説明

光ピックアップ装置、光記録再生装置、および光記録媒体の記録再生方法

【課題】3波長を出射する3つのレーザダイオードを搭載し、共通の対物レンズを備えた、光ピックアップ装置において、各記録媒体に十分なレーザ出力を供給する。
【解決手段】光ピックアップ装置1は、波長399〜413nmのレーザ光を出射する第1のレーザダイオード31と、波長630〜660nmのレーザ光を出射する第2のレーザダイオード41と、波長770nm〜790nmのレーザ光を出射する第3のレーザダイオード42と、共通する光路上に設けられた対物レンズ14と、各レーザダイオードの作動を制御する制御部2と、を備えている。対物レンズ14を通過後のレーザ光出力の出射出力に対する比は第3のレーザダイオード42が最も小さい。CDへの記録は第1または第2のレーザダイオード31,41から出射されたレーザ光でおこない、CDの再生は第3のレーザダイオード42から出射されたレーザ光でおこなう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置、光記録再生装置、および光記録媒体の記録再生方法に関し、特に波長399〜413nm、630〜660nm、および770nm〜790nmのレーザ光を用いた光ピックアップ装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、波長780nm付近のレーザ光を用いてCD(Compact Disc)に記録再生をおこなう光ピックアップ装置や、波長650nm付近のレーザ光を用いてDVD(Digital Versatile Disc)に記録再生をおこなう光ピックアップ装置が知られている。一つの光ピックアップ装置で複数の波長のレーザ光を取り扱う場合、各波長に対応した光学系を単独で設けずに、光路を共用化する構成が一般的である。光路を共用化することによって、対物レンズやビームスプリッタ等の光学部品を共通化することができる。この場合、波長780nm付近のレーザ光を用いてCDの記録再生を、波長650nm付近のレーザ光を用いてDVDの記録再生をおこなうことが一般的であるが、波長650nm付近のレーザ光を用いてCDおよびDVDの両者の記録再生をおこなうことも可能である。波長650nm付近のレーザ光の方が少ないエネルギーで記録再生ができるため、後者の方法は、消費電力の点で有利である。しかし、CD−R(CD-Recordable)は、波長780nm付近の近傍に反射率のピークを持つため、波長650nm付近のレーザ光による再生に適さない。そこで、CD−Rについては、波長650nm付近のレーザ光で記録し、波長780nm付近のレーザ光で再生する技術が開示されている(特許文献1,2)。また、記録時には波長650nm付近のレーザ光と波長780nm付近のレーザ光とを同時に照射し、再生時には波長780nm付近のレーザ光のみを照射する技術も開示されている(特許文献3)。
【0003】
共通の光路を設ける場合、記録媒体に隣接する対物レンズは一つだけ設けられる。対物レンズはレーザ光を記録媒体の所定の位置、深さに収束させる役割を有しているが、対物レンズに入射する波長によって球面収差などの光学特性が異なり、例えばDVDに対して最適化された対物レンズをCD用にそのまま使うことができない。このため、波長に応じた2つの焦点を有する対物レンズが用いられる場合がある。このような対物レンズの例として、回折を生じさせる段差(回折格子)をレンズ表面に同心円状に設けたレンズが知られている。例えばDVDを使用する場合は、回折しない透過光(0次光)が記録媒体の所定の位置に収束する。回折光はそこから離れた位置に収束するため、迷光としての悪影響が抑えられる。CDを使用する場合は、1次の回折光が記録媒体の所定の位置に収束する。このようにして、一つの対物レンズでCD、CD−R、およびDVDの記録再生をおこなうことが可能となる。
【特許文献1】特開平10−320818号公報
【特許文献2】特開平10−21550号公報
【特許文献3】特開2000−113488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、波長405nm付近の青色レーザ光を用いてより高密度の記録再生をおこなう光ピックアップ装置が開発されている。本明細書では、波長405nm付近の青色レーザ光を用いた記録再生に用いられる記録媒体を高密度光ディスクという。一つのピックアップで、CD−Rを含むCD、DVD、および高密度光ディスクに対応するためには、波長405nm付近、650nm付近、および780nm付近のレーザ光の光源を一つのピックアップ装置に搭載する必要がある。そして、ピックアップ装置のコストやサイズを抑えるためには、光路をできるだけ共通化し、対物レンズ等の主要光学部品をできるだけ共通化することが好ましい。
【0005】
ピックアップ装置の光学系が共通化され、回折格子を有する対物レンズが一つだけが設けられる場合、対物レンズは各波長に対応して3つの焦点を有することになる。しかし、各波長のレーザ光を、対応する焦点位置に各々完全に収束させることはできない。本明細書では、対物レンズに入射するレーザ光出力に対する、対応する焦点位置に収束するレーザ光出力の比を回折効率と呼ぶ。回折効率は波長毎に異なる値を持つが、3種類の波長のすべてについて100%の回折効率を得ることは不可能である。そこで、実際には、3種類の波長のレーザ光を対応する焦点位置に、各々どのような回折効率で収束させるかが問題となる。高密度光ディスクは、CD、DVD等の他の記録媒体と比べて必要とされる精度が高く、より高度な最適化を必要とするために、波長405nm付近のレーザ光が有効に利用されるように、波長405nm付近のレーザ光に高い回折効率を割当て最適化されていることが望ましい。しかし、波長405nm付近のレーザ光の回折効率を優先した対物レンズを用いると、波長650nm付近および780nm付近での回折効率、特に波長の離れた780nm付近での回折効率を他の波長と同等に保つことは難しい。すなわち、波長780nm付近のレーザ光の回折効率は、従来のCDおよびDVD(波長650nm付近、780nm付近)だけに対応していた光ピックアップ装置と比べて低下する傾向となる。
【0006】
回折効率が下がると、記録媒体に到達するレーザ光の出力も低下する。特に記録媒体への記録時には、再生時と比べて1桁以上大きな出力を必要とするため、記録性能が低下する可能性が生じる。必要とされるレーザ光の出力は記録媒体の回転数が高いほど大きくなるため、780nm付近のレーザ光の出力が低下すると、24倍速、48倍速等の高速でのCDへの記録が現行の高出力のレーザダイオードを使っても実現できない可能性がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、波長405nm付近、650nm付近、および780nm付近のレーザ光を出射する3つのレーザダイオードを搭載し、共通の対物レンズを備えた、光ピックアップ装置において、各記録媒体に十分な記録再生用のレーザ出力を供給することのできる光ピックアップ装置を提供することを目的とする。また、本発明はこのような光ピックアップ装置を用いて、各記録媒体に十分な記録再生用のレーザ出力を供給することのできる光記録媒体の記録再生方法、および光記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施態様に係る光ピックアップ装置は、波長399〜413nmのレーザ光を出射する第1のレーザダイオードと、波長630〜660nmのレーザ光を出射する第2のレーザダイオードと、波長770nm〜790nmのレーザ光を出射する第3のレーザダイオードと、第1から第3のレーザダイオードから出射されたレーザ光の共通する光路上に設けられた対物レンズと、各レーザダイオードの作動を制御する制御部と、を備え、対物レンズを通過後のレーザ光出力の出射出力に対する比が、第1および第2のレーザダイオードよりも第3のレーザダイオードの方が小さくなるよう構成されている。制御部は、第1の記録媒体の記録または再生を、第1のレーザダイオードから出射されたレーザ光を、対物レンズを介して第1の記録媒体に集光させることによっておこない、第1の記録媒体よりも記録密度の低い第2の記録媒体の記録または再生を、第2のレーザダイオードから出射されたレーザ光を、対物レンズを介して第2の記録媒体に集光させることによっておこない、第1および第2の記録媒体よりも記録密度の低い第3の記録媒体への記録を、第1または第2のレーザダイオードから出射されたレーザ光を、対物レンズを介して第3の記録媒体に集光させることによっておこない、第3の記録媒体の再生を、第3のレーザダイオードから出射されたレーザ光を、対物レンズを介して第3の記録媒体に集光させることによっておこなうようにされている。
【0009】
第3のレーザダイオードから出射したレーザ光は、対物レンズを通過後のレーザ光出力の出射出力に対する比が最も小さい。このため、これを用いて第3の記録媒体への記録をおこなうと、特に高速回転する第3の記録媒体に十分なレーザ出力を与えることができない。しかし、本実施態様では、第3の記録媒体への記録は第1または第2のレーザダイオードを用いておこなうため、より大きなレーザ出力を第3の記録媒体に与えることができる。これは、記録媒体への記録は、波長よりもレーザ出力の大きさがより重要であるためである。一方、記録媒体の再生は、レーザ出力よりもレーザ光の波長がより重要である場合がある。このように、記録と再生で異なる波長のレーザ光を用いることによって、特に第3の記録媒体への記録再生を従来と同様におこなうことができる。
【0010】
対物レンズは回折格子を備え、波長770nm〜790nmでの回折効率が波長399〜413nmおよび630〜660nmでの回折効率より小さくされていてもよい。
【0011】
本発明の一実施態様に係る光記録媒体の記録再生方法は、波長399〜413nmのレーザ光を出射する第1のレーザダイオードと、波長630〜660nmのレーザ光を出射する第2のレーザダイオードと、波長770nm〜790nmのレーザ光を出射する第3のレーザダイオードと、第1から第3のレーザダイオードから出射されたレーザ光の共通する光路上に設けられた対物レンズと、を備え、対物レンズを通過後のレーザ光出力の出射出力に対する比が、第1および第2のレーザダイオードよりも第3のレーザダイオードの方が小さくなるよう構成された光ピックアップ装置を用いた光記録媒体の記録再生方法である。本記録再生方法は、このような光ピックアップ装置を、記録密度の高い順に第1から第3の記録媒体のいずれかである記録媒体に対向させて配置するステップと、記録媒体が第1の記録媒体である場合に、第1のレーザダイオードから出射されたレーザ光を、対物レンズを介して第1の記録媒体に集光させることによって、第1の記録媒体の記録または再生をおこない、記録媒体が第2の記録媒体である場合に、第2のレーザダイオードから出射されたレーザ光を、対物レンズを介して第2の記録媒体に集光させることによって、第2の記録媒体の記録または再生をおこない、記録媒体が第3の記録媒体である場合に、第1または第2のレーザダイオードから出射されたレーザ光を、対物レンズを介して第3の記録媒体に集光させることによって第3の記録媒体の記録をおこない、もしくは、第3のレーザダイオードから出射されたレーザ光を、対物レンズを介して第3の記録媒体に集光させることによって第3の記録媒体の再生をおこなうステップと、を有している。
【0012】
対物レンズは回折格子を備え、波長770nm〜790nmでの回折効率が波長399〜413nmおよび630〜660nmでの回折効率より小さくされていてもよい。
【0013】
第3の記録媒体は有機色素を有し、波長770nm〜790nmでの反射率が波長399〜413nmおよび630〜660nmでの反射率より大きくされていてもよい。
【0014】
本発明の一実施態様に係る光記録再生装置は、上述した光ピックアップ装置を備えている。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、各記録媒体に十分なレーザ出力を供給することのできる光ピックアップ装置を提供することができる。また、本発明によれば、各記録媒体に十分なレーザ出力を供給することのできる光記録媒体の記録再生方法、および光記録再生装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の光ピックアップ装置の一実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る光ピックアップ装置の光学的構成を示す模式図である。
【0017】
光ピックアップ装置1は第1のレーザ発振器3と第2のレーザ発振器4とを有している。第1のレーザ発振器3は波長405nmのレーザ光(青色レーザ光)を出射する第1のレーザダイオード31を備えている。ここで、波長405nmは一例であって、第1のレーザ発振器3は399〜413nmの範囲の任意の波長のレーザ光を出射するものであってもよい。このレーザ光は高密度光ディスクの記録再生に用いられる。第2のレーザ発振器4は、CD用のレーザ光およびDVD用のレーザ光を切り替えて出射する2波長レーザダイオードである。第2のレーザ発振器4は、波長650nmのレーザ光を出射する第2のレーザダイオード41と、波長780nmのレーザ光を出射する第3のレーザダイオード42とを備えている。波長650nmは一例であって、第2のレーザ発振器4は630〜660nmの範囲の任意の波長のレーザ光を出射するものであってもよい。同様に、波長780nmは一例であって、第3のレーザ発振器42は770〜790nmの範囲の任意の波長のレーザ光を出射するものであってもよい。レーザ発振器の構成はこれに限定されるものではなく、光ピックアップ装置の目的に応じて様々な組み合わせが可能である。本実施形態の光ピックアップ装置1は、少なくとも波長399〜413nm、630〜660nm、および770〜790nmのレーザ光を各々が出射する3つのレーザダイオード31,41,42を備えていればよい。
【0018】
レーザダイオード31,41,42は制御部(図示せず)に接続されている。光ピックアップ装置1は対象となる記録媒体がCDであるかDVDであるか高密度光ディスクであるかを識別する識別手段(図示せず)を有しており、制御部は、識別手段での識別結果に基づいてどのレーザダイオードを作動させるかを決定し、選択されたレーザダイオードを作動させる。
【0019】
第1のレーザダイオード31から出射されるレーザ光の光路上には、第1の回折格子・1/2波長板5が設けられている。回折格子はレーザ光のオントラック制御のために用いられる。1/2波長板はレーザ光の偏光方向を制御し、後述の偏光ビームスプリッタ9における反射、透過を制御する。これらは一体で設けられているが、別々の構成でもかまわない。同様に、第2のレーザ発振器4から出射されるレーザ光の光路上には、第2の回折格子・1/2波長板6が設けられている。
【0020】
第1の回折格子・1/2波長板5からのレーザ光の光路と第2の回折格子・1/2波長板6からのレーザ光の光路の交点付近にはダイクロイックプリズム8が設けられている。第1の回折格子・1/2波長板5からのレーザ光はダイクロイックプリズム8を透過し、第2の回折格子・1/2波長板6からのレーザ光はダイクロイックプリズム8で90°の角度で反射する。この結果、いずれのレーザ発振器3,4から出射したレーザ光もダイクロイックプリズム8の通過後は同一の光路を進む。ダイクロイックプリズム8を出た光路上には偏光ビームスプリッタ9が設けられている。偏光ビームスプリッタ9から出射したレーザ光は、反射ミラー10で屈折し、コリメータレンズ11、液晶素子12、1/4波長板13を経て、対物レンズ14に入射する。このように、対物レンズ14は第1から第3のレーザダイオード31,41,42から出射されたレーザ光の共通する光路上に設けられている。
【0021】
レーザ光は記録媒体19の所定の深さに集光され、記録再生が行われる。このため、記録媒体19およびレーザ光の波長に応じて光路方向における焦点位置を修正するため、対物レンズ14はアクチュエータ(図示せず)によって光路方向に可動に構成されている。記録媒体19は、高密度光ディスク(第1の記録媒体)、DVD(第2の記録媒体)、またはCD(第3の記録媒体)であり、CDにはCD−Rの他CD−RW(ReWritable)も含まれる。DVDはDVD−R,DVD−RW等を含む。CD−Rは有機色素を有し、波長780nm近傍で反射率が鋭いピークを示すように最適化されており、波長405nmおよび650nmでの反射率は非常に小さい。レーザ光は波長405nmおよび650nmではほとんど反射しない。DVDの記録密度は高密度光ディスクより小さく、CDの記録密度は高密度光ディスクおよびDVDより小さい。記録時には、レーザ光は記録媒体19に照射され、相変化または有機色素膜の除去がおこなわれる。再生時には、レーザ光は記録媒体19の記録内容に応じた反射波となって対物レンズ14から偏光ビームスプリッタ9まで逆方向に進行する。反射波は偏光ビームスプリッタ9を透過し、センサレンズ15を経てフォトディテクタ(受光素子)16に入射し、受光強度が測定される。光ピックアップ装置1の外部に設けられた測定回路(図示せず)は、受光強度に応じて記録媒体19の記録内容を識別する。
【0022】
対物レンズ14は前述の回折格子を備えている。対物レンズ14は、青色ダイオード(第1のレーザダイオード31)から出射される波長405nmのレーザ光に対する回折効率をできるだけ最適化するように形成されている。また、DVDの場合も高速での記録再生が可能であることが望ましい。このため、対物レンズ14は、第2のレーザダイオード41から出射される波長650nmのレーザ光に対する回折効率もできるだけ確保するように形成されている。このように、波長405nmおよび650nmのレーザ光に対する回折効率を優先した結果、波長780nmのレーザ光に対する回折効率はこれらに比べて小さくなっている。これは回折格子や透過膜の影響のためであるが、波長780nmのレーザ光に対する回折効率を波長405nmおよび650nmのレーザ光に対する回折効率と同等とすることは困難であり、一般的にこれらの波長に対する回折効率よりも小さくなる。この結果、対物レンズ14を通過後のレーザ光出力の出射出力に対する比(以下に示す出力減衰率ηt)は、第1および第2のレーザダイオード31,41よりも第3のレーザダイオード42の方が小さくなっている。
【0023】
表1は、各波長のレーザ光が対物レンズ14を出射するまでにどの程度減衰するかを示す一例である。表中、結合効率η1は、レーザダイオードから出射されるレーザ光のうち、光学系に入る割合を示す。透過率η2は、光学系全体(対物レンズ14を出射するまで)の光透過率を示す。偏光ビームスプリッタ9の反射率は55%としている。本例では、第1および第2のレーザダイオード31,41の出力ロスをできるだけ低減するように対物レンズ14を選定している。この結果、出力減衰率ηtは第1および第2のレーザダイオード31,41で同等、第3のレーザダイオード42でこれらの半分程度となっている。
【0024】
【表1】

【0025】
このような光ピックアップ装置1を用いた記録媒体の記録再生は以下のように行われる(表2参照)。以下に示す記録再生は、前述のように制御部2によって制御される。まず、光ピックアップ装置1を記録媒体19に対向させて配置する。高密度光ディスクの記録または再生は、第1のレーザ発振器3の第1のレーザダイオード31から出射された波長405nmのレーザ光を、対物レンズ14を介して高密度光ディスクに集光させることによっておこなう。DVDの記録または再生は、第2のレーザ発振器4の第2のレーザダイオード41から出射された波長650nmのレーザ光を、対物レンズ14を介してDVDに集光させることによっておこなう。CDへの記録は、第1または第2のレーザダイオード31,41から出射されたレーザ光を、対物レンズ14を介してCDに集光させることによっておこなう。CDの再生は、第2のレーザ発振器4の第3のレーザダイオード42から出射されたレーザ光を、対物レンズ14を介してCDに集光させることによっておこなう。
【0026】
【表2】

【0027】
このようにCDへの記録に第1または第2のレーザダイオード31,41を用いるのは、表1に示すように、第1または第2のレーザダイオード31,41が第3のレーザダイオード42よりも大きな出射出力W2を持っているからである。表3には、各記録媒体19で記録時に必要となるレーザ光の出力の一例を示す。表4には、各記録媒体19で再生時に必要となるレーザ光の出力の一例を示す。いずれも表でも単位はmWである。
【0028】
【表3】

【0029】
【表4】

【0030】
記録の場合は、相変化、色素膜のいずれの方式の記録媒体であっても、レーザ光の出力が重要であり、波長は大きな意味を持たない。そこで、出射出力W2の大きい第1または第2のレーザダイオード31,41を用いることで、記録媒体19の相変化または色素膜の除去をより確実におこなうことができる。例えば、CDに第3のレーザダイオード42を用いて記録を行う場合、13mWの出力しか得られないため、表3より、4倍速以上での記録は困難となる。しかし、第2のレーザダイオード41を用いて記録を行えば、27mWの出力が得られるため、8倍速での記録が可能となる。第1のレーザダイオード31でも15mWの出力が得られるため、4倍速での記録が可能となる。ただし、光学系の構成や記録媒体19の回転速度により、第3のレーザダイオード42でも十分なレーザ出力が得られる場合には、第3のレーザダイオード42を用いてCDに記録をおこなうことも可能である。
【0031】
一方、再生の場合は、表4より、記録時ほど大きなレーザ光出力を必要としないことが分かる。むしろ、CD−Rのように波長780nm付近でのレーザ光でなければ十分な反射率を得られない場合もあり、波長が重要な要素となる。さらに、波長405nmや650nmのレーザ光を再生時に照射すると、これらの波長帯域では記録媒体19の反射率が低く、すなわち吸収率が高いため、記録媒体19に過度のエネルギーが集中し、記録されたデータが破壊される可能性がある。そこで、CDの再生の場合は第3のレーザダイオード42を用いることが適切である。
【0032】
次に、本実施形態の光ピックアップ装置1を用いた光記録再生装置について説明する。図2は、本実施形態の光ピックアップ装置を用いた光記録再生装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【0033】
光記録再生装置101は、上述した光ピックアップ装置1と、記録媒体19を回転させるためのスピンドルモータ112と、スピンドルモータ112および光ピックアップ装置1の動作を制御するコントローラ113と、光ピックアップ装置1にレーザ駆動信号を供給するレーザ駆動回路114と、光ピックアップ装置1にレンズ駆動信号を供給するレンズ駆動回路115と、を備えている。
【0034】
コントローラ113にはフォーカスサーボ追従回路116、トラッキングサーボ追従回路117、およびレーザコントロール回路118が含まれている。フォーカスサーボ追従回路116が作動すると、回転している記録媒体19の情報記録面にフォーカスがかかった状態となり、トラッキングサーボ追従回路117が作動すると、記録媒体19の偏芯している信号トラックに対して、レーザ光のスポットが自動追従状態となる。フォーカスサーボ追従回路116およびトラッキングサーボ追従回路117には、フォーカスゲインを自動調整するためのオートゲインコントロール機能およびトラッキングゲインを自動調整するためのオートゲインコントロール機能がそれぞれ備えられている。また、レーザコントロール回路118は、レーザ駆動回路114により供給されるレーザ駆動信号を生成する回路であり、記録媒体19に記録されている記録条件設定情報に基づいて、適切なレーザ駆動信号の生成を行う。なお、これらフォーカスサーボ追従回路116、トラッキングサーボ追従回路117およびレーザコントロール回路118については、コントローラ113内に組み込まれた回路である必要はなく、コントローラ113と別個の部品であっても構わない。さらに、これらは物理的な回路である必要はなく、コントローラ113内で実行されるソフトウェアであっても構わない。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の光ピックアップ装置によれば、波長405nm、650nm、および780nmのレーザ光を出射する3つのレーザダイオードを、主要光学部品をできるだけ共通化して設けることができる。このため、ピックアップ装置のコストおよびサイズを抑えることができる。また、高密度光ディスクの記録再生に対応しつつ、CD,DVDの高速記録再生も従来と同様に可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ピックアップ装置の光学系を示す概念図である。
【図2】本実施形態の光ピックアップ装置を用いた光記録再生装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【符号の説明】
【0037】
1 光ピックアップ装置
2 制御部
3 第1のレーザ発振器
31 第1のレーザダイオード
4 第2のレーザ発振器
41 第2のレーザダイオード
42 第3のレーザダイオード
5 第1の回折格子・1/2波長板
6 第2の回折格子・1/2波長板
8 ダイクロイックプリズム
9 偏光ビームスプリッタ
10 反射ミラー
11 コリメータレンズ
12 液晶素子
13 1/4波長板
14 対物レンズ
15センサレンズ
16 フォトディテクタ(受光素子)
19 記録媒体
101 光記録再生装置
112 スピンドルモータ
113 コントローラ
114 レーザ駆動回路
115 レンズ駆動回路
116 フォーカスサーボ追従回路
117 トラッキングサーボ追従回路
118 レーザコントロール回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長399〜413nmのレーザ光を出射する第1のレーザダイオードと、
波長630〜660nmのレーザ光を出射する第2のレーザダイオードと、
波長770nm〜790nmのレーザ光を出射する第3のレーザダイオードと、
前記第1から第3のレーザダイオードから出射されたレーザ光の共通する光路上に設けられた対物レンズと、
前記各レーザダイオードの作動を制御する制御部と、
を備え、
前記対物レンズを通過後のレーザ光出力の出射出力に対する比が、前記第1および第2のレーザダイオードよりも前記第3のレーザダイオードの方が小さくなるよう構成され、
前記制御部は、第1の記録媒体の記録または再生を、前記第1のレーザダイオードから出射されたレーザ光を、前記対物レンズを介して第1の記録媒体に集光させることによっておこない、前記第1の記録媒体よりも記録密度の低い第2の記録媒体の記録または再生を、前記第2のレーザダイオードから出射されたレーザ光を、前記対物レンズを介して該第2の記録媒体に集光させることによっておこない、前記第1および第2の記録媒体よりも記録密度の低い第3の記録媒体への記録を、前記第1または第2のレーザダイオードから出射されたレーザ光を、前記対物レンズを介して該第3の記録媒体に集光させることによっておこない、前記第3の記録媒体の再生を、前記第3のレーザダイオードから出射されたレーザ光を、前記対物レンズを介して該第3の記録媒体に集光させることによっておこなうようにされている、光ピックアップ装置。
【請求項2】
前記対物レンズは回折格子を備え、波長770nm〜790nmでの回折効率が波長399〜413nmおよび630〜660nmでの回折効率より小さくされている、請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
波長399〜413nmのレーザ光を出射する第1のレーザダイオードと、波長630〜660nmのレーザ光を出射する第2のレーザダイオードと、波長770nm〜790nmのレーザ光を出射する第3のレーザダイオードと、前記第1から第3のレーザダイオードから出射されたレーザ光の共通する光路上に設けられた対物レンズと、を備え、前記対物レンズを通過後のレーザ光出力の出射出力に対する比が、前記第1および第2のレーザダイオードよりも前記第3のレーザダイオードの方が小さくなるよう構成された光ピックアップ装置を、記録密度の高い順に第1から第3の記録媒体のいずれかである記録媒体に対向させて配置するステップと、
前記記録媒体が第1の記録媒体である場合に、前記第1のレーザダイオードから出射されたレーザ光を、前記対物レンズを介して該第1の記録媒体に集光させることによって、該第1の記録媒体の記録または再生をおこない、前記記録媒体が第2の記録媒体である場合に、前記第2のレーザダイオードから出射されたレーザ光を、該対物レンズを介して該第2の記録媒体に集光させることによって、該第2の記録媒体の記録または再生をおこない、前記記録媒体が第3の記録媒体である場合に、前記第1または第2のレーザダイオードから出射されたレーザ光を、該対物レンズを介して該第3の記録媒体に集光させることによって該第3の記録媒体の記録をおこない、もしくは、該第3のレーザダイオードから出射されたレーザ光を、該対物レンズを介して該第3の記録媒体に集光させることによって該第3の記録媒体の再生をおこなうステップと、
を有する、光記録媒体の記録再生方法。
【請求項4】
前記第3の記録媒体は有機色素を有し、波長770nm〜790nmでの反射率が波長399〜413nmおよび630〜660nmでの反射率より大きくされている、請求項3に記載の光記録媒体の記録再生方法。
【請求項5】
前記対物レンズは回折格子を備え、波長770nm〜790nmでの回折効率が波長399〜413nmおよび630〜660nmでの回折効率より小さくされている、請求項3または4に記載の光記録媒体の記録再生方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の光ピックアップ装置を備えた光記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−257780(P2008−257780A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97282(P2007−97282)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【出願人】(500393893)新科實業有限公司 (361)
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
【住所又は居所原語表記】SAE Technology Centre, 6 Science Park East Avenue, Hong Kong Science Park, Shatin, N.T., Hong Kong
【Fターム(参考)】