説明

光ディスク装置

【課題】適切にフォーカス制御を行うことのできる光ディスク装置を提案する。
【解決手段】光ディスク装置において、アクチュエータを制御することにより対物レンズを光ディスクの厚み方向に移動させると共に、対物レンズを移動させている間に記録層を検出した時間間隔を計測し、一番目に記録層を検出してから二番目に記録層を検出するまでの第1の時間間隔と、二番目に記録層を検出してから三番目に記録層を検出するまでの第2の時間間隔とを比較し、比較結果に基づいて、対物レンズの焦点位置を判定するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置に関し、例えば、多層光ディスクを再生可能な光ディスク装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、DVD(digital versatile disc)やBD(Blu-ray Disc)などの光ディスクにおいては、記録容量を増加させるための手段として記録層を多層化することが提案されており、既に二層の記録層を有する光ディスクが実用化されている。そして、今後、更なる大容量化を目的として三層や四層以上の記録層を有する多層光ディスクの実用化が予想される。
【0003】
このような多層光ディスクにおける記録層の検出方法として、記録層の前後においてフォーカスエラー信号の振幅がS字状に変動することを利用して、光ディスク装置のレーザダイオードから発射される光ビームの焦点位置を多層光ディスクの厚み方向に移動させ、このときフォーカスエラー信号に発生するS字状の振幅(以下、これをS字振幅と呼ぶ)の数に基づいて、記録層の数や目的とする記録層等を検出する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−26557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、かかる技術を適用した光ディスク装置においては、多層光ディスクに対するフォーカス制御を行う際に、ディスク表面で発生するフォーカスエラー信号のS字振幅を記録層で発生したS字振幅として誤検出し、かかるディスク表面を記録層として誤って計数することで、目的とする記録層の一つ手前の記録層で合焦するようにフォーカス制御を行うおそれがあった。
【0006】
本発明は、以上の点を考慮してなされたもので、フォーカス制御を精度良く行い得る光ディスク装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため本発明においては、三層以上の記録層を有する光ディスクを再生できる光ディスク装置であって、レーザ光を発射するレーザダイオードと、前記レーザ光の前記光ディスクにおける反射光を受光し、受光した前記反射光を光電変換して出力するフォトダイオードと、対物レンズを含み、前記レーザダイオードから発射されたレーザ光を、前記対物レンズを介して前記光ディスクの記録層上に集光させ、前記光ディスクにおける反射光を、前記対物レンズを介して前記フォトダイオードに導く光学系と、前記フォトダイオードの出力に基づいてフォーカス誤差信号を生成する信号処理部と、前記信号処理部により生成されたフォーカス誤差信号に基づいて前記記録層を検出するプロセッサと、前記光学系に含まれる前記対物レンズを前記光ディスクの厚み方向に移動させるアクチュエータと、を備え、前記プロセッサは、前記アクチュエータを制御することにより前記対物レンズを前記光ディスクの厚み方向に移動させると共に、前記対物レンズを移動させている間に各前記記録層をそれぞれ検出した時間間隔を計測し、一番目に前記記録層を検出してから二番目に前記記録層を検出するまでの第1の時間間隔と、二番目に前記記録層を検出してから三番目に前記記録層を検出するまでの第2の時間間隔とを比較し、比較結果に基づいて、前記対物レンズの焦点位置を判定することを特徴とする。
【0008】
また本発明においては、三層以上の記録層を有する光ディスクを再生できる光ディスク装置であって、レーザ光を発射するレーザダイオードと、前記レーザ光の前記光ディスクにおける反射光を受光し、受光した前記反射光を光電変換して出力するフォトダイオードと、対物レンズを含み、前記レーザダイオードから発射されたレーザ光を、前記対物レンズを介して前記光ディスクの記録層上に集光させ、前記光ディスクにおける反射光を、前記対物レンズを介して前記フォトダイオードに導く光学系と、前記フォトダイオードの出力に基づいてフォーカス誤差信号を生成する信号処理部と、前記信号処理部により生成されたフォーカス誤差信号に基づいて前記記録層を検出するプロセッサと、前記光学系に含まれる前記対物レンズを前記光ディスクの厚み方向に移動させるアクチュエータと、を備え、前記プロセッサは、前記アクチュエータを制御することにより前記対物レンズを前記光ディスクの厚み方向に移動させると共に、前記対物レンズを移動させている間に各前記記録層をそれぞれ検出したときの前記アクチュエータの駆動電圧をそれぞれ計測し、一番目に前記記録層を検出したときの前記駆動電圧、及び、二番目に前記記録層を検出したときの前記駆動電圧間の第1の電位差と、二番目に前記記録層を検出したときの前記駆動電圧、及び、三番目に前記記録層を検出したときの前記駆動電圧間の第2の電位差とを比較し、比較結果に基づいて、前記対物レンズの焦点位置を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、適切なフォーカス制御を行い得る光ディスク装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施の形態による光ディスク装置を示すブロック図である。
【図2】光ピックアップの概略構成を示すブロック図である。
【図3】(A)及び(B)は、本願発明の原理説明に供する模式図である。
【図4】光ディスクの表面を記録層として誤検出した場合の光ディスク装置の動作説明に供する波形図である。
【図5】光ディスクの記録層を正確に検出した場合の光ディスク装置の動作説明に供する波形図である。
【図6】第1の実施の形態によるフォーカス制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】第2の実施の形態によるフォーカス制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】第2の実施の形態によるフォーカス制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】第2の実施の形態によるフォーカス制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】第3の実施の形態によるフォーカス制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】第4の実施の形態によるフォーカス制御処理の説明に供する概念図である。
【符号の説明】
【0011】
1……光ディスク装置、2……光ディスク、3……光ピックアップ、4……スレッドモータ、5……ディスクモータ、6……信号処理部、7……モータドライバ、8……DSP、9……マイコン、10……ホストコンピュータ、31……対物レンズ、32……アクチュエータ、33……レーザダイオード、34……偏光ビームスプリッタ、35……1/4波長板、36……フォトダイオード、81……エンコード・デコード部、82……サーボ部、83……インタフェース、91……メモリ、21……表面、22……第1の記録層、23……第2の記録層、24……第3の記録層、25……第4の記録層。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0013】
(1)第1の実施の形態
(1−1)本実施の形態の光ディスク装置の構成
図1において、1は全体として本実施の形態による光ディスク装置を示す。この光ディスク装置1は、光ピックアップ3とスレッドモータ4とディスクモータ5と信号処理部6とモータドライバ7とDSP(Digital Signal Processor)8と制御部9とを備えて構成される。
【0014】
光ピックアップ3は、図2に示すように、対物レンズ31、アクチュエータ32、レーザダイオード33、偏光ビームスプリッタ34、1/4波長板35及びフォトダイオード36を備えて構成される。
【0015】
アクチュエータ32は、後述するモータドライバ7から供給される駆動電圧に基づいて対物レンズ31を、多層光ディスク2の径方向に傾かせたり、当該多層光ディスク2の厚み方向に移動させる。またレーザダイオード33は、信号処理部6から与えられる駆動電圧に応じた発光パワーでレーザ光を発光する。
【0016】
偏光ビームスプリッタ34は、レーザダイオード33からのレーザ光を透過させ、1/4波長板35は、偏光ビームスプリッタ34からのレーザ光の位相をπ/2ずらし、偏光方向を変化させる。対物レンズ31は、1/4波長板35からのレーザ光を多層光ディスク2の記録層上に集光し、多層光ディスク2の記録層上で反射したレーザ光を平行光に変換する。かかるレーザ光の多層光ディスク2における反射光は、多層光ディスク2の記録層に書き込まれた情報を光の強度変化として保持している。
【0017】
1/4波長板35は、対物レンズ31を介して入射するかかる反射光の偏光方向を変化させ、偏光ビームスプリッタ34は、1/4波長板35を介して入射する反射光を反射させてフォトダイオード36の受光面に導く。
【0018】
フォトダイオード36は、例えば4分割フォトダイオードから構成され、偏光ビームスプリッタ34を介して入射する反射光を光電変換し、かくして得られた電気信号を信号処理部6に出力する。
【0019】
スレッドモータ4は、モータドライバ7から供給される駆動電圧に応じて光ピックアップ3を多層光ディスク2上の半径方向に移動させる。
【0020】
ディスクモータ5は、モータドライバ7から供給される駆動電圧に応じて、光ディスク装置1に装填された多層光ディスク2を回転駆動する。
【0021】
モータドライバ7は、スレッドモータ4、ディスクモータ5、及びアクチュエータ32に対し、これらを駆動するための駆動電圧を供給する。
【0022】
信号処理部6は、光ピックアップ3に供給する記録信号を生成するとともに、光ピックアップ3から供給される電気信号に基づいて、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号及びRF信号を生成し、生成したフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号及びRF信号をDSP8に送信すると共にフォーカスエラー信号を制御部9に送信する。また信号処理部6は、後述のようにDSP8から与えられる符号化記録データに基づいてレーザダイオード33の駆動信号を生成し、当該駆動信号に基づいて光ピックアップ3のレーザダイオード33を駆動する。
【0023】
DSP8は、エンコード・デコード部81とサーボ部82とインタフェース83とを備える。このうちエンコード・デコード部81は、信号処理部6から供給されるRF信号の復号化を行う。またDSP8は、ホストコンピュータ10から与えられる記録データの符号化を行い、かくして得られた符号化記録データを信号処理部6に供給する。
【0024】
またサーボ部82は、信号処理部6から供給されるフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号に基づいて、フォーカシング用及びトラッキング用のサーボ信号を生成し、生成したサーボ信号をモータドライバ7に供給する。かくして、このサーボ信号に基づいてモータドライバ7により光ピックアップ3のアクチュエータ32やスレッドモータ4が駆動されることにより、フォーカス制御及びトラッキング制御が行われることになる。さらにインタフェース83は、外部に接続されたホストコンピュータ10との間で、記録/再生データやコマンド等を転送するためのプロトコル変換を行う。
【0025】
制御部9は、光ディスク装置1全体の動作制御を司るプロセッサであり、メモリ91に格納された各種制御プログラムや各種制御データに基づいて信号処理部6、モータドライバ7及びDSP8等を制御することにより、ホストコンピュータ10からの要求に応じて、装填された多層光ディスク2に対するデータの読み書きを行わせる。
【0026】
(1−2)第1の実施の形態の光ディスク装置の動作の概要
次に、図3乃至図5を参照して、光ディスク装置1の動作の概要を説明する。
【0027】
なお、以下においては、多層光ディスク2は、図3(A)に示すような、表面21と、第1の記録層22(レイヤー2)と、第2の記録層23(レイヤー1)と、第3の記録層24(レイヤー0)とを備える3層のBD、又は、図3(B)に示すような、表面21と、第1の記録層22(レイヤー3)と、第2の記録層23(レイヤー2)と、第3の記録層24(レイヤー1)と、第4の記録層25(レイヤー0)を備える4層のBDであるものとする。
【0028】
光ディスク装置1は、多層光ディスク2のいずれかの記録層にデータを読み書きする際、対物レンズ31を駆動下限位置から駆動上限位置に向かって一定速度で移動させながら、多層光ディスク2にレーザ光を発射し、そのとき得られたフォーカスエラー信号に基づいて、当該フォーカスエラー信号の正側の振幅が第1の閾値以上であり、かつ、負の振幅が第2の閾値以下であるS字振幅を、記録層のS字振幅として検出する。
【0029】
そして光ディスク装置1は、一番目のS字振幅を検出してから二番目のS字振幅を検出するまでの時間間隔T0を測定し、二番目のS字振幅を検出してから三番目のS字振幅を検出するまでの時間間隔T1を測定し、測定した二つの時間間隔T0,T1を比較する。
【0030】
この場合において、光ディスク装置1は、図4に示すように、かかる2つの時間間隔T0,T1を比較した結果、時間間隔T0≫時間間隔T1(例えば、時間間隔T0>時間間隔T1×2)である場合には、表面21を記録層として誤検出した判断する。
【0031】
これは、BD規格の多層光ディスクにおいては、表面21から第1の記録層22までの距離は、第1の記録層22から第2の記録層23までの距離(第2の記録層23から第3の記録層24までの距離)の2倍以上であり、レーザ光の焦点が表面21を通過してから第1の記録層22を通過するまでの時間間隔は、レーザ光の焦点が第1の記録層22を通過してから第2の記録層23を通過するまでの時間間隔の2倍以上となるからである。そして表面21を記録層として誤検出している場合、表面21を記録層として計数しているので、第3の記録層24の一層手前の第2の記録層23に対物レンズ13の焦点位置が位置しているはずである。
【0032】
そこで、光ディスク装置1は、時間間隔T0及び時間間隔T1を比較した結果、時間間隔T0≫時間間隔T1である場合には、多層光ディスク2における三番目にフォーカスエラー信号のS字振幅を検出した記録層(ここでは第2の記録層23)に対物レンズ31の焦点位置を合わせた後に(フォーカス引き込みを行った後に)、その記録層から目標とする記録層(以下、これを目標層と呼ぶ)まで対物レンズ31の焦点位置を移動(フォーカスジャンプ)させる。
【0033】
一方、光ディスク装置1は、図5に示すように、時間間隔T0,T1を比較した結果、時間間隔T0≒時間間隔T1(例えば、時間間隔T0<時間間隔T1×2)である場合には、正確に記録層を検出したと判断する。
【0034】
これは、BD規格の多層光ディスクにおいては、第1の記録層22から第2の記録層23までの距離は、第2の記録層23から第3の記録層24までの距離とほぼ等しく、レーザ光の焦点が第1の記録層22を通過してから第2の記録層23を通過するまでの時間は、レーザ光の焦点が第2の記録層23を通過してから第3の記録層24を通過するまでの時間とほぼ等しくなるからである。
【0035】
そこで、光ディスク装置1は、時間間隔T0及び時間間隔T1を比較した結果、時間間隔T0≒時間間隔T1である場合には、多層光ディスク2における三番目にフォーカスエラー信号のS字振幅を検出した記録層(ここでは第3の記録層24)にフォーカス引き込みを行った後に、その記録層から目標層までフォーカスジャンプする。
【0036】
このようにして、光ディスク装置1は、一番目にS字振幅を検出してから二番目にS字振幅を検出するまでの時間間隔T0と、二番目にS字振幅を検出してから三番目にS字振幅を検出するまでの時間間隔T1とを測定し、測定した二つの時間の比較結果によって、表面21を記録層として誤検出したか否かを判定するため、記録層が3層以上ある多層光ディスク2に対して、対物レンズ31の焦点位置を正確に目標層上に移動させることができる。
【0037】
(1−3)光ディスク装置における具体的な処理
ここで、図6を参照して、光ディスク装置1が3層又は4層の多層光ディスク2上の目標層に対物レンズ31の焦点位置を移動させる際に制御部9により実行されるフォーカス制御処理について説明する。
【0038】
まず制御部9は、ある特定の記録層(目標層)上に対物レンズ31の焦点位置を移動させるようホストコンピュータ10から指令が与えられると、図6に示すフォーカス制御処理を開始し、S字振幅を計数するための図示しないカウンタ(以下、これをS字振幅計数カウンタと呼ぶ)のカウント値を「0」に初期化する(SP1)。
【0039】
続いて制御部9は、モータドライバ7を介して光ピックアップ3のアクチュエータ32を制御することにより、対物レンズ31を駆動下限から駆動上限に向けて一定速度で移動させる。これによりレーザダイオード33から発射された対物レンズ31の焦点位置が多層光ディスク2の表面側からレーベル面側に向けて移動するフォーカススイープが開始される(SP2)。また制御部9は、このとき信号処理部6から与えられるフォーカスエラー信号に基づいて、S字振幅の発生タイミング間の時間間隔の計測を開始する(SP3)。
【0040】
この後、制御部9は、フォーカスエラー信号にS字振幅が発生するのを待ち受け(SP4)、やがてかかるS字振幅を検出すると、S字振幅計数カウンタのカウント値を「1」だけ増加させる(SP5)。また制御部9は、前回フォーカスエラー信号のS字振幅を検出してから今回フォーカスエラー信号のS字振幅を検出するまでの時間間隔をメモリ91に格納する(SP6)。ただし、一番目にフォーカスエラー信号のS字振幅を検出した段階では、かかる時間間隔が得られないため、この場合には当該時間間隔をメモリ91に格納する処理は行わない。
【0041】
続いて制御部9は、S字振幅計数カウンタのカウント値が「3」になったか否かを判断する(SP7)。そして制御部9は、この判断において否定結果を得ると、ステップSP4に戻り、この後、ステップSP7において肯定結果を得るまで、ステップSP4〜ステップSP7−ステップSP4のループを繰り返す。
【0042】
そして制御部9は、やがてステップSP2においてフォーカススイープを開始してからフォーカスエラー信号の三番目のS字振幅を検出することによりステップSP7において肯定結果を得ると、モータドライバ7を介して光ピックアップ3のアクチュエータ32を制御することによりフォーカススイープを停止させる。また制御部9は、この後、モータドライバ7を介して光ピックアップ3のアクチュエータ32を制御することにより、多層光ディスク2におけるフォーカスエラー信号の三番目に検出したS字振幅に対応する記録層にフォーカス引き込みを行う(SP8)。
【0043】
続いて制御部9は、そのとき対象としている多層光ディスク2が4層の光ディスクであるか否かを判断する(SP9)。具体的には、制御部9は、光ディスクが光ディスク装置1に装填された後に実行されるディスク判別処理においてその光ディスクが何層のものであるかの情報を事前に取得しているため、この情報に基づいてステップSP9における判断を行うことになる。
【0044】
制御部9は、かかる判断において否定結果を得ると、フォーカスエラー信号について一番目のS字振幅を検出してから二番目のS字振幅を検出するまでの時間間隔T0を、二番目のS字振幅を検出してから三番目のS字振幅を検出するまでの時間間隔T1で割った数値が所定の閾値(以下、これを判定用閾値と呼ぶ)aより大きいか否かを判断する(SP10)。
【0045】
この判定用閾値aは、一番目のS字振幅が多層光ディスク2の表面を記録層として検出したか否かを判断するためのものである。よって、この判定用閾値aとしては、図5について上述したように、BDにおいては表面21から表面21に最も近い第1の記録層22までの距離が当該第1の記録層22から次の第2の記録層23までの距離よりも大きい(2倍)ことを考慮して、1より大きい数(例えば「2」)が適用される。なお、このステップSP10では、上記時間間隔T1に判定用閾値aを乗算した乗算結果が、上記時間間隔T0よりも大きいか否かを判断するようにしても良い。
【0046】
ステップSP10の判断において肯定結果を得ることは、多層光ディスク2の表面21を記録層として誤検出したことを意味する。かくして、このとき制御部9は、現在の対物レンズ31の焦点位置が第2の記録層23(3層ディスクのレイヤー1)上にあると判定し(SP11)、この後、目標層が第2の記録層23であるか否かを判断する(SP12)。そして制御部9は、この判断において肯定結果を得ると、以上のフォーカス制御処理を終了する。
【0047】
また制御部9は、ステップSP12の判断において否定結果を得ると、モータドライバ7を介して光ピックアップ3のアクチュエータ32を制御することにより、対物レンズ31の焦点位置を目標層にまで移動させ(SP13)、この後、フォーカス制御処理を終了する。
【0048】
これに対してステップSP10の判断において否定結果を得ることは、多層光ディスク2の表面21を記録層として誤検出していないことを意味する。かくして、このとき制御部9は、現在の対物レンズ31の焦点位置が第3の記録層24(3層ディスクのレイヤー0)上にあると判断し(SP14)、目標層が第3の記録層24であるか否かを判断する(SP15)。そして制御部9は、この判断において肯定結果を得ると、フォーカス制御処理を終了する。
【0049】
また制御部9は、ステップSP15の判断において否定結果を得ると、モータドライバ7を介して光ピックアップ3のアクチュエータ32を制御することにより、対物レンズ31の焦点位置を目標層にまで移動させ(SP16)、この後、フォーカス制御処理を終了する。
【0050】
一方、制御部9は、ステップSP9の判断において肯定結果を得た場合には、時間間隔T0を時間間隔T1で割った演算結果が上述の判定用閾値aより大きいか否かを判断する(SP17)。なお、このステップSP17では、上記時間間隔T1に判定用閾値aを乗算した乗算結果が、上記時間間隔T0よりも大きいか否かを判断するようにしても良い。
【0051】
この判断において肯定結果を得ることは、多層光ディスク2の表面21を記録層として誤検出したことを意味する。かくして、このとき制御部9は、現在の対物レンズ31の焦点位置が第3の記録層24(4層ディスクのレイヤー2)上にあると判断し(SP18)、目標層が第3の記録層24であるか否かを判断する(SP19)。そして制御部9は、この判断において肯定結果を得ると、フォーカス制御処理を終了する。
【0052】
また制御部9は、ステップSP19の判断において否定結果を得ると、モータドライバ7を介して光ピックアップ3のアクチュエータ32を制御することにより、対物レンズ31の焦点位置を目標層に移動させ(SP20)、この後、フォーカス制御処理を終了する。
【0053】
これに対してステップSP17の判断において否定結果を得ることは、多層光ディスク2の表面21を記録層として誤検出していないことを意味する。かくして、このとき制御部9は、現在の対物レンズ31の焦点位置が第3の記録層24(4層ディスクのレイヤー1)上にあると判断し(SP21)、目標層が第3の記録層24であるか否かを判断する(SP22)。そして制御部9は、この判断において肯定結果を得ると、フォーカス制御処理を終了する。
【0054】
また制御部9は、ステップSP22の判断において否定結果を得ると、モータドライバ7を介して光ピックアップ3のアクチュエータ32を制御することにより、対物レンズ31の焦点位置を目標層に移動させ(SP23)、この後、フォーカス制御処理を終了する。
【0055】
(1−4)本実施の形態の効果
以上のように本実施の形態による光ディスク装置1では、フォーカススイープを行ったときに検出されるフォーカスエラー信号のS字振幅の時間間隔に基づいて多層光ディスク2の表面21を記録層として誤検出したか否かを判定し、その判定結果に基づいて、対物レンズ31の焦点位置を目標層上に合わせるようにフォーカス制御を行うため、対物レンズ31の焦点位置を精度良く目標層上に位置させることができる。
【0056】
(2)第2の実施の形態
第1の実施の形態においては、フォーカスエラー信号の三つ目のS字振幅を検出した記録層にフォーカ制御の引き込みをし、この後、必要に応じて目標層にフォーカスジャンプするようにしたが、本実施の形態によるフォーカス制御処理では、フォーカスエラー信号の三つ目のS字振幅を検出した記録層にフォーカス引き込みを行うことなく、対物レンズ31の焦点位置を判断し、そのまま目標層にフォーカスの引き込みを行う。
【0057】
以上のようなフォーカス制御処理について、図7乃至図9を参照して説明する。ただし、本実施の形態において、フォーカス制御処理の対象となる多層光ディスク2は、図3について上述した3層又は4層の多層光ディスクである。
【0058】
まず制御部9は、ある特定の記録層(目標層)上に対物レンズ31の焦点位置を移動させるようホストコンピュータ10から指令が与えられると、図7乃至図9に示すフォーカス制御処理を開始し、上述のS字振幅計数カウンタのカウント値を「0」に初期化する(SP51)。
【0059】
続いて制御部9は、モータドライバ7を介して光ピックアップ3のアクチュエータ32を制御することによりフォーカススイープを開始させると共に(SP52)、このとき信号処理部6から与えられるフォーカスエラー信号に基づいて、S字振幅の発生タイミングの時間間隔の計測を開始する(SP53)。
【0060】
この後、制御部9は、フォーカスエラー信号にS字振幅が発生するのを待ち受け(SP54)、やがてかかるS字振幅を検出すると、S字振幅計数カウンタのカウント値を「1」だけ増加させる(SP55)。また制御部9は、前回フォーカスエラー信号のS字振幅を検出してから今回フォーカスエラー信号のS字振幅を検出するまでの時間間隔をメモリ91に格納する(SP56)。ただし、一番目にフォーカスエラー信号のS字振幅を検出した段階では、かかる時間間隔が得られないため、この場合には、当該時間間隔をメモリ91に格納する処理は行わない。
【0061】
続いて制御部9は、S字振幅計数カウンタのカウント値が「3」になったか否かを判断する(SP57)。そして制御部9は、この判断において否定結果を得ると、ステップSP54に戻り、この後、ステップSP57において肯定結果を得るまで、ステップSP54〜ステップSP57−ステップSP54のループを繰り返す。
【0062】
そして制御部9は、やがてステップSP52においてフォーカススイープを開始してからフォーカスエラー信号の三番目のS字振幅を検出することによりステップSP57において肯定結果を得ると、フォーカススイープを停止させることなく、上述のディスク判別処理において取得した情報に基づいて、多層光ディスク2が4層ディスクであるか否かを判断する(SP58)。
【0063】
制御部9は、この判断において否定結果を得ると、フォーカスエラー信号について一番目のS字振幅を検出してから二番目のS字振幅を検出するまでの時間間隔T0を、二番目のS字振幅を検出してから三番目のS字振幅を検出するまでの時間間隔T1で割った数値が上述の判定用閾値aより大きいか否かを判断する(SP59)。なお、このステップSP59では、上記時間間隔T1に判定用閾値aを乗算した乗算結果が、上記時間間隔T0よりも大きいか否かを判断するようにしても良い。
【0064】
ステップSP59の判断において肯定結果を得ることは、多層光ディスク2の表面21を記録層として誤検出したことを意味する。かくして、このとき制御部9は、現在の対物レンズ31の焦点位置が第2の記録層23(3層ディスクのレイヤー1)上にあると判定し(SP60)、この後、目標層が第3の記録層24(3層ディスクのレイヤー0)であるか否かを判断する(SP61)。
【0065】
制御部9は、この判断において否定結果を得た場合には、現在の対物レンズ31の焦点が位置する記録層(ここでは3層ディスクのレイヤー1)にフォーカス引き込みを行い(SP62)、この後、目標層が第2の記録層23(3層ディスクのレイヤー1)であるか否かを判断する(SP63)。そして制御部9は、この判断において肯定結果を得ると、フォーカス制御処理を終了する。
【0066】
また制御部9は、ステップSP63の判断において否定結果を得ると、モータドライバ7を介して光ピックアップ3のアクチュエータ32を制御することにより、対物レンズ31の焦点位置を目標層にまで移動させ(SP64)、この後、フォーカス制御処理を終了する。
【0067】
これに対して制御部9は、ステップSP61の判断において肯定結果を得た場合には、この後、フォーカスエラー信号にS字振幅が発生するのを待ち受ける(SP65)。そして制御部9は、やがてかかるフォーカスエラー信号にS字振幅が発生すると、S字振幅計数カウンタのカウント値を1だけ増加させ(SP66)、この後、そのとき検出したS字振幅に対応する記録層にフォーカス引き込みを行い(SP67)、この後、フォーカス制御処理を終了する。
【0068】
また制御部9は、ステップSP59の判断において否定結果を得た場合には、現在の対物レンズ31の焦点位置が第3の記録層24(3層ディスクのレイヤー0)上にあると判断し(SP68)、その記録層にフォーカス引き込みを行い(SP69)、この後、目標層が第3の記録層24(3層ディスクのレイヤー0)であるか否かを判断する(SP70)。そして制御部9は、この判断において肯定結果を得ると、フォーカス制御処理を終了する。
【0069】
さらに制御部9は、ステップSP70の判断において否定結果を得ると、モータドライバ7を介して光ピックアップ3のアクチュエータ32を制御することにより、対物レンズ31の焦点位置を目標層に移動させ(SP71)、この後、フォーカス制御処理を終了する。
【0070】
さらに制御部9は、ステップSP58において肯定結果を得た場合には、時間間隔T0を時間間隔T1で割った数値が上述の判定用閾値aよりも大きいか否かを判断する(SP72)。なお、このステップSP72では、上記時間間隔T1に判定用閾値aを乗算した乗算結果が、上記時間間隔T0よりも大きいか否かを判断するようにしても良い。
【0071】
このステップSP72の判断において肯定結果を得ることは、多層光ディスク2の表面21を記録層として誤検出したことを意味する。かくして、このとき制御部9は、現在の対物レンズ31の焦点位置が第2の記録層23(4層ディスクのレイヤー2)上にあると判断し(SP73)、目標層が第4の記録層25(4層ディスクのレイヤー0)であるか否かを判断する(SP74)。また制御部9は、この判断において否定結果を得ると、目標層が第3の記録層24(4層ディスクのレイヤー1)であるか否かを判断する(SP75)。
【0072】
そして制御部9は、ステップSP75の判断において否定結果を得ると、多層光ディスク2上の第2の記録層23(4層ディスクのレイヤー2)にフォーカス引き込みを行い(SP76)、この後、目標層が第2の記録層23であるか否かを判断する(SP77)。そして制御部9は、この判断において肯定結果を得ると、フォーカス制御処理を終了する。
【0073】
また制御部9は、ステップSP77の判断において否定結果を得ると、モータドライバ7を介して光ピックアップ3のアクチュエータ32を制御することにより、対物レンズ31の焦点位置を目標層に移動させ(SP78)、この後、フォーカス制御処理を終了する。
【0074】
これに対して制御部9は、ステップSP75の判断において肯定結果を得た場合には、フォーカスエラー信号のS字振幅を検出するのを待ち受ける(SP79)。そして制御部9は、やがてかかるS字振幅を検出すると、S字振幅計数カウンタのカウント値を1だけ増加させる(SP80)。また制御部9は、この後、そのとき検出したS字振幅に対応する記録層(ここでは第3の記録層24)へのフォーカス引き込みを行い(SP81)、この後、このフォーカス制御処理を終了する。
【0075】
さらに制御部9は、ステップSP74の判断において肯定結果を得た場合には、フォーカスエラー信号のS字振幅を検出するのを待ち受ける(SP82)。そして制御部9は、やがてかかるS字振幅を検出すると、S字振幅計数カウンタのカウント値を1だけ増加させる(SP83)。
【0076】
続いて制御部9は、S字振幅計数カウンタのカウント値が「5」となったか否かを判断し(SP84)、否定結果を得るとステップSP82に戻る。そして制御部9は、この後ステップSP81〜ステップSP84−ステップSP82のループを繰り返す。
【0077】
そして制御部9は、やがてS字振幅計数カウンタのカウント値が「5」となることによりステップSP84において肯定結果を得ると、多層光ディスク2上のそのとき検出したフォーカスエラー信号のS字振幅に対応する記録層(ここでは第4の記録層25)上にフォーカス制御の引き込みを行い(SP85)、この後、フォーカス制御処理を終了する。
【0078】
一方、ステップSP72の判断において否定結果を得ることは、多層光ディスク2の表面21を記録層として誤検出していないことを意味する。かくして、このとき制御部9は、現在の対物レンズ31の焦点位置が第3の記録層24(4層ディスクのレイヤー1)上にあると判断し(SP86)、目標層が第4の記録層25(4層ディスクのレイヤー0)であるか否かを判断する(SP87)。
【0079】
そして制御部9は、この判断において否定結果を得ると、多層光ディスク2上のそのとき検出したフォーカスエラー信号のS字振幅に対応する記録層(ここでは第3の記録層24)にフォーカス引き込みを行い(SP88)、目標層が第3の記録層24(4層ディスクのレイヤー1)であるか否かを判断する(SP89)。そして制御部9は、この判断において肯定結果を得ると、フォーカス制御処理を終了する。
【0080】
また制御部9は、ステップSP89の判断において否定結果を得ると、モータドライバ7を介して光ピックアップ3のアクチュエータ32を制御することにより、対物レンズ31の焦点位置を目標層に移動させ(SP90)、この後、フォーカス制御処理を終了する。
【0081】
これに対して制御部9は、ステップSP87の判断において肯定結果を得た場合には、次にフォーカスエラー信号のS字振幅を検出するのを待ち受ける(SP91)。そして制御部9は、やがてフォーカスエラー信号のS字振幅を検出すると、S字振幅計数カウンタのカウントを1だけ増加させる(SP92)。
【0082】
また制御部9は、そのとき検出したフォーカスエラー信号のS字振幅に対応する記録層(ここでは第4の記録層25)にフォーカス引き込みを行い(SP93)、この後、フォーカス制御処理を終了する。
【0083】
以上のように本実施の形態による光ディスク装置1では、フォーカスエラー信号の三つ目のS字振幅を検出した記録層にフォーカス引き込みを行うことなく、対物レンズ31の焦点位置を判断し、そのまま目標層にフォーカスの引き込みを行うため、第1の実施の形態により得られる効果に加えて、対物レンズ31の焦点位置をより迅速に目標層上に位置させることができるという効果をも得ることができる。
【0084】
(3)第3の実施の形態
上述の実施の形態においては、多層光ディスク2として3層又は4層ディスクを適用したが、5層以上のディスクを適用してもよい。
【0085】
ここで、図10を参照して、制御部9が対物レンズ31の焦点位置を目標層に移動させるフォーカス制御処理の第3の実施の形態について説明する。ただし、本実施の形態において、フォーカス制御処理の対象となる多層光ディスク2は、3層以上のM層の多層光ディスクである。
【0086】
まず、制御部9は、ある特定の記録層(目標層)上に対物レンズ31の焦点位置を移動させるようホストコンピュータ10から指令が与えられると、図10に示すフォーカス制御処理を開始し、上述のS字振幅計数カウントのカウント値を「0」に初期化する(SP101)。
【0087】
続いて制御部9は、モータドライバ7を介して光ピックアップ3のアクチュエータ32を制御することによりフォーカススイープを開始させると共に(SP102)、このとき信号処理部6から与えられるフォーカスエラー信号に基づいて、S字振幅の発生タイミングの時間間隔の計測を開始する(SP103)。
【0088】
この後、制御部9は、フォーカスエラー信号にS字振幅が発生するのを待ち受け(SP104)、やがてかかるS字振幅を検出すると、S字振幅計数カウンタのカウント値を「1」だけ増加させる(SP105)。また制御部9は、前回フォーカスエラー信号のS字振幅を検出してから今回フォーカスエラー信号のS字振幅を検出するまでの時間間隔をメモリ91に格納する(SP106)。ただし、一番目にフォーカスエラー信号のS字振幅を検出した段階では、かかる時間間隔が得られないため、この場合には、当該時間間隔をメモリ91に格納する処理は行わない。
【0089】
続いて制御部9は、S字振幅計数カウンタのカウント値が「3」になったか否かを判断する(SP107)。そして制御部9は、この判断において否定結果を得ると、ステップSP104に戻り、この後、ステップSP107において肯定結果を得るまで、ステップSP104〜ステップSP107−ステップSP104のループを繰り返す。
【0090】
そして制御部9は、やがてステップSP102においてフォーカススイープを開始してからフォーカスエラー信号の三番目のS字振幅を検出することによりステップSP107において肯定結果を得ると、フォーカススイープを停止させて、多層光ディスク2における三番目に検出したフォーカスエラー信号のS字振幅に対応する記録層上にフォーカス制御の引き込みを行う(SP108)。
【0091】
さらに制御部9は、この後、フォーカスエラー信号について一番目のS字振幅を検出してから二番目のS字振幅を検出するまでの時間間隔T0を、二番目のS字振幅を検出してから三番目のS字振幅を検出するまでの時間間隔T1で割った数値が上述の判定用閾値aより大きいか否かを判断する(SP109)。なお、このステップSP109では、上記時間間隔T1に判定用閾値aを乗算した乗算結果が、上記時間間隔T0よりも大きいか否かを判断するようにしても良い。
【0092】
そして制御部9は、この判断において肯定結果を得ると、現在の対物レンズ31の焦点位置がレイヤー(M−1)上にあると判断し(SP110)、目標層がレイヤー(M−2)であるか否かを判断する(SP111)。そして制御部9は、この判断において肯定結果を得ると、フォーカス制御処理を終了する。
【0093】
また制御部9は、ステップSP111の判断において否定結果を得ると、モータドライバ7を介して光ピックアップ3のアクチュエータ32を制御することにより、対物レンズ31の焦点位置を目標層に移動させ(SP112)、この後、フォーカス制御処理を終了する。
【0094】
これに対して制御部9は、ステップSP109において否定結果を得ると、現在の対物レンズ31の焦点位置がレイヤー(M−3)上にあると判断し(SP113)、目標層がレイヤー(M−3)であるか否かを判断する(SP114)。そして制御部9は、この判断において肯定結果を得ると、フォーカス制御処理を終了する。
【0095】
これに対して制御部9は、ステップSP114において否定結果を得ると、モータドライバ7を介して光ピックアップ3のアクチュエータ32を制御することにより、対物レンズ31の焦点位置を目標層に移動させ(SP115)、この後、フォーカス制御処理を終了する。
【0096】
以上のように本実施の形態によるフォーカス制御処理によれば、5層以上の多層光ディスク2についても対物レンズ31の焦点位置を精度良く目標層上に位置させることができる。
【0097】
(4)第4の実施の形態
上述の第1〜第3の実施の形態においては、フォーカススイープを行ったときに検出されるフォーカスエラー信号のS字振幅の時間間隔に基づいて多層光ディスク2の表面21(図3)を記録層として誤検出したか否かを判定している。
【0098】
しかしながら、フォーカススイープを行う場合、対物レンズ31を駆動下限位置から駆動上限位置に向かって一定速度で移動させるためにアクチュエータ32に印加する駆動電圧の電圧値を徐々に上げてゆくことを利用して、この駆動電圧に基づいて多層光ディスク2の表面21を記録層として誤検出したか否かを判定することもできる。
【0099】
すなわち、図11に示すように、対物レンズ31を駆動下限位置から駆動上限位置に向かって一定速度で移動させる場合、多層光ディスク2の表面21にジャストフォーカスしたときのアクチュエータ32の駆動電圧と、第1の記録層22(図3)にジャストフォーカスしたときのアクチュエータ32の駆動電圧との電位差V0は、第1の記録層22にジャストフォーカスしたときのアクチュエータ32の駆動電圧と、第2の記録層23(図3)にジャストフォーカスしたときのアクチュエータ32の駆動電圧との電位差V1に対して格段に大きく(電位差V0≫電位差V1)なる。
【0100】
これに対して第1の記録層22にジャストフォーカスしたときのアクチュエータ32の駆動電圧と、第2の記録層23(図3)にジャストフォーカスしたときのアクチュエータ32の駆動電圧との電位差V1は、第2の記録層23にジャストフォーカスしたときのアクチュエータ32の駆動電圧と、第3の記録層24(図3)にジャストフォーカスしたときのアクチュエータ32の駆動電圧との電位差V2とほぼ同じ(電位差V1≒電位差V2)になる。
【0101】
従って、フォーカススイープを開始してから一番目にジャストフォーカスしたときのアクチュエータ32の駆動電圧の電圧値と、二番目にジャストフォーカスしたときのアクチュエータ32の駆動電圧の電圧値との差電圧が、二番目にジャストフォーカスしたときのアクチュエータ32の駆動電圧の電圧値と、三番目にジャストフォーカスしたときのアクチュエータ32の駆動電圧の電圧値との差電圧に対して格段的に大きいときには多層光ディスク2の表面を記録層として誤検出していると判断することができる。
【0102】
このような手法により多層光ディスク2の表面21を記録層として誤検出したか否かを判定するための具体的な方法としては、例えば図1の光ディスク装置1において、フォーカススイープを開始してから信号処理部6がフォーカスエラー信号のS字振幅の中点を検出したタイミング(S字振幅の信号レベルが0となるタイミング)でこれを制御部9に順次通知し、制御部9がそのときのアクチュエータ32の駆動電圧の電圧値を順次記憶する。そして、制御部9が一番目に記憶した電圧値及び二番目に記憶した電圧値の電位差と、二番目に記憶した電圧値及び三番目に記憶した電圧値の電位差とを比較し、比較結果に基づいて多層光ディスク2の表面21を記録層として誤検出したか否かを判定すれば良い。
【0103】
またこの場合における制御部9の処理手順は、図6〜図10について上述した処理手順と同様である。より具体的には、例えば図6の場合であれば、ステップSP3の処理が不要となり、ステップSP6においてそのときのアクチュエータ32の駆動電圧の電圧値を記憶し、この後、ステップSP10やステップSP17において、一番目に記憶した電圧値及び二番目に記憶した電圧値の電位差を、二番目に記憶した電圧値及び三番目に記憶した電圧値の電位差で割ったときの商が予め定められた閾値よりも大きいか否かを判断する。図7〜図9の場合、及び、図10の場合も同様である。
【0104】
以上のフォーカス制御方法によれば、第1〜第3の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0105】
(5)他の実施の形態
なお上述の第1〜第4の実施の形態においては、フォーカス制御を行う領域について指定しなかったが、BCA(Burst Cutting Area)領域においてフォーカス制御を行うようにしても良い。このようにすることによって、データが記録された記録層と、データが記録されていない記録層とが混在する多層光ディスク2についても、対物レンズ31の焦点位置を精度良く目標層上に移動させることができる。
【0106】
すなわちデータが記録された記録層では、FE信号のS字振幅が小さく、未記録の記録層ではS字振幅が大きくなる。このため、記録層及び未記録層が混在している場合、S字振幅の検出に使用する閾値を両者に対応させる必要がある。この場合において、S字振幅が小さい方に合わせると、大きい方でノイズ成分を検出してしまう可能性が出てくるので、閾値の決め方が難しくなる。そこで、常に未記録となっているBCA領域でフォーカス制御を行うことにより、上述のS字振幅の振幅差を少なくし、S字振幅の検出の閾値を求めやすくすることができる。またその結果として、フォーカス制御時のS字検出の精度を向上させることができる。
【0107】
また上述の第1〜第4の実施の形態においては、多層光ディスク2がBDである場合について述べたが、本発明はこれに限らず、CDやDVD等の他の多層光ディスクに対応する光ディスク装置にも本発明を適用することができる。
【0108】
さらに上述の第3の実施の形態においては、第1の実施の形態のように、フォーカスエラー信号の三つ目のS字振幅を検出した記録層にフォーカ制御の引き込みをし、この後、必要に応じて目標層にフォーカスジャンプするようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば第2の実施の形態のように、フォーカスエラー信号の三つ目のS字振幅を検出した記録層にフォーカス引き込みを行うことなく、対物レンズ31の焦点位置を判断し、そのまま目標層にフォーカスの引き込みを行うようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、BD規格、DVD規格、CD規格又はそれ以外の規格に準拠した多層光ディスクに対応する光ディスク装置に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三層以上の記録層を有する光ディスクを再生できる光ディスク装置であって、
レーザ光を発射するレーザダイオードと、
前記レーザ光の前記光ディスクにおける反射光を受光し、受光した前記反射光を光電変換して出力するフォトダイオードと、
対物レンズを含み、前記レーザダイオードから発射されたレーザ光を、前記対物レンズを介して前記光ディスクの記録層上に集光させ、前記光ディスクにおける反射光を、前記対物レンズを介して前記フォトダイオードに導く光学系と、
前記フォトダイオードの出力に基づいてフォーカス誤差信号を生成する信号処理部と、
前記信号処理部により生成されたフォーカス誤差信号に基づいて前記記録層を検出するプロセッサと、
前記光学系に含まれる前記対物レンズを前記光ディスクの厚み方向に移動させるアクチュエータと、を備え、
前記プロセッサは、
前記アクチュエータを制御することにより前記対物レンズを前記光ディスクの厚み方向に移動させると共に、前記対物レンズを移動させている間に各前記記録層をそれぞれ検出した時間間隔を計測し、
一番目に前記記録層を検出してから二番目に前記記録層を検出するまでの第1の時間間隔と、二番目に前記記録層を検出してから三番目に前記記録層を検出するまでの第2の時間間隔とを比較し、
比較結果に基づいて、前記対物レンズの焦点位置を判定する
ことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記第1の時間間隔が前記第2の時間間隔の1より大きい所定数倍より大きい場合には、前記光ディスクの表面を前記記録層として誤検出したと判定し、
当該判定結果と前記記録層の数とに基づいて現在の前記対物レンズの焦点位置を判定し、
前記光ディスクにおける三番目に検出した前記記録層上に前記対物レンズの焦点位置を移動させた後に、当該対物レンズの焦点位置を目標とする記録層に移動させる
ことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記第1の時間間隔及び前記第2の時間間隔の比較を、前記対物レンズを移動させながら行う
ことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記第1の時間間隔が前記第2の時間間隔の1より大きい所定数倍より小さい場合には、検出した前記S字振幅の数に基づいて前記対物レンズの焦点位置を判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、バーストカッティングエリアにおいて前記記録層を検出した時間間隔を測定する
ことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項6】
三層以上の記録層を有する光ディスクを再生できる光ディスク装置であって、
レーザ光を発射するレーザダイオードと、
前記レーザ光の前記光ディスクにおける反射光を受光し、受光した前記反射光を光電変換して出力するフォトダイオードと、
対物レンズを含み、前記レーザダイオードから発射されたレーザ光を、前記対物レンズを介して前記光ディスクの記録層上に集光させ、前記光ディスクにおける反射光を、前記対物レンズを介して前記フォトダイオードに導く光学系と、
前記フォトダイオードの出力に基づいてフォーカス誤差信号を生成する信号処理部と、
前記信号処理部により生成されたフォーカス誤差信号に基づいて前記記録層を検出するプロセッサと、
前記光学系に含まれる前記対物レンズを前記光ディスクの厚み方向に移動させるアクチュエータと、を備え、
前記プロセッサは、
前記アクチュエータを制御することにより前記対物レンズを前記光ディスクの厚み方向に移動させると共に、前記対物レンズを移動させている間に各前記記録層をそれぞれ検出したときの前記アクチュエータの駆動電圧をそれぞれ計測し、
一番目に前記記録層を検出したときの前記駆動電圧、及び、二番目に前記記録層を検出したときの前記駆動電圧間の第1の電位差と、二番目に前記記録層を検出したときの前記駆動電圧、及び、三番目に前記記録層を検出したときの前記駆動電圧間の第2の電位差とを比較し、
比較結果に基づいて、前記対物レンズの焦点位置を判定する
ことを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−118959(P2011−118959A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272815(P2009−272815)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】