説明

光ピックアップ及び光ディスク装置

【課題】歩留まりを向上させ得る光ピックアップ、光ディスク装置、及びその固定方法を提供する。
【解決手段】光ピックアップに、発光素子が固定された光学ベース2と、発光素子から発射されたレーザ光の光ディスクにおける反射光を受光して光電変換する受光素子と、受光素子を所定状態に保持し、光学ベース2の所定位置に光硬化性接着剤7により固着されるホルダ5と、光学ベース2の一面側に、光硬化性接着剤7を覆うように取り付けられるフレキシブルプリント基板3とを設け、フレキシブルプリント基板3における光硬化性接着剤7との対向位置に第1の開口部31を形成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ及び光ディスク装置に関し、特に、レーザダイオード等の光学系が配設された光学ベースに対して、フォトダイオードを紫外線硬化性接着剤により固着するようにして製造される光ピックアップに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の光ピックアップにおいては、フォトダイオードが実装されたプリント配線基板をホルダにより保持し、このホルダを紫外線硬化性接着剤により光学ベースの側壁面に固着するようにして製造される。そしてホルダを光学ベースの側壁面に固着するに際しては、紫外線硬化性接着剤に対して光学ベースの上方及び下方の両方向から紫外線を照射するのが望ましい。
【0003】
また、従来、光ディスク装置においては、光ピックアップと、信号処理回路などが形成されたメイン基板とがフレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuits:以下、FPC)を介して接続されている。この場合、FPCは、プリント配線基板と接続される一端側が、例えば光学ベースの上面に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−317132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、CD(Compact Disc)規格、DVD(Digital Versatile Disk)規格及びBD(Blu-ray Disc)規格のライト・リード機能に対応するためにFPCに形成される配線数が増えてきており、FPCの幅が大きくなる傾向にある。
【0006】
ところが、上述のようにフォトダイオードを保持するホルダを光学ベースの側壁面に固着するようにして製造され、かつ、FPCの端部が光学ベースの上面に固定される構造を有する光ピックアップにおいて、FPCの幅が大きくなり過ぎると、FPCの一部が光学ベースにおけるホルダの固着位置にまではみ出してしまい、このFPCの存在により、紫外線硬化性接着剤に光ピックアップの上方から紫外線を照射することができなくなる問題があった。
【0007】
このような場合、紫外線硬化性接着剤に対して照射方向を工夫することになるが、一般的に紫外線硬化性接着剤の未硬化部が起因してフォトダイオードに位置ずれが発生し、性能変化する問題があった。
【0008】
かかる問題を解決するための方法として、例えば特許文献1にはFPCを光ピックアップの幅方向の中央位置に配置する方法が開示されている。しかしながらこの方法によると、FPCが、光ディスク装置の化粧板と擦れて損傷したり、化粧板からはみ出して光ディスクと接触する問題があった。
【0009】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、フレキシブルプリント基板に損傷を生じさせることなく歩留まりを向上させ得る光ピックアップ及び光ディスク装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため本発明においては、光ピックアップにおいて、発光素子が固定された光学ベースと、前記発光素子から発射されたレーザ光の光ディスクにおける反射光を受光して光電変換する受光素子と、前記受光素子を所定状態に保持し、前記光学ベースの所定位置に光硬化性接着剤により固着されるホルダと、前記光学ベースの一面側に、前記光硬化性接着剤を覆うように取り付けられるフレキシブルプリント基板とを設け、前記フレキシブルプリント基板における前記光硬化性接着剤との対向位置に第1の開口部を形成するようにした。
【0011】
また、本発明においては、光ディスクに対して光学的にデータの書き込み及び又は読み出し行う光ピックアップを有する光ディスク装置において、前記光ピックアップに、発光素子が固定された光学ベースと、前記発光素子から発射されたレーザ光の光ディスクにおける反射光を受光して光電変換する受光素子と、前記受光素子を所定状態に保持し、前記光学ベースの所定位置に光硬化性接着剤により固着されるホルダと、前記光学ベースの一面側に、前記光硬化性接着剤を覆うように取り付けられるフレキシブルプリント基板とを設け、前記フレキシブルプリント基板における前記光硬化性接着剤との対向位置に第1の開口部を形成するようにした。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、歩留まりを向上させ得る光ピックアップ、光ディスク装置、その固定方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態による光ピックアップの構成を示す斜視図である。
【図2】本実施の形態による光ピックアップの構成を示す分解斜視図である。
【図3】本実施の形態による光ピックアップの構成を示す上面図である。
【図4】ホルダと光学ベースとの固着状態を説明するための模式図である。
【図5】ホルダと光学ベースとを固着する紫外線硬化性接着剤に紫外線を照射するときの模式図である。
【図6】FPCの部分図である。
【図7】光ディスク装置における光ピックアップの配置を説明するための上面図である。
【符号の説明】
【0014】
1……光ピックアップ、2……光学ベース、3……FPC、4……カバー、5……ホルダ、6……プリント配線基板、7,8……紫外線硬化性接着剤、9……シャーシ、10……スピンドルモータ、11……開口、31,32……開口部、33〜35……配線、41,42……開口部、51……貫通孔、61……フォトダイオード。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳述する。
【0016】
(1)本実施の形態による光ピックアップの構成
図1〜図3において、1は全体として本実施の形態による光ピックアップを示す。この光ピックアップ1は、レーザダイオードが固定された光学ベース2の上面側にFPC3及びカバー4が固定されると共に、当該光学ベース2における矢印X方向の側壁面に、フォトダイオード61(図4)が実装されたプリント配線基板6を固定保持するホルダ5が紫外線硬化性接着剤7,8を用いて固着されることにより構成されている。
【0017】
光学ベース2には、レーザダイオードから発射されたレーザ光を光ディスクの記録面上に集光し、その光ディスクにおける反射光をプリント配線基板6のフォトダイオード61に導く光学系と、当該光学系に含まれる対物レンズを光ディスクの厚み方向に駆動する対物レンズ駆動系となどがそれぞれ所定位置に配設されている。
【0018】
FPC3は、帯状のポリイミドフィルムの一面側又は両面側に、当該ポリイミドフィルムの長手方向に沿って複数の配線パターンが1層又は複数層に亘って形成されることにより構成されている。そしてFPC3は、その長手方向の一端部が、光学ベース2の上面における矢印X方向の端部に固定されている。
【0019】
このFPC3は、上述の対物レンズ駆動系、レーザダイオード及びプリント配線板6と電気的に接続されており、対応する配線を介して対物レンズ駆動系及びレーザダイオードに対して電源電力を供給したり、プリント配線基板6に実装されたフォトダイオードの出力を外部に伝送し得るようになされている。
【0020】
カバー4は、粉塵等が光学ベース2の内部に入り込むのを防止するためのものであり、金属材を用いて形成され、光学ベース2の上面を覆うように光学ベース2の上面に固定されている。またカバー4は、FPC3の光学ベース上に位置する部分全体を覆うようにその形状が選定されており、これによりカバー4と光学ベース2とでFPC3を挟み込むことによって、FPC3が捲れ上がるのを防止し得るようになされている。
【0021】
ホルダ5は、プリント配線基板6を所定状態に固定保持するために用いられ、紫外線硬化性接着剤7,8を用いて光学ベース2の矢印X方向の側面に固着される。このホルダ5には、図4に示すように、その長手方向及び幅方向の中央部に所定大きさの貫通孔51が設けられており、レーザダイオードから発射されたレーザ光の光ディスクにおける反射光がこの貫通孔51を通過して、プリント配線基板6に入射できるようになされている。
【0022】
プリント配線基板6は、図4に示すように、その長手方向及び幅方向の中央部にフォトダイオード61が実装されている。このフォトダイオード61は、ホルダ5の貫通孔51を介して入射する光ディスクからの反射光を光電変換し、かくして得られた受光信号を、FPC3を介して信号処理回路等が形成されたメイン基板(図示せず)に送信する。
【0023】
紫外線硬化性接着剤7,8は、光学ベース2とホルダ5とを固着する接着剤であり、ディスペンサにより光学ベース2及びホルダ5間の所定位置に供給され、紫外線を照射することにより硬化される。
【0024】
かかる構成に加えて本実施の形態の場合、図3及び図4に示すように、FPC3における紫外線硬化性接着剤7,8との対向位置には開口部31,32が設けられると共に、カバー4におけるFPC3の各開口部31,32との対向位置にも、これら開口部31,32と連通するように開口部41,42がそれぞれ設けられている。
【0025】
これによりこの光ピックアップ1においては、紫外線硬化性接着剤7,8の硬化処理時に、FPC3及びカバー4に遮られることなく、カバー4の各開口部41,42及びFPC3の各開口部31,32を順次介して紫外線を紫外線硬化性接着剤7,8に照射することができるようになされている。
【0026】
またFPC3には、例えば図6に示すように、各開口部31,32の外縁を取り囲むように配線33が形成されており、これによりこの配線33により各開口部31,32を物理的に強化することができるようになされている。
【0027】
なお本実施の形態の場合、かかる配線33としては、グランドに接続されるグランドラインが適用されている。これによりFPC3においては、例えばカバー4との摩擦によりFPC3に損傷が発生し、かかる配線33とカバー4とが電気的に接触した場合においてもショートが発生するのを未然に防止し得るようになされている。
【0028】
また本実施の形態の場合、FPC3に形成される、例えば信号入出力用などの一対の配線34,35については、かかる配線33に対してFPC3の幅方向の同じ側に隣接して配置されている。これにより本実施の形態においては、入出力用の一対の配線34,35間においてインピーダンスの違いが発生するのを未然に防止し得るようになされている。
【0029】
(2)光ディスク装置への実装例
図7は、かかる本実施の形態による光ピックアップ1が搭載された光ディスク装置のトレイの一部構成を示す。この図7からも明らかなように、かかる光ディスク装置は、光ピックアップ1と、シャーシ9と、ターンテーブル10とを備える。
【0030】
シャーシ9には開口11が設けられており、光ディスクに対してこの開口11を介してレーザ光を照射し得るように、かつ、図示しないスレッドモータにより矢印aの方向に自在に移動し得るように光ピックアップ1が配置される。
【0031】
この場合において、本実施の形態による光ピックアップ1においては、上述のようにFPC3が光学ベース2の幅方向の端部に配置されているため、かかるシャーシ9の開口11を介して外部に露出することがなく、従って、かかるFPC3が光ディスクと接触することはない。
【0032】
(3)本実施の形態の効果
以上の構成において、本実施の形態の光ピックアップ1は、紫外線硬化性接着剤7,8の硬化処理時、光学ベース2の下方からのみならず、光学ベース2の上方からもカバー4の開口部41,42及びFPC3の開口部31,32を順次介して紫外線硬化性接着剤7,8に対して紫外線を照射することができる。
【0033】
従って、本光ピックアップ1によれば、紫外線硬化性接着剤7,8の上方部分及び下方部分を均等に硬化させることができるため、紫外線硬化性接着剤7,8の硬化処理後に当該紫外線硬化性接着剤7,8に未硬化部分が残ることに起因して発生するフォトダイオード61の位置ずれを未然に防止することができる。かくするにつき本光ピックアップ1によれば、歩留まりを向上させることができる。
【0034】
(4)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、本発明を、接着剤として紫外線硬化性接着剤を使用する光ピックアップに適用する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、紫外線以外の光によって硬化する特性を有する接着剤を使用する光ピックアップにも広く適用することができる。
【0035】
また上述の実施の形態においては、発光素子としてレーザダイオードを適用し、受光素子としてフォトダイオードを適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、発光素子及び受光素子としては、これらレーザダイオードやフォトダイオード以外の部材を広く適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、BD規格、DVD規格、CD規格又はそれ以外の規格に準拠した光ピックアップに適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子が固定された光学ベースと、
前記発光素子から発射されたレーザ光の光ディスクにおける反射光を受光して光電変換する受光素子と、
前記受光素子を所定状態に保持し、前記光学ベースの所定位置に光硬化性接着剤により固着されるホルダと、
前記光学ベースの一面側に、前記光硬化性接着剤を覆うように取り付けられるフレキシブルプリント基板と
を備え、
前記フレキシブルプリント基板における前記光硬化性接着剤との対向位置に第1の開口部が形成された
ことを特徴とする光ピックアップ。
【請求項2】
前記フレキシブルプリント基板を介して前記光学ベースの一面側に取り付けられるカバーを備え、
前記カバーにおける前記フレキシブルプリント基板の前記第1の開口部との対向位置に、当該第1の開口部と連通する第2の開口部が形成された
ことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ。
【請求項3】
前記フレキシブルプリント基板は、
前記第1の開口部の外縁を取り囲むようにパターンが形成された第1の配線を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ。
【請求項4】
前記第1の配線は、
グランド接続された配線である
ことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ。
【請求項5】
前記フレキシブルプリント基板は、
入出力用の一対の配線が、前記第1の配線に対して当該フレキシブルプリント基板の幅方向の同じ側に隣接して形成される
ことを特徴とする請求項3に記載の光ピックアップ。
【請求項6】
光ディスクに対して光学的にデータの書き込み及び又は読み出し行う光ピックアップを有する光ディスク装置において、
前記光ピックアップは、
発光素子が固定された光学ベースと、
前記発光素子から発射されたレーザ光の光ディスクにおける反射光を受光して光電変換する受光素子と、
前記受光素子を所定状態に保持し、前記光学ベースの所定位置に光硬化性接着剤により固着されるホルダと、
前記光学ベースの一面側に、前記光硬化性接着剤を覆うように取り付けられるフレキシブルプリント基板と
を備え、
前記フレキシブルプリント基板における前記光硬化性接着剤との対向位置に第1の開口部が形成された
ことを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−70734(P2011−70734A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221779(P2009−221779)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】