に組込まれた多チップ発光ダイオードであって、一の発光チップを受光素子として用い、他の発光チップを光源として用いることを特徴とする。
第2発明の光センサは、第1発明において、2個の発光色の異なる発光チップで1個の発光ダイオードを構成していることを特徴とする。
第3発明の光センサは、第1発明において、3個の発光色が赤、青、緑の発光チップで1個の発光ダイオードを構成していることを特徴とする。
第4発明の光センサは、第2または第3発明において、光源用に短波長側の発光チップを用い、受光用に長波長側の発光チップを用いたことを特徴とする。
第5発明の光センサは、第4発明において、光源用に緑色の発光チップを用い、受光用に赤色の発光チップを用いたことを特徴とする。
第6発明の光センサは、第1発明において、光源用発光チップに所定の周波数の交流電流を重畳させるか断続的に印加し、受光用発光チップの出力回路において同一周波数の交流信号を検出する信号選択識別回路を設けたことを特徴とする。
第7発明の光センサは、第1発明において、受光用発光チップが光源用発光チップの放射光を受光したか、または受光量が増加したことによって、被検出物を検知することを特徴とする。
第8発明の光センサは、第1発明において、受光用発光チップが光源用発光チップの放射光を受光しなくなったか、または受光量が減少したことによって、被検出物を検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1発明によれば、光源としての発光チップが放射した光を受光素子としての発光チップが受光すると、発光ダイオードの入力端子間に起電力が生じるので、受光の有無により被検出物の存否を検知することができる。そして、発光ダイオードの受光帯域(受光の波長帯域)は狭いので、ノイズ光やバックグラウンド光の影響を抑えて正確な検知動作ができる。また、1個の発光ダイオードで発光と受光ができるので、センサの構成を大幅にコンパクト化でき、配置スペースも最小化できる。
第2発明によれば、2個の発光チップのうち、1個を光源として、他の1個を受光素子として使用でき、必要最小限の部材によって最もコンパクトな光センサを構成できる。
第3発明によれば、任意の2個の発光チップを組合わせて単光色以外の多光色も発光させうるので、被検出対象の色との適性などに合わせて検出しやすい色を発光させて検出精度を高めることができる。
第4発明によれば、発光色の異なる発光チップを2個用いる場合、長波長発光チップの光を受けても短波長発光チップには光起電力が生じないが、短波長の発光チップの光を受けると長波長発光チップに光起電力が生じるので、光センサとして使用可能となる。
第5発明によれば、緑色発光チップのピーク発光波長は赤色受光スペクトルに最も近いので、赤色発光チップでの受光の有無を判別しやすく、しかも赤色発光チップは三色の発光チップのうち最も受光域が広く光起電力が大きいので、確実に検出結果を出力できる。
第6発明によれば、受光用発光チップの発する電気信号が、所定周波数の交流電流に乗った形で現れるので、バックグラウンド光などと明瞭に識別でき、ノイズの影響を極小にできる。
第7発明によれば、受光用チップが受光したか、受光量が増加すると光起電力が発生したり増加するので、そのことにより検知動作を認識することができる。
第8発明によれば、受光用チップが受光していないか、受光量が減少すると光起電力が消失したり減少するので、そのことにより検知動作を認識することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
((本発明の技術原理))
まず、本発明の技術原理を図面に基づき説明する。
図9は本発明の光センサの技術原理説明図である。図10は光起電力の特性説明図である。図11の(A)図は赤色LEDの発光スペクトルと受光分光特性を示すグラフ、同(B)図はLEDとSi−PDの受光帯域を比較したグラフである。
【0009】
(技術原理)
本発明の光センサの技術原理は、1個の発光ダイオード内の光源用発光チップが放射した光を受光用発光チップが受光すると、発光ダイオード(以下、LEDと表示することがある)の入力端子間に起電力が生じるので、受光の有無あるいは受光量の増減により被検出物の存否を検知することができる、というものである。
上記のLEDの光起電力効果については今なおほとんど知られておらず、光電子工学の専門家でさえもLEDに受光効果があることを知っている人は稀である。光半導体工学や光エレクトロニクス素子に関する高度な専門書を見てもLEDの発光原理や理論に関しては記述されているが、受光効果についてはその存在すらも記されていない。
しかしながら、本発明者は、赤色LED、例えばGaAlAs系の赤色超高輝度LEDは、Si−PDに匹敵するほどの大きな受光能力(光起電力効果)を有することを発見し、この事実をもとに本発明を完成するに至ったものである。
【0010】
(LEDの光起電力)
図9(A)に示すように、LED10は発光チップ11に陽極12と陰極13を接続し、発光チップ11の周囲をエポキシ樹脂あるいはガラス製のレンズ14で囲った電子部品である。このLED10は、定格20mA程度の入力電流に対して単色光を放射する半導体素子であるが、これとは逆に同図(B)のようにLED10に光を入射するとアノード(陽極)側が+、カソード(陰極)側が−となる光起電力Vpが発生する(光起電力効果)。このときLED10の2端子を短絡すると光電流Ipが流れる。本発明は、この光起電力、光電流を物体検知に利用するものである。
これまでの実験ではGaAlAs系化合物半導体から作られた高輝度赤色LEDがこの効果が最も大きいが、最近の赤色LEDの主流となっているInGaAlP系の高輝度赤色LEDも顕著な光起電力効果を示す。またLEDの陽極と陰極を電気的に接続するとその回路には光電流(正式には短絡光電流)Ipが流れる。高輝度赤色LEDに太陽光を直接照射させるとVp=1.5〜1.6Vというマンガン乾電池と同等の電圧が発生し、光電流Ipも1〜2mAと意外に大きいものである。
Si−PDの場合、直射太陽光でも0.5Vの光起電力なので、赤色LEDではその3倍もの電圧が得られる。一方、光電流についてはSi−PD(レンズ直径は同じ)の方が3倍ないしはそれ以上の光電流が発生する。光起電力は赤外LED、紫外LEDを含め全ての発光色のLEDで見られるが、高輝度とくに光度1cd(カンデラ)以上の超高輝度赤色LEDは光起電力、光電流ともに大きく、光発電力が最も大きい。なお、赤色から橙色、黄色、緑色、青色とLEDが短波長のものになると光電流が著しく減少するが、光起電力は1.5〜1.2V程度でさほど小さくはならない。
【0011】
(光起電力の特性)
図10の(A)図に示すように、同型の高輝度赤色LED1,2(直径5mmあるいは10mm)の光軸を合わせてレンズ間距離約2cmで対向させ、片方のLED1に定格電流20mAを流すと、他方のLED2には1.45〜1.47V≒1.5Vの光起電力が発生する。このとき受光LEDの2端子を接続すると40〜70μA程度(LEDの型や光軸のわずかな違いで値は異なる)の光電流が流れる。光源側に流す電流を0mAから20mAまで増加させて受光LEDへの入射光を増加していった場合のグラフが図10の(B)図である。
同(B)図から分かるように、受光LEDの光電流Ipは広い入射光量範囲で入射光と比例する。これに対し光起電力Vpは弱い入射光で立ち上りすぐに飽和してしまう。これらの特性はLEDに特有のものではなく、Si−PDについても定性的には全く同様である。
【0012】
(本発明の構成)
本発明の光センサを構成するLEDは、2個以上の発光チップを1個のLEDに組込んだ多チップLEDであり、2チップタイプや3チップタイプが含まれる。
多チップのうち、少なくとも一の発光チップが受光素子として用いられ、他の一又は二以上の発光チップが光源として用いられる。
受光素子として用いる発光チップも、光源として用いる発光チップも、可視光以外の発光チップ(白色発光チップ)をも含め広く種々の発光チップを用いることができるが、受光素子として望ましいのは光起電力が大きいことであり、この観点からは、GaAlAs系材料ならびにInGaAlP系材料を素材とする光度1cd以上の赤色超高輝度LEDが最も好適である。この赤色高輝度LEDは、それ自体の放射する光と同じ波長(630〜660nm)の光に対して光起電力Vpが1.45V以上、短絡光電流Ipは数十μAと、非常に顕著な光起電力効果がある。
図11の(A)に示すように、この赤色高輝度LEDの放射光は純色に近く、その中心波長は660nmであり、一方、受光においては630nm付近にピークのある500〜680nmの狭くかつ急峻な受光帯域をもっている。同図(A)において、発光と受光の二つの特性曲線は互いに交わっており、このため、このLEDはそれ自体が発する光を受信できるのである。なお、LEDによる受光は、そのLEDが消灯状態にあるときのみ可能で、点灯している場合は不可能である。
【0013】
発光色の異なる2個の発光チップのうち、どれを光源とし、どれを受光素子とするかは、各発光チップの発光スペクトルと受光分光感度特性で決まる。ある発光チップで受光できる光波長は、その発光チップの放射ピーク波長よりも短い波長域であり、一般に発光ピーク波長より30nm〜50nm短波長側に受光のピークがある。また、最大ピーク波長よりも短い波長の光に対しては受光感度が減少する。例えば、発光のピーク波長が660nmの赤色発光チップの場合、受光のピーク波長は630nm付近にあり、680nm暗赤色以上の光および500nm(青緑色)以下の光は受光しない。
したがって、発光色の異なる、つまり発光波長が違った発光チップを2つ対向させた場合、短波長の発光チップの点灯により長波長発光チップに光起電力効果は生じるが、長波長発光チップを点灯しても短波長発光チップには光起電力は起きない。こうした現象も光半導体工学・物理では知られていないが、本発明者は「LEDの片想い効果」と名づけている。この効果は本発明を理解したり実施する際きわめて重要な要素である。
【0014】
後に実施形態に基づき実証データを示すが、例えば、赤色発光チップの光起電力はかなり弱い光でも1.3V以上となる。そのため赤色発光チップが2個入ったLEDにおいて片方を点灯させた場合や、緑色発光チップと赤色発光チップが1個ずつ入ったLEDにおいて緑色発光チップを点灯した場合には、光源発光チップからの光の一部がレンズ内面で反射してもう一つの発光チップに入射し、それに1.3V前後の光起電力を生ぜしめる。
また、赤色発光チップが2個入ったLEDでは2つの発光チップ間での相互光起電力効果は可逆的である。
しかしながら、緑色発光チップと赤色発光チップが入った2チップLEDの場合、赤色発光チップを点灯したときには緑色発光チップの光起電力効果はほとんど起きず、光起電力は100mV以下で光電流はほとんどゼロ(1μA以下)である。
【0015】
上記のように、LEDの片想い効果を考慮すると、発光波長(ピーク波長をいう)がλ1である発光チップを受光素子とする際、光源としては同色の発光チップを用いるか、もしくは発光波長λ2がλ1よりも短い発光チップを使わなくてはならない。但し、短波長発光チップ光を長波長発光チップで受光できるとはいっても、受光側発光チップの分光受光感度の帯域よりも短波長側の発光チップ光は受光できない。例えば赤色発光チップで紫外発光チップの光を受けることはできない。青色発光チップの光により赤色発光チップに生じる光起電力効果はかなり小さい。
最適な発光チップの組合わせは次のとおりと考えられる。
・赤外発光チップを受光素子とする場合は光源発光チップには赤外または赤色発光チップ
・赤色発光チップを受光素子とする場合は光源発光チップには赤色または橙色発光チップ
・橙色発光チップを受光素子とする場合は光源発光チップには橙色または黄色発光チップ
・黄色発光チップを受光素子とする場合は光源発光チップには黄色または緑色発光チップ
・緑色発光チップを受光素子とする場合は光源発光チップには緑色または青緑色発光チップ
・青緑色発光チップを受光素子とする場合は光源発光チップには青緑色または青色発光チップ
・青色発光チップを受光素子とする場合は光源発光チップには青色または紫色発光チップ
【0016】
(光センサとしての特徴)
一般にLEDの光起電力効果は、Si−PDのそれに比べるとVpはともかくIpが非常に小さいため、これまで積極的な利用はなされなかったのであるが、予想に反して光センシングにおいて、Si−PDの代わりに超高輝度LEDを光源兼受光素子として用いることができたのであり、これを原理とする本発明は次のような長所がある。
1)一般に、図11の(B)に示すように、Si−PDは波長900nmから1000nm(=1μm)を受光ピークとし300nmの短波長側に向かって次第に感度(光電流)が減少するという特性を有するが、250〜1000nmの近紫外線領域から近赤外線領域までの広い波長域に光感度をもっている。このため、他の光信号を拾ったり光ノイズや環境光変化の影響を受けやすいという短所でもある。これに対し、本発明が用いるLEDの受光特性はそれ自体の発光中心波長から30〜50nmに受光のピークをもち、100〜200nmの狭い帯域幅を持つ。このため、LED受光センサにはSi−PDに比べると光混信や光ノイズの影響ははるかに小さいという長所がある。つまり、ノイズに左右されない確実な検出ができるのである。
2)また、本発明は、2以上の発光チップを1個の発光ダイオードに組込まれたLEDを用いるので、センシングシステムが非常にコンパクトになるという実益がある。
【0017】
((本発明の実施形態))
つぎに、本発明の各実施形態を説明する。
図1は2チップタイプLED光センサの説明図である。図2は3チップタイプLED光センサの説明図である。図3の(A)図は赤色発光チップの波長スペクトルを示すグラフ、同(B)図は青色発光チップの波長スペクトルを示すグラフ、同(C)図は緑色発光チップの波長スペクトルを示すグラフである。図4は信号選択識別回路の回路図である。
【0018】
(第1実施形態:2チップLED光センサ)
本発明の光センサに用いるLEDとしては、図1に示す2チップタイプがある。この2チップLED1は、1個のLED1の中に2個の発光チップ2a,2bを有するものである。すなわち、発光チップ2a,2bを光放射角を適切に絞り込むためのエポキシ樹脂やガラス製のレンズ3中に2個並べており、3本の端子4〜6を有している。この3端子のうち、共通端子4ともう一つの端子5(または6)間に通電することができ、一つの発光チップ(図示の場合は、2a)のみを点灯することができる。そして、このLED1中の他の発光チップ2bを受光素子とすれば、一つのLEDで光検出器を構成することができる。
【0019】
本実施形態の一例である2チップ赤色LED(東芝TLRA179、直径5mm、長さ8mm、材料はGaAlAs)のレンズ内光反射によるチップ相互光起電力効果を、以下に示す。
内部構造は図1(A)のとおりであり、内部回路は図1(C)のように赤色LEDチップが2個直列に接続されており、その接続点から共通の端子2が出ている。
まずスペクトルメータで発光スペクトルを調べたところ、赤色LEDのチップ1とチップ2のピーク発光波長は、それぞれ663nm、664nmであった。誤差±1nmを考慮するとスペクトルはまったく同じといえる(メーカーによる公称発光波長は660nm)。各発光チップの定格電流は20mAであるが、光起電力が非常に弱い光で飽和領域に入ること、および実際の利用では低電力消費が望ましいことを考慮し、光源とする発光チップの入力電流は定格の半分の10mA(入力電圧は1.71V)として測定を行った(室温25℃)。その結果が表1である。
【表1】
表1から明らかように、2つの赤色発光チップ間のレンズ内相互光起電力効果は可逆的である。光源発光チップからの放射光の内部反射によりすでに1.3Vもの光起電力が受光発光チップの端子間に生じる。
なお、発光チップの色の組合せ例は、段落0014に記載のとおりであるあるが、後述するごとく赤色発光チップがとくに受光効果が大きいのと、赤色発光チップの受光スペクトルのピーク波長に近い発光スペクトルを持つ発光チップは緑色発光チップなので、赤色発光チップを受光用にし緑色発光チップを光源用にするのが好適である。
【0020】
図1(B)に示すように、光センサでは、光源用発光チップ2aから出た光のほとんどはレンズ外に放射され、一部の光はレンズ内面で反射されるが、これにより1V前後の光起電力が発光チップ2bに発生する。これに対し、同図(A)に示すように、被検出物体Sが近づくと、その表面で反射した光が受光用発光チップ2bに入射する。このため発光チップ2bの光起電力は数10mV程度増加する。この起電力の増加を増幅検知することにより、物体の接近あるいは接触を検知することができる。
【0021】
(第2実施形態:3チップLED光センサ)
本発明が用いるLEDとしては、図2に示す3チップタイプも用いることができる。この3チップLED1には赤色発光チップ2r、緑色発光チップ2g、青色発光チップ2bの3つの発光チップが1個のLEDの中に組込まれたものである。
【0022】
本実施形態の一例であるRGB3チップLED(日亜化学NSTM515、直径5mm、長さ8mm、材料は赤色チップはInGaAlP系、緑色と青色LEDはInGaN系材料)のレンズ内光反射によるチップ間相互光起電力効果を、以下に示す。
RGB3チップLEDの構造は図2(A)のとおりである。まず各チップとも電流10mA(定格は20mA)を流した状態で発光スペクトルを調べた。なお入力電圧は、赤色発光チップが1.86V、緑色発光チップが3.38V、青色発光チップが3.14Vであった。その結果、各チップのピーク発光波長は、それぞれ635nm(赤)、526nm(緑)、460nm(青)であった。
次にレンズ内光反射によるチップ間相互光起電力効果を調べた。その結果を表2に示す(入力電流は各チップとも10mA)。
【表2】
表2において、赤色発光チップを光源とした場合、「片想い効果」のため緑色発光チップおよび青色発光チップには光起電力効果が起きないことが分かる。また緑色発光チップを光源とした場合も片想い効果のため青色発光チップには光起電力効果は起きない。光起電力効果が顕著なのは緑色発光チップを光源とした場合で、光起電力は1.43Vと大きい。一方、光電流は0.67μAと小さい。
興味深いのは、青色発光チップを光源とした場合、赤色発光チップも緑色発光チップも光起電力は同じ0.45Vであり、光電流もほとんど同じである。この事実は赤色発光チップ、緑色発光チップとも受光センサとして使用できるということである。
しかしながら、表2から3色発光チップで光センシングを行うには、光源に緑色発光チップ、受光に赤色発光チップを用いるのが最適であることが分かる。
【0023】
図2(B)に示すように、光センサでは、光源用発光チップ2gから出た光のほとんどはレンズ外に放射され、一部の光はレンズ内面で反射されるが、これにより1.4V前後の光起電力が発光チップ2rに発生する。これに対し、同図(A)に示すように、被検出物体Sが近づくと、その表面で反射した光が受光用発光チップ2rに入射する。このため発光チップ2rの光起電力は数10mV程度増加する。この起電力の増加を増幅検知することにより、物体の接近あるいは接触を検知することができる。
【0024】
3つの発光チップのうち、いずれを光源にして、いずれを受光素子にするのも任意である。受光素子は一つの発光チップを用いてもよく、二以上を組合わせてもよい。二つの発光チップを組合わせた場合は、光起電力の違いから対象物の有無のみならず、色を見分けることも可能である。光源として使う発光チップは一つでもよく二つでもよい。二つを光源とする場合は、単色でなく、組合せによって混合色を発光することができる。
【0025】
光源用チップと受光用チップの組合せは、「光源−緑、受光素子−赤」が最適である。
その理由を、つぎに説明する。
図3(A)は発光ピーク波長が640nm付近にあるInGaAlP系赤色発光チップの受光分光特性をグラフにしたものである。同図から明らかなように、赤色発光チップの受光スペクトルのピーク波長は580nm付近にある。同図(B)の青色発光チップや同図(C)の緑色発光チップの受光スペクトルと比較すると、赤色発光チップの受光スペクトルは受光域が広く、光起電力も大きいことが分かる(分光強度は一定に保った状態で測定)。
なお、図3(B)によれば、青色LEDチップの発光スペクトルのピーク波長が420nm付近である。赤色LEDチップの受光スペクトルと比較すると、受光域が狭く、光起電力も小さい。また、図3(C)によれば、緑色LEDチップの発光スペクトルのピーク波長が440nm付近である。青色LEDチップの受光スペクトルと比べると、若干受光域が広いが、光起電力は小さい。
したがって、3チップLED1内にある2r,2g,2bそれそれのチップのうち、受光素子に最も向いているチップは、赤色発光チップであるといえる。
【0026】
一方、発光チップに要求される性質は、受光チップの受光スペクトルのピーク波長に近い波長の光を発光することである。
ここで、赤色発光チップの受光スペクトルのピーク波長に近いピーク波長の発光スペクトルは、緑色であり、緑色発光チップのピーク発光波長は525nmである。青色LEDチップの受光スペクトルのピーク波長に近いピーク波長を持つ発光スペクトルの色は、青色であり、青色LEDチップのピーク発光波長は470nmである。緑色LEDチップの受光スペクトルのピーク波長に近いピーク波長を持つ発光スペクトルの色は、青色であり、青色LEDチップのピーク発光波長は470nmである。
【0027】
上記の赤、緑、青の各発光チップにおいて、受光感度のピークは発光スペクトルのピークより数十nm短波長側にシフトした位置にあるか、赤色発光チップの発光のピーク波長と受光のピーク波長が近い組合せが最適となるはずなので、[発光素子−青、受光素子−緑],[発光素子−青、受光素子−赤],[発光素子−緑、受光素子−赤]の3通りのうち、[発光素子−緑、受光素子−赤]の組合せが最適となる。したがって、2チップタイプも3チップタイプも緑色発光チップを光源、赤色発光チップを受光素子とするのが最もよい。
【0028】
(本発明の他の実施形態)
1)白色LED(2端子のもの)はまだ製品化された多チップLEDは現時点では存在しないが、光起電力効果は小さいながらも有しているので、本発明の光センサとして使用可能である。すなわち、白色発光チップを光源とし、その光を例えば赤色発光チップに入射させると、赤色発光チップには、1.4V前後の光起電力が生じるので、白色発光チップと赤色発光チップを組込んだLEDも本発明の光センサとして使用できる。なお、白色発光チップの光に対して緑色発光チップで受光した場合の光起電力は約0.3V、青色発光チップで受光した場合のそれは約0.1Vであり、現時点では実用的でないが、将来、光起電力が大きくなるよう改良されれば、充分本発明の光センサとして使用できる。
2)また、赤色発光チップの代わりに橙色の発光チップを用いることも可能である。
3)現時点におけるGaN系化合物半導体材料から作られている緑色発光チップや青色発光チップの光起電力効果は小さいが(赤色発光チップに比べ光起電力はともかく光電流が1/50以下)、将来、光起電力が大きくなれば、実用的な使用が可能となる。
4)前記各実施形態はエポキシ樹脂レンズ付の多チップLEDであるが、この場合、侵襲性の液体や溶剤に対しても、フッ素樹脂等の保護膜を表面に被覆すれば、使用可能となる。
5)本発明では、レンズの無い多チップLEDも使用できる。このタイプのLEDは照明付プッシュスイッチなどに組込まれるものであり、こうしたレンズ無し多チップLEDは、例えばタッチセンサとしてそのまま適用可能である。
【0029】
(本発明の信号選択識別回路)
既述のように、LED受光素子は帯域が狭いため混信が起きにくく光ノイズや光環境の影響を受けにくいのであるが、下記のような交流センシング方式(交流信号選択識別回路)を用いれば、バックグラウンド光等の影響をさらに大幅に減少させることができる。つまり、光環境に対する安定性を増強させることができる。
例えば図4(A)のように、光源とするLEDチップに流す電流に周波数f(例えば1kHz)の正弦波(または方形波)交流電流を重畳させたり、図4(B)のように周波数f(例えば1kHz)でスイッチング(点滅)させる。そして受光するLEDチップの側の回路においては光源側で重畳もしくはスイッチングさせた周波数fのみの交流信号を、バンドパスフィルタを通して検出し、その変化から物体や液体の有無を感知する。この信号選択識別回路を用いれば、蛍光灯光に含まれる50Hzや100Hz(関東、欧州など)あるいは60Hzや120Hz(関西、米国など)の交流光ノイズの影響がカットされ、太陽光をも含む環境光の影響も極小化される。
【0030】
(本発明のセンシング使用例)
以下に、本発明の光センサの使用例を説明する。
ただし、以下の使用例は代表的な例を示すものであり、これら以外の用途を制限するものではない。本発明の光センサは、かなり汎用的に使え、その用途には無限の広がりがある。なお、図示の光センサは2チップタイプであるが、3チップタイプであってもよいこと勿論である。
図5は本発明のLED光センサを用いた物体検出の説明図である。図6は本発明のLED光センサを用いた液面検出の説明図である。図7は本発明のLED光センサを用いた液面検出の他の例の説明図である。図8は本発明のLED光センサを用いたパターン読取りの説明図である。
(1)物体検出
図5は、2チップLEDを用いた光センサによる物体検出の説明図である。図示のように、この一方の発光チップ2aから出た光のほとんどはレンズ外に放射される。一部の光はレンズ内面で反射されるが、その光量は小さいため、光起電力も小さい状態である。これに対し、被検出物体Sが近づくと、その表面で反射した光が他の発光チップ2bに入射する。このときの受光量は大きいので、大きな起電力を発生し、例えば、光センサには1V前後の光起電力Vpが生じる。この起電力による電流によって、物体の接近あるいは接触を検知することができる。
被検出物体の色が発光チップから出た光を吸収して充分な反射光が得られない場合は、二つの発光チップの色の組合せを替えて、充分な反射光が得られるようにすればよい。フルカラーの三色発光チップを用いる光センサでは、例えば緑色光を光源としたとき充分な反射光が得られなければ、青色光を光源とするように替えればよい(但し、既述のごとく受光用は赤色発光チップが好ましい)。
また、本発明の光センサは反射型なので、いろいろな物体を検出できる。例えば、2チップLED光センサのレンズ部に指を当てると、光は皮膚で反射してLEDに逆入射するのでタッチセンサとしても利用できる。
【0031】
(2)液面検出
本発明の光センサは反射型なので、液面検出も可能である。
図6(A)に示したように、本発明の光センサを構成するLED1が水面の上方にある場合には、点灯している発光チップの放射光の一部がレンズ内面で(全)反射してもう一つの発光チップに入射し、そのチップの端子間に光起電力を生じる。これがバイアス出力電圧であるが、同図(B)に示すように、LED1のレンズが水中に没するとレンズの屈折率と水のそれとの差が小さいため、レンズ内面での光反射がなくなり光は水中に出ていく。これによりバイアス出力電圧は著しく減少する。このように、このLED1のレンズの先を水につけるとレンズ内面での反射が減り、受光用チップのVpは減少する。このわずかな光起電力の変化を電子回路(コンパレータ回路)で増幅検出すれば、0.1mm程度の精度で液面を検出することができる。
【0032】
LED1の配置の仕方は、図6のように、液面上に置く場合の外、図7に示すように液中に配置してもよい。
この場合、LED1が液中にある場合は、レンズ内面での反射光は少ないが、液面が下がってレンズ頂部が露出すると反射光が多くなるので、出力電圧が増大することにより、液面の低下を検出することができる。
【0033】
液面検出に適用できる液体には、とくに制限なく、例えば、水(工業用水や純水)、油(作動油や潤滑油)、醤油、ソース、薬液、廃液、バッテリー液、生食液など各種液体(侵食性薬品、溶剤を除く)に用いることができる。また、本発明の光センサは、本体となるLEDの直径は5mm、長さ8mm程度と超小型なので、例えば、点滴治療、輸血、透析などを行う医療現場での液面制御にも利用できる。
検出対象の液体の色が、光源である発光チップの発光色と同じで、しかも液体の色が濃い場合、あるいは液体がミルクのような濃い白色をしているなど、液体が光源用発光チップの放射光に反射性(あるいは反射的)である場合には、図5のような反射方式で液面検出を行うこともできる。
この場合、3チップLEDを用いた場合は、任意の一つの発光チップを除いた残り二つの発光チップを組み合わせて、任意の光を発光できる。例えば、下記左側に記載の色の発光が可能である。
・青色と緑色を合わせ、青緑色を発光→赤色発光チップで受光
・青色と赤色を合わせ、ピンク色を発光→緑色発光チップで受光
したがって、被検出物体の地色等に左右されない物体検出あるいは液面検出を可能とすることができる。
(3)バーコード・リーダあるいはマークシート・リーダ
図8(A)の上段はバーコードパターンを示しており、下段は、そのバーコードパターンを本発明の光センサで読み取った場合の出力電圧波形を示している。バーコードパターンの黒地の部分と白地の部分では光反射率が異なるので、このような出力波形が得られ、本発明の光センサで、バーコード・リーダを構成することができる。
図8(B)は、マークシート・リーダ20を示している。このマークシート・リーダ20は本発明のLED光センサ1を横列に並べてマークの配列パターンに合わせて配置されている。マークシート21は、所定の場所に人がマークを塗りつぶす一般的なタイプを用いることができ、各マークの黒白(塗り、塗らない)の別を同一間隔で配置した複数個のLED光センサ1で検出することができる。
【0034】
(本発明の長所)
本発明では1個のLED内の2以上の発光チップを光源と受光素子として構成するため、フォトダイオードやフォトトランジスタといった別体の受光素子は不要となる。したがって光センシングシステムの構成や光センシングデバイスの構造が非常に簡素となり、製造コストも安くて済む。その結果、超小型、超軽量、きわめてシンプル、防水性、機密性、防爆が容易、低価格、長寿命、保守性、汎用性(何にでも使える)、超低消費電力、設置が容易、液体に浸かっても大丈夫、などの利点が得られる。
また、従来技術で受光素子として多用されているSi−PDに比べると受光帯域が狭いので、不要な光信号やノイズに影響されにくく、検知動作が正確になるという利点がある。
さらに、光源の寿命が長く、クリーンな環境でなくとも使用できる耐環境性が高いので、使用上の制限が少なく、河川や井戸、海など野外での水位検知、工業生産ライン、農業栽培現場、医薬製造ライン、医療現場などで汎用的に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】2チップタイプLED光センサの説明図である。
【図2】3チップタイプLED光センサの説明図である。
【図3】(A)図は赤色発光チップの波長スペクトルを示すグラフ、(B)図は青色発光チップの波長スペクトルを示すグラフ、(C)図は緑色発光チップの波長スペクトルを示すグラフである。
【図4】信号選択識別回路の回路図である。
【図5】本発明のLED光センサを用いた物体検出の説明図である。
【図6】本発明のLED光センサを用いた液面検出の説明図である。
【図7】本発明のLED光センサを用いた液面検出の他の例の説明図である。
【図8】本発明のLED光センサを用いたパターン読取りの説明図である。
【図9】本発明の光センサの技術原理説明図である。
【図10】光起電力の特性説明図である。
【図11】(A)図は赤色LEDの発光スペクトルと受光分光特性を示すグラフ、(B)図はLEDとPDの受光帯域を比較したグラフである。
【図12】(A)〜(D)は従来の光センサの構成と使用方法の説明図である。
【符号の説明】
【0036】
1 LED
2a、2b 発光チップ
2r,2b,2g 発光チップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、光センサに関する。さらに詳しくは、物体検出や液面検出、パターン読出しなどに利用できる光センサに関する。
【背景技術】
【0002】
光センサの使用例の一例として液面レベル検出があるが、こうした液面レベルのモニタリングや制御は、工業分野とくに化学製品製造プロセスや石油精製プラントなどにおいてきわめて重要な基本技術である。
液面検出に用いられている方法としては、古典的な(1)フロート(浮子)法以外に、(2)光学的手法、(3)液体の導電性を利用する方法、(4)インダクタンスや容量の変化を調べる電磁気的手法、(5)超音波法、(6)圧力検出式などがある。
このうち前記(3)はイオン溶液のような導電性の液体には適用可能であるが、非電解質溶液(油、アルコールなど)には使えない。また、イオン性溶液に通電すると電気分解が起き、ガスの発生や化学反応物質の生成、電極部の腐食などが起きる。前記(4)の方法では高い検出精度や分解能を得るのは難しく、前記(5)は汎用性や小型化の点で問題がある。前記(6)の圧力検出式は堅固な構造を有するが形状が大きく重いなどの問題がある。そして、前記(2)の光学的手法では、光源としてレーザ、受光素子にフォトダイオードやフォトトランジスタなどを用いるため高い精度を得ることは可能であるが、次のような問題がある。
【0003】
1)まず、光を照射する発光素子の外に照射光を受光する受光素子を必要とするため、コンパクト化に制限がある(非特許文献1,2,3)。
たとえば、図12の(A)図に示すように、直接受光方式では被検出物体Sを挟んで両側に光源Lsと受光素子Laを配置する必要が生ずる。同(B)図に示すように、光反射方式では、被検出物体Sの片面側に斜めに配置した光源Lsと受光素子Laとを要する。同(C)図に示す光ファイバ方式では、光源Lsおよび受光素子Laと被検出物体Sの間を光ファイバfで接続するが、光源Lsと受光素子Laの2部材を要することに変わりはない。同(D)図に示すように、ペン型バーコードリーダは、LED光源Lsと受光素子Laをペン型ホルダーh内にタンデムに配置している。
これらの構成から明らかなように、いずれの検出方式でも、光源Lsと受光素子Laからなる2部材を必須とするし、被検出物体Sの両側に配置空間を要したり、片側であっても斜めに配置するなど、やはり占有スペースを大きくとる。また、ペン型ケースも2部材を収納するので長さが長くなる。要するに、その構成は、コンパクト化に限度が存する。
2)また、従来技術で受光素子として多用されているシリコン−フォトダイオード(以下Si−PDという)は、波長0.30μmの近紫外から1μm前後の近赤外まで広い受光帯域を持っているが、これは反面では不要な光信号やノイズを拾い易いという短所となる。換言すれば、検知動作が不正確になりやすい。
3)さらに、レーザ光源を用いる場合は、その寿命に限度があり、かつクリーンな環境が要求されるので、使用上の制限が多く、汎用的に使用しにくいという問題がある。
【0004】
【非特許文献1】「機械技術者のためのセンサ技術入門」103頁 佐野清人著 昭和59年5月15日初版発行 日刊工業新聞社発行
【非特許文献2】「やさしいセンサ技術」38頁 自動化技術編集部編 1988年8月1日8版発行 株式会社工業調査会発行
【非特許文献3】「図解メカトロニクス入門シリーズ センサ入門」150〜151頁 雨宮好文著 昭和58年9月30日第1版発行 株式会社オーム社発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、従来の光センサよりも大幅にコンパクト化でき、ノイズに強く確実な検出が可能であり、使用環境に制約がほとんどない光センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の光センサは、2以上の発光チップが1個の発光ダイオード内に組込まれた多チップ発光ダイオードであって、一の発光チップを受光素子として用い、他の発光チップを光源として用いることを特徴とする。
第2発明の光センサは、第1発明において、2個の発光色の異なる発光チップで1個の発光ダイオードを構成していることを特徴とする。
第3発明の光センサは、第1発明において、3個の発光色が赤、青、緑の発光チップで1個の発光ダイオードを構成していることを特徴とする。
第4発明の光センサは、第2または第3発明において、光源用に短波長側の発光チップを用い、受光用に長波長側の発光チップを用いたことを特徴とする。
第5発明の光センサは、第4発明において、光源用に緑色の発光チップを用い、受光用に赤色の発光チップを用いたことを特徴とする。
第6発明の光センサは、第1発明において、光源用発光チップに所定の周波数の交流電流を重畳させるか断続的に印加し、受光用発光チップの出力回路において同一周波数の交流信号を検出する信号選択識別回路を設けたことを特徴とする。
第7発明の光センサは、第1発明において、受光用発光チップが光源用発光チップの放射光を受光したか、または受光量が増加したことによって、被検出物を検知することを特徴とする。
第8発明の光センサは、第1発明において、受光用発光チップが光源用発光チップの放射光を受光しなくなったか、または受光量が減少したことによって、被検出物を検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1発明によれば、光源としての発光チップが放射した光を受光素子としての発光チップが受光すると、発光ダイオードの入力端子間に起電力が生じるので、受光の有無により被検出物の存否を検知することができる。そして、発光ダイオードの受光帯域(受光の波長帯域)は狭いので、ノイズ光やバックグラウンド光の影響を抑えて正確な検知動作ができる。また、1個の発光ダイオードで発光と受光ができるので、センサの構成を大幅にコンパクト化でき、配置スペースも最小化できる。
第2発明によれば、2個の発光チップのうち、1個を光源として、他の1個を受光素子として使用でき、必要最小限の部材によって最もコンパクトな光センサを構成できる。
第3発明によれば、任意の2個の発光チップを組合わせて単光色以外の多光色も発光させうるので、被検出対象の色との適性などに合わせて検出しやすい色を発光させて検出精度を高めることができる。
第4発明によれば、発光色の異なる発光チップを2個用いる場合、長波長発光チップの光を受けても短波長発光チップには光起電力が生じないが、短波長の発光チップの光を受けると長波長発光チップに光起電力が生じるので、光センサとして使用可能となる。
第5発明によれば、緑色発光チップのピーク発光波長は赤色受光スペクトルに最も近いので、赤色発光チップでの受光の有無を判別しやすく、しかも赤色発光チップは三色の発光チップのうち最も受光域が広く光起電力が大きいので、確実に検出結果を出力できる。
第6発明によれば、受光用発光チップの発する電気信号が、所定周波数の交流電流に乗った形で現れるので、バックグラウンド光などと明瞭に識別でき、ノイズの影響を極小にできる。
第7発明によれば、受光用チップが受光したか、受光量が増加すると光起電力が発生したり増加するので、そのことにより検知動作を認識することができる。
第8発明によれば、受光用チップが受光していないか、受光量が減少すると光起電力が消失したり減少するので、そのことにより検知動作を認識することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
((本発明の技術原理))
まず、本発明の技術原理を図面に基づき説明する。
図9は本発明の光センサの技術原理説明図である。図10は光起電力の特性説明図である。図11の(A)図は赤色LEDの発光スペクトルと受光分光特性を示すグラフ、同(B)図はLEDとSi−PDの受光帯域を比較したグラフである。
【0009】
(技術原理)
本発明の光センサの技術原理は、1個の発光ダイオード内の光源用発光チップが放射した光を受光用発光チップが受光すると、発光ダイオード(以下、LEDと表示することがある)の入力端子間に起電力が生じるので、受光の有無あるいは受光量の増減により被検出物の存否を検知することができる、というものである。
上記のLEDの光起電力効果については今なおほとんど知られておらず、光電子工学の専門家でさえもLEDに受光効果があることを知っている人は稀である。光半導体工学や光エレクトロニクス素子に関する高度な専門書を見てもLEDの発光原理や理論に関しては記述されているが、受光効果についてはその存在すらも記されていない。
しかしながら、本発明者は、赤色LED、例えばGaAlAs系の赤色超高輝度LEDは、Si−PDに匹敵するほどの大きな受光能力(光起電力効果)を有することを発見し、この事実をもとに本発明を完成するに至ったものである。
【0010】
(LEDの光起電力)
図9(A)に示すように、LED10は発光チップ11に陽極12と陰極13を接続し、発光チップ11の周囲をエポキシ樹脂あるいはガラス製のレンズ14で囲った電子部品である。このLED10は、定格20mA程度の入力電流に対して単色光を放射する半導体素子であるが、これとは逆に同図(B)のようにLED10に光を入射するとアノード(陽極)側が+、カソード(陰極)側が−となる光起電力Vpが発生する(光起電力効果)。このときLED10の2端子を短絡すると光電流Ipが流れる。本発明は、この光起電力、光電流を物体検知に利用するものである。
これまでの実験ではGaAlAs系化合物半導体から作られた高輝度赤色LEDがこの効果が最も大きいが、最近の赤色LEDの主流となっているInGaAlP系の高輝度赤色LEDも顕著な光起電力効果を示す。またLEDの陽極と陰極を電気的に接続するとその回路には光電流(正式には短絡光電流)Ipが流れる。高輝度赤色LEDに太陽光を直接照射させるとVp=1.5〜1.6Vというマンガン乾電池と同等の電圧が発生し、光電流Ipも1〜2mAと意外に大きいものである。
Si−PDの場合、直射太陽光でも0.5Vの光起電力なので、赤色LEDではその3倍もの電圧が得られる。一方、光電流についてはSi−PD(レンズ直径は同じ)の方が3倍ないしはそれ以上の光電流が発生する。光起電力は赤外LED、紫外LEDを含め全ての発光色のLEDで見られるが、高輝度とくに光度1cd(カンデラ)以上の超高輝度赤色LEDは光起電力、光電流ともに大きく、光発電力が最も大きい。なお、赤色から橙色、黄色、緑色、青色とLEDが短波長のものになると光電流が著しく減少するが、光起電力は1.5〜1.2V程度でさほど小さくはならない。
【0011】
(光起電力の特性)
図10の(A)図に示すように、同型の高輝度赤色LED1,2(直径5mmあるいは10mm)の光軸を合わせてレンズ間距離約2cmで対向させ、片方のLED1に定格電流20mAを流すと、他方のLED2には1.45〜1.47V≒1.5Vの光起電力が発生する。このとき受光LEDの2端子を接続すると40〜70μA程度(LEDの型や光軸のわずかな違いで値は異なる)の光電流が流れる。光源側に流す電流を0mAから20mAまで増加させて受光LEDへの入射光を増加していった場合のグラフが図10の(B)図である。
同(B)図から分かるように、受光LEDの光電流Ipは広い入射光量範囲で入射光と比例する。これに対し光起電力Vpは弱い入射光で立ち上りすぐに飽和してしまう。これらの特性はLEDに特有のものではなく、Si−PDについても定性的には全く同様である。
【0012】
(本発明の構成)
本発明の光センサを構成するLEDは、2個以上の発光チップを1個のLEDに組込んだ多チップLEDであり、2チップタイプや3チップタイプが含まれる。
多チップのうち、少なくとも一の発光チップが受光素子として用いられ、他の一又は二以上の発光チップが光源として用いられる。
受光素子として用いる発光チップも、光源として用いる発光チップも、可視光以外の発光チップ(白色発光チップ)をも含め広く種々の発光チップを用いることができるが、受光素子として望ましいのは光起電力が大きいことであり、この観点からは、GaAlAs系材料ならびにInGaAlP系材料を素材とする光度1cd以上の赤色超高輝度LEDが最も好適である。この赤色高輝度LEDは、それ自体の放射する光と同じ波長(630〜660nm)の光に対して光起電力Vpが1.45V以上、短絡光電流Ipは数十μAと、非常に顕著な光起電力効果がある。
図11の(A)に示すように、この赤色高輝度LEDの放射光は純色に近く、その中心波長は660nmであり、一方、受光においては630nm付近にピークのある500〜680nmの狭くかつ急峻な受光帯域をもっている。同図(A)において、発光と受光の二つの特性曲線は互いに交わっており、このため、このLEDはそれ自体が発する光を受信できるのである。なお、LEDによる受光は、そのLEDが消灯状態にあるときのみ可能で、点灯している場合は不可能である。
【0013】
発光色の異なる2個の発光チップのうち、どれを光源とし、どれを受光素子とするかは、各発光チップの発光スペクトルと受光分光感度特性で決まる。ある発光チップで受光できる光波長は、その発光チップの放射ピーク波長よりも短い波長域であり、一般に発光ピーク波長より30nm〜50nm短波長側に受光のピークがある。また、最大ピーク波長よりも短い波長の光に対しては受光感度が減少する。例えば、発光のピーク波長が660nmの赤色発光チップの場合、受光のピーク波長は630nm付近にあり、680nm暗赤色以上の光および500nm(青緑色)以下の光は受光しない。
したがって、発光色の異なる、つまり発光波長が違った発光チップを2つ対向させた場合、短波長の発光チップの点灯により長波長発光チップに光起電力効果は生じるが、長波長発光チップを点灯しても短波長発光チップには光起電力は起きない。こうした現象も光半導体工学・物理では知られていないが、本発明者は「LEDの片想い効果」と名づけている。この効果は本発明を理解したり実施する際きわめて重要な要素である。
【0014】
後に実施形態に基づき実証データを示すが、例えば、赤色発光チップの光起電力はかなり弱い光でも1.3V以上となる。そのため赤色発光チップが2個入ったLEDにおいて片方を点灯させた場合や、緑色発光チップと赤色発光チップが1個ずつ入ったLEDにおいて緑色発光チップを点灯した場合には、光源発光チップからの光の一部がレンズ内面で反射してもう一つの発光チップに入射し、それに1.3V前後の光起電力を生ぜしめる。
また、赤色発光チップが2個入ったLEDでは2つの発光チップ間での相互光起電力効果は可逆的である。
しかしながら、緑色発光チップと赤色発光チップが入った2チップLEDの場合、赤色発光チップを点灯したときには緑色発光チップの光起電力効果はほとんど起きず、光起電力は100mV以下で光電流はほとんどゼロ(1μA以下)である。
【0015】
上記のように、LEDの片想い効果を考慮すると、発光波長(ピーク波長をいう)がλ1である発光チップを受光素子とする際、光源としては同色の発光チップを用いるか、もしくは発光波長λ2がλ1よりも短い発光チップを使わなくてはならない。但し、短波長発光チップ光を長波長発光チップで受光できるとはいっても、受光側発光チップの分光受光感度の帯域よりも短波長側の発光チップ光は受光できない。例えば赤色発光チップで紫外発光チップの光を受けることはできない。青色発光チップの光により赤色発光チップに生じる光起電力効果はかなり小さい。
最適な発光チップの組合わせは次のとおりと考えられる。
・赤外発光チップを受光素子とする場合は光源発光チップには赤外または赤色発光チップ
・赤色発光チップを受光素子とする場合は光源発光チップには赤色または橙色発光チップ
・橙色発光チップを受光素子とする場合は光源発光チップには橙色または黄色発光チップ
・黄色発光チップを受光素子とする場合は光源発光チップには黄色または緑色発光チップ
・緑色発光チップを受光素子とする場合は光源発光チップには緑色または青緑色発光チップ
・青緑色発光チップを受光素子とする場合は光源発光チップには青緑色または青色発光チップ
・青色発光チップを受光素子とする場合は光源発光チップには青色または紫色発光チップ
【0016】
(光センサとしての特徴)
一般にLEDの光起電力効果は、Si−PDのそれに比べるとVpはともかくIpが非常に小さいため、これまで積極的な利用はなされなかったのであるが、予想に反して光センシングにおいて、Si−PDの代わりに超高輝度LEDを光源兼受光素子として用いることができたのであり、これを原理とする本発明は次のような長所がある。
1)一般に、図11の(B)に示すように、Si−PDは波長900nmから1000nm(=1μm)を受光ピークとし300nmの短波長側に向かって次第に感度(光電流)が減少するという特性を有するが、250〜1000nmの近紫外線領域から近赤外線領域までの広い波長域に光感度をもっている。このため、他の光信号を拾ったり光ノイズや環境光変化の影響を受けやすいという短所でもある。これに対し、本発明が用いるLEDの受光特性はそれ自体の発光中心波長から30〜50nmに受光のピークをもち、100〜200nmの狭い帯域幅を持つ。このため、LED受光センサにはSi−PDに比べると光混信や光ノイズの影響ははるかに小さいという長所がある。つまり、ノイズに左右されない確実な検出ができるのである。
2)また、本発明は、2以上の発光チップを1個の発光ダイオードに組込まれたLEDを用いるので、センシングシステムが非常にコンパクトになるという実益がある。
【0017】
((本発明の実施形態))
つぎに、本発明の各実施形態を説明する。
図1は2チップタイプLED光センサの説明図である。図2は3チップタイプLED光センサの説明図である。図3の(A)図は赤色発光チップの波長スペクトルを示すグラフ、同(B)図は青色発光チップの波長スペクトルを示すグラフ、同(C)図は緑色発光チップの波長スペクトルを示すグラフである。図4は信号選択識別回路の回路図である。
【0018】
(第1実施形態:2チップLED光センサ)
本発明の光センサに用いるLEDとしては、図1に示す2チップタイプがある。この2チップLED1は、1個のLED1の中に2個の発光チップ2a,2bを有するものである。すなわち、発光チップ2a,2bを光放射角を適切に絞り込むためのエポキシ樹脂やガラス製のレンズ3中に2個並べており、3本の端子4〜6を有している。この3端子のうち、共通端子4ともう一つの端子5(または6)間に通電することができ、一つの発光チップ(図示の場合は、2a)のみを点灯することができる。そして、このLED1中の他の発光チップ2bを受光素子とすれば、一つのLEDで光検出器を構成することができる。
【0019】
本実施形態の一例である2チップ赤色LED(東芝TLRA179、直径5mm、長さ8mm、材料はGaAlAs)のレンズ内光反射によるチップ相互光起電力効果を、以下に示す。
内部構造は図1(A)のとおりであり、内部回路は図1(C)のように赤色LEDチップが2個直列に接続されており、その接続点から共通の端子2が出ている。
まずスペクトルメータで発光スペクトルを調べたところ、赤色LEDのチップ1とチップ2のピーク発光波長は、それぞれ663nm、664nmであった。誤差±1nmを考慮するとスペクトルはまったく同じといえる(メーカーによる公称発光波長は660nm)。各発光チップの定格電流は20mAであるが、光起電力が非常に弱い光で飽和領域に入ること、および実際の利用では低電力消費が望ましいことを考慮し、光源とする発光チップの入力電流は定格の半分の10mA(入力電圧は1.71V)として測定を行った(室温25℃)。その結果が表1である。
【表1】
表1から明らかように、2つの赤色発光チップ間のレンズ内相互光起電力効果は可逆的である。光源発光チップからの放射光の内部反射によりすでに1.3Vもの光起電力が受光発光チップの端子間に生じる。
なお、発光チップの色の組合せ例は、段落0014に記載のとおりであるあるが、後述するごとく赤色発光チップがとくに受光効果が大きいのと、赤色発光チップの受光スペクトルのピーク波長に近い発光スペクトルを持つ発光チップは緑色発光チップなので、赤色発光チップを受光用にし緑色発光チップを光源用にするのが好適である。
【0020】
図1(B)に示すように、光センサでは、光源用発光チップ2aから出た光のほとんどはレンズ外に放射され、一部の光はレンズ内面で反射されるが、これにより1V前後の光起電力が発光チップ2bに発生する。これに対し、同図(A)に示すように、被検出物体Sが近づくと、その表面で反射した光が受光用発光チップ2bに入射する。このため発光チップ2bの光起電力は数10mV程度増加する。この起電力の増加を増幅検知することにより、物体の接近あるいは接触を検知することができる。
【0021】
(第2実施形態:3チップLED光センサ)
本発明が用いるLEDとしては、図2に示す3チップタイプも用いることができる。この3チップLED1には赤色発光チップ2r、緑色発光チップ2g、青色発光チップ2bの3つの発光チップが1個のLEDの中に組込まれたものである。
【0022】
本実施形態の一例であるRGB3チップLED(日亜化学NSTM515、直径5mm、長さ8mm、材料は赤色チップはInGaAlP系、緑色と青色LEDはInGaN系材料)のレンズ内光反射によるチップ間相互光起電力効果を、以下に示す。
RGB3チップLEDの構造は図2(A)のとおりである。まず各チップとも電流10mA(定格は20mA)を流した状態で発光スペクトルを調べた。なお入力電圧は、赤色発光チップが1.86V、緑色発光チップが3.38V、青色発光チップが3.14Vであった。その結果、各チップのピーク発光波長は、それぞれ635nm(赤)、526nm(緑)、460nm(青)であった。
次にレンズ内光反射によるチップ間相互光起電力効果を調べた。その結果を表2に示す(入力電流は各チップとも10mA)。
【表2】
表2において、赤色発光チップを光源とした場合、「片想い効果」のため緑色発光チップおよび青色発光チップには光起電力効果が起きないことが分かる。また緑色発光チップを光源とした場合も片想い効果のため青色発光チップには光起電力効果は起きない。光起電力効果が顕著なのは緑色発光チップを光源とした場合で、光起電力は1.43Vと大きい。一方、光電流は0.67μAと小さい。
興味深いのは、青色発光チップを光源とした場合、赤色発光チップも緑色発光チップも光起電力は同じ0.45Vであり、光電流もほとんど同じである。この事実は赤色発光チップ、緑色発光チップとも受光センサとして使用できるということである。
しかしながら、表2から3色発光チップで光センシングを行うには、光源に緑色発光チップ、受光に赤色発光チップを用いるのが最適であることが分かる。
【0023】
図2(B)に示すように、光センサでは、光源用発光チップ2gから出た光のほとんどはレンズ外に放射され、一部の光はレンズ内面で反射されるが、これにより1.4V前後の光起電力が発光チップ2rに発生する。これに対し、同図(A)に示すように、被検出物体Sが近づくと、その表面で反射した光が受光用発光チップ2rに入射する。このため発光チップ2rの光起電力は数10mV程度増加する。この起電力の増加を増幅検知することにより、物体の接近あるいは接触を検知することができる。
【0024】
3つの発光チップのうち、いずれを光源にして、いずれを受光素子にするのも任意である。受光素子は一つの発光チップを用いてもよく、二以上を組合わせてもよい。二つの発光チップを組合わせた場合は、光起電力の違いから対象物の有無のみならず、色を見分けることも可能である。光源として使う発光チップは一つでもよく二つでもよい。二つを光源とする場合は、単色でなく、組合せによって混合色を発光することができる。
【0025】
光源用チップと受光用チップの組合せは、「光源−緑、受光素子−赤」が最適である。
その理由を、つぎに説明する。
図3(A)は発光ピーク波長が640nm付近にあるInGaAlP系赤色発光チップの受光分光特性をグラフにしたものである。同図から明らかなように、赤色発光チップの受光スペクトルのピーク波長は580nm付近にある。同図(B)の青色発光チップや同図(C)の緑色発光チップの受光スペクトルと比較すると、赤色発光チップの受光スペクトルは受光域が広く、光起電力も大きいことが分かる(分光強度は一定に保った状態で測定)。
なお、図3(B)によれば、青色LEDチップの発光スペクトルのピーク波長が420nm付近である。赤色LEDチップの受光スペクトルと比較すると、受光域が狭く、光起電力も小さい。また、図3(C)によれば、緑色LEDチップの発光スペクトルのピーク波長が440nm付近である。青色LEDチップの受光スペクトルと比べると、若干受光域が広いが、光起電力は小さい。
したがって、3チップLED1内にある2r,2g,2bそれそれのチップのうち、受光素子に最も向いているチップは、赤色発光チップであるといえる。
【0026】
一方、発光チップに要求される性質は、受光チップの受光スペクトルのピーク波長に近い波長の光を発光することである。
ここで、赤色発光チップの受光スペクトルのピーク波長に近いピーク波長の発光スペクトルは、緑色であり、緑色発光チップのピーク発光波長は525nmである。青色LEDチップの受光スペクトルのピーク波長に近いピーク波長を持つ発光スペクトルの色は、青色であり、青色LEDチップのピーク発光波長は470nmである。緑色LEDチップの受光スペクトルのピーク波長に近いピーク波長を持つ発光スペクトルの色は、青色であり、青色LEDチップのピーク発光波長は470nmである。
【0027】
上記の赤、緑、青の各発光チップにおいて、受光感度のピークは発光スペクトルのピークより数十nm短波長側にシフトした位置にあるか、赤色発光チップの発光のピーク波長と受光のピーク波長が近い組合せが最適となるはずなので、[発光素子−青、受光素子−緑],[発光素子−青、受光素子−赤],[発光素子−緑、受光素子−赤]の3通りのうち、[発光素子−緑、受光素子−赤]の組合せが最適となる。したがって、2チップタイプも3チップタイプも緑色発光チップを光源、赤色発光チップを受光素子とするのが最もよい。
【0028】
(本発明の他の実施形態)
1)白色LED(2端子のもの)はまだ製品化された多チップLEDは現時点では存在しないが、光起電力効果は小さいながらも有しているので、本発明の光センサとして使用可能である。すなわち、白色発光チップを光源とし、その光を例えば赤色発光チップに入射させると、赤色発光チップには、1.4V前後の光起電力が生じるので、白色発光チップと赤色発光チップを組込んだLEDも本発明の光センサとして使用できる。なお、白色発光チップの光に対して緑色発光チップで受光した場合の光起電力は約0.3V、青色発光チップで受光した場合のそれは約0.1Vであり、現時点では実用的でないが、将来、光起電力が大きくなるよう改良されれば、充分本発明の光センサとして使用できる。
2)また、赤色発光チップの代わりに橙色の発光チップを用いることも可能である。
3)現時点におけるGaN系化合物半導体材料から作られている緑色発光チップや青色発光チップの光起電力効果は小さいが(赤色発光チップに比べ光起電力はともかく光電流が1/50以下)、将来、光起電力が大きくなれば、実用的な使用が可能となる。
4)前記各実施形態はエポキシ樹脂レンズ付の多チップLEDであるが、この場合、侵襲性の液体や溶剤に対しても、フッ素樹脂等の保護膜を表面に被覆すれば、使用可能となる。
5)本発明では、レンズの無い多チップLEDも使用できる。このタイプのLEDは照明付プッシュスイッチなどに組込まれるものであり、こうしたレンズ無し多チップLEDは、例えばタッチセンサとしてそのまま適用可能である。
【0029】
(本発明の信号選択識別回路)
既述のように、LED受光素子は帯域が狭いため混信が起きにくく光ノイズや光環境の影響を受けにくいのであるが、下記のような交流センシング方式(交流信号選択識別回路)を用いれば、バックグラウンド光等の影響をさらに大幅に減少させることができる。つまり、光環境に対する安定性を増強させることができる。
例えば図4(A)のように、光源とするLEDチップに流す電流に周波数f(例えば1kHz)の正弦波(または方形波)交流電流を重畳させたり、図4(B)のように周波数f(例えば1kHz)でスイッチング(点滅)させる。そして受光するLEDチップの側の回路においては光源側で重畳もしくはスイッチングさせた周波数fのみの交流信号を、バンドパスフィルタを通して検出し、その変化から物体や液体の有無を感知する。この信号選択識別回路を用いれば、蛍光灯光に含まれる50Hzや100Hz(関東、欧州など)あるいは60Hzや120Hz(関西、米国など)の交流光ノイズの影響がカットされ、太陽光をも含む環境光の影響も極小化される。
【0030】
(本発明のセンシング使用例)
以下に、本発明の光センサの使用例を説明する。
ただし、以下の使用例は代表的な例を示すものであり、これら以外の用途を制限するものではない。本発明の光センサは、かなり汎用的に使え、その用途には無限の広がりがある。なお、図示の光センサは2チップタイプであるが、3チップタイプであってもよいこと勿論である。
図5は本発明のLED光センサを用いた物体検出の説明図である。図6は本発明のLED光センサを用いた液面検出の説明図である。図7は本発明のLED光センサを用いた液面検出の他の例の説明図である。図8は本発明のLED光センサを用いたパターン読取りの説明図である。
(1)物体検出
図5は、2チップLEDを用いた光センサによる物体検出の説明図である。図示のように、この一方の発光チップ2aから出た光のほとんどはレンズ外に放射される。一部の光はレンズ内面で反射されるが、その光量は小さいため、光起電力も小さい状態である。これに対し、被検出物体Sが近づくと、その表面で反射した光が他の発光チップ2bに入射する。このときの受光量は大きいので、大きな起電力を発生し、例えば、光センサには1V前後の光起電力Vpが生じる。この起電力による電流によって、物体の接近あるいは接触を検知することができる。
被検出物体の色が発光チップから出た光を吸収して充分な反射光が得られない場合は、二つの発光チップの色の組合せを替えて、充分な反射光が得られるようにすればよい。フルカラーの三色発光チップを用いる光センサでは、例えば緑色光を光源としたとき充分な反射光が得られなければ、青色光を光源とするように替えればよい(但し、既述のごとく受光用は赤色発光チップが好ましい)。
また、本発明の光センサは反射型なので、いろいろな物体を検出できる。例えば、2チップLED光センサのレンズ部に指を当てると、光は皮膚で反射してLEDに逆入射するのでタッチセンサとしても利用できる。
【0031】
(2)液面検出
本発明の光センサは反射型なので、液面検出も可能である。
図6(A)に示したように、本発明の光センサを構成するLED1が水面の上方にある場合には、点灯している発光チップの放射光の一部がレンズ内面で(全)反射してもう一つの発光チップに入射し、そのチップの端子間に光起電力を生じる。これがバイアス出力電圧であるが、同図(B)に示すように、LED1のレンズが水中に没するとレンズの屈折率と水のそれとの差が小さいため、レンズ内面での光反射がなくなり光は水中に出ていく。これによりバイアス出力電圧は著しく減少する。このように、このLED1のレンズの先を水につけるとレンズ内面での反射が減り、受光用チップのVpは減少する。このわずかな光起電力の変化を電子回路(コンパレータ回路)で増幅検出すれば、0.1mm程度の精度で液面を検出することができる。
【0032】
LED1の配置の仕方は、図6のように、液面上に置く場合の外、図7に示すように液中に配置してもよい。
この場合、LED1が液中にある場合は、レンズ内面での反射光は少ないが、液面が下がってレンズ頂部が露出すると反射光が多くなるので、出力電圧が増大することにより、液面の低下を検出することができる。
【0033】
液面検出に適用できる液体には、とくに制限なく、例えば、水(工業用水や純水)、油(作動油や潤滑油)、醤油、ソース、薬液、廃液、バッテリー液、生食液など各種液体(侵食性薬品、溶剤を除く)に用いることができる。また、本発明の光センサは、本体となるLEDの直径は5mm、長さ8mm程度と超小型なので、例えば、点滴治療、輸血、透析などを行う医療現場での液面制御にも利用できる。
検出対象の液体の色が、光源である発光チップの発光色と同じで、しかも液体の色が濃い場合、あるいは液体がミルクのような濃い白色をしているなど、液体が光源用発光チップの放射光に反射性(あるいは反射的)である場合には、図5のような反射方式で液面検出を行うこともできる。
この場合、3チップLEDを用いた場合は、任意の一つの発光チップを除いた残り二つの発光チップを組み合わせて、任意の光を発光できる。例えば、下記左側に記載の色の発光が可能である。
・青色と緑色を合わせ、青緑色を発光→赤色発光チップで受光
・青色と赤色を合わせ、ピンク色を発光→緑色発光チップで受光
したがって、被検出物体の地色等に左右されない物体検出あるいは液面検出を可能とすることができる。
(3)バーコード・リーダあるいはマークシート・リーダ
図8(A)の上段はバーコードパターンを示しており、下段は、そのバーコードパターンを本発明の光センサで読み取った場合の出力電圧波形を示している。バーコードパターンの黒地の部分と白地の部分では光反射率が異なるので、このような出力波形が得られ、本発明の光センサで、バーコード・リーダを構成することができる。
図8(B)は、マークシート・リーダ20を示している。このマークシート・リーダ20は本発明のLED光センサ1を横列に並べてマークの配列パターンに合わせて配置されている。マークシート21は、所定の場所に人がマークを塗りつぶす一般的なタイプを用いることができ、各マークの黒白(塗り、塗らない)の別を同一間隔で配置した複数個のLED光センサ1で検出することができる。
【0034】
(本発明の長所)
本発明では1個のLED内の2以上の発光チップを光源と受光素子として構成するため、フォトダイオードやフォトトランジスタといった別体の受光素子は不要となる。したがって光センシングシステムの構成や光センシングデバイスの構造が非常に簡素となり、製造コストも安くて済む。その結果、超小型、超軽量、きわめてシンプル、防水性、機密性、防爆が容易、低価格、長寿命、保守性、汎用性(何にでも使える)、超低消費電力、設置が容易、液体に浸かっても大丈夫、などの利点が得られる。
また、従来技術で受光素子として多用されているSi−PDに比べると受光帯域が狭いので、不要な光信号やノイズに影響されにくく、検知動作が正確になるという利点がある。
さらに、光源の寿命が長く、クリーンな環境でなくとも使用できる耐環境性が高いので、使用上の制限が少なく、河川や井戸、海など野外での水位検知、工業生産ライン、農業栽培現場、医薬製造ライン、医療現場などで汎用的に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】2チップタイプLED光センサの説明図である。
【図2】3チップタイプLED光センサの説明図である。
【図3】(A)図は赤色発光チップの波長スペクトルを示すグラフ、(B)図は青色発光チップの波長スペクトルを示すグラフ、(C)図は緑色発光チップの波長スペクトルを示すグラフである。
【図4】信号選択識別回路の回路図である。
【図5】本発明のLED光センサを用いた物体検出の説明図である。
【図6】本発明のLED光センサを用いた液面検出の説明図である。
【図7】本発明のLED光センサを用いた液面検出の他の例の説明図である。
【図8】本発明のLED光センサを用いたパターン読取りの説明図である。
【図9】本発明の光センサの技術原理説明図である。
【図10】光起電力の特性説明図である。
【図11】(A)図は赤色LEDの発光スペクトルと受光分光特性を示すグラフ、(B)図はLEDとPDの受光帯域を比較したグラフである。
【図12】(A)〜(D)は従来の光センサの構成と使用方法の説明図である。
【符号の説明】
【0036】
1 LED
2a、2b 発光チップ
2r,2b,2g 発光チップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の発光チップが1個の発光ダイオード内に組込まれた多チップ発光ダイオードであって、
一の発光チップを受光素子として用い、
他の発光チップを光源として用いる
ことを特徴とする光センサ。
【請求項2】
2個の発光色の異なる発光チップで1個の発光ダイオードを構成している
ことを特徴とする請求項1記載の光センサ。
【請求項3】
赤色または橙色の発光チップ、青色の発光チップおよび緑色の発光チップからなる3色の発光チップで1個の発光ダイオードを構成している
ことを特徴とする請求項1記載の光センサ。
【請求項4】
光源用に短波長側の発光チップを用い、受光用に長波長側の発光チップを用いた
ことを特徴とする請求項2または3記載の光センサ。
【請求項5】
光源用に緑色の発光チップを用い、受光用に赤色の発光チップを用いた
ことを特徴とする請求項4記載の光センサ。
【請求項6】
光源用発光チップに所定の周波数の交流電流を重畳させるか断続的に印加し、受光用発光チップの出力回路において同一周波数の交流信号を検出する信号選択識別回路を設けた
ことを特徴とする請求項1記載の光センサ。
【請求項7】
受光用発光チップが光源用発光チップの放射光を受光したか、または受光量が増加したことによって、被検出物を検知する
ことを特徴とする請求項1記載の光センサ。
【請求項8】
受光用発光チップが光源用発光チップの放射光を受光しなくなったか、または受光量が減少したことによって、被検出物を検知する
ことを特徴とする請求項1記載の光センサ。
【請求項1】
2以上の発光チップが1個の発光ダイオード内に組込まれた多チップ発光ダイオードであって、
一の発光チップを受光素子として用い、
他の発光チップを光源として用いる
ことを特徴とする光センサ。
【請求項2】
2個の発光色の異なる発光チップで1個の発光ダイオードを構成している
ことを特徴とする請求項1記載の光センサ。
【請求項3】
赤色または橙色の発光チップ、青色の発光チップおよび緑色の発光チップからなる3色の発光チップで1個の発光ダイオードを構成している
ことを特徴とする請求項1記載の光センサ。
【請求項4】
光源用に短波長側の発光チップを用い、受光用に長波長側の発光チップを用いた
ことを特徴とする請求項2または3記載の光センサ。
【請求項5】
光源用に緑色の発光チップを用い、受光用に赤色の発光チップを用いた
ことを特徴とする請求項4記載の光センサ。
【請求項6】
光源用発光チップに所定の周波数の交流電流を重畳させるか断続的に印加し、受光用発光チップの出力回路において同一周波数の交流信号を検出する信号選択識別回路を設けた
ことを特徴とする請求項1記載の光センサ。
【請求項7】
受光用発光チップが光源用発光チップの放射光を受光したか、または受光量が増加したことによって、被検出物を検知する
ことを特徴とする請求項1記載の光センサ。
【請求項8】
受光用発光チップが光源用発光チップの放射光を受光しなくなったか、または受光量が減少したことによって、被検出物を検知する
ことを特徴とする請求項1記載の光センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−93450(P2006−93450A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−278007(P2004−278007)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【出願人】(393013984)関西テープレコーダ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【出願人】(393013984)関西テープレコーダ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]