説明

光パケット交換システム

【課題】光パケット信号のピークパワーの変動を緩和できる光パケット交換システムを提供する。
【解決手段】光パケット交換システム100は、入力された光パケット信号の方路を切り替えて出力する光パケットスイッチ装置10と、光パケットスイッチ装置10の後段に設けられた光増幅装置11と、光増幅装置11に入力される光パケット信号にダミーパケットを挿入するダミーパケット挿入部54とを備える。ダミーパケットは、自身がダミーパケットであることを示すフラグを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光パケット信号に付与された方路情報に従って光スイッチを切り替えることにより、光パケット単位でのパケット交換を可能とする光パケット交換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)を用いた光伝送システムにおいて、波長選択スイッチ(WSS:wavelength selective switch)等を用いることで、波長単位のパス切替を行う技術が実用化されている。その次の技術として、切替を行う単位を例えばIPパケット(10GEther(10 Gigabit Ethernet(登録商標))信号等)一つ一つという細かい単位とし、各々を光パケットという形式に変換して、超高速の光スイッチで方路切り替えを行う光パケット交換方式が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
IPパケットはデータが存在しない間は有意な情報が転送されておらず、その分だけ帯域が無駄になっているが、光パケット交換方式が実現すれば、データが存在しない時間帯を別のパケットが占有できることになる。従って、光パケット交換方式は、伝送路の帯域利用効率を飛躍的に高める可能性があり、将来の技術として有望視されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−235986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA:Erbium Doped Fiber Amplifier)はWDMシステムにおいては必須の光デバイスである。光パケット伝送システムにおいても、伝送距離やスイッチ段数を増やした場合には、EDFAを用いて損失を補償する必要がある。
【0006】
図1(a)(b)は、光パス伝送における光信号と、光パケット伝送における光パケット信号とを比較するための図である。図1(a)は、光パス伝送における光信号を示し、図1(b)は、光パケット伝送における光パケット信号を示す。光パス伝送の場合には、伝送される光信号は常時マーク率50%の状態が保証されているので、平均光パワーは一定である。これに対し、光パケット信号の場合、パケット毎にパケット長が変わるので、光信号が存在する時間帯と、存在しない時間帯とがある。本明細書では、光信号が存在する比率を表す指標として、「パケット密度」を定義する。パケット密度は、パケット長/パケット間隔で定義される。光パス伝送における光信号は、パケット密度が100%となる。パケット密度が変動すると、光パワーの平均値は変動する。例えば、光信号が存在しないときのパワーを無視した場合、パケット密度が50%から5%に低下すると、平均光パワーは10dB低下する。
【0007】
図2(a)(b)は、光スイッチの前後における光パケット信号の消光比を比較するための図である。図2(a)は、光スイッチに入力される光パケット信号を示し、図2(b)は、光スイッチから出力された光パケット信号を示す。光パケット信号を送信する光送信器の消光比は、その構成によっても異なるが、一般的には8〜20dB程度である。一方、光スイッチの消光比は、一般的には30dB以上であり、光送信器よりも大きい。従って、図2(a)(b)に示すように、光スイッチから出力された光パケット信号の消光比は、入力前と比べて非常に大きくなる。その結果、光スイッチから出力された後の光パケット信号の平均光パワーの変動は、光スイッチ入力前のそれよりも大きくなる。
【0008】
EDFAは、そのキャリア緩和時間が通常数msecオーダであるので、nsecからμsecオーダの光パケットごとに利得を制御することはできず、msecオーダの時間での平均光パワーに基づいて利得を制御している。このため、上述のようなパケット密度の変動や高消光比の光スイッチに起因する大きな平均光パワーの変動は、EDFAの利得変動幅を大きくしてしまう要因となる。EDFAの利得変動幅が大きくなると、EDFAに入力される光パケット信号のピークパワーが一定であっても、EDFAから出力される光パケット信号のピークパワーが大きく変動することとなるので、光パケット信号を受信する光受信器の符号誤り率特性に悪影響を与える可能性がある。なお、本明細書でいう「ピークパワー」とは、光信号が「1」のときの光パワーレベルを意味する。
【0009】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、光パケット信号のピークパワーの変動を緩和できる光パケット交換システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の光パケット交換システムは、入力された光パケット信号の方路を切り替えて出力する光パケットスイッチ装置と、光パケットスイッチ装置の後段に設けられた光増幅装置と、光増幅装置に入力される光パケット信号にノイズ成分を付加するノイズ付加手段とを備える。
【0011】
ノイズ付加手段は、光パケットスイッチ装置においてクロストークを発生させることにより、光パケット信号にノイズ成分を付加してもよい。
【0012】
ノイズ付加手段は、光増幅装置からの光パケット信号を受信する光受信装置によって検出された符号誤り率情報に基づいて、クロストーク量を制御してもよい。
【0013】
ノイズ付加手段は、光受信装置にて検出される符号誤り率が所定の閾値以下となるよう、クロストーク量を制御してもよい。
【0014】
ノイズ付加手段は、光増幅装置に入力される光パケット信号にASE雑音を付加してもよい。
【0015】
ノイズ付加手段は、光増幅装置からの光パケット信号を受信する光受信装置によって検出された符号誤り率に基づいて、光パケット信号に付加するASE雑音量を制御してもよい。
【0016】
ノイズ付加手段は、光受信装置にて検出される符号誤り率が所定の閾値以下となるよう、光パケット信号に付加するASE雑音量を制御してもよい。
【0017】
本発明の別の態様もまた、光パケット交換システムである。このシステムは、入力された光パケット信号の方路を切り替えて出力する光パケットスイッチ装置と、光パケットスイッチの後段に設けられた光増幅装置と、光増幅装置に入力される光パケット信号にダミーパケットを挿入するダミーパケット挿入手段とを備える。
【0018】
ダミーパケットは、自身がダミーパケットであることを示すフラグを有し、光パケットスイッチ装置は、フラグを参照してダミーパケットを判定し、ダミーパケットと正規の光パケット信号とが競合した場合、競合したダミーパケットを破棄し、正規の光パケット信号の切替処理を行ってもよい。
【0019】
光増幅装置から出力された光信号を受信する光受信装置をさらに備え、該光受信装置は、フラグを参照してダミーパケットを判定し、ダミーパケットを破棄してもよい。
【0020】
光パケットスイッチ装置は、フラグを参照してダミーパケットを判定し、一旦全てのダミーパケットを破棄した上で光パケット信号の方路切替処理を行い、再度ダミーパケットを挿入してもよい。
【0021】
光パケットスイッチ装置は、正規の光パケット信号の後に続くダミーパケットを該光パケット信号と共に方路切替してもよい。
【0022】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を装置、方法、システム、プログラム、プログラムを格納した記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、光パケット信号のピークパワーの変動を緩和できる光パケット交換システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1(a)(b)は、光パス伝送における光信号と、光パケット伝送における光パケット信号とを比較するための図である。
【図2】図2(a)(b)は、光スイッチの前後における光パケット信号の消光比を比較するための図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る光パケット交換システムを示す図である。
【図4】図4(a)(b)は、第1の実施形態に係る光パケット交換システムの動作を説明するための図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る光パケット交換システムを示す図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る光パケット交換システムを示す図である。
【図7】図7(a)〜(c)は、第3の実施形態に係る光パケット交換システムの動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る光パケット交換システムについて説明する。
【0026】
(第1の実施形態)
図3は、本発明の第1の実施形態に係る光パケット交換システムを示す。図3に示すように、光パケット交換システム100は、2入力×2出力の光パケットスイッチ装置10と、光増幅装置11と、光受信装置12とを備える。
【0027】
光パケットスイッチ装置10は、入力された光パケット信号の方路を切り替えて出力する機能を有する。図3に示すように、光パケットスイッチ装置10は、光スイッチ14と、光スイッチ制御部16と、第1光カプラ18と、第2光カプラ20と、第1光遅延線22と、第2光遅延線24とを備える。
【0028】
光伝送路17を介して光パケットスイッチ装置10に入力された光パケット信号は、第1光カプラ18に入力される。第1光カプラ18は、光パケット信号を2つに分岐する。分岐された一方の光パケット信号は、第1光遅延線22を介して光スイッチ14の第1入力ポート14aに入力される。他方の光パケット信号は、光スイッチ制御部16に入力される。
【0029】
また、別の光伝送路19を介して光パケットスイッチ装置10に入力された光パケット信号は、第2光カプラ20に入力される。第2光カプラ20は、光パケット信号を2つに分岐する。分岐された一方の光パケット信号は、第2光遅延線24を介して光スイッチ14の第2入力ポート14bに入力される。他方の光パケット信号は、光スイッチ制御部16に入力される。
【0030】
光スイッチ制御部16は、入力された光パケット信号から方路情報を抽出し、該方路情報に応じて光スイッチ14に対して制御信号を出力する。図3に示すように、光スイッチ制御部16は、第1光/電気変換部26と、第2光/電気変換部28と、第1解析部30と、第2解析部32と、出力競合判定部34と、制御信号生成部35とを備える。
【0031】
第1光/電気変換部26は、第1光カプラ18から受信した光パケット信号を電気信号に変換する。また、第2光/電気変換部28は、第2光カプラ20から受信した光パケット信号を電気信号に変換する。
【0032】
第1解析部30は、第1光/電気変換部26から受信したパケット信号のヘッダを解析し、方路情報を検出する。また、第2解析部32は、第2光/電気変換部28から受信したパケット信号のヘッダを解析し、方路情報を検出する。
【0033】
出力競合判定部34は、第1解析部30および第2解析部32でのヘッダ解析結果に基づいて、光パケットの通過・破棄を判定する。例えば、第1入力ポート14aと第2入力ポート14bにそれぞれ光パケットが入力され、それら2つの光パケットの出力先が第1出力ポート14cである場合を考える。この場合、出力競合判定部34は、2つの光パケットが競合しているか否かを判定する。言い換えると、2つの光パケットが時間的に重なっているか否かを判定する。2つの光パケットが競合している場合、先に到着した光パケットを通過させ、後の光パケットを破棄する判定を行う。
【0034】
制御信号生成部35は、出力競合判定部34での判定結果に基づいて、光スイッチ14のオン/オフを制御する光スイッチ制御信号を生成し、光スイッチ14に出力する。制御信号生成部35の詳細な動作については後述する。
【0035】
第1光遅延線22、第2光遅延線24は、光スイッチ制御部16が光スイッチ制御信号を生成するのに要する時間だけ、光パケット信号を遅延させる。第1光遅延線22、第2光遅延線24を設けることにより、光パケット信号が光スイッチ14に到着するタイミング合わせて、光スイッチ14のオン/オフを制御できる。
【0036】
光スイッチ14は、光スイッチ制御部16からの光スイッチ制御信号によりオン/オフを制御され、入力された光パケット信号の方路を切り替えて出力する。光スイッチ14としては、例えば半導体光増幅器(SOA)を用いたものを使用できる。本実施形態では、光スイッチ14は2×2の光スイッチであるので、4つのSOAゲート(図示せず)を備える。すなわち、第1入力ポート14aと第1出力ポート14cの間に第1SOAゲート(図示せず)が設けられ、第1入力ポート14aと第2出力ポート14dの間に第2SOAゲート(図示せず)が設けられ、第2入力ポート14bと第1出力ポート14cの間に第3SOAゲート(図示せず)が設けられ、第2入力ポート14bと第2出力ポート14dの間に第4SOAゲート(図示せず)が設けられる。
【0037】
光増幅装置11は、光パケットスイッチ装置10の後段に設けられており、第1EDFA36と、第2EDFA38とを備える。光スイッチ14の第1出力ポート14cから出力された光パケット信号は、第1EDFA36に入力される。第1EDFA36にて増幅された光パケット信号は、第1光伝送路40に出力される。一方、光スイッチ14の第2出力ポート14dから出力された光パケット信号は、第2EDFA38に入力される。第2EDFA38にて増幅された光パケット信号は、第2光伝送路42に出力される。
【0038】
光受信装置12は、光/電気変換部44と、データ処理部46とを備える。本実施形態において、光受信装置12は第2光伝送路42に接続されている。図示は省略しているが、第1光伝送路40に別の光受信装置が接続されてもよい。
【0039】
光/電気変換部44は、受信した光パケット信号に対して光電変換、増幅、クロック抽出、識別再生などの所定の処理を施した後、電気のパケット信号とクロック信号とをデータ処理部46に出力する。
【0040】
データ処理部46は、パケット信号に含まれる誤り訂正符号を用いて誤り訂正を行い、符号誤り率(BER:Bit Error Rate)を検出する。データ処理部46は、検出した符号誤り率情報を光パケットスイッチ装置10の制御信号生成部35に送信する。符号誤り率情報は、所定の監視制御信号(OSC:Optical Supervisory Channel)を用いて送信できる。監視制御信号は、光パケット信号に用いられる波長とは異なる波長の信号である。
【0041】
図4(a)(b)は、第1の実施形態に係る光パケット交換システムの動作を説明するための図である。図4(a)は、比較例として、通常の光パケット交換システムにおいて光スイッチの第2出力ポートから出力される光パケット信号を表す。図4(a)は、まず第1入力ポートから入力された光パケットP1が出力され、次に所定のギャップ時間をおいて第2入力ポートから入力された光パケットP2が出力される様子を表す。この場合、まず光パケットP1が光スイッチを通過するとき、制御信号生成部35は、第2SOAゲートをオンし、その他のSOAゲートを完全にオフする。次に光パケットP2が光スイッチを通過するとき、制御信号生成部35は、第4SOAゲートをオンし、その他のSOAゲートを完全にオフする。
【0042】
図2(a)(b)で説明したように、光スイッチの消光比は光送信器のそれと比べて非常に大きいので、光パケットP1およびP2の消光比は光スイッチ入力前と比べて非常に大きくなっている。このような消光比の大きい光パケット信号は、平均光パワーの変動が大きくなり、後段のEDFAの利得変動幅を大きくしてしまう。
【0043】
図4(b)は、本実施形態に係る光パケット交換システム100において、光スイッチ14の第2出力ポート14dから出力される光パケット信号を表す。図4(b)もまた、まず第1入力ポートから入力した光パケットP1が出力され、次に所定のギャップ時間をおいて第2入力ポートから入力した光パケットP2が出力される様子を表している。
【0044】
本実施形態において、制御信号生成部35は、光パケット信号のスイッチングの際、光スイッチ14においてクロストークを発生させることにより、光パケット信号にノイズ成分を付加する。
【0045】
図4(b)を参照して具体的に説明すると、まず光パケットP1が光スイッチ14を通過するとき、制御信号生成部35は、第2SOAゲートをオンするが、その他のSOAゲートを完全にオフするのではなく僅かに開いておき、クロストークを発生させる。次に光パケットP2が光スイッチ14を通過するとき、制御信号生成部35は、第4SOAゲートをオンするが、その他のSOAゲートを完全にオフするのではなく僅かに開いておき、クロストークを発生させる。
【0046】
このように、本実施形態においては、光パケット信号のスイッチングの際、光スイッチ14においてクロストークを発生させることにより、光パケット信号にノイズ成分を付加している。これにより、後段の光増幅装置11に入力される光パケット信号の平均光パワーの変動が小さくなるので、光増幅装置11における利得変動を小さくできる。その結果、光増幅装置11から出力される光パケット信号のピークパワーの変動が緩和されるので、光受信装置12の符号誤り率特性を向上できる。
【0047】
また、制御信号生成部35は、光受信装置12から送られてきた符号誤り率情報に基づいて、クロストーク量を制御してもよい。つまり、符号誤り率情報を光パケットスイッチ装置10にフィードバックしてクロストーク量を制御するのである。クロストークを過剰に発生させすぎると、光パケット信号の消光比が小さくなりすぎて、光受信装置12おいて符号誤りが発生する可能性がある。そこで、光受信装置12にて検出される符号誤り率が所定の閾値以下となるようクロストーク量を制御することにより、このような事態を回避できる。
【0048】
上記のようなフィードバック制御は、光パケット交換システム100の起動時に行ってもよい。この場合、運用時に想定される光パケット信号を想定してフィードバック制御を行い、運用時のクロストーク量を決定する。運用時においては、決定されたクロストーク量が生じるよう光スイッチ14を調整する。この場合、運用時のフィードバック制御が不要となるため、システムの負荷を軽減できる。
【0049】
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態に係る光パケット交換システムを示す。図5に示す光パケット交換システム100において、図3に示す光パケット交換システムと同一又は対応する構成要素については同一の符号を付し、詳細な説明を適宜省略する。
【0050】
図5に示すように、本実施形態に係る光パケット交換システム100は、ASE光源48を備える点が図3に示す光パケット交換システムと異なる。ASE光源48は、光パケットスイッチ装置10内に設けられており、光スイッチ14の第1出力ポート14c、第2出力ポート14dから出力された光パケット信号に、第3光カプラ50、第4光カプラ52を介してASE(Amplified Spontaneous Emission)雑音を付加する。
【0051】
このように、本実施形態においては、光スイッチ14から出力された光パケット信号に、ASE雑音を付加することにより、光増幅装置11に入力される光パケット信号の消光比を小さくしている。これにより、光増幅装置11に入力される光パケット信号の平均光パワーの変動が小さくなるので、光増幅装置11における利得変動を小さくできる。その結果、光増幅装置11から出力される光パケット信号のピークパワーの変動が緩和されるので、光受信装置12の符号誤り率特性を向上できる。
【0052】
本実施形態において、ASE光源48は、光受信装置12で検出された符号誤り率情報をASE光源48に基づいて、光パケット信号に付加するASE雑音量を制御してもよい。つまり、符号誤り率情報を光パケットスイッチ装置10にフィードバックしてASE雑音量を制御するのである。付加するASE雑音が大きすぎると、光パケット信号の消光比が小さくなりすぎて、光受信装置12おいて符号誤りが発生する可能性がある。そこで、光受信装置12にて検出される符号誤り率が所定の閾値以下となるようASE雑音量を制御することにより、このような事態を回避できる。
【0053】
上記のようなフィードバック制御は、光パケット交換システム100の起動時に行ってもよい。この場合、運用時に想定される光パケット信号を想定してフィードバック制御を行い、運用時のASE雑音量を決定する。運用時においては、決定されたASE雑音量が生じるようASE光源48を制御する。この場合、運用時のフィードバック制御が不要となるため、システムの負荷を軽減できる。
【0054】
(第3の実施形態)
図6は、本発明の第3の実施形態に係る光パケット交換システムを示す。図6に示す光パケット交換システム100において、図3に示す光パケット交換システムと同一又は対応する構成要素については同一の符号を付し、詳細な説明を適宜省略する。
【0055】
図6に示すように、本実施形態に係る光パケット交換システム100は、ダミーパケット挿入部54を備える点が図3に示す光パケット交換システムと異なる。本実施形態において、ダミーパケット挿入部54は、光スイッチ14内に設けられている。このダミーパケット挿入部54は、制御信号生成部35からの制御信号に応じて、光パケット信号にダミーパケットを挿入する機能を有する。
【0056】
図7(a)〜(c)は、第3の実施形態に係る光パケット交換システムの動作を説明するための図である。図7(a)は、光スイッチ14の第1入力ポート14aに入力した光パケット信号を示す。また、図7(b)は、光スイッチ14の第2入力ポート14bに入力した光パケット信号を示す。また、図7(c)は、光スイッチ14の第2出力ポート14dから出力された光信号を示す。図7(a)〜(c)では、第1入力ポート14aに入力した光パケット信号と第2入力ポート14bに入力した光パケット信号とを両方とも第2出力ポート14dに出力した場合を示している。
【0057】
図7(a)〜(c)の例では、第2出力ポート14dから出力された光信号は、光パケット信号間に光パケットが存在しない時間が存在している。本実施形態において、ダミーパケット挿入部54は、光パケット信号間にダミーパケットを挿入する。これにより、光パケットが存在しない時間が無くなる、若しくは少なくなるので、光増幅装置11に入力される光信号の平均光パワーの変動が小さくなる。その結果、光増幅装置11における利得変動が小さくなり、光増幅装置11から出力される光パケット信号のピークパワーの変動が緩和されるので、光受信装置12の符号誤り率特性を向上できる。
【0058】
ダミーパケットは、データとしては不要なパケットであるため、各ノードにおいて後処理が必要となる。以下、ダミーパケットの後処理について説明する。
【0059】
光パケット交換システム100においては、光パケットスイッチ装置10においてダミーパケットが挿入された光信号が、光増幅装置11から出力された後、別の光パケットスイッチ装置(図示せず)に入力する場合もある。この場合、該別の光パケットスイッチ装置において、ダミーパケットと正規の光パケット信号とが競合した場合、正規の光パケット信号が破棄されてしまう可能性ある。
【0060】
そこで、ダミーパケット挿入部54は、自身がダミーパケットであることを示すフラグをダミーパケットの先頭のビットに持たせる。そして、光パケットスイッチ装置は、フラグを参照してダミーパケットを判定し、ダミーパケットと正規の光パケット信号とが競合した場合、無条件でダミーパケットを破棄し、正規の光パケット信号の切替処理を行う。これにより、正規の光パケットがダミーパケットにより破棄される事態を回避できる。
【0061】
また、光受信装置12のデータ処理部46は、ダミーパケットが挿入された光信号を受信した場合、フラグを参照してダミーパケットを判定し、ダミーパケットを破棄する。これにより、不要なダミーパケットが後段の装置に転送される事態を回避できる。
【0062】
また、光パケットスイッチ装置10は、ダミーパケットが挿入された光信号を受信した場合、一旦全てのダミーパケットを破棄した上で光パケット信号の方路切替処理を行い、再度ダミーパケットを挿入してもよい。この場合、ダミーパケットを光パケット信号間に適切に挿入できるので、平均光パワーの変動を好適に緩和できる。
【0063】
また、光パケットスイッチ装置10は、正規の光パケット信号の後に続くダミーパケットを該正規の光パケット信号に付随させ、正規の光パケット信号と共に方路切替してもよい。つまり、新たにダミーパケットを挿入するのではなく、受信したダミーパケットをそのまま転送することで、平均光パワーの変動を緩和するのである。この場合、ダミーパケット挿入部を全ての光パケットスイッチ装置に設ける必要が無くなるので、システムのコストを低減できる。
【0064】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せによりいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0065】
上述の実施形態では、光増幅装置としてEDFAを例示したが、特にEDFAに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0066】
10 光パケットスイッチ装置、 11 光増幅装置、 12 光受信装置、 14 光スイッチ、 16 光スイッチ制御部、 18 第1光カプラ、 20 第2光カプラ、 22 第1光遅延線、 24 第2光遅延線、 26 第1光/電気変換部、 28 第2光/電気変換部、 30 第1解析部、 32 第2解析部、 34 出力競合判定部、 35 制御信号生成部、 36 第1EDFA、 38 第2EDFA、 44 光/電気変換部、 46 データ処理部、 48 ASE光源、 54 ダミーパケット挿入部、 100 光パケット交換システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された光パケット信号の方路を切り替えて出力する光パケットスイッチ装置と、
前記光パケットスイッチ装置の後段に設けられた光増幅装置と、
前記光増幅装置に入力される光パケット信号にダミーパケットを挿入するダミーパケット挿入手段と、
を備えることを特徴とする光パケット交換システム。
【請求項2】
前記ダミーパケットは、自身がダミーパケットであることを示すフラグを有し、
前記光パケットスイッチ装置は、前記フラグを参照してダミーパケットを判定し、ダミーパケットと正規の光パケット信号とが競合した場合、競合したダミーパケットを破棄し、正規の光パケット信号の切替処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の光パケット交換システム。
【請求項3】
前記光増幅装置から出力された光信号を受信する光受信装置をさらに備え、
該光受信装置は、前記フラグを参照してダミーパケットを判定し、ダミーパケットを破棄することを特徴とする請求項2に記載の光パケット交換システム。
【請求項4】
前記光パケットスイッチ装置は、前記フラグを参照してダミーパケットを判定し、一旦全てのダミーパケットを破棄した上で光パケット信号の方路切替処理を行い、再度ダミーパケットを挿入することを特徴とする請求項2または3に記載の光パケット交換システム。
【請求項5】
前記光パケットスイッチ装置は、正規の光パケット信号の後に続くダミーパケットを該光パケット信号と共に方路切替することを特徴とする請求項2または3に記載の光パケット交換システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−134654(P2012−134654A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283500(P2010−283500)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000237662)富士通テレコムネットワークス株式会社 (682)
【Fターム(参考)】