説明

光ドロップケーブル

【課題】 複数の光ドロップケーブルが並設された現場での引落し作業を確実かつ迅速に行えるようにし、かつ布設後の光ドロップケーブルを管理できるようにした光ドロップケーブル及びその布設方法を提供する。
【解決手段】 光ドロップケーブル2は、支持線部10と、支持線部10に連結されたケーブル部20とから成る。ケーブル部20は、接続部51を介して支持線部10の下部に一体化された第1の光ファイバユニット30と連結部28を介して連結された第2の光ファイバユニット40とを備え、外被の四隅のうちの対向する2つの角部から断面中心に向けて斜めに形成される分離用ノッチ26A,26Bによって第1の光ファイバユニット30と第2の光ファイバユニット40とに分離可能にして一体化される。被覆部材12の外表面には、製造年、端部からの長さ、シリアル番号を含む固有の識別標識13が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ドロップケーブルに関し、さらに詳しくはクロージャ等の接続材等を介して光ファイバを分岐してオフィスや一般加入者宅等への引き込み配線を確実かつ迅速に行うことが可能な光ドロップケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、FTTH(Fiber To The Home)が急速に普及し、一般家庭等への光ファイバの引き込みに光ドロップケーブルが用いられている。この光ドロップケーブルの宅内への引き込みは、例えば、図5に示すようにして行われている。まず、加入者宅101〜104の近傍には所定間隔に電柱105A〜105Dが立設されており、この電柱105A〜105Dには幹線ケーブル106が予め布設されている。そして、電柱105Aには分岐クロージャ107が設置され、また、電柱105Bにはドロップクロージャ108が設置されている。この分岐クロージャ107とドロップクロージャ108との間には光ドロップケーブル(又は、少心光ケーブル)109が架設され、その一端は分岐クロージャ107を介して幹線ケーブル106に光接続されている。一方、ドロップクロージャ108にはドロップケーブル110〜113(いずれも1心又は2心の光ファイバを内蔵)が接続されており、加入者宅101〜104にはドロップケーブル110〜113が個別に引き込まれている。尚、幹線ケーブル106には、螺旋ハンガー114が装架されており、ドロップケーブル110〜113は幹線ケーブル106に沿わせた状態で螺旋ハンガー114内に布設されている。
【0003】
通信施工業者にとってドロップケーブル110〜113の布設は、迅速かつ効率良く行えることが望ましく、その一例として、既設の100Vの引き込み線を利用して光ドロップケーブルを加入者宅等に引落す光ドロップケーブルの保留構造及び引落し方法(特許文献1参照)や、住宅と最寄りの電柱との間に布設されたDV(電力引込用ビニール電線)に螺旋状パイプを巻き付け、この螺旋状パイプの電柱側に通線駆動手段を取り付け、光ドロップケーブルを圧縮空気により螺旋状パイプに送り込んで光ドロップケーブルを布設する布設方法(特許文献2参照)などが知られている。
【0004】
上記したドロップケーブル110〜113は、それぞれの光ファイバが1心の場合であり、したがって、従来は加入者宅毎にドロップクロージャ108から各1本の光ドロップケーブルを引落していた。これに対して2心以上の光ファイバを備えた光ドロップケーブルも提案されている。次に、2心の光ファイバを備えた光ドロップケーブルの従来の布設方法について簡単に説明する。
【0005】
図6は、2心の光ファイバを備えた光ドロップケーブルによる従来の布設方法を示している。例えば、特許文献3に開示された従来の光ドロップケーブル202は、図7に示すように、平行に配置された2本の光ファイバ202a,202bの外側にそれぞれテンションメンバ213a,213bを配置し、それらを外被211によって一体に被覆すると共に、一方側のテンションメンバ213bのさらに外側に被覆材221によって被覆された支持線220を配置した構造を有している。また、2本の光ファイバ202a,202bを取り出すためのノッチ215,215が左右に形成されている。そして、図6(a)に示すように、図示しない幹線ケーブルに接続された光ドロップケーブル202より分岐した心線202aが、電柱201A,202Bを介して加入者宅203にまずもって引落される。次に、新たに加入者宅204に対して光ドロップケーブルを引落すことになった場合、図6(b)に示すように、光ドロップケーブル202より分岐した心線202bが加入者宅204へ引落される。そして、さらに新規の加入者(加入者宅205)が現れた場合、図6(c)に示すように、光ドロップケーブル202と同様の構造を有する新たな光ドロップケーブル206を電柱201A〜201Cに布設し、光ドロップケーブル206の心線206aが加入者宅205へ引落される。そして、さらに新たに加入者宅207が現れて光ドロップケーブルを引落すことになった場合、図6(d)に示すように心線206bが加入者宅207へ引落されることになる。
【0006】
一方、高層ビルや高層マンションなどの多数のユーザが存在する場合には多心の光ファイバを一方向に螺旋状に撚って形成されたスロット型の光ファイバケーブルが使用されていた。従来のスロット型の光ファイバケーブルは光ファイバ心線を中間分岐して取り出す際に螺旋状に撚られた光ファイバ心線の弛みがなく光ファイバ心線の取り出し作業が行い難いことから、スロット部分を切断しなければならなかった。そのため光ファイバ心線を交互に撚り合わせたSZ撚りスロットを用いたSZケーブルが提案されている(特許文献4)。図8に示すように、SZケーブル300は、光ファイバ心線301を案内するSZ撚スロット305の撚り方向が交互に反転して形成されていることから取り出すべき光ファイバ心線301に弛みを持たせることができるので中間分岐作業を極めて簡易化することができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−148496号公報
【特許文献2】特開2001−251717号公報
【特許文献3】特開2008−129062号公報
【特許文献4】特開平11−133279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の光ドロップケーブルにあっては、光ファイバ心線が互いに近接して配置されており、光ファイバ心線202bを中間後分岐しようとすれば光ファイバ心線202aも剥き出しになってしまうという問題があった。従って、光ファイバ心線202a,202bを単身の光ファイバケーブルにつなぎ直さなければならなかった。
【0009】
また、上述した従来の光ドロップケーブルにあっては、図6(c)に示すように、同じ電柱間に光ドロップケーブルが2本布設されることとなり、この場合、通常、光ドロップケーブルは同じ仕様であるため、1本目の光ドロップケーブル202と2本目の光ドロップケーブル206とを区別するのが容易ではない。そのため、例えば図6(d)に示すように、加入者宅207へは2本目の光ドロップケーブル206から心線206bを引き落とすべきところ、1本目の光ドロップケーブル202から心線202bを引き落としてしまうおそれがあるという問題がある。
【0010】
さらに、SZケーブルを用いて中間後分岐する場合には光ファイバ心線が取り出しやすい反面、取り出された光ファイバ心線が弛んで垂れ下がるという問題があった。また、SZケーブルの断面積が大きいため螺旋ハンガー内に挿通できる本数が限られてしまうという問題があった。
【0011】
一方、加入者が増加し、2心の光ドロップケーブルの追い張りによってはもはや需要に対応できない様な場合には、幹線ケーブルを新たに布設することで対応することになるが、この場合、既に布設されている複数の光ドロップケーブルは撤去されることになる。撤去された光ドロップケーブルは適切な廃棄処理が行われるべきことはいうまでもない。しかしながら、従来の光ドロップケーブルには追加の光ドロップケーブルと区別するための固有の識別標識などは一切付されていないため、万一不法投棄が行われた場合には、追跡調査ができないという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑みなされたもので、光ファイバの中間後分岐作業を簡便に行うことができ、並設された複数の光ドロップケーブルを現場で容易に識別できるようにすることで、引落し作業を確実かつ迅速に行えるようにすると共に、布設以後の光ドロップケーブルのトレーサビリティ管理を可能とした光ドロップケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、光ファイバ心線とテンションメンバとを外皮で被覆した光ファイバユニットを光ファイバ心線同士が相対するようにして複数並列して配置してなる光ドロップケーブルであって、外皮は複数の光ファイバユニットを一体に被覆すると共に、さらに支持線と結合されて形成された光ドロップケーブルにおいて、光ドロップケーブルは、それぞれの光ファイバユニット相互間の境界に沿って光ドロップケーブルの略矩形の断面形状における外被の四隅のうちの対向する2つの角部から断面中心に向けて斜めに形成されると共に、分離後の各光ファイバユニットに配置された光ファイバ心線が剥き出しにならないように外被で被覆された状態で各光ファイバユニットを互いに分離可能に形成された分離用ノッチと、各光ファイバ心線を挟んで対向する位置の外被の側面及び分離用ノッチの内側面にそれぞれ形成された心線引き出し用ノッチとを備え、同じ場所に後から布設される追加の光ドロップケーブルとの識別を可能とするため光ドロップケーブルの表面に光ドロップケーブルの長手方向に沿って追加の光ドロップケーブルと識別するための識別標識を一定間隔ごとに表記したことを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するために請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の光ドロップケーブルにおいて、識別標識は、当該光ドロップケーブルの製造年と、一端からの距離を一定の間隔ごとに表記したケーブル長さと、固有の識別記号であるシリアル番号とを含むことを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決するために請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の光ドロップケーブルにおいて、識別標識は、さらに、当該光ドロップケーブルの種別、メーカ名、被覆材の材質の少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決するために請求項4に記載の本発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の光ドロップケーブルにおいて、識別標識を適宜の色で表記することによりその色によって他の光ドロップケーブルとの識別可能としたことを特徴とする。
【0017】
上記課題を解決するために請求項5に記載の本発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の光ドロップケーブルにおいて、一定間隔ごとに表記された識別標識と識別標識との間の何も表記がなされていない光ドロップケーブルの表面を適宜の色で塗り分けることによりその色によって他の光ドロップケーブルとの識別可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る光ドロップケーブルによれば、並設された複数の光ドロップケーブルを識別標識によって現場で容易に識別することができるため、引落し作業を確実かつ迅速に行うことができるという効果がある。
【0019】
また、本発明に係る光ドロップケーブルによれば、光ドロップケーブルに固有の識別標識を付すことで布設以後の光ドロップケーブルのトレーサビリティ管理を行えるという効果がある。これにより光ドロップケーブルの不法投棄など適切な廃棄処理が行われなかった場合の追跡調査が可能となるので不法投棄などの抑止効果が期待できる。
【0020】
さらに、本発明に係る光ドロップケーブルによれば、布設された光ドロップケーブルから光ファイバ心線を中間後分岐する場合において、光ファイバ心線が被覆された状態で分岐することができるので、従来のように分岐された光ファイバ心線を別の光ケーブルと接続する必要がなく、従って、引き落としを行う際の作業性が極めて向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】光ドロップケーブルの一実施形態を示す正面図である。
【図2】識別標識間の着色を示す光ドロップケーブルの正面図である。
【図3】図1に示す光ドロップケーブルのA−A線断面図である。
【図4】本発明に係る光ドロップケーブルの好ましい一実施形態を示す斜視図である。
【図5】光ドロップケーブルの引き込み配線の布設例を説明する図である。
【図6】光ドロップケーブルの引き込み配線の他の布設例を説明する図である。
【図7】従来の光ドロップケーブルの断面図である。
【図8】SZケーブルの一部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[光ドロップケーブルの構成]
以下、光ドロップケーブルの一実施形態について説明する。図1は光ドロップケーブルの好ましい一実施形態を示す正面図、図3は図1に示す光ドロップケーブルのA−A線断面図である。この光ドロップケーブル1は、概略として、円柱状を成した支持線部10と、光ファイバを内蔵し、狭い幅の接続部51を介して支持線部10の下部に連結されると共に、全体として矩形形状を有したケーブル部20を備えて構成されている。図示された光ドロップケーブル1は、例えば、従来の光ドロップケーブルと同じ2mm×5mm(幅×高さ)の外形寸法を有している。
【0023】
[支持線部の構成]
まず、支持線部10は、電柱間に架設する際の支持媒体となる鋼線(例えば、1.2mmφ)等によって形成された支持線11を備え、支持線11の外面を所定の厚みで覆う難燃ポリエチレン等などの合成樹脂によって形成された被覆部材12によって覆うようにして形成されている。被覆部材12の外表面(例えば、一方の側面)には、図1に示す様に、識別標識13が印刷、刻印、印字テープの貼付等により表記されている。この識別標識13は、例えば、以下のように表記されている。
【0024】
(表1)

“2SM(R15) KITANIHON 2010 FRPE 0717M No.00002”
【0025】
ここで、「2SM(R15)」は光ドロップケーブル1の種別を示し、「KITANIHON」は製造会社名を示し、「2010」はこの光ドロップケーブル1が製造された製造年である2010年を示し、「FRPE」は材質を示している。また、「0717M」は、この識別標識が表記された箇所が一方側の端部(始端部)からどれだけの長さに位置しているかを示している。例えば、「0717M」であれば、始端部から「717m」の長さ(距離)に位置していることを表している。そして、長さの表記は、一定間隔ごと、本実施形態の場合では1m単位ごと、に表記されている。長さの隣に示された「00002」は、シリアル番号であり、光ドロップケーブル1について1巻毎に異なる番号を表記している。そして、一定間隔ごとに表記された長さの表示と共に種別、製造会社名、製造年、材質、シリアル番号も同様に一定間隔ごとに表記されている。本実施形態の場合では1m単位ごとに表記されている。尚、支持線部10は光ファイバの引き落としに作業において原則として切断されることはないので識別標識13は、支持線部10の表面に表記することが好ましいが、ケーブル部20の側面、下面等に表記することもできる。光ドロップケール1は、通常1巻が約2,000mの長さをもって製造されている。
【0026】
また、識別標識13を適宜の色で表記することによりその色によって他の光ドロップケーブル1と識別可能とすることもできる。すなわち、ある年(例えば、2010年)に製造した光ドロップケーブル1の識別標識13を赤で表記し、次の年(2011年)は青で表記する等、色と製造年を結びつけて表記することで色の違いから一見して光ドロップケーブル1の違いを判別することができる。
【0027】
また、上述したように、識別標識13は約1mの間隔で連続して表記されているが、識別標識13と次の識う別標識13との間には何も記載されていない部分が存在する。そこで、少なくともこの識別標識13と次の識別標識13との間を適宜の色で着色した着色部15とすることによっても識別標識13として機能させることができる。すなわち、上記の識別標識13を着色表示するのと同様に、併設された相互の光ドロップケーブル1、1を色で瞬時に見分けることが可能となる。もちろん、識別標識13と次の識別標識13との間を着色するだけでなく光ドロップケーブル1全体を着色してもよい。この場合は識別標識13の色と光ドロップケーブル1の表面に着色する色とを良く吟味して識別標識13が引き立つように同色系にならないようにすることが好ましい。
【0028】
光ドロップケーブル1の表面に固有の識別標識13を表記したことにより、既に光ドロップケーブル1が布設されている箇所に後から追加の光ドロップケーブル1が追い張りされた場合でも容易に追加の光ドロップケーブルとの識別ができ、引落し作業での誤認を防止することができる。仮に、同一シリアル番号(「No.00002」)の光ドロップケーブル1が同一系路に布設されたとしても、長さ表示が必ず相違するので追加の光ドロップケーブルとの区別が可能になる。また、長さの表示が同一であった場合には、必ずシリアル番号が異なることになるので並設された光ドロップケーブルのそれぞれを容易に識別することができる。
【0029】
[ケーブル部の構成]
次に、ケーブル部20の構成について説明する。ケーブル部20は、第1のテンションメンバ31及び第1の光ファイバ心線32を内蔵し、接続部51を介して支持線部10の下部に一体化されている第1の光ファイバユニット30と、第2の光ファイバ心線41及び第2のテンションメンバ42を内蔵し連結部52を介して、第1の光ファイバユニット30に一体化されている第2の光ファイバユニット40とを備えている。
【0030】
第1,第2の光ファイバユニット30,40は、押し出し成形するなどして被覆部材12と一体に製造することができる。被覆部材は、例えば、難燃ポリエチレン等によって形成されており、これらの内部には第1のテンションメンバ31、第1の光ファイバ心線32、第2の光ファイバ心線41及び第2のテンションメンバ42が上下方向に平行するようにして配設され、さらに、第1,第2の光ファイバ心線32,41は連結部52を中心にして対峙するように配置されている。これらを覆うようにして、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等の合成樹脂材による外被21が設けられている。尚、第1,第2の光ファイバ心線32,41は、例えば、紫外線硬化型樹脂被覆単心による光ファイバであり、さらには、その周囲がシリコーン樹脂、紫外線硬化型樹脂、熱可塑性エラストマ等で被覆されている場合もある。また、第1,第2のテンションメンバ31,42はFRP(ガラス繊維強化プラスチック)等によって形成されている。
【0031】
また、外被21には、クマゼミ対策が施されている。クマゼミは枯れ木に産卵するという習性があり、ケーブル部の外被にノッチが設けられていると、このノッチを枯れ木と勘違いしたクマゼミが産卵の際に産卵管をノッチ内に挿入することにより、ノッチの先に配置されている光ファイバ心線を断線させてしまうことが知られている。そこで、本実施形態においては、外被21の断面におけるその中心部の両側に設けられて連結部52を形成するV字状の第1,第2のノッチ(後述する第1の光ファイバユニット30と第2の光ファイバユニット40とを分離するためのノッチ)22A,22Bと、略矩形の断面形状における外被21の四隅の角部から断面中心に向けて形成された長溝状の第3,第4のノッチ23A,23Bと、同様にして外被21の追加の角部から断面中心に向けて設けられた長溝状の第5,第6のノッチ24A,24Bとを設けている。
【0032】
第3,第4,第5,第6のノッチ23A,23B,24A,24Bは、第1,第2の光ファイバ心線32,41を取り出すための引き出し用ノッチであり、その先端側はそれぞれ第1,第2の光ファイバ心線32,41の近傍へ至る形状とされ、この引き出し用ノッチに沿って外被21を引き剥がすことによって、第1,第2の光ファイバ心線32,41を引き出すことができる。そして、第1,第2の光ファイバ心線32,41を引き出す際には第1,第2の光ファイバ心線32,41はそれぞれ外被21に覆われていることから従来の光ドロップケーブルのように光ファイバ心線が剥き出しなることがなく、従って、中間後分岐した第2の光ファイバユニット40をそのまま引き落とすことができ、いちいち光ファイバ心線41を引き落とすために図示しない光ファイバケーブルと接続する必要がない。そのため引き落とし作業を極めて簡便に行うことが可能となる。
【0033】
ここで、第3,第4,第5,第6のノッチ23A,23B,24A,24Bは、その延長線上に第1,第2の光ファイバ心線32,41が存在することなく、且つ、第1,第2の光ファイバ心線32,41の近傍に達するようにして形成されている。また、第3,第4のノッチ23A,23B及び第5,第6のノッチ24A,24Bの先端側はそれぞれ第1,第2の光ファイバ心線32,41の方向を向くように屈折して形成されている。これにより、クマゼミの産卵管が第3,第4のノッチ23A,23B又は第5,第6のノッチ24A,24Bに挿入されてそのまま外被21内に進入したとしても、その延長線上には第1,第2の光ファイバ心線32,41が配置されていないので、それによって第1,第2の光ファイバ心線32,41が断線事故を招くおそれがない。
【0034】
[光ドロップケーブルの使用方法]
次に、上述した光ドロップケーブル1の使用方法について説明する。本実施形態に係る光ドロップケーブル1は、図5に示したように、ドロップクロージャから個別に各加入者宅へ引落すために用いることも、図6に示したように、第1,第2の光ファイバ心線32,41により2軒の加入者宅へ引落すために用いることができる。そして、第1の光ファイバ心線32と第2の光ファイバ心線41とを分離する必要がある場合、ドロップセパレータと称する工具の所定部分にケーブル部20を位置決めし、その第1,第2のノッチ22A,22Bにドロップセパレータの上刃と下刃を当ててレバーを握ることにより第1の光ファイバユニット30と第2の光ファイバユニット40とが分離し、これによって第1の光ファイバユニット30と第2の光ファイバユニット40とを異なる2軒の加入者宅へ引落すことができる。その際、中間後分岐した第2の光ファイバユニット40はそのまま引き落とすことができ、光ファイバ心線41を他の光ファイバケーブルと接続する必要がない。
【0035】
また、光ドロップケーブル1には、上述したように支持線部10の被覆部材12の外表面に識別標識13が印刷され及び/又は識別標識13と識別標識13との間に着色部15が設けられている。この光ドロップケーブル1は、図5に示したように、螺旋ハンガー114に装架されているが、加入者が増加した場合には、螺旋ハンガー114にさらに別の光ドロップケーブルを螺旋ハンガー114に装架して新たな加入者宅へ光ファイバ心線の引落しを行う場合、事前に布設工事の作業者は光ドロップケーブル1に印刷されている識別標識13や着色部15の色を確認する。識別標識13や着色部15の色に基づいて引落しを行おうとしている2つ目の光ドロップケーブルであることが確認できたなら、その光ドロップケーブルから光ファイバ心線の引落しを実施する。
【0036】
また、光ファイバの加入者が増え、光ドロップケーブル1の追い張りだけでは対処できない場合、その部分には別途多心の光ケーブルを布設し、以前より布設されていた光ドロップケーブルは取り外され、取り外された光ドロップケーブルは廃棄処分される。この場合、廃棄は不法投棄されることなく、適正に処分されなければならない。万一、光ドロップケーブル1が不法投棄された場合でも、識別標識13や着色部15が設けられていることにより、そのシリアル番号等によって、どの場所に布設されていた光ドロップケープルであるか、どの工事業者が取り外し作業を行い廃棄したものであるかを容易に特定することが可能となる。従って、光ドロップケーブル1の動向を追跡調査することが可能となることから不法投棄に対する抑止効果が発揮されて不法投棄の未然防止に大いに役立つこととなる。
【0037】
[効果]
上述した光ドロップケーブル1によれば、光ファイバユニット30,40を分岐しても第1,第2の光ファイバ心線32,41はそれぞれ外被21に被覆されているのでそのまま引き落とすことができると共に、布設された光ドロップケーブル1を特定するための固有の識別標識13や着色部15により、個々の光ドロップケーブルを容易に識別することができ、これにより引落し作業を確実かつ迅速に行えるという効果がある。
【0038】
また、交換等により既設の光ドロップケーブル1を取り外して廃棄処分とする場合でも、識別標識13や着色部15に基づいてその布設場所、工事業者、廃棄処分担当業者等を容易に追跡して特定できるので、不法投棄等を未然に防止できるという効果がある。
【0039】
本発明に係る好ましい実施形態
[光ドロップケーブルの構成]
次に、本発明に係る光ドロップケーブルの好ましい一実施形態について説明する。図4は、本発明に係る光ドロップケーブルの好ましい一実施形態を示す斜視図である。この光ドロップケーブル2は、上述した実施形態の光ドロップケーブル1において、第1,第2のテンションメンバ31,42を略矩形断面における外被21(本実施形態においても、上述した識別標識13が側面に設けられている)の対角位置に配置すると共に、第1,第2の光ファイバ心線32,41を第1,第2のテンションメンバ31,42に対して外被21の高さ方向(図4における上下方向)の内側に配置し、第1,第2の光ファイバユニット30,40の相互間の境界に沿って光ドロップケーブル2の略矩形の断面形状における外被21の四隅のうちの対向する2つの角部から断面中心に向けて斜めに第9,第10のノッチ(第1,第2の光ファイバユニット30,40の分離用ノッチ)26A,26Bを形成すると共に、第9,第10のノッチ26A,26Bの間には連結部28を形成し、更に第1,第2の光ファイバ心線32,41を挟んでそれぞれ対向する位置の外被21の側面と第9,第10のノッチ26A,26Bの内側面にはそれぞれ断面V字状の心線引き出し用ノッチであるV字状の第11,12のノッチ27A,27B及び第7,第8のノッチ25A,25Bを形成したものであり、その他の構成は上述の実施形態とほぼ同様である。
【0040】
尚、第9,第10のノッチ26A,26Bによって図4における左側に位置する第1の光ファイバユニット30が形成され、図4における右側に位置する第2の光ファイバユニット40が形成されている。そして、第1,第2の光ファイバ心線32,41は、第1,第2の光ファイバユニット30,40が分離された後も剥き出しにならないように外被21で被覆された状態で第1,第2の光ファイバユニット30,40内に配置されており、中間後分岐した第2の光ファイバユニット40をそのまま引き落とすことができ、いちいち光ファイバ心線41を引き落とすために図示しない光ファイバケーブルと接続する必要がないという点は上述の実施形態と同様である。
【0041】
第1,第2の光ファイバユニット30,40に設けられた第1,第2のテンションメンバ31,42及び第1,第2の光ファイバ心線32,41は互いに偏心して配置され、分離用ノッチによって分けられる各光ファイバユニットは断面形状が略三角形を有し、分離用ノッチである第9,第10のノッチ26A,26Bの先端に形成された連結部28によって一体化されている。したがって、第9,第10のノッチ26A,26Bで第1の光ファイバユニット30と第2の光ファイバユニット40とを分離することによって第11,第12のノッチ25A,25Bを境にして各光ファイバユニット30,40を二つに折ることが容易になるので、容易に第1,第2の光ファイバ心線32,41の方向に向けて亀裂を入れることができる。
【0042】
図4において、光ドロップケーブル2は、第1の光ファイバユニット30に対して第2の光ファイバユニット40を手で捩じるか専用の工具によって連結部28を切断することにより第1の光ファイバユニット30から第2の光ファイバユニット40を分離することができる。また、第7のノッチ25Aから第11のノッチ27Aにかけて手で力を付与するか専用の工具によって外被21を切断すると、第1の光ファイバ心線32を引き出すことができる。同様にして、第8のノッチ25Bから第12のノッチ27Bにかけて手で力を付与するか又は専用の工具によって外被21を切断すると、第2の光ファイバ心線41を引き出すことができる。また、手で力を付与するか専用の工具によって接続部51を切断すると、支持線部10とケーブル部20とを分離することができる。尚、本実施形態の光ドロップケーブルの布設方法等は、上述した実施形態とほぼ同様であるので、その説明は省略する。
【0043】
本発明に係る好ましい実施形態の効果]
本発明に係る好ましい実施形態の光ドロップケーブルによれば、上述した実施形態の光ドロップケーブルに比べ、ノッチ数を少なくできると共に、第1の光ファイバユニット30と第2の光ファイバユニット40の分離位置及び第1,第2の光ファイバ心線32,41の引き出し位置をより明確にすることができるという効果がある。その他は上述した実施形態と同様の効果を有している。
【0044】
以上のように、本発明に係る好ましい実施形態について説明したが、本発明に係る光ドロップケーブルは、その形状にかかわらず並設して布設される光ドロップケーブルの全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 光ドロップケーブル
2 光ドロップケーブル
10 支持線部
11 支持線
12 被覆部材
13 識別標識
15 着色部
20 ケーブル部
21 外被
22A 第1のノッチ
22B 第2のノッチ
23A 第3のノッチ
23B 第4のノッチ
24A 第5のノッチ
24B 第6のノッチ
25A 第7のノッチ
25B 第8のノッチ
26A 第9のノッチ
26B 第10のノッチ
27A 第11のノッチ
27B 第12のノッチ
28 連結部
30 第1の光ファイバユニット
31 第1のテンションメンバ
32 第1の光ファイバ心線
40 第2の光ファイバユニット
41 第2の光ファイバ心線
42 第2のテンションメンバ
51 接続部
52 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線とテンションメンバとを外皮で被覆した光ファイバユニットを前記光ファイバ心線同士が相対するようにして複数並列して配置してなる光ドロップケーブルであって、前記外皮は複数の前記光ファイバユニットを一体に被覆すると共に、さらに支持線と結合されて形成された光ドロップケーブルにおいて、
前記光ドロップケーブルは、それぞれの前記光ファイバユニット相互間の境界に沿って前記光ドロップケーブルの略矩形の断面形状における前記外被の四隅のうちの対向する2つの角部から断面中心に向けて斜めに形成されると共に、分離後の各前記光ファイバユニットに配置された光ファイバ心線が剥き出しにならないように前記外被で被覆された状態で各前記光ファイバユニットを互いに分離可能に形成された分離用ノッチと、
各前記光ファイバ心線を挟んで対向する位置の前記外被の側面及び前記分離用ノッチの内側面にそれぞれ形成された心線引き出し用ノッチと、
を備え、
同じ場所に後から布設される追加の光ドロップケーブルとの識別を可能とするため前記光ドロップケーブルの表面に当該光ドロップケーブルの長手方向に沿って前記追加の光ドロップケーブルと識別するための識別標識を一定間隔ごとに表記したことを特徴とする光ドロップケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載の光ドロップケーブルにおいて、
前記識別標識は、
当該光ドロップケーブルの製造年と、
一端からの距離を一定の間隔ごとに表記したケーブル長さと、
固有の識別記号であるシリアル番号と、
を含むことを特徴とする光ドロップケーブル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光ドロップケーブルにおいて、
前記識別標識は、さらに、当該光ドロップケーブルの種別、メーカ名、前記被覆材の材質の少なくとも1つを含むことを特徴とする光ドロップケーブル。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の光ドロップケーブルにおいて、
前記識別標識を適宜の色で表記することによりその色によって他の光ドロップケーブルとの識別可能としたことを特徴とする光ドロップケーブル。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の光ドロップケーブルにおいて、
一定間隔ごとに表記された識別標識と識別標識との間の何も表記がなされていない前記光ドロップケーブルの表面を適宜の色で塗り分けることによりその色によって他の光ドロップケーブルとの識別可能としたことを特徴とする光ドロップケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−3222(P2012−3222A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254519(P2010−254519)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【分割の表示】特願2010−135722(P2010−135722)の分割
【原出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【特許番号】特許第4689764号(P4689764)
【特許公報発行日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(591160268)北日本電線株式会社 (41)
【Fターム(参考)】