説明

光ディスク装置

【課題】光ディスク装置において、各部材の干渉を防止しつつ、全体の駆動を簡易化する。
【解決手段】光ディスク14の上側には、当該光ディスク14の外周領域に当接する外周側ターンテーブル24pが設けられている。光ピックアップ12等が載置された基台18は、光ディスク14の下側に配されている。この基台18は、光ディスク14を搬送するディスクトレイ16との干渉を避けるために、ディスクトレイ16の進退に連動して昇降する。可動レバー等から構成される伝達機構は、この基台18の昇降動作を、その方向を反転して、外周側ターンテーブル24pに伝達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ディスク装置、特に光ディスクを回転自在に支持する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光ディスクの意図しない反りを物理的に矯正して、情報の記録再生品質の向上を図る光ディスク装置の構成が提案されている。例えば、下記特許文献1には、ディスクトレイにより光ピックアップの動作領域に搬送された光ディスクの上側にターンテーブルを設け、上動するクランパにより当該光ディスクをターンテーブルの下面に圧着させる構成が開示されている。このターンテーブルの下面には、光ディスクの外縁が当接する環状突起が形成されており、この環状突起により光ディスクは断面形状傘状に矯正され、光ディスクごとの反りのバラつきが低減される。
【0003】
また、下記特許文献2に開示されている光ディスク駆動装置には、ターンテーブル上に載置されたディスクを押圧するクランパが設けられている。クランパは、光ディスクの内縁近傍をターンテーブルとともに挟持する中央クランパと、光ディスクの外縁近傍に当接する大クランパと、を備える。中央クランパには、強磁性体からなるターンテーブル先端に対向する位置に、マグネットが設けられており、このマグネットの磁力により、光ディスクは、大クランパに圧着され、その反りが矯正される。
【0004】
ところで、特許文献1,2に記載の光ディスク装置において、光ディスクは、ディスクトレイに載置されて、光ピックアップの動作領域に搬入または搬出される。この光ディスクの搬送の際に、ディスクトレイと、特許文献1におけるターンテーブルや特許文献2におけるクランパなどと、が干渉する恐れがある。この干渉を防止するために、従来、ディスクトレイに形成される光ディスクを収容するための収容凹部の深さを小さくし、ディスクトレイ全体の厚みを低減していた。この場合、ディスクトレイとターンテーブル等との干渉は防止される一方で、光ディスクを収容する凹部が浅くなることで光ディスクの保持性能が低下するという問題があった。なお、光ディスク装置の中には、光ディスクをディスクトレイに載置することなく、光ピックアップの動作領域に搬入出する、いわゆるスロットイン機構を備えたものもある。このスロットイン機構を特許文献1,2に適用した場合には、ディスクトレイが存在しないため、上記したようなディスクトレイとクランパ等との干渉や、光ディスクの保持性能低下などの問題は解消される。しかし、特許文献1,2にスロットイン機構を適用した場合には、当該スロットイン機構により搬送された光ディスクとクランパ等が干渉する場合があるという問題があった。
【0005】
そこで、既述の特許文献2では、ターンテーブルとクランパとで光ディスクを挟持するとき以外には、ターンテーブル上面に対して相対向する方向にクランパを移送させるようにしている。具体的には、クランパをバネ部材で上方向に付勢、あるいは、クランパの上側に第二のマグネットを設置している。前者の場合、光ディスクの挟持が終了し、ターンテーブルが下降すると、ターンテーブルおよびクランパ間での磁気吸引力より、バネ部材による付勢力のほうが大きくなる。その結果、クランパは、ターンテーブルから離れる方向に移動することになる。また、クランパの上側に第二のマグネットを設置している場合でも、ターンテーブルの下降に伴い当該ターンテーブルおよびクランパ間での磁気吸引力より、クランパに内蔵されたマグネットおよび当該クランパの上側に固定配置された第二マグネット間での磁気吸引力のほうが上回る。そして、この第二マグネットとの磁気吸引力により、ターンテーブルから離れる方向に移動する。このように、光ディスクを挟持するとき以外には、クランパを退避させることにより、クランパとディスクトレイとの干渉を防止できる。
【0006】
【特許文献1】特開2005−116108号公報
【特許文献2】特開2001−312849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2では、クランパを退避させるための駆動源として専用部材、例えば、バネ部材や、第二マグネットなどを用いている。かかる専用部材を設けた場合、機械構成の複雑化や、コストアップといった問題がある。また、特許文献2では、弾性力または磁力によりクランパを退避させているが、この退避に用いる弾性力または磁力は、いずれも、ターンテーブルを上動させた際に当該ターンテーブルおよびクランパ間での磁気吸引力より小さく、かつ、ターンテーブルが下降した際に当該ターンテーブルおよびクランパ間での磁気吸引力より大きくする必要があり、その調整が困難であった。
【0008】
そこで、本発明では、光ディスクに当接する当接部材を備える場合に、各部材間の干渉を防止しつつ、全体の駆動をより簡易化でき得る光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光ディスク装置は、光ディスクを回転駆動するスピンドルモータと、前記光ディスクの一方の面側に配置され、前記光ディスクに当接しつつ前記スピンドルモータからの駆動力を受けて当該光ディスクとともに回転駆動する当接部材と、前記光ディスクの他方の面側に配され、少なくとも光ピックアップが載置される基台であって、前記当接部材が前記光ディスクに当接する光ディスク装着時には前記当接部材に近づく方向に上昇し、前記当接部材が前記光ディスクに当接しない光ディスク非装着時には前記当接部材から離れる方向に下降する基台と、前記基台の昇降動作を、その方向を反転して、前記当接部材に伝達する伝達機構と、を備えることを特徴とする。
【0010】
好適な態様では、前記伝達機構は、一端が基台に、他端が前記当接部材に、直接または間接的に接続されるとともに、位置固定のリンク回転軸を中心に回転自在のリンク部材を備える。この場合、前記伝達機構は、さらに、前記リンク部材の他端に連結され、当該他端の昇降に連動して昇降する昇降板と、一端が前記昇降板に支持され、他端が前記昇降板の昇降に連動して位置固定のレバー回転軸を中心に回転自在に軸支されたレバー部材であって、前記当接部材を保持するホルダに係合されたレバー部材と、を備える。
【0011】
他の好適な態様では、前記当接部材は、ターンテーブルまたはクランパである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基台の昇降に連動して、当接部材が自動的に降昇(基台と反対方向に移動)する。そのため、簡易な構成で、ディスクトレイや光ディスクと当接部材との干渉を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。はじめに、本発明の実施形態である光ディスク装置10によるディスク保持の構成について図1〜4を用いて説明する。
【0014】
図1は、光ディスク装着時の光ディスク装置の構成図である。情報記録媒体である光ディスク14は、例えば、情報の記録あるいは再生が可能なCDやDVD等であり、光ディスク装置10のハウジング(不図示)の内外を出入りするディスクトレイ16の収容凹部16aに載置された状態で、光ピックアップ12の動作領域に搬送される。光ピックアップ12は、昇降可能に構成された基台18上により支持され、動作領域に搬送されてきた光ディスク14の半径方向に移動しながら、情報の記録または再生を行う。情報の再生は、光ピックアップ12内のレーザダイオード(LD)を駆動して再生パワーのレーザ光を光ディスク14に向けて照射し、その反射光を光ピックアップ12内のフォトディテクタで受光し、電気信号に変換して行われる。情報の記録は、記録すべきデータで変調した記録パワーのレーザ光を光ディスク14に照射し、光ディスク14の記録膜にピットを形成し、あるいは結晶状態を変化させて行われる。
【0015】
本実施形態においては、ターンテーブル24が2分割されて光ディスク14の一方の面側と他方の面側に配置されている。すなわち、ターンテーブル24は外周側ターンテーブル24pと内周側ターンテーブル24qとに2分割され、外周側ターンテーブル24pは光ディスク14の上側(レーベル面側)に配置され、内周側ターンテーブルは光ディスク14の下側(データ読み取り面側)に配置される。
【0016】
外周側ターンテーブル24pはターンテーブル補助部材23に連結され、光ディスク14のレーベル面の外周側に当接して光ディスク14を保持する。つまり、この外周側ターンテーブル24pは、光ディスク14の外周に当接する当接部材として機能する。外周側ターンテーブル24pの中心には開口が形成され、この開口径は光ディスク14の内径に略等しい。
【0017】
外周側ターンテーブル24pおよびターンテーブル補助部材23は、略円筒形の可動ホルダ62により回転自在に下向きに支持されている。可動ホルダ62の底面には、ターンテーブル補助部材23の外径より大径の貫通孔が形成されており、この貫通孔にターンテーブル補助部材23は挿通されている。そして、ターンテーブル補助部材23の上面に接続された大径の係止板60が貫通孔の周縁に係止することにより、ターンテーブル補助部材23および外周側ターンテーブル24pの脱落が防止されている。なお、可動ホルダ62は、昇降可能に構成された可動レバー64に係合され、当該可動レバー64とともに昇降するようになっているが、これについては、後に詳説する。
【0018】
内周側ターンテーブル24qは中心部にスピンドルモータ50が連結されてスピンドルモータ50により回転駆動される。内周側ターンテーブル24qの外径は光ディスク14の略内径に等しく、外周側ターンテーブル24pの開口径に略等しい。内周側ターンテーブル24qの周囲にはクランパ54が配置され、クランパ54は内周側ターンテーブル24qに巻回されたバネ56で光ディスク14方向に付勢支持される。すなわち、クランパ54は上下方向、すなわち矢印100方向に移動自在に内周側ターンテーブル24qに設けられる。クランパ54の上端部にフランジが形成され、光ディスク14のデータ読み取り面側の内周部に当接して光ディスク14を押圧する。クランパ54を付勢するバネ56はコイルバネでもよく板バネでもよい。いずれにせよ、光ディスク14はデータ読み取り面側のクランパ54とレーベル面側の外周側ターンテーブル24pとにより確実にホールドされる。内周側ターンテーブル24qの一部(先端部あるいは突出部)は光ディスク14の内径に挿入され、さらに外周側ターンテーブル24pの中心開口に嵌合する。内周側ターンテーブル24qの上端部にはマグネット58が設けられ、ターンテーブル補助部材23に形成されたヨーク25によりマグネット58からの磁力線を外周側ターンテーブル24pに導き外周側ターンテーブル24pと内周側ターンテーブル24qとを磁力により連結する。したがって、スピンドルモータ50により内周側ターンテーブル24qを回転駆動すると、外周側ターンテーブル24pも内周側ターンテーブル24qと一体的に回転する。なお、外周側ターンテーブル24pはターンテーブル補助部材23にビス止めにより連結しており、マグネット58とターンテーブル補助部材23が吸着することにより下側の内周側ターンテーブル24qと上側の外周側ターンテーブル24pが固定一体化する。
【0019】
光ディスク14の下側には既述したように、光ピックアップ12が搭載された基台18が配置されている。この基台18には、さらに、ターンテーブル24および光ディスク14を回転駆動するスピンドルモータ50が設けられる。また、光ピックアップ12を光ディスク14の半径方向に移動させるスレッドモータ52も基台18上に設けられる。つまり、本実施形態では、スピンドルモータ50、スレッドモータ52及び光ピックアップ12が全て、共通のベースである基台18に設けられているといえる。そのため、これら部材の間の位置合わせを容易に行うことができる。すなわち、スピンドルモータ50の回転中心は、光ピックアップ12の移動線上(シーク方向上)に位置することが要求されるが、同一の基台18上にスピンドルモータ50、スレッドモータ52及び光ピックアップ12を搭載することで、互いの位置決めが容易化される。
【0020】
ここで、この基台18は、ディスクトレイ16の進退を容易にするために、当該ディスクトレイ16の進退に連動して昇降するようになっている。具体的には、基台18は、その端部に設けられた回転軸(図1では図示せず)を中心として回動自在となっている。そして、ディスクトレイ16が退出する際には、基台18は、下降する方向に回動し、ディスクトレイ16上に光ディスク14を載置する。また、ディスクトレイ16および光ディスク14が光ピックアップ12の動作領域に達すれば、基台18は、上昇する方向に回動し、スピンドルモータ50により光ディスク14を回転可能な高さまで上昇する。なお、この基台18の昇降動作は、ディスクトレイ16の進退動作を機械的な伝達機構、例えば、ラックやピニオン、カム等から構成される伝達機構で伝達することにより実現されている。かかる構成とすることにより、ディスクトレイ16の進退動作のみを駆動制御すれば、自動的に基台18の昇降動作の駆動制御もできることになり、各動作ごとに駆動源を設ける場合に比べて、装置全体の構成を簡易化でき、また、その制御を容易にすることができる。なお、ディスクトレイ16から基台18への伝達機構の具体的構成は、周知の公知技術を利用することができるため、ここでの詳説は省略する。また、本実施形態では、回動により基台18、ひいては、光ピックアップ12等を昇降させているが、当然ながら、基台18を垂直移動させることにより昇降させてもよい。さらに、光ディスク14の装着時には当接部材(外周側ターンテーブル24p)に近づく方向に上昇し、光ディスク14の装着を解除する、すなわち、光ディスクを搬出する際には当接部材(外周側ターンテーブル24p)から離れる方向に下降するのであれば、基台18をディスクトレイ16とは別の駆動源によって昇降させてもよい。
【0021】
図2に、図1における外周側ターンテーブル24p、内周側ターンテーブル24q及び光ディスク14を抜き出して示す。外周側ターンテーブル24pは中心部に開口を有し、この開口に相当する位置に内周側ターンテーブル24qが位置する。光ディスク14の装着時に内周側ターンテーブル24qの突出部が光ディスク14の内径に挿入され、さらに外周側ターンテーブル24pの中心開口にも挿入される。内周側ターンテーブル24qのマグネット58及びターンテーブル補助部材23のヨーク25により外周側ターンテーブル24pと内周側ターンテーブル24qは磁力で連結される。内周側ターンテーブル24qにはスピンドルモータ50のスピンドルが連結され、回転駆動される。外周側ターンテーブル24pと内周側ターンテーブル24qとは磁力で連結されているから、上記のとおり外周側ターンテーブル24pも内周側ターンテーブル24qとともに回転駆動される。単に光ディスク14の上側(レーベル面側)にクランパを配置し、クランパを光ディスク14の外周部まで延在させる構成では、光ディスク14の回転駆動時に光ディスク14の厚さムラやクランパとターンテーブルに挟持された時の光ディスク14の傾きの影響を受けて変動することになるが、本実施形態では外周側ターンテーブル24pは内周側ターンテーブル24qと一体となってスピンドルモータ50により回転駆動されるので、光ディスク14の厚さムラや光ディスク14がクランパに挟持された時の傾きの影響を受けず光ディスク14を安定して強固に保持することができる。
【0022】
ここで、外周側ターンテーブル24pの下面、すなわち光ディスク14のレーベル面を支持する面の所定位置には環状の突起24a,24bが形成される。この環状突起24a、24bは、光ディスク14が上動する内周側ターンテーブル24qにより外周側ターンテーブル24pの下面に押圧されたときにその外縁部が当接する位置に形成される。光ディスク14には、大きさの異なる複数種類の光ディスク14(例えば12cm光ディスクと8cm光ディスク)が存在するため、環状突起も光ディスク14の種類毎に形成される。すなわち、12cm光ディスクの外縁が当接する位置、及び8cm光ディスクの外縁が当接する位置にそれぞれ形成される。
【0023】
12cm光ディスクを例にとると、光ディスク14は上動する内周側ターンテーブル24qおよびクランパ54により外周側ターンテーブル24pの下面に押圧される。光ディスク14の中央部及び内周部は外周側ターンテーブル24pの下面に当接し、光ディスク14の外縁部は環状突起24aに当接する。したがって、光ディスク14は、断面形状が傘状の凹面形状となって外周側ターンテーブル24pに押圧され、ターンテーブル24p,24qの回転によりこの形状を維持したまま回転する。
【0024】
図3に、12cm光ディスク14を外周側ターンテーブル24pの下面に押圧したときの状態を示す。12cm光ディスク14のレーベル面の外縁は2つの環状突起24a、24bのうちの第1の環状突起24aに当接し、光ディスク14の中央部は内周側ターンテーブル24qおよびクランパ54により上側に押圧される。この結果、光ディスク14は断面形状が傘状に矯正され、個々の光ディスク14で異なる反りが矯正される。なお、図では光ディスク14の断面形状は傘状となっているが、第1の環状突起24aの高さはわずか(0.3mm)であり、説明の都合上、強調して図示されている。
【0025】
なお、本実施形態では、光ディスク14の外周側は外周側ターンテーブル24pで保持され、内周側は外周側ターンテーブル24p及びクランパ54で保持されるが、クランパ54は矢印100方向に移動自在のバネ56により付勢されている。そのため、光ディスク14の厚さ変動はクランパ54の上下動により吸収される。すなわち、クランパ54は光ディスク14をデータ読み取り面側から押圧して保持する機能と、光ディスク14の厚さ変動を吸収する機能を併せ持つ。
【0026】
図4は、光ディスク14搬出時、すなわち、外周側ターンテーブル24pが光ディスクに当接しないとき(光ディスク非装着時)の光ディスク装置の構成を示す図である。光ディスク14の搬出時には、外周側ターンテーブル24pと内周側ターンテーブル24qとの磁力結合が開放され、両者は2つに分割される。基台18は回動機構により下降する方向に回動し、当該基台18に搭載されたスピンドルモータ50、スレッドモータ52、及び光ピックアップ12が下方に移動する。内周側ターンテーブル24qはスピンドルモータ50に連結されているから、スピンドルモータ50とともに下方に移動し、光ディスク14から離脱して光ディスク14を開放する。光ディスク14は自重により外周側ターンテーブル24pから非当接状態となり、ディスクトレイ16に落下し、その後、図4における矢印C方向に搬送される。
【0027】
ところで、光ディスク14を搬入・搬出するディスクトレイ16には、載置された光ディスク14の脱落等を防止するために、光ディスク14の外径に対応した円形凹部である収容凹部16aが形成されている。光ディスク14の脱落をより確実に防止するためには、この収容凹部16aを深くし、ディスクトレイ上面との段差を大きくすることが望ましい。しかし、収容凹部16aを深くするためにディスクトレイ16全体の厚みを大きくした場合、ディスクトレイ16の上面と外周側ターンテーブル24pとの干渉を招く恐れがあった。特に、本実施形態のように、外周側ターンテーブル24pを可動ホルダ62により吊り下げ保持している構成の場合、内周側ターンテーブル24qによる押し上げが解除されると、外周側ターンテーブル24pが自重により落下することになる。図1の図示例では、押し上げが解除されると、外周側ターンテーブル24pが可動ホルダ62から持ち上がっていた距離分だけ、ディスクトレイ16に近づくことになる。そして、その結果、ディスクトレイ16の進退の際などに、ディスクトレイ16と外周側ターンテーブル24pとの干渉が、より生じ易い状況となる。そのため、従来では、外周側ターンテーブル24pとディスクトレイ16との干渉を防止するために、ディスクトレイ16の厚みをより小さく、ひいては、収容凹部16aをより浅くせざるを得なかった。この場合、光ディスク14の保持性の低下や、ディスクトレイ16の見栄えの低下などの問題を招いていた。
【0028】
そこで、本実施形態では、外周側ターンテーブル24pの押し上げが解除されれば、当該外周側ターンテーブル24pを吊り下げ保持する可動ホルダ62を上側に移動させ、ディスクトレイ16との干渉を防止している。以下、この可動ホルダ62の昇降機構について詳説する。
【0029】
図5は、可動ホルダ62の昇降に特に関連する部材のみを抜き出した概略斜視図である。これらの部材のうち、光ピックアップ12等が載置される基台18は、既述したとおり、ディスクトレイ16の進退に応じて、基台回転軸18aを中心として回動する。本実施形態では、この基台18の昇降動作を、その動作方向を反転して可動ホルダ62、ひいては、外周側ターンテーブル24pに伝達する伝達機構を設けている。伝達機構は、可動ホルダ62を保持する可動レバー64や、可動レバー64の一端を支持する昇降板70、昇降板70と基台18とを接続するリンク部材72などから構成される。
【0030】
可動レバー64は、可動ホルダ62の上側に配され、基台回転軸18aの軸方向に長尺な部材である。この可動レバー64の略中央、両側には、可動ホルダ62の外側面に形成された係止軸62aを係止するための係止溝64aが形成されている。また、可動レバー64は、基台18を横断可能な程度の長さを有しており、その一端はハウジングに形成されたレバー回転軸(不図示)により回転自在に軸支されている。なお、可動レバー64の一端には、このレバー回転軸が挿通される軸孔64bが形成されている。可動レバー64の他端は、昇降板70により支持されており、当該昇降板70の昇降に応じて、可動レバー64がレバー回転軸を中心として回動するようになっている。
【0031】
昇降板70は、垂直方向に長尺な板材であり、その上端面は可動レバー64の他端に当接し、当該可動レバー64を支持する。昇降板70の下端近傍には、後述するリンク部材72の第一リンク軸72aが挿通される第一リンク孔70aが形成されている。この第一リンク孔70aは、レバー回転軸方向に長尺な略矩形である。そして、この昇降板70は、ハウジング80に形成された一対のガイド突起82に沿って、基台18の昇降に連動して垂直方向に昇降する。
【0032】
昇降板70と可動レバー64は、弾性体である圧縮コイルバネ74により接続されている。この圧縮コイルバネ74の一端は可動レバー64の端部に、他端は昇降板70の上端近傍にそれぞれ接続されており、可動レバー64および昇降板70の両者を互いに引き合う方向に付勢する。そして、このコイルバネ74による付勢力により、ガタつき等が防止されつつ可動レバー64および昇降板70が連動して駆動することができる。
【0033】
昇降板70および基台18は、リンク部材72により連結されている。リンク部材72は、ハウジングに固定形成された軸孔(図示せず)に挿通される中心軸72cを中心に回動自在な部材である。このリンク部材72の一端には第一リンク軸72aが、他端には第二リンク軸72bがそれぞれ形成されている。第一リンク軸72aは、既述したとおり、昇降板70に形成された第一リンク孔70aに挿通される。一方、第二リンク軸72bは、基台18に形成された第二リンク孔18bに挿通される。ここで、第二リンク孔18bは、基台18の基台回転軸18aとは反対側の端部近傍に形成された略矩形の孔である。
【0034】
このリンク部材72を側面、すなわち、中心軸72c方向から見た場合、第一リンク軸72aおよび第二リンク軸72bは、中心軸72cを挟んで直線上に並んでいる。したがって、リンク部材72が中心軸72cを中心として回動して第一リンク軸72aが上昇すれば第二リンク軸72bは下降し、第一リンク軸72aが下降すれば第二リンク軸72bは上昇するようになっている。換言すれば、第一リンク軸72aおよび第二リンク軸72bは、常に、逆の方向に昇降するようになっている。
【0035】
次に、基台18の昇降に伴う可動ホルダ62の降昇の様子を詳説する。図6は光ディスク装着時における概略側面図(図6(a))および概略正面図(図6(b))である。また、図7は、光ディスクの搬入・排出時、すなわち、光ディスク非装着時における概略側面図(図7(a))および概略正面図(図7(b))である。
【0036】
図6に図示するように、光ディスク装着時には、基台18は、その上面が略水平となる位置にある。また、このとき、外周側ターンテーブル24pを保持する可動ホルダ62の底面は、所定高さHにある。
【0037】
この状態から、光ディスク14の搬出が開始されると、基台18は、基台回転軸18aを中心として矢印A1方向に回動し、図7に図示した状態に移行する。この基台18の回動により、当該基台18の先端近傍に形成された第二リンク孔18bおよび当該第二リンク孔18bに挿通された第二リンク軸72bが下降することになる。そして、リンク部材72の一端に形成された第二リンク軸72bが下降すると、リンク部材72は、中心軸72cを中心として矢印A2方向に回動し、第一リンク軸72aは第二リンク軸72bとは逆に、上昇することになる。この第一リンク軸72aが上昇することにより、当該第一リンク軸72aが挿通された昇降板70も上昇する。この昇降板70の上昇は、そのまま、可動レバー64の他端に伝達される。この場合、可動レバー64は、レバー回転軸を中心に上昇する方向(A3方向)に回動する。そして、可動レバー64の上昇に伴い、当該可動レバー64により保持されている可動ホルダ62が上昇する。その結果、可動ホルダ62は、所定高さHから距離d分だけ上昇し、H+dの高さに位置する。そして、この可動ホルダ62の上昇により、当該可動ホルダ62に保持されている外周側ターンテーブル24pが上昇し、ディスクトレイ16との干渉が防止される。
【0038】
一方、再度、光ディスク装着が開始されると、上記流れとは逆の流れで可動ホルダ62が下降する。すなわち、光ディスク装着が開始されると、基台18は、基台回転軸18aを中心に矢印B1方向に回動する。そして、この回動に連動してリンク部材72が矢印B2方向に回動し、昇降板70は下降する。昇降板70の下降に伴い、可動レバー64が矢印B3方向に回動し、可動ホルダ62が下降する。そして、可動ホルダ62が所定高さHに到達することにより、外周側ターンテーブル24pは、内周側ターンテーブル24qと協働して、光ディスク14を挟持可能な位置まで下降することができる。なお、光ディスク装着が完了してデータ記録再生を行う際には、図1に示すように、外周側ターンテーブル24pおよびターンテーブル補助部材23は、可動ホルダ62から内周側ターンテーブル24qにより押し上げられる。
【0039】
以上の説明から明らかなとおり、本実施形態によれば、リンク部材72や昇降板70、可動レバー64で構成される伝達機構を介して、基台18の昇降動作をその方向を反転させて可動ホルダ62(ひいては外周側ターンテーブル24p)に伝達している。これにより、ディスクトレイ16が進退する際には、外周側ターンテーブル24pを上昇させ、光ディスク装着時には外周側ターンテーブル24pを下降させることができる。そして、これにより、ディスクトレイ16と外周側ターンテーブル24pとの干渉を防止しつつ、好適な光ディスク装着、ひいては、データ記録再生が可能となる。また、本実施形態では、基台18の昇降力を可動ホルダ62の昇降に利用しており、可動ホルダ62の昇降のための専用の駆動源を設けていない。そのため、簡易な構成で可動ホルダ62の昇降を実現することができる。
【0040】
なお、ここで説明した伝達機構の構成は一例であり、基台18の昇降動作をその方向を反転させて可動ホルダ62に伝達できるのであれば、当然、他の構成であってもよい。例えば、昇降板70およびリンク部材72に代えて、ラックやピニオンなどを用いるようにしてもよい。また、途中でネジ巻き方向が反転するリードスクリューを用いて、基台18の昇降動作をその方向を反転して可動ホルダ62に伝達するようにしてもよい。
【0041】
また、本実施形態は、光ディスクを挟んで光ピックアップの反対側に、光ディスクの外周縁に当接するクランパを備えた光ディスク装置、例えば、特許文献2に記載の光ディスク装置などにも適用できる。すなわち、特許文献2に記載されている光ディスク装置でも、光ディスクの上側に配されたクランパとディスクトレイとの干渉が生じる恐れがある。そこで、特許文献2に記載の光ディスク装置にも、上述したような基台18の昇降動作をその方向を反転してクランパに伝達する伝達部材を設けるようにしてもよい。さらに、本実施形態は、ディスクトレイを備えていないスロットイン機構の光ディスク装置に適用してもよい。すなわち、ディスクトレイを用いることなく、直接、光ディスクを搬送するスロットイン機構においても、外周側ターンテーブルや特許文献2におけるクランパのように光ディスクの外周領域に当接する当接部材が、搬送される光ディスクに干渉する恐れがある。そこで、スロットイン機構の光ディスク装置においても、本実施形態のように、基台の昇降動作を、その方向を反転して当接部材に伝達すれば、当該当接部材と光ディスクとの干渉を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施形態の光ディスク装置の構成図(光ディスク装着時)である。
【図2】図1におけるターンテーブルの構成図である。
【図3】光ディスク装置の光ディスク圧着説明図である。
【図4】実施形態の光ディスク装置の構成図(光ディスク搬送時)である。
【図5】可動ホルダの昇降に関連する部材を抜き出した図である。
【図6】伝達機構の概略正面図および側面図(光ディスク装着時)である。
【図7】伝達機構の概略正面図および側面図(光ディスク搬送時)である。
【符号の説明】
【0043】
10 光ディスク装置、12 光ピックアップ、14 光ディスク、16 ディスクトレイ、18 基台、23 ターンテーブル補助部材、24p 外周側ターンテーブル、24q 内周側ターンテーブル、58 マグネット、62 可動ホルダ、64 可動レバー、70 昇降板、72 リンク部材、74 コイルバネ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクを回転駆動するスピンドルモータと、
前記光ディスクの一方の面側に配置され、前記光ディスクに当接しつつ前記スピンドルモータからの駆動力を受けて当該光ディスクとともに回転駆動する当接部材と、
前記光ディスクの他方の面側に配され、少なくとも光ピックアップが載置される基台であって、前記当接部材が前記光ディスクに当接する光ディスク装着時には前記当接部材に近づく方向に上昇し、前記当接部材が前記光ディスクに当接しない光ディスク非装着時には前記当接部材から離れる方向に下降する基台と、
前記基台の昇降動作を、その方向を反転して、前記当接部材に伝達する伝達機構と、
を備えることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記伝達機構は、一端が基台に、他端が前記当接部材に、直接または間接的に接続されるとともに、位置固定のリンク回転軸を中心に回転自在のリンク部材を備えることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光ディスク装置であって、
前記伝達機構は、さらに、
前記リンク部材の他端に連結され、当該他端の昇降に連動して昇降する昇降板と、
一端が前記昇降板に支持され、他端が前記昇降板の昇降に連動して位置固定のレバー回転軸を中心に回転自在に軸支されたレバー部材であって、前記当接部材を保持するホルダに係合されたレバー部材と、
を備えることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の光ディスク装置であって、
前記当接部材は、ターンテーブルまたはクランパであることを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−159132(P2008−159132A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345464(P2006−345464)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000003676)ティアック株式会社 (339)
【Fターム(参考)】