説明

光バリア素子および表示装置

【課題】光むらの発生を抑制することが可能な液晶バリアを提供する。
【解決手段】液晶バリア10は、透明基板13A,13B間に封止され、光を透過または遮断することが可能な複数の開閉部11,12を有する液晶層14と、透明基板13A,13B間において開閉部11,12同士の非境界部分に設けられ、液晶層14の厚みを制御するスペーサ16とを備える。開閉部11,12には個々に電極が配設されるが、その境界部Sでは、電極のエッジの影響を受けて液晶層14の配向が乱れ易い。スペーサ16が、境界部Sのような配向乱れが生じた箇所に設けられると、その近傍において光抜けが生じ易くなる。境界部Sを避けてスペーサ16を設けることにより、そのような配向乱れによる局所的な透過率変化(例えば、黒表示の際に、スペーサ近傍において光が抜け、その部分が白っぽく表示される現象)が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体視表示が可能な表示装置、およびそのような表示装置に用いられる光バリア素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、立体視表示を実現できる表示装置(立体表示装置)が注目を集めている。立体視表示は、互いに視差のある(視点の異なる)左眼用映像と右眼用映像を表示するものであり、観察者が左右の眼でそれぞれを見ることにより奥行きのある立体的な映像として認識することができる。また、互いに視差がある3つ以上の映像を表示することにより、観察者に対してより自然な立体映像を提供することが可能な表示装置も開発されている。
【0003】
このような立体表示装置は、専用の眼鏡が必要なものと、不要なものとに大別されるが、観察者にとっては専用の眼鏡は煩わしく感じるものであり、専用の眼鏡が不要なものが望まれている。専用の眼鏡が不要な表示装置としては、例えば、レンチキュラーレンズ方式や、視差バリア(パララックスバリア)方式などがある。
【0004】
これらのうちパララックスバリア方式によるものは、例えば液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)を利用して、上記のような左眼用映像および右眼用映像を空間分割的に表示し、この表示面に所定のバリア(例えば、特許文献1参照)を設けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−119889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記バリアは、通常、光を透過または遮断する複数の開閉部を有しており、例えば透過状態の開閉部(透光部)と遮断状態の開閉部(遮光部)とを交互に配置することにより、表示映像を様々な視点方向に分離するようになっている。このようなバリアとしては、2枚の基板間に電極を介して液晶層を封止したもの(液晶セル)が用いられ、例えば一方の基板側の電極が、個別に電圧を供給可能な複数のサブ電極に分割されている。これら複数のサブ電極に対応する各領域が、1つの開閉部として機能するようになっている。このようなバリアでは、2枚の基板間において、上記液晶層の厚み(セルギャップ)を制御するためのスペーサが挿設される。
【0007】
一方、近年では、上記のような立体視用の表示装置においても大型化が要求されている。これに伴って、バリアも大型であることが求められるが、このような大型のバリアを作製するためには、セルギャップを保持するために、上記スペーサを複数の箇所に配設する必要が生じる。
【0008】
ところが、液晶層へ電圧を供給するための電極は、上記のように複数のサブ電極に分割されているため、液晶層では、各サブ電極のエッジの影響を受けて、斜め電界が発生する。このため、任意の箇所にスペーサを配設した場合、配設した箇所によっては、その斜め電界の影響を受けて配向に乱れが生じてしまう。このような配向乱れは、例えばノーマリーホワイトモードでは、黒表示の際の光抜けむら(スペーサの配置された箇所とその近傍において光が透過してしまい、その部分がより白っぽく表示される現象)を起こす要因となる。このように、局所的な領域において光透過率が他の領域と異なってしまう現象(以下、単に「光むら」という)が発生するという問題がある。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、光むらの発生を抑制することが可能な立体視用の光バリア素子および表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の光バリア素子は、一対の基板間に封止され、光を透過または遮断することが可能な複数のサブ領域を有する液晶層と、一対の基板間におけるサブ領域同士の非境界部分に設けられたスペーサとを備えたものである。
【0011】
本発明の表示装置は、表示部と、上記本発明の光バリア素子とを備えたものである。
【0012】
本発明の光バリア素子では、一対の基板間に、光を透過または遮断可能な複数のサブ領域を有する液晶層が封止されると共に、それらのサブ領域同士の非境界部分に、スペーサが設けられている。ここで、サブ領域には個々に電極が配設されることが多いが、サブ領域同士の境界部分では、例えばその電極のエッジの影響を受けて液晶層の配向に乱れが生じ易い。スペーサが、そのような境界部分に設けられると、スペーサの周囲においてより大きな配向乱れが生じ易い。上記のように、サブ領域同士の境界部分を避けて、即ち非境界部分にスペーサを設けることにより、そのような配向乱れによる局所的な透過率変化(例えば、黒表示の際に、スペーサの近傍において光が抜け過ぎてしまい、その部分が白っぽく表示される現象)が抑制される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光バリア素子によれば、一対の基板間に、光を透過または遮断可能な複数のサブ領域を有する液晶層を封止し、各サブ領域の非境界部分にスペーサを設けるようにしたので、スペーサの設置に起因する透過率変化、例えば黒表示の際の光抜け等を抑制できる。よって、光むらの発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一の実施の形態に係る立体表示装置の一構成例を表すブロック図である。
【図2】図1に示した立体表示装置の一構成例を表す説明図である。
【図3】図1に示した表示部および表示駆動部の一構成例を表す説明図である。
【図4】図3に示した画素回路の一構成例および画素の断面構成例を表す説明図である。
【図5】図1に示した液晶バリアにおける開閉部の一構成例を表す説明図である。
【図6】図1に示した液晶バリアの断面構成例および平面構成例を表す模式図である。
【図7】図1に示した液晶バリアにおける透過状態および遮断状態の液晶層の配向の一例を表す説明図である。
【図8】図1に示した液晶バリアの立体視表示の一動作例を表す模式図である。
【図9】図1に示した表示部および液晶バリアの一動作例を表す模式図である。
【図10】図1に示した表示部および液晶バリアの一動作例を表す他の模式図である。
【図11】比較例に係る液晶バリアの断面構成例および平面構成例を表す模式図である。
【図12】比較例および実施例1におけるスペーサの配置と各構成要素の寸法を表した模式図である。
【図13】黒表示時における電極境界付近の等電位分布(スペーサなし)を表す特性図である。
【図14】比較例に係る黒表示時における等電位分布(電極境界部分にスペーサあり)を表す特性図である。
【図15】実施例1に係る黒表示時における等電位分布(電極非境界部分にスペーサあり)を表す特性図である。
【図16】変形例に係る液晶バリアの断面構成例および平面構成例を表す模式図である。
【図17】実施例2におけるスペーサの配置と各構成要素の寸法を表した模式図である。
【図18】実施例2に係る黒表示時における等電位分布を表す特性図である。
【図19】他の変形例に係る液晶バリアにおける開閉部の構成を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。尚、説明は以下の順序で行う。

1.実施の形態(白表示用の電極上にスペーサが設けられた液晶バリアの例)
2.変形例(電極非形成領域(常時透過領域)にスペーサが設けられた液晶バリアの例)
【0016】
[全体構成]
図1は、本発明の実施の形態に係る立体表示装置(立体表示装置1)の一構成例を表すものである。立体表示装置1は、ここでは、立体視表示および通常表示(2次元表示)の双方を実現可能な表示装置である。この立体表示装置1は、制御部40と、表示駆動部50と、表示部20と、バックライト駆動部29と、バックライト30と、バリア駆動部9と、液晶バリア10(光バリア部,光バリア素子)とを備えている。
【0017】
制御部40は、外部より供給される映像信号Vdispに基づいて、表示駆動部50、バックライト駆動部29、およびバリア駆動部9に対してそれぞれ制御信号を供給し、これらがお互いに同期して動作するように制御する回路である。具体的には、制御部40は、表示駆動部50に対して映像信号Vdispに基づく映像信号Sを供給し、バックライト駆動部29に対してバックライト制御命令を供給し、バリア駆動部9に対してバリア制御命令を供給するようになっている。ここで、映像信号Sは、立体表示装置1が立体視表示を行う場合に、後述するように、それぞれが複数(この例では6つ)の視点映像を含む映像信号SA,SBから構成されるものである。
【0018】
表示駆動部50は、制御部40から供給される映像信号Sに基づいて表示部20を駆動するものである。表示部20は、液晶素子を駆動して、バックライト30から射出した光を変調することにより表示を行うものである。
【0019】
バックライト駆動部29は、制御部40から供給されるバックライト制御信号に基づいてバックライト30を駆動するものである。バックライト30は、表示部20に対して面発光した光を射出する機能を有している。
【0020】
バリア駆動部9は、制御部40から供給されるバリア制御命令に基づいて液晶バリア10を駆動するものである。液晶バリア10は、それぞれが光を透過または遮断する複数の開閉部11,12(後述)を有しており、ここでは表示部20から出射された映像光を、所定の方向に向けて分割する機能を有している。
【0021】
図2は、立体表示装置1の要部の一構成例を表すものであり、(A)は立体表示装置1の斜視構成を示し、(B)は立体表示装置1の側面構成を示す。図2に示したように、立体表示装置1では、バックライト30側から順に、表示部20および液晶バリア10が配置されている。つまり、バックライト30から射出した光は、表示部20および液晶バリア10を順に透過して、観察者に届くようになっている。尚、表示部20と液晶バリア10とは、接着されていてもよいし、そうでなくともよい。
【0022】
(表示駆動部50および表示部20)
図3は、表示駆動部50および表示部20のブロック図の一例を表すものである。画素Pixは、表示部20において、マトリクス状に配置されている。表示駆動部50は、タイミング制御部51と、ゲートドライバ52と、データドライバ53とを備えている。タイミング制御部51は、ゲートドライバ52およびデータドライバ53の駆動タイミングを制御するとともに、制御部40から供給された映像信号Sを映像信号S1としてデータドライバ53へ供給するものである。ゲートドライバ52は、タイミング制御部51によるタイミング制御に従って、液晶表示デバイス45内の画素Pix(後述)を行ごとに順次選択して、線順次走査するものである。データドライバ53は、表示部20の各画素Pixへ、映像信号S1に基づく画素信号を供給するものである。具体的には、データドライバ53は、映像信号S1に基づいてD/A(デジタル/アナログ)変換を行うことにより、アナログ信号である画素信号を生成し、各画素Pixへ供給するようになっている。
【0023】
表示部20は、例えばガラスなどから構成される2枚の透明基板の間に液晶材料を封入したものである。これらの透明基板の液晶材料に面した部分には、例えばITO(Indium Tin Oxide)などから構成される透明電極が形成され、液晶材料とともに画素Pixを構成している。この表示部20における液晶材料としては、例えばネマチック液晶を用いたVAモード、IPSモードおよびTNモード等の液晶が用いられる。以下、この表示部20(画素Pix)の構成について詳述する。
【0024】
図4(A)は、画素Pixの回路図の一例を表すものである。画素Pixは、TFT(Thin Film Transistor)素子Trと、液晶素子LCと、保持容量素子Cとを備えている。TFT素子Trは、例えばMOS−FET(Metal Oxide Semiconductor-Field Effect Transistor)によりなり、ゲートがゲート線Gに接続され、ソースがデータ線Dに接続され、ドレインが液晶素子LCの一端と保持容量素子Cの一端に接続されている。液晶素子LCは、一端がTFT素子Trのドレインに接続され、他端は接地されている。保持容量素子Cは、一端がTFT素子Trのドレインに接続され、他端は保持容量線Csに接続されている。ゲート線Gはゲートドライバ52に接続され、データ線Dはデータドライバ53に接続されている。
【0025】
図4(B)は、画素Pixを含む表示部20の断面構成を表すものである。このように表示部20は、断面でみると、駆動基板201と対向基板205との間に、液晶層203を封止したものである。駆動基板201は、上記TFT素子Trを含む画素駆動回路が形成されたものであり、この駆動基板201上には、画素Pix毎に画素電極202が配設されている。対向基板205には、図示しないカラーフィルタやブラックマトリクスが形成されており、更に液晶層203側の面には、対向電極204が各画素Pixに共通の電極として配設されている。表示部20の光入射側(ここでは、バックライト30側)および光出射側(ここでは、液晶バリア10側)には、偏光板206a,206bが、互いにクロスニコルまたはパラレルニコルとなるように貼り合わせられている。
【0026】
(バックライト30)
バックライト30は、例えば導光板の側面に例えばLED(Light Emitting Diode)を配設してなるものである。バックライト30は、あるいは、複数本のCCFL(Cold Cathode Fluorescent Lamp)等を配列させたものであってもよい。
【0027】
(液晶バリア10)
図5は、液晶バリア10における開閉部の配置構成を表すものである。図6(A)は、液晶バリア10の断面構成を表し、図6(B)は、透明電極層15aとスペーサ16との配置関係を表すXY平面模式図である。
【0028】
液晶バリア10は、いわゆるパララックスバリアであり、図5に示したように、光を透過または遮断する複数の開閉部11(第2のサブ領域),開閉部12(第1のサブ領域)を有している。これらの開閉部11,12は、立体表示装置1が通常表示(2次元表示)および立体視表示のどちらを行うかにより、異なる動作を行う。具体的には、開閉部11は、後述するように、通常表示の際には開放状態(透過状態)になり、立体視表示を行う際には、閉状態(遮断状態)となるものである。開閉部12は、後述するように、通常表示の際には開放状態(透過状態)、立体視表示の際には、時分割的に開閉動作を行うものである。これらの開閉部11,12はそれぞれ複数、交互に設けられており、例えば、複数の開閉部11,12のうちの選択的な開閉部からなるグループ毎に駆動したり、また、そのようなグループ毎の駆動を時分割的に行うことができるようになっている。
【0029】
これらの開閉部11および開閉部12は、境界部Sを隔てて、XY平面における一方向(ここでは、例えば水平方向Xから所定の角度θをなす方向)に延在して設けられている。開閉部11,12の幅E1,E2は、互いに異なっており、ここでは例えばE1>E2となっている。但し、開閉部11,12の幅の大小関係はこれに限定されず、E1<E2であってもよく、また、E1=E2であってもよい。境界部Sは、例えば、後述のサブ電極15a1,15a2間の溝(スリット)に対応する部分である。このような開閉部11,12は、液晶層(後述の液晶層14)を含んで構成されており、この液晶層14への駆動電圧によって、開閉が切り替わるようになっている。
【0030】
具体的には、液晶バリア10は、図6(A)に示したように、例えばガラス等からなる透明基板13Aと透明基板13Bとの間に液晶層14を備えたものである。透明基板13A,13Bのうち、透明基板13Aが光入射側、透明基板13Bが光出射側に配置されるようになっている。透明基板13Aの液晶層14側の面、および透明基板13Bの液晶層14側の面には、例えばITOなどからなる透明電極層15a,15bがそれぞれ形成されている。透明基板13Aの光入射側および透明基板13Bの光出射側には、偏光板18a,18bが貼り合わせられている。以下、各部の構成について詳述する。
【0031】
液晶層14は、例えばTNモードの液晶(TN液晶)からなる。本実施の形態では、この液晶層14が、ノーマリーホワイトモードで駆動される場合を例に挙げて説明する。例えば、駆動電圧を印加していない状態(図7(A))では光を透過し(白表示となり)、駆動電圧を印加した状態(図7(B))では光を遮断する(黒表示となる)ものとする。詳細には、駆動電圧を印加していない白表示時には、液晶分子のダイレクタが、光入射側と光出射側との間で互いに直交しており、液晶層14の厚み方向に沿って回転しながら向きを変えて配列している。一方、駆動電圧を印加した黒表示時には、液晶分子のダイレクタが、液晶層14の厚み方向に沿うように配列するようになっている。
【0032】
透明電極層15a,15bは、少なくとも一方が、個々に電圧を供給可能な複数のサブ電極に分割されている。例えば、透明電極層15aが複数のサブ電極15a1,15a22に分割され、透明電極層15bが各サブ電極15a1,15a2に共通の電極として設けられている。サブ電極15a1,15a2にそれぞれ対応する領域が、開閉部11,12となっており、かつ本発明におけるサブ領域に相当する。このような構成により、液晶層14の選択的な領域にのみ電圧が印加され、開閉部11,12毎の透過(白表示)および遮断(黒表示)の切り替えが行われるようになっている。これらの透明電極層15a,15bの液晶層14側の面には、図示しない配向膜が形成されている。
【0033】
偏光板18a,18bは、液晶層14への入射光および出射光の各偏光方向を制御するものである。これらの偏光板18a,18bの各吸収軸は、例えば液晶層14にTN液晶を用いた場合、互いに直交するように配置される。
【0034】
(スペーサ16の配置)
このような液晶バリア10では、透明基板13A,13B間に、液晶層14の厚みを制御するスペーサ16が挿設されている。スペーサ16は、例えばフォトレジスト等の樹脂よりなり、例えば円柱等の柱形状に成型されている。このスペーサ16は、図6(A),(B)に示したように、液晶バリア10のXY平面における複数の選択的な領域、具体的には、境界部Sを除いた領域(開閉部11,12の非境界部分)に設けられている。本実施の形態では、各スペーサ16が、サブ電極15a2上に、そのエッジ150e(端縁部)に重畳しないように(ここでは、サブ電極15a2上の中央部に)、配設されている。換言すると、各スペーサ16は、サブ電極15a1,15a2間の領域(境界部S)を跨がないように配設されている。
【0035】
このようなスペーサ16は、上記のように、境界部Sを除いた領域であれば、いずれの領域に設けられていてもよいが、望ましくは、本実施の形態のように、立体視表示の際に透過領域(白表示領域)となる開閉部12のサブ電極15a2上に設けられている。但し、これに限らず、開閉部11のサブ電極15a1上に設けられていてもよい。
【0036】
尚、本実施の形態では、開閉部11の幅E1(サブ電極15a1の幅)が、例えば50〜200μm、開閉部12の幅E2(サブ電極15a2の幅)が、例えば100〜500μmであり、境界部Sの幅は、例えば4〜20μmとなっている。スペーサ16の径(XY平面における円形状の直径)は、例えば10〜30μmとなっている。
【0037】
尚、この例では、液晶バリア10はノーマリーホワイト動作を行うものとしたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えばノーマリーブラック動作を行うものであってもよい。これらのノーマリーブラック動作とノーマリーホワイト動作の選択は、例えば、偏光板と液晶配向により設定することができる。
【0038】
バリア駆動部9は、立体視表示を行う際、複数の開閉部11,12が同じタイミングで開閉動作を行うように駆動するものである。具体的には、詳細は後述するが、バリア駆動部9は、グループAに属する複数の開閉部12と、グループBに属する複数の開閉部12とを、時分割的に交互に開閉動作するように駆動する。
【0039】
図8は、開閉部12のグループ構成例を表すものである。開閉部12は、例えば2つのグループ、具体的には、1つおきに配置された複数の開閉部12A同士がグループA、複数の開閉部12B同士がグループBをそれぞれ構成している。
【0040】
図9は、立体視表示および通常表示(2次元表示)を行う場合の液晶バリア10の状態を模式的に表すものであり、(A)は立体視表示を行う一状態を示し、(B)は立体視表示を行う他の状態を示し、(C)は通常表示を行う状態を示す。液晶バリア10には、開閉部11および開閉部12(グループAに属する開閉部12A,グループBに属する開閉部12B)が交互に配置されている。この例では、開閉部12A,12Bはそれぞれ、表示部20の6つの画素Pixに1つの割合で設けられている。以下の説明では、画素Pixが、RGB3つのサブピクセルからなるピクセルとするが、これに限定されるものではなく、例えば、画素Pixがサブピクセルであってもよい。尚、液晶バリア10において、光が遮断される部分は斜線で示している。
【0041】
立体視表示を行う場合には、表示部20において、映像信号SA,SBに基づく映像表示を時分割で行い、かつ液晶バリア10において、上記表示部20の時分割表示に同期して、開閉部12(開閉部12A,12B)を開閉する。この際、開閉部11は閉状態(遮断状態)に維持するようになっている。具体的には、詳細は後述するが、図9(A)に示したように、映像信号SAが供給された場合には、液晶バリア10では、開閉部12Aが開状態、開閉部12Bが閉状態になる。表示部20は、この開閉部12Aに対応した位置に配置された互いに隣接する6つの画素Pixに、映像信号SAに含まれる6つの視点映像を表示する。同様に、図9(B)に示したように、映像信号SBが供給された場合には、液晶バリア10では、開閉部12Bが開状態、開閉部12Aが閉状態になる。表示部20では、この開閉部12Bに対応した位置に配置された互いに隣接する6つの画素Pixに、映像信号SBに含まれる6つの視点映像を表示する。
【0042】
他方、通常表示(2次元表示)を行う場合には、図9(C)に示したように、表示部20において映像信号Sに基づく表示を行い、かつ液晶バリア10において、開閉部11および開閉部12(開閉部12A,12B)を共に開放状態(透過状態)に維持するようになっている。
【0043】
[動作および作用]
続いて、本実施の形態の立体表示装置1の動作および作用について説明する。
【0044】
(全体動作概要)
制御部40は、外部より供給される映像信号Vdispに基づいて、表示駆動部50、バックライト駆動部29、およびバリア駆動部9に対してそれぞれ制御信号を供給し、これらがお互いに同期して動作するように制御する。バックライト駆動部29は、制御部40から供給されるバックライト制御信号に基づいてバックライト30を駆動する。バックライト30は、面発光した光を表示部20に対して射出する。表示駆動部50は、制御部40から供給される映像信号Sに基づいて表示部20を駆動する。表示部20は、バックライト30から射出した光を変調することにより表示を行う。バリア駆動部9は、制御部40から供給されるバリア制御命令に基づいて液晶バリア10を駆動する。液晶バリア10は、バックライト30から射出し表示部20を透過した光を、透過または遮断する。
【0045】
(立体視表示の詳細動作)
次に、いくつかの図を参照して、立体視表示を行う場合の詳細動作を説明する。
【0046】
図10は、表示部20および液晶バリア10の動作例を表すものであり、(A)は、映像信号SAが供給された場合を示し、(B)は映像信号SBが供給された場合を示す。
【0047】
表示駆動部50は、図10(A)に示したように、映像信号SAが供給された場合には、表示部20において、互いに隣接する6つの画素Pixに、映像信号SAに含まれる6つの視点映像にそれぞれ対応する6画素分の画素情報P1〜P6を表示する。これらの画素情報P1〜P6を表示する6画素は、開閉部12A付近において隣接配置された画素とする。一方、液晶バリア10では、上述のように、開放部12Aが開放状態(透過状態)、開放部12Bが閉状態になるように制御される(開閉部11は閉状態)。これにより、表示部20の各画素Pixから出た光は、開閉部12Aにより出射角度が制限される。即ち、表示部20において空間分割的に表示された6つの視点映像が、開閉部12Aによって分離される。このようにして分離された視点映像のうち、例えば画素情報P3に基づく映像光が観察者の左眼、画素情報P4に基づく映像光が観察者の右眼においてそれぞれ観察されることで、観察者には立体的な映像として認識される。
【0048】
映像信号SBが供給された場合についても同様で、図10(B)に示したように、表示部20において、互いに隣接する6つの画素Pixに、映像信号SBに含まれる6つの視点映像にそれぞれ対応する6画素分の画素情報P1〜P6を表示する。これらの画素情報P1〜P6を表示する6画素は、開閉部12B付近において隣接配置された画素とする。一方、液晶バリア10では、上述のように、開放部12Bが開放状態(透過状態)、開放部12Aが閉状態になるように制御される(開閉部11は閉状態)。これにより、表示部20の各画素Pixから出た光は、開閉部12Bにより出射角度が制限される。即ち、表示部20において空間分割的に表示された6つの視点映像が、開閉部12Bによって分離される。このようにして分離された視点映像のうち、例えば画素情報P3に基づく映像光が観察者の左眼、画素情報P4に基づく映像光が観察者の右眼においてそれぞれ観察されることで、観察者には立体的な映像として認識される。
【0049】
このように、観察者は、左眼と右眼とで、画素情報P1〜P6のうちの異なる画素情報を見ることとなり、観察者は立体的な映像として感じることができる。また、開閉部12Aと開閉部12Bを時分割的に交互に開放して映像を表示することにより、観察者は、互いにずれた位置に表示される映像を平均化して見ることとなる。このため、立体表示装置1は、複数の開閉部12をグループ分けせずに一括駆動する場合に比べ、2倍の解像度を実現することが可能となる。言い換えれば、立体表示装置1の解像度は、2次元表示の場合に比べ1/3(=1/6×2)で済むこととなる。
【0050】
ここで、上記のような開閉部11,12を有する液晶バリア10は、透明基板13A,13B間に液晶層14を封止したものであり、開閉部11,12に対応する各領域へ個々に電圧を印加することによって、光の透過および遮断が切り替えられる。そのため、液晶層14へ電圧を印加するための透明電極層15a,15bのうち透明電極層15aが、複数のサブ電極15a1,15a2に分割されている。また、このような構造において、液晶層14の厚みを制御するためのスペーサ16が、複数の所定の領域に配設されている。以下、このスペーサ16の配設箇所による作用について、比較例を挙げて説明する。
【0051】
(比較例)
図11(A),(B)は、比較例に係る液晶バリア(液晶バリア100)の断面構成およびスペーサの配置構成について表したものである。液晶バリア100は、本実施の形態と同様、透明基板101A,101B間に液晶層103を封止したものであり、液晶層103へ電圧を印加するための透明電極層102a,102bを有している。透明基板101Aの光入射側には偏光板105a、透明基板101Bの光出射側には偏光板105bが貼り合わせられている。また、これらの透明電極層102a,102bのうち透明電極層102bは、複数の透明電極111,112に分割されており、各透明電極111,112に対応する領域が、開閉部となっている。このような構造において、透明基板101A,101B間には、液晶層103の厚みを制御するためのスペーサ104が挿設されている。但し、この比較例の液晶バリア100では、スペーサ104が、透明電極111,112間の領域に跨るように、即ち境界部Sに配設されている。
【0052】
ところが、境界部Sにスペーサ104を配設すると、透明電極111,112のエッジの影響を受けて(具体的には、斜め電界の発生により)液晶層103の配向が大きく乱れ易い。例えば、液晶層104がノーマリーホワイトモードにより駆動される場合には、透明電極112(または透明電極111)に対応する領域に電圧を印加して黒表示を行うが、この際、スペーサ104の近傍領域では、液晶が所望の方向へ配向せず、余計に光を透過してしまう部分が生じる。このため、スペーサ104の近傍において光が抜け過ぎてしまい、その部分がより白っぽく表示されてしまう。
【0053】
これに対し、本実施の形態では、スペーサ16が、境界部Sを除いた領域、即ち非境界部分に設けられている。即ち、サブ電極15a2上の配向の安定した領域にスペーサ16が配設されているため、比較例のようなスペーサの設置に起因する透過率変化が抑制される。
【0054】
(実施例)
ここで、比較例のようにスペーサ104を境界部Sに配置した場合と、本実施の形態のようにスペーサ16を非境界部分(サブ電極15a2上)に配置した場合(実施例1)の各場合において、液晶層内の電界分布と配向状態についてシミュレーションを行った。この際、比較例では、図12(A)に示したように、スペーサ104を境界部Sの直上に配設し、境界部Sの幅を8μm、スペーサ104の径を20μmとした。一方、実施例1では、図12(B)に示したように、スペーサ16をサブ電極15a2上の中央部に配設し、境界部Sの幅を8μm、スペーサ16の径を20μm、サブ電極15a2の幅(E2)を50μmとした。また、比較例および実施例1のいずれにおいても、液晶層の厚み(スペーサの高さ)は3.5μmとした。
【0055】
このようにして計算した比較例の等電位分布を図14(A)、液晶の配向の様子を図14(B)に示す。実施例1の等電位分布を図15(A)、液晶の配向の様子を図15(B)に示す。また、図13(A),(B)には、境界部Sの近傍における等電位分布と液晶の配向の様子を示す。尚、図13(A),(B)は、図12(A)の線X1に沿った境界部S付近における断面、図14(A),(B)は、線X2に沿った境界部S付近の断面に相当する。図15(A),(B)は、図12(B)の線X3に沿った開閉部12(サブ電極15a2に対応する領域)の断面に相当する。また、色の変化は電位の変化を表しており、青色の部分が最も低電位(ここでは、0V)、赤色の部分が最も高電位(ここでは、7V)となっており、青から緑、黄、橙、赤の順に徐々に電位が高くなっていることを示している。
【0056】
図13(A),(B)に示したように、境界部Sに対応する領域では、電極のエッジの影響を受けて、斜め電界が生じ、液晶分子が十分に立っておらず、液晶の配向が乱れていることがわかる。そのため、比較例のように、境界部Sにスペーサ104を配置してしまうと、図14(A),(B)に示したような電界分布、液晶配向となる。このため、境界部Sに対応する領域(図12(A)の線Y1に沿った断面)では、図13(A)に示した電界分布と図14(A)に示した電界分布とが混在することとなる。このため、液晶の配向においても、図13(B)に示した配向状態と図14(B)に示した配向状態とが、スペーサ104の周囲に混在することとなる。従って、スペーサ104の近傍において、液晶の配向がより不安定となり、これによって、境界部Sとスペーサ104の近傍領域において、光抜けが生じ易くなる。尚、図14(A),(B)において、符号104Dは、スペーサ104が配置されている領域を表している。
【0057】
一方、実施例1では、電界分布がフラットなサブ電極15a2上にスペーサ16を配置しているため、図15(A),(B)に示したように、配向乱れは発生しない。また、これにより、線X3に沿った断面と、線Y2に沿った断面において、電界分布が対称となるため、液晶の配向が安定化する。尚、図15(A),(B)において、符号16Dは、スペーサ16が配置されている領域を表している。このように、スペーサ16を開閉部11,12の非境界部分に配置した本実施の形態では、スペーサの設置に起因する液晶の配向乱れが生じず、それに伴う透過率変化が抑制されることがわかる。
【0058】
また、スペーサ16が、サブ電極15a2上に設けられていることにより、即ち、立体視表示の際に白表示となる開閉部12に設けられていることにより、次のような効果を生じる。即ち、スペーサ16は、その周囲の液晶の配向へ影響するため、スペーサ16の周囲では光抜けが生じ、十分な黒表示とならない。従って、スペーサ16が、黒表示(遮断領域)として利用される開閉部11(サブ電極15a1上)ではなく、白表示(透過領域)として利用される開閉部12(サブ電極15a2上)に設けられることにより、黒表示部分における光抜けが防止される。
【0059】
この際、スペーサ16は、サブ電極15a2のエッジ150eに非重畳であることが望ましく、サブ電極15a2上の中央部に配設されていることが、より望ましい。これにより、スペーサ16がよりフラットな電界が発生する箇所に配設され、スペーサ設置による配向乱れがより生じにくくなる。
【0060】
以上のように、本実施の形態では、表示部20が複数の視点映像を空間分割的に表示し、その表示映像を、液晶バリア10の複数の開閉部11,12において透過または遮断する。これにより、例えば観察者の左右の眼において、それぞれ対応する視点画像が視認され、立体視表示がなされる。ここで、液晶バリア10において、スペーサ16を、境界部Sを除いた領域(非境界部分、ここではサブ電極15a2上)に設けることにより、電界がフラットな領域(液晶の配向が安定した領域)にスペーサ16を配設することができ、スペーサ設置に起因する透過率変化を抑制することができる。よって、光むらの発生を抑制することが可能な液晶バリア10を実現できる。
【0061】
尚、上記実施の形態では、スペーサ16を開閉部12に配設した場合を例に挙げたが、スペーサ16は、境界部Sを除く領域に設けられていればよく、即ち開閉部11に設けられていてもよい。但し、上述の理由から、黒表示となる開閉部11よりも白表示となる開閉部12にスペーサ16を配設することが望ましい。
【0062】
<変形例>
次に、上記実施の形態の変形例に係る液晶バリアについて説明する。尚、上記実施の形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0063】
(構成)
図16(A)は、変形例に係る液晶バリア(液晶バリア10a)の断面構成を表し、図16(B)は、透明電極層とスペーサとの配置関係を表すXY平面模式図である。液晶バリア10aは、上記実施の形態と同様のバックライト30および表示部20を備えた立体表示装置に用いられるパララックスバリアである。また、液晶バリア10aは、液晶層14を含んで構成されており、立体視表示の際には、光を遮断する領域と、透過する領域とが交互に形成されるように駆動されるものである。
【0064】
但し、本変形例の液晶バリア10aでは、光の透過および遮断を切り替え可能な開閉部11(第3のサブ領域)と、駆動電圧によらず常時光を透過する透過部22(第4のサブ領域)とが交互に複数配置されている。即ち、液晶バリア10aでは、開閉部11は、上記実施の形態と同様、通常表示の際には開放状態、立体視表示の際には閉状態となる一方、透過部22が、通常表示および立体視表示のいずれの場合にも開放状態となるものである。以下、このような液晶バリア10aの具体的な構成について説明する。
【0065】
液晶バリア10aは、上記実施の形態の液晶バリア10と同様、透明基板13Aと透明基板13Bとの間に液晶層14を備え、透明基板13A,13Bの液晶層14側の各面に、透明電極層19a,15bを有するものである。また、透明基板13Aの光入射側および透明基板13Bの光出射側には、偏光板18a,18bが貼り合わせられている。
【0066】
透明電極層19a,15bの少なくとも一方(ここでは透明電極層19a)は、上記実施の形態と同様、複数のサブ電極19a1に分割されている。但し、本変形例では、これらのサブ電極19a1が、開閉部11にのみ配設されており、透過部22には設けられていない。即ち、透過部22は、少なくとも一方の透明基板側に電極を有さない電極非形成領域となっている。尚、透明基板13B側の透明電極層15bについては、上記実施の形態と同様、複数のサブ電極19a1に共通の電極として形成された、いわゆるベタ電極となっている。このような構造により、開閉部11では駆動電圧の印加によって光の遮断および透過を切り替え可能となる。一方、透過部22は、液晶層14が例えばノーマリーホワイトモードで駆動される場合には、常時白表示を行う透過領域となる。
【0067】
複数の開閉部11は、透過部22に対応する所定の間隔をおいて、XY平面における一方向(ここでは、例えば水平方向Xから所定の角度θをなす方向)に延在して設けられている。尚、開閉部11,透過部22の幅は、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
【0068】
このような構造において、本変形例においても、透明基板13A,13B間に、液晶層14の厚みを制御するスペーサ16が複数挿設されている。スペーサ16は、液晶バリア10のXY平面における複数の選択的な領域、具体的には、境界部S1を除いた領域(開閉部11,透過部22の非境界部分)に設けられている。即ち、スペーサ16は、サブ電極19a1のエッジ部分を避けて(エッジ部分に重畳しないように)配設されている。具体的には、透過部22の中央部に設けられている。また、スペーサ16は、そのような境界部S1を除いた領域(開閉部11,透過部22)のうち、透過部22に配設されていることが望ましい。これは、上記実施の形態において説明したように、ノーマリーホワイトモードでは、スペーサ16の周囲では十分な黒表示が得られないため、黒表示となる領域よりも白表示となる領域に設けられることが望ましいためである。
【0069】
(作用)
本変形例では、バックライト30から射出し表示部20を透過した光が、液晶バリア10の開閉部11において遮断され、透過部22を透過することにより、視点映像が分離されて、立体視表示がなされる。本変形例では、全ての透過部22が常時透過領域となっているので、上記実施の形態のようなグループ毎の時分割表示を行うことはできないが、透過部22への電圧供給が不要であることから、電極配線を減らすことができ、構成が簡略化する。尚、2次元表示については、開閉部11を開放状態とすることにより実現される。
【0070】
ここで、上記のような液晶バリア10aは、透明基板13A,13B間に複数のスペーサ16を有するが、本変形例においても、これらのスペーサ16が、境界部S1を除いた領域に配設されている。各開閉部11には、サブ電極19a1が個々に配設されるため、境界部S1では、そのサブ電極19a1のエッジの影響を受けて、斜め電界が生じ、液晶の配向が乱れる。本変形例では、そのような配向乱れが生じている箇所を避けてスペーサ16を設置することにより、スペーサ設置による液晶の配向乱れを抑制することができる。また、常時白表示となる透過部22にスペーサ16を設けることにより、上述のように、スペーサ16そのものを透過する光によって生じる透過率変化を防止できる。よって、上記実施の形態と同等の効果を得ることが可能である。
【0071】
(実施例)
ここで、本変形例のようにスペーサ16を非境界部分(透過部22)に配置した場合(実施例2)において、液晶層内の電界分布と配向状態についてシミュレーションを行った。この際、図17に示したように、スペーサ16を透過部22に対応する領域(サブ電極19a1同士の間の領域)の中央部に配設し、スペーサ16の径を20μm、透過部22の幅を50μm、液晶層の厚み(スペーサの高さ)を3.5μmとした。
【0072】
このようにして計算した実施例2の等電位分布を図18(A)、液晶の配向の様子を図18(B)に示す。尚、図18(A),(B)は、図17の線X4に沿った透過部22の断面に相当する。また、電位と色の関係は、上記実施例1と同様であるが、透過部22は透明基板13A側に電極を有さないため、液晶層14全体が例えば0Vとなっている。このような実施例2では、常時白表示領域となる透過部22にスペーサ16を配設しているので、黒表示領域となる開閉部11における液晶の配向を乱すことがない。
【0073】
尚、上記変形例では、透過部22にスペーサ16を配設したが、スペーサ16は、この透過部22に限らず、境界部S1を避けて(サブ電極19a1のエッジ部分に重畳しないように)設けられてさえいればよく、開閉部11に設けるようにしてもよい。但し、スペーサ16は、上述のように、黒表示よりも白表示となる領域(ここでは、透過部22)に設けられることが望ましい。
【0074】
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態等では、バックライト30の側から順に、表示部20および液晶バリア10を配置したが、表示部20と液晶バリア10との配置関係はこれと逆であってもよい。即ち、バックライト30と表示部20との間に、液晶バリア10が設けられていてもよい。この場合であっても、上述したような表示部20における映像表示に同期して、液晶バリア10の開閉部において開閉動作を行うようにすれば、立体視表示を実現できる。
【0075】
また、上記実施の形態等では、液晶バリアにおいて複数の開閉部が、XY平面において斜め方向に延在する場合を例に挙げたが、開閉部の配置はこのような斜め方向に限定されない。例えば、図19に示したように、光を透過または遮断する複数の開閉部31,32が交互に、かつそれぞれがY方向に沿って延在するように設けられていてもよい。
【0076】
更に、上記実施の形態では、立体視表示の際に、液晶バリア10の複数の開閉部11,12において、開閉部11を閉状態に維持し、開閉部12を映像信号に基づいて開状態となるように駆動したが、これと逆の駆動(開閉部12を閉状態に維持し、開閉部11を映像信号に基づいて開状態にする)であってもよい。
【0077】
加えて、上記実施の形態では、高解像度を得るために、開閉部11,12のうち、開閉部12を更に2つのグループA,Bに分け、グループA,Bを時分割的に駆動するようにしたが、本発明は、このような時分割駆動による映像表示は必ならずしも必要ではない。即ち、例えば、液晶バリア10における全ての開閉部11を閉、全ての開閉部12を開となるように駆動して、視点映像を分離するようにしてもよい。あるいは逆に、開閉部12のグループ数を3つ以上にして、これら3つ以上のグループを順次駆動するようにしてもよい。
【0078】
また、上記実施の形態等では、映像信号SA,SBが6つの視点画像を含むようにしたが、これに限定されるものではなく、5つ以下または7つ以上の視点映像を含むようにしてもよい。例えば、映像信号に5つの視点画像が含まれる場合には、開閉部12は、表示部20の5つの画素Pixに1つの割合で設けるようにすればよい。但し、必ずしも、視点映像の数と、それらを表示する画素数が一致していなくともよい。即ち、例えば、隣接する複数の画素Pixに表示する画素情報が、必ずしも互いに異なる視点のものでなくともよく、同一の視点の映像についてのものを含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…立体表示装置、9…バリア駆動部、10,10a…液晶バリア、11,12,12A,12B…開閉部、13A,13B…透明基板、14…液晶層、15a,15b,19a…透明電極層、15a1,15a2,19a1…サブ電極、16…スペーサ、18a,18b…偏光板、20…表示部、29…バックライト駆動部、30…バックライト、40…制御部、50…表示駆動部、51…タイミング制御部、52…ゲートドライバ、53…データドライバ、A,B…グループ、Pix…画素、P1〜P6…画素情報、S,SA,SB,Vdisp…映像信号、Tr…TFT素子、S,S1…境界部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板間に封止され、光を透過または遮断することが可能な複数のサブ領域を有する液晶層と、
前記一対の基板間における前記サブ領域同士の非境界部分に設けられたスペーサと
を備えた光バリア素子。
【請求項2】
前記液晶層に電圧を供給するための一対の電極を備え、
前記一対の電極のうちの少なくとも一方の電極は、前記サブ領域毎にサブ電極を有し、
前記スペーサは、複数のサブ電極のうちの選択的なサブ電極上に設けられている
請求項1に記載の光バリア素子。
【請求項3】
前記複数のサブ領域は、光を透過可能な第1のサブ領域と、光を遮断可能な第2のサブ領域とを含み、
前記スペーサは、前記第1のサブ領域における前記サブ電極上に設けられている
請求項2に記載の光バリア素子。
【請求項4】
前記スペーサは、前記サブ電極の端縁部に非重畳となっている
請求項3に記載の光バリア素子。
【請求項5】
前記スペーサは、前記サブ電極上の前記端縁部から離れた中央部に設けられている
請求項4に記載の光バリア素子。
【請求項6】
前記液晶層に電圧を供給するための一対の電極を備え、
前記一対の電極のうちの少なくとも一方の電極は複数のサブ電極を有し、
前記複数のサブ電極はそれぞれ、前記複数のサブ領域のうちの選択的な第3のサブ領域にのみ設けられている
請求項1に記載の光バリア素子。
【請求項7】
前記第3の領域が光を遮断可能であり、他の選択的な第4の領域が光を透過可能である場合に、
前記スペーサは、前記第4の領域に設けられている
請求項6に記載の光バリア素子。
【請求項8】
前記スペーサは、前記第4の領域の中央部に設けられている
請求項7に記載の光バリア素子。
【請求項9】
前記液晶層は、ノーマリーホワイトモードにより駆動されるものである
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の光バリア素子。
【請求項10】
表示部と光バリア素子とを備え、
前記光バリア素子は、
一対の基板間に封止され、光を透過または遮断することが可能な複数のサブ領域を有する液晶層と、
前記一対の基板間における前記サブ領域同士の非境界部分に設けられたスペーサと
を有する表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−42821(P2012−42821A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185368(P2010−185368)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】