説明

光ディスクドライブ装置

【課題】記録再生中における対物レンズの最適なチルト補正を短時間で適正に行う。
【解決手段】任意の光ディスク1から対物レンズ3の組み立て誤差による傾きを補正する第1のチルト駆動信号を求め、記録又は再生対象の光ディスクの記録又は再生前に、光ピックアップ4を光ディスクの半径方向に移動して各フォーカス駆動信号とピックアップの半径方向位置の関係を示す第2の近似式を求め、記録中又は再生中には第2の近似式と、光ピックアップの現在の半径方向位置と、フォーカス駆動信号に対する対物レンズの変位量の感度と、チルト駆動信号に対する対物レンズの傾き角の感度から第2のチルト駆動信号を求め、第1、第2のチルト駆動信号を加算したチルト駆動信号を、光ピックアップの現在の半径方向位置における第3のチルト駆動信号としてチルト補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクの反りや傾きがある場合にチルト駆動信号により光ピックアップの対物レンズの光軸が光ディスクの面に対して垂直になるようにチルト補正する光ディスクドライブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクに対して情報を記録再生するための光ビームは、その光軸が光ディスク面に対して垂直となるように設定されることで、微細なトラックピッチで高密度に情報の記録ができ、また微細なトラックピッチのトラックから情報を再生することができる。しかし、光ディスクの半径方向に反りがあったり、光ディスクの面が傾いている場合は、光ビームの光軸に対して光ディスクの面が垂直とはならず、高密度な記録再生ができないため、それらの光ディスクの半径方向の反りや光ディスク面の傾きを補正するチルト補正が従来より行われている。
【0003】
特許文献1記載のチルト補正方法では、ディスクの半径方向の反りやディスクの傾きを補正するために、ディスクの内周から外周に至る数箇所の位置で、各々フォーカスサーボを実行し、フォーカス駆動回路に与えるフォーカス駆動信号を測定し、それぞれ測定したフォーカス駆動信号の隣り合う測定値の差分とディスク半径位置の差分を用いて、ディスク半径位置におけるとチルト角を求めている。ここで言うフォーカス駆動信号とは、フォーカス方向の変移量を表すパラメータと等価な信号であり、光ディスクに光ビームを収束するための対物レンズの初期状態(アクチュエータに電圧を加えない状態)から、フォーカスサーボ実行時にフォーカスアクチュエータに加える電圧を表すパラメータであって、対物レンズの初期位置とディスクとの距離が大きければ、駆動電圧は大きくなり、距離が小さければ、駆動電圧は小さくなる。つまり、測定した隣り合うフォーカス変移量の差分とディスク半径位置の差分とから、各々の位置における角度を算出し、その角度値とディスク位置の相関関係を求めたものである。
【特許文献1】特開平10−177729号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術にある方法においては、フォーカス駆動信号の差分とディスク半径位置の差分からチルト角を導いているため、チルト角がステップ状で滑らかでなく、フォーカス駆動信号の測定誤差がそのままチルト角に換算されるため、チルト角が正確さに欠き、実際のディスクの反りや傾きを表しにくいという問題点がある。正確にディスクの反りや傾きを測定するとすれば、多くの測定数を必要とし、また、各々の測定精度を上げる必要がある。
【0005】
また、フォーカス駆動信号とディスク半径位置の関係からのみ、チルト駆動信号を求めているが、この場合、光ピックアップのディスク半径方向のガイドレールの傾き、光ディスクの設置面の傾き、光ディスクの反りにおいては、補正することができるが、実際は、前記対物レンズの組み立て誤差による傾きが残るため、その分を加えた最適なチルト角を導くことができない。
【0006】
さらに、光ピックアップ内の対物レンズの傾きを加えた総合的なチルト角を求めるには、再生信号の品質であるジッタやエラーレートの測定による方法もあるが、青色レーザを用いた高密度ディスク(Blu-ray(登録商標) Disc)の場合、ディスクカバー層の厚みが100[μm]であって従来のDVDに比べ薄く、チルト角に対するジッタやエラーレートの変化が現れにくいため、最適なチルト駆動信号を導くには、変化が現れるまで、チルト角を振りながら、測定する必要があり、サーボ外れが発生する危険性もあり、再生中に行うには適さない。
【0007】
本発明は以上のような問題点に鑑みなされたもので、記録再生中における対物レンズの最適なチルト補正を短時間で適正に行うことが可能な光ディスクドライブ装置を提供することを目的とする。
本発明は特に、多くの測定数を必要とすることなく、また、各々の測定精度を上げる必要がなく正確なチルト角を得ることができる光ディスクドライブ装置を提供することを目的とする。
また、本発明は特に、対物レンズの組み立て誤差による傾きに応じた正確なチルト角を得ることができる光ディスクドライブ装置を提供することを目的とする。
また、本発明は特に、フォーカス駆動信号やチルト駆動信号に対する対物レンズの感度に応じた正確なチルト角を得ることができる光ディスクドライブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために、対物レンズの傾きを補正するためにチルト駆動信号により前記対物レンズを傾け、光ピックアップにおける前記対物レンズの光軸が光ディスクの面に対して垂直になるようにチルト補正する光ディスクドライブ装置において、
前記光ピックアップを光ディスクの再生可能領域に固定した状態で、N個(Nは、3以上の自然数)のチルト駆動信号により前記対物レンズをそれぞれ傾け、各チルト駆動信号における前記光ピックアップによる再生信号のジッタ値を測定して各チルト駆動信号と測定したジッタ値との関係を示す第1の近似式を求め、前記第1の近似式においてジッタ値が最小となるチルト駆動信号を、前記対物レンズの傾きを補正する第1のチルト駆動信号として求めて保存する手段と、
記録又は再生対象の光ディスクの記録又は再生前に、前記光ピックアップを前記光ディスクの半径方向に移動しながら、M個(Mは、3以上の自然数)の半径方向位置における各フォーカス駆動信号を測定し、各フォーカス駆動信号と前記ピックアップの半径方向位置の関係を示す第2の近似式を求める手段と、
前記記録又は再生対象の光ディスクの記録中又は再生中に、前記第2の近似式と、前記光ピックアップの現在の半径方向位置と、フォーカス駆動信号に対する前記対物レンズの変位量の感度と、チルト駆動信号に対する前記対物レンズの傾き角の感度から第2のチルト駆動信号を求め、前記第1、第2のチルト駆動信号を加算したチルト駆動信号を、前記光ピックアップの現在の半径方向位置における第3のチルト駆動信号としてチルト補正する手段とを、
備えた。
【0009】
また、本発明は上記目的を達成するために、対物レンズの傾きを補正するためにチルト駆動信号により前記対物レンズを傾け、光ピックアップにおける前記対物レンズの光軸が光ディスクの面に対して垂直になるようにチルト補正する光ディスクドライブ装置において、
前記光ピックアップを光ディスクの再生可能領域に固定した状態で、N個(Nは、3以上の自然数)のチルト駆動信号により前記対物レンズをそれぞれ傾け、各チルト駆動信号における前記光ピックアップによる再生信号のエラーレートを測定して各チルト駆動信号と測定したエラーレートとの関係を示す第1の近似式を求め、前記第1の近似式においてエラーレートが最小となるチルト駆動信号を、前記対物レンズの傾きを補正する第1のチルト駆動信号として求めて保存する手段と、
記録又は再生対象の光ディスクの記録又は再生前に、前記光ピックアップを前記光ディスクの半径方向に移動しながら、M個(Mは、3以上の自然数)の半径方向位置における各フォーカス駆動信号を測定し、各フォーカス駆動信号と前記ピックアップの半径方向位置の関係を示す第2の近似式を求める手段と、
前記記録又は再生対象の光ディスクの記録中又は再生中に、前記第2の近似式と、前記光ピックアップの現在の半径方向位置と、フォーカス駆動信号に対する前記対物レンズの変位量の感度と、チルト駆動信号に対する前記対物レンズの傾き角の感度から第2のチルト駆動信号を求め、前記第1、第2のチルト駆動信号を加算したチルト駆動信号を、前記光ピックアップの現在の半径方向位置における第3のチルト駆動信号としてチルト補正する手段とを、
備えた。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、各フォーカス駆動信号とピックアップの半径方向位置の関係を示す第2の近似式を求めるので、多くの測定数を必要とすることなく、また、各々の測定精度を上げる必要がなくディスクの半径方向の反りやディスクの傾きを求めることができ、正確なチルト角を得ることができる。
また、対物レンズの組み立て誤差による傾きを補正する第1のチルト駆動信号を求めてチルト補正するので、対物レンズの組み立て誤差による傾きに応じた正確なチルト角を得ることができる。
また、第2の近似式と、光ピックアップの現在の半径方向位置と、フォーカス駆動信号に対する対物レンズの変位量の感度と、チルト駆動信号に対する対物レンズの傾き角の感度から第2のチルト駆動信号を求めるので、フォーカス駆動信号やチルト駆動信号に対する対物レンズの感度に応じた正確なチルト角を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
<第1の実施の形態>
図1は本発明に係る光ディスクドライブ装置の第1の実施の形態である光情報記録再生装置を示すブロック図である。図1に示すように、この光情報記録再生装置は、光源である例えば半導体レーザ素子(不図示)より出射されるレーザ光2を対物レンズ3を介して、光記録媒体である例えば光ディスク1へ導き、この反射光を対物レンズ3を介して光検出器21で検出する光ピックアップ4を有している。光ピックアップ4はまた、図示省略されているが、対物レンズ3の光軸の傾き(チルト)を補正するためのチルトアクチュエータ(以下、ACT)と、対物レンズ3を光ディスク1の面に対する方向(フォーカス方向)に駆動してフォーカシングを行うためのフォーカスACTと、対物レンズ3を光ディスク1のトラック(不図示)を横切る方向に駆動してトラッキングを行うためのトラッキングACTを備えている。これらのチルトACT、フォーカスACT、トラッキングACTはそれぞれ、チルトACTドライバ9、フォーカスACTドライバ10、トラッキングACTドライバ11からの各駆動信号により駆動される。コントローラ14はイコライザ回路15と、フォーカス駆動信号測定回路16と、ジッタ測定部18とチルト制御部19を有する。
【0012】
サーボ信号としては、フォーカスエラー演算回路12、トラッキングエラー演算回路13によりそれぞれ、光ピックアップ4内の光検出器21の検出信号に基づいてフォーカスエラー信号F、トラッキングエラー信号Tを演算することにより得られる。フォーカスエラー演算回路12により得られたフォーカスエラー信号Fは、イコライザ回路15内の不図示の位相補償回路に印加されて、ここでフォーカス駆動信号が生成されてフォーカスACT(アクチュエータ)ドライバ9に供給されるとともに、フォーカス駆動信号測定回路16によって測定され、保存される。フォーカス駆動信号測定回路16は、フォーカス駆動信号を不図示のフィルタ回路を経て一定時間間隔で取り出したサンプリング値を平均化し、その数値を読み出せる。トラッキングエラー信号Tは、イコライザ回路15内の不図示の位相補償回路に印加されて、ここでトラッキング駆動信号が生成されてトラッキングACTドライバ10に供給される。
【0013】
ジッタ測定部18は、光検出器21から取り出した再生信号を再生信号イコライザ17により最適化した再生信号のジッタを測定し、その数値をチルト制御部19が読み出す。チルト制御部19は、マイクロコンピュータなどにより構成されたハードウェアをプログラムの記述により、今回のチルト補正値を求める動作を実現している。チルト制御部19では、後述するような動作を行って、ディスク1の任意の位置におけるチルト最適値をチルトACTドライバ8に向けて出力するようになっている。
【0014】
スピンドルドライバ11は、ディスク1の回転制御をコントローラ14から受けてスピンドルモータ11aを制御する。スレッドモータ6はステッピングモータなどであって、その主軸にリードスクリュー5を連結し、リードスクリュー5の回転によって、リードスクリュー5と並行に設置されたガイドレール(不図示)に沿って光ピックアップ4をディスク1の半径方向に移動させる。スレッドドライバ7はスレッドモータ6を制御し、回転ステップ数、回転方向をコントローラ14によって制御し、ディスク1の内周から外周まで、任意の位置に位置決め制御させることができる。
【0015】
ここでチルト補正方法について説明すると、まず、スレッドモータ6により、光ピックアップ4を光ディスク1の再生可能な領域の最内周の位置へ移動させる。ここで、フォーカスサーボ、トラッキングサーボ、スピンドルサーボを実行し、第1の過程を実行する。第1の過程とは、チルトACTドライバ8に対し、異なるN個(Nは、3以上の自然数)のチルト駆動信号をチルト制御部19から与え、各々の状態において、再生信号のジッタをジッタ測定部18により測定し保存する。測定したN個のジッタ測定値に基づいて、ジッタ値が最小となる第1のチルト駆動信号1を第1の近似式により計算して求めて保存する過程である。この過程は、製造過程において、記録又は再生対象のディスクでない、反りの少ない標準的なディスクを使って一度、行えばよい。
【0016】
第2の過程とは、コントローラ14からスレッドドライバ7に対し指令することにより、スレッドモータ6により光ピックアップ4の位置を異なるM個(Mは、3以上の自然数)の位置へ移動させる。そして、各々の位置において、フォーカスサーボを実行し、フォーカス駆動信号をフォーカス駆動信号測定回路16により測定する。測定したM個のフォーカス駆動信号と光ピックアップ4の位置とから第2の近似式を求め、第2の近似式の係数を保存する過程である。移動させるM個の位置がディスク1の内周から外周へ渡っていれば、ディスク1の任意の位置における傾きを表す方程式を得ることができる。この過程は、記録又は再生対象のディスク1の挿入ごとに実行する初期調整の一部として行う。
【0017】
その後、通常の再生又は記録動作に移った後、光ピックアップ4の位置をディスク1の物理アドレス又は光ピックアップ4の原点位置からのステップ数などにより、光ピックアップ4のディスク1上の位置を計算し、第2の過程で求めた第2の近似式の係数から、再生又は記録中の光ピックアップ4の位置における第2のチルト駆動信号2を計算し、先に求めた第1の過程から得られた第1のチルト駆動信号1を加算して、チルトACTドライバ8に向けてコントローラ14から設定することにより、ディスクの反りや傾きに対するチルト補正が常に最適に保たれるというものである。
【0018】
次に、以上のように構成された本発明の実施の形態の動作について説明する。図2のフローチャートを参照して第1の過程から説明する。電源投入、ディスクローディング後、初期準備1の実行を行う(ステップS1)。この初期準備1では、光ピックアップ4を内周側へ移動させ、この位置において光ピックアップ4の移動ステップ数を“0”にセットする。続いて、フォーカスサーボを行うのに必要なパラメータの設定を行うために、光ピックアップ4を所定の位置へ移動させ、この位置において、フォーカスエラーオフセット調整、トラッキングエラーオフセット調整、フォーカスエラーゲイン調整、トラッキングエラーゲイン調整などを行い、フォーカスサーボ及びトラッキングサーボを実行できるようにサーボパラメータを設定する。
【0019】
次に、光ピックアップ4を光ディスク1の再生可能領域の最内周へ移動させる(ステップS2)。この位置においてフォーカスサーボON(ステップS3)、トラッキングサーボON(ステップS4)を実行し、スピンドルの線速度一定制御(CLV)ON(ステップS5)、スチルON(1回転後1トラック前へジャンプする)(ステップS6)を動作させ、光ピックアップ4の再生トラックを一定に固定させる。
【0020】
次に、N個のチルト駆動信号をチルトACTドライバ8に与え、各々の状態における再生信号のジッタ値をジッタ測定部18により測定する過程に移る。まず、チルト駆動信号の数を示す変数nを初期値“1”に設定(ステップS7)し、次いでチルト駆動信号を第n(=1)の状態に設定し、チルトACTドライバに与える(ステップS8)。この状態のジッタ値をジッタ測定部18により測定して保存する(ステップS9)。続いて、変数nがNであるか判定し(ステップS10)、Nでなければ、変数nを“1”インクリメント(ステップS11)した後、再び、ステップS8〜 S10を変数nがNとなるまで繰り返す。
【0021】
このようにして、変数nがNとなるまで繰り返すと、N個のチルト駆動信号とジッタ値が保存されるので、これらN組の測定値に基づいて、近似式1を求める。近似式はn次関数を最小自乗法によって求めるが、求める近似式1が図3に示すような2次関数とすれば、
Y=A・X2+B・X+C
となる係数A、B、Cを求めることになる(ステップS12)。ここで、図3におけるX軸はチルト駆動信号、Y軸はジッタ値である。次に、求めた近似式1からジッタ値Yが最小となるチルト駆動信号をチルト駆動信号1として求める(ステップS13)。これは近似式1の極値となるので、近似式1の1階微分方程式=0となるXを求める。よって、
1=−B/2・A
となるX1を求め、チルト駆動信号1として保存し、第1の過程を終了する。また、この第1の過程は、ピックアップ4内の対物レンズ3の組み立て誤差による傾きを補正するためであるので、製造工程の中で行えばよく、記録又は再生対象のディスク1の入れ替え時に毎回行う必要はない。
【0022】
次に、第2の過程について、図4のフローチャートを参照して説明する。電源投入、ディスクローディング後、初期準備2の実行を行う。この初期準備2(ステップS21)では、光ピックアップ4を内周側へ移動させ、この位置において光ピックアップ4の移動ステップ数を“0”にセットする。続いて、フォーカスサーボを行うのに必要なパラメータの設定を行うために、光ピックアップ4を所定の位置へ移動させ、この位置においてフォーカスエラーオフセット調整、フォーカスエラーゲイン調整を行い、フォーカスサーボを実行できるようにサーボパラメータを設定し、次に、フォーカスサーボを実行する(ステップS22)。
【0023】
次に、光ピックアップ4をM個の半径方向の位置に移動しながら、各々の位置でフォーカス駆動信号をフォーカス駆動信号測定回路16により測定する過程に移る。まず、光ピックアップ4の位置を示す変数nを初期値“1”に設定し(ステップS23)、光ピックアップの位置を第n(=1)の位置へ移動させ(ステップS24)、この位置のフォーカス駆動信号をフォーカス駆動信号測定回路16により測定して保存する(ステップS25)。続いて、変数nがMであるか判定し(ステップS26)、Mでなければ、変数nを“1”インクリメント(ステップS27)した後、再びステップS24〜S26を変数nがMとなるまで繰り返す。
【0024】
このようにして変数nがMとなるまで繰り返すと、光ピックアップ4のM個の位置とフォーカス駆動信号が保存されるので、これらM組の測定値に基づいて、近似式2を求める。近似式はn次関数を最小自乗法によって求め、求める近似式2が図5に示すような3次関数とすれば、
Y=A・X3+B・X2+C・X+D
となる係数A、B、C、Dを求めて保存し(ステップS28)、第2の過程を終了する。ここで、図5におけるX軸は、光ピックアップ4の位置から得る光ディスク1の半径方向の位置(ディスク半径位置)、Y軸はフォーカス駆動信号である。第2の過程は、記録又は再生対象の光ディスク1の挿入ごとに行う必要があり、初期の自動調整の中で実行するのがよい。
【0025】
次に、記録/再生中の動作について、図6のフローチャートを参照して説明する。まず、現在のディスクアドレスを読み取り、半径位置Xを求める(ステップS31)。第2の過程で得た近似式2に、あらかじめ既知であるフォーカス駆動信号に対するフォーカス変移量を表す感度値K1 を掛け合わせ、X軸を光ピックアップ4の位置から得る光ディスクの半径位置、Y軸をフォーカス変移量とした近似式3に変換する(ステップS32)。
近似式3:
フォーカス変移量Y=K1×近似式2
=K1×(A・X3+B・X2+C・X+D)
【0026】
次に、近似式3を1階微分して1階微分方程式を求め、X軸を光ピックアップ4の位置から得る光ディスク1の半径位置とし、Y軸を光ピックアップ4に対する光ディスクの傾きとした近似式4を得る(ステップS33)。
近似式4:
光ディスクの傾きY=K1×(3A・X2+2B・X+C)
【0027】
近似式4と光ピックアップ4の位置から得る光ディスクの半径位置Xから、傾きΔを求め(ステップS34)、その傾きを角度θに換算し(ステップS35)、あらかじめ既知であるチルト駆動信号に対する対物レンズの傾き角を表す感度値K2を角度θに掛け合わせることで、光ピックアップ4の位置から得る光ディスクの半径位置における傾き量を補正するチルト駆動信号2(=K2×角度θ)を得る(ステップS36)。そして、図7に示すように第1の過程から得たチルト駆動信号1とチルト駆動信号2を加算した最適チルト補正量(チルト駆動信号3)を算出し(ステップS37)、
チルト駆動信号3=チルト駆動信号1+チルト駆動信号2
=−B/2・A+K2×θ
このチルト駆動信号3をチルトACTドライバ8に出力する(ステップS38)ことで、光ディスクの任意の位置における最適なチルト補正を行うことができる。
【0028】
なお、図3は第1の過程から得られたチルト駆動信号とジッタ値の関係を示す図で、近似式1からジッターが最小となるチルト駆動信号1を導くことができる。図5は第2の過程から得られたディスク半径位置とフォーカス駆動信号の関係を示す図で、この近似式2から、前記の手順に従えば、ディスク半径位置に対する反りや傾きを表すことができ、図7のように任意のディスク半径位置における最適なチルト駆動信号3を導くことができる。
【0029】
<第2の実施の形態>
図8は本発明に係る光ディスクドライブ装置の第2の実施の形態である光情報記録再生装置を示すブロック図である。第2の実施の形態では、図1に示すジッタ測定部18の代わりにエラーレート測定部20が設けられている。エラーレート測定部20は光検出器21から取り出した再生信号を再生信号イコライザ17により最適化した再生信号のエラーレートを測定し、その数値をチルト制御部19が読み出す。他の構成は、再生信号のエラーレートに基づいてチルト駆動する点を除き、同じであるので、説明を省略する。
【0030】
図9は第2の実施の形態における第1の過程の処理を示し、図2に対してステップ9a、12a、13aが異なり、他の処理は同じである。ステップ9aでは、エラーレート測定部20は再生信号のエラーレートを測定して保存する。そして、ステップ12aでは、N個のチルト駆動信号とエラーレートが保存されると、これらN組の測定値に基づいて、近似式1を求める。近似式はn次関数を最小自乗法によって求めるが、求める近似式1が同じく図10(a)に示すような2次関数とすれば、
Y=A・X2+B・X+C
となる係数A、B、Cを求める。ここで、図10(a)におけるX軸はチルト駆動信号、Y軸はエラーレートである。次に、求めた近似式1からエラーレートが最小となるチルト駆動信号1を求める(ステップS13a)。これは近似式1の極値となるので、近似式の1階微分方程式=0となるXを求める。よって、
1=−B/2・A
となるX1を求め、チルト駆動信号1として保存し、第1の過程を終了する。
【0031】
第2の実施の形態における第2の過程の処理は、第1の実施の形態(図4)と同じである。また、記録/再生中の処理も第1の実施の形態(図6)と同じであるが、図6におけるステップS37において、
チルト駆動信号3=チルト駆動信号1+チルト駆動信号2
=−B/2・A+K2×θ
を求める場合のチルト駆動信号1は、図9においてエラーレートに基づいて求めたものである点が異なる。
【0032】
ここで、図10(a)は第1の過程から得られたチルト駆動信号とエラーレートの関係を示す図で、近似式1からエラーレートが最小となるチルト駆動信号1を導くことができる。図10(b)は図5と同じであり、第2の過程から得られたディスク半径位置とフォーカス駆動信号の関係を示す図で、この近似式2から、前記の手順に従えばディスク半径位置に対する反りや傾きを表すことができる。図10(c)は図7と同じであり、任意のディスク半径位置における最適なチルト駆動信号3を導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る光ディスクドライブ装置の第1の実施の形態である光情報記録再生装置の一例を示す構成図である。
【図2】第1の実施の形態における第1の過程を表すフローチャートである。
【図3】第1の実施の形態におけるチルト駆動信号とジッタ測定値の関係を示すグラフである。
【図4】第1の実施の形態における第2の過程を表すフローチャートである。
【図5】第1の実施の形態におけるディスク半径位置とフォーカス駆動信号の関係を示すグラフである。
【図6】第1の実施の形態における記録/再生中の動作を表すフローチャートである。
【図7】第1の実施の形態におけるディスク半径位置とチルト駆動信号の関係を示すグラフである。
【図8】本発明に係る光ディスクドライブ装置の第2の実施の形態である光情報記録再生装置の一例を示す構成図である。
【図9】第2の実施の形態における第1の過程を表すフローチャートである。
【図10】第2の実施の形態におけるチルト駆動信号とエラーレート測定値の関係、ディスク半径位置とフォーカス駆動信号の関係、及びディスク半径位置とチルト駆動信号の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0034】
1 光ディスク
2 レーザー光
3 対物レンズ
4 光ピックアップ
5 リードスクリュー
6 スレッドモータ
7 スレッドドライバ
8 チルトアクチュエータドライバ
9 フォーカスアクチュエータドライバ
10 トラッキングアクチュエータドライバ
11 スピンドルドライバ
12 フォーカスエラー演算回路
13 トラッキングエラー演算回路
14 コントローラ
15 イコライザ回路
16 フォーカス駆動信号測定部
17 再生信号イコライザ
18 ジッタ測定部
19 チルト制御部
20 エラーレート測定部
21 光検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズの傾きを補正するためにチルト駆動信号により前記対物レンズを傾け、光ピックアップにおける前記対物レンズの光軸が光ディスクの面に対して垂直になるようにチルト補正する光ディスクドライブ装置において、
前記光ピックアップを光ディスクの再生可能領域に固定した状態で、N個(Nは、3以上の自然数)のチルト駆動信号により前記対物レンズをそれぞれ傾け、各チルト駆動信号における前記光ピックアップによる再生信号のジッタ値を測定して各チルト駆動信号と測定したジッタ値との関係を示す第1の近似式を求め、前記第1の近似式においてジッタ値が最小となるチルト駆動信号を、前記対物レンズの傾きを補正する第1のチルト駆動信号として求めて保存する手段と、
記録又は再生対象の光ディスクの記録又は再生前に、前記光ピックアップを前記光ディスクの半径方向に移動しながら、M個(Mは、3以上の自然数)の半径方向位置における各フォーカス駆動信号を測定し、各フォーカス駆動信号と前記ピックアップの半径方向位置の関係を示す第2の近似式を求める手段と、
前記記録又は再生対象の光ディスクの記録中又は再生中に、前記第2の近似式と、前記光ピックアップの現在の半径方向位置と、フォーカス駆動信号に対する前記対物レンズの変位量の感度と、チルト駆動信号に対する前記対物レンズの傾き角の感度から第2のチルト駆動信号を求め、前記第1、第2のチルト駆動信号を加算したチルト駆動信号を、前記光ピックアップの現在の半径方向位置における第3のチルト駆動信号としてチルト補正する手段とを、
備えた光ディスクドライブ装置。
【請求項2】
対物レンズの傾きを補正するためにチルト駆動信号により前記対物レンズを傾け、光ピックアップにおける前記対物レンズの光軸が光ディスクの面に対して垂直になるようにチルト補正する光ディスクドライブ装置において、
前記光ピックアップを光ディスクの再生可能領域に固定した状態で、N個(Nは、3以上の自然数)のチルト駆動信号により前記対物レンズをそれぞれ傾け、各チルト駆動信号における前記光ピックアップによる再生信号のエラーレートを測定して各チルト駆動信号と測定したエラーレートとの関係を示す第1の近似式を求め、前記第1の近似式においてエラーレートが最小となるチルト駆動信号を、前記対物レンズの傾きを補正する第1のチルト駆動信号として求めて保存する手段と、
記録又は再生対象の光ディスクの記録又は再生前に、前記光ピックアップを前記光ディスクの半径方向に移動しながら、M個(Mは、3以上の自然数)の半径方向位置における各フォーカス駆動信号を測定し、各フォーカス駆動信号と前記ピックアップの半径方向位置の関係を示す第2の近似式を求める手段と、
前記記録又は再生対象の光ディスクの記録中又は再生中に、前記第2の近似式と、前記光ピックアップの現在の半径方向位置と、フォーカス駆動信号に対する前記対物レンズの変位量の感度と、チルト駆動信号に対する前記対物レンズの傾き角の感度から第2のチルト駆動信号を求め、前記第1、第2のチルト駆動信号を加算したチルト駆動信号を、前記光ピックアップの現在の半径方向位置における第3のチルト駆動信号としてチルト補正する手段とを、
備えた光ディスクドライブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−299939(P2008−299939A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143686(P2007−143686)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】