説明

光ディスク基板の成形方法および射出成形機

【課題】 光ディスク基板成形用の横型の射出成形機において、成形運転中に運転を停止させることなく、R_R.Oを15μm程度以下までに低減可能とすること。
【解決手段】 固定側金型を搭載した固定ダイプレートに対して、可動側金型を搭載した可動ダイプレートを、型締め用駆動源の駆動力により複数本のタイバーに沿って水平方向に前後進させる構成をとる、射出成形機における光ディスク基板の成形方法において、成形運転中に、成形された光ディスク基板の偏芯を測定し、運転を停止させることなく、金型内への射出・充填時の前記両金型の位置合わせ関係を変化させることにより、光ディスク基板の偏芯量を低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク基板の成形方法および射出成形機に係り、特に、光ディスク基板成形用の射出成形機の成形運転中に運転を停止させることなく、光ディスク基板の偏芯を可及的に低減させる調整が可能な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ディスクは、高密度化、高速回転化が進み、これに伴って偏芯に対する規格が厳しくなってきており、この規格を満足しないと、正常なトラッキングが行えなくなる懸念がある。
【0003】
ここで、光ディスクの偏芯について、図12を用いて説明する。光ディスクの偏芯とは、図12に示すように、光ディスク基板101のセンター穴102に対する、記録面の記録開始円103のズレを指し、ECC(Eccentricity)およびR_R.O(Radical Run Out)の2種類で表現されている。DVD規格ができるまでは、偏芯量はECCで表現されていたが、DVD規格より、偏芯量はR_R.Oで表現されるようになっている。よって、現在でも、CDの偏芯量はECCで、DVDの偏芯量はR_R.Oはで表現されることが多い。
【0004】
ECC、R_R.Oはそれぞれ次のように定義されており、
ECC=t
R_R.O=A−B=2t
機械的偏芯量は同じでも、R_R.OはECCの2倍で表わされる。
【0005】
偏芯規格の1例として、DVDブック規格を、図13の表図に示す。図13での偏芯量はR_R.Oで表わされており、単位はμmである。
【0006】
図13に示すように、DVD−RおよびDVD−RWのブック規格では、4倍速以上の書込み速度では、R_R.Oが40μm以下であることが要求されるが、R_R.Oが40μmにギリギリ入るような値である場合には信頼性が乏しく、全品検査を余儀なくされることから、実際にはさらにシビアな値(例えば、40μmの規格値に対して、25μm以下の値)が要求される。
【0007】
ここで、光ディスクの上記した偏芯の発生要因としては、射出成形機が正確に製作されていることを前提とすると(つまり、可動ダイプレートと固定ダイプレートの平行度および上下真直度や、両ダイプレート同士の芯出しや、可動ダイプレートの直進性などが、高精度に確保されていることを前提とすると)、主として、
(1)スタンパー製作時のスタンパー自体の偏芯
(2)スタンパー取り付け時に生じる偏芯(スタンパー穴とスタンパーホルダー径との差により生じる偏芯)
(3)金型製作時や金型取り付け時に生じる可動側金型と固定側金型との位置合わせズレに起因する偏芯
(4)型締め時における射出成形機の主として固定ダイプレートの微小変位に起因する偏芯
が挙げられる。
【0008】
上記の偏芯の発生要因のうち(1)〜(3)は、射出成形機の製造メーカーの立場で見ると、客先に起因する問題であり、射出成形機の製造メーカーとしては、発生要因(4)こそ解決を要求される課題である。
【0009】
次に、偏芯の発生要因の(4)について説明する。図14は従来の横型の射出成形機の要部構成を示しており、図14において、111はベースフレーム、112はその下部をベースフレーム111に固定された固定ダイプレート、113は固定ダイプレート112に搭載された固定側金型、114は図示せぬトグルリンク機構により前後進駆動される可動ダイプレート、115は可動ダイプレート114に搭載された可動側金型、116は、固定ダイプレート112の4隅と図示せぬ保持プレートの4隅との間にそれぞれ架け渡らされた4本のタイバー、117はベースプレート111上に固定されたレール部材、118は、可動ダイプレート114の下部に取り付けられ、レール部材117上を直線運動可能な直動部材である。
【0010】
図14に示した構成においては、固定ダイプレート112はその下部をベースフレーム111に固定されているため、図14に示した型締め状態では、公知のように型締めに伴うトグルリンク機構の突っ張りによりタイバー116が伸ばされ、このタイバー116の弾性回復力により型締め力を発生させるようになっているので、固定ダイプレート112には、タイバー116によって図示左行方向の力が加えられ、図14に誇張して図示したように、固定ダイプレート112は固定された下側に対してその上側が変形して、これにより両金型113、115の芯がズレ、これが偏芯を発生される要因となる。
【0011】
このため、図15に示すように、固定ダイプレート112の下部にも直動部材118を取り付け、固定ダイプレート112がレール部材117上を直線移動できるように構成することも考えられる。このように構成すると、固定ダイプレート112の下側も変形することが可能となる。しかしながら、タイバー116による力は固定ダイプレート112の隅部に作用するため、固定ダイプレート112の隅部は、射出軸と平行な方向以外の力を受けることになるが、直動部材118が上記の射出軸と平行な方向以外へ変形しきれず、このため、固定ダイプレート112の上側の変形量に較べて、固定ダイプレート112の下側の変形量が小さくなることは否めず、やはり、両金型113、115の芯がズレ、偏芯を発生させる。
【0012】
また、横型の射出成形機においては、成形運転に伴い固定ダイプレート112などの上側と下側とでは温度差を生じ、5℃程度の温度差は簡単に生じる。この温度差により固定ダイプレート112には微妙な熱膨張量の差が生じ、このことも偏芯を発生させる要因となっている。
【0013】
そして、上記したような発生要因(4)による偏芯の方向や偏芯量は、射出成形機毎の製造上避けがたい機差(成形機の個体差、ばらつき)や、金型精度や、スタンパーの取り付け方位の如何などにより、異なったものとなっていた。
【0014】
なお、光ディスク基板の偏芯に対する観点での技術思想は見られないが、成形品の平行度を高精度なものとするために、型締め時の各タイバーの伸び量(すなわち、タイバー張力)を個別に調整可能とした構成が、知られている(特許文献1参照)。また、同じく、光ディスク基板の偏芯に対する観点での技術思想は見られないが、横型の射出成形機において、ダイプレートの上側と下側とを、独立して温度調整可能とした構成が、知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−212859号公報
【特許文献2】特開2000−271981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記したような発生要因(4)による偏芯量を低減させるためには、型締め時の各タイバーの伸び量(すなわち、タイバー張力)に微妙な差を持たせることや、固定ダイプレートの上側の温度調整と下側の温度調整とを独立させて、固定ダイプレートの上側と下側のコントロール温度に微妙な差をわざと持たせることが、有効であることを、本願発明者らは実験と経験則により見出した。
【0016】
しかしながら、図15に示したような構成を採用したとしても、固定ダイプレート112の上側の変形量に較べて、固定ダイプレート112の下側の変形量が小さくなって、シビアな偏芯量の要求に対しては、対処することが困難になってきている。
【0017】
また、スタンパーを交換する毎に、偏芯量を低減させる調整を行う必要があるが、従来は、射出成形機の成形運転を停止させた状態で、各タイバーの型締め時のタイバー張力の調整を行っていたため、リトライ調整と試運転とを繰り返さなければならず、調整に多大の時間を要するものとなっていた。すなわち、成形運転を停止させると、温度変化による加熱シリンダ内の滞留樹脂の性状変化、ノズルの金型タッチ解除(射出ノズル先端を固定側金型に密着させた状態からの解除、つまりノズルバック)によるノズルの温度変化、金型温度の低下、金型を取り付けているタイプレートの温度低下などが生じ、このことにより、再運転初期時には成形が安定せず、光ディスク基板の特性が安定しない。このため、再運転を開始した後の50〜100ショット分の成形品は、不良とみなして廃棄せざるを得ず(いわゆる、捨てショットが必要であり)、ようやく成形が安定した状態に入っても、偏芯量が許容値を超えている場合には、再び運転を停止して調整を行うことになり、かようにリトライ調整と試運転とを繰り返すことで、偏芯量が許容範囲に収まるまでに多大の時間を要するものとなって、生産性を著しく低下させていた。
【0018】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、光ディスク基板成形用の横型の射出成形機において、成形運転中に運転を停止させることなく、R_R.Oが15μm程度以下までに低減可能なようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は上記した目的を達成するため、固定側金型を搭載した固定ダイプレートに対して、可動側金型を搭載した可動ダイプレートを、型締め用駆動源の駆動力により複数本のタイバーに沿って水平方向に前後進させる構成をとる射出成形機において、成形運転中に、成形された光ディスク基板の偏芯を測定し、運転を停止させることなく、金型内への射出・充填時の前記両金型の位置合わせ関係を変化させることにより、光ディスク基板の偏芯量を低減させる。
【0020】
また、前記固定ダイプレートは全方位に対して変位可能なフリー状態で設置される。
また、型締め時に前記タイバーに発生するタイバー張力を、各タイバー毎に独立して調整可能な張力調整機構、または、前記固定ダイプレートの上部分および下部分の温度をそれぞれ独立して調整可能な温度調整機能、または、前記各タイバーにおける前記固定ダイプレート近傍の温度をそれぞれ独立して調整可能な温度調整機能、または、可動側金型または固定側金型のうちの一方をPL面に沿った方向に変位させることで、両金型の相対位置関係を調整可能な金型位置調整機能の、いずれか1つを具備し、前記各タイバーのタイバー張力の調整、前記固定ダイプレートの温度調整、前記各タイバーの温度調整、前記金型位置調整の少なくとも1つを行うことにより、前記した射出・充填時の前記両金型の位置合わせ関係を変化させる。
【発明の効果】
【0021】
本発明においては、固定ダイプレートが、全方位に対して変位可能なフリー状態で設置され、各タイバーのタイバー張力の個別調整、固定ダイプレートの上側と下側の個別温度調整、各タイバーの個別温度調整、可動側金型または固定側金型のうちの一方をPL面に沿った方向に変位させる金型位置調整の、少なくとも1つを行うことで、金型内への射出・充填時の前記両金型の位置合わせ関係を変化させて、光ディスク基板の偏芯量の低減調整を行い、光ディスク基板の偏芯量、R_R.Oを15μm程度以下にまで低減させることができる。また、光ディスク基板の偏芯量をさらに低減するには、上記各調整を適宜に組み合わせて行うことも有効である。そして、上記の光ディスク基板の偏芯量の低減調整は、運転を停止させることなく、成形運転中に行われるので、調整時間を従来よりも大幅に低減することが可能となり、生産性の向上に大いに寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。なお、本発明を用いて成形される光ディスク基板は、あらゆる種類の光ディスクに適用可能であって、これらの光ディスクを列挙すると、例えば、MD、CD、CD−R、CD−RW、MO、DVD−ROM、DVD±R、DVD±RW、DVD−RAM、AOD、ブルーレイディスクである。
【0023】
図1〜図11は、本発明の一実施形態(以下、本実施形態と記す)による光ディスク基板成形用の横型の射出成形機に係り、図1は、本実施形態の射出成形機における型開閉メカニズム系の構成を簡略化して示す要部正面図である。
【0024】
図1において、1はベースフレーム、2はベースフレーム1上に固設された平行な1対のレール部材、3は固定側金型4を搭載した固定ダイプレート、5は、型締め駆動源(型開閉駆動源)である型締め用のサーボモータ(図1では示されていない)などを搭載した保持プレート(テールストック)、6は、固定ダイプレート3の4隅と保持プレート5の4隅との間にそれぞれ架け渡らされた4本のタイバー、7は、後記する可動側金型調整機構を介して可動側金型8を搭載し、各タイバー6に挿通・案内されて前後進可能な可動ダイプレート、9は、保持プレート5に回転可能であるように保持され、型締め用のサーボモータの回転が伝達される被動プーリ、10は、被動プーリ9と一体に回転するナット体(図示せず)と、該ナット体が螺合したボールネジ軸10aとを持つボールネジ機構(回転→直線運動変換機構)、11は、その力の入力端であるクロスヘッド11aに、ボールネジ機構10の直線運動部であるボールネジ軸10aの先端が固定され、型締め用のサーボモータにより伸張/折り畳み駆動されることにより、可動ダイプレート7を前後進させるトグルリンク機構(トグルリンク式型締め機構)、12は、タイバー6の一端側を固定ダイプレート3に固定する締付けナット、13は、保持プレート5に回転可能であるように保持されるとともに、タイバー6の他端側に螺合されて、保持プレート5に搭載された4つのタイバー張力調整用のサーボモータ(図1では示されていない)により、それぞれ個別に回転駆動される調整ナット体である。
【0025】
また、14は、固定ダイプレート3の下部に間接的に取り付けられ、レール部材2上を直線移動可能な直動部材、15は、直動部材14と固定ダイプレート3の下部との間に配設された自在継手機構、16は、保持プレート5の下部に取り付けられ、レール部材2上を直線移動可能な直動部材、17は、可動ダイプレート7の下部に取り付けられ、レール部材2上を直線移動可能な直動部材、18は、型開閉メカニズム系の図1で左行限を規定する位置調整なストッパ部材である。
【0026】
また、19は、各タイバー6における固定ダイプレート3の近傍に内蔵もしくは巻装され、各タイバー6の固定ダイプレート3の近傍の温度を、個別に調整可能とするタイバー用ヒータ(シールヒータまたはバンドヒータ)である。
【0027】
図1に示す構成において、成形運転時には、固定側金型4の図示せぬ樹脂注入口には、図示せぬ射出メカニズム系のノズルが押し付けられた状態となっている。そして、型開き状態から型閉じを行う際には、型締め用のサーボモータを所定方向に回転させて、被動プーリ9、ボールネジ機構10を介してクロスヘッド11aを図1で右行方向に前進させて、トグルリンク機構11を伸張駆動し、可動ダイプレート7を固定ダイプレート3の方向に前進駆動する。光ディスク基板の成形では、金型タッチの直前で樹脂の射出・充填を開始し、金型タッチした後、トグルリンク機構11を完全に突っ張らせることによりタイバー6を弾性的に伸ばし、このタイバー6の弾性回復力により型締め力を発生させて、必要十分な型締め力を得るようになっている。また、型締め状態から型開きを行う際には、型締め用のサーボモータを先とは逆方向に回転させて、被動プーリ9、ボールネジ機構10を介してクロスヘッド11aを図1で左行方向に後退させて、トグルリンク機構11を折り畳み駆動し、可動ダイプレート7を固定ダイプレート3から離間する方向に後退駆動するようになっている。
【0028】
図2は、固定ダイプレート3の下部に設けられた前記した自在継手機構15近傍の構造を示す要部断側面図である。図2において、21は、レール部材2上を直線移動可能な前記直動部材14の上部に固定された担持部材、22は固定ダイプレート3の受け座部、23は、受け座部22内に球面受け部材24を介して、水平方向の全方位に回転可能であるように保持された球体、25は、球体23を貫通して担持部材21に締結・固定され、担持部材21と固定ダイプレート3とを連結する取り付けネジである。このような図2に示すような構造をとることにより、固定ダイプレート3は、それを間接的に担持するベースプレート1に対して、図1に矢印で示す射出軸の方向と平行な方向に移動可能であるとともに、自在継手機構15により全方位に対して、微小量ではあるが変位可能となり、したがって、型締め時に、固定ダイプレート3の下部の隅部に、タイバー6により射出軸と平行な方向以外の力が作用しても、固定ダイプレート3はこれに追従した方向に、微小量ではあるが(μm単位のオーダーであるが)容易に弾性変位することが可能となるように、構成されている。
【0029】
図3は、前記した保持プレート5の簡略化した側面図である。図3において、31は保持プレートに搭載された型締め用のサーボモータ、32はサーボモータ31の出力軸31aに固着された駆動プーリ(歯付きプーリ)、33は駆動プーリ32と前記被動プーリ9(歯付きプーリ)とに架け回されたタイミングベルトであり、前記被動プーリ9は、型締め用のサーボモータ31によりタイミングベルト33を介して回転駆動されるようになっている。
【0030】
また、34は、保持プレート5における各タイバー6の近傍にそれぞれ搭載された4つのタイバー張力調整用のサーボモータ、35は、サーボモータ34の出力軸34aに固着され、前記調整ナット体13の外周に一体に形成されたギヤ部と噛み合う駆動ギヤであり、各調整ナット体13は、成形品である光ディスク基板の偏芯を修正する際には、それぞれに対応するタイバー張力調整用のサーボモータ34によって個別に回転駆動され、これによって、各タイバー6の型締め時のタイバー張力が個別に調整可能となっている。なお、各調整ナット体13および各タイバー張力調整用のサーボモータ34は、射出成形機において公知の型厚調整(ダイハイト調整)用の部材としても機能するようになっていて、型厚調整の際には、4つのタイバー張力調整用のサーボモータ34は、同時に同期して、同一方向に、同一量だけ回転駆動されるようになっている。
【0031】
図4は、前記した固定ダイプレート3の温度調整装置を示す説明図である。本実施形態では、固定ダイプレート3内には、固定ダイプレート3の上半分の温度制御を行うための冷媒が循環するための冷媒通路41Aが設けられており、この冷媒通路41Aは第1の冷媒温調部42Aに連なっていて、冷媒通路41A内の冷媒の温度は、第1の冷媒温調部42Aによりコントロールされるようになっている。また、同じく、固定ダイプレート3内には、固定ダイプレート3の下半分の温度制御を行うための冷媒が循環するための冷媒通路41Bが設けられており、この冷媒通路41Bは第2の冷媒温調部42Bに連なっていて、冷媒通路41B内の冷媒の温度は、第2の冷媒温調部42Bによりコントロールされるようになっている。すなわち、本実施形態では、成形運転時に樹脂により加熱される固定ダイプレート3の温度を、上側と下側とでそれぞれ独立して可変制御可能なようになっている。
【0032】
図5、図6は、可動ダイプレート7の垂直面に沿った方向に、可動側金型8を変位可能とする、前記した可動側金型調整機構を示す図である。図5、図6において、43は、可動ダイプレート7に固定された第1レール部材、44は、第1レール部材43上を直線移動可能な第1直動部材、45は、第1直動部材44上に固定され、第1レール部材43と直交する第2レール部材、46は、第2レール部材45上を直線移動可能であると共に、可動側金型8に固定された第2直動部材、47は、可動ダイプレート7に搭載された第1サーボモータ、48は、第1サーボモータ47により駆動される第1ボールネジ機構、49は、可動ダイプレート7に搭載された第2サーボモータ、50は、第2サーボモータ49により回転駆動される第2ボールネジ機構である。
【0033】
第1サーボモータ47は、第1ボールネジ機構48のボールネジ軸48aを回転駆動し、ボールネジ軸48aの回転で直線移動する第1ボールネジ機構48のナット体48bは、図6では簡略化してあるが、一対の第2レール部材45に取り付けられている。そして、第1サーボモータ47の回転によって、一対の第2レール部材45が可動ダイプレート7に対して直線駆動され、これによって、第2レール部材45と一体の第1直動部材44が第1レール部材43上を移動することにより、可動側金型8が可動ダイプレート7に対して第1の方向に直線駆動されるようになっている。また、第2サーボモータ49は、第2ボールネジ機構50のボールネジ軸50aを回転駆動し、ボールネジ軸50aの回転で直線移動する第2ボールネジ機構50のナット体50bは、図6では簡略化してあるが、可動側金型8に取り付けられている。そして、第2サーボモータ49の回転によって、可動側金型8が直線駆動され、可動側金型8と一体となって移動する第2直動部材が第2レール部材45上を移動することにより、可動側金型8が可動ダイプレート7に対して、第1の方向と直交する第2の方向に直線駆動されるようになっている。
【0034】
本実施形態では、図5、図6に示したような可動側金型調整機構によって、可動側金型8を可動ダイプレート7の垂直面に沿う全方位に移動させることで、すなわち、言い換えるなら、可動側金型8をPL面(金型パーティングライン面)に沿った全方向に変位させることで、固定側金型4と可動側金型8とのPL面に沿った方向の相対位置関係を調整可能としている。
【0035】
なお、ここでは、可動側金型8のPL面に沿った方向への移動を例にとったが、固定側金型4の方を、PL面に沿った方向へ移動可能とした構成を採用してもよい。
【0036】
図7は、本実施形態の射出成形機において、光ディスク基板の偏芯を修正(低減)するための制御系の構成を示すブロック図である。図7において、51は、作業者(オペレータ)による偏芯発生情報(例えば、スタンパーの最上位置(天の位置)を基準方位として、どの方位にどれだけの偏芯量が発生したかという情報)の入力を受け付けて、経験則によって構築された偏芯修正アルゴリズムにしたがった指示を出力する射出成形機の上位制御装置、52は、上位制御装置51からの指示にしたがった調整制御を行う偏芯修正制御部、53は、各タイバー6の型締め時のタイバー張力を調整するための偏芯修正制御部52内のタイバー張力調整部、54は、固定ダイプレート3の上側と下側の温度調整を行うための偏芯修正制御部52内の固定ダイプレート温度調整部、55は、各タイバー6における固定ダイプレート3近傍の温度調整を行うための偏芯修正制御部52内のタイバー温度調整部、56は、可動側金型8をPL面に沿った方向に変位させて両金型4、8のPL面に沿った方向の相対位置関係の調整を行うための偏芯修正制御部52内の可動側金型調整部、57は、タイバー張力調整部53からの制御出力に応じて、前記4つのタイバー張力調整用のサーボモータ34をそれぞれ個別に駆動制御する4つのモータドライバ、58A、58Bは、固定ダイプレート温度調整部54からの制御出力に応じて、前記第1、第2の冷媒通路41A、41B内の冷媒の温度を制御するための、前記第1、第2の冷媒温調部42A、42B内の冷媒用ヒータ59A、59Bを、それぞれ個別に駆動制御するヒータドライバ、60は、タイバー温度調整部55からの制御出力に応じて、前記4つのタイバー用ヒータ19をそれぞれ個別に駆動制御する4つのヒータドライバ、61A、61Bは、可動側金型調整部56からの制御出力に応じて、前記した可動側金型調整機構の第1、第2サーボモータ47、49をそれぞれ個別に駆動制御する2つのモータドライバである。
【0037】
本実施形態では、成形運転により成形された光ディスク基板の偏芯の方位と偏芯量を、作業者がキー入力装置やタッチパネルを用いて入力すると、上位制御装置51は、タイバー張力調整部53、固定ダイプレート温度調整部54、タイバー温度調整部55、可動側金型調整部56の何れか1つを優先選択して、連続成形運転を停止させることなく、偏芯修正を行わせる。ここでは、例えば、タイバー張力調整部53により偏芯修正を行わせる場合は、作業者から入力された偏芯の方位と偏芯量から、前記タイバー張力調整部53は、前記4つのタイバー張力調整用サーボモータをそれぞれ駆動するモータドライバに対して、それぞれどれだけ回転駆動するかを決定し回転駆動指令を演算する。そして、マシン(射出成形機)が成形運転中の型開き状態から型閉じ動作に入るまでに前記回転駆動指令をそれぞれのモータドライバに対して指令し、タイバー張力調整用サーボモータを所定量駆動する。それによって、作業者から入力された偏芯の方位と偏芯量に基づいた各タイバーの張力に調整されることになる。その後、型閉じが完了して射出成形が行われ、取り出された光ディスク基板の偏芯の方位と偏芯量が作業者により測定される。そしてこれにより、R_R.Oが15μm以下まで低減されたことが作業者により確認されて、この旨が入力されると、偏芯修正の動作を終了させるが、当初よりも偏芯は改善されたが、なおも偏芯の修正が必要である場合には、作業者により入力された新たな偏芯の方位と偏芯量に応じて、上位制御装置51は、固定ダイプレート温度調整部54またはタイバー温度調整部55または可動側金型調整部56により偏芯修正を行わせる。本願発明者らの実験によれば、上記のようなタイバー張力調整部53による偏芯修正により、R_R.Oは15μm以下まで低減することが可能であることが確認された。しかし、R_R.Oをさらに低減するには、あるいは、より迅速に低減するには、タイバー張力調整部53、固定ダイプレート温度調整部54、タイバー温度調整部55、可動側金型調整部56による偏芯修正を適宜に組み合わせて同時に実行することも有効であり、また、1回目の偏芯修正を、タイバー張力調整部53のみで行った後、2回目の偏芯修正を、タイバー張力調整部53と、固定ダイプレート温度調整部54またはタイバー温度調整部55または可動側金型調整部56との、組み合わせで行うことも有効である。
【0038】
図8〜図11は、タイバー張力の調整によって偏芯量を低減させる様子を模式的に示している。図8は、各タイバー6の張力がそれぞれ100%であるときに、ディスク基板71に偏芯がない理想形を示している。図9は、各タイバー6の張力がそれぞれ100%であるときに、図9で天を0度として右回りに360度の方位をとったときに、90度方向にECCで15μmの偏芯量があった場合を示している。この場合には、図9に示すように左上と左下のタイバー6の張力を100%から93%に調整することで、偏芯はなくなる。また、図10は、各タイバー6の張力がそれぞれ100%であるときに、45度の方向に偏芯があり、図示で水平、垂直方向にそれぞれ15μmの偏芯ズレがあった場合を示している。この場合には、左下と右下のタイバー6の張力を100%から98%に調整し、左下のタイバー6の張力を100%から90%に調整することで、偏芯はなくなる。また、図11は、各タイバー6の張力がそれぞれ100%であるときに、63度の方向に偏芯があり、図示で水平方向に16μm、垂直方向に7μmの偏芯ズレがあった場合を示している。この場合には、右下のタイバー6の張力を100%から98%に調整し、左上の帯パー6の張力を100%から95%に調整し、左下のタイバー6の張力を100%から92%に調整することで、偏芯はなくなる。このように、4本のタイバー6の張力を、偏芯の方向と、水平、垂直方向の偏芯ズレの量に応じて、適宜に調整することで、偏芯をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係るディスク成形用の横型の射出成形機における、型開閉メカニズム系の構成を簡略化して示す要部正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るディスク成形用の横型の射出成形機における、固定ダイプレートの下部に設けられた自在継手機構近傍の構造を示す要部断側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るディスク成形用の横型の射出成形機における、保持プレートの簡略化した側面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るディスク成形用の横型の射出成形機における、固定ダイプレートの温度調整装置を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るディスク成形用の横型の射出成形機における、可動側金型調整機構を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るディスク成形用の横型の射出成形機における、可動側金型調整機構を示す説明図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るディスク成形用の横型の射出成形機における、光ディスク基板の偏芯を修正(低減)するための制御系の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るディスク成形用の横型の射出成形機における、タイバー張力の調整によって偏芯量を低減させる様子を模式的に示す説明図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るディスク成形用の横型の射出成形機における、タイバー張力の調整によって偏芯量を低減させる様子を模式的に示す説明図である。
【図10】本発明の一実施形態に係るディスク成形用の横型の射出成形機における、タイバー張力の調整によって偏芯量を低減させる様子を模式的に示す説明図である。
【図11】本発明の一実施形態に係るディスク成形用の横型の射出成形機における、タイバー張力の調整によって偏芯量を低減させる様子を模式的に示す説明図である。
【図12】光ディスクの偏芯の定義の説明図である。
【図13】DVDブック規格の偏芯量を示す表図である。
【図14】従来の横型の射出成形機における、型締め時の固定ダイプレートの変形の1例を示す説明図である。
【図15】従来の横型の射出成形機における、型締め時の固定ダイプレートの変形の他の1例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1 ベースフレーム
2 レール部材
3 固定ダイプレート
4 固定側金型
5 保持プレート
6 タイバー
7 可動ダイプレート
8 可動側金型
9 被動プーリ
10 ボールネジ機構
10a ボールネジ軸
11 トグルリンク機構
11a クロスヘッド
12 締付けナット
13 調整ナット体
14 直動部材
15 自在継手機構
16 直動部材
17 直動部材
18 ストッパ部材
19 タイバー用ヒータ
21 担持部材
22 受け座部
23 球体
24 球面受け部材
25 取り付けネジ
31 型締め用のサーボモータ
31a 出力軸
32 駆動プーリ
33 タイミングベルト
34 タイバー張力調整用のサーボモータ
34a 出力軸
35 駆動ギヤ
41A、41B 冷媒通路
42A 第1の冷媒温調部
42B 第2の冷媒温調部
43 第1レール部材
44 第1直動部材
45 第2レール部材
46 第2直動部材
47 第1サーボモータ
48 第1ボールネジ機構
48a ボールネジ軸
48b ナット体
49 第2サーボモータ
50 第2ボールネジ機構
50a ボールネジ軸
50b ナット体
51 上位制御装置
52 偏芯修正制御部
53 タイバー張力調整部
54 固定ダイプレート温度調整部
55 タイバー温度調整部
56 可動側金型調整部
57 モータドライバ
58A、58B ヒータドライバ
59A、59B 冷媒用ヒータ
60 ヒータドライバ
61A、61B モータドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側金型を搭載した固定ダイプレートに対して、可動側金型を搭載した可動ダイプレートを、型締め用駆動源の駆動力により複数本のタイバーに沿って水平方向に前後進させる構成をとる、射出成形機における光ディスク基板の成形方法であって、
成形運転中に、成形された光ディスク基板の偏芯を測定し、運転を停止させることなく、金型内への射出・充填時の前記両金型の位置合わせ関係を変化させることにより、光ディスク基板の偏芯量を低減させることを特徴とする光ディスク基板の成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスク基板の成形方法において、
前記固定ダイプレートは、全方位に対して変位可能なフリー状態で設置されることを特徴とする光ディスク基板の成形方法。
【請求項3】
請求項2に記載の光ディスク基板の成形方法において、
型締め時に前記タイバーに発生するタイバー張力を、各タイバー毎に独立して調整可能な張力調整機構、または、前記固定ダイプレートの上部分および下部分の温度をそれぞれ独立して調整可能な温度調整機能、または、前記各タイバーにおける前記固定ダイプレート近傍の温度をそれぞれ独立して調整可能な温度調整機能、または、可動側金型または固定側金型のうちの一方をPL面に沿った方向に変位させることで、両金型の相対位置関係を調整可能な金型位置調整機能の、いずれか1つを具備し、
前記各タイバーのタイバー張力の調整、前記固定ダイプレートの温度調整、前記各タイバーの温度調整、前記金型位置調整の少なくとも1つを行うことにより、前記した射出・充填時の前記両金型の位置合わせ関係を変化させることを特徴とする光ディスク基板の成形方法。
【請求項4】
固定側金型を搭載した固定ダイプレートに対して、可動側金型を搭載した可動ダイプレートを、型締め用駆動源の駆動力により複数本のタイバーに沿って水平方向に前後進させる構成をとる、光ディスク基板成形用の射出成形機において、
前記固定ダイプレートを、全方位に対して変位可能なフリー状態で設置すると共に、
成形運転中に、運転を停止させることなく、金型内への射出・充填時の前記両金型の位置合わせ関係を変化させる機能を制御する制御手段を設けて、該制御手段により運転を停止させることなく光ディスク基板の偏芯量を低減させることを特徴とする射出成形機。
【請求項5】
請求項4に記載の射出成形機において、
型締め時に前記タイバーに発生するタイバー張力を、各タイバー毎に独立して調整可能な張力調整機構、または、前記固定ダイプレートの上部分および下部分の温度をそれぞれ独立して調整可能な温度調整機能、または、前記各タイバーにおける前記固定ダイプレート近傍の温度をそれぞれ独立して調整可能な温度調整機能、または、可動側金型または固定側金型のうちの一方をPL面に沿った方向に変位させることで、両金型の相対位置関係を調整可能な金型位置調整機能の、いずれか1つを具備し、
前記制御手段は、前記各タイバーのタイバー張力の調整、前記固定ダイプレートの温度調整、前記各タイバーの温度調整、前記金型位置調整の少なくとも1つを行うことにより、前記した射出・充填時の前記両金型の位置合わせ関係を変化させることを特徴とする射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−7477(P2006−7477A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−185265(P2004−185265)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】