説明

光ディスク駆動装置

【課題】光ディスクの種類によらず、光ピックアップの対物レンズを光ディスクに衝突させることなく、合焦点を記録層に的確に到達させることができる光ディスク駆動装置を提供する。
【解決手段】不揮発性メモリ12は、アクチュエータ36を駆動するための駆動データとアクチュエータ36の変位とを対応させた駆動データ変位特性テーブル120を保持している。制御部11は、レーザ光Lzの合焦点が光ディスク1の表面に達したことを検出したときの駆動データに対応するアクチュエータ36の変位を、駆動データ変位特性テーブル120を参照して求める。制御部11は、求めた変位に所定の値を加算した加算値に対応する駆動データを駆動データ変位特性テーブル120を参照して求め、対物レンズ31を光ディスク1に近付ける際の上限値として設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに対して情報を記録したり、光ディスクに記録された情報を再生したりする光ディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク駆動装置においては、光ディスクに対する記録または再生の動作時に、光ピックアップから発せられたレーザ光を記録層にフォーカスさせるフォーカス引き込み動作を安定させることが必要である。光ディスクには反りがあったり、光ディスクを保持する保持部材に傾きがあったりするため、光ディスクの回転時には光ディスクが面振れすることがある。光ディスクが面振れしたとしても、光ピックアップの対物レンズが光ディスクに接触しないようにすることが必要である。
【0003】
特許文献1には、フォーカス引き込み動作を安定させるための一手法が記載されている。特許文献2には、面振れしている光ディスクにレンズを接触させることなく、最も奥に位置する記録層に対して安定したフォーカス引込み動作を行うための一手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−76306号公報
【特許文献2】特開2008−176852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ディスクの種類は多様化し、コンパクトディスク(以下、CDと略記する)やDVDの他に、ブルーレイディスク(以下、BDと略記する)も一般的になってきている。CDとDVDは光ディスクの表面と記録層との間の距離がBDと比較的して長く、BDは光ディスクの表面と記録層との間の距離がCD,DVDと比較的して短い。光ディスク駆動装置がいずれの光ディスクを記録または再生する場合でも、対物レンズが光ディスクに衝突することなく、合焦点を記録層に的確に到達させることが求められる。
【0006】
特許文献2に記載の発明によれば、BDの場合にはレンズが光ディスクに接触せず、合焦点が記録層に到達するようにフォーカスサーチの範囲を規制することができる。しかしながら、CD,DVDの場合には、光ディスクの表面と記録層との間の距離がBDと比較して長く、光ピックアップを駆動するアクチュエータの変位特性がリニアでないことから、対物レンズが光ディスクに衝突したり、合焦点が記録層に到達しなかったりする可能性がある。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑み、光ディスクの種類によらず、光ピックアップの対物レンズを光ディスクに衝突させることなく、合焦点を記録層に的確に到達させることができる光ディスク駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した従来の技術の課題を解決するため、光ディスク(1)に対して照射するレーザ光(Lz)を発光するレーザ発光部(32〜34)と、前記レーザ光を前記光ディスクに集光させる対物レンズ(31)と、前記対物レンズを前記光ディスクに対して近付く方向及び離れる方向に変位させるアクチュエータ(36)と、前記レーザ光の合焦点が前記光ディスクの表面に達したことを検出する検出部(11)と、前記アクチュエータを駆動するための複数の駆動データと、それぞれの駆動データに基づいて前記アクチュエータを駆動したときの前記アクチュエータの変位の値とを対応させた駆動データ変位特性テーブル(120)を保持するテーブル保持部(12)と、前記検出部が前記レーザ光の合焦点が前記光ディスクの表面に達したことを検出したときの駆動データに対応する前記アクチュエータの変位の値を、前記駆動データ変位特性テーブルを参照して求めると共に、前記変位の値に所定の値を加算した加算値に対応する駆動データを前記駆動データ変位特性テーブルを参照して求め、前記対物レンズを前記光ディスクに近付ける際の上限値として設定する設定部(11)と、前記設定部で設定した上限値を上限として前記アクチュエータによって前記対物レンズを変位させて、フォーカスサーチを実行させるフォーカスサーチ実行部(5,6,11)とを備えることを特徴とする光ディスク駆動装置を提供する。
【0009】
上記の構成において、前記光ディスクは複数種類の光ディスクの内のいずれかであり、前記設定部は、前記光ディスクの種類に応じた値を前記変位の値に加算して加算値を求めることが好ましい。
また、上記の構成において、前記光ディスクからの前記レーザ光の反射光を検出する光検出器(35)を備え、前記検出部は、前記光検出器による光検出信号の総和信号に基づいて前記レーザ光の合焦点が前記光ディスクの表面に達したことを検出することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光ディスク駆動装置によれば、光ディスクの種類によらず、光ピックアップの対物レンズを光ディスクに衝突させることなく、合焦点を記録層に的確に到達させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の光ディスク駆動装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】アクチュエータ駆動電圧とアクチュエータ変位との関係を示す特性図である。
【図3】一実施形態の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】変形例の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<一実施形態>
図1において、光ディスク1はクランパ(保持部材)2によって回転自在に保持されている。本実施形態において、光ディスク1はCD,DVD,BDのいずれかである。光ピックアップ3は、光ディスク1に対してレーザ光Lzを照射する。光ピックアップ3は、レーザ光Lzを集光させる対物レンズ31と、CDを記録再生する際のレーザ光Lzを発光するCDレーザ発光部32と、DVDを記録再生する際のレーザ光Lzを発光するDVDレーザ発光部33と、BDを記録再生する際のレーザ光を発光するBDレーザ発光部34とを有する。ここでは、記録再生としたが、本実施形態の光ディスク駆動装置は、再生専用の装置であってもよく、記録再生を行う装置であってもよい。
【0013】
CDを記録再生するレーザ光Lzの波長は780nm、DVDを記録再生するレーザ光Lzの波長は650nm、BDを記録再生するレーザ光Lzの波長は405nmである。CDレーザ発光部32,DVDレーザ発光部33,BDレーザ発光部34は、記録再生する光ディスク1の種類に応じてサーボ回路5からの選択信号に応じていずれか1つが選択されて発光する。なお、図1では、対物レンズ31を1つのみ示しているが、実際には、CD,DVD用のレーザ光Lzを集光させる対物レンズと、BD用のレーザ光Lzを集光させる対物レンズとを別々に有する。
【0014】
光ピックアップ3は、光検出器35とアクチュエータ36とを有する。光ディスク1からのレーザ光Lzの反射光は光検出器35に入射されて電気信号に変換される。光検出器35は例えば光検出素子が4分割された4分割素子よりなる。
【0015】
光検出器35より出力された電気信号は誤差検出回路4に入力され、公知の演算方法によってフォーカス誤差信号Sfe及びトラッキング誤差信号Steが生成される。これらの誤差信号Sfe,Steはサーボ回路5に入力される。サーボ回路5は、誤差信号Sfe,Steに基づいてアクチュエータ駆動電圧を生成してアクチュエータ駆動回路6に供給する。アクチュエータ駆動回路6は、アクチュエータ駆動電圧に応じてアクチュエータ36を駆動する。アクチュエータ36は、フォーカス誤差信号Sfeが最小となるように対物レンズ31をフォーカス方向(光ディスク1の面と直交する方向)に駆動し、トラッキング誤差信号Steが最小となるように対物レンズ31をトラッキング方向(トラックと直交する方向)に駆動する。
【0016】
これにより、レーザ光Lzは光ディスク1のトラックを正確にトレースする。誤差検出回路4からは、光検出器35の4分割素子からの総和信号ASとして再生RF信号Srfが出力される。
【0017】
スピンドル駆動モータ7は光ディスク1を所定の回転数で回転させる。光ディスク1は線速度一定で回転される。サーボ回路5は、光ディスク1の記録または再生しているトラックに対応した回転数となるようスピンドル駆動回路8を制御する。スピンドル駆動回路8は、光ディスク1をトラックに対応した回転数で回転させるようスピンドル駆動モータ7を駆動する。
【0018】
スレッド駆動モータ9は、光ピックアップ3を光ディスク1の半径方向に移動させるよう駆動する。サーボ回路5は、光ディスク1の記録または再生するトラックに対応させてレーザ光Lzを照射するようスレッド駆動回路10を制御する。スレッド駆動回路10は、光ディスク1の記録または再生するトラック上にレーザ光Lzが照射されるようスレッド駆動モータ9を駆動する。
【0019】
誤差検出回路4から出力された再生RF信号Srf(総和信号AS)は、制御部11に入力される。制御部11は例えばマイクロコンピュータによって構成することができる。制御部11には、不揮発性メモリ12とメモリ13とが接続されている。不揮発性メモリ12には、制御部11を動かすためのソフトウェア(コンピュータプログラム)、サーボ回路5で使用されるサーボ調整値、その他各種の情報が記憶されている。制御部11は、入力された再生RF信号Srfを復調したり、各種の信号処理を行ったりする際にメモリ13を用いる。
【0020】
不揮発性メモリ12には、アクチュエータ36を駆動するためのデジタル値である駆動データFDOとアクチュエータ36の変位を示す値とを対応させた駆動データ変位特性テーブル120が保持されている。不揮発性メモリ12は、駆動データ変位特性テーブル120を保持するテーブル保持部である。駆動データ変位特性テーブル120を保持させる場所は不揮発性メモリ12に限定されるものではない。制御部11は、駆動データ変位特性テーブル120から所定の駆動データFDOを読み出してサーボ回路5に供給する。サーボ回路5は、駆動データFDOをアナログのアクチュエータ駆動電圧に変換してアクチュエータ駆動回路6に供給する。アクチュエータ駆動回路6は、アクチュエータ駆動電圧に応じてアクチュエータ36を駆動する。
【0021】
なお、駆動データFDOに基づいたアクチュエータ駆動電圧は、フォーカス引き込み制御を行う際に使用される。
【0022】
図2を用いて、駆動データ変位特性テーブル120について説明する。前述のように、駆動データ変位特性テーブル120は、デジタル値である駆動データFDOとアクチュエータ36の変位を示す値とを対応させたものであるが、理解を容易にするため、図2ではアクチュエータ駆動電圧とアクチュエータ36の変位との関係を示している。横軸はアクチュエータ駆動電圧(V)、縦軸はアクチュエータ変位(mm)である。駆動データFDOとアクチュエータ36の変位との関係も、図2と同様の特性である。
【0023】
光ディスク1がDVDの場合、光ディスク1の表面を検出した時点から約0.36mmだけ対物レンズ31を上昇させると合焦点が記録層に達する。DVDの場合、表面から記録層までは約0.6mmであり、光ディスク1の材料であるポリカーボネートの屈折率から、約0.36mmと決まる。図2において、アクチュエータ駆動電圧0.0Vで表面を検出したとすると、そのときのアクチュエータ変位は0.0mmであるから、合焦点が記録層に達するには対物レンズ31を+0.36mmまで変位させる必要がある。図2より、対物レンズ31を0.0mmから+0.36mmまで変位させるアクチュエータ駆動電圧は+0.2Vとなる。
【0024】
また、アクチュエータ駆動電圧−1.0Vで表面を検出したとすると、そのときのアクチュエータ変位は−0.95mmであるから、合焦点が記録層に達するには対物レンズ31を−0.59mmまで変位させる必要がある。図2より、対物レンズ31を−0.95mmから−0.59mmまで変位させるアクチュエータ駆動電圧は+0.6Vとなる。このように、光ディスク1の表面を検出した時点のアクチュエータ変位によって、その後に加えるべき電圧が大きく異なることになる。本実施形態は、駆動データFDOとアクチュエータ36の変位との関係が図2に示すような特性となっていることを考慮してフォーカス引き込み制御を行う。
【0025】
図3を用いて、本実施形態によるフォーカス引き込み制御について説明する。図3に示す処理は制御部11によって実行される。図3において、制御部11はステップS1にて次の各処理を実行する。制御部11は、サーボ回路5で用いる駆動データFDOの上限値FDO_MAXに充分大きな初期値を設定する。この初期値は、対物レンズ31とターンテーブルとの間の距離のメカニカル誤差や、光ディスク1の面振れや反り、アクチュエータ36の感度のばらつき等を考慮しても合焦点が記録層に必ず達するだけの値とする。また、制御部11は、駆動データFDOの下限値FDO_MINに充分小さな値を設定する。下限値FDO_MINは、上記と同様に考慮をしても合焦点が光ディスク1の表面より必ず低い位置とするための値である。
【0026】
制御部11は、まず駆動データFDOに下限値FDO_MINを設定する。そして、制御部11は、駆動データFDOの変化ステップFDO_STEPに適当なサーチ速度となる値を設定し、光ディスク1の種類に応じたレーザ光Lzを点灯させる。
【0027】
次に、制御部11は、ステップS2にて、サーボ回路5を制御してアクチュエータ駆動回路6を動作させ、対物レンズ31を駆動データFDOに対応するフォーカス高さに移動させる。制御部11は、ステップS3にて、誤差検出回路4から出力される総和信号ASが所定の閾値AS_THを上回っているか否かを判定する。合焦点が光ディスク1から離れた低い位置にあれば総和信号ASは小さいので閾値AS_THを上回らず(NO)、制御部11はステップS8の処理へと移行させる。
【0028】
制御部11は、ステップS8にて、サーボ回路5が入力されるフォーカス誤差信号Sfeによってフォーカス引き込み条件に合致したことを検出したか否かを判断する。合焦点が光ディスク1から離れた低い位置にあればフォーカス引き込み条件に合致しないので(NO)、制御部11はステップS9の処理へと移行させる。制御部11は、ステップS9にて、駆動データFDOがステップS1にて設定した上限値FDO_MAXに達したか否かを判定する。フォーカスサーチ開始当初は駆動データFDOが上限値FDO_MAXに達していないので(YES)、制御部11はステップS10の処理へと移行させる。制御部11は、ステップS10にて、駆動データFDOに変化ステップFDO_STEPを加算して加算したものを新たな駆動データFDOとして、ステップS2の処理へと移行させる。ステップS2では、対物レンズ31を新たな駆動データFDOに対応するフォーカス高さに移動させる。
【0029】
このように、制御部11は、ステップS2,S8〜S10の処理によって、光ディスク1から所定量の反射光が得られるまでは、一定周期毎に変化ステップFDO_STEPに相当する高さずつ対物レンズ31を上昇させるフォーカスサーチ動作を行わせることになる。
【0030】
フォーカスサーチによって合焦点が光ディスク1の表面に達すると、制御部11は、ステップS3にて、総和信号ASが所定の閾値AS_THを上回ると判定し(YES)、ステップS4の処理へと移行させる。なお、総和信号ASは、対物レンズ31と光ディスク1との間の距離が特定の距離の時点でのみ発生するのではなく、対物レンズ31と光ディスク1との間の距離に関して比較的広範囲に発生する。従って、光ディスク1のディフェクトによって総和信号ASが得られなくなってしまうということは通常起こらない。
【0031】
制御部11は、ステップS4にて、総和信号ASが所定の閾値AS_THを上回ったのが最初の検出であるか否かを判定する。最初の検出でなければ(NO)、制御部11はステップS8の処理へと移行させる。最初の検出であれば(YES)、制御部11はステップS5の処理へと移行させる。制御部11は、ステップS5にて、駆動データ変位特性テーブル120を参照して、その時点の駆動データFDOに対応するアクチュエータ変位X_ASを求める。制御部11は、ステップS6にて、光ディスク1の表面を検出したときのアクチュエータ変位X_ASに、光ディスク1の種類に応じて決まる適正なレンズ上げ幅ΔXを加算した加算値X_LIMIT(=X_AS+ΔX)を求める。
【0032】
そして、制御部11は、ステップS7にて、駆動データ変位特性テーブル120を参照して、加算値X_LIMITに対応する制限値FDO_LIMITを求めて、サーボ回路5に設定しておいた上限値FDO_MAXを制限値FDO_LIMITへと書き換える。以上のようにして、光ディスク1の表面を検出したときのアクチュエータ変位X_ASに応じた適切なサーチ範囲上限が設定されることとなる。
【0033】
その後、ステップS8にて、フォーカス引き込み条件に合致したと判定されると、制御部11は、ステップS11にて、フォーカスループを閉じてフォーカス制御状態に移行させるようサーボ回路5を制御する。
【0034】
ところで、フォーカスループを閉じる際に必須となるフォーカス誤差信号Sfeは、総和信号ASと比べて対物レンズ31と光ディスク1との間の距離に関してごく狭い範囲でしか発生しない。従って、合焦点がちょうど記録層に近付いたタイミングでディフェクトに差し掛かかったとするとフォーカス誤差信号Sfeが欠落する場合がある。その場合、ステップS8にてフォーカス引き込み条件に合致しないという判定が続いてフォーカスサーチが継続され、その後、ステップS9にて駆動データFDOが上限値FDO_MAXに達したと判定されて終了する。この場合、フォーカス引き込み制御は失敗となる。
【0035】
ディフェクトによってフォーカス引き込み制御が失敗するのは原理的に避けることができないが、本実施形態では、フォーカス引き込み制御が失敗する場合であってもサーチ範囲上限が制限値FDO_LIMITに設定されているので、対物レンズ31が光ディスク1に衝突することを回避することができる。
【0036】
以上の説明より分かるように、制御部11は、レーザ光Lzの合焦点が光ディスク1の表面に達したことを検出する検出部として動作している。制御部11は、光検出器35からの光検出信号の総和信号ASに基づいてレーザ光Lzの合焦点が光ディスク1の表面に達したことを検出している。また、制御部11は、レーザ光Lzの合焦点が光ディスク1の表面に達したことを検出したときの駆動データFDOに対応するアクチュエータ36の変位の値X_ASを、駆動データ変位特性テーブル120を参照して求めると共に、変位の値X_ASに所定の値ΔXを加算した加算値X_LIMITに対応する駆動データFDO_LIMITを駆動データ変位特性テーブル120を参照して求め、対物レンズ31を光ディスク1に近付ける際の上限値FDO_MAXとして設定する設定部として動作している。
【0037】
サーボ回路5,アクチュエータ駆動回路6,制御部11は、上記の上限値を上限としてアクチュエータ36によって対物レンズ31を変位させて、フォーカスサーチを実行させるフォーカスサーチ実行部して動作している。
【0038】
<変形例>
上述した本実施形態は、フォーカス引き込み制御を例にしたものである。本実施形態における特徴となる処理は、フォーカス誤差信号Sfe等の各種誤差信号の振幅測定や、ゲイン調整等におけるフォーカスサーチにも応用することができる。フォーカス誤差信号Sfeの振幅を測定する場合の動作を変形例として説明する。
【0039】
図4に示す変形例において、図3と同一のステップには同一の符号を付し、その説明を省略することとする。図4において、制御部11は、ステップS18にて、フォーカス誤差信号Sfeが予め検出されていたフォーカス誤差信号Sfeの最大値であるFE_MAX以上であればFE_MAXを更新し、予め検出されていたフォーカス誤差信号Sfeの最小値であるFE_MIN以下であればFE_MINを更新する。制御部11は、ステップS21にて、FE_MAXからFE_MINを減算してフォーカス誤差信号Sfeの振幅を求める。
【0040】
<比較例>
ここで、本実施形態と比較するための比較例として、光ディスク駆動装置において従来から行われているフォーカス引き込み制御の概略について説明する。説明の都合上、図1を用いて説明する。制御部11は、サーボ回路5への設定によって、対物レンズ31が光ディスク1から遠ざかる方向のフォーカス駆動電圧を出力させて、面振れがあったとしても合焦点が完全に光ディスク1の表面から離れた位置となるように対物レンズ31を移動させる。
【0041】
光ディスク1の種類に応じたレーザ光Lzを点灯させ、対物レンズ31を光ディスク1に近付ける方向に動かすために、サーボ回路5への設定によって上向きのフォーカス駆動電圧を出力させる。対物レンズ31を光ディスク1に順次近付けていき、フォーカスサーチ動作を行わせる。その間に合焦点が記録層に達し、反射光から得られるフォーカス誤差信号Sfeがフォーカスループオンの条件に合致した場合はフォーカスループを閉じてフォーカス制御を開始する。
【0042】
フォーカスサーチ動作の際、ディフェクトによってフォーカス誤差信号Sfeが出力されない場合には、フォーカスループオンの条件に至らないまま合焦点が記録層を通り過ぎる。対物レンズ31は、予め設定したフォーカスサーチ範囲の上限に達するまで光ディスク1に近付いてしまう。フォーカスサーチ範囲の上限が低すぎるとディフェクトがない場合でも合焦点が記録層に届かず、フォーカスループオンの条件が満たされなくなるので、上限をある程度以上高く設定する必要がある。しなしながら、上限が高すぎると対物レンズ31が光ディスク1に衝突するおそれが生じる。
【0043】
光ディスク1がCDとDVDのみの場合には、対物レンズ31とターンテーブルとの間の距離のメカニカル誤差や、光ディスク1の面振れや反り、アクチュエータ36の感度のばらつき等を考慮しても、対物レンズ31が光ディスク1に衝突せず、合焦点が記録層に届くフォーカスサーチ範囲の上限を設定することは比較的容易であった。しかしながら、BD用のレーザ光Lzを集光させる対物レンズは通常CD,DVD用のレーザ光Lzを集光させる対物レンズよりも光ディスク1に近い位置に固定されている。従って、対物レンズ31が光ディスク1に衝突しやすく、過不足のないフォーカスサーチ範囲の上限を設定することが難しい。
【0044】
そこで、CDとDVDの場合には、フォーカスサーチ範囲の上限を低めに設定してフォーカスの引き込みを失敗したときには上限を徐々に上げていくことが行われていた。また、BDであれば、合焦点が光ディスク1の表面に達した後に対物レンズ31を一定量だけ光ディスク1に近付け、対物レンズ31を光ディスク1から遠ざける際にフォーカス引き込み制御を行っていた。しなしなら、前者の上限を徐々に上げていく方法はフォーカス引き込みに多くの時間がかかるので好ましくない。後者の対物レンズ31を光ディスク1に近付け、遠ざける際にフォーカス引き込み制御を行う方法は、BDに対して有効であったとしても、CDとDVDの場合に用いると、アクチュエータ36の変位特性がリニアでないことから、対物レンズ31が光ディスク1に衝突したり、合焦点が記録層に到達しなかったりする場合がある。
【0045】
これに対して、本実施形態においては、先に詳述したように、駆動データ変位特性テーブル120を参照することによって、光ディスク1の表面を検出したときの駆動データFDOに基づいてその駆動データFDOに対応したアクチュエータ変位X_ASを求める。そして、そのアクチュエータ変位X_ASに適正なレンズ上げ幅ΔXを加算して加算値X_LIMITを求め、この加算値X_LIMITに対応する制限値FDO_LIMITを、駆動データ変位特性テーブル120を参照して求める。上限値FDO_MAXを制限値FDO_LIMITで書き換えて、制限値FDO_LIMITを新たな駆動データFDOの上限値として設定する。
【0046】
従って、本実施形態によれば、駆動データ変位特性テーブル120を用いることにより、光ディスク1の種類によらず、対物レンズ31が光ディスク1に衝突することを回避でき、合焦点を記録層に確実に到達させることができる。
【0047】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 光ディスク
3 光ピックアップ
4 誤差検出回路
5 サーボ回路(フォーカスサーチ実行部)
6 アクチュエータ駆動回路(フォーカスサーチ実行部)
11 制御部(検出部,設定部,フォーカスサーチ実行部)
12 不揮発性メモリ(テーブル保持部)
31 対物レンズ
32 CDレーザ発光部
33 DVDレーザ発光部
34 BDレーザ発光部
35 光検出器
36 アクチュエータ
120 駆動データ変位特性テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに対して照射するレーザ光を発光するレーザ発光部と、
前記レーザ光を前記光ディスクに集光させる対物レンズと、
前記対物レンズを前記光ディスクに対して近付く方向及び離れる方向に変位させるアクチュエータと、
前記レーザ光の合焦点が前記光ディスクの表面に達したことを検出する検出部と、
前記アクチュエータを駆動するための複数の駆動データと、それぞれの駆動データに基づいて前記アクチュエータを駆動したときの前記アクチュエータの変位の値とを対応させた駆動データ変位特性テーブルを保持するテーブル保持部と、
前記検出部が前記レーザ光の合焦点が前記光ディスクの表面に達したことを検出したときの駆動データに対応する前記アクチュエータの変位の値を、前記駆動データ変位特性テーブルを参照して求めると共に、前記変位の値に所定の値を加算した加算値に対応する駆動データを前記駆動データ変位特性テーブルを参照して求め、前記対物レンズを前記光ディスクに近付ける際の上限値として設定する設定部と、
前記設定部で設定した上限値を上限として前記アクチュエータによって前記対物レンズを変位させて、フォーカスサーチを実行させるフォーカスサーチ実行部と、
を備えることを特徴とする光ディスク駆動装置。
【請求項2】
前記光ディスクは複数種類の光ディスクの内のいずれかであり、
前記設定部は、前記光ディスクの種類に応じた値を前記変位の値に加算して加算値を求める
ことを特徴とする請求項1記載の光ディスク駆動装置。
【請求項3】
前記光ディスクからの前記レーザ光の反射光を検出する光検出器を備え、
前記検出部は、前記光検出器による光検出信号の総和信号に基づいて前記レーザ光の合焦点が前記光ディスクの表面に達したことを検出する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光ディスク駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−243342(P2012−243342A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111114(P2011−111114)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】