説明

光ディスク装置及び光ディスク装置のスピンドル回転速度制御方法

【課題】光ディスクの回転に伴う共振を簡便な方法で回避する。
【解決手段】制御部70は、光ディスク80から読み出したリードイン情報を参照し、光ディスク80のメディアタイプが、BD,DVD_SL,DVD_DL,CDのいずれであるかを判別する。CLV(Constant Linear Velocity)方式の場合、制御部70は、各メディアのスピンドル回転速度がBDのスピンドル回転速度とほぼ同じになるように、判別したメディアタイプに基づいてスピンドルサーボを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置及び光ディスク装置のスピンドル回転速度制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ディスクは、使用される樹脂の特性により固有振動数を有している。この光ディスクの固有振動数とスピンドルモータのスピンドル回転速度とが一致すると、光ディスクが共振する。
【0003】
また、フォーカスサーボ系、トラッキングサーボ系、スピンドルサーボ系においても、共振するポイントがあり、光ディスクを回転するスピンドルモータのスピンドル回転速度により、光ディスクが共振する。
【0004】
共振が発生すると、スピンドルサーボ、フォーカス・トラッキングサーボ等に影響を及ぼし、光ディスクに記録されたデータの再生が困難になる。
【0005】
このような共振を回避するため、スピンドルモータの回転速度を、光ディスクが回転によって共振する共振範囲外となるように設定する光ディスク装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−185702号公報(第4−5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、近年、光ディスクとして、BD(Blu-ray Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、CD(Compact Disc)等の様々なメディアが存在するようになり、メディアタイプによらず、記録、再生を可能とする光ディスク装置も存在する。これらの光ディスクを回転するときのスピンドル回転速度は、メディア毎に異なる。
【0007】
スピンドル回転速度がメディアによって異なれば、共振範囲も異なってくる。メディア毎に、共振を回避するように光ディスク装置の各サーボ系を設計しようとすると、サーボ制御が複雑となり、すべてのスピンドル回転速度に対応させて共振を回避することが困難である。
【0008】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、光ディスクの回転に伴う共振を簡便な方法で回避することが可能な光ディスク装置及び光ディスク装置のスピンドル回転速度制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る光ディスク装置は、
メディアタイプに従ってクロック周波数が設定された光ディスクを回転するスピンドルモータと、
前記クロック周波数を調整する周波数調整データが供給され、前記供給された周波数調整データに基づいて、前記スピンドルモータが回転する光ディスクに対応するクロック周波数を調整し、前記調整したクロック周波数に基づいて前記スピンドルモータのスピンドル回転速度を制御するスピンドル回転速度制御手段と、
前記スピンドルモータが回転する光ディスクのメディアタイプを判別するメディアタイプ判別手段と、
回転に伴って前記光ディスクが共振する回転速度範囲を共振範囲として、前記共振範囲とは異なる範囲に目標範囲を設定し、前記スピンドルモータのスピンドル回転速度が、設定した前記目標範囲内となるように、前記周波数調整データを前記メディアタイプ判別手段が判別したメディアタイプに基づいて設定し、設定した前記周波数調整データを前記スピンドル回転速度制御手段に供給する周波数調整データ供給手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
前記周波数調整データ供給手段は、複数のメディアタイプの光ディスクのうち、いずれか1つを基準として、前記スピンドルモータが回転する光ディスクのメディアタイプに対応するスピンドル回転速度が、基準となる光ディスクのスピンドル回転速度の目標範囲内となるように、前記周波数調整データを、前記メディアタイプ判別手段が判別したメディアタイプに基づいて設定するようにしてもよい。
【0011】
前記光ディスクは、前記メディアタイプの情報が記録されたものであり、
前記メディアタイプ判別手段は、前記光ディスクに記録された前記メディアタイプの情報を取得して、前記光ディスクのメディアタイプを判別するようにしてもよい。
【0012】
前記スピンドル回転速度制御手段は、前記光ディスク上で線速度が一定となるように、前記スピンドル回転速度を制御するものであり、
前記周波数調整データ供給手段は、前記スピンドル回転速度が前記目標範囲内となるように、前記周波数調整データを前記メディアタイプ判別手段が判別したメディアタイプに基づいて設定するようにしてもよい。
【0013】
前記スピンドル回転速度制御手段は、前記スピンドルモータの角速度が一定となるように、前記スピンドル回転速度を制御するものであり、
前記周波数調整データ供給手段は、前記スピンドル回転速度が、設定した前記目標範囲内となるように、前記周波数調整データを前記メディアタイプ判別手段が判別したメディアタイプに基づいて設定するようにしてもよい。
【0014】
本発明の第2の観点に係る光ディスク装置のスピンドル回転速度制御方法は、
光ディスクに記録された記録データを再生する光ディスク装置のスピンドル回転速度制御方法であって、
メディアタイプに従ってクロック周波数が設定された光ディスクを回転するステップと、
回転する光ディスクのメディアタイプを判別するステップと、
回転に伴って前記光ディスクが共振する回転速度範囲を共振範囲として、前記共振範囲とは異なる範囲に目標範囲を設定し、前記光ディスクを回転するときのスピンドル回転速度が、設定した前記目標範囲内となるように、前記クロック周波数を調整する周波数調整データを、判別したメディアタイプに基づいて設定するステップと、
設定した前記周波数調整データに基づいて、前記クロック周波数を調整し、調整したクロック周波数に基づいて前記スピンドル回転速度を制御するステップと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、光ディスクの回転に伴う共振を簡便な方法で回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る光ディスク装置について説明する。
(実施形態1)
実施形態1に係る光ディスク装置100は、図1に示すように、光ピックアップ10と、信号生成回路20と、信号処理回路30と、フォーカス・トラッキングドライバ回路40と、スピンドルモータドライバ回路50と、スピンドルモータ60と、制御部70と、から構成される。
【0017】
この光ディスク装置100は、装填された光ディスク80から、記録された記録データを読み出して再生するものである。
【0018】
光ディスク80は、ディスク状記録媒体であり、光ディスク80には、種々のメディアがある。
【0019】
実施形態1に係る光ディスク装置100は、BD−ROM/R/RE、DVD−ROM/±R/RW(Single Layer)、DVD−ROM/±R(Dual Layer)、CDを対象メディアとして説明する。
【0020】
BD−ROM/R/REは、BD−ROM(Read Only Memory),BD−R(Recordable),BD−RE(Rewritable)を示す。
【0021】
DVD−ROM/±R/RW(Single Layer)は、記録層が単層のDVDであって、DVD−ROM,DVD−R、DVD+R,DVD−RWを示す。
【0022】
DVD−ROM/±R(Dual Layer)は、記録層が2層のDVD−ROM,DVD−R,DVD+Rを示す。
【0023】
また、−ROM、は読み出し専用のメディア、−R(Recordable),+Rは、同じ記録場所に1回だけデータの書き込みが可能なメディア、−RE(Rewritable),−RW(Rewritable),+RWは、同じ記録場所に何回でもデータの書き換えが可能なメディアであることを示す。
【0024】
実施形態1では、BD−ROM/R/RE、DVD−ROM/±R/RW(Single Layer)、DVD−ROM/±R(Dual Layer)を、それぞれ、BD、DVD_SL,DVD_DLと記す。
【0025】
これらのメディアについて、レーザ光の波長、トラックピッチ、記録変調方式、クロック周波数、スピンドル回転速度は、図2に示すように設定されている。この図2に示すように、従来、各メディアのクロック周波数は、異なっており、スピンドル回転速度も異なっている。
【0026】
また、これらのメディアでは、回転制御方式としてCLV(Constant Linear Velocity)方式が採用されている。CLV方式は、光ディスク80上で光ピックアップ10に対する線速度が一定となるようにスピンドル回転速度を制御する方式である。
【0027】
CLV方式では、再生時、光ピックアップ10が内周側から外周側に移動するのに伴い、スピンドル回転速度は図2に示すように変化する。
【0028】
尚、これらの光ディスク80の内周側には、リードインエリアが形成され、このリードインエリアに、光ディスク80に関するリードイン(Lead-in)情報が記録されている。光ディスク80のメディアタイプを示す情報も、このリードインエリアに記録されている。
【0029】
各メディアに対応した従来の光ディスク装置は、図2に示すスピンドル回転速度で光ディスク80が共振しないようにメディアタイプに対応して個別に設計されている。実施形態1に係る光ディスク装置100は、すべてのメディアについて、このような共振を回避するため、スピンドル回転速度を統一するように構成されている。
【0030】
図1に戻り、光ピックアップ10は、レーザ光を光ディスク80に照射して、その反射信号を電気信号に変換することにより、データの読み出しを行うためのものである。
【0031】
光ピックアップ10は、光学系11と、フォーカス・トラッキングアクチュエータ12と、から構成される。
【0032】
光学系11は、光を発して光ディスク80に記録されているデータを読み出すためのものである。光学系11は、半導体レーザ、対物レンズ等を含み、光ディスク80から読み出したデータを示す電気信号を出力する。
【0033】
フォーカス・トラッキングアクチュエータ12は、レーザ光の焦点位置を移動させるためのものである。フォーカス・トラッキングアクチュエータ12は、フォーカス・トラッキングドライバ回路40によって電圧が印加され、印加された電圧により光学系11に含まれる対物レンズをフォーカス方向とトラッキング方向とに駆動させることによって、レーザ光の焦点位置を移動させる。
【0034】
光ピックアップ10は、光学系11が出力した電気信号を信号生成回路20に供給する。
【0035】
信号生成回路20は、光ピックアップ10から供給された電気信号をデコードし、RF信号とFE信号とTE信号とを生成する。信号生成回路20は、生成したRF信号を信号処理回路30の復調回路32に供給し、FE信号とTE信号とを信号処理回路30の位相補償回路31に供給する。
【0036】
信号処理回路30は、制御部70の制御にもとづいてRF信号やFE信号やTE信号に処理を施す。信号処理回路30は、位相補償回路31と復調回路32とPLL(Phase Locked Loop)回路33とから構成される。
【0037】
位相補償回路31は、信号生成回路20から供給されたFE信号とTE信号とに位相補償を施し、光ピックアップ10から照射されるレーザ光の焦点位置を制御するアクチュエータ制御信号を生成する。位相補償回路31は、生成したアクチュエータ制御信号をフォーカス・トラッキングドライバ回路40に供給する。
【0038】
復調回路32は、信号生成回路20より供給されたRF信号をデコードし、デコードしたデジタル信号を制御部70に供給する。また、復調回路32は、RF信号に含まれるクロック信号を抽出し、PLL回路33に供給する。
【0039】
PLL回路33は、クロック周波数を調整する周波数調整データが供給され、供給された周波数調整データに基づいて、スピンドルモータ60が回転する光ディスク80に対応するクロック周波数を調整し、調整したクロック周波数に基づいてスピンドルモータ60のスピンドル回転速度を制御するものである。
【0040】
PLL回路33は、図3に示すように、位相比較器331とフィルタ332とVCO(Voltage Controlled Oscillator;電圧制御型発信器)333と分周器334とから構成される。
【0041】
位相比較器331は、復調回路32より供給されたクロック信号の位相と分周器334から供給されたクロック信号の位相とを時間比較して、両信号の位相差を示す位相差信号をフィルタ332に供給する。
【0042】
フィルタ332は、位相比較器331から供給された位相差信号の予め設定されたカットオフ周波数以下の低域成分のみを通過させ、VCO333に供給する。
【0043】
VCO333は、フィルタ332から供給された信号の電圧レベルに基づいた周波数の信号を生成し、生成した信号を分周器334に供給するとともに、生成した信号を、スピンドル回転速度を制御するスピンドルモータ制御信号としてスピンドルモータドライバ回路50とに供給する。
【0044】
分周器334は、制御部70から、クロック周波数を調整する周波数調整データとして分周データmが供給され、VCO333から供給された信号の周波数を、制御部70から供給された分周データmに基づいて分周し、分周したクロック信号を位相比較器331に供給する。
【0045】
図1に示すフォーカス・トラッキングドライバ回路40は、光ピックアップ10の光学系11に含まれる対物レンズを駆動させるフォーカス・トラッキングアクチュエータ12を動作させるために、位相補償回路31より供給されたアクチュエータ制御信号に応じた電圧をフォーカス・トラッキングアクチュエータ12に印加する。
【0046】
スピンドルモータドライバ回路50は、スピンドルモータ60のスピンドル回転速度制御を行うためのものであり、スピンドルモータ60を駆動させるために、PLL回路33より供給されたスピンドルモータ制御信号の周波数に応じた電圧をスピンドルモータ60に供給する。
【0047】
スピンドルモータ60は、スピンドルモータドライバ回路50より供給された電圧によってスピンドル回転速度が制御されて光ディスク80を回転駆動する。
【0048】
制御部70は、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等(図示せず)から構成され、光ディスク装置100全体を制御する。
【0049】
ROMは、CPUが実行するプログラムのデータを記憶するものであり、CPUは、ROMから読み出したプログラムデータに基づいて各処理を実行する。RAMは、CPUが処理を実行するのに必要な作業データ等を記憶する。
【0050】
制御部70は、光ディスク80がターンテーブル(図示せず)にセットされると、すべてのサーボをオフし、光ピックアップ10を初期位置(光ディスク80の最内周)へ移動させる。
【0051】
制御部70は、スピンドルモータドライバ回路50を介してスピンドルモータ60を回転させ、サーボ自動調整及びすべてのサーボをオンする。
【0052】
制御部70は、光ディスク80から記録データを読み出すように、光ピックアップ10を制御し、光ディスク80のリードインエリアに記録されたリードイン情報を読み込んでRAMに記憶する。
【0053】
制御部70は、RAMに記憶したリードイン情報を参照して、メディアタイプを示すメディアタイプ情報を取得する。
【0054】
制御部70は、回転に伴って光ディスク80が共振する回転速度範囲を共振範囲として、共振範囲とは異なる範囲に目標範囲を設定する。
【0055】
制御部70は、1倍速の場合のクロック周波数は、図2に示すように、光ディスク80のメディアタイプによって異なるため、BD,DVD_SL,DVD_DL,CDのうち、いずれか1つを基準とする。
【0056】
例えば、制御部70は、BDを基準として、BDの共振範囲とは異なる目標範囲を700〜2400rmpとする。そして、制御部70は、スピンドルモータ60が回転する光ディスク80のメディアタイプに対応するスピンドル回転速度が、図4に示すように、BDの目標範囲700〜2400rpm内となるように、判別したメディアタイプに基づいて分周データmを設定する。
【0057】
制御部70は、このようにして、スピンドルサーボを設定し、設定した分周データmをPLL回路33の分周器334に供給する。尚、制御部70は、この分周データmをROMに記憶する。
【0058】
また、CLV方式の場合、制御部70は、光ディスク上の線速度が一定となるように、判別したメディアタイプに基づいて分周データmを設定する。
【0059】
また、制御部70は、スピンドル回転速度が設定した速度になると、記録データの再生を行う。光ディスク80に記録されたデータを再生する際、光ディスク80に記録された記録データを取得する速度より、記録データを再生する速度が遅い場合、制御部70は、その記録データの差分をRAMに格納し、再生時の速度調整を行う。そして、制御部70は、このようなデータの処理速度を調整しつつ、順次、記録データを再生する。
【0060】
以下、実施形態1に係る光ディスク装置100の動作を説明する。
制御部70は、すべてのサーボをオフし、光ピックアップ10を初期位置(光ディスク80の最内周)へ移動させる。
【0061】
制御部70は、スピンドルモータドライバ回路50を介してスピンドルモータ60を回転させる。制御部70は、サーボ自動調整及びすべてのサーボをオンする。
【0062】
制御部70は、クロック周波数を設定して基準信号をPLL回路33の分周器334に供給し、記録データを読み込むように、光ピックアップ10を制御する。
【0063】
光ピックアップ10の光学系11は、レーザ光を光ディスク80に照射して、データの読み出しを行い、制御部70は、リードイン情報を読み込み、読み込んだリードイン情報をRAMに記憶する。
【0064】
制御部70は、図5に示すフローチャートに従って、スピンドルサーボ設定処理(1)を実行する。
【0065】
制御部70は、RAMに記憶されたリードイン情報を参照し、光ディスク80のメディアタイプを示す情報を取得する(ステップS11)。
【0066】
制御部70は、取得した情報に基づいて、光ディスク80のメディアタイプがBDであるか否かを判別する(ステップS12)。
【0067】
光ディスク80のメディアタイプがBDであると判別すると(ステップS12;Yes)、制御部70は、このメディアのスピンドル回転速度が1倍速(800〜2100rpm)となるようにスピンドルサーボを設定する(ステップS13)。そして、制御部70は、このスピンドルサーボ設定処理(1)を終了させる。
【0068】
メディアタイプがBDではないと判別すると(ステップS12;No)、制御部70は、メディアタイプがDVD_SLであるか否かを判別する(ステップS14)。
【0069】
メディアタイプがDVD_SLであると判別すると(ステップS14;Yes)、制御部70は、このメディアのスピンドル回転速度が1.4倍速(798〜2114rpm)となるように、スピンドルサーボを設定する(ステップS15)。そして、制御部70は、このスピンドルサーボ設定処理(1)を終了させる。
【0070】
メディアタイプがDVD_SLではないと判別すると(ステップS14;No)、制御部70は、メディアタイプがDVD_DLであるか否かを判別する(ステップS16)。
【0071】
メディアタイプがDVD_DLであると判別すると(ステップS16;Yes)、制御部70は、このメディアのスピンドル回転速度が1.27倍速(800〜2121rpm)となるように、スピンドルサーボを設定する(ステップS17)。そして、制御部70は、このスピンドルサーボ設定処理(1)を終了させる。
【0072】
メディアタイプがDVD_DLではないと判別すると(ステップS16;No)、制御部70は、メディアタイプがCDであるか否かを判別する(ステップS18)。
【0073】
メディアタイプがCDであると判別すると(ステップS18;Yes)、制御部70は、このメディアのスピンドル回転速度が4倍速(800〜2320rpm)となるように、スピンドルサーボを設定する(ステップS19)。そして、制御部70は、このスピンドルサーボ設定処理(1)を終了させる。
【0074】
光ディスク80のメディアタイプがCDではないと判別すると(ステップS18;No)、制御部70は、光ディスク80が装着されていないと判別し(ステップS20)、スピンドルサーボを設定せずに、このスピンドルサーボ設定処理(1)を終了させる。
【0075】
制御部70は、このように設定したスピンドルサーボに基づいて設定した分周データmをPLL回路33の分周器334に供給する。
【0076】
分周器334は、制御部70から供給された分周データmに基づいて、VCO333が出力する周波数信号の周波数を分周する。
【0077】
メディアタイプがBDであると制御部70が判別してスピンドルサーボを設定すると(ステップS13の処理)、スピンドル回転速度は、BDの1倍速のままであり、図6(a)に示すように、800〜2100rpmとなる。
【0078】
図6(a)に示すように、共振範囲が、例えば、400〜600rpmであるとすると、メディアタイプがBDの場合、スピンドル回転速度800〜2100rpmとこの共振帯域400〜600rpmとが異なる。このため、共振は回避される。
【0079】
メディアタイプがDVD_SLの場合、1倍速時のスピンドル回転速度は、図6(b)に示すように、570〜1510rpmである。制御部70が、このメディアタイプを判別してスピンドルサーボを設定すると(ステップS15の処理)、スピンドル回転速度は、1.4倍速となり、798〜2114rpmとなる。
【0080】
従って、スピンドル回転速度798〜2114rpmとこの共振帯域400〜600rpmとが異なるため、共振は回避される。
【0081】
メディアタイプがDVD_DLの場合、1倍速時のスピンドル回転速度は、図6(c)に示すように、630〜1670rpmである。制御部70が、このメディアタイプを判別してスピンドルサーボを設定すると(ステップS17の処理)、スピンドル回転速度は、1.27倍速となり、800〜2121rpmとなる。
【0082】
従って、スピンドル回転速度800〜2121rpmとこの共振帯域400〜600rpmとが異なるため、共振は回避される。
【0083】
メディアタイプがCDの場合、1倍速時のスピンドル回転速度は、図6(d)に示すように、200〜580rpmである。制御部70が、このメディアタイプを判別してスピンドルサーボを設定すると(ステップS19の処理)、スピンドル回転速度は、4倍速となり、800〜2320rpmとなる。
【0084】
従って、このスピンドル回転速度800〜2320rpmと共振帯域400〜600rpmとが異なるため、共振は回避される。
【0085】
そして、制御部70は、設定されたスピンドル回転速度で記録データの再生を行う。
【0086】
光ディスク80に記録された記録データを取得する速度より、記録データを再生する速度が速い場合、制御部70は、取得した記録データをそのまま出力する。
【0087】
一方、光ディスク80に記録された記録データを取得する速度より、記録データを再生する速度が遅い場合、その記録データの差分をRAMに格納する。そして、制御部70は、記録データを再生する速度に合わせて、RAMから記録データを読み出して、再生を行う。
【0088】
以上説明したように、本実施形態1によれば、制御部70は、CLV方式において、光ディスク80のメディアタイプを判別して、DVD_SL,DVD_DL,CDのスピンドル回転速度をBDのスピンドル回転速度とほぼ同じになるようにスピンドルサーボを設定するようにした。
【0089】
従って、光ディスク80の回転による共振を簡便な方法で回避することができる。また、スピンドルサーボ、フォーカス・トラッキングサーボへの影響を極力抑えることができ、結果的に、どのメディアにおいてもプレイアビリティ及びレコーダビリティを向上させることができる。
【0090】
また、各メディアについてのスピンドル回転速度が統一されることから、このスピンドル回転速度の範囲内にて、共振が起こらないように共振対策を施せばよくなり、共振対策も容易となる。また、各種サーボ系による共振を容易に排除することもできる。
【0091】
(実施形態2)
実施形態2に係る光ディスク装置は、回転制御方式として、CAV(Constant Angular Velocity)方式を用いて光ディスクを回転させる場合に、スピンドル回転速度を統一させて共振を回避するようにしたものである。
【0092】
CAV方式は、スピンドルモータ60の角速度が一定となるように、スピンドル回転速度を制御する方式である。
【0093】
実施形態2に係る制御部70は、例えば、スピンドル回転速度の目標範囲を、図7に示すように、BDの最速のスピンドル回転速度の2倍、即ち、4200±100rpmに統一する。
【0094】
制御部70は、図7に示すようなスピンドル回転速度となるように、判別したメディアタイプに基づいて分周データmを設定する。制御部70は、設定した分周データmをROMに記憶し、この分周データmをPLL回路33の分周器334に供給する。
【0095】
実施形態2に係る光ディスク装置100の動作を説明する。
実施形態2に係る制御部70は、図8に示すフローチャートに従い、スピンドルサーボ設定処理(2)を実行する。
【0096】
制御部70は、RAMに記憶されたリードイン情報を参照し、光ディスク80のメディアタイプを示す情報を取得する(ステップS31)。
【0097】
制御部70は、参照したリードイン情報に基づいて、光ディスク80のメディアタイプがBDであるか否かを判別する(ステップS32)。
【0098】
光ディスク80のメディアタイプがBDであると判別すると(ステップS32;Yes)、制御部70は、このメディアのスピンドル回転速度が2倍速(4200rpm)となるようにスピンドルサーボを設定する(ステップS33)。そして、制御部70は、このスピンドルサーボ設定処理(2)を終了させる。
【0099】
光ディスク80がBDではないと判別すると(ステップS32;No)、制御部70は、メディアタイプがDVD_SLであるか否かを判別する(ステップS34)。
【0100】
メディアタイプがDVD_SLであると判別すると(ステップS34;Yes)、このメディアのスピンドル回転速度が2.8倍速となるようにスピンドルサーボを設定する(ステップS35)。そして、制御部70は、このスピンドルサーボ設定処理(2)を終了させる。
【0101】
メディアタイプがDVD_SLではないと判別すると(ステップS34;No)、制御部70は、メディアタイプがDVD_DLであるか否かを判別する(ステップS36)。
【0102】
メディアタイプがDVD_DLであると判別すると(ステップS36;Yes)、制御部70は、このメディアのスピンドル回転速度が2.51倍速となるようにスピンドルサーボを設定する(ステップS37)。そして、制御部70は、このスピンドルサーボ設定処理(2)を終了させる。
【0103】
メディアタイプがDVD_DLではないと判別すると(ステップS36;No)、制御部70は、メディアタイプがCDであるか否かを判別する(ステップS38)。
【0104】
メディアタイプがCDであると判別すると(ステップS38;Yes)、制御部70は、このメディアのスピンドル回転速度が7.24倍速となるようにスピンドルサーボを設定する(ステップS39)。そして、制御部70は、このスピンドルサーボ設定処理(2)を終了させる。
【0105】
メディアタイプがCDではないと判別すると(ステップS38;No)、制御部70は、光ディスク80が装着されていないと判別し(ステップS40)、スピンドルサーボを設定せずに、このスピンドルサーボ設定処理(2)を終了させる。
【0106】
制御部70は、このように設定したスピンドルサーボに基づいて設定した分周データmをPLL回路33の分周器334に供給する。
【0107】
メディアタイプがBDであると制御部70が判別してスピンドルサーボを設定すると(ステップS33の処理)、スピンドル回転速度は、BDの2倍速となり、図9(a)に示すように、4200rpmとなる。
【0108】
図9(a)に示すように、共振帯域を、例えば、400〜600rpmとして、メディアタイプがBDの場合、スピンドル回転速度4200rpmとこの共振帯域400〜600rpmとが異なる。このため、共振は回避される。
【0109】
メディアタイプがDVD_SLの場合、図9(b)に示すように、1倍速時のスピンドル回転速度は、最大で1510rpmである。制御部70が、このメディアタイプを判別してスピンドルサーボを設定すると(ステップS35の処理)、スピンドル回転速度は、2.8倍速となり、4228rpmとなる。
【0110】
従って、スピンドル回転速度4228rpmとこの共振帯域400〜600rpmとが異なるため、共振は回避される。
【0111】
メディアタイプがDVD_DLの場合、1倍速時のスピンドル回転速度は、図9(c)に示すように、最大で1670rpmである。制御部70が、このメディアタイプを判別してスピンドルサーボを設定すると(ステップS37の処理)、スピンドル回転速度は、2.51倍速となり、4192rpmとなる。
【0112】
従って、スピンドル回転速度4192rpmとこの共振帯域400〜600rpmとが異なるため、共振は回避される。
【0113】
メディアタイプがCDの場合、1倍速時のスピンドル回転速度は、図9(d)に示すように、最大で580rpmである。制御部70が、このメディアタイプを判別してスピンドルサーボを設定すると(ステップS39の処理)、スピンドル回転速度は、7.24倍速となり、4200rpmとなる。
【0114】
従って、このスピンドル回転速度4200rpmと共振帯域400〜600rpmとが異なるため、共振は回避される。
【0115】
以上説明したように、本実施形態2によれば、制御部70は、CAV方式において、光ディスク80のメディアタイプを判別して、DVD_SL,DVD_DL,CDのスピンドル回転速度をBDの最速のスピンドル回転速度の2倍速とほぼ同じになるようにスピンドルサーボを設定するようにした。
【0116】
従って、CAV方式においても、光ディスク80の回転による共振を簡便な方法で回避することができる。
【0117】
尚、本発明を実施するにあたっては、種々の形態が考えられ、上記実施の形態に限られるものではない。
例えば、上記実施形態では、各メディアのスピンドル回転速度をBDのスピンドル回転速度に統一する場合について説明した。しかし、各メディアのスピンドル回転速度であれば、どのような速度に統一させてもよい、例えば、すべてのメディアのスピンドル回転速度をCDの8倍速に統一させるようにしてもよい。
【0118】
上記実施形態では、光ディスク装置100は、CLV方式を用いて線速度4.9[m/s]で光ディスク80を回転駆動させたが、その線速度に限定されるものではなく、共振を回避することが可能であれば、異なる線速度でもよい。
【0119】
実施形態2では、光ディスク装置100は、CAV方式を用いて回転速度4200[rpm]で光ディスク80を回転駆動させたが、その回転速度に限定されるものではなく、共振を回避することが可能であれば、異なる回転速度でもよい。
【0120】
また、実施形態1で説明したCLV方式、実施形態2で説明したCAV方式の代わりに、ZCLV(Zoned Constant Linear Velocity)方式を用いてもよい。
【0121】
また、光ディスク80は、BD、DVD_SL、DVD_DL、CDに限られるものではなく、例えば、判別対象の光ディスク80に、HD DVD−ROMを含めてもよい。
【0122】
この場合、制御部70は、メディアタイプがHD DVD−ROMと判別すると、このメディアのスピンドル回転速度が1倍速の1080〜2710rpmとなるように、スピンドルサーボを設定する。
【0123】
上記実施形態では、光ディスク80のサイズを12cmとして説明した。しかし、光ディスク80のサイズは、8cmであってもよい。この場合、光ディスク80のサイズが異なれば、光ディスク80の慣性モーメントが異なり、共振帯域も変わってくるので、制御部70は、このサイズに対応するように、スピンドル回転速度を統一する。
【0124】
上記実施形態では、光ディスク装置100を再生専用のものとして説明した。しかし、光ディスク装置100は、記録、再生するものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明の実施形態に係る光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【図2】光ディスクの記録データを再生するときのレーザ光の波長、光ディスクのトラックピッチ、記録変調方式、クロック周波数、スピンドル回転速度を示す図である。
【図3】図1に示すPLL回路の構成を示す図である。
【図4】図1に示す制御部がメディアタイプ毎に設定するスピンドル回転速度を示す図である。
【図5】図1に示す制御部が実行するスピンドルサーボ設定処理(1)を示すフローチャートである。
【図6】制御部がスピンドルサーボ設定処理を実行したときのスピンドル回転速度を示す図であり、(a)は、BDの1倍速、(b)は、DVD_SLの1倍速、1.4倍速、(c)は、DVD_DLの1倍速、1.27倍速、(d)は、CDの1倍速、4倍速のスピンドル回転速度を示す。
【図7】実施形態2に係る制御部がメディアタイプ毎に設定するスピンドル回転速度を示す図である。
【図8】図1に示す制御部が実行するスピンドルサーボ設定処理(2)を示すフローチャートである。
【図9】制御部がスピンドルサーボ設定処理(2)を実行したときの最速のスピンドル回転速度を示す図であり、(a)は、BDの1倍速、1.4倍速、(b)は、DVD_SLの1倍速、2.8倍速、(c)は、DVD_DLの1倍速、2.51倍速、(d)は、CDの1倍速、7.24倍速のスピンドル回転速度を示す。
【符号の説明】
【0126】
10 光ピックアップ
11 光学系
12 フォーカス・トラッキングアクチュエータ
20 信号生成回路
30 信号処理回路
31 位相補償回路
32 復調回路
33 PLL回路
331 位相比較器
332 フィルタ
333 VCO
334 分周器
40 フォーカス・トラッキングドライバ回路
50 スピンドルモータドライバ回路
60 スピンドルモータ
70 制御部
80 光ディスク
100 光ディスク装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディアタイプに従ってクロック周波数が設定された光ディスクを回転するスピンドルモータと、
前記クロック周波数を調整する周波数調整データが供給され、前記供給された周波数調整データに基づいて、前記スピンドルモータが回転する光ディスクに対応するクロック周波数を調整し、前記調整したクロック周波数に基づいて前記スピンドルモータのスピンドル回転速度を制御するスピンドル回転速度制御手段と、
前記スピンドルモータが回転する光ディスクのメディアタイプを判別するメディアタイプ判別手段と、
回転に伴って前記光ディスクが共振する回転速度範囲を共振範囲として、前記共振範囲とは異なる範囲に目標範囲を設定し、前記スピンドルモータのスピンドル回転速度が、設定した前記目標範囲内となるように、前記周波数調整データを前記メディアタイプ判別手段が判別したメディアタイプに基づいて設定し、設定した前記周波数調整データを前記スピンドル回転速度制御手段に供給する周波数調整データ供給手段と、を備えた、
ことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記周波数調整データ供給手段は、複数のメディアタイプの光ディスクのうち、いずれか1つを基準として、前記スピンドルモータが回転する光ディスクのメディアタイプに対応するスピンドル回転速度が、基準となる光ディスクのスピンドル回転速度の目標範囲内となるように、前記周波数調整データを、前記メディアタイプ判別手段が判別したメディアタイプに基づいて設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記光ディスクは、前記メディアタイプの情報が記録されたものであり、
前記メディアタイプ判別手段は、前記光ディスクに記録された前記メディアタイプの情報を取得して、前記光ディスクのメディアタイプを判別する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記スピンドル回転速度制御手段は、前記光ディスク上で線速度が一定となるように、前記スピンドル回転速度を制御するものであり、
前記周波数調整データ供給手段は、前記スピンドル回転速度が前記目標範囲内となるように、前記周波数調整データを前記メディアタイプ判別手段が判別したメディアタイプに基づいて設定する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記スピンドル回転速度制御手段は、前記スピンドルモータの角速度が一定となるように、前記スピンドル回転速度を制御するものであり、
前記周波数調整データ供給手段は、前記スピンドル回転速度が、設定した前記目標範囲内となるように、前記周波数調整データを前記メディアタイプ判別手段が判別したメディアタイプに基づいて設定する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光ディスク装置。
【請求項6】
光ディスクに記録された記録データを再生する光ディスク装置のスピンドル回転速度制御方法であって、
メディアタイプに従ってクロック周波数が設定された光ディスクを回転するステップと、
回転する光ディスクのメディアタイプを判別するステップと、
回転に伴って前記光ディスクが共振する回転速度範囲を共振範囲として、前記共振範囲とは異なる範囲に目標範囲を設定し、前記光ディスクを回転するときのスピンドル回転速度が、設定した前記目標範囲内となるように、前記クロック周波数を調整する周波数調整データを、判別したメディアタイプに基づいて設定するステップと、
設定した前記周波数調整データに基づいて、前記クロック周波数を調整し、調整したクロック周波数に基づいて前記スピンドル回転速度を制御するステップと、を備えた、
ことを特徴とする光ディスク装置のスピンドル回転速度制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−210444(P2008−210444A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45501(P2007−45501)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】