説明

光パケット交換システム、光パケット送信装置および光パケット交換装置

【課題】光遅延線を用いずに光パケット信号の経路切替を行う。
【解決手段】光パケット送信装置11は、クライアント信号を受信する光/電気変換部30と、クライアント信号から経路情報を抽出する経路情報抽出部33と、クライアント信号からパケット信号を生成するパケット送信処理部36と、パケット信号を光パケット信号に変換する電気/光変換部41−1〜41−10と、光パケット信号の波長λ1〜λ10とは異なる波長λ0の経路情報用光を出力し、経路情報に応じて経路情報用光のON/OFFを切り替える経路情報用光送信部42とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光パケット信号に付与された宛先情報に従って光スイッチを切り替えることにより、光パケット単位でのパケット交換を可能とする光パケット交換方式に関する。
【背景技術】
【0002】
波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)を用いた光伝送システムにおいて、波長選択スイッチ(WSS:wavelength selective switch)等を用いることで、波長単位のパス切替を行う技術が実用化されている。その次の技術として、切替を行う単位を例えばIPパケット(10GEther(10 Gigabit Ethernet(登録商標))信号等)一つ一つという細かい単位とし、各々を光パケットという形式に変換して、超高速の光スイッチで方路切り替えを行う光パケット交換方式が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
IPパケットはデータが存在しない間は有意な情報が転送されておらず、その分だけ帯域が無駄になっているが、光パケット交換方式が実現すれば、データが存在しない時間帯を別のパケットが占有できることになる。従って、光パケット交換方式は、伝送路の帯域利用効率を飛躍的に高める可能性があり、将来の技術として有望視されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−235986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光パケット交換方式は非常に有望な技術であるが、従来の光通信システムの光デバイスを用いて実現しようとする場合、問題点も存在する。
【0006】
現在提案されている光パケット交換装置は、受信した光パケット信号を光カプラで2つに分岐し、一方は光スイッチ部に入力し、他方は該光スイッチ部のON/OFFを制御する光スイッチ制御部に入力する構成が一般的である。光スイッチ制御部では、光パケット信号のヘッダを解析して経路情報を抽出し、該経路情報に基づいて光スイッチ制御信号を生成して光スイッチ部に出力する。
【0007】
ここで、光スイッチ制御部におけるヘッダの解析処理は、ある程度の時間を要する。従って、光パケット信号を光カプラから光スイッチ部に直接入力した場合、光パケット信号に対する光スイッチ制御信号の遅延が生じ、好適に光パケット信号の経路切替を行うことができない。現在提案された光パケット交換装置は、光カプラと光スイッチ部との間に光遅延線(光ファイバ)を設け、光パケット信号を遅延させることにより、好適に光パケット信号の経路切替を行うことができるようになっている。
【0008】
しかしながら、例えば、数百nsの遅延時間を稼ぐには数十mの光ファイバが必要となる。数十mの光ファイバがあると、2つの問題が発生する。一つは数十メートルの光ファイバを組み込むことにより、光パケット交換装置のサイズが大きくなる。もう一つの問題は、光ファイバによる光損失が発生するため、伝送距離に影響が出てしまう可能性がある。特に広帯域(例えば、S,L,Cバンドを複数含むような帯域の場合)のWDM通信の場合、伝送距離に与える影響が顕著になる。また、広帯域で使われる場合は、波長毎に損失レベルが違ってくるため、伝送路の設計をする際に光レベルを均一にするのが難しくなり、システム設計の難易度が高くなる可能性もある。
【0009】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、光遅延線を用いずに、または少なくとも光遅延線の長さを短くして、光パケット信号の経路切替を行うことのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の光パケット交換システムは、クライアント信号を受信するクライアント信号受信部と、クライアント信号から経路情報を抽出する経路情報抽出部と、クライアント信号からパケット信号を生成するパケット送信処理部と、パケット信号を光パケット信号に変換する電気/光変換部と、光パケット信号の波長とは異なる波長の経路情報用光を出力する光送信部であって、経路情報に応じて経路情報用光のON/OFFを切り替える光送信部と、を備える光パケット送信装置と、光パケット信号と経路情報用光とが波長多重された波長多重光信号を受信する波長多重光受信部と、波長多重光信号から経路情報用光を分岐する分岐部と、波長多重光信号の経路を切り替える光スイッチ部と、分岐部で分岐した経路情報用光のON/OFFに基づいて波長多重光信号の経路を判定し、光スイッチ部に制御信号を出力する光スイッチ制御部と、を備える光パケット交換装置と、を備える。
【0011】
光送信部は、互いに波長の異なる複数の経路情報用光を出力するよう構成されていてもよい。
【0012】
光スイッチ制御部は、経路情報用光のON/OFFと、光スイッチ部の制御パターンとを対応付けたテーブルを参照して制御信号を生成してもよい。
【0013】
パケット送信処理部は、光パケット信号の送信開始タイミングが経路情報用光の送信開始タイミングより遅延するように、パケット信号を電気/光変換部に出力するタイミングを調整してもよい。
【0014】
光パケット送信装置は、当該光パケット交換システムの回線に異常が発生した場合に発せられる警報を受信する警報受信部と、光パケット信号および経路情報用光とは波長の異なる冗長回線切替用光を出力する第2送信部であって、警報受信部にて警報が受信された場合、冗長回線切替用光のON/OFF状態を変化させる第2光送信部と、をさらに備えてもよい。光スイッチ制御部は、冗長回線切替用光のON/OFF状態の変化を検出した場合、波長多重光信号の経路を冗長回線に切り替えてもよい。
【0015】
本発明の別の態様は、光パケット送信装置である。この装置は、クライアント信号を受信するクライアント信号受信部と、クライアント信号から経路情報を抽出する経路情報抽出部と、クライアント信号からパケット信号を生成するパケット送信処理部と、パケット信号を光パケット信号に変換する電気/光変換部と、光パケット信号の波長とは異なる波長の経路情報用光を出力する光送信部であって、経路情報に応じて経路情報用光のON/OFFを切り替える光送信部と、を備える。
【0016】
本発明のさらに別の態様は、光パケット交換装置である。この装置は、光パケット信号と経路情報用光とが波長多重された波長多重光信号を受信する波長多重光受信部と、波長多重光信号から経路情報用光を分岐する分岐部と、波長多重光信号の経路を切り替える光スイッチ部と、分岐部で分岐した経路情報用光のON/OFFに基づいて波長多重光信号の経路を判定し、光スイッチ部に制御信号を出力する光スイッチ制御部と、を備える。
【0017】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を装置、方法、システム、プログラム、プログラムを格納した記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光遅延線を用いずに、または少なくとも光遅延線の長さを短くして、光パケット信号の経路切替を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】比較例に係る光パケット交換システムを示す図である。
【図2】比較例に係る光パケット送信装置の構成を示す図である。
【図3】比較例に係るEtherパケットから生成した個の光パケット信号を示す図である。
【図4】比較例に係る光パケット交換装置の構成を示す図である。
【図5】比較例に係る光パケット受信装置の構成を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る光パケット交換システムを示す図である。
【図7】本実施形態に係る光パケット送信装置の構成を示す図である。
【図8】本実施形態に係るEtherパケットから生成した個の光パケット信号と、経路情報用光とを示す図である。
【図9】本実施形態に係る光パケット交換装置の構成を示す図である。
【図10】光パケット交換装置の変形例を示す図である。
【図11】光パケット送信装置の変形例を示す図である。
【図12】本実施形態に係る光パケット交換システムが適用されるネットワークを示す図である。
【図13】障害発生時の回線切替に適した光パケット送信装置を示す図である。
【図14】障害発生時の回線切替に適した光パケット交換装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る光パケット交換システムについて説明する。まず、本実施形態に係る光パケット交換システムについて説明する前に、本発明者が従来開発してきた光パケット交換システムを比較例として説明する。
【0021】
図1は、比較例に係る光パケット交換システム110を示す。図1に示すように、光パケット交換システム110は、光パケット送信装置111と、光パケット交換装置112と、光パケット受信装置113と、第1AWG114と、第2AWG115と、第1光増幅器116と、第2光増幅器117とを備える。
【0022】
光パケット送信装置111は、クライアント側から受信したEtherパケットを10分割する。そして、分割した10個のデータを波長λ1〜λ10の光信号に載せ、10波の光パケット信号として出力する。なお、本実施形態では、パケットデータの分割数および波長数を10としたが、これらは任意の値に設定可能である。
【0023】
光パケット送信装置111から出力された10波の光パケット信号(波長λ1〜λ10)は、第1AWG114で波長多重される。第1AWG114から出力された波長多重光信号は、第1光増幅器116で増幅された後、第1光伝送路119に出力される。
【0024】
第1光伝送路119を伝搬した波長多重光信号は、光パケット交換装置112に入力される。
【0025】
光パケット交換装置112は、入力された波長多重光信号から経路を抽出し、該経路情報に従って、光パケット信号の方路を切り替える、1入力×2出力の光パケット交換装置である。光パケット交換装置112の出力ポートには、第2光伝送路120と、第3光伝送路121とが接続されている。第2光伝送路120を伝搬した光パケット信号は、WDMネットワークに出力される。一方、第3光伝送路121を伝搬した光パケット信号は、第2光増幅器117で増幅された後、第2AWG115で波長λ1〜λ10の光パケット信号に分波される。第2AWG115で分波された10波の光パケット信号は、光パケット受信装置113に入力される。
【0026】
光パケット受信装置113は、受信した10波の光パケット信号を元のEtherパケットに復元して、クライアント側に出力する。
【0027】
図2は、比較例に係る光パケット送信装置111の構成を示す。図2に示すように、光パケット送信装置111は、光/電気変換部130と、パケット受信処理部132と、経路情報抽出部133と、シリアル/パラレル変換部134と、パケット送信処理部136と、ヘッダ挿入部140と、第1〜第10電気/光変換部141−1〜141−10とを備える。
【0028】
光/電気変換部130は、クライアント側から入力されたEtherパケットを電気信号に変換し、パケット受信処理部132に出力する。パケット受信処理部132は、Etherパケットから経路情報の入った部分を経路情報抽出部133に送り、それ以外の主信号をシリアル/パラレル変換部134に送る。
【0029】
シリアル/パラレル変換部134は、受信した主信号を10分割し、パケット送信処理部136に送る。また、経路情報抽出部133は、受信した信号から経路情報を抽出し、ヘッダ挿入部140に出力する。
【0030】
パケット送信処理部136は、シリアル/パラレル変換部134にて分割された10個のパラレル信号に対し、例えば各パラレル信号の先端にプリアンブルを付与するなどの処理を行い、所定の光パケット交換方式のパケットフォーマットに変換する。
【0031】
ヘッダ挿入部140は、パケット送信処理部136で生成された10個のパケット信号のうちの一つに、経路情報が搭載された経路情報ヘッダを挿入する。そして、10個のパケット信号は、それぞれ第1〜第10電気/光変換部141−1〜141−10により光信号に変換され、10波(λ1〜λ10)の光パケット信号として出力される。経路情報ヘッダが挿入された光パケット信号の波長を「ヘッダ波長」と呼ぶ。ここでは、ヘッダ波長=λ1とする。
【0032】
図3は、比較例に係るEtherパケットから生成した10個の光パケット信号を示す。Etherパケットは、図3に示すように、MACヘッダと、IPヘッダと、ペイロードと、FCS(Frame Check Sequence)とを含む。このEtherパケットが8バイト単位で10分割される。図3に示すように、ヘッダ波長λ1の光信号にのみ経路情報ヘッダH1〜H10が挿入されている。また、各光パケット信号の冒頭には、信号開始位置を知るためと、後述の光パケット交換装置の切替によって有意なデータが破棄されないように、通常のEtherパケットよりも長いプリアンブルがセットされている。
【0033】
図4は、比較例に係る光パケット交換装置112の構成を示す。図4に示すように、光パケット交換装置112は、光スイッチ部160と、光スイッチ制御部161と、カプラ170と、光遅延線172とを備える。また、光スイッチ制御部161は、光/電気変換部174と、制御信号生成部176とを備える。
【0034】
第1光伝送路119を介して入力された波長多重光信号は、カプラ170により受信される。カプラ170は、受信した波長多重光信号からヘッダ波長λ1の光パケット信号のみ分岐する。分岐したヘッダ波長λ1の光パケット信号は、光スイッチ制御部161に入力される。一方、カプラ170を通過した波長多重光信号(λ1〜λ10)は、光遅延線172を介して光スイッチ部160に入力される。
【0035】
ヘッダ波長λ1の光パケット信号は、光/電気変換部174で電気信号に変換された後、制御信号生成部176にて経路情報ヘッダが解析され、経路情報が検出される。そして、制御信号生成部176は、検出された経路情報に基づいて光スイッチ制御信号を生成し、光スイッチ部160に出力する。
【0036】
光遅延線172は、光スイッチ制御部161が光スイッチ制御信号を生成するのに要する時間だけ、波長多重光信号を遅延させる。制御信号生成部176における経路情報ヘッダの解析処理は、ある程度の時間を要する。従って、仮に波長多重光信号をカプラ170から光スイッチ部160に直接入力した場合、波長多重光信号に対する光スイッチ制御信号の遅延が生じ、好適に波長多重光信号の経路切替を行うことができない。そこで、カプラ170と光スイッチ部160との間に光遅延線172を設け、波長多重光信号を光スイッチ制御信号の生成に要する時間だけ遅延させることにより、好適に波長多重光信号の経路切替を行うことができる。遅延時間は、光遅延線172の長さ(光ファイバ長)を調整することにより変えることができる。
【0037】
光スイッチ部160は、1×2の光スイッチであり、光カプラ184と、第1光ゲートスイッチ180と、第2光ゲートスイッチ182とを備える。光ゲートスイッチとしては、半導体光増幅器(SOA)を用いたものを利用できる。第1光ゲートスイッチ180および第2光ゲートスイッチ182は、光スイッチ制御部161からの光スイッチ制御信号によりオン/オフが制御される。光パケット交換装置112では、1つのヘッダ波長λ1の光パケット信号から抽出された経路情報を基に、波長多重された10波の光パケット信号の全てが一度に経路切替される。例えば、波長多重光信号を経路Aに出力する場合、第1光ゲートスイッチ180がオンされ、第2光ゲートスイッチ182はオフにされる。これにより、波長多重光信号は、第1光ゲートスイッチ180のみ通過し、経路Aに出力される。
【0038】
図5は、比較例に係る光パケット受信装置113の構成を示す。図5に示すように、光パケット受信装置113は、第1〜第10光/電気変換部150−1〜150−10と、ヘッダ処理部152と、パケット組立部153と、パケット識別部154と、電気/光変換部158とを備える。
【0039】
第1〜第10光/電気変換部150−1〜150−10は、第2AWGにて分波された10波(λ1〜λn)の光パケット信号をそれぞれ電気のパケット信号に変換する。
【0040】
ヘッダ処理部152は、ヘッダ波長λ1の光パケット信号に対応するパケット信号の経路情報ヘッダから、パケット情報、パケット長、ECC(Error Check Code)エラーを抽出し、パケット信号の正常性判断を行う。
【0041】
パケット組立部153は、ヘッダ処理部152からのパケット情報、パケット長、ECCエラーを参照して、パケット組み立てを行う。パケット識別部154は、パケット組立部153の出力からEtherパケットを識別し、Etherパケットを抜き取る。その後、Etherパケットは電気/光変換部158に入力される。電気/光変換部158は、Etherパケットを光信号に変換し、クライアント側に出力する。
【0042】
図6は、本発明の実施形態に係る光パケット交換システム10を示す。図6に示すように、光パケット交換システム10は、光パケット送信装置11と、光パケット交換装置12と、光パケット受信装置13と、第1AWG14と、第2AWG15と、第1光増幅器16と、第2光増幅器17と、第1〜第3光伝送路19〜21とを備える。光パケット交換システム10の基本的な構成は図1に示す光パケット交換システム110と類似するが、図6に示すように、光パケット送信装置11から波長λ0の経路情報用光が出力される点が異なっている。この経路情報用光は下記にて説明する。
【0043】
図7は、本実施形態に係る光パケット送信装置11の構成を示す。図7に示すように、光パケット送信装置11は、光/電気変換部30と、パケット受信処理部32と、経路情報抽出部33と、シリアル/パラレル変換部34と、パケット送信処理部36と、第1〜第10電気/光変換部41−1〜41−10と、経路情報用光送信部42とを備える。
【0044】
光/電気変換部30は、クライアント側から受信したEtherパケットを電気信号に変換し、パケット受信処理部32に出力する。パケット受信処理部32は、Etherパケットから経路情報の入った部分を経路情報抽出部33に送り、それ以外の主信号をシリアル/パラレル変換部34に送る。
【0045】
シリアル/パラレル変換部34は、受信した主信号を10分割し、パケット送信処理部36に送る。パケット送信処理部36は、シリアル/パラレル変換部34にて分割された10個のパラレル信号に対し、例えば各パラレル信号の先端にプリアンブルを付与するなどの処理を行い、所定の光パケット交換方式のパケットフォーマットに変換する。
【0046】
パケット送信処理部36から出力された10個のパケット信号は、それぞれ第1〜第10電気/光変換部41−1〜41−10により光信号に変換され、10波(λ1〜λ10)の光パケット信号として出力される。
【0047】
一方、経路情報抽出部33は、パケット受信処理部32から受信した信号から経路情報を抽出する。そしてこの経路情報は、経路情報用光送信部42に送られる。
【0048】
経路情報用光送信部42は、第1〜第10電気/光変換部41−1〜41−10から出力される光パケット信号の波長λ1〜λ10とは異なる波長λ0の光(以下、経路情報用光と呼ぶ)を出力する。経路情報用光送信部42は、経路情報抽出部33から受信した経路情報に応じて、経路情報用光のON/OFF(発光/非発光)を切り替える。言い換えると、波長λ0の経路情報用光のON(発光状態)またはOFF(非発光状態)に経路情報を持たせる。本実施形態に係る光パケット交換システム10では、後述するように光パケット交換装置12が一入力からの光パケット信号(波長多重光信号)を経路AまたはBに切り替える構成となっている。そこで、例えば、光パケット交換装置12において光パケット信号を経路Aに進ませるときには経路情報用光をONとし、一方光パケット信号を経路Bに進ませるときには経路情報用光をOFFとする(ケース1とする)。この経路A,Bと経路情報用光のON,OFFの対応関係は逆であってもよい。すなわち、光パケット信号を経路Aに進ませるときには経路情報用光をOFFとし、一方光パケット信号を経路Bに進ませるときには経路情報用光をONとしてもよい(ケース2とする)。このような対応関係は、光パケット送信装置11と光パケット交換装置12との間において予め取り決めておけばよい。
【0049】
図8は、本実施形態に係るEtherパケットから生成した10個の光パケット信号と、経路情報用光とを示す。図8に示すように、本実施形態においては、図3に示す比較例と異なり、波長λ1の光パケット信号に経路情報ヘッダは挿入されていない。また、波長λ0の経路情報用光は、光パケット信号長に対応する時間のあいだON状態またはOFF状態が継続されている。
【0050】
図6に示すように、第1〜第10電気/光変換部41−1〜41−10から出力された波長λ1〜λ10の光パケット信号と、経路情報用光送信部42から出力された波長λ0の経路情報用光とは、第1AWG14により波長多重され、第1光伝送路19に出力される。
【0051】
図9は、本実施形態に係る光パケット交換装置12の構成を示す。図9に示すように、光パケット交換装置12は、光スイッチ部60と、光スイッチ制御部61と、カプラ70とを備える。また、光スイッチ制御部61は、光/電気変換部74と、制御信号生成部76とを備える。また、光スイッチ部60は、1×2の光スイッチであり、カプラ84と、第1光ゲートスイッチ80と、第2光ゲートスイッチ82とを備える。
【0052】
図9から分かるように、本実施形態に係る光パケット交換装置12においては、図4に示す比較例に係る光パケット交換装置112と異なり、カプラ70と光スイッチ部60との間に光遅延線は設けられていない。
【0053】
第1光伝送路19を介して入力された波長多重光信号は、カプラ70により受信される。カプラ70は、受信した波長多重光信号から波長λ0の経路情報用光のみ分岐する。分岐した経路情報用光は、光スイッチ制御部61に入力される。一方、カプラ70を通過した波長多重光信号(λ0〜λ10)は、直接光スイッチ部60に入力される。
【0054】
ヘッダ波長λ1の光パケット信号は、光/電気変換部74で電気信号に変換される。光/電気変換部74は、例えばPD(photodiode)やAPD(avalanche photodiode)であってよい。
【0055】
制御信号生成部76は、経路情報用光のON/OFFに基づいて波長多重光信号の経路を判定し、光スイッチ部60に光スイッチ制御信号を出力する。本実施形態では、例えば上述のケース1を採用した場合には、波長多重光信号の進路が経路Aのときには経路情報用光がON(発光状態)とされており、一方光パケット信号の進路が経路Bのときには経路情報用光がOFF(非発光状態)とされている。従って、比較例に係る光パケット交換装置112のように、ヘッダ解析を行って経路情報の抽出を行わなくても、光/電気変換部74からの電流または電圧を参照して経路情報用光のON/OFFを確認するだけで、容易に波長多重光信号の経路がAであるかBであるかを判定できる。すなわち、制御信号生成部76は、経路情報用光がON(発光状態)のときには波長多重光信号の経路がAであると判定できるので、第1光ゲートスイッチ80をONし、第2光ゲートスイッチ82をOFFする光スイッチ制御信号を光スイッチ部60に出力する。一方、制御信号生成部76は、経路情報用光がOFFのときには波長多重光信号の経路がBであると判定できるので、第1光ゲートスイッチ80をOFFし、第2光ゲートスイッチ82をONする光スイッチ制御信号を光スイッチ部60に出力する。このような光スイッチ制御信号の生成処理は、経路情報用光のON/OFFと、光スイッチ部60の制御パターンとを対応付けたテーブルを参照してなされてもよい。
【0056】
このように、本実施形態に係る光パケット交換システム10によれば、光パケット送信装置11において経路情報用光のON(発光状態)またはOFF(非発光状態)に経路情報を持たせ、光パケット交換装置12において経路情報用光のONまたはOFFを確認するだけで、波長多重光信号(光パケット信号)の経路を判定できるように構成した。これにより、ヘッダ解析を経路判定を行っていた比較例の場合と比較して、光スイッチ制御部61光スイッチ制御信号の生成に要する時間を大幅に短縮できる。その結果、カプラ70と光スイッチ部60との間に光遅延線を設けずとも、光パケット信号の経路切替を行うことができる。
【0057】
なお、実際には光/電気変換部74や制御信号生成部76の応答速度相当の時間だけ光パケット信号に対して光スイッチ制御信号が遅延するが、通常、光パケット信号の先端にはプリアンブルが例えば40バイト(10Gbpsの信号で4ns相当)があるので、現在実用化されているPDや論理回路素子の応答時間を考えれば、この遅延時間はプリアンブルの長さの範囲内に十分収まり、有意なデータは失われずに光パケット信号の経路切替を行うことができる。より高速な光パケット信号の場合には、よりプリアンブルを長くすればよい。
【0058】
以上のように本実施形態に係る光パケット交換システム10によれば、光遅延線を光パケット交換装置12から無くすことができるので、光パケット交換装置12の小型化が可能となる。また、光遅延線が無くなることにより、伝送距離へ影響を無くすことができる。
【0059】
上述の実施形態では、光遅延線を設けない構成としたが、例えば光パケット信号の伝送速度が高速で、しかも余りプリアンブルを多くすることができないような場合には、カプラ70と光スイッチ部60の間に光遅延線を設ける構成としてもよい。この場合であっても、上述の実施形態と同様に経路情報用光のONまたはOFFに経路情報を持たせることで、図4の比較例に係る光パケット交換装置112と比較して、少なくとも光遅延線の長さを短くできる。これにより、光パケット交換装置12の小型化および低光損失化が可能となる。
【0060】
図10は、光パケット交換装置12の変形例を示す。図9に示す光パケット交換装置では、光パケット交換装置を1×2のスイッチとしたが、光パケット信号の切替経路は2以上であってもよい。図10の変形例は、1×4の光パケット交換装置12を示す。
【0061】
この場合、光パケット送信装置(図示せず)は、2つの経路情報用光送信部を備え、互いに波長の異なる2つの経路情報用光(波長λ0−1、λ0−2とする)を出力する。
【0062】
図10に示すように、本変形例に係る光パケット交換装置12の光スイッチ制御部61は、第1光/電気変換部74と、第2光/電気変換部75と、制御信号生成部76とを備える。また、光スイッチ部60は、カプラ84と、第1〜第4光ゲートスイッチ80、82、84、86とを備える。
【0063】
この光パケット交換装置12においては、カプラ70は、波長多重光信号から波長λ0−1の経路情報用光と波長λ0−2の経路情報用光を分岐し、それぞれ光/電気変換部74と第2光/電気変換部75に出力する。制御信号生成部76は、光/電気変換部74と第2光/電気変換部75からの出力電圧の組み合わせ(4通り)を基に、光スイッチ制御信号を生成する。
【0064】
このように、光パケット交換装置12によれば、波長λ0−1とλ0−2の2波の経路情報用光のONまたはOFFに経路情報を持たせることにより、4つの第1〜第4光ゲートスイッチ80、82、84、86の切替が可能となる。このように、n波の経路情報用光を用いると、2個の光ゲートスイッチの切替が可能となる。
【0065】
図11は、光パケット送信装置11の変形例を示す。図11に示す光パケット送信装置11は、経路情報抽出部33からパケット送信処理部36に経路情報の抽出完了通知が送信されるように構成されている点が、図7に示す光パケット送信装置と異なる。パケット送信処理部36は、該抽出完了通知に基づいて、光パケット送信装置11から送信される10波の光パケット信号の送信開始タイミングが経路情報用光の送信開始タイミングより遅延(例えば、数百nsの遅延)するように、10個のパケット信号を第1〜第10電気/光変換部41−1〜41−10に出力するタイミングを調整する。これにより、光パケット交換装置には光パケット信号よりも早く経路情報用光が到着するので、長いプリアンブルを付与せずとも十分な余裕を持って光ゲートスイッチの切替が可能となる。
【0066】
図12は、本実施形態に係る光パケット交換システムが適用されるネットワーク200を示す。ネットワーク200は、第1局舎201〜第4局舎204と、中継局205とを備える。各局舎には上述の光パケット交換システムが設けられている。また、中継局205には上述の光パケット交換装置が設けられている。
【0067】
図12に示すように、ネットワーク200は、第1局舎201から、中継局205および第2局舎202を通って第4局舎に至る現用回線(実線で示す)と、第1局舎201から、中継局205および第3局舎203を通って第4局舎204にいたす冗長回線(破線で示す)とを有する。
【0068】
ここで、図12に示すように中継局205と第2局舎202の間の現用回線で、回線断などの障害が発生した場合を考える。この場合、各局舎は、ネットワーク200の警報転送機能により警報通知を受け取ることができる。警報通知を受けた第1局舎201は、第4局舎204に光パケット信号を送るために、現用回線から冗長回線に回線切替を行う。以下、このような障害発生時の回線切替に適した光パケット交換システムを提案する。
【0069】
図13は、障害発生時の回線切替に適した光パケット送信装置を示す。図13に示す光パケット送信装置11は、警報受信部44と冗長切替用光送信部43をさらに有する点が、図7に示す光パケット送信装置と異なる。
【0070】
経路情報用光送信部42は、光パケット交換システムが接続されたネットワークの回線に異常が発生した場合に発せられる警報通知を受信する。
【0071】
冗長切替用光送信部43は、光パケット信号の波長λ1〜λ10および経路情報用光の波長λ0−1とは異なる波長λ0−1の光(冗長回線切替用光と呼ぶ)を出力する。冗長切替用光送信部43は、警報受信部44にて警報通知が受信された場合、冗長回線切替用光のON/OFF状態を変化させる。例えば、障害の発生していない通常状態のときは、冗長回線切替用光をOFF(非発光状態)とし、警報受信部44にて警報通知が受信された場合、冗長回線切替用光をON(発光状態)とする。
【0072】
図14は、障害発生時の回線切替に適した光パケット交換装置を示す。図14に示す光パケット交換装置12は、光スイッチ制御部61が第1光/電気変換部74と、第2光/電気変換部75と、制御信号生成部76とを備え、カプラ70分岐された波長λ0−1の経路情報用光が第1光/電気変換部74に入力され、波長λ0−2の冗長回線切替用光が第2光/電気変換部75に入力される点が、図9に示す光パケット交換装置と異なる。
【0073】
光パケット交換装置12において、第2光/電気変換部75により冗長回線切替用光のOFFからONへの変化が検出された場合、制御信号生成部76は、光パケット信号の経路を、現用回線から冗長回線に切り替える。これにより、現用回線に障害が発生した場合でも、スムーズに冗長回線に切り替えることができる。
【0074】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せによりいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0075】
10 光パケット交換システム、 11 光パケット送信装置、 12 光パケット交換装置、 13 光パケット受信装置、 14 第1AWG、 15 第2AWG、 16 第1光増幅器、 17 第2光増幅器、 30 光/電気変換部、 32 パケット受信処理部、 33 経路情報抽出部、 34 シリアル/パラレル変換部、 36 パケット送信処理部、 42 経路情報用光送信部、 43 冗長切替用光送信部、 44 警報受信部、 60 光スイッチ部、 61 光スイッチ制御部、 70 カプラ、 76 制御信号生成部、 光カプラ、 200 ネットワーク、 201 第1局舎、 202 第2局舎、 203 第3局舎、 204 第4局舎、 205 中継局。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライアント信号を受信するクライアント信号受信部と、
前記クライアント信号から経路情報を抽出する経路情報抽出部と、
前記クライアント信号からパケット信号を生成するパケット送信処理部と、
前記パケット信号を光パケット信号に変換する電気/光変換部と、
前記光パケット信号の波長とは異なる波長の経路情報用光を出力する光送信部であって、前記経路情報に応じて経路情報用光のON/OFFを切り替える光送信部と、
を備える光パケット送信装置と、
前記光パケット信号と前記経路情報用光とが波長多重された波長多重光信号を受信する波長多重光受信部と、
前記波長多重光信号から前記経路情報用光を分岐する分岐部と、
前記波長多重光信号の経路を切り替える光スイッチ部と、
前記分岐部で分岐した経路情報用光のON/OFFに基づいて前記波長多重光信号の経路を判定し、前記光スイッチ部に制御信号を出力する光スイッチ制御部と、
を備える光パケット交換装置と、
を備えることを特徴とする光パケット交換システム。
【請求項2】
前記光送信部は、互いに波長の異なる複数の経路情報用光を出力するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光パケット交換システム。
【請求項3】
前記光スイッチ制御部は、前記経路情報用光のON/OFFと、前記光スイッチ部の制御パターンとを対応付けたテーブルを参照して前記制御信号を生成することを特徴とする請求項1または2に記載の光パケット交換システム。
【請求項4】
前記パケット送信処理部は、前記光パケット信号の送信開始タイミングが前記経路情報用光の送信開始タイミングより遅延するように、前記パケット信号を前記電気/光変換部に出力するタイミングを調整することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光パケット交換システム。
【請求項5】
前記光パケット送信装置は、
当該光パケット交換システムの回線に異常が発生した場合に発せられる警報を受信する警報受信部と、
前記光パケット信号および前記経路情報用光とは波長の異なる冗長回線切替用光を出力する第2送信部であって、前記警報受信部にて前記警報が受信された場合、前記冗長回線切替用光のON/OFF状態を変化させる第2光送信部と、をさらに備え、
前記光スイッチ制御部は、前記冗長回線切替用光のON/OFF状態の変化を検出した場合、前記波長多重光信号の経路を冗長回線に切り替えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光パケット交換システム。
【請求項6】
クライアント信号を受信するクライアント信号受信部と、
前記クライアント信号から経路情報を抽出する経路情報抽出部と、
前記クライアント信号からパケット信号を生成するパケット送信処理部と、
前記パケット信号を光パケット信号に変換する電気/光変換部と、
前記光パケット信号の波長とは異なる波長の経路情報用光を出力する光送信部であって、前記経路情報に応じて経路情報用光のON/OFFを切り替える光送信部と、
を備えることを特徴とする光パケット送信装置。
【請求項7】
前記送信部は、互いに波長の異なる複数の経路情報用光を出力するよう構成されていることを特徴とする請求項6に記載の光パケット送信装置。
【請求項8】
前記パケット送信処理部は、前記光パケット信号の送信開始タイミングが前記経路情報用光の送信開始タイミングより遅延するように、前記パケット信号を前記電気/光変換部に出力するタイミングを調整することを特徴とする請求項6または7に記載の光パケット送信装置。
【請求項9】
光パケット信号と経路情報用光とが波長多重された波長多重光信号を受信する波長多重光受信部と、
前記波長多重光信号から前記経路情報用光を分岐する分岐部と、
前記波長多重光信号の経路を切り替える光スイッチ部と、
前記分岐部で分岐した経路情報用光のON/OFFに基づいて前記波長多重光信号の経路を判定し、前記光スイッチ部に制御信号を出力する光スイッチ制御部と、
を備えることを特徴とする光パケット交換装置。
【請求項10】
前記光スイッチ制御部は、前記経路情報用光のON/OFFと、前記光スイッチ部の制御パターンとを対応付けたテーブルを参照して前記制御信号を生成することを特徴とする請求項9に記載の光パケット交換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−191574(P2012−191574A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55465(P2011−55465)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000237662)富士通テレコムネットワークス株式会社 (682)
【Fターム(参考)】