光ディスクドライブ
【課題】 多層光ディスクでは手前にある複数の記録層による反射及び吸収の影響により実効的な反射率が極めて小さいために再生信号のSNRが低下する。また、レーザの戻り光雑音を抑圧するために高周波重畳法を適用する場合、一部ディスク種では、記録消去が起き易く、レーザの戻り光雑音抑圧と記録消去の抑圧を同時に実現するのが困難である。
【解決手段】 本発明では、上記課題を解決するために、再生方式としてMTDを実行する手段を有する。また、記録層に照射する再生光パルスの位置及び形状を制御する手段を有する。
【解決手段】 本発明では、上記課題を解決するために、再生方式としてMTDを実行する手段を有する。また、記録層に照射する再生光パルスの位置及び形状を制御する手段を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクドライブの再生技術に関し、特に再生光耐性に優れた光ディスクドライブに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の適用範囲は、Blu-ray Disc(BD)に限定されないが、以下における説明ではBDを前提とし、また、用語もBDで使用されるものを基本とする。
【0003】
BDを初めとする現行の光ディスク装置の多くは、その光源として用いているレーザダイオードが発する雑音を抑制するために高周波重畳法を採用している。この技術は、非特許文献1で開示されており、また当業者間では公知のことであるので、以下の記述に必要な事項のみ述べ、それ以上は詳述しない。
【0004】
ディスクで反射されたレーザ光が発振中のレーザダイオードに入射すると発振状態が不安定化する結果、著しいレーザ雑音を生じる。これを回避するために、高周波重畳法が用いられている。これは、レーザダイオードの駆動信号に高周波信号を重畳させてレーザをパルス発光させるものである。その発光波形は、図2に示すような周期パルスである。ここで、レーザパルスの間隔(変調周期)とそれに対する発光期間との比率(デューティ)、それにパルスのピークパワー若しくはレーザパルス列の平均パワーが主要なパラメータである。レーザパルスの間隔とパルスデューティは、ディスクで反射されてきたレーザパルスがレーザ発振中にレーザダイオードに入射しないことを主眼に置いて決められる。
【0005】
光ディスクの記録層には、マークとスペースによって情報が記録されている。記録型ディスクの場合、マークとスペースとでは、反射率が異なっている。よって、パルス状のレーザ光を光ディスクの記録膜上に焦点を結ばせると、レーザ光が照射された箇所がマークあるいはスペースかによって反射されるレーザ光の強度が異なるから、レーザパルスの振幅が変調される。仮に、再生用のフォトダイオード及び電流電圧変換アンプによる帯域制限が皆無であったとすると、再生信号波形は、図3に示すような形状になる。以後、このような再生パルス列からなる信号をパルス再生信号と呼ぶことにする。ここで、図3中の破線は、仮にレーザを高周波重畳時のレーザパルスのピークと同じ出力で連続発振させた場合に得られる再生信号波形である。つまり、パルス再生信号の上側包絡線の形状は連続光による再生信号波形となっている。従って、包絡線検波、即ち、重畳する高周波電流の周波数よりも十分に低い遮断周波数を有する低域通過フィルタにパルス再生信号を通すことにより、所望の再生波形を得ることが出来る。現行の光ディスク装置では、フォトディテクタと電流電圧変換アンプとからなる系及びアナログ等化器の帯域制限により、このことが実現されている。
【0006】
再生信号をパルス化するということは振幅変調の一種であるから、重畳した高周波信号の輝線スペクトルと、その近傍に変調された再生信号成分が観測される。よって、以後本明細書中では、重畳した高周波信号を単にキャリアと呼ぶことにする。キャリア周波数の一例を挙げると、BDの場合、400MHz程度が標準的である。これは、専ら再生光学系の光路長で決定されるので、装置間で大きな差は無いと考えられる。
【0007】
図4に、パルス再生信号のスペクトルの一例を示す。図4中、破線でフォトディテクタと電流電圧変換アンプとからなる系及びアナログ等化器の帯域制限の様子を模式的に表してある。即ち、上記旧来方式にてパルス再生信号を連続信号に変換するということは、高調波成分を全て減衰させてしまうことである。従って、得られる再生信号振幅は小さくなり、その振幅とパルス再生信号振幅の比率は概ねパルスデューティ程度である。
【0008】
この様に、得られる振幅が減少するために生じるSNR低下を改善する技術として、マルチトーン復調(MTD:multi-tone demodulation)がある。この技術に関しては、特許文献1に詳細が開示されている。また、非特許文献3にも記載がある。MTDは、再生信号のSNRを補う他に、特許文献1に詳述されているように、高倍速再生時に再生信号とキャリアの分離が困難になるという課題をも解決することが出来る。即ち、MTDによって得られる信号には、原理的にキャリアの輝線スペクトルが含まれない。
【0009】
近年、光ディスクの再生信号処理は、PRML(partial response most-likely)法のようなデジタル方式が主流であることは当業者の間では公知である。このような信号処理系においては、再生信号のクロックと信号処理回路のクロックを同期させるためのPLL(phase locked loop)回路もデジタル化されているのが一般的である。しかしながら、実際にはデジタル化されたPLLにも電圧制御発振器やDAC(digital to analog converter)のような複数のアナログ要素が含まれている。アナログ要素を使用することの問題点は、その特性がばらつき易いことである。そこで、近年、非特許文献4にも記載されているようにアナログ要素を含まない信号処理システムの検討が進められている。
【0010】
BDが実用化された現在、更なる光ディスクの大容量化が試みられている。非特許文献5にも記載されているように、その有力な手法の一つに記録層の多層化がある。記録層を多層化すると、手前にある複数の記録層による反射及び吸収の影響により最も奥にある記録層から反射してくる光量は従来に比べて極めて小さくなる。投入した光量に対する反射光量の割合を見かけの反射率と定義すると、多層光ディスクの見かけの反射率はBD2層ディスクなどに比べて小さくなるということである。このため、再生信号のSNR(signal to noise ratio)の低下が問題である。また、手前にある各記録層の透過率は、十分に大きい必要があるから反対に吸収率は小さくする必要がある。従って、記録型ディスクの場合、その記録層材料の記録感度は従来よりも高くする必要がある。しかし、特に書替え可能型ディスクの場合、記録感度を高めると再生光による記録マークの消去が起きやすくなるという問題がある。尚、本明細書中では、再生光による記録マーク消去の起き難さを再生光耐性と呼ぶことにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−73147号公報(対応US2007/0053262号)
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「光学」第14巻、第5号、377−383頁
【非特許文献2】Frank Op’t Eynde, Willy Sansen, “Analog Interfaces for Digital Signal Processing Systems”, Kluwer Academic Publishers, 1993 Boston/Dordrecht/London, pp.91-92.
【非特許文献3】Atsushi Kikukawa, Hiroyuki Minemura, “Novel HF-pulse read signal converter for increasing read signal SNR”, Digest of International Symposium on Optical Memory 2007, pp.302-303.
【非特許文献4】Floyd M. Gardner, “Interpolation in Digital Modems - Part I: Fundamentals”, IEEE Transactions on Communications, Vol. 41, pp.501-507 (1993).
【非特許文献5】K. Mishima, D. Yoshitoku, H. Itoh, S. Yamatsu, H. Inoue, T. Komaki,K. Tanaka, and T. Aoi: presented at Optical Data Storage Top. Meet., 2006, TuA3.
【非特許文献6】Lars Erup, “Interpolation in Digital Modems - Part II: Implementation and Performance”, IEEE Transactions on Communications, Vol. 41, pp.998-1008 (1993).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
背景技術の項で述べたように、多層光ディスクでは記録層を多層化するために、手前にある複数の記録層による反射及び吸収の影響により最も奥にある記録層から反射してくる光量は2層のBDに比べて極めて小さくなる。このため、再生信号のSNR(signal to noise ratio)が低下するという課題がある。
【0014】
手前にある各記録層の透過率は、十分に大きい必要があるから反対に吸収率は小さくする必要がある。従って、記録型ディスクの場合、その記録層材料の記録感度は従来よりも高くする必要がある。しかし、特に書替え可能型ディスクの場合、記録感度を高めると再生光による記録マークの消去が起きやすくなるという課題がある。従って、また、上で述べた再生信号のSNR低下による再生性能の低下を再生光強度の強さで補うことは困難であるという課題がある。
【0015】
背景技術の項で述べたように、再生時に問題となるレーザの戻り光雑音を抑圧するためには高周波重畳法が有効である。しかし、高周波重畳法ではレーザがパルス化されており、再生光パルスの頂点では再生光の平均パワーよりも数倍高いパワーとなっている。再生光による記録消去は、再生光による記録膜の昇温によって起こる。従って、再生光の平均パワーが同一という条件下に於いてはパルスのピークパワーが高い、即ち、パルスデューティが小さい場合の方が記録消去が起き易く、高周波重畳を行わない場合が最も起きにくい。即ち、レーザの戻り光雑音抑圧と記録消去の抑圧を同時に実現するのが困難であるという課題が存在する。
【0016】
以上から理解できるように、特に、多層の書換え可能型ディスクに於いては、再生性能と再生光耐性を両立させるのが困難であるという課題が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明では、上記課題を解決するために、高周波重畳下に於ける再生光による記録消去を抑える手段を提供する。また、記録層に照射する再生光パルスの位置及び形状を制御する手段を有する。
【0018】
高周波重畳下に於ける再生光による記録消去を抑える手段について説明する。再生光パルスによる記録消去は、通常の再生条件下では数回のパルス照射によって起こるわけではなく、数万から100万回程度の再生を行うことによって顕在化するものである。よって、ある記録マークに着目すると照射されるパルスのピークパワーが同じという条件下では、そのマークに照射されるパルスの頻度を低減すれば、その分、再生光耐性を向上することが可能であるということである。パルスデューティを下げることにより同一箇所に照射される光パワーの累計が下がる。この時、平均パワーは下がるので通常の再生方式では再生信号の振幅が下がり、SNRが低下する。そこで、再生方式にMTDを用いることで再生信号のSNRの低下を補う。即ち、パルスデューティを適切に選択した上で再生方式にMTDを用いることにより、再生性能の低下を抑えながら再生光耐性を向上することが可能である。
【0019】
ここで、MTDの動作と効果を説明する。MTDを実行する装置の構成例を図5に示す。この図では、以下の説明に必須でない部分は省略している。本例は、AD変換器11とDA変換器12の対を用いてパルス再生信号を連続再生信号に変換していることを特徴としている。
【0020】
キャリアは、発振器15で発生され、レーザドライバ14へ入力される。レーザドライバ14は、所望の平均レーザパワー、ピークパワー、デューティが得られるようなレーザ駆動電流を発生させ、レーザダイオード6へ入力する。また、レーザの平均出力が一定になるようにレーザ駆動電流の制御も行う。レーザダイオードの出力光強度は、図2に示したような時間変化をする。
【0021】
レーザ光は、コリメータレンズ5で平行光に変換され、偏光ビームスプリッタ4と1/4波長板3を通過した後、対物レンズ2によってディスク1の記録膜面上に焦点を結ぶ。記録膜面上でレーザ光は反射され、記録マークとスペースに応じた強度変化が重畳された反射パルスレーザ列となる。そのレーザ光強度の時間変化は、図3に示したパルス再生信号に一致したものである。反射パルスレーザ列は、元の経路を偏光ビームスプリッタ4まで戻ると、そこで反射され集束レンズ7によってフォトダイオード8上に集光され電流に変換される。この電流は、電流アンプ10によって電圧信号に変換された後にAD変換器11によってデジタル信号に変換され、その出力はDA変換器12に入力される。
【0022】
AD変換器は、図6に示すように、パルス再生信号中(破線で表示)の各パルスの頂点の値をサンプリングするよう駆動する必要がある。従って、AD変換器及びDA変換器の駆動クロックとしてHF発振器出力を用いている。ただし、HF信号とパルス再生信号の間には、フォトダイオードやレーザ発光までの過程で生じる遅延のために位相差を生じているので、可変遅延線16を用いてこの位相差を調節している。尚、背景技術の項で述べたように、図3は再生用のフォトダイオード及び電流電圧変換アンプによる帯域制限が皆無である場合であるが、これらによる帯域制限がある場合には、その程度に依存して個々のパルスの広がりとピーク値の低下を生じるものの、一定以上の帯域があれば図3に示した信号とほぼ等しい信号を得ることが出来る。
【0023】
DA変換器は、サンプルされたパルス頂点の値を1クロックの間保持するから、その出力は、図6に示すように階段状になる(実線で表示)。ここでは、説明を簡単にするためにAD変換器及びDA変換器は、理想的な動作をするものとして説明した。また、DA変換器出力は、AD変換器出力をDA変換器に送出するのに1クロックを要するから、階段状信号は、実際にはパルス再生信号より1クロック遅れるが、図6中では波形相互の関係が明確になるように、この遅れを無視して各波形を記している。階段状波形は、歪み成分を含んだ再生信号である。この歪み成分は、低域通過フィルタ17によって取り除かれる。
【0024】
低域通過フィルタ17の出力は、振幅やSNRが改善されている他は、旧来の方式で得られるピックアップから出力される再生信号と同等である。従って、以後の復号過程は、旧来の光ディスクドライブと同様のものを用いれば良い。即ち、低域通過フィルタ17の出力から高域通過フィルタ20で直流成分を取り除き、アナログ等化器21で等化した後にAD変換器でデジタル信号に変換する。デジタル変換された再生信号は、PLLでクロック同期を取り、ヴィタビ復号器25で復号する。PLLは、AD変換器、位相比較器22、ループフィルタ23、DA変換器及び電圧制御発振器24から構成されている。PLLの動作に関しては、広く公知であるから、ここでは詳述しない。
【0025】
上記構成の信号処理系には、高域通過フィルタ、アナログ等化器、AD変換器、DA変換器、電圧制御発振器といった複数のアナログ要素を含む。これらアナログ要素の問題点は、個体間の特性差が大きいことである。この個体間の特性差の影響を回避するためには、光ディスクドライブに調整機能を持たせるなどの追加的な処置が必要となることが往々にして生じる。
【0026】
また、光ディスクドライブではPLLのAD変換器以降の回路は、符号訂正回路や各種制御回路と共に統合LSIに集積されるのが一般的である。そして、統合LSIは、メイン基板上に実装されるのが通常である。従って、ピックアップからメイン基板までアナログ再生信号を伝送させる必要がある。アナログ再生信号に外部からの雑音や近接する信号線の信号によるクロストークがあると、再生信号品質が劣化しエラーレートが劣化する。また、高倍速再生時には、再生信号帯域が広がるから高い周波数成分まで位相歪みなく伝送させる必要がある。これらの要件を全て満たす伝送路は、設計及び実装上も困難が伴う上に高価になりがちである。
【0027】
図5に示した構成例では、パルス再生信号を一旦デジタル信号に変換した後に再びアナログ信号に変換している。このことにより旧来の同期型信号処理回路への入力を可能としている。
【0028】
次に、MTDの動作理論の説明を行う。これより先、簡単化のために再生信号として周波数fの正弦波を仮定する。正弦波を周波数fHFでパルス変調した際のスペクトルを模式的に表したのが図7である。再生信号を正弦波と仮定しているから、再生信号及びその高調波スペクトルは輝線スペクトルとなる。
【0029】
尚、本明細書中では、信号高調波の次数は、変調周波数の次数に合わせるものとする。即ち、変調周波数自身は1次である。また、直流は形式的に0次と呼ぶことにする。また、負の周波数側の高調波にはマイナスの符号を付けて呼ぶ。即ち、負の変調周波数自身は-1次である。また、各変調周波数の高調波の上側及び下側側波帯にある信号高調波の振幅をそれぞれに対応した符号を付けてa(i, +), a(i, +)などと記すものとする。また、変調周波数の高調波を中心とした幅fHFの帯域を高調波帯と呼ぶことにする。
【0030】
上記パルス変調された正弦波を図6のように変調周波数でサンプリングすると、ベースバンド成分を除く高調波成分は、全てfHF/2以上の周波数であるからアンダーサンプルされる。公知の通り、アンダーサンプリングするとサンプルされた信号は、両者の周波数差だけ周波数変換される。即ち、図7中で周波数±fHFを中心とする幅fHFの帯域にある信号は、それぞれベースバンドへと周波数変換される。また、高次高調波帯にある信号もベースバンドへと周波数変換されることも当業者であれば容易に理解できることである。即ち、MTDによって入力帯域内にある全ての高調波信号成分がベースバンド内に変換される。変換された各信号は、周波数だけでなく位相も揃っていることはやはり当業者であれば容易に理解できることである。よって、MTDの結果、各信号高調波は、ベースバンドにある再生信号成分(0次信号高調波)に同期して加算される。従って、MTDの出力に於ける信号成分Aの振幅は下記数1で記述できる。
【0031】
【数1】
【0032】
一方、高調波帯にある雑音成分もMTDによりベースバンドへと周波数変換され、MTDの出力雑音の一部となる。しかし、各高調波帯にある雑音成分は、相互に無相関であるから、各高調波帯からベースバンドに周波数変換された雑音成分は非同期加算される。従って、その振幅は、各成分の二乗和の平方根となる。ここで、雑音スペクトルが入力帯域内に於いて平坦であり、その平均振幅がnであるとすると、MTDの出力雑音は次のように表すことができる。
【0033】
【数2】
【0034】
ここで、MTDによる信号振幅の増加率が雑音振幅の増大率を上回ればSNRが向上することに成る。ただし、数1と数2から一般の場合にSNRが向上するとは結論付けることはできない。図8に信号振幅および雑音振幅などの入力帯域幅依存性の計算結果の一例を示す。ここでは、レーザのパルスが矩形波であり、そのパルスデューティが1/8であると仮定した。また、入力信号の帯域は、12次のバタワース低域通過フィルタによって帯域制限を行った。図8中で横軸は、入力帯域幅Bwを変調周波数fHFで規格化したもので、縦軸は、信号振幅、雑音振幅、SNRを従来再生方式との相対値であらわしている。
【0035】
図8から明らかなように、入力帯域が4(Bw/ fHF)以下の領域においては信号振幅が急速に増大する。従って、この領域ではSNRが帯域の拡大と共に改善している。入力帯域が4(Bw/ fHF)を超えると振幅の増大が緩やかになり、ほぼ飽和する。これは、パルス再生信号のエネルギーが比較的低い次数の高調波に集中しているためである。一方、雑音は、ほぼ数2に従って単調に増大していくのでSNRゲイン、即ち、MTDによるSNRの向上は飽和する。
【0036】
以上から判るように、MTDでは再生信号の高調波成分をも使用することにより従来方式よりSNRを改善することが出来る。再生性能を従来方式と同等にすると仮定すると、改善されたSNRの分だけ再生光パルスの高さを低くすることが出来る。例えば、図8の例でMTDの入力帯域をキャリア周波数の1.5倍にした場合、SNRゲインは、約4 dBである。従って、再生光パルスの高さを最大4dB低くすることができ、十分に再生光耐性向上を期待できる。
【0037】
キャリア周波数を400 MHzとすると、上記MTDの動作条件を実現するためには、フォトダイオード及びアンプの帯域は600 MHz以上必要になる。これは、現行の光ディスクに用いられるアンプの3倍から4倍ほどの帯域幅である。一般に、アンプの動作帯域を広げるとアンプ自体が発生する雑音が大きくなる傾向にあり、MTDの効果を減少させる可能性が高い。そこで、キャリア周波数を下げ、なるべく帯域の狭いアンプを使用する。また、このことは、先に述べたようにキャリア周波数を下げて一箇所当たりのパルスの照射頻度を下げる効果もある。
【0038】
再生光パルスは、記録膜上のマーク及びスペースからなるパターンをサンプリングしていると考えることができる。従って、許容される最低のキャリア周波数は、標本化定理に従い、得られる再生信号に含まれる最高周波数成分の2倍となる。即ち、線記録密度と再生倍速に依存する。1面当たり25GBの記録容量を持つBDフォーマットを例にすると、再生信号中の最高周波数に対応するパターンは2Tマークと2Tスペースの繰り返しであり、これは、チャネルクロック周波数の1/4である。よって、その周波数は、1倍速で16.5 MHzである。従って、キャリア周波数は、チャネルクロック周波数の1/2以上必要であり、これは、1倍速では33 MHz以上、2倍速で66 MHz以上である。ここで注目すべきことは、これらの場合で許容されるキャリアの最低周波数が、チャネルクロックの1/2とチャネルクロックよりも低いことである。従来の再生方式では、キャリアの輝線スペクトルと再生信号の分離ができなくなるのでここまでキャリア周波数を下げることは不可能である。
【0039】
キャリア周波数を下げる際には、再生光パルスのデューティにも留意する必要がある。レーザが発する雑音の内、最も深刻なものが戻り光雑音である。先に述べたように、戻り光雑音を回避するためには、レーザ発振中に戻り光が半導体レーザに入射しないようにすることである。よって、キャリア周波数のみを考慮すると、キャリア周波数を下げることは、レーザパルスの時間間隔が広がる、即ちレーザ発振が停止している時間が延びるのであるから問題は無い。しかし、パルスデューティを保ったままキャリア周波数を下げてしまうと、パルスデューティに依ってはレーザパルスの長さが長くなり、その結果、発振中の半導体レーザに戻り光が入射してしまうことがある。これを避けるためには、やはりパルスデューティを同時に小さくすれば良い。
【0040】
再生光耐性を決定する主要な要素の一つが再生光パルスのピークパワーである。従って、再生光パルスの条件を考える際には半導体レーザの緩和振動にも留意が必要である。半導体レーザを停止状態から発振状態に遷移させると緩和振動が起こり、図9に示したように意図した波形にオーバーシュートが付加されたような波形になることがある。このことは、高周波重畳法を用いて発生させた再生光パルスでも起こることである。緩和振動の周波数は、半導体レーザの最大応答速度にほぼ相当するのでオーバーシュート上の部分の時間幅は小さい。しかし、レーザパルスによる記録膜の加熱は熱拡散を無視できるほど極短時間のうちにエネルギーが投入されるためほぼ断熱的に昇温するので無視できない。
【0041】
緩和振動による出力光波形のオーバーシュートの影響を回避するためには、半導体レーザの駆動波形を工夫する方法がある。緩和振動は、半導体レーザを発振停止状態から急激に発振状態に遷移させた場合に顕著に観測される。そこで、一旦低パワーで発光させた後にピークパワー発光させることにより緩和振動を抑圧、若しくは、その振幅を小さくすることができる。
【0042】
書換え可能型の光ディスクの記録膜には相変化材料が使用されていて、初め結晶相にある記録膜を記録レーザ光で溶融後に急冷させることでアモルファス相に遷移させることで記録マークを形成する。従って、記録マークの物理的なエッジ部は、結晶相とアモルファス相が接する遷移領域となっている。再生光による記録消去は、アモルファス相からなる記録マークが加熱と徐冷によるアニールを受け、徐々に結晶化が進むことにより起こる。その際に、アモルファス相部が結晶相と接していると、その結晶部を核として結晶化が進み易いのでエッジ部はマークの中心部よりも先に劣化が始まる。
【0043】
これを避けるためには、記録マークのエッジ部に再生光パルスを照射しないようにする方法がある。マークエッジの物理的な位置と再生信号のエッジの位置はほぼ同じ位置に対応している。従って、再生光パルスをチャネルクロックを基準とするクロックに同期させ、更に、再生光パルスがエッジに当たらないように位相を調整すれば良い。
【発明の効果】
【0044】
本発明により、現行の光ディスク装置と同等若しくは高い再生性能を有しながら、現行の光ディスク装置よりも高い再生光耐性を実現可能な光ディスク装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明による光ディスクドライブの一形態を示す図。
【図2】レーザの高周波重畳発光の様子を説明する図。
【図3】パルス再生信号を説明する図。
【図4】パルス再生信号のスペクトル。
【図5】従来技術による光ディスクドライブの構成の一例。
【図6】AD変換器を用いてパルス再生信号を連続信号に変換する様子を説明する図。
【図7】MTDの動作原理を説明する模式図
【図8】MTDの効果を示すシミュレーション結果の図
【図9】半導体レーザの緩和振動の様子を説明する模式図
【図10】標本化速度を2逓倍する標本化速度逓倍器の構成例
【図11】MTDによる再生光耐性向上を示す計算結果の例
【図12】MTDによる再生光耐性向上を示す計算結果の別の例
【図13】再生光パルスの照射位置を制御可能なドライブの構成例
【図14】移相器の構成例
【図15】半導体レーザの緩和振動を抑圧する駆動パルスの例を説明する模式図
【図16】単純型レーザドライバを用いた場合の構成例
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0046】
図1に、本発明による光ディスクドライブの一例を示す。ここでは、25GB/面の記録容量を持つBDフォーマットのディスクを前提に説明する。
発振器15で周期τのクロック信号を発生する。τは、チャネルクロック周期Tに近い値であるが、τ≦Tであるとする。分周器60で1/2の周波数にクロック信号を分周した後、可変遅延線16を経由してレーザドライバ14へ入力される。つまり、この分周されたクロック信号がキャリアとして使用される。レーザドライバ14は、入力された発振器出力に同期し、かつ、所望の平均レーザパワー、ピークパワー、デューティが得られるようなレーザ駆動電流パルスを発生させ、レーザダイオード6へ入力する。また、レーザの平均出力が一定になるようにレーザ駆動電流の制御も行う。
【0047】
レーザ光は、コリメータレンズ5で平行光に変換され、偏光ビームスプリッタ4と1/4波長板3を通過した後、対物レンズ2によってディスク1の記録膜面上に焦点を結ぶ。記録膜面上でレーザ光は反射され、記録マークとスペースに応じた強度変化が重畳された反射パルスレーザ列となる。反射パルスレーザ列は、元の経路を偏光ビームスプリッタ4まで戻ると、そこで反射され集束レンズ7によってフォトダイオード8上に集光され電流に変換される。この電流は、電流アンプ10によって電圧信号、即ち、パルス再生信号に変換される。その後、AD変換器11によってデジタル信号に変換される。AD変換器11は、図6にあるように、パルス再生信号(破線で表示)中の各パルスの頂点の値をサンプリングするように駆動する。
【0048】
AD変換器11の駆動クロックには、やはり分周器60の出力、即ち、発振器15の出力を分周したものを用いている。ただし、発振器出力とパルス再生信号の間には、フォトダイオードやレーザ発光までの過程で生じる遅延のために位相差を生じているので、可変遅延線16を用いてこの位相差を調節している。尚、パルス再生信号の各パルスの頂点をサンプリングした信号は、以下に於いては標本化パルス再生信号と呼ぶ。この例では、標本化パルス再生信号の標本化速度がチャネルクロック周波数に近い値であるので、SNRを除けば従来の光ディスクドライブで云うところの、再生系で再生信号をAD変換により得たデジタル再生信号、に相当するものになっている。
【0049】
各サンプルの時刻間隔、即ち標本化速度が2τである標本化パルス再生信号を標本化速度逓倍器61で時刻間隔τの信号に標本化速度を変換する。標本化速度逓倍器61の構成例を図10に示す。この例では、標本化速度逓倍器はFIR(finite impulse response)補間器100とデュプレックサ104から構成されている。入力信号の時刻iに於ける標本をxiと記述することとすると、標本化速度逓倍器の入力標本間隔は2τであるので入力信号は{…, xi-2, xi, xi+2, xi+4, …}という数列で記述される。FIR補間器は、図10にあるように、4タップのFIRフィルタであり、3つの2時刻遅延器101と4つの係数器102と加算器103とで構成される。中央より2つの係数器がその入力値に乗ずる値は、9/16で、残りの2つの係数器が乗ずる値は-1/16である。このような補間器は広く知られているので、これらの係数の導出など細部の説明は省略する。図10にあるように、各係数器への入力を{xi-2, xi, xi+2, xi+4}とすると、係数器の出力は時刻i+1の補間値である。FIR補間器の動作サイクルは、2τであるから加算器出力及び2時刻遅延器の各出力値は2τの間保持されている。これらを動作サイクルτのデュプレックサ104で交互に時刻間隔τで送出することにより{…, xi-1, xi, xi+1, xi+2, …}標本化速度τに変換された標本化パルス再生信号を得られる。
【0050】
標本化速度逓倍器で標本化速度τに変換された標本化パルス再生信号は、インターポレータ51に入力される。インターポレータは、入力された標本化パルス再生信号をもう一つの入力であるクロックで指示された周波数と位相で標本化し直した信号に変換するものである。このようなインターポレータは、広く知られたもので入力信号の標本化速度を十分に小さなステップで変更できるものである。具体的な構成例に関しては、例えば非特許文献4及び6に開示されているので、ここでは詳述しない。インターポレータの出力信号とチャネルクロックは、そのままでは同期していないのでPLLを用いて両者の同期をとる。即ち、位相比較器22でインターポレータ出力信号のチャネルクロックに対する位相差を検出し、その結果をループフィルタ23で平滑化する。数値制御発振器54は、ループフィルタ出力に基づいた周波数で発振する。このループの動作に関しても非特許文献4及び6に詳しく開示されているのでここでは詳述しない。インターポレータ出力信号は、適応等化器32で等化された後にヴィタビ復号器53に入力され、ビット列へと復号される。尚、図には示されていないが、適応等化器32及びヴィタビ復号器53の駆動クロックは、数値制御発振器出力を用いている。
【0051】
この実施例の特徴の一つは、キャリア周波数がチャネルクロック周波数のおよそ1/2、即ち、25GB/面のBDフォーマットで記録されたディスクを再生するのに必要な最低のキャリア周波数、と非常に低くなっていることである。また、フォトディテクタ及び電流アンプを総合したパルス再生信号の伝送帯域幅は、チャネルクロック周波数の2.5倍である。この時、従来の再生方式に対する再生光耐性の優位性は、従来方式に於いて許容されていたパルスデューティによって異なる。本方式の従来の再生方式に対する再生光耐性の優位性の計算例の一つを図11に示す。図11は、従来再生方式で許容される最小パルスデューティと最大平均パワーが指定されているとして、かつ、再生光パルスの高さをその時の値と同じに保つという条件下でMTDを適用した場合のSNRゲインを再生光パルスデューティに対してプロットしたものである。図11には、従来方式で許容される最小のパルスデューティが6/32, 8/32, 16/32の各場合についての計算結果を示す。従来方式で許容される最小のパルスデューティが6/32の場合、MTDによるSNRゲインは、パルスデューティが6/32で8.1 dBである。従って、MTDを使用することにより再生性能を劣化させずに再生光パルスの高さを従来方式と比較して最大8.1 dB低くすることにより再生光耐性の向上が可能である。記録消去は再生光パルスによる記録膜の昇温に依るものである。ごく大まかな近似で考えると、記録膜の昇温は断熱的に起こると仮定できる。よって、再生光パルスのパワーを元より8.1 dB小さくできるということで、昇温幅は従来の半分以下と見積もられ、再生光耐性の大幅な改善が期待できる。
【0052】
上記の条件下で再生光パルスのパルスデューティを下げ、照射頻度を下げることにより再生光耐性の向上を図ることも可能である。図11中の従来方式で許容される最小のパルスデューティが6/32の場合を例にすると、パルスデューティを2/32まで小さくするとMTDによって得られるSNRゲインがほぼ0 dBとなる。パルスの幅を1/3にしても従来方式と殆ど同じ再生性能を実現できている。即ち、従来方式と比べて再生光耐性を3倍に向上することができる。
【0053】
図11から判るように、MTDを用いることによる再生光耐性の向上度は、従来方式で許容される最小のパルスデューティによって異なる。従来方式で許容される最小のパルスデューティが8/32の場合は、MTD適用時には再生光パルス高さを従来方式より6.81 dB低くできる。また、パルスデューティを小さくする場合には再生光耐性を8/3倍向上できる。しかし、従来方式で許容される最小のパルスデューティが16/32の場合は、MTDによる再生光耐性の向上は望めない。
【0054】
MTDを用いることによる再生光耐性の向上度は、フォトディテクタ及び電流アンプを総合したパルス再生信号の伝送帯域幅によっても異なる。MTDではフォトディテクタ及び電流アンプの伝送帯域幅を従来方式よりも広げる必要がある。しかし、コストやアンプの雑音特性を考慮すると、これらの広帯域化を必要最小限にする選択肢もある。MTDで有意な結果を得るためには、最低±1次の高調波を用いる必要がある。再生信号の帯域幅も考慮すると、フォトディテクタ及び電流アンプを総合したパルス再生信号の伝送帯域幅は、最低チャネルクロック周波数の1.5倍必要である。フォトディテクタ及び電流アンプを総合したパルス再生信号の伝送帯域幅がチャネルクロック周波数の1.5倍の場合における図11と同様の計算結果を図12に示す。図12には、従来方式で許容される最小のパルスデューティが6/32, 8/32, 16/32の各場合についての計算結果を示す。図12から、従来方式で許容される最小のパルスデューティが6/32の場合は、MTD適用時には再生光パルス高さを従来方式より6.7 dB低くできる。また、パルスデューティを小さくする場合には、再生光耐性を2倍強向上できる。従来方式で許容される最小のパルスデューティが8/32の場合は、MTD適用時には再生光パルス高さを従来方式より5.9 dB低くできる。また、パルスデューティを小さくする場合には再生光耐性を2倍弱向上できる。従来方式で許容される最小のパルスデューティが16/32の場合は、MTD適用時には再生光パルス高さを従来方式より2.3 dB低くできる。また、パルスデューティを小さくする場合には再生光耐性を1.6倍向上できる。
【0055】
発振器15の発振周波数は、先に述べたように、チャネルクロック周波数を少し上回るように設定する。これにより、MTDで必要とするフォトディテクタや電流アンプなどの伝送帯域幅を最小限にすることが可能となる。
【0056】
尚、上記実施例でチャネルクロックをインターポレータの出力信号に同期させるPLLの形式は、図1に示した例以外の様々な形式が有り得ることは当業者であれば容易に理解できることである。また、パルス再生信号の伝送帯域幅をプログラマブル低域通過フィルタの使用で可変とし、複数の再生倍速に対応させることが可能なことも当業者であれば容易に理解できることである。
【0057】
更に、BDフォーマットで線記録密度を高め、最短である2T(T:チャネルクロック周期)マーク及びスペースの長さが光学分解能以下とした場合、再生信号中の最高周波数成分は、2T-3Tの繰り返しパターンである。このパターンは、5T周期を持つので、この場合はキャリア周波数を最小でチャネルクロック周波数の2/5まで下げることが可能である。
【実施例2】
【0058】
図13に本発明を実施した別の例を示す。この例の特徴は、再生光パルスを照射する記録膜上の位置を制御可能なことである。そのために、キャリアとしてチャネルPLLの電圧制御発振器出力を使用することにより再生光パルスとチャネルクロックを同期させている。
【0059】
図13で電圧制御発振器24の出力クロックが再生信号のチャネルクロックに同期しているとする。電圧制御発振器出力は、可変遅延線16を経由してレーザドライバ14へ入力される。レーザドライバ14は、入力された電圧制御発振器出力に同期し、かつ、所望の平均レーザパワー、ピークパワー、デューティが得られるようなレーザ駆動電流パルスを発生させ、レーザダイオード6へ入力する。また、レーザの平均出力が一定になるようにレーザ駆動電流の制御も行う。
【0060】
レーザ光は、コリメータレンズ5で平行光に変換され、偏光ビームスプリッタ4と1/4波長板3を通過した後、対物レンズ2によってディスク1の記録膜面上に焦点を結ぶ。記録膜面上でレーザ光は反射され、記録マークとスペースに応じた強度変化が重畳された反射パルスレーザ列となる。反射パルスレーザ列は、元の経路を偏光ビームスプリッタ4まで戻ると、そこで反射され集束レンズ7によってフォトダイオード8上に集光され電流に変換される。この電流は、電流アンプ10によって電圧信号、即ち、パルス再生信号に変換される。その後、AD変換器11によってデジタル信号に変換される。AD変換器11は、図6にあるように、パルス再生信号(破線で表示)中の各パルスの頂点の値をサンプリングするように駆動する。
【0061】
AD変換器11の駆動クロックには、電圧制御発振器15の出力を用いている。ただし、発振器出力とパルス再生信号の間には、フォトダイオードやレーザ発光までの過程で生じる遅延のために位相差を生じているので、可変遅延線16を用いてこの位相差を調節している。
【0062】
AD変換器11の出力信号は、デジタル等化器71で等化した後に移相器72でチャネルクロックの位相に対して所定量の位相をずらす。その後、位相比較器22でチャネルクロックとの位相差を求める。位相差信号は、ループフィルタ23で平滑化された後、DA変換器12で電圧信号に変換される。この電圧信号が電圧制御発振器の制御信号となる。移相器の出力信号は、適応等化器32で等化された後にヴィタビ復号器53に入力され、ビット列へと復号される。
【0063】
移相器72は、図14に示すように4タップのFIRフィルタである。中央より2つのタップ係数を9/16、残り2つを-1/16とすると、このFIRフィルタの出力は、xiとxi+1の間の補間値xi+1/2である。即ち、移相器の出力信号は入力信号の位相を(3/2)T遅らせた波形となる。再生光パルスの照射位置が即ち記録膜上のマークスペースパターンのサンプリング点になっていることに着目すると、図14に示した移相器により、サンプリングのタイミングが(1/2)T遅れたことと等価になる。すると、当然、位相比較器22の出力値も全点で-(1/2)Tが加算される。PLLは、位相比較器で検出される位相差が0になるように電圧制御発振器の出力クロックの位相を調整するように作用する。つまり、記録膜上のマークスペースパターンをサンプリングする位相が(1/2)T進むように調整される。図14中の各係数器に適切な値を設定することにより、-(1/2)Tから(1/2)Tの間で任意に位相を調整可能なことは当業者であれば容易に理解できることである。
【0064】
一部の書換え可能型光ディスクは、記録消去が記録マークのエッジ部で著しく起こるものがある。書換え可能型の光ディスクの記録膜には相変化材料が使用されていて、初め結晶相にある記録膜を記録レーザ光で溶融後に急冷させることでアモルファス相に遷移させることで記録マークを形成する。従って、記録マークの物理的なエッジ部は、結晶相とアモルファス相が接する遷移領域となっている。再生光による記録消去は、アモルファス相からなる記録マークが加熱と徐冷によるアニールを受け、徐々に結晶化が進むことにより起こる。その際に、アモルファス相部が結晶相と接していると、その結晶部を核として結晶化が進み易いのでエッジ部はマークの中心部よりも先に劣化が始まる。
【0065】
これを避けるためには、記録マークのエッジ部に再生光パルスを照射しないようにする方法が考えられる。マークエッジの物理的な位置と再生信号のエッジの位置はほぼ同じ位置に対応している。従って、再生光パルスをチャネルクロックを基準とするクロックに同期させ、更に、再生光パルスがエッジに当たらないように位相を調整すれば良い。即ち、図13に示した構成で上記条件を満たすように適切な位相調整を移相器で行うことにより実現可能である。
【0066】
図13の構成で移相器の設定が常に同じであると再生光パルスが常に同じ位相で照射される。その為、照射が集中した箇所から記録消去が進行する。記録マークの特定部分が記録消去され易いという特徴がないディスクの場合、却って記録消去の問題を顕在化させる可能性がある。従来の光ディスクドライブや図1に示した構成の場合、再生光パルスの照射位置はランダムであったのでこのような問題はなかった。これを回避するためには、例えば移相器に設定する位相調整量をシークの度に変更することが有効である。
【0067】
また、図1に示した例では、チャネルクロック周波数に応じて発振器15の発振周波数を設定する必要があった。従って、チャネルクロック周波数が連続的に変化するCAV(constant angular velocity)モード再生のような場合には、再生するディスク半径位置に応じて発振器の発振周波数を設定する必要があった。しかし、図13に示した例では、キャリア周波数がチャネルクロック周波数に自動的に追従するのでその必要がないという利点を有する。
【0068】
なお、図13にあるように、PLL中で位相比較の性能確保にデジタル等化器を用いるのが一般的な構成法である。この等化器もFIR形式で構成するのが一般的である。従って、適切なタップ係数を設定することによりデジタル等化器と移相器を一つのFIRフィルタに統一することも可能である。
【0069】
前述のように、再生光耐性を決定する主要な要素の一つが再生光パルスのピークパワーである。従って、図9に示したように半導体レーザを停止状態から発振状態に遷移させた際に起こる緩和振動により、意図した波形にオーバーシュートが付加されたような波形になることがある。このことは、高周波重畳法を用いて発生させた再生光パルスでも起こることである。緩和振動による出力光波形のオーバーシュートの影響を回避するためには、半導体レーザの駆動波形を工夫する方法がある。緩和振動は、半導体レーザを発振停止状態から急激に発振状態に遷移させた場合に顕著に観測される。そこで、図15に示すように、一旦低パワーで発光させた後にピークパワー発光させることによりパルスのピークに於ける緩和振動を抑圧している。図15の縦軸は、半導体レーザの駆動電流と光出力パワーとで供用している。図15中、破線が駆動電流で、太い実線が光出力パワーを表す。一点鎖線で示されているIthは、半導体レーザの閾値電流、即ち、レーザ発振を開始する電流値である。駆動電流を一旦、閾値を僅かに超えるレベルまで上げる。この時、緩和振動が発生するが、発光パワーの絶対値が小さいので再生光耐性への影響はない。その後に、所定のピーク出力を得られるように電流を増加させる。この時、レーザは既に発振状態にあるので緩和振動が起きにくい。
【実施例3】
【0070】
図16に本発明を実施した別の例を示す。この例の構成は、図13の例と類似しているがレーザドライバとして記録ストラテジを内蔵しない単純型レーザドライバ81を使用している点が異なる。単純型レーザドライバは、入力されたパルス波形を所望のパワーでレーザを駆動するためのパルス電流信号に変換する機能を有するのみでパルスデューティを調整することはできない。このようなレーザドライバを使用する場合には記録波形を専用の回路で生成し、それを単純型レーザドライバに送る。図16の例では、再生光パルスのパルス信号源として記録波生成回路80を用いている。再生光パルスのパルスデューティは、ここで決定される。記録波生成回路80で再生光パルスを発生させる際のパルスのクロックとして再生系PLL中の電圧制御発振器24の出力を用いている。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、光ディスクドライブ全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1:光ディスク、2:対物レンズ、3:1/4波長板、4:偏光ビームスプリッタ、5:コリメータレンズ、6:レーザダイオード、7:集束レンズ、8:フォトダイオード、10:電流アンプ、11:AD変換器、12:DA変換器、13:イコライザ、14:レーザドライバ、15:発振器、16:可変遅延線、17:低域通過フィルタ、20:高域通過フィルタ、21:アナログ等化器、22:位相比較器、23:ループフィルタ、24:電圧制御発振器、32:適応等化器、51:インターポレータ、53:ヴィタビ復号器、54:数値制御発振器、60:分周器、61:標本化速度逓倍器、71:デジタル等化器、72:移相器、80:記録波生成回路、81:単純型レーザドライバ、100:FIR補間器、101:2時刻遅延器、102:係数器、103:加算器、104:デュプレックサ、105:1時刻遅延器
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクドライブの再生技術に関し、特に再生光耐性に優れた光ディスクドライブに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の適用範囲は、Blu-ray Disc(BD)に限定されないが、以下における説明ではBDを前提とし、また、用語もBDで使用されるものを基本とする。
【0003】
BDを初めとする現行の光ディスク装置の多くは、その光源として用いているレーザダイオードが発する雑音を抑制するために高周波重畳法を採用している。この技術は、非特許文献1で開示されており、また当業者間では公知のことであるので、以下の記述に必要な事項のみ述べ、それ以上は詳述しない。
【0004】
ディスクで反射されたレーザ光が発振中のレーザダイオードに入射すると発振状態が不安定化する結果、著しいレーザ雑音を生じる。これを回避するために、高周波重畳法が用いられている。これは、レーザダイオードの駆動信号に高周波信号を重畳させてレーザをパルス発光させるものである。その発光波形は、図2に示すような周期パルスである。ここで、レーザパルスの間隔(変調周期)とそれに対する発光期間との比率(デューティ)、それにパルスのピークパワー若しくはレーザパルス列の平均パワーが主要なパラメータである。レーザパルスの間隔とパルスデューティは、ディスクで反射されてきたレーザパルスがレーザ発振中にレーザダイオードに入射しないことを主眼に置いて決められる。
【0005】
光ディスクの記録層には、マークとスペースによって情報が記録されている。記録型ディスクの場合、マークとスペースとでは、反射率が異なっている。よって、パルス状のレーザ光を光ディスクの記録膜上に焦点を結ばせると、レーザ光が照射された箇所がマークあるいはスペースかによって反射されるレーザ光の強度が異なるから、レーザパルスの振幅が変調される。仮に、再生用のフォトダイオード及び電流電圧変換アンプによる帯域制限が皆無であったとすると、再生信号波形は、図3に示すような形状になる。以後、このような再生パルス列からなる信号をパルス再生信号と呼ぶことにする。ここで、図3中の破線は、仮にレーザを高周波重畳時のレーザパルスのピークと同じ出力で連続発振させた場合に得られる再生信号波形である。つまり、パルス再生信号の上側包絡線の形状は連続光による再生信号波形となっている。従って、包絡線検波、即ち、重畳する高周波電流の周波数よりも十分に低い遮断周波数を有する低域通過フィルタにパルス再生信号を通すことにより、所望の再生波形を得ることが出来る。現行の光ディスク装置では、フォトディテクタと電流電圧変換アンプとからなる系及びアナログ等化器の帯域制限により、このことが実現されている。
【0006】
再生信号をパルス化するということは振幅変調の一種であるから、重畳した高周波信号の輝線スペクトルと、その近傍に変調された再生信号成分が観測される。よって、以後本明細書中では、重畳した高周波信号を単にキャリアと呼ぶことにする。キャリア周波数の一例を挙げると、BDの場合、400MHz程度が標準的である。これは、専ら再生光学系の光路長で決定されるので、装置間で大きな差は無いと考えられる。
【0007】
図4に、パルス再生信号のスペクトルの一例を示す。図4中、破線でフォトディテクタと電流電圧変換アンプとからなる系及びアナログ等化器の帯域制限の様子を模式的に表してある。即ち、上記旧来方式にてパルス再生信号を連続信号に変換するということは、高調波成分を全て減衰させてしまうことである。従って、得られる再生信号振幅は小さくなり、その振幅とパルス再生信号振幅の比率は概ねパルスデューティ程度である。
【0008】
この様に、得られる振幅が減少するために生じるSNR低下を改善する技術として、マルチトーン復調(MTD:multi-tone demodulation)がある。この技術に関しては、特許文献1に詳細が開示されている。また、非特許文献3にも記載がある。MTDは、再生信号のSNRを補う他に、特許文献1に詳述されているように、高倍速再生時に再生信号とキャリアの分離が困難になるという課題をも解決することが出来る。即ち、MTDによって得られる信号には、原理的にキャリアの輝線スペクトルが含まれない。
【0009】
近年、光ディスクの再生信号処理は、PRML(partial response most-likely)法のようなデジタル方式が主流であることは当業者の間では公知である。このような信号処理系においては、再生信号のクロックと信号処理回路のクロックを同期させるためのPLL(phase locked loop)回路もデジタル化されているのが一般的である。しかしながら、実際にはデジタル化されたPLLにも電圧制御発振器やDAC(digital to analog converter)のような複数のアナログ要素が含まれている。アナログ要素を使用することの問題点は、その特性がばらつき易いことである。そこで、近年、非特許文献4にも記載されているようにアナログ要素を含まない信号処理システムの検討が進められている。
【0010】
BDが実用化された現在、更なる光ディスクの大容量化が試みられている。非特許文献5にも記載されているように、その有力な手法の一つに記録層の多層化がある。記録層を多層化すると、手前にある複数の記録層による反射及び吸収の影響により最も奥にある記録層から反射してくる光量は従来に比べて極めて小さくなる。投入した光量に対する反射光量の割合を見かけの反射率と定義すると、多層光ディスクの見かけの反射率はBD2層ディスクなどに比べて小さくなるということである。このため、再生信号のSNR(signal to noise ratio)の低下が問題である。また、手前にある各記録層の透過率は、十分に大きい必要があるから反対に吸収率は小さくする必要がある。従って、記録型ディスクの場合、その記録層材料の記録感度は従来よりも高くする必要がある。しかし、特に書替え可能型ディスクの場合、記録感度を高めると再生光による記録マークの消去が起きやすくなるという問題がある。尚、本明細書中では、再生光による記録マーク消去の起き難さを再生光耐性と呼ぶことにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−73147号公報(対応US2007/0053262号)
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「光学」第14巻、第5号、377−383頁
【非特許文献2】Frank Op’t Eynde, Willy Sansen, “Analog Interfaces for Digital Signal Processing Systems”, Kluwer Academic Publishers, 1993 Boston/Dordrecht/London, pp.91-92.
【非特許文献3】Atsushi Kikukawa, Hiroyuki Minemura, “Novel HF-pulse read signal converter for increasing read signal SNR”, Digest of International Symposium on Optical Memory 2007, pp.302-303.
【非特許文献4】Floyd M. Gardner, “Interpolation in Digital Modems - Part I: Fundamentals”, IEEE Transactions on Communications, Vol. 41, pp.501-507 (1993).
【非特許文献5】K. Mishima, D. Yoshitoku, H. Itoh, S. Yamatsu, H. Inoue, T. Komaki,K. Tanaka, and T. Aoi: presented at Optical Data Storage Top. Meet., 2006, TuA3.
【非特許文献6】Lars Erup, “Interpolation in Digital Modems - Part II: Implementation and Performance”, IEEE Transactions on Communications, Vol. 41, pp.998-1008 (1993).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
背景技術の項で述べたように、多層光ディスクでは記録層を多層化するために、手前にある複数の記録層による反射及び吸収の影響により最も奥にある記録層から反射してくる光量は2層のBDに比べて極めて小さくなる。このため、再生信号のSNR(signal to noise ratio)が低下するという課題がある。
【0014】
手前にある各記録層の透過率は、十分に大きい必要があるから反対に吸収率は小さくする必要がある。従って、記録型ディスクの場合、その記録層材料の記録感度は従来よりも高くする必要がある。しかし、特に書替え可能型ディスクの場合、記録感度を高めると再生光による記録マークの消去が起きやすくなるという課題がある。従って、また、上で述べた再生信号のSNR低下による再生性能の低下を再生光強度の強さで補うことは困難であるという課題がある。
【0015】
背景技術の項で述べたように、再生時に問題となるレーザの戻り光雑音を抑圧するためには高周波重畳法が有効である。しかし、高周波重畳法ではレーザがパルス化されており、再生光パルスの頂点では再生光の平均パワーよりも数倍高いパワーとなっている。再生光による記録消去は、再生光による記録膜の昇温によって起こる。従って、再生光の平均パワーが同一という条件下に於いてはパルスのピークパワーが高い、即ち、パルスデューティが小さい場合の方が記録消去が起き易く、高周波重畳を行わない場合が最も起きにくい。即ち、レーザの戻り光雑音抑圧と記録消去の抑圧を同時に実現するのが困難であるという課題が存在する。
【0016】
以上から理解できるように、特に、多層の書換え可能型ディスクに於いては、再生性能と再生光耐性を両立させるのが困難であるという課題が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明では、上記課題を解決するために、高周波重畳下に於ける再生光による記録消去を抑える手段を提供する。また、記録層に照射する再生光パルスの位置及び形状を制御する手段を有する。
【0018】
高周波重畳下に於ける再生光による記録消去を抑える手段について説明する。再生光パルスによる記録消去は、通常の再生条件下では数回のパルス照射によって起こるわけではなく、数万から100万回程度の再生を行うことによって顕在化するものである。よって、ある記録マークに着目すると照射されるパルスのピークパワーが同じという条件下では、そのマークに照射されるパルスの頻度を低減すれば、その分、再生光耐性を向上することが可能であるということである。パルスデューティを下げることにより同一箇所に照射される光パワーの累計が下がる。この時、平均パワーは下がるので通常の再生方式では再生信号の振幅が下がり、SNRが低下する。そこで、再生方式にMTDを用いることで再生信号のSNRの低下を補う。即ち、パルスデューティを適切に選択した上で再生方式にMTDを用いることにより、再生性能の低下を抑えながら再生光耐性を向上することが可能である。
【0019】
ここで、MTDの動作と効果を説明する。MTDを実行する装置の構成例を図5に示す。この図では、以下の説明に必須でない部分は省略している。本例は、AD変換器11とDA変換器12の対を用いてパルス再生信号を連続再生信号に変換していることを特徴としている。
【0020】
キャリアは、発振器15で発生され、レーザドライバ14へ入力される。レーザドライバ14は、所望の平均レーザパワー、ピークパワー、デューティが得られるようなレーザ駆動電流を発生させ、レーザダイオード6へ入力する。また、レーザの平均出力が一定になるようにレーザ駆動電流の制御も行う。レーザダイオードの出力光強度は、図2に示したような時間変化をする。
【0021】
レーザ光は、コリメータレンズ5で平行光に変換され、偏光ビームスプリッタ4と1/4波長板3を通過した後、対物レンズ2によってディスク1の記録膜面上に焦点を結ぶ。記録膜面上でレーザ光は反射され、記録マークとスペースに応じた強度変化が重畳された反射パルスレーザ列となる。そのレーザ光強度の時間変化は、図3に示したパルス再生信号に一致したものである。反射パルスレーザ列は、元の経路を偏光ビームスプリッタ4まで戻ると、そこで反射され集束レンズ7によってフォトダイオード8上に集光され電流に変換される。この電流は、電流アンプ10によって電圧信号に変換された後にAD変換器11によってデジタル信号に変換され、その出力はDA変換器12に入力される。
【0022】
AD変換器は、図6に示すように、パルス再生信号中(破線で表示)の各パルスの頂点の値をサンプリングするよう駆動する必要がある。従って、AD変換器及びDA変換器の駆動クロックとしてHF発振器出力を用いている。ただし、HF信号とパルス再生信号の間には、フォトダイオードやレーザ発光までの過程で生じる遅延のために位相差を生じているので、可変遅延線16を用いてこの位相差を調節している。尚、背景技術の項で述べたように、図3は再生用のフォトダイオード及び電流電圧変換アンプによる帯域制限が皆無である場合であるが、これらによる帯域制限がある場合には、その程度に依存して個々のパルスの広がりとピーク値の低下を生じるものの、一定以上の帯域があれば図3に示した信号とほぼ等しい信号を得ることが出来る。
【0023】
DA変換器は、サンプルされたパルス頂点の値を1クロックの間保持するから、その出力は、図6に示すように階段状になる(実線で表示)。ここでは、説明を簡単にするためにAD変換器及びDA変換器は、理想的な動作をするものとして説明した。また、DA変換器出力は、AD変換器出力をDA変換器に送出するのに1クロックを要するから、階段状信号は、実際にはパルス再生信号より1クロック遅れるが、図6中では波形相互の関係が明確になるように、この遅れを無視して各波形を記している。階段状波形は、歪み成分を含んだ再生信号である。この歪み成分は、低域通過フィルタ17によって取り除かれる。
【0024】
低域通過フィルタ17の出力は、振幅やSNRが改善されている他は、旧来の方式で得られるピックアップから出力される再生信号と同等である。従って、以後の復号過程は、旧来の光ディスクドライブと同様のものを用いれば良い。即ち、低域通過フィルタ17の出力から高域通過フィルタ20で直流成分を取り除き、アナログ等化器21で等化した後にAD変換器でデジタル信号に変換する。デジタル変換された再生信号は、PLLでクロック同期を取り、ヴィタビ復号器25で復号する。PLLは、AD変換器、位相比較器22、ループフィルタ23、DA変換器及び電圧制御発振器24から構成されている。PLLの動作に関しては、広く公知であるから、ここでは詳述しない。
【0025】
上記構成の信号処理系には、高域通過フィルタ、アナログ等化器、AD変換器、DA変換器、電圧制御発振器といった複数のアナログ要素を含む。これらアナログ要素の問題点は、個体間の特性差が大きいことである。この個体間の特性差の影響を回避するためには、光ディスクドライブに調整機能を持たせるなどの追加的な処置が必要となることが往々にして生じる。
【0026】
また、光ディスクドライブではPLLのAD変換器以降の回路は、符号訂正回路や各種制御回路と共に統合LSIに集積されるのが一般的である。そして、統合LSIは、メイン基板上に実装されるのが通常である。従って、ピックアップからメイン基板までアナログ再生信号を伝送させる必要がある。アナログ再生信号に外部からの雑音や近接する信号線の信号によるクロストークがあると、再生信号品質が劣化しエラーレートが劣化する。また、高倍速再生時には、再生信号帯域が広がるから高い周波数成分まで位相歪みなく伝送させる必要がある。これらの要件を全て満たす伝送路は、設計及び実装上も困難が伴う上に高価になりがちである。
【0027】
図5に示した構成例では、パルス再生信号を一旦デジタル信号に変換した後に再びアナログ信号に変換している。このことにより旧来の同期型信号処理回路への入力を可能としている。
【0028】
次に、MTDの動作理論の説明を行う。これより先、簡単化のために再生信号として周波数fの正弦波を仮定する。正弦波を周波数fHFでパルス変調した際のスペクトルを模式的に表したのが図7である。再生信号を正弦波と仮定しているから、再生信号及びその高調波スペクトルは輝線スペクトルとなる。
【0029】
尚、本明細書中では、信号高調波の次数は、変調周波数の次数に合わせるものとする。即ち、変調周波数自身は1次である。また、直流は形式的に0次と呼ぶことにする。また、負の周波数側の高調波にはマイナスの符号を付けて呼ぶ。即ち、負の変調周波数自身は-1次である。また、各変調周波数の高調波の上側及び下側側波帯にある信号高調波の振幅をそれぞれに対応した符号を付けてa(i, +), a(i, +)などと記すものとする。また、変調周波数の高調波を中心とした幅fHFの帯域を高調波帯と呼ぶことにする。
【0030】
上記パルス変調された正弦波を図6のように変調周波数でサンプリングすると、ベースバンド成分を除く高調波成分は、全てfHF/2以上の周波数であるからアンダーサンプルされる。公知の通り、アンダーサンプリングするとサンプルされた信号は、両者の周波数差だけ周波数変換される。即ち、図7中で周波数±fHFを中心とする幅fHFの帯域にある信号は、それぞれベースバンドへと周波数変換される。また、高次高調波帯にある信号もベースバンドへと周波数変換されることも当業者であれば容易に理解できることである。即ち、MTDによって入力帯域内にある全ての高調波信号成分がベースバンド内に変換される。変換された各信号は、周波数だけでなく位相も揃っていることはやはり当業者であれば容易に理解できることである。よって、MTDの結果、各信号高調波は、ベースバンドにある再生信号成分(0次信号高調波)に同期して加算される。従って、MTDの出力に於ける信号成分Aの振幅は下記数1で記述できる。
【0031】
【数1】
【0032】
一方、高調波帯にある雑音成分もMTDによりベースバンドへと周波数変換され、MTDの出力雑音の一部となる。しかし、各高調波帯にある雑音成分は、相互に無相関であるから、各高調波帯からベースバンドに周波数変換された雑音成分は非同期加算される。従って、その振幅は、各成分の二乗和の平方根となる。ここで、雑音スペクトルが入力帯域内に於いて平坦であり、その平均振幅がnであるとすると、MTDの出力雑音は次のように表すことができる。
【0033】
【数2】
【0034】
ここで、MTDによる信号振幅の増加率が雑音振幅の増大率を上回ればSNRが向上することに成る。ただし、数1と数2から一般の場合にSNRが向上するとは結論付けることはできない。図8に信号振幅および雑音振幅などの入力帯域幅依存性の計算結果の一例を示す。ここでは、レーザのパルスが矩形波であり、そのパルスデューティが1/8であると仮定した。また、入力信号の帯域は、12次のバタワース低域通過フィルタによって帯域制限を行った。図8中で横軸は、入力帯域幅Bwを変調周波数fHFで規格化したもので、縦軸は、信号振幅、雑音振幅、SNRを従来再生方式との相対値であらわしている。
【0035】
図8から明らかなように、入力帯域が4(Bw/ fHF)以下の領域においては信号振幅が急速に増大する。従って、この領域ではSNRが帯域の拡大と共に改善している。入力帯域が4(Bw/ fHF)を超えると振幅の増大が緩やかになり、ほぼ飽和する。これは、パルス再生信号のエネルギーが比較的低い次数の高調波に集中しているためである。一方、雑音は、ほぼ数2に従って単調に増大していくのでSNRゲイン、即ち、MTDによるSNRの向上は飽和する。
【0036】
以上から判るように、MTDでは再生信号の高調波成分をも使用することにより従来方式よりSNRを改善することが出来る。再生性能を従来方式と同等にすると仮定すると、改善されたSNRの分だけ再生光パルスの高さを低くすることが出来る。例えば、図8の例でMTDの入力帯域をキャリア周波数の1.5倍にした場合、SNRゲインは、約4 dBである。従って、再生光パルスの高さを最大4dB低くすることができ、十分に再生光耐性向上を期待できる。
【0037】
キャリア周波数を400 MHzとすると、上記MTDの動作条件を実現するためには、フォトダイオード及びアンプの帯域は600 MHz以上必要になる。これは、現行の光ディスクに用いられるアンプの3倍から4倍ほどの帯域幅である。一般に、アンプの動作帯域を広げるとアンプ自体が発生する雑音が大きくなる傾向にあり、MTDの効果を減少させる可能性が高い。そこで、キャリア周波数を下げ、なるべく帯域の狭いアンプを使用する。また、このことは、先に述べたようにキャリア周波数を下げて一箇所当たりのパルスの照射頻度を下げる効果もある。
【0038】
再生光パルスは、記録膜上のマーク及びスペースからなるパターンをサンプリングしていると考えることができる。従って、許容される最低のキャリア周波数は、標本化定理に従い、得られる再生信号に含まれる最高周波数成分の2倍となる。即ち、線記録密度と再生倍速に依存する。1面当たり25GBの記録容量を持つBDフォーマットを例にすると、再生信号中の最高周波数に対応するパターンは2Tマークと2Tスペースの繰り返しであり、これは、チャネルクロック周波数の1/4である。よって、その周波数は、1倍速で16.5 MHzである。従って、キャリア周波数は、チャネルクロック周波数の1/2以上必要であり、これは、1倍速では33 MHz以上、2倍速で66 MHz以上である。ここで注目すべきことは、これらの場合で許容されるキャリアの最低周波数が、チャネルクロックの1/2とチャネルクロックよりも低いことである。従来の再生方式では、キャリアの輝線スペクトルと再生信号の分離ができなくなるのでここまでキャリア周波数を下げることは不可能である。
【0039】
キャリア周波数を下げる際には、再生光パルスのデューティにも留意する必要がある。レーザが発する雑音の内、最も深刻なものが戻り光雑音である。先に述べたように、戻り光雑音を回避するためには、レーザ発振中に戻り光が半導体レーザに入射しないようにすることである。よって、キャリア周波数のみを考慮すると、キャリア周波数を下げることは、レーザパルスの時間間隔が広がる、即ちレーザ発振が停止している時間が延びるのであるから問題は無い。しかし、パルスデューティを保ったままキャリア周波数を下げてしまうと、パルスデューティに依ってはレーザパルスの長さが長くなり、その結果、発振中の半導体レーザに戻り光が入射してしまうことがある。これを避けるためには、やはりパルスデューティを同時に小さくすれば良い。
【0040】
再生光耐性を決定する主要な要素の一つが再生光パルスのピークパワーである。従って、再生光パルスの条件を考える際には半導体レーザの緩和振動にも留意が必要である。半導体レーザを停止状態から発振状態に遷移させると緩和振動が起こり、図9に示したように意図した波形にオーバーシュートが付加されたような波形になることがある。このことは、高周波重畳法を用いて発生させた再生光パルスでも起こることである。緩和振動の周波数は、半導体レーザの最大応答速度にほぼ相当するのでオーバーシュート上の部分の時間幅は小さい。しかし、レーザパルスによる記録膜の加熱は熱拡散を無視できるほど極短時間のうちにエネルギーが投入されるためほぼ断熱的に昇温するので無視できない。
【0041】
緩和振動による出力光波形のオーバーシュートの影響を回避するためには、半導体レーザの駆動波形を工夫する方法がある。緩和振動は、半導体レーザを発振停止状態から急激に発振状態に遷移させた場合に顕著に観測される。そこで、一旦低パワーで発光させた後にピークパワー発光させることにより緩和振動を抑圧、若しくは、その振幅を小さくすることができる。
【0042】
書換え可能型の光ディスクの記録膜には相変化材料が使用されていて、初め結晶相にある記録膜を記録レーザ光で溶融後に急冷させることでアモルファス相に遷移させることで記録マークを形成する。従って、記録マークの物理的なエッジ部は、結晶相とアモルファス相が接する遷移領域となっている。再生光による記録消去は、アモルファス相からなる記録マークが加熱と徐冷によるアニールを受け、徐々に結晶化が進むことにより起こる。その際に、アモルファス相部が結晶相と接していると、その結晶部を核として結晶化が進み易いのでエッジ部はマークの中心部よりも先に劣化が始まる。
【0043】
これを避けるためには、記録マークのエッジ部に再生光パルスを照射しないようにする方法がある。マークエッジの物理的な位置と再生信号のエッジの位置はほぼ同じ位置に対応している。従って、再生光パルスをチャネルクロックを基準とするクロックに同期させ、更に、再生光パルスがエッジに当たらないように位相を調整すれば良い。
【発明の効果】
【0044】
本発明により、現行の光ディスク装置と同等若しくは高い再生性能を有しながら、現行の光ディスク装置よりも高い再生光耐性を実現可能な光ディスク装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明による光ディスクドライブの一形態を示す図。
【図2】レーザの高周波重畳発光の様子を説明する図。
【図3】パルス再生信号を説明する図。
【図4】パルス再生信号のスペクトル。
【図5】従来技術による光ディスクドライブの構成の一例。
【図6】AD変換器を用いてパルス再生信号を連続信号に変換する様子を説明する図。
【図7】MTDの動作原理を説明する模式図
【図8】MTDの効果を示すシミュレーション結果の図
【図9】半導体レーザの緩和振動の様子を説明する模式図
【図10】標本化速度を2逓倍する標本化速度逓倍器の構成例
【図11】MTDによる再生光耐性向上を示す計算結果の例
【図12】MTDによる再生光耐性向上を示す計算結果の別の例
【図13】再生光パルスの照射位置を制御可能なドライブの構成例
【図14】移相器の構成例
【図15】半導体レーザの緩和振動を抑圧する駆動パルスの例を説明する模式図
【図16】単純型レーザドライバを用いた場合の構成例
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0046】
図1に、本発明による光ディスクドライブの一例を示す。ここでは、25GB/面の記録容量を持つBDフォーマットのディスクを前提に説明する。
発振器15で周期τのクロック信号を発生する。τは、チャネルクロック周期Tに近い値であるが、τ≦Tであるとする。分周器60で1/2の周波数にクロック信号を分周した後、可変遅延線16を経由してレーザドライバ14へ入力される。つまり、この分周されたクロック信号がキャリアとして使用される。レーザドライバ14は、入力された発振器出力に同期し、かつ、所望の平均レーザパワー、ピークパワー、デューティが得られるようなレーザ駆動電流パルスを発生させ、レーザダイオード6へ入力する。また、レーザの平均出力が一定になるようにレーザ駆動電流の制御も行う。
【0047】
レーザ光は、コリメータレンズ5で平行光に変換され、偏光ビームスプリッタ4と1/4波長板3を通過した後、対物レンズ2によってディスク1の記録膜面上に焦点を結ぶ。記録膜面上でレーザ光は反射され、記録マークとスペースに応じた強度変化が重畳された反射パルスレーザ列となる。反射パルスレーザ列は、元の経路を偏光ビームスプリッタ4まで戻ると、そこで反射され集束レンズ7によってフォトダイオード8上に集光され電流に変換される。この電流は、電流アンプ10によって電圧信号、即ち、パルス再生信号に変換される。その後、AD変換器11によってデジタル信号に変換される。AD変換器11は、図6にあるように、パルス再生信号(破線で表示)中の各パルスの頂点の値をサンプリングするように駆動する。
【0048】
AD変換器11の駆動クロックには、やはり分周器60の出力、即ち、発振器15の出力を分周したものを用いている。ただし、発振器出力とパルス再生信号の間には、フォトダイオードやレーザ発光までの過程で生じる遅延のために位相差を生じているので、可変遅延線16を用いてこの位相差を調節している。尚、パルス再生信号の各パルスの頂点をサンプリングした信号は、以下に於いては標本化パルス再生信号と呼ぶ。この例では、標本化パルス再生信号の標本化速度がチャネルクロック周波数に近い値であるので、SNRを除けば従来の光ディスクドライブで云うところの、再生系で再生信号をAD変換により得たデジタル再生信号、に相当するものになっている。
【0049】
各サンプルの時刻間隔、即ち標本化速度が2τである標本化パルス再生信号を標本化速度逓倍器61で時刻間隔τの信号に標本化速度を変換する。標本化速度逓倍器61の構成例を図10に示す。この例では、標本化速度逓倍器はFIR(finite impulse response)補間器100とデュプレックサ104から構成されている。入力信号の時刻iに於ける標本をxiと記述することとすると、標本化速度逓倍器の入力標本間隔は2τであるので入力信号は{…, xi-2, xi, xi+2, xi+4, …}という数列で記述される。FIR補間器は、図10にあるように、4タップのFIRフィルタであり、3つの2時刻遅延器101と4つの係数器102と加算器103とで構成される。中央より2つの係数器がその入力値に乗ずる値は、9/16で、残りの2つの係数器が乗ずる値は-1/16である。このような補間器は広く知られているので、これらの係数の導出など細部の説明は省略する。図10にあるように、各係数器への入力を{xi-2, xi, xi+2, xi+4}とすると、係数器の出力は時刻i+1の補間値である。FIR補間器の動作サイクルは、2τであるから加算器出力及び2時刻遅延器の各出力値は2τの間保持されている。これらを動作サイクルτのデュプレックサ104で交互に時刻間隔τで送出することにより{…, xi-1, xi, xi+1, xi+2, …}標本化速度τに変換された標本化パルス再生信号を得られる。
【0050】
標本化速度逓倍器で標本化速度τに変換された標本化パルス再生信号は、インターポレータ51に入力される。インターポレータは、入力された標本化パルス再生信号をもう一つの入力であるクロックで指示された周波数と位相で標本化し直した信号に変換するものである。このようなインターポレータは、広く知られたもので入力信号の標本化速度を十分に小さなステップで変更できるものである。具体的な構成例に関しては、例えば非特許文献4及び6に開示されているので、ここでは詳述しない。インターポレータの出力信号とチャネルクロックは、そのままでは同期していないのでPLLを用いて両者の同期をとる。即ち、位相比較器22でインターポレータ出力信号のチャネルクロックに対する位相差を検出し、その結果をループフィルタ23で平滑化する。数値制御発振器54は、ループフィルタ出力に基づいた周波数で発振する。このループの動作に関しても非特許文献4及び6に詳しく開示されているのでここでは詳述しない。インターポレータ出力信号は、適応等化器32で等化された後にヴィタビ復号器53に入力され、ビット列へと復号される。尚、図には示されていないが、適応等化器32及びヴィタビ復号器53の駆動クロックは、数値制御発振器出力を用いている。
【0051】
この実施例の特徴の一つは、キャリア周波数がチャネルクロック周波数のおよそ1/2、即ち、25GB/面のBDフォーマットで記録されたディスクを再生するのに必要な最低のキャリア周波数、と非常に低くなっていることである。また、フォトディテクタ及び電流アンプを総合したパルス再生信号の伝送帯域幅は、チャネルクロック周波数の2.5倍である。この時、従来の再生方式に対する再生光耐性の優位性は、従来方式に於いて許容されていたパルスデューティによって異なる。本方式の従来の再生方式に対する再生光耐性の優位性の計算例の一つを図11に示す。図11は、従来再生方式で許容される最小パルスデューティと最大平均パワーが指定されているとして、かつ、再生光パルスの高さをその時の値と同じに保つという条件下でMTDを適用した場合のSNRゲインを再生光パルスデューティに対してプロットしたものである。図11には、従来方式で許容される最小のパルスデューティが6/32, 8/32, 16/32の各場合についての計算結果を示す。従来方式で許容される最小のパルスデューティが6/32の場合、MTDによるSNRゲインは、パルスデューティが6/32で8.1 dBである。従って、MTDを使用することにより再生性能を劣化させずに再生光パルスの高さを従来方式と比較して最大8.1 dB低くすることにより再生光耐性の向上が可能である。記録消去は再生光パルスによる記録膜の昇温に依るものである。ごく大まかな近似で考えると、記録膜の昇温は断熱的に起こると仮定できる。よって、再生光パルスのパワーを元より8.1 dB小さくできるということで、昇温幅は従来の半分以下と見積もられ、再生光耐性の大幅な改善が期待できる。
【0052】
上記の条件下で再生光パルスのパルスデューティを下げ、照射頻度を下げることにより再生光耐性の向上を図ることも可能である。図11中の従来方式で許容される最小のパルスデューティが6/32の場合を例にすると、パルスデューティを2/32まで小さくするとMTDによって得られるSNRゲインがほぼ0 dBとなる。パルスの幅を1/3にしても従来方式と殆ど同じ再生性能を実現できている。即ち、従来方式と比べて再生光耐性を3倍に向上することができる。
【0053】
図11から判るように、MTDを用いることによる再生光耐性の向上度は、従来方式で許容される最小のパルスデューティによって異なる。従来方式で許容される最小のパルスデューティが8/32の場合は、MTD適用時には再生光パルス高さを従来方式より6.81 dB低くできる。また、パルスデューティを小さくする場合には再生光耐性を8/3倍向上できる。しかし、従来方式で許容される最小のパルスデューティが16/32の場合は、MTDによる再生光耐性の向上は望めない。
【0054】
MTDを用いることによる再生光耐性の向上度は、フォトディテクタ及び電流アンプを総合したパルス再生信号の伝送帯域幅によっても異なる。MTDではフォトディテクタ及び電流アンプの伝送帯域幅を従来方式よりも広げる必要がある。しかし、コストやアンプの雑音特性を考慮すると、これらの広帯域化を必要最小限にする選択肢もある。MTDで有意な結果を得るためには、最低±1次の高調波を用いる必要がある。再生信号の帯域幅も考慮すると、フォトディテクタ及び電流アンプを総合したパルス再生信号の伝送帯域幅は、最低チャネルクロック周波数の1.5倍必要である。フォトディテクタ及び電流アンプを総合したパルス再生信号の伝送帯域幅がチャネルクロック周波数の1.5倍の場合における図11と同様の計算結果を図12に示す。図12には、従来方式で許容される最小のパルスデューティが6/32, 8/32, 16/32の各場合についての計算結果を示す。図12から、従来方式で許容される最小のパルスデューティが6/32の場合は、MTD適用時には再生光パルス高さを従来方式より6.7 dB低くできる。また、パルスデューティを小さくする場合には、再生光耐性を2倍強向上できる。従来方式で許容される最小のパルスデューティが8/32の場合は、MTD適用時には再生光パルス高さを従来方式より5.9 dB低くできる。また、パルスデューティを小さくする場合には再生光耐性を2倍弱向上できる。従来方式で許容される最小のパルスデューティが16/32の場合は、MTD適用時には再生光パルス高さを従来方式より2.3 dB低くできる。また、パルスデューティを小さくする場合には再生光耐性を1.6倍向上できる。
【0055】
発振器15の発振周波数は、先に述べたように、チャネルクロック周波数を少し上回るように設定する。これにより、MTDで必要とするフォトディテクタや電流アンプなどの伝送帯域幅を最小限にすることが可能となる。
【0056】
尚、上記実施例でチャネルクロックをインターポレータの出力信号に同期させるPLLの形式は、図1に示した例以外の様々な形式が有り得ることは当業者であれば容易に理解できることである。また、パルス再生信号の伝送帯域幅をプログラマブル低域通過フィルタの使用で可変とし、複数の再生倍速に対応させることが可能なことも当業者であれば容易に理解できることである。
【0057】
更に、BDフォーマットで線記録密度を高め、最短である2T(T:チャネルクロック周期)マーク及びスペースの長さが光学分解能以下とした場合、再生信号中の最高周波数成分は、2T-3Tの繰り返しパターンである。このパターンは、5T周期を持つので、この場合はキャリア周波数を最小でチャネルクロック周波数の2/5まで下げることが可能である。
【実施例2】
【0058】
図13に本発明を実施した別の例を示す。この例の特徴は、再生光パルスを照射する記録膜上の位置を制御可能なことである。そのために、キャリアとしてチャネルPLLの電圧制御発振器出力を使用することにより再生光パルスとチャネルクロックを同期させている。
【0059】
図13で電圧制御発振器24の出力クロックが再生信号のチャネルクロックに同期しているとする。電圧制御発振器出力は、可変遅延線16を経由してレーザドライバ14へ入力される。レーザドライバ14は、入力された電圧制御発振器出力に同期し、かつ、所望の平均レーザパワー、ピークパワー、デューティが得られるようなレーザ駆動電流パルスを発生させ、レーザダイオード6へ入力する。また、レーザの平均出力が一定になるようにレーザ駆動電流の制御も行う。
【0060】
レーザ光は、コリメータレンズ5で平行光に変換され、偏光ビームスプリッタ4と1/4波長板3を通過した後、対物レンズ2によってディスク1の記録膜面上に焦点を結ぶ。記録膜面上でレーザ光は反射され、記録マークとスペースに応じた強度変化が重畳された反射パルスレーザ列となる。反射パルスレーザ列は、元の経路を偏光ビームスプリッタ4まで戻ると、そこで反射され集束レンズ7によってフォトダイオード8上に集光され電流に変換される。この電流は、電流アンプ10によって電圧信号、即ち、パルス再生信号に変換される。その後、AD変換器11によってデジタル信号に変換される。AD変換器11は、図6にあるように、パルス再生信号(破線で表示)中の各パルスの頂点の値をサンプリングするように駆動する。
【0061】
AD変換器11の駆動クロックには、電圧制御発振器15の出力を用いている。ただし、発振器出力とパルス再生信号の間には、フォトダイオードやレーザ発光までの過程で生じる遅延のために位相差を生じているので、可変遅延線16を用いてこの位相差を調節している。
【0062】
AD変換器11の出力信号は、デジタル等化器71で等化した後に移相器72でチャネルクロックの位相に対して所定量の位相をずらす。その後、位相比較器22でチャネルクロックとの位相差を求める。位相差信号は、ループフィルタ23で平滑化された後、DA変換器12で電圧信号に変換される。この電圧信号が電圧制御発振器の制御信号となる。移相器の出力信号は、適応等化器32で等化された後にヴィタビ復号器53に入力され、ビット列へと復号される。
【0063】
移相器72は、図14に示すように4タップのFIRフィルタである。中央より2つのタップ係数を9/16、残り2つを-1/16とすると、このFIRフィルタの出力は、xiとxi+1の間の補間値xi+1/2である。即ち、移相器の出力信号は入力信号の位相を(3/2)T遅らせた波形となる。再生光パルスの照射位置が即ち記録膜上のマークスペースパターンのサンプリング点になっていることに着目すると、図14に示した移相器により、サンプリングのタイミングが(1/2)T遅れたことと等価になる。すると、当然、位相比較器22の出力値も全点で-(1/2)Tが加算される。PLLは、位相比較器で検出される位相差が0になるように電圧制御発振器の出力クロックの位相を調整するように作用する。つまり、記録膜上のマークスペースパターンをサンプリングする位相が(1/2)T進むように調整される。図14中の各係数器に適切な値を設定することにより、-(1/2)Tから(1/2)Tの間で任意に位相を調整可能なことは当業者であれば容易に理解できることである。
【0064】
一部の書換え可能型光ディスクは、記録消去が記録マークのエッジ部で著しく起こるものがある。書換え可能型の光ディスクの記録膜には相変化材料が使用されていて、初め結晶相にある記録膜を記録レーザ光で溶融後に急冷させることでアモルファス相に遷移させることで記録マークを形成する。従って、記録マークの物理的なエッジ部は、結晶相とアモルファス相が接する遷移領域となっている。再生光による記録消去は、アモルファス相からなる記録マークが加熱と徐冷によるアニールを受け、徐々に結晶化が進むことにより起こる。その際に、アモルファス相部が結晶相と接していると、その結晶部を核として結晶化が進み易いのでエッジ部はマークの中心部よりも先に劣化が始まる。
【0065】
これを避けるためには、記録マークのエッジ部に再生光パルスを照射しないようにする方法が考えられる。マークエッジの物理的な位置と再生信号のエッジの位置はほぼ同じ位置に対応している。従って、再生光パルスをチャネルクロックを基準とするクロックに同期させ、更に、再生光パルスがエッジに当たらないように位相を調整すれば良い。即ち、図13に示した構成で上記条件を満たすように適切な位相調整を移相器で行うことにより実現可能である。
【0066】
図13の構成で移相器の設定が常に同じであると再生光パルスが常に同じ位相で照射される。その為、照射が集中した箇所から記録消去が進行する。記録マークの特定部分が記録消去され易いという特徴がないディスクの場合、却って記録消去の問題を顕在化させる可能性がある。従来の光ディスクドライブや図1に示した構成の場合、再生光パルスの照射位置はランダムであったのでこのような問題はなかった。これを回避するためには、例えば移相器に設定する位相調整量をシークの度に変更することが有効である。
【0067】
また、図1に示した例では、チャネルクロック周波数に応じて発振器15の発振周波数を設定する必要があった。従って、チャネルクロック周波数が連続的に変化するCAV(constant angular velocity)モード再生のような場合には、再生するディスク半径位置に応じて発振器の発振周波数を設定する必要があった。しかし、図13に示した例では、キャリア周波数がチャネルクロック周波数に自動的に追従するのでその必要がないという利点を有する。
【0068】
なお、図13にあるように、PLL中で位相比較の性能確保にデジタル等化器を用いるのが一般的な構成法である。この等化器もFIR形式で構成するのが一般的である。従って、適切なタップ係数を設定することによりデジタル等化器と移相器を一つのFIRフィルタに統一することも可能である。
【0069】
前述のように、再生光耐性を決定する主要な要素の一つが再生光パルスのピークパワーである。従って、図9に示したように半導体レーザを停止状態から発振状態に遷移させた際に起こる緩和振動により、意図した波形にオーバーシュートが付加されたような波形になることがある。このことは、高周波重畳法を用いて発生させた再生光パルスでも起こることである。緩和振動による出力光波形のオーバーシュートの影響を回避するためには、半導体レーザの駆動波形を工夫する方法がある。緩和振動は、半導体レーザを発振停止状態から急激に発振状態に遷移させた場合に顕著に観測される。そこで、図15に示すように、一旦低パワーで発光させた後にピークパワー発光させることによりパルスのピークに於ける緩和振動を抑圧している。図15の縦軸は、半導体レーザの駆動電流と光出力パワーとで供用している。図15中、破線が駆動電流で、太い実線が光出力パワーを表す。一点鎖線で示されているIthは、半導体レーザの閾値電流、即ち、レーザ発振を開始する電流値である。駆動電流を一旦、閾値を僅かに超えるレベルまで上げる。この時、緩和振動が発生するが、発光パワーの絶対値が小さいので再生光耐性への影響はない。その後に、所定のピーク出力を得られるように電流を増加させる。この時、レーザは既に発振状態にあるので緩和振動が起きにくい。
【実施例3】
【0070】
図16に本発明を実施した別の例を示す。この例の構成は、図13の例と類似しているがレーザドライバとして記録ストラテジを内蔵しない単純型レーザドライバ81を使用している点が異なる。単純型レーザドライバは、入力されたパルス波形を所望のパワーでレーザを駆動するためのパルス電流信号に変換する機能を有するのみでパルスデューティを調整することはできない。このようなレーザドライバを使用する場合には記録波形を専用の回路で生成し、それを単純型レーザドライバに送る。図16の例では、再生光パルスのパルス信号源として記録波生成回路80を用いている。再生光パルスのパルスデューティは、ここで決定される。記録波生成回路80で再生光パルスを発生させる際のパルスのクロックとして再生系PLL中の電圧制御発振器24の出力を用いている。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、光ディスクドライブ全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1:光ディスク、2:対物レンズ、3:1/4波長板、4:偏光ビームスプリッタ、5:コリメータレンズ、6:レーザダイオード、7:集束レンズ、8:フォトダイオード、10:電流アンプ、11:AD変換器、12:DA変換器、13:イコライザ、14:レーザドライバ、15:発振器、16:可変遅延線、17:低域通過フィルタ、20:高域通過フィルタ、21:アナログ等化器、22:位相比較器、23:ループフィルタ、24:電圧制御発振器、32:適応等化器、51:インターポレータ、53:ヴィタビ復号器、54:数値制御発振器、60:分周器、61:標本化速度逓倍器、71:デジタル等化器、72:移相器、80:記録波生成回路、81:単純型レーザドライバ、100:FIR補間器、101:2時刻遅延器、102:係数器、103:加算器、104:デュプレックサ、105:1時刻遅延器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源と、
前記レーザ光源をパルス駆動する光源駆動部と、
前記レーザ光源から発生されたレーザ光を光ディスクに照射する光学系と、
前記レーザ光照射によって光ディスクから光学的に再生された情報を電気的なパルス再生信号に変換する手段と、
前記パルス再生信号を標本化パルス再生信号に変換する手段と、
前記標本化パルス再生信号から前記光ディスクに記録されているデータを復号する手段とを有し、
前記レーザ光源のパルス駆動周波数がチャネルクロック周波数以下かつ前記光ディスクから光学的に再生された情報に含まれる最高周波数成分の2倍以上であること
を特徴とする光ディスクドライブ。
【請求項2】
前記レーザ光源のパルス駆動周波数が前記チャネルクロック周波数の1/2以上であることを特徴とする請求項1に記載の光ディスクドライブ。
【請求項3】
前記レーザ光源のパルス駆動周波数がチャネルクロック周波数の2/5以上であることを特徴とする請求項1に記載の光ディスクドライブ。
【請求項4】
前記レーザ光源のパルス駆動信号とチャネルクロックを同期させる手段と、
前記標本化パルス再生信号のチャネルクロック信号に対する位相を変更する手段を有することを特徴とする請求項1に記載の光ディスクドライブ。
【請求項5】
前記位相を変更する手段は、前記レーザパルスの照射位置を記録マークエッジに当たらないように、前記位相を調整する手段であることを特徴とする請求項1に記載の光ディスクドライブ。
【請求項6】
前記パルス再生信号のパルスデューティは、1/2以下であることを特徴とする請求項1に記載の光ディスクドライブ。
【請求項7】
前記パルス駆動は、前記パルスを照射する前に、前記パルスのピークパワーよりも低いパワーを照射するように駆動することを特徴とする請求項1記載の光ディスクドライブ。
【請求項8】
レーザ光源と、
前記レーザ光源をパルス駆動する光源駆動部と、
前記レーザ光源から発生されたレーザ光を光ディスクに照射する光学系と、
前記レーザ光照射によって光ディスクから光学的に再生された情報を電気的なパルス再生信号に変換する手段と、
前記パルス再生信号を標本化パルス再生信号に変換する手段と、
前記標本化パルス再生信号から前記光ディスクに記録されているデータを復号する手段とを有し、
前記レーザ光源のパルス駆動信号とチャネルクロックを同期させる手段と、
前記標本化パルス再生信号のチャネルクロック信号に対する位相を変更する手段を有することを特徴とする光ディスクドライブ。
【請求項9】
レーザ光源と、
前記レーザ光源をパルス駆動する光源駆動部と、
前記レーザ光源から発生されたレーザ光を光ディスクに照射する光学系と、
前記光ディスクから反射したパルス再生信号から、標本化パルス再生信号を生成するAD変換器と、
前記標本化パルス再生信号を所定の標本化速度に変換する標本化速度逓倍器と、
前記標本化速度逓倍器で変換された前記標本化パルス再生信号の標本化速度を変更するインターポレータと、
前記インターポレータからの出力信号を、ビット列へ復号する手段とを有することを特徴とする光ディスクドライブ。
【請求項1】
レーザ光源と、
前記レーザ光源をパルス駆動する光源駆動部と、
前記レーザ光源から発生されたレーザ光を光ディスクに照射する光学系と、
前記レーザ光照射によって光ディスクから光学的に再生された情報を電気的なパルス再生信号に変換する手段と、
前記パルス再生信号を標本化パルス再生信号に変換する手段と、
前記標本化パルス再生信号から前記光ディスクに記録されているデータを復号する手段とを有し、
前記レーザ光源のパルス駆動周波数がチャネルクロック周波数以下かつ前記光ディスクから光学的に再生された情報に含まれる最高周波数成分の2倍以上であること
を特徴とする光ディスクドライブ。
【請求項2】
前記レーザ光源のパルス駆動周波数が前記チャネルクロック周波数の1/2以上であることを特徴とする請求項1に記載の光ディスクドライブ。
【請求項3】
前記レーザ光源のパルス駆動周波数がチャネルクロック周波数の2/5以上であることを特徴とする請求項1に記載の光ディスクドライブ。
【請求項4】
前記レーザ光源のパルス駆動信号とチャネルクロックを同期させる手段と、
前記標本化パルス再生信号のチャネルクロック信号に対する位相を変更する手段を有することを特徴とする請求項1に記載の光ディスクドライブ。
【請求項5】
前記位相を変更する手段は、前記レーザパルスの照射位置を記録マークエッジに当たらないように、前記位相を調整する手段であることを特徴とする請求項1に記載の光ディスクドライブ。
【請求項6】
前記パルス再生信号のパルスデューティは、1/2以下であることを特徴とする請求項1に記載の光ディスクドライブ。
【請求項7】
前記パルス駆動は、前記パルスを照射する前に、前記パルスのピークパワーよりも低いパワーを照射するように駆動することを特徴とする請求項1記載の光ディスクドライブ。
【請求項8】
レーザ光源と、
前記レーザ光源をパルス駆動する光源駆動部と、
前記レーザ光源から発生されたレーザ光を光ディスクに照射する光学系と、
前記レーザ光照射によって光ディスクから光学的に再生された情報を電気的なパルス再生信号に変換する手段と、
前記パルス再生信号を標本化パルス再生信号に変換する手段と、
前記標本化パルス再生信号から前記光ディスクに記録されているデータを復号する手段とを有し、
前記レーザ光源のパルス駆動信号とチャネルクロックを同期させる手段と、
前記標本化パルス再生信号のチャネルクロック信号に対する位相を変更する手段を有することを特徴とする光ディスクドライブ。
【請求項9】
レーザ光源と、
前記レーザ光源をパルス駆動する光源駆動部と、
前記レーザ光源から発生されたレーザ光を光ディスクに照射する光学系と、
前記光ディスクから反射したパルス再生信号から、標本化パルス再生信号を生成するAD変換器と、
前記標本化パルス再生信号を所定の標本化速度に変換する標本化速度逓倍器と、
前記標本化速度逓倍器で変換された前記標本化パルス再生信号の標本化速度を変更するインターポレータと、
前記インターポレータからの出力信号を、ビット列へ復号する手段とを有することを特徴とする光ディスクドライブ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−76694(P2011−76694A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230156(P2009−230156)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]