説明

光ディスク装置

【課題】レーザダイオードを駆動させる直流電流及び高周波重畳電流の電流値を最適に調整できる光ディスク装置を提案する。
【解決手段】光ディスク装置において、直流電流に高周波電流を重畳して駆動電流として前記レーザ光源に供給し、当該レーザ光源を駆動させるレーザドライバと、前記サーボ信号又は再生信号に基づいて、前記レーザドライバが前記レーザ光源に供給する前記直流電流及び/又は前記高周波重畳電流の電流値を調整する制御部と、を備え、前記制御部は、前記サーボ信号又は再生信号の波形変動を表す値が波形変動の仕様値を満たし、前記再生信号の再生性能を表す値が再生性能の仕様値を満たし、且つ、前記光ディスクの前記レーザ光に対する耐久性能を表す値が耐久性能の仕様値を満たすように、前記直流電流及び/又は前記高周波重畳電流の電流値を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクを再生する光ディスク装置に関し、例えば、複数の記録層を備える光ディスクを再生可能な光ディスク装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、BD(Blu-ray)規格の光ディスクにおいて、記録容量を増加させるために記録層を増加させる技術が提案され、既に二層ディスクが実用化されている。今後、更なる大容量化を目的として三層や四層以上の記録層を有する光ディスク(以下、多層ディスク)の実用化が予想される。
【0003】
しかし、多層ディスクの再生においては、記録層の反射率低下による再生品質の低下が起こりやすい。そのため、光ディスクにレーザ光を照射するレーザダイオードに供給する直流電流と高周波重畳電流とを増加させ、S/N比を良好にすることで解決する。
【0004】
ところで、記録型の光ディスクの場合、レーザダイオードに供給する直流電流と高周波重畳電流とを単純に増加させてしまうと、いわゆる再生耐力を確保できなくなる。
【0005】
これに対し、特許文献1では、光ディスク装置において、再生パワーを徐々に増加させ、それぞれの再生パワーで再生した場合の再生信号の品質を表す指標値を測定し、測定した指標値が最小値となる下限再生パワーを参照して、最適再生パワーを設定する技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献2では、光ディスク装置において、ジッター検出器が、記録された情報を再生し、再生信号として検出し、コントローラが、ジッター検出器により検出された再生信号に応じて、高周波電流の重畳レベルを設定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−140580号公報
【特許文献2】特開2007−172770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記技術を用いた光ディスク装置による多層ディスクの再生においては、記録再生の対象層以外の層からの反射光の影響により、サーボ信号や再生信号が変動してしまうという問題があった。これらの信号が変動することで、再生品質の低下を引き起こしてしまう。そのため、レーザダイオードを駆動するための直流電流及び高周波重畳電流の電流値を、記録再生の対象層以外の層からの反射光の影響を受けないように調整する必要がある。
【0009】
本発明は、以上の点を考慮してなされたもので、レーザダイオードを駆動させる直流電流及び高周波重畳電流の電流値を最適に調整できる光ディスク装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため本発明の一態様においては、レーザ光源から出射されたレーザ光を光ディスクに反射させ、反射させた反射光をフォトダイオードで電気信号として検出し、検出した電気信号からサーボ信号又は再生信号を生成する光ディスク装置において、直流電流に高周波電流を重畳して駆動電流として前記レーザ光源に供給し、当該レーザ光源を駆動させるレーザドライバと、前記サーボ信号又は再生信号に基づいて、前記レーザドライバが前記レーザ光源に供給する前記直流電流及び/又は前記高周波重畳電流の電流値を調整する制御部と、を備え、前記制御部は、前記サーボ信号又は再生信号の波形変動を表す値が波形変動の仕様値を満たし、前記再生信号の再生性能を表す値が再生性能の仕様値を満たし、且つ、前記光ディスクの前記レーザ光に対する耐久性能を表す値が耐久性能の仕様値を満たすように、前記直流電流及び/又は前記高周波重畳電流の電流値を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、レーザダイオードを駆動させる直流電流及び高周波重畳電流の電流値を最適に調整できる光ディスク装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態による光ディスク装置を示すブロック図である。
【図2】レーザダイオードの駆動電流と発光波形の関係を示した図である。
【図3】ディテクタに光ディスクからの反射光が投影されている状態を説明するための図である。
【図4】(A)は、単層ディスクにおけるトラッキングエラー信号の波形図であり、(B)は、多層ディスクにおけるトラッキング信号の波形図である。
【図5】再生パワーとHF変調度に対するTE信号の波形変動を示す図である。
【図6】再生パワーとHF変調度に対する再生信号の再生性能を示す図である。
【図7】再生パワーとHF変調度に対する光ディスクの再生耐力を示す図である。
【図8】再生パワーとHF変調度に対する波形変動、再生性能、及び再生耐力が各仕様値を満たす範囲を示す図である。
【図9】再生パワー及びHF変調度決定処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】波形変動測定処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】再生性能測定処理を説明するためのフローチャートである。
【図12】再生耐力測定処理を説明するためのフローチャートである。
【図13】他の実施の形態による再生耐力の測定方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0013】
1……光ディスク装置、2……光ディスク、3……光ピックアップ、4……マイコン、5……アナログ信号処理器、6……デジタル信号処理器、31……レーザダイオード、32……レーザドライバ、33……ビームスプリッタ、34……パワーモニタ、35……偏光ビームスプリッタ、36……ディテクタ、37……1/4波長板、38……対物レンズ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳述する。
【0015】
(1)本実施の形態の光ディスク装置の構成
図1において、1は全体として本実施の形態による光ディスク装置を示す。この光ディスク装置1は、光ピックアップ3とマイコン4とアナログ信号処理器5とデジタル信号処理器6とを備え、光ディスク2が装填されるように構成されている。
【0016】
光ピックアップ3は、レーザ光を光ディスク2に照射し、反射した反射光を検出して光電変換により電気信号に変換し、アナログ信号処理器5に供給する。また、光ピックアップ3は、レーザダイオード31と、レーザドライバ32と、ビームスプリッタ33と、パワーモニタ34と、偏光ビームスプリッタ35と、ディテクタ36と、1/4波長板37と、対物レンズ38とを備える。
【0017】
レーザダイオード31は、レーザドライバ32から供給された駆動電流に応じた発光パワーでレーザ光を発光する。
【0018】
レーザドライバ32は、図示しない直流電流回路と高周波電流回路を備えている。レーザドライバ32は、マイコン4の制御に応じて、直流電流回路に出力させた直流電流に、高周波電流回路に出力させた高周波電流を重畳してレーザダイオード31に供給し、レーザダイオード31を駆動させる。
【0019】
ここで、図2を参照して、レーザダイオード31が発光したレーザ光の発光パワーと、レーザドライバ32がレーザダイオード31に供給する駆動電流との関係を説明する。
【0020】
レーザダイオード31に供給される駆動電流の電流値と、レーザダイオード31が発光したレーザ光の発光パワーの関係は、直線201に示されるような比例関係である。この特性はレーザダイオードによって異なる。また、レーザドライバ32は、レーザダイオード31に、正弦波202のような駆動電流を供給する。この駆動電流は、直流電流に高周波電流が重畳されている。正弦波202で示される駆動電流を、直線201で示される特性を有するレーザダイオード31に供給した場合に、レーザダイオード31は、発光パワーが波形203のような発光波形となるレーザ光を出力する。
【0021】
すなわち、レーザドライバ32が出力する駆動電流に含まれる直流成分と高周波成分とを変化させることで、発光波形を制御することが可能である。ここで、発光波形203の平均パワーに対するピークパワーの比を「HF変調度」と定義する。また、以下、「再生パワー」とは図2における平均パワーのことを示す。
【0022】
ビームスプリッタ33は、レーザダイオード31からのレーザ光の一部を透過させ、一部を反射させてパワーモニタ34に導く。
【0023】
パワーモニタ34は、APC(Automatic Power Control)駆動のためのフォトダイオードであり、ビームスプリッタ33を介してレーザダイオード31が出力したレーザ光を検出し、検出したレーザ光を光電変換により電気信号に変換してマイコン4に出力する。
【0024】
偏光ビームスプリッタ35は、ビームスプリッタ33からのレーザ光を透過させ、1/4波長板37は、偏光ビームスプリッタ35からのレーザ光の位相をπ/2ずらし、偏光方向を変化させる。対物レンズ38は、1/4波長板37からのレーザ光を光ディスク2の記録層上に集光し、光ディスク2の記録層上で反射したレーザ光を平行光に変換する。光ディスク2にて反射したレーザ光は、光ディスク2の記録層に書き込まれた情報を光の強度変化として保持している。
【0025】
1/4波長板37は、対物レンズ38からのレーザ光の偏光方向を変化させ、偏光ビームスプリッタ35は、1/4波長板37からのレーザ光を反射させ、ディテクタ36に集光する。
【0026】
ディテクタ36は、複数に分割されたフォトダイオードで構成され、偏光ビームスプリッタ35からのレーザ光を検出し、検出したレーザ光を光電変換により電気信号に変換し、アナログ信号処理器5に出力する。
【0027】
マイコン4は、後述するサーボ信号の波形変動、再生信号の再生性能、及び光ディスク2の再生耐力を測定し、それらがそれぞれの仕様値を満たすHF変調度及び再生パワーにおける範囲を特定し、特定した範囲内で使用するHF変調度及び再生パワーを決定し、決定した再生パワー及びHF変調度となるように直流電流及び/又は前記高周波重畳電流の電流値を調整し、光ディスク2の再生を開始する。その後、マイコン4は、パワーモニタ34から供給された電気信号に基づいて、決定した再生パワーを維持するようにAPC駆動を行いながら、レーザダイオード31にレーザ光を照射させる。また、マイコン4は、デジタル信号処理器6より供給されたサーボ信号に基づいて、対物レンズ38を駆動するアクチュエータ(図不掲載)をフィードバック制御する。また、マイコン4は、図示しないATAPI(AT Attachment Packet Interface)規格等のインタフェースを備え、当該インタフェースを介してパーソナルコンピュータ等のホスト装置と通信を行う。
【0028】
アナログ信号処理器5は、ディテクタ36から供給された電気信号に基づいて再生信号を生成し、生成した再生信号に対して等化、増幅などの処理を行い、デジタル信号処理器6に出力する。デジタル信号処理器6は、アナログ信号処理器5によって供給された再生信号に対し、アナログ/デジタル変換、等化、デコードなどの信号処理を行い、また、再生信号のジッターやデコードしたデータのエラーレートを測定する。デコードしたデータ、再生信号のジッター、及びデータのエラーレートは、マイコン4に出力される。
【0029】
また、アナログ信号処理器5は、ディテクタ36から供給された電気信号に基づいて、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号(以下、TE信号)、及びウォブル信号等のサーボ信号を生成し、デジタル信号処理器6に出力する。デジタル信号処理器6は、アナログ信号処理器5により供給されたサーボ信号のジッター等を測定する。また、サーボ信号、及びサーボ信号のジッターは、マイコン4に出力される。
【0030】
(2)従来の光ディスク装置の問題点
先ず、図3を参照して、ディテクタ36に光ディスク2の反射光が集光している際の状態を説明する。ディテクタ36は、二つ以上のフォトダイオード301から構成されている。光ディスク2の再生する対象となる記録層からの反射光が、スポット302としてフォトダイオード301に投射されると、ディテクタ36は、光ディスク2の記録層上の構造や記録状態に応じた電気信号を出力する。しかし、多層ディスクを記録再生する場合には、再生する対象となる記録層以外の記録層からの反射光も、スポット303としてフォトダイオード301に投射されてしまう。
【0031】
その結果、単層ディスクでは、図4(A)に示すように、TE信号における極大値及び極小値が、全時間においてほぼ一定であるが、多層ディスクでは、図4(B)に示すように、TE信号における極大値及び極小値が、変動する。これは、ディテクタ36上で対象層からの反射光と他層からの反射光とが干渉するためである。このような波形変動が発生すると、トラッキングを正常に行うことができなくなり、記録再生性能を悪化させる要因となる。
【0032】
(3)本実施の形態の光ディスク装置の動作の概要
次に、図5乃至8を参照して、光ディスク装置1の動作を簡単に説明する。
【0033】
光ディスク装置1は、光ディスク2が装填されると、所定の刻み幅のHF変調度毎に、所定の刻み幅の再生パワー毎に、TE信号の波形変動を測定して、図5に示すような、再生パワー及びHF変調度に対するTE信号の波形変動を示す二次元マップを生成する。TE信号の波形変動は、例えば、TE信号の各極大値の標準偏差、TE信号の各極小値の標準偏差、又は、TE信号の各振幅中心の標準偏差で表わされる。ここで、ライン501は、TE信号の波形変動が仕様値(例えば、標準偏差「A」)を取る線であり、ライン502は、波形変動が仕様値を満たさない値(例えば、標準偏差「A+α」)を取る線であり、ライン503〜506は、波形変動が仕様値を満たす値(例えば、標準偏差「A−α」、「A−2α」、「A−3α」「A−4α」)を取る線である。つまり、HF変調度を増加させると、対象層からの反射光と他層からの反射光との干渉を抑制し、波形変動を抑制することが出来る。また、波形変動は再生パワーにも依存する。ここでは、ライン501よりライン503〜506側のHF変調度及び再生パワーでレーザ光を出力すれば、TE信号の波形変動は仕様値を満たすことができる。
【0034】
次に、光ディスク装置1は、所定の刻み幅のHF変調度毎に、所定の刻み幅の再生パワー毎に、再生信号の再生性能を測定して、図6に示すような、再生パワー及びHF変調度に対する再生信号の再生性能を示す二次元マップを生成する。再生信号の再生性能は、例えば、再生信号のジッター又はエラーレートで表わされる。ここで、ライン601は、再生信号の再生性能が仕様値(例えば、ジッターB[%])を取る線であり、ライン602,603は、再生性能が仕様値を満たさない値(例えば、ジッターB+β[%]、B+2β[%])を取る線であり、ライン604,605は、再生性能が仕様値を満たす値(例えば、ジッターB−β[%]、B−2β[%])を取る線である。つまり、HF変調度を増加させると、戻り光の寄与を抑制することでレーザノイズを低減し、再生性能を向上できる。また、再生パワーを増加させると、信号振幅を増加させ、再生性能を向上できる。ここでは、ライン601よりライン604,605側のHF変調度及び再生パワーでレーザ光を出力すれば、再生信号の再生性能は仕様値を満たすことができる。
【0035】
その後、光ディスク装置1は、所定の刻み幅のHF変調度毎に、所定の刻み幅の再生パワー毎に、光ディスク2の再生耐力を測定して、図7に示すような、再生パワー及びHF変調度に対する光ディスク2の再生耐力を示す二次元マップを生成する。再生耐力は、例えば、光ディスク2の所定の記録領域で、所定回数、再生した後の再生信号の再生性能の劣化量である。ここで、ライン701は、再生耐力が仕様値(例えば、ジッターの劣化量C[%])を取る線であり、ライン702は、再生耐力が仕様値を満たさない値(例えば、ジッターの劣化量C+γ[%])を取る線であり、ライン703〜705は、再生耐力が仕様値を満たす値(例えば、ジッターの劣化量C−γ[%]、C−2γ[%]、C−3γ[%])を取る線である。つまり、再生耐力は、再生パワー及びHF変調度の増加に伴って減少する。これは、光ディスク2の記録層に与える熱量が増加するためである。ここでは、ライン701よりライン703〜705側のHF変調度及び再生パワーでレーザ光を出力すれば、光ディスク2の再生耐力は仕様値を満たすことができる。
【0036】
そして、光ディスク装置1は、TE信号の波形変動、再生信号の再生性能、及び、光ディスク2の再生耐力が各仕様値を満たす範囲、つまり、図8に示すような、ライン501,601,701で囲まれる範囲を特定し、特定した範囲内で再生パワー及びHF変調度を決定し、決定したHF変調度及び再生パワーで再生を行う。複数のHF変調度の値、又は、複数の再生パワーの値を取ることができる場合には、例えば、消費電力が最も小さくなるようにHF変調度及び再生パワーを決定する。一方、仕様値を満たす範囲がなかった場合には再生を中止する。
【0037】
このようにして、光ディスク装置1は、TE信号の波形変動、再生信号の再生性能、及び、光ディスク2の再生耐力が各仕様値を満たす最適なHF変調度及び再生パワーで再生を行うことができる。
【0038】
(4)光ディスク装置における具体的な処理
(4−1)再生パワー及びHF変調度決定処理
ここで、図9を参照して、光ディスク装置1が再生パワー及びHF変調度を決定する再生パワー及びHF変調度決定処理を説明する。
【0039】
先ず、マイコン4は、光ディスク2が光ディスク装置1に装填されたことを検知した場合に(SP1)、初期再生パワー及び初期HF変調度でレーザダイオード31を発光させる(SP2)。
【0040】
ここで、初期再生パワーは、フォーカス及びトラッキングのサーボ制御が可能であり、且つ、再生性能を測定できる範囲で小さな値、例えば、多層ディスクでは1.0mWとしても良いし、光ディスクに記録されている推奨の再生パワーとしても良い。初期HF変調度も同様に小さな値、例えば変調度1とすれば良い。これは高周波電流を重畳せず、直流電流のみで発光することを意味する。このような条件で再生することによって、光ディスクに記録されている情報を破壊する可能性を抑制できる。
【0041】
次に、マイコン4は、フォーカスサーボの制御を開始し(SP3)、図5に示すような、再生パワー及びHF変調度に対する波形変動の二次元マップを得る波形変動測定処理を行う(SP4)。なお、波形変動測定処理について詳細に後述する。
【0042】
そして、マイコン4は、再び、再生条件を初期再生パワーと初期HF変調度に設定し(SP5)、図示しないアクチュエータを駆動させて対物レンズ38を移動させ、レーザ光の光ディスク2の記録層上におけるスポット位置を記録領域へ移動させ、トラッキングサーボの制御を開始する(SP6)。
【0043】
マイコン4は、図6に示すような、再生パワー及びHF変調度に対する再生性能の二次元マップを得る再生性能測定処理を行う(SP7)。なお、再生性能測定処理について詳細に後述する。
【0044】
マイコン4は、図7に示すような、再生パワー及びHF変調度に対する再生耐力の二次元マップを得る再生耐力測定処理を行う(SP8)。なお、再生耐力測定処理について詳細に後述する。
【0045】
マイコン4は、ステップSP4、SP7、SP8において得られた二次元マップを用いて、波形変動、再生性能、再生耐力の仕様を満たす再生パワー及びHF変調度を決定し(SP9)、決定した再生パワー及びHF変調度となるように直流電流及び/又は前記高周波重畳電流の電流値を調整し、光ディスク2の再生を開始し(SP10)、処理を終了する。
【0046】
(4−2)波形変動測定処理
ここで、図10を参照して、再生パワー及びHF変調度に対する波形変動の二次元マップを得る波形変動測定処理(SP4)を説明する。
【0047】
マイコン4は、所定の範囲から予め決められた刻み幅で順に再生パワーを選択し(SP11)、所定の範囲から予め決められた刻み幅で順にHF変調度を選択し(SP12)、選択した再生パワー及びHF変調度でトラッキングエラー信号の波形変動を測定し(SP13)、所定の範囲内の各HF変調度で波形変動を測定したか否かを判別する(SP14)。ステップSP14において、否定結果を得ると、ステップSP12に戻る。
【0048】
ステップSP14において、肯定結果を得ると、マイコン4は、所定の範囲内の各再生パワーで波形変動を測定したか否かを判別する(SP15)。ステップSP15において、否定結果を得ると、ステップSP11に戻る。ステップSP15において、肯定結果を得ると、処理を終了する。
【0049】
このようにして、再生パワー又はHF変調度を所定の刻み幅だけ変化させた毎に、トラッキングエラー信号の波形変動を測定し、再生パワー及びHF変調度に対する波形変動の二次元マップが得られる。
【0050】
(4−3)再生性能測定処理
ここで、図11を参照して、再生パワー及びHF変調度に対する再生性能の二次元マップを得る波形変動測定処理(SP7)を説明する。
【0051】
マイコン4は、所定の範囲から予め決められた刻み幅で順に再生パワーを選択し(SP21)、所定の範囲から予め決められた刻み幅で順にHF変調度を選択し(SP22)、選択した再生パワー及びHF変調度で再生信号の再生性能を測定し(SP23)、所定の範囲内の各HF変調度で再生性能を測定したか否かを判別する(SP24)。ステップSP24において、否定結果を得ると、ステップSP22に戻る。
【0052】
ステップSP24において、肯定結果を得ると、マイコン4は、所定の範囲内の各再生パワーで波形変動を測定したか否かを判別する(SP25)。ステップSP25において、否定結果を得ると、ステップSP21に戻る。ステップSP25において、肯定結果を得ると、処理を終了する。
【0053】
このようにして、再生パワー又はHF変調度を所定の刻み幅だけ変化させた毎に、再生信号の再生性能を測定し、再生パワー及びHF変調度に対する再生性能の二次元マップが得られる。
【0054】
(4−4)再生耐力測定処理
ここで、図12を参照して、再生パワー及びHF変調度に対する再生耐力の二次元マップを得る再生耐力測定処理(SP8)を説明する。
【0055】
マイコン4は、所定の範囲から予め決められた刻み幅で順に再生パワーを選択し(SP31)、所定の範囲から予め決められた刻み幅で順にHF変調度を選択し(SP32)、例えば、多層ディスクでは再生パワーを初期再生パワーから1mW増加するまで0.2mWずつ増加させ、HF変調度を初期HF変調度から変調度4まで0.5ずつ増加させる。この刻み幅は、光ディスクの種別毎に予め決定されている。
【0056】
マイコン4は、対物レンズ38を移動させてレーザ光の焦点位置を、再生耐力測定処理で用いていない記録領域に移動させる(SP33)。次に、マイコン4は、初期再生パワー及び初期HF変調度で再生性能を測定する(SP34)。その後、マイコン4は、選択した再生パワー及びHF変調度で光ディスク2上の同一領域を所定回数繰り返し再生する(SP35)。所定回数とは、例えば500回などであるが、セットアップに確保されている時間から決定してもよい。
【0057】
マイコン4は、再び、初期再生パワー及び初期HF変調度で再生性能を測定し(SP36)、SP34及びSP36において測定した再生性能の劣化量(再生耐力)を算出する(SP37)。マイコン4は、所定の範囲内の各HF変調度で再生性能を測定したか否かを判別する(SP38)。ステップSP38において、否定結果を得ると、ステップSP32に戻る。
【0058】
ステップSP38において、肯定結果を得ると、マイコン4は、所定の範囲内の各再生パワーで波形変動を測定したか否かを判別する(SP39)。ステップSP39において、否定結果を得ると、ステップSP31に戻る。ステップSP39において、肯定結果を得ると、処理を終了する。
【0059】
このようにして、再生パワー又はHF変調度を所定の刻み幅だけ変化させた毎に、光ディスク2の再生耐力を測定し、再生パワー及びHF変調度に対する光ディスク2の再生耐力の二次元マップが得られる。
【0060】
以上、本実施の形態による光ディスク装置1は、再生パワー及びHF変調度を光ディスク2に応じて動的に変化させることで、波形変動を抑制し、再生耐力を確保しながら良好な再生性能を得ることが出来る。
【0061】
(5)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、波形変動を測定するためにTE信号を用いたが、再生信号を用いても良い。この場合、再生信号の再生性能を測定すると同時に波形変動を測定してもよい。
【0062】
また上述の実施の形態においては、再生性能の指標として再生信号を用いたが、ウォブル信号を用いてもよい。
【0063】
また上述の実施の形態においては、所定の刻み幅のHF変調度毎に、所定の刻み幅の再生パワー毎に、波形変動等を測定したが、HF変調度及び再生パワーのいずれか一方を固定値として、もう片方のみを所定の刻み幅毎に変化させて、波形変動等を測定しても良い。
【0064】
また上述の実施の形態においては、HF変調度毎に、波形変動等を測定したが、高周波重畳電流の振幅毎に、波形変動等を測定しても良いし、HF周波数毎に、波形変動等を測定しても良い。
【0065】
また上述の実施の形態においては、波形変動、再生性能、再生耐力を測定したが、このうち一つまたは二つのみを測定するようにしても良い。この場合、測定しない指標については光ディスク装置設計時に予め測定しておいても良い。
【0066】
また上述の実施の形態においては、光ディスク装填時に、HF変調度及び再生パワーを決定したが、光ディスクの半径などに応じて複数の再生速度で再生を行う場合は、再生速度を変更する毎に、HF変調度及び再生パワーを決定しても良い。再生速度によって再生性能や再生耐力が変化する場合、最適な再生パワーとHF変調度が異なるからである。
【0067】
また、多層ディスクを再生する場合は、再生する記録層を変更する毎に、HF変調度及び再生パワーを決定しても良い。記録層によって波形変動、再生性能、再生耐力が異なる場合、最適な再生パワーとHF変調度が異なるからである。
【0068】
また、再生耐力を測定する場合、記録されているデータを劣化させる可能性があるため、OPC領域などデータを劣化させても問題ない領域で測定を行っても良い。
【0069】
また、チルトやフォーカス調整等の再生パワー及びHF条件に対してあまり依存性がない動作については、再生パワー及びHF変調度の決定処理の前に行っても良い。その場合、初期再生パワー及び初期HF変調度を用いて調整すればよい。ゲイン調整など再生パワーに依存する動作については、再生パワーとHF条件の調整の前後に行うのが良い。
【0070】
また上述の実施の形態においては、情報が記録されている光ディスク2を適用したが、情報が記録されていない光ディスク2を適用する場合には、再生パワー及びHF変調度の調整前に光ディスク2に情報の記録を行う必要がある。
【0071】
また上述の実施の形態においては、再生耐力を測定する際に、所定の刻み幅で順に再生パワー毎に再生性能の劣化量を測定したが、再生パワーの低い領域では劣化量が小さく測定が困難な場合があるため、図13に示すように、フィッティングによって劣化量を予測しても良い。図13の例においては、測定点707に基づいてフィッティングを行い、近似線708を算出し、低い再生パワーにおける劣化量を予測することが出来る。
【0072】
また上述の実施の形態においては、光ピックアップ3にレーザダイオード31とパワーモニタ34を分離して搭載したが、パワーモニタをパッケージングし、検出したパワーをマイコン101に出力するレーザダイオードを光ピックアップに搭載してもよい。この場合、省スペース化を図ることができ、且つ、制御が容易になる。また、マイコン101やレーザドライバ102、アナログ信号処理器111、デジタル信号処理器112のうち二つ以上のブロックを一つにまとめても良い。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、BD規格、DVD規格、CD規格又はそれ以外の規格に準拠した光ディスク装置に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源から出射されたレーザ光を光ディスクに反射させ、反射させた反射光をフォトダイオードで電気信号として検出し、検出した電気信号からサーボ信号又は再生信号を生成する光ディスク装置であって、
直流電流に高周波電流を重畳して駆動電流として前記レーザ光源に供給し、当該レーザ光源を駆動させるレーザドライバと、
前記サーボ信号又は再生信号に基づいて、前記レーザドライバが前記レーザ光源に供給する前記直流電流及び/又は前記高周波重畳電流の電流値を調整する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記サーボ信号又は再生信号の波形変動を表す値が波形変動の仕様値を満たし、前記再生信号の再生性能を表す値が再生性能の仕様値を満たし、且つ、前記光ディスクの前記レーザ光に対する耐久性能を表す値が耐久性能の仕様値を満たすように、前記直流電流及び/又は前記高周波重畳電流の電流値を調整する
ことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記サーボ信号又は再生信号の波形の極大値と極小値とを検出し、
前記サーボ信号又は再生信号の波形変動を表す値として、前記極大値と極小値との変動量又は振幅中心の変動量を測定し、
測定した値がその仕様値を満たすように、前記直流電流及び/又は前記高周波重畳電流の電流値を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記再生信号の再生性能を表す値として、前記再生信号のジッター、エラーレート、及び振幅の少なくとも一つを測定し、
測定した値がその仕様値を満たすように、前記直流電流及び/又は前記高周波重畳電流の電流値を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置
【請求項4】
前記制御部は、
前記光ディスクの前記レーザ光に対する耐久性能を表す値として、前記光ディスクを所定の回数再生した後の前記再生信号のジッター、エラーレート、及び振幅の少なくとも一つの変化量を測定し、
測定した値がその仕様値を満たすように、前記直流電流及び/又は前記高周波重畳電流の電流値を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記駆動電流の平均パワーと、平均パワーと前記駆動電流のピークパワーとの比である駆動電流変調度とをそれぞれ変化させて、変化させる毎に前記サーボ信号又は再生信号の波形変動を表す値、前記再生信号の再生性能を表す値、又は前記光ディスクの前記レーザ光に対する耐久性能を表す値を測定し、
前記波形変動を表す値がその仕様値を満たし、前記再生性能を表す値がその仕様値を満たし、且つ、前記光ディスクの前記レーザ光に対する耐久性能を表す値がその仕様値を満たす前記平均パワー及び前記駆動電流変調度の範囲を特定し、
特定した前記範囲内の前記平均パワー及び前記駆動電流変調度となるように、前記直流電流及び/又は前記高周波重畳電流の電流値を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記駆動電流の消費電力が最も小さくなるように、前記直流電流及び/又は前記高周波重畳電流の電流値を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記サーボ信号又は再生信号の波形変動を表す値が波形変動の仕様値を満たし、前記再生信号の再生性能を表す値が再生性能の仕様値を満たし、且つ、前記光ディスクの前記レーザ光に対する耐久性能を表す値が耐久性能の仕様値を満たすような条件が無い場合には、再生を中止する
ことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記光ディスクを再生する速度を変更する毎に前記直流電流値及び/又は前記高周波重畳電流値を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項9】
前記制御部は、再生する前記光ディスク上の記録層を変更する毎に前記直流電流値及び/又は前記高周波重畳電流値を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−100514(P2011−100514A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254682(P2009−254682)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】