説明

光ディスク装置、光ディスク評価方法、光ディスク記録方法及び光ディスク

【課題】多層光ディスクにおけるトラッキング誤差信号への層間干渉の影響を小規模な回路構成でトラッキング方式によらず直接的に評価可能とし、以って光ディスク装置が多層ディスクに記録する際の信頼性を向上すること。
【解決手段】ディスク上の所定の層間干渉評価領域に光スポットを位置づけ、当該領域においてトラッキング誤差信号を検出し、所定の信号処理を行って層間干渉評価値を演算する手順によってトラッキング誤差信号の品質を評価する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに係り、特に複数の情報記録層を具備した光ディスクの記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク上にメインスポットとサブスポットを1/2トラックずらして照射し、メインスポットによるプッシュプル信号(MPP信号)からサブスポットによるプッシュプル信号(SPP信号)を所定のゲインで増幅した信号を減算した信号(DPP信号)をトラッキング誤差信号として用いる、所謂、差動プッシュプル方式(DPP方式)と呼ばれるトラッキング方式は、対物レンズの半径方向変位に起因するトラッキングオフセットの抑制効果が高く、従来から広く用いられてきた。
【0003】
一方で、多層光ディスクにおいて、ターゲットである情報記録再生層以外の層からの反射光が迷光として光検出器に入射してDPP信号が乱され、トラッキング制御が不安定となる場合があることが知られている。
【0004】
特許文献1には、SPP信号が記録再生層と別層との反射光の干渉によって揺らぐことでトラッキング誤差信号が乱されることが示唆されており、SPP信号揺らぎ量の評価方法として、
「理想的にはMPP信号とSPP信号は同じ信号となるから、SPP揺らぎ量はMPP信号とSPP信号の差分であると考えてよい。定義を以下に示す。
【0005】
ΔSPP=(SPP−MPP)/SMPP (3)
ここで、ΔSPPはある時刻におけるSPP揺らぎ量、SMPPはMPP信号の振幅である。ΔSPPは時刻ごとに変わる量であるから、適当な期間(例えばディスク1回転の時間)の分布を測定する必要がある。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−335048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、光ディスクの更なる大容量化のために情報記録層数を増やすことが検討されているが、その実現には層間隔の短縮が必須である。従来のBlu−rayDisc(以下、BDと略称する)の2層ディスクでは層間隔は25μm程度だったが、例えば4層化する場合には、層間隔を半分以下の10μm程度にまで短縮することが必要となる。
【0008】
ところが、層間隔が短縮されるほど、前述した記録再生層以外の層からの反射光強度は大きくなるので、トラッキング誤差信号の乱れが大きくなるという問題がある。しかも干渉による揺らぎについては、互いに干渉する光の強度差が小さいほど急激に変化する特徴があるため、ディスクの層間隔のばらつきがクリティカルに影響することが懸念される。即ち、ディスク製造上の公差として生じた層間隔のわずかな違いによって、あるディスクはトラッキング制御が安定だが別のディスクでは不安定ということが起こり得る。あるいは逆に、同一のディスクに対して、ある光ディスク装置ではトラッキング制御が安定だが別の装置では不安定ということが起こり得る。
トラッキング制御が不安定となるディスクにデータを記録すると誤記録してしまう可能性が高いので、事前に装着されたディスクにおけるトラッキング誤差信号の品質を評価して評価結果に応じた処理を行うことは、光ディスク装置として記録品質を確保するのに有効であり、特許文献1には評価指標としてΔSPPが開示されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の従来技術は、DPP方式以外のトラッキング方式には対応していなかった。また、間接的な評価であり、MPP信号が層間干渉の影響を受けないことが前提となっているため、該評価指標とトラッキング誤差信号品質との相関性が保障されている必要があった。また、SPPとMPPをそれぞれサンプリングし、例えばディスク1周分の所定の期間のデータを保存するメモリが必要なので、光ディスク装置に実装するための回路規模が比較的大きかった。
【0010】
以上を鑑みて、本発明の目的は、トラッキング誤差信号への層間干渉の影響を小規模な回路構成でトラッキング方式によらず直接的に評価可能とし、光ディスク装置が多層ディスクに記録する際の信頼性を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するために、本発明では特許請求の範囲記載の構成を用いる。一例として、図1に示すフローチャートに従って、ディスク上の所定の層間干渉評価領域に光スポットを位置づけ、当該領域においてトラッキング誤差信号を検出し、所定の信号処理を行って層間干渉評価値を演算する手順によりトラッキング誤差信号の品質を評価する構成とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、トラッキング方式によらずトラッキング誤差信号への層間干渉の影響を小規模な回路構成で評価可能であり、多層ディスクに対する光ディスク装置の記録信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明における層間干渉評価手順を示すフローチャートである。
【図2】第1実施例における光ディスク装置のブロック図である。
【図3】第1実施例における光ディスクのBCAにおけるトラッキング誤差信号の概念図である。
【図4】第1実施例における層間干渉評価回路のブロック図である。
【図5】第1実施例における層間干渉評価手順を示すフローチャートである。
【図6】第2実施例における層間干渉評価回路のブロック図である。
【図7】第3実施例における層間干渉評価回路のブロック図である。
【図8】第3実施例における層間干渉評価手順を示すフローチャートである。
【図9】第4実施例における光ディスクの層間干渉評価領域のトラック構造の概略図および該層間干渉評価領域におけるトラッキング誤差信号の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0014】
本発明の実施例としての多層光ディスク記録再生装置の構成ならびに動作を、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図2は第1実施例における光ディスク装置のブロック図である。本実施例の光ディスク装置は、光ピックアップ10と、スピンドルモータ30と、スライダ機構31と、システム制御回路40と、サーボ制御回路41と、エンコーダ42と、サーボ信号生成回路43と、再生信号生成回路44と、再生信号2値化回路45と、デコーダ46と、層間干渉評価回路50と、を備える。
【0016】
ここで光ピックアップ10は、BDの対応波長である405nm帯のレーザ光源11と、このレーザ光源から放射された光束を平行光束に変換するコリメートレンズ12と、光束を透過及び反射するビームスプリッタ13と、装着された光ディスク20のカバー層厚さに応じて平行光束の球面収差を調整する球面収差補正手段18と、平行光束を集光し光ディスク20の所定の情報記録層に所定のNA且つ所定の収差量以下で光スポットを形成する対物レンズ14と、この対物レンズ14をフォーカシング方向及びトラッキング方向に変位させるための対物レンズアクチュエータ15と、光ディスク20からの反射光束を所定の収束光束に変換する検出レンズ16と、この収束光束を受光して電気信号に変換する光検出器17と、を備える。
【0017】
システム制御回路40は、本実施例の光ディスク装置全体の動作を制御する機能を備えている。即ち、サーボ制御回路41を介して、スピンドルモータ30に装着された光ディスク20の回転制御を行い、スライダ機構31を駆動して光ピックアップ10を光ディスク20の半径方向に変位させるアクセス制御及び送り制御を行い、光ピックアップ10に搭載されている対物レンズアクチュエータ15を駆動して対物レンズ14のフォーカス制御及びトラッキング制御を行い、同じく光ピックアップ10に搭載されている球面収差補正手段18を駆動して球面収差を補正する。
【0018】
また、システム制御回路40は、光ピックアップ10に搭載されたレーザ光源の発光制御を行う。記録時には、記録データ信号がエンコーダ42によって所定の変調規則によるNRZI信号に変換されてシステム制御回路40供給され、システム制御回路40はこのNRZI信号に対応した発光パルス列(記録ストラテジ)に変換して、所定の光強度及びパルス幅でレーザ光源1を発光させる。
【0019】
光ディスク20のからの反射光束は光検出器17で受光されて電気信号に変換され、サーボ信号生成回路43及び再生信号生成回路44に送られる。サーボ信号生成回路43では、装着された光ディスク20に好適な検出方法を選択して各種のサーボ信号を生成し、A/Dコンバータにより標本化及び量子化を行ってデジタル信号に変換し、システム制御回路40に供給する。サーボ信号にはフォーカス誤差信号とトラッキング誤差信号とが含まれる。システム制御回路40では、これらサーボ信号に基づき、前述したようにサーボ制御回路41を介して対物レンズアクチュエータ15を駆動し、フォーカスサーボ及びトラッキングサーボを動作させる。また、サーボ信号生成回路43で生成されたプッシュプル信号の振幅や再生信号生成回路44を介して供給された再生信号の振幅に基づいて、サーボ制御回路41を介して球面収差補正手段18を駆動し、光ディスク20のカバー層厚さに対応して球面収差を補正する。
【0020】
また、サーボ信号生成回路43は層間干渉評価回路50にトラッキング誤差信号を供給する。本実施例においては、ディスクの溝構造に起因するプッシュプル信号に基づいてトラッキング誤差信号を生成する。ただし、必ずしも前述のDPP方式である必要はなく、例えば、レンズ位置信号を用いてプッシュプル信号を補正する方式であってもよい。層間干渉評価回路50の構成及び動作については後ほど詳述する。
【0021】
再生信号生成回路44は、波形等化回路とA/Dコンバータとを備えており、光ピックアップ10から供給されたアナログの再生信号に対して、所定の波形等化処理の後、標本化及び量子化を行ってデジタル信号に変換し、再生信号2値化回路45に供給する。
【0022】
再生信号2値化回路45は、PRML方式による再生回路であって、トランスバーサルフィルタとビタビ復号回路とを備える。再生信号生成回路44から供給されたデジタル信号は、トランスバーサルフィルタで所定のPRクラスに等化される。ビタビ復号回路は最尤復号を行ってこの等化波形を所定の変調規則によるNRZI信号に変換する。このNRZI信号は、デコーダ46によって所定の変調規則に基づいて再生データ信号に変換される。
【0023】
なお、再生信号2値化回路45は、PRML方式に限定されるものではなく、レベルスライス方式による再生回路で構成してもよい。
【0024】
次に本実施例における層間干渉評価方法について説明する。
本実施例においては、図1のフローチャートに示すように、層間干渉評価領域におけるトラッキング誤差信号に基づいて層間干渉評価を行うが、本実施例における層間干渉評価領域は、特に、バーストカッティング領域(BCA)である。BCAは基本的なディスク情報をバーコード状のデータとして記録しておくためにディスクの内周部に設けられた領域であって、トラック構造が通常のデータ記録領域とは異なっている。BDにおいては、通常のデータ記録領域におけるガイド溝のトラックピッチは0.32μmであり、BCAのガイド溝のトラックピッチは2.0μmである。
【0025】
図3は第1実施例における光ディスク20のBCAにおけるトラッキング誤差信号の概念図である。本実施例では前述のとおりプッシュプル信号に基づいてトラッキング誤差信号を生成するが、BCAにおいては通常のデータ記録領域のように連続した正弦波状のプッシュプル信号は現れず、ガイド溝エッジ部にのみ単独でS字状のプッシュプル信号が現れ、ガイド溝−ガイド溝間の平坦部においてはプッシュプル信号としての成分は現れない。本実施例においては、斯様な信号に基づいて層間干渉を評価する。
【0026】
図4は第1実施例における層間干渉評価回路50のブロック図である。オフセット・ゲイン調整回路51において、サーボ信号生成回路43から供給されたトラッキング誤差信号のオフセットを除去し、所定のゲインで増幅する。反射率やプッシュプル信号の変調度はディスクによって違いがあるので、規格化して評価するためにゲインは変更が可能である。ゲイン設定については、まず、図3に示したトラッキング誤差信号における溝エッジ部に発生するS字状の信号振幅が飽和しない範囲で所定の値となるようにゲインを調整してエッジ検出回路52に供給する。また、該規格化した信号を定数倍のゲインで増幅することにより、規格化しつつ平坦部を増幅してサンプリング回路54に供給する。
【0027】
エッジ検出回路52は、トラッキング誤差信号のレベル変化を観測し、例えば所定の閾値レベルを超えたことによってガイド溝エッジ部のS字状の信号を検出すると、ゲート信号生成回路53に検出信号を送る。
【0028】
ゲート信号生成回路53は、エッジ検出回路52からの検出信号を受け取ると、所定時間後にゲート信号をオンし、更に所定時間後にゲート信号をオフにする。即ち、ゲート信号がオンになっている間はトラッキング誤差信号が平坦部であるようにゲート信号を生成する。なお前述のエッジ検出後にゲートをオンおよびオフする時間は、光スポットがトラックを横断する速さが必ずしも一定ではないことを考慮して設定する。
【0029】
サンプリング回路54はゲート信号がオンの間、規格化且つ増幅されたトラッキング誤差信号をサンプリングし、数値化してメモリ回路55に蓄積する。
指標値演算回路56は、メモリ回路55に蓄積されたトラッキング誤差信号のデータに対して所定の演算を施し、層間干渉の指標値を出力する。具体的な演算方法としては、最大偏差(P−P)、標準偏差(σ)、パワー(RMS)などであり、信号変動を定量化する。
【0030】
図5は第1実施例における層間干渉評価の手順を示すフローチャートであり、図1に示したフローチャートにおける各処理を細分化したものである。
まず、ステップ103として、対物レンズアクチュエータ15を駆動して光ディスク20の層間評価を実施する情報記録層に光スポットをフォーカスする。この時点で球面収差およびフォーカスオフセットは評価対象の情報記録層に合わせて調整するか、予め用意しておいた値に設定する。
次いで、ステップ104としてスライダ機構31を駆動して光ピックアップ10移動し、光スポットを光ディスク20の層間評価領域に位置づける。
【0031】
ステップ105として、トラッキング誤差信号を取得する。また、前述したように取得したトラッキング信号を層間干渉評価回路50に供給しオフセット・ゲイン調整回路51においてオフセット及びゲインを調整する。
【0032】
ステップ106として、エッジ検出回路52においてガイド溝エッジ部を検出し、ゲート信号生成回路53によりゲート信号を生成する。このゲート信号は、前述したとおり、オンの間のトラッキング誤差信号は平坦部であるように生成する。
【0033】
ステップ107として、ゲート信号がオンになっている間、サンプリング回路54にてトラッキング誤差信号をサンプリングし、数値化してメモリ回路55に蓄積する。
【0034】
ステップ108として測定終了判定を行う。所定の回数測定が実行されると測定終了としてステップ109に移行し、それまではステップ106に戻って再度測定を行う。測定回数については、回数が多いほど精度の向上が期待できる一方でメモリ回路55が大きくなることを勘案して予め決定しておく。
【0035】
ステップ109として、指標値演算回路56においてメモリ回路55に蓄積されているデータに対して所定の演算を行ない、層間干渉指標値としてシステム制御回路40に送る。
【0036】
ステップ110として評価終了判定を行う。システム制御回路40が層間干渉指標値の妥当性を判定し、異常な場合には再評価を行う。あるいは球面収差やフォーカスオフセットを所定量変化させて条件を変えながら評価を繰り返し行うことで、あるいは単純に繰り返し測定をすることで、メモリ回路55の規模増大を抑制しつつ測定精度の向上を図ることができる。
【0037】
システム制御回路40は層間干渉指標値に基づいて、装着されたディスク20のトラッキング誤差信号の品質を評価する。そして、所定の品質を満足しないと判断すると記録を禁止する等の処理を行う。
【0038】
以上述べたように、本実施例によれば、BDと同様のBCA構造を備えた光ディスクに対して、トラッキング誤差信号への層間干渉の影響を小規模な回路構成でトラッキング方式によらず直接的に評価可能である。また、光ディスク装置として多層ディスクに記録する際の信頼性を向上することができる。
【0039】
なお本実施例においては、層間干渉評価回路50として指標値演算回路56を備える構成を示したが、本発明はこれに限るものではない。メモリ回路55にシステム制御回路40が直接アクセスすることを可能に構成し、システム制御回路40において層間干渉指標値を演算するように構成してもよい。
更には、本実施例の如くサーボ信号のデジタル処理を前提にすると、本実施例における層間干渉評価回路50におけるオフセット・ゲイン調整回路51、サンプリング回路54、メモリ回路55はサーボ信号処理のための回路との兼用が可能であり、回路を共通化することで回路規模を縮小できる。
【実施例2】
【0040】
図6に本発明の第2実施例における層間干渉評価回路のブロック図を示す。本実施例はメモリ回路を持たない構成例であり、以下に動作を説明する。なお、光ディスク装置としての構成及び評価手順については第1実施例と同様であり説明を省略する。
【0041】
第1実施例と同様に、オフセット・ゲイン調整回路51において、サーボ信号生成回路43から供給されたトラッキング誤差信号のオフセットを除去し、所定のゲインで増幅する。また、エッジ検出回路52は、トラッキング誤差信号のレベル変化を観測し、例えば所定の閾値レベルを超えたことによってガイド溝エッジ部のS字状のプッシュプル信号を検出すると、ゲート信号生成回路53に検出信号を送る。ゲート信号生成回路53は、エッジ検出回路52からの検出信号を受け取ると、所定時間後にゲート信号をオンし、更に所定時間後にゲート信号をオフにする。即ち、ゲート信号がオンになっている間はトラッキング誤差信号が平坦部であるようにゲート信号を生成する。
【0042】
整流回路57はオフセット及びゲインが調整されたトラッキング誤差信号に対し、負の信号成分を正の信号に反転させる。
【0043】
積分回路58はゲート信号生成回路53からのゲート信号がオンの間、整流回路57で整流されたトラッキング誤差信号に対して積分を実行する。
【0044】
指標値演算回路56は積分回路57から出力された信号を数値化する。
【実施例3】
【0045】
図7に本発明の第3実施例における層間干渉評価回路のブロック図を示す。エッジ検出回路とゲート信号生成回路とを備えていない点が第1実施例と異なっている。なお、光ディスク装置としての構成は第1実施例と同様であり説明を省略する。
【0046】
第1実施例と同様に、オフセット・ゲイン調整回路51において、サーボ信号生成回路43から供給されたトラッキング誤差信号のオフセットを除去し、所定のゲインで増幅する。
【0047】
サンプリング回路54は、所定の時間、規格化且つ増幅されたトラッキング誤差信号をサンプリングし、数値化してメモリ回路55に蓄積する。本実施例においてはガイド溝エッジ部の信号もそのままサンプリングしてメモリに蓄積する。
指標値演算回路56は、メモリ回路55に蓄積されたトラッキング誤差信号のデータ中のガイド溝エッジ部に該当するデータを検出して除外処理を行う。非エッジ部のデータに対して第1実施例と同様に所定の演算を施し、層間干渉の指標値を出力する。
【0048】
図8は第3実施例における層間干渉評価の手順を示すフローチャートであり、図1に示したフローチャートにおける各処理を細分化したものである。
第1実施例と同様に、ステップ103として、対物レンズアクチュエータ15を駆動してディスク20に層間評価を実施する情報記録層に光スポットをフォーカスオンし、球面収差およびフォーカスオフセットを評価対象の情報記録層に合わせて設定する。ステップ104としてスライダ機構31を駆動して光ピックアップ10移動し、光スポットを光ディスク20の層間評価領域に位置づける。ステップ105として、トラッキング誤差信号を取得し、層間干渉評価回路50に供給してオフセット・ゲイン調整回路51においてオフセット及びゲインを調整する。
【0049】
ステップ111として、サンプリング回路54において、前述したようにオフセット及びゲインを調整したトラッキング誤差信号を所定の時間サンプリングし、メモリ回路55に蓄積する。
ステップ112として、指標値演算回路56において、前述したようにメモリ回路55に蓄積されたトラッキング誤差信号のデータ中のガイド溝エッジ部をマスクする。非エッジ部のデータに対して第1実施例と同様に所定の演算を施し、層間干渉の指標値を出力する。
【0050】
ステップ110として、第1実施例と同様に評価終了判定を行う。
なお本実施例においても、第1実施例と同様に、メモリ回路にシステム制御回路が直接アクセス可能とし、システム制御回路において層間干渉指標値を演算するように構成してもよい。
更に本実施例においては、層間干渉評価回路は全てサーボ信号処理のための回路と兼用可能であることから、共通化した回路において本実施例の動作を行うことによって層間干渉評価が可能である。
【実施例4】
【0051】
図9に本発明の第4実施例における光ディスクの層間干渉評価領域のトラック構造の概略図および該層間干渉評価領域におけるトラッキング誤差信号の概念図を示す。
レーザ光源11の波長をλとし、任意の整数をmとすると、本実施例におけるガイド溝の深さは概ね(m+1/2)λで表現できる構成とする。
即ち、本実施例においては層間干渉評価領域においてプッシュプル信号は振幅成分を持たない直流的な信号であり、従って該プッシュプル信号に基づいて生成されるトラッキング誤差信号も直流的な信号である。溝構造のエッジ部における信号成分を持たないため、エッジ部の検出及び除外処理を必要としない。
そこで、本実施例において光ディスク装置としての構成は第1実施例と同様とし、層間干渉評価回路については図7に示した第3実施例と同様に構成する。
【0052】
動作の詳細については省略するが、層間干渉評価領域におけるトラッキング誤差信号がガイド溝エッジ部においても振幅成分を持たないよう構成したことにより当該エッジ部の除外処理を行わない。
即ち、第3実施例と同様に、オフセット・ゲイン調整回路51においてオフセットを除去するとともに規格化且つ増幅したトラッキング誤差信号を、サンプリング回路54で、所定の時間、ガイド溝エッジ部についても特段の処理を行わずにサンプリングし、数値化してメモリ回路55に蓄積する。指標値演算回路56において、メモリ回路55に蓄積されたトラッキング誤差信号のデータに対して所定の演算を施し、層間干渉の指標値を出力する。
【0053】
なお、本実施例においては層間干渉評価領域のトラック構造として溝深さが(m+1/2)λの構成を示したが、本発明はこれに限るものではなく、プッシュプル信号の振幅成分を持たない構成であればよい。例えば溝構造のない平板構造であってもよいし、あるいはトラックピッチが光スポットの回折限界以下となる構成であってもよい。
【0054】
また、本実施例における層間干渉評価領域はBCAであってもよいし、BCAでなくてもよい。ディスク上の位置についても通常のデータ領域の内周側に限定されるものではない。
【0055】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0056】
10・・・光ピックアップ、11・・・レーザ光源、12・・・コリメートレンズ、13・・・ビームスプリッタ、14・・・対物レンズ、15・・・対物レンズアクチュエータ、16・・・検出レンズ、17・・・光検出器、18・・・球面収差補正手段、20・・・光ディスク、30・・・スピンドルモータ、31・・・スライダ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクの所定の情報記録層における第1の領域に対してユーザデータを記録または再生する光ディスク装置であって、
光源と、
該光源から放射された光束を光ディスクの複数の情報記録層のうち任意の層に集光する対物レンズと、
前記光ディスクからの反射光に基づいてトラッキング誤差信号を生成する回路と、を備え、
前記光ディスクの所定の情報記録層における第2の領域に光スポットを照射して前記トラッキング誤差信号を検出し、
該トラッキング誤差信号に基づいて前記光ディスクの層間干渉を評価することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記光ディスクにおける第2の領域は、バーコード方式によりディスク情報を記録する領域であることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記光ディスクにおける第2の領域のトラッキング誤差信号に対してガイド溝エッジ部を検出してゲート信号を生成する回路を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記光ディスクにおける第2の領域のガイド溝深さが前記光源の波長λと任意の整数mとにより概ね(m+1/2)λで表されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
球面収差量またはフォーカスオフセット量を少なくとも1回変更して、前記トラッキング誤差信号を複数回検出することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の光ディスク装置。
【請求項6】
前記トラッキング誤差信号に基づいて層間干渉評価値を算出し、該層間干渉評価値が所定の閾値を超えると記録を禁止することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の光ディスク装置。
【請求項7】
複数の情報記録層を備え、所定の情報記録層における第1の領域にユーザデータを記録または再生する光ディスクに対する光ディスク評価方法であって、
前記光ディスクの所定の情報記録層における第2の領域に光スポットを照射する工程と、
前記トラッキング誤差信号を検出する工程と、
該トラッキング誤差信号に基づいて前記光ディスクの層間干渉を評価する工程と、を含むことを特徴とする光ディスク評価方法。
【請求項8】
前記光ディスクにおける第2の領域は、バーコード方式によりディスク情報を記録する領域であることを特徴とする請求項7に記載の光ディスク評価方法。
【請求項9】
前記光ディスクにおける第2の領域のトラッキング誤差信号に対してガイド溝エッジ部を検出してゲート信号を生成する工程を含むことを特徴とする請求項7または請求項8に記載の光ディスク評価方法。
【請求項10】
前記光ディスクにおける第2の領域のガイド溝深さが光源の波長λと任意の整数mとにより概ね(m+1/2)λで表されることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の光ディスク評価方法。
【請求項11】
球面収差量またはフォーカスオフセット量を少なくとも1回変更する工程と、
前記トラッキング誤差信号を複数回検出する工程と、を含むことを特徴とする請求項7から請求項10のいずれかに記載の光ディスク評価方法。
【請求項12】
複数の情報記録層を備え、所定の情報記録層における第1の領域にユーザデータを記録する光ディスクに対する光ディスク記録方法であって、
前記光ディスクの所定の情報記録層における第2の領域に光スポットを照射する工程と、
前記トラッキング誤差信号を検出する工程と、
該トラッキング誤差信号に基づいて前記光ディスクの層間干渉を評価する工程と、を含むことを特徴とする光ディスク記録方法。
【請求項13】
前記光ディスクにおける第2の領域は、バーコード方式によりディスク情報を記録する領域であることを特徴とする請求項12に記載の光ディスク記録方法。
【請求項14】
前記光ディスクにおける第2の領域のトラッキング誤差信号に対してガイド溝エッジ部を検出してゲート信号を生成する工程を含むことを特徴とする請求項12または請求項13に記載の光ディスク記録方法。
【請求項15】
前記光ディスクにおける第2の領域のガイド溝深さが光源の波長λと任意の整数mとにより概ね(m+1/2)λで表されることを特徴とする請求項12または請求項13に記載の光ディスク記録方法。
【請求項16】
球面収差量またはフォーカスオフセット量を少なくとも1回変更する工程と、
前記トラッキング誤差信号を複数回検出する工程と、を含むこと特徴とする請求項12から請求項15のいずれかに記載の光ディスク記録方法。
【請求項17】
前記トラッキング誤差信号に基づいて層間干渉評価値を算出する工程と、
該層間干渉評価値が所定の閾値を超えると記録を禁止する工程と、を含むことを特徴とする請求項12から請求項16のいずれかに記載の光ディスク記録方法。
【請求項18】
複数の情報記録層を備え、各々の情報記録層に、ユーザデータを記録する第1の領域と、ガイド溝深さが、記録又は再生に用いられる光源の波長λと任意の整数mとにより概ね(m+1/2)λで表される第2の領域と、を備えることを特徴とする光ディスク。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−150754(P2011−150754A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11579(P2010−11579)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】