説明

光ピックアップのレンズアクチュエータ

【課題】光ピックアップのアクチュエータにおいて、フォーカス調整やトラッキング調整の安定性を低下させずに、振動特性を改善してピッチング動作を抑制する。
【解決手段】可動側レンズホルダーがワイヤーによって片持ち保持されている。ワイヤーの一端部の固定箇所に、固定側支持部材に固着した配線基板4のランドパターンを選択する。配線基板4の端部に凹所71を形成することにより、その配線基板4に、凹所71を挟む高さ方向両側の突片部56,57と、それらの突片部56,57の相互間で凹所71の内側の凹入部59とを具備させる。突片部56,57のランドパターン51,52に上下のワイヤーの一端部を固定し、凹入部59のランドパターン53に中央のワイヤーの一端部を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体としてのディスクの記録面を光学的に処理することに用いられる光ピックアップを制御するためのレンズアクチュエータに関する。特に、信号線としての機能を備える複数本のワイヤーによって可動側レンズホルダーが片持ち状態に保持されている、という構成を備える光ピックアップのレンズアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
図8にこの種のレンズアクチュエータを備える光ピックアップを概略斜視図で示してある。図例の光ピックアップは、レーザ光をディスクの記録面に集光させてデータの書込みや読取りを行うことに用いられ、ディスクの回転中の面振れや偏心に応じて対物レンズの位置をフォーカス方向及びトラッキング方向に調整する機能を備えている。また、フォーカス方向及びトラッキング方向での対物レンズの位置調整を適切に行うことができるようにするために、対物レンズの傾きをあらかじめ調整しておくためのチルト調整機能も備えている。
【0003】
すなわち、この光ピックアップに採用されているアクチュエータ1は、ディスクの半径方向に走行駆動される光学台(不図示)に搭載されるものであって、その光学台に固定される固定側支持部材2と、対物レンズ31を備える可動側レンズホルダー3と、固定側支持部材2の背面に固着された配線基板4と、可動側レンズホルダー3の左右両側の側面のそれぞれに固着された中継基板5,5と、可動側レーザホルダー3及び固定側支持部材2を挟む両側に同一本数ずつ対称に配備されている弾性を有するワイヤー(サスペンションワイヤー)6…とを備えている。
【0004】
可動側レンズホルダー3のフォーカス変位方向に平行に並んでいる複数本のワイヤー6…は、それぞれの一端部が固定側支持部材2に固定され、それぞれの他端部が可動側レンズホルダー3に固定されている。そして、複数本のワイヤー6の一端部と固定側支持部材2との固定箇所では、ワイヤー6の一端部が配線基板4のランドパターンに半田付けなどの適宜手段で固定されているのに対し、複数本のワイヤー6の一端部と可動側レンズホルダー3のとの固定箇所では、ワイヤー6の他端部が配線基板5のランドパターンに半田付けなどの適宜手段で固定されている。なお、固定側支持部材2の側面の凹所21にダンパー剤が装填されていて、上記ワイヤー6はそれらのダンパー剤の層内を挿通している。
【0005】
また、可動側レンズホルダー3には、フォーカス変位方向F又はトラッキング変位方向Tの付勢力を発揮させるためのコイルや、チルト調整のためのコイルなど(いずれも不図示)が装備されていて、それらのコイルから延び出た引出し線が、上記中継基板5,5を介して所定の上記ワイヤー6に電気的に接続されている。
【0006】
この種のアクチュエータ1を備える光ピックアップにおいて、たとえばプレイモードなどでフォーカス調整やトラッキング調整を併行しながらディスクの光学的処理が行われているときに、ワイヤー6によって片持ち状態で保持されている可動側レンズホルダー3が不慮のピッチング動作を伴うと、それだけフォーカス調整やトラッキング調整の精度が低下してアクチュエータ1の振動特性が低下し、光ピックアップでの記録/再生性能が低下し、所謂画像乱れや音飛びなどが発生しやすくなる。
【0007】
図6に例示したアクチュエータ1のように、可動側レンズホルダー3が片側と他側とに3本ずつ配備されている総計6本のワイヤー6によって片持ち状態で保持されている(この構成のアクチュエータ1を3軸アクチュエータということにする)。
【0008】
図9は上記3軸アクチュエータにおいて、可動側レンズホルダー3にピッチング動作が発生するときの状況を示した説明図である。3軸アクチュエータで発生するピッチング動作は、ワイヤー6によって片持ち保持されている可動側レンズホルダー3が上下に不慮に振動する現象である。そして、その振動によって可動側レンズホルダー3が下方(矢印A)に振れるときには、図9に矢印X1,X2で示したように、3本のワイヤー6のうちの上側のワイヤー61が主に引張られて伸長するのに対し、下側のワイヤー62が主に圧縮されて収縮するという状況が起こる。そして、そのような状況が起こった後、上側のワイヤー61がそれ自体の復帰力で収縮する一方、下側のワイヤー62がそれ自体の復帰力で伸長する。したがって、主に上下のワイヤー61,62の伸縮が繰り返されて可動側レンズホルダー3がピッチング動作する。なお、図9において、符号63は中央のワイヤー6を示している。
【0009】
そこで、従来は、3軸アクチュエータにおいて、可動側レンズホルダー3が不慮のピッチング動作を行うことを抑制するための対策として、片側と他側の3本ずつのワイヤー6…の伸縮を吸収させるための対策を固定側支持部材2の配線基板4に講じていた。その具体例を図10を示してある。
【0010】
図10は3軸アクチュエータの従来例に係る配線基板4の形状を例示した正面図である。この配線基板4では、幅方向の各端部を、高さ方向の2箇所に形成した凹所54,55によって上下3つの突片部56,57,58に分け、それぞれの突片部56,57,58に形成したランドパターン51,52,53に、平行な3本のワイヤー6…のそれぞれの一端部を固定していた。この構成を採用しておくと、上記したピッチング動作に伴って発生するワイヤー61,62,63の伸縮が突片部56,57,58の厚さ方向での撓み変形により吸収されてピッチング動作が抑制されるようになる。
【0011】
しかしながら、図10に例示したように、3軸アクチュエータの片側及び他側の平行な3本のワイヤー61,62,63のそれぞれの一端部を、配線基板4の各端部の上下3つの突片部56,57,58のランドパターン51,52,53に固定しておくと、不慮のピッチング動作を抑制することかできるものの、可動側レンズホルダー3のフォーカス調整やトラッキング調整の安定性が低下する傾向のあることが判明した。
【0012】
一方、光ピックアップの3軸アクチュエータにおいて、図8を参照して説明したように、片側及び他側に平行な3本のワイヤーを配備してレンズホルダーを片持ち状態で支持させることは、従来より多々行われている(たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。そして、これらの中で、特許文献4には、片側及び他側の3本のワイヤーのうちの中央のワイヤーを左右方向で傾斜して配備することにより、アクチュエータの振動特性を減衰させる試みについての記述がなされている。
【特許文献1】特開2006−134411号公報
【特許文献2】特開2005−116062号公報
【特許文献3】特開2006−31739号公報
【特許文献4】特開2000−242944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、以上の状況の下でなされたものであり、アクチュエータの片側及び他側に3本のワイヤーが配備されている3軸アクチュエータに限らず、アクチュエータの片側及び他側に2本のワイヤーが配備されている2軸アクチュエータや、アクチュエータの片側及び他側に3本より多いワイヤーが配備されている多軸アクチュエータなどにおいて、可動側レンズホルダーのフォーカス調整やトラッキング調整の安定性を低下させることなく、アクチュエータの振動特性を改善して可動側レンズホルダーのピッチング動作を抑制することのできる光ピックアップのアクチュエータを提供することを目的としている。
【0014】
また、本発明は、可動側レンズホルダーのピッチング動作を抑制するために講じた対策が、アクチュエータの薄形化(背低化)にも役立つ光ピックアップのアクチュエータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る光ピックアップのアクチュエータは、対物レンズを備えた可動側レンズホルダーに、固定側支持部材に一端部が固定されて上記可動側レンズホルダーのフォーカス変位方向に並んで配列された複数本のワイヤーの他端部が固定されていて、上記ワイヤーの一端部の固定箇所に、上記固定側支持部材と上記可動側支持部材との並び方向に対して直交する姿勢で上記固定側支持部材に固着されている配線基板のランドパターンが選択されている。
【0016】
そして、複数本の上記ワイヤーのそれぞれの一端部の固定箇所として選択された配線基板の上記ランドパターンが、上記配線基板の高さ方向で、上記配線基板の厚さ方向での耐撓み変形性の異なる1箇所の難撓み部位と1箇所又は複数箇所の易撓み部位とにそれぞれ形成されていて、複数本の上記ワイヤーのうちの1本のワイヤーの一端部が固定されているランドパターンの属する上記難撓み部位が、残りのワイヤーの一端部が固定されているランドパターンの属する上記易撓み部位に対し、配線基板の幅方向中央側にシフトしている。
【0017】
上記構成において、配線基板に形成されている「難撓み部位」及び「易撓み部位」は、ワイヤーの伸縮作用によって配線基板の厚さ方向での撓みやすさの難易度につき、撓みにくい部位を難撓み部位と表現し、撓みやすい部位を易撓み部位として表現したものである。また、「耐撓み変形性」は、配線基板を撓み変形させる方向に加わる外力に抗する性質のことである。
【0018】
上記のように構成されているアクチュエータによると、一端部が配線基板の難撓み部位に固定されたワイヤーによってフォーカス調整やトラッキング調整の安定性の低下が抑制されつつ、一端部が配線基板の易撓み部位に固定されたワイヤーの伸縮が吸収されやすくなるために、アクチュエータの振動特性が改善されて可動側レンズホルダーのピッチング動作が抑制されるようになる。また、難撓み部位が易撓み部位に対して配線基板の幅方向中央側にシフトしている、という構成を採用したことにより、それらの各部位に一端部が固定されているワイヤーの相互間隔をいたずらに狭めることなく、配線基板の高さ方向でのワイヤーの相互間隔を狭めることが可能になり、そのことが、アクチュエータの電気特性を損なわずにその薄形化を促進することに役立つ。
【0019】
上記構成は、3軸アクチュエータにおいて好ましく適用することができる。すなわち、可動側レンズホルダーのフォーカス変位方向に並んで配列されたワイヤーの本数が3本であって、そのうちの中央の1本のワイヤーの一端部が配線基板の上記難撓み部位のランドパターンに固定され、残りの2本のワイヤーのそれぞれの一端部が、配線基板の上記難撓み部位を挟む両側に形成されている上記易撓み部位のランドパターンに各別に固定されているという構成を採用することによって、上記構成を3軸アクチュエータにおいて好ましく適用することができる。
【0020】
本発明に係る3軸アクチュエータでは、上記配線基板の幅方向端部に凹所を形成することにより、その配線基板に、上記凹所を挟む高さ方向両側に各別に位置する突片部と、それらの突片部の相互間で上記凹所の底縁に臨む部分に位置する凹入部とが具備されていて、上記突片部が上記易撓み部位とされ、かつ、上記凹入部が上記難撓み部位とされている、という構成を採用することが望ましい。この構成を採用することにより、上記した作用、すなわち、一端部が配線基板の難撓み部位に固定された中央のワイヤーによってフォーカス調整やトラッキング調整の安定性の低下が抑制されつつ、一端部が配線基板の易撓み部位に固定された上下2本のワイヤーの伸縮が吸収されやすくなって、アクチュエータの振動特性が改善され、可動側レンズホルダーのピッチング動作が抑制されるようになる。併せて、難撓み部位や易撓み部位に一端部が固定されているワイヤーの相互間隔をいたずらに狭めることなく、配線基板の高さ方向でのワイヤーの相互間隔を狭めることが可能になり、アクチュエータの電気特性を損なわずにその薄形化を促進することが容易に可能になる。さらに、配線基板には凹所を形成する加工を施すだけで済むので、実際上の加工が困難又は不可能な形状の加工(加工限界を越える加工)を施す必要がない。そのため、配線基板に形成される凹所は、加工限界を越えない範囲の加工を行うだけで済み、そのことが加工コストの高騰を回避することに役立つ。
【0021】
本発明では、上記凹所が、当該配線基板の幅方向に延びる一対の平行な横辺とそれらの横辺の相互間に亘る縦辺とにより取り囲まれた形状に形作られていると共に、一方及び他方の上記横辺が、それらに滑らかに連続する円弧状に凹入した谷形輪郭線を介して上記縦辺に連続していると共に、その縦辺は、2箇所の上記輪郭線を滑らかに連続させる円弧状に迫り出した山形輪郭線を有していて、上記難撓み部位を形成している上記凹入部の端縁の輪郭線が上記山形輪郭線によって形成されている、という構成を採用することが可能である。この構成を採用することにより、易撓み部位の根元に亀裂が生じやすくなることを回避することが可能になるだけでなく、難撓み部位を配線基板の幅方向で易撓み部位に近付けることも可能になるので、難撓み部位に一端部が固定されている1本のワイヤーが他の2本のワイヤーに対して傾斜するような場合でも、その傾斜角度を小さく抑えられる。そのため、フォーカス調整やトラッキング調整の際の当該ワイヤーの変形特性を他の2本のワイヤーの変形特性に近似させてアクチュエータの振動特性を改善することが可能になる。
【0022】
本発明では、複数本の上記ワイヤーが、上記可動側レーザホルダー及び上記固定側支持部材を挟む両側に対称に配備されていることが望ましい。この構成によれば、フォーカス調整やトラッキング調整が安定し、チルト調整も安定する。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明に係る光ピックアップのアクチュエータによれば、3軸アクチュエータに限らず、2軸アクチュエータやその他の多軸アクチュエータなどにおいて、可動側レンズホルダーのフォーカス調整やトラッキング調整の安定性を低下させることなく、アクチュエータの振動特性を改善して可動側レンズホルダーのピッチング動作を抑制することが可能になる。したがって、可動側レンズホルダーの不慮のピッチング動作によって所謂画像乱れや音飛びなどを生じにくくなる。また、可動側レンズホルダーのピッチング動作を抑制するために講じた対策が、アクチュエータの薄形化(背低化)にも役立つために、光ピックアップの小形化薄形化を促進しやすくなるという効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は本発明の実施形態に係る光ピックアップのアクチュエータに用いられる配線基板の具体的形状を示した正面図である。この配線基板4は、図8を参照して説明したアクチュエータ1において、固定側支持部材2の背面に固定されている配線基板4に相当している。そして、この配線基板4の幅方向の片側及び他側の各端部のランドパターン51,52,53が、アクチュエータ1の片側及び他側の3本のワイヤー61,62,63のそれぞれの一端部の固定箇所として選択される。実施形態の光ピックアップに採用されているアクチュエータの基本構成は図8を参照して説明したところと同様である。すなわち、アクチュエータ1は、光学台に搭載されてディスクの半径方向に走行駆動され、その光学台に固定される固定側支持部材2と、対物レンズ31を備える可動側レンズホルダー3と、固定側支持部材2の背面に固着された配線基板4と、可動側レンズホルダー3の左右両側の側面のそれぞれに固着された中継基板5,5と、可動側レーザホルダー3及び固定側支持部材2を挟む両側に同一本数(3本)ずつ対称に配備されている弾性を有するワイヤー(サスペンションワイヤー)6…とを備えている。また、可動側レンズホルダー3のフォーカス変位方向に平行に並んでいる複数本のワイヤー6…は、それぞれの一端部が固定側支持部材2に固定され、それぞれの他端部が可動側レンズホルダー3に固定されている。
【0025】
さらに、複数本のワイヤー6の一端部と固定側支持部材2との固定箇所では、ワイヤー6の一端部が配線基板4のランドパターンに半田付けなどの適宜手段で固定されているのに対し、複数本のワイヤー6の一端部と可動側レンズホルダー3のとの固定箇所では、ワイヤー6の他端部が配線基板4のランドパターンに半田付けなどの適宜手段で固定されている。固定側支持部材2の側面の凹所21にダンパー剤が装填されていて、上記ワイヤー6はそれらのダンパー剤の層内を挿通している。
【0026】
さらに、可動側レンズホルダー3には、フォーカス変位方向F又はトラッキング変位方向Tの付勢力を発揮させるためのコイルや、チルト調整のためのコイルなど(いずれも不図示)が装備されていて、それらのコイルから延び出た引出し線が、上記中継基板5,5を介して所定の上記ワイヤー6に電気的に接続されている。
【0027】
図1に示した配線基板4ではその幅方向端部にコ字形に凹入した1つの凹所71を形成することにより、その配線基板4に、凹所71を挟む高さ方向両側に各別に位置する略同一形状の突片部56,57と、それらの突片部56,57の相互間で凹所71の底縁に臨む部分に位置する凹入部59とが具備されている。ここで、上下の上記突片部56,57は、図10に示した配線基板4の上下の突片部56,57に相応しているので、説明の便宜上、それらに同一の符号を付してある。
【0028】
配線基板4の端部に形成されている上下の突片部56,57は、それらの根元幅が、それらの間に形成されている凹入部59の根元幅(配線基板4の高さ寸法に相当している)よりも極端に短いために、突片部56,57は、それらの耐撓み変形性が凹入部59よりも劣っている。したがって、上下の突片部56,57に一端部が固定されたワイヤー61,62(図9参照)の伸縮を吸収する作用と、凹入部59に一端部が固定されたワイヤー63(図9参照)の伸縮の吸収作用とを比べると、上下の突片部56,57による伸縮吸収作用が中央の凹入部59のそれよりも顕著に現れる。したがって、上下の突片部56,57が配線基板4の難撓み部位に相当し、凹入部59が配線基板4の易撓み部位に相当している。また、図1の配線基板4は、図10を参照して説明した配線基板4の高さ方向中央部の突片部58を切除した上で、突片部56,57に対して破線基板5の幅方向中央側にシフトした箇所(凹入部59の内側)に凹入部59を設けた形状になっている。したがって、配線基板4の高さ寸法H1は、図10を参照して説明した配線基板4のそれと同一である。
【0029】
図1の構成を有する配線基板4を採用したアクチュエータにおいて、上下の突片部56,57のランドパターン51,52に上下のワイヤー61,62の一端部を固定し、中央の凹入部59のランドパターン53に中央のワイヤー63の一端部を固定したものでは、ピッチング動作に伴って発生する上下のワイヤー61,62の伸縮が突片部56,57の厚さ方向での撓み変形により吸収される反面で、凹入部59に一端部が固定されている中央のワイヤー63の伸縮は、上下のワイヤー61,62よりも吸収されにくい。この状況が生じることにより、一端部が配線基板4の難撓み部位(凹入部59)に固定された中央のワイヤー63によってフォーカス調整やトラッキング調整の安定性の低下が抑制されつつ、一端部が配線基板4の易撓み部位(突片部56,57)に固定された上下2本のワイヤー61,62の伸縮が吸収されやすくなって、アクチュエータの振動特性が改善され、可動側レンズホルダーのピッチング動作が抑制される。なお、ここでのワイヤー61,62,63の符号については図9を参照している。
【0030】
図2は他の実施形態に係る光ピックアップのアクチュエータに用いられる配線基板の具体的形状を示した正面図である。同図の配線基板4は、図1に示した配線基板4の凹所71の縦幅h1を狭めることによって、当該配線基板4の高さ寸法H2を狭めたものに相当している。すなわち、図2に示した配線基板4の凹所71の縦幅h2は、図1に示した配線基板4の凹所71の縦幅h1よりも短くなっている。このように凹所71の縦幅を短くすると、配線基板4の高さ寸法H2が短く抑えられるので、その配線基板4が固定されている固定側支持部材2の高さ寸法(厚さ寸法)も短くできるようになり、そのことが、アクチュエータ1の薄形化を促進することに役立つ。なお、図2の配線基板4において、凹入部59のシフト幅S1は、図1に示した配線基板4の凹入部59のシフト幅S1と同一である。その他の構成や作用は、図1を参照して説明したところと同様である。
【0031】
図3はさらに他の実施形態に係る光ピックアップのアクチュエータに用いられる配線基板の具体的形状を示した正面図である。同図の配線基板4では、凹所7の縦幅h1と配線基板4の高さ寸法H1とを、図1に示した配線基板4の凹所7の縦幅h1と配線基板4の高さ寸法H1と同一に保ち、凹入部59のシフト幅S2を、図1に示した配線基板4の凹入部59のシフト幅S1よりも少なくしてある。
【0032】
また、図4はさらに他の実施形態に係る光ピックアップのアクチュエータに用いられる配線基板の具体的形状を示した正面図である。同図の配線基板4では、凹所7の縦幅h3を図1に示した配線基板4の凹所7の縦幅h1よりも短くして、当該配線基板4の高さ寸法H3を図1に示した配線基板4の高さ寸法H1よりも短くしてあることと併せて、凹入部59のシフト幅S2を、図1に示した配線基板4の凹入部59のシフト幅S1よりも少なくしてある。したがって、図4の配線基板4を用いると、配線基板4が固定されている固定側支持部材2の高さ寸法(厚さ寸法)を短くできるようになり、そのことが、アクチュエータ1の薄形化を促進することに役立つ。
【0033】
図3及び図4に示した配線基板4では、凹入部59のシフト幅S2を少なくするための対策として、図3、図4又は一部拡大して示した図5の構成を採用している。すなわち、凹所71が、配線基板4の幅方向に延びる一対の平行な横辺81,82とそれらの横辺81,82の相互間に亘る縦辺83とにより取り囲まれた正面視で略コ字形の形状に形作られている。そして、一方及び他方の横辺81,82が、それらに滑らかに連続する円弧状に凹入した谷形輪郭線81a,82aを介して縦辺83に連続していると共に、その縦辺83は、2箇所の上記輪郭線81a,82aを滑らかに連続させる円弧状に迫り出した山形輪郭線83aを有していて、凹入部59の端縁の輪郭線がその山形輪郭線83aによって形成されている、という構成を採用している。この構成を採用すると、難撓み部位を形成している凹入部59が配線基板4の幅方向で突片部56,57に近付くために、凹入部59のシフト幅S2を少なくすることが可能になる。また、一方及び他方の横辺81,82が、それらに滑らかに連続する円弧状に凹入した谷形輪郭線81a,82aを介して縦辺83に連続していることにより、易撓み部位を形成している上下の突片部56,57の根元に亀裂が生じやすくなることを回避することも可能になる。
【0034】
図6及び図7は固定側支持部材2の背面に固定されている配線基板4にワイヤーの一端部が固定されている状態を示した水平断面図であり、図6は上側のワイヤー61についての状態、図7は中央のワイヤー63についての状態をそれぞれ示している。
【0035】
固定側支持部材2の両側に対称に配備されている上側のワイヤー61,61は図6のように平行になっている(下側のワイヤー62,62についても同様)。これに対し、固定側支持部材2の両側に対称に配備されている中央のワイヤー63は、その一端部が固定されている凹入部59が配線基板4の幅方向中央側にシフトされているために、そのシフト幅に見合って傾斜している。そして、中央のワイヤー63の傾斜角度は、凹入部59のシフト幅が少ないほど少なくなる。したがって、フォーカス調整やトラッキング調整の際の中央のワイヤー63の変形特性を他の2本のワイヤー61,62の変形特性に近似させてアクチュエータの振動特性を改善するためには、図3や図4に示した事例のように、シフト幅S2を少なくしておくことが望ましい。
【0036】
なお、この実施形態では、図6又は図7によって判るように、配線基板4の突片部56を固定側支持部材2の背面から浮き上がらせてその撓み性を確保してある(突片部57についても同様)。また、配線基板4の凹入部59も同様に固定側支持部材2の背面から浮き上がらせてある。しかし、凹入部59については、固定側支持部材2の背面から浮き上がらせておく必要はない。
【0037】
ところで、図1〜図4に示した実施形態のように、配線基板4の幅方向端部に凹所71を形成することにより、その凹所71の上下両側に突片部56,57を形成し、かつ、その凹所71の内側のシフトした部位に凹入部59を形成して、それぞれにランドパターン51,52,53を形成しておくことは、フォーカス調整やトラッキング調整の安定性の低下を抑制しつつ、アクチュエータの振動特性を改善してピッチング動作を抑制することに役立つだけでなく、配線基板4の高さ寸法を短くしてアクチュエータの薄形化を図るときに、配線基板4に施す加工面で次のような利点がある。
【0038】
すなわち、図10に示した配線基板4のように、配線基板4の端部の2箇所に凹所54,55を形成してその配線基板4の端部を3つの突片部56,57,58に分ける場合に、配線基板4の高さ寸法H1を短くするためには、凹所54,55の縦幅を短くすればよいと考えられるけれども、それらの凹所54,55の縦幅をいたずらに短くすることには加工上の限界がある。それに対して、図1〜図4に示した実施形態のように凹入部59を内側にシフトさせるという対策を講じると、凹所71の縦幅をいたずらに短くしなくても、上下の突片部56,57を近付けて配線基板4の高さ寸法を無理なく短くすることが可能になる。したがって、実施形態の構成を採用すると、配線基板4に加工限界を越える無理な加工を施さずに、アクチュエータの薄形化を容易に促進することが可能になる。
【0039】
上記実施形態では、3軸アクチュエータについて説明したけれども、この発明は、上記した2軸アクチュエータや多軸アクチュエータについても適用可能である。
【0040】
なお、図1〜図10にあっては、説明の便宜上、同一又は相応する要素に同一符号を付してある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態に係る光ピックアップのアクチュエータに用いられる配線基板の具体的形状を示した正面図である。
【図2】他の実施形態に係る上記配線基板の具体的形状を示した正面図である。
【図3】さらに他の実施形態に係る上記配線基板の具体的形状を示した正面図である。
【図4】さらに他の実施形態に係る上記配線基板の具体的形状を示した正面図である。
【図5】図4のV部の拡大図である。
【図6】固定側支持部材の背面に固定されている配線基板にワイヤーの一端部が固定されている状態を示した水平断面図である。
【図7】固定側支持部材の背面に固定されている配線基板にワイヤーの一端部が固定されている状態を示した水平断面図である。
【図8】光ピックアップのレンズアクチュエータの一般的構成を示した概略斜視図である。
【図9】ピッチング動作が発生するときの状況を示した説明図である。
【図10】従来例に係る配線基板の形状を例示した正面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 アクチュエータ
2 固定側支持部材
3 可動側レンズホルダー
4 配線基板
6 ワイヤー
31 対物レンズ
51,52,53 ランドパターン
56,57 突片部(易撓み部位)
59 凹入部(難撓み部位)
61,62,63 ワイヤー
71 凹所
81,82 横辺
81a,82a 谷形輪郭線
83 縦辺
83a 山形輪郭線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズを備えた可動側レンズホルダーに、固定側支持部材に一端部が固定されて上記可動側レンズホルダーのフォーカス変位方向に並んで配列された複数本のワイヤーの他端部が固定されていて、上記ワイヤーの一端部の固定箇所に、上記固定側支持部材と上記可動側支持部材との並び方向に対して直交する姿勢で上記固定側支持部材に固着されている配線基板のランドパターンが選択されている光ピックアップのレンズアクチュエータにおいて、
複数本の上記ワイヤーのそれぞれの一端部の固定箇所として選択された配線基板の上記ランドパターンが、上記配線基板の高さ方向で、上記配線基板の厚さ方向での耐撓み変形性の異なる1箇所の難撓み部位と1箇所又は複数箇所の易撓み部位とにそれぞれ形成されていて、複数本の上記ワイヤーのうちの1本のワイヤーの一端部が固定されているランドパターンの属する上記難撓み部位が、残りのワイヤーの一端部が固定されているランドパターンの属する上記易撓み部位に対し、配線基板の幅方向中央側にシフトしていることを特徴とする光ピックアップのレンズアクチュエータ。
【請求項2】
可動側レンズホルダーのフォーカス変位方向に並んで配列されたワイヤーの本数が3本であって、そのうちの中央の1本のワイヤーの一端部が配線基板の上記難撓み部位のランドパターンに固定され、残りの2本のワイヤーのそれぞれの一端部が、配線基板の上記難撓み部位を挟む両側に形成されている上記易撓み部位のランドパターンに各別に固定されている請求項1に記載した光ピックアップのレンズアクチュエータ。
【請求項3】
上記配線基板の幅方向端部に凹所を形成することにより、その配線基板に、上記凹所を挟む高さ方向両側に各別に位置する突片部と、それらの突片部の相互間で上記凹所の底縁に臨む部分に位置する凹入部とが具備されていて、上記突片部が上記易撓み部位とされ、かつ、上記凹入部が上記難撓み部位とされている請求項2に記載した光ピックアップのレンズアクチュエータ。
【請求項4】
上記凹所が、当該配線基板の幅方向に延びる一対の平行な横辺とそれらの横辺の相互間に亘る縦辺とにより取り囲まれた形状に形作られていると共に、一方及び他方の上記横辺が、それらに滑らかに連続する円弧状に凹入した谷形輪郭線を介して上記縦辺に連続していると共に、その縦辺は、2箇所の上記輪郭線を滑らかに連続させる円弧状に迫り出した山形輪郭線を有していて、上記難撓み部位を形成している上記凹入部の端縁の輪郭線が上記山形輪郭線によって形成されている請求項3に記載した光ピックアップのレンズアクチュエータ。
【請求項5】
複数本の上記ワイヤーが、上記可動側レーザホルダー及び上記固定側支持部材を挟む両側に対称に配備されている請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載した光ピックアップのレンズアクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−283054(P2009−283054A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133069(P2008−133069)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】