説明

光ピックアップ

【課題】 可動部がトラッキング方向に移動したとき、可動部のローリングを防止し、その結果、低域の周波数帯における可動部の加速度感度と位相の各乱れを解消することができる光ピックアップを提供する。
【解決手段】 光ピックアップ1は、可動部2の重心位置Gとトラッキングコイル9によるトラッキング駆動力中心位置Faとはフォーカス方向(X方向)に関してほぼ一致しているが、この一致点が、寸法上の支持中心位置Lに対して光ディスク3側にずれている場合において、可動部がトラッキング方向に移動したときにローリングしないように、一対の第1の支持ワイヤ5aのばね定数を、一対の第2の支持ワイヤ5bのばね定数より大きくしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクの記録面上に対物レンズで光を集光させて情報の記録,再生などを行う光ピックアップに関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップは、光ディスク再生装置および光ディスク記録再生装置など光ディスク装置(たとえば、DVDレコーダー,CDプレーヤー)に使用される。光ディスク装置はPC(パーソナルコンピューター)にも搭載されている。
光ピックアップは、記録媒体である光ディスクの記録面上に光たとえばレーザー光を集光させて情報の記録,再生などを行う装置である。
光ピックアップは可動部を有しており、この可動部は、複数の支持ワイヤを介して支持台に支持されて移動可能である。可動部は、通常は、レーザー光を集光させるための対物レンズと、光ディスクに対する対物レンズの位置を調整するためのフォーカスコイルおよびトラッキングコイルとを有している。
【0003】
特許文献1(特開平11−66583号公報)には、四本のワイヤで対物レンズを弾性支持し光ディスクの記録信号を読み取る光ピックアップが記載されている。
この光ピックアップは、四本のワイヤのうち光ディスク面から遠い位置に構成される二本のワイヤのばね定数が、光ディスク面に近い位置に構成される二本のワイヤのばね定数より高くなるように構成している。これにより、光ディスク法線に対する対物レンズ法線の傾く方向と、主光軸の傾き方向とが同じ方向になるようにしている。
【特許文献1】特開平11−66583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の光ピックアップは、光ディスク面から遠い位置の二本のワイヤのばね定数を、光ディスク面に近い位置の二本のワイヤのばね定数より高くして、レンズホルダを積極的に傾ける構成になっている。
そのため、対物レンズを有する可動部のローリングを防止することを主な目的とする本発明とは目的が異なっているので、この特許文献1の技術をそのまま本発明に適用することはできない。
【0005】
ところで、高密度記録を実現するために、近年は高NA(NAは、開口数)レンズの採用が進んでいる。この高NAレンズでは、光ディスクと対物レンズとの間の距離(ワーキングディスタンス)を短くする必要があるが、薄型のアクチュエータでは構造上、可動部の重心位置とトラッキング駆動力中心位置とに対して、光ディスクの表面から遠い方の位置に、寸法上の支持中心を配置せざるを得ない場合があった。
この場合には、可動部がトラッキング方向に移動したときローリングして傾く恐れがあり、その結果、低域の周波数帯(低周波数域)で加速度感度の乱れや位相の乱れが発生する恐れもあった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、対物レンズを有する可動部がトラッキング方向に移動したとき、この可動部のローリングを防止し、その結果、低域の周波数帯における可動部の加速度感度と位相の各乱れを解消することができる光ピックアップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明にかかる光ピックアップは、光ディスクの記録面上に光を集光させるための対物レンズが設けられ、前記光ディスクに対する前記対物レンズの位置をフォーカスコイルおよびトラッキングコイルで調整可能な可動部と、この可動部を移動可能に支持するために、前記光ディスク側および反光ディスク側にそれぞれ設けられた一対の第1の支持ワイヤおよび一対の第2の支持ワイヤと、この一対の第1の支持ワイヤと一対の第2の支持ワイヤとを支持する支持台と、前記フォーカスコイルおよび前記トラッキングコイルとの間でそれぞれ磁気回路を構成する永久磁石が取付けられたヨーク部とを備えた光ピックアップであって、前記可動部の重心位置と前記トラッキングコイルによるトラッキング駆動力中心位置とはフォーカス方向に関してほぼ一致しているが、この一致点が、寸法上の支持中心位置に対して前記光ディスク側にずれている場合において、前記可動部がトラッキング方向に移動したときにローリングをしないように、前記一対の第1の支持ワイヤのばね定数を、前記一対の第2の支持ワイヤのばね定数より大きくしている。
好ましい一実施態様として、前記一対の第1の支持ワイヤの直径を、前記一対の第2の支持ワイヤの直径より大きくすることにより、この一対の第1の支持ワイヤのばね定数を相対的に大きくしている。
また、他の好ましい実施態様として、前記一対の第1の支持ワイヤのみを、前記支持台側から平面視で見てハの字状または逆ハの字状に配置することにより、この一対の第1の支持ワイヤのばね定数を相対的に大きくしている。
さらに、他の好ましい実施態様として、前記一対の第1の支持ワイヤと前記一対の第2の支持ワイヤは、前記支持台に取付けられたプリント配線板に電気的に接続されており、このプリント配線板には前記一対の第2の支持ワイヤの接続位置の近傍に切欠き部を形成することにより、前記一対の第2の支持ワイヤのばね定数を相対的に小さくしている。
さらに、他の好ましい実施態様として、前記一対の第1の支持ワイヤの長さ寸法を、前記一対の第2の支持ワイヤの長さ寸法より短くすることにより、前記一対の第1の支持ワイヤのばね定数を相対的に大きくしている。
さらに、好ましい他の実施態様として、前記一対の第1の支持ワイヤと前記一対の第2の支持ワイヤは、前記支持台の凹部に充填されたゲル剤を介してこの支持台に支持されており、前記一対の第1の支持ワイヤを支持する一方の前記ゲル剤の粘度を、前記一対の第2の支持ワイヤを支持する他方の前記ゲル剤の粘度より高くすることにより、前記一対の第1の支持ワイヤのばね定数を相対的に大きくしている。
さらに、好ましい他の実施態様として、前記一対の第1の支持ワイヤと前記一対の第2の支持ワイヤは、前記支持台の凹部に充填されたゲル剤を介して支持台に支持されており、前記一対の第1の支持ワイヤを支持する一方の前記ゲル剤の軸線方向の有効長さ寸法を、前記一対の第2の支持ワイヤを支持する他方の前記ゲル剤の軸線方向の有効長さ寸法より長くすることにより、前記一対の第1の支持ワイヤのばね定数を相対的に大きくしている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光ピックアップは、上述のように構成したので、対物レンズを有する可動部がトラッキング方向に移動したとき、この可動部のローリングを防止し、その結果、低域の周波数帯における可動部の加速度感度の乱れと位相の乱れを解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明にかかる光ピックアップの平面図である。図2は、本発明の前提となる構成を説明するための参考図であって、本発明の特徴は示していない。
図2は、光ディスク側の一対の第1の支持ワイヤのばね定数と、反光ディスク側の一対の第2の支持ワイヤのばね定数とが同じ場合の光ピックアップを示す図で、図2(A)は光ピックアップの正面図、図2(B)は、図2(A)のII−II線矢視図である。
図3は、一対の第1の支持ワイヤのばね定数を一対の第2の支持ワイヤのばね定数より大きくした本発明の一実施例にかかる光ピックアップを示す図である。図3(A)は光ピックアップの正面図、図3(B)は図3(A)のIII−III線矢視図である。
図2,図3は、可動部の重心位置と、トラッキングコイルによるトラッキング駆動力中心位置とが、フォーカス方向に関して一致し、この一致点が、寸法上の支持中心位置に対してフォーカス方向に関してずれている場合を示している。
図4(A),(B)は、周波数特性を示すグラフで、横軸,縦軸はそれぞれ周波数,感度を示している。図4(A)は、低域の周波数帯における可動部の加速度感度の乱れと位相の乱れが発生している場合を、図4(B)は、低域の周波数帯における可動部の加速度感度の乱れと位相の乱れが解消された場合を、それぞれ示している。
【0010】
次に、本発明の概要について説明する。
図1ないし図4において、光ピックアップでは、対物レンズやトラッキングコイル9などを有する可動部2の重心位置Gと、トラッキングコイル9によるトラッキング駆動力中心位置Faと、フォーカス方向に関する可動部を支持する寸法上の中心位置(すなわち、寸法上の支持中心位置)Lとが一致していれば、可動部2は、トラッキング方向に移動したときに、ローリングして傾くことはなく、平行移動する。
これら三つの位置G,Fa,Lのうち、可動部の重心位置Gとトラッキング駆動力中心位置Faは、可動部2におけるトラッキングコイル9の配置位置を調整すれば、フォーカス方向(X方向)に関して容易に一致させることができる。
【0011】
ところが、近年、光ディスク3のうちDVDなどは情報の記録密度が向上しており、光ピックアップには、対物レンズ4のNA(開口数)を高くするために高NAレンズが使用される。その結果として、ワーキングディスタンス(対物レンズと光ディスクの表面との間の距離)Dが短くなり、光学系のレンズ焦点距離が短くなっている。
一方、光ピックアップを薄型化するのに、可動部2の本体部16を薄型化する必要性があり、また、可動部本体部16と光ディスク3の表面3aとの間には、光ピックアップのカバー(図示せず)などを配置するためのスペースを確保しなければならないので、可動部本体部16を光ディスク表面3aからある程度離して配置する必要がある。
【0012】
このように、ワーキングディスタンスDが短く(すなわち、レンズ焦点距離が短く)、また、可動部本体部16が光ディスク表面3aからある程度離して配置されている状況下においては、上述のように、可動部2の重心位置Gとトラッキング駆動力中心位置Faとをフォーカス方向に関して一致させることはできるものの、寸法上の支持中心位置Lに対してこの一致点が光ディスク表面3a側にずれた構造をどうしても採らざるを得ず、可動部2の重心位置Gとトラッキング駆動力中心位置Faと寸法上の支持中心位置Lとの三点を一致させることが不可能な場合が生じる。
すなわち、可動部2の重心位置Gとトラッキング駆動力中心位置Faとの一致点が、寸法上の支持中心位置Lに対して光ディスク表面3a側にずれて構成されると、可動部2は、トラッキング方向に移動したときにローリングして傾くことになる(図2(B))。その結果、低域の周波数帯における可動部2の加速度感度の乱れと位相の乱れが発生する場合がある(図4(A))。
【0013】
そこで、本発明は、上述のような「可動部に傾きが発生する」という不具合を解消している。本発明では、可動部2の重心位置Gとトラッキング駆動力中心位置Faとの一致点と、寸法上の支持中心位置Lとの“「ずれ」による可動部の傾き”を生じさせないようにするために、支持ワイヤ5aのばね定数と、支持ワイヤ5bのばね定数とを異なるものにすることにより、トラッキング方向(Z方向)における可動部2の可動範囲を上下各部位で同等にしている。
【0014】
具体的には、本実施例では、可動部2の重心位置Gとトラッキングコイル9によるトラッキング駆動力中心位置Faとはフォーカス方向に関してほぼ一致しているが、寸法上の支持中心位置Lに対して、この一致点が光ディスク3側にずれていることを前提にしている。
そして、可動部2がトラッキング方向に移動したときにローリングをしないように、光ディスク3側に位置する一対の第1の支持ワイヤ5aのばね定数を、反光ディスク側(光ディスクから離れた遠い方の位置)に位置する一対の第2の支持ワイヤ5bのばね定数より相対的に大きくしている(図3)。
これにより、可動部2がトラッキング方向に移動したとき、この可動部2のローリングを防止し(図3(B))、その結果として、低域の周波数帯における可動部の加速度感度の乱れと位相の乱れを解消している(図4(B))。
【実施例】
【0015】
以下、本発明について図1ないし図9を参照して説明する。
図1,図3に示すように、本発明の光ピックアップ1は可動部2を備えている。なお、参考図である図2に示す光ピックアップにおいても、図3に示す光ピックアップ1と同一または相当部分には同一符号を付している。
可動部2には、フォーカスコイル8およびトラッキングコイル9と、光ディスク3の記録面(表面3a)上にレーザー光などの光を集光させるための対物レンズ4とが設けられている。可動部2のフォーカスコイル8とトラッキングコイル9にそれぞれ電流を流すことにより、記録媒体である光ディスク3に対する対物レンズ4の位置を調整することができる。
光ディスク3としては、DVD−ROM,DVD−RAM,DVD−R,DVD−RW,CD,CD−ROM,CD−R,CD−RW,MD,MOなどがある。
【0016】
なお、説明の便宜上、対物レンズ4の光軸Bと平行な方向すなわちフォーカス方向をX方向とし、特に、光ディスク3の方向を上方向とする。このX方向と直交する方向(光ディスク3の半径方向)すなわちトラッキング方向をZ方向とし、X方向およびZ方向の両方向と直交する方向をY方向とする。
本実施例では、対物レンズ4が可動部2の中央部より一方側に偏心して配置された「レンズオフセットタイプ」の光ピックアップ1の場合を示している。なお、本発明は、対物レンズが可動部のほぼ中央部に配置された「レンズセンタータイプ」の光ピックアップにも適用可能である。
【0017】
光ピックアップ1は、可動部2を移動可能に支持する複数の支持ワイヤ5a,5bと、支持ワイヤ5a,5bを支持する支持台6と、ヨーク部(継鉄部)7とを備えている。
複数の支持ワイヤ5a,5bは、光ディスク3側(光ディスク3に近い距離の位置)に設けられた一対の第1の支持ワイヤ5aと、反光ディスク側(光ディスク3から離れた遠い方の位置)に設けられた一対の第2の支持ワイヤ5bとにより構成されている。
支持ワイヤ5a,5bは、可動部2の両端にY方向とほぼ平行にそれぞれ二本ずつ合計四本設けられている。互いにほぼ平行な四本の支持ワイヤ5a,5bは、その一端部(支持台6から遠い方の端部)が可動部2側に固定され、他端部が支持台6側に固定されている。
【0018】
支持台6は、磁性体からなるヨーク部7に取付けられている。支持台6は、一対の第1の支持ワイヤ5aと一対の第2の支持ワイヤ5bとを支持しており、四本の支持ワイヤ5a,5bは、可動部2を移動可能に支持している。
フォーカスコイル8とトラッキングコイル9との間でそれぞれ磁気回路を構成する永久磁石19a,19bが、ヨーク部7のヨーク7a,7bにそれぞれ取付けられている。フォーカスコイル7とトラッキングコイル8は、永久磁石19a,19bによる磁束がそれぞれ鎖交するように配置されている。
磁気回路を構成しているフォーカスコイル7,トラッキングコイル8,ヨーク部7および永久磁石19a,19bは、可動部2を移動させるための駆動部11を構成している。
【0019】
可動部2に設けられたフォーカスコイル8とトラッキングコイル9には、支持ワイヤ5a,5bを介してそれぞれ電流が供給される。フォーカスコイル8に電流を流せば、可動部2をフォーカス方向(対物レンズ4の光軸Bと平行な方向(X方向、すなわち上下方向))に移動させることができる。トラッキングコイル9に電流を流せば、可動部2をトラッキング方向(光ディスク3の半径方向(Z方向))に移動させることができる。
トラッキングコイル9に電流を流して、可動部2をトラッキング方向に移動させるときに、可動部2に対してトラッキング方向に作用する駆動力(トラッキング駆動力)の中心となる位置(トラッキング駆動力中心位置Fa)は、各図中「○」印または「・」印で示されている。
トラッキング駆動力中心位置Faは、トラッキングコイル9における上下方向(X方向、すなわちフォーカス方向)に関する中心位置である。また、可動部2の重心位置Gは、各図中「×」印または「・」印で示されている。
【0020】
光ディスク装置(図示せず)に使用される光ピックアップ1は、移動機構(図示せず)により、光ディスク3の半径方向に制御されつつ移動可能になっている。光ディスク装置は、光ディスク3を駆動モータで回転駆動するとともに、移動機構で所望の位置に光ピックアップ1を移動させる。
そして、光ピックアップ1は、光ディスク3の記録面(表面3a)上に対物レンズ4で光(たとえば、レーザー光)を集光させて、光ディスク3に対して情報の記録,再生などを行う。
【0021】
光ピックアップ1では、可動部2の重心位置Gと、トラッキングコイル9によるトラッキング駆動力中心位置Faとを、フォーカス方向(X方向)に関してほぼ一致させている。また、可動部2が、トラッキング方向(Z方向)に移動したとき(たとえば、基本位置Sからトラッキング方向にシフトしたとき)にローリングをしないように、一対の第1の支持ワイヤ5aのばね定数を、一対の第2の支持ワイヤ5bのばね定数より相対的に大きくしている。
これにより、可動部2がトラッキング方向に移動したとき、可動部2のローリングを防止し、その結果として、低域の周波数帯(低周波数域)における可動部2の加速度感度の乱れと位相の乱れを解消している。
ここで「可動部2の基本位置」とは、たとえば、フォーカスコイル8とトラッキングコイル9に電流を供給しないで可動部2が静止している状態のとき、可動部2の上下,左右の中心線がともに基準線(図示せず)と一致しているときの、可動部2の位置をいう。好ましくは、対物レンズ4の光軸Bが、水平面に対して直角になるとともに、Z方向の基準線(中心線)と一致する位置にあるときに、可動部2が基本位置Sにあることになる。
【0022】
可動部2は、絶縁性を有する合成樹脂材などで一体形成された本体部16を有している。本体部16は、ワーキングディスタンスDが短くなるように、対物レンズ4側が立ち上がった所定形状を有している。
本体部16は、本体部16と光ディスク3の表面3aとの間に光ピックアップ1のカバー(図示せず)などを配置するためのスペースを確保するために薄型に形成されている。
本体部16は、対物レンズ4を支持するレンズ支持部17と、コイル8,9を支持し、平面視でほぼ矩形のコイル支持部18とを有している。コイル支持部18の内方には、一つのフォーカスコイル8と、Z方向に並んだ一対のトラッキングコイル9とが設けられている。こうして、対物レンズ4,フォーカスコイル8およびトラッキングコイル9などは、本体部16の所定位置に取付けられている。
【0023】
可動部2は、合計四本の支持ワイヤ5a,5bを介して、支持台6とヨーク部7との間の空間に浮いている格好で取付けられている。したがって、可動部2は、移動や揺動などの動作を行なって、可動部2の状態(可動部2の位置,姿勢など)を自在に変化させることができる。
可動部2は、フォーカスコイル8とトラッキングコイル9に電流が供給されていないときの基本位置Sから、フォーカスコイル8とトラッキングコイル9の一方または両方に電流を供給することにより、上下方向(X方向)や左右方向(Z方向)に移動(シフト)することができる。
【0024】
支持ワイヤ5a,5bが接続されたプリント配線板13が、支持台6に固着されている。プリント配線板13には、支持ワイヤ5a,5bを係合させるための複数(ここでは、四つ)の孔が所定位置に穿設されている。支持台6の所定位置には、支持ワイヤ5a,5bを貫通させるための複数(ここでは、四つ)の貫通孔が穿設されている。
支持ワイヤ5a,5bの他端部またはその近傍は、プリント配線板13の孔を通ってプリント配線板13に電気的に接続されるとともに、支持台6側に固定されている。支持ワイヤ5a,5bの一端部またはその近傍は、可動部2の支持片12に固定されるとともに、フォーカスコイル8またはトラッキングコイル9に電気的に接続されている。
フォーカスコイル8と二つのトラッキングコイル9は、支持ワイヤ5a,5bと、この支持ワイヤ5a,5bが電気的に接続されたプリント配線板13とを介して、制御部(図示せず)に電気的に接続されている。
【0025】
光ピックアップ1は、図示しない光学系を有している。この光学系は、レーザー光を発生する半導体レーザーなど光源,光検出器,反射ミラー,レンズおよび回折格子などを有している。対物レンズ4もこの光学系に含まれる。
光検出器は、光ディスク3の記録面で反射したレーザー光を受光し、再生信号を検出するとともに、フォーカスエラー信号,トラッキングエラー信号なども検出する。
【0026】
次に、光ピックアップ1の動作について説明する。
まず、光ディスク装置において、光ディスク3が駆動モータにより回転駆動されている状態で、移動機構により光ピックアップ1を所望の位置に移動させる。そして、光学系で発生したレーザー光を対物レンズ4で記録面上に集光させて、光ディスク3に対して情報の記録,再生などを行う。
光ピックアップ1の状態(可動部2の位置,姿勢など)を制御する場合には、光検出器で検出された光ディスク3の傾きなどの姿勢制御に関する情報を変換部で電気信号に変換し、制御部に電気信号(フォーカスエラー信号,トラッキングエラー信号など)として出力する。
制御部では、変換部から出力された電気信号(フォーカスエラー信号,トラッキングエラー信号など)に基づいて、フォーカスコイル8に流す電流とトラッキングコイル9に流す電流をそれぞれ制御する。
【0027】
対物レンズ4をフォーカス方向(X方向)に移動させる場合には、制御部は、対物レンズ4の移動すべき方向および移動量に応じた制御電流を、支持ワイヤ5a,5bを介してフォーカスコイル8に供給する。すると、フォーカスコイル8により生じる電磁力により、可動部2が光ディスク3に対してフォーカス方向(X方向)に移動(シフト)して、対物レンズ4の位置を調整する。
同様に、制御部が、対物レンズ4の移動すべき方向および移動量に応じた制御電流を、支持ワイヤ5a,5bを介して二つのトラッキングコイル9に供給する。すると、トラッキングコイル9により生じる電磁力により、可動部2が光ディスク3に対してトラッキング方向(Z方向)に移動(シフト)して、対物レンズ4の位置を調整する。
このようにして、可動部2は、フォーカス方向,トラッキング方向にそれぞれ移動するようにその位置が制御される。
【0028】
可動部2は、図2(A),図3(A)に示すように、第1の支持ワイヤ5aと第2の支持ワイヤ5bとにより支持されているので、第1の支持ワイヤ5aと第2の支持ワイヤ5bとにおけるフォーカス方向(X方向)に関する中間位置が、可動部2を支持する力のフォーカス方向(X方向)に関する寸法上の中心位置(すなわち、四本の支持ワイヤ5a,5bによる寸法上の支持中心位置)Lになる。
その結果、寸法上の支持中心位置Lは、重心位置Gとトラッキング駆動力中心位置Faとがフォーカス方向に関して一致する点から、反光ディスク側に(下方に)距離dだけずれている。
言い換えれば、重心位置Gとトラッキング駆動力中心位置Faとが一致する点(一致点)と、第1の支持ワイヤ5aと第2の支持ワイヤ5bとによる寸法上の支持中心位置Lとの間には、距離dのずれがある。
このように、可動部2の重心位置Gとトラッキング駆動力中心位置Faは、寸法上の支持中心位置Lから距離dだけ上方に(すなわち、光ディスク3側に)位置しているので、トラッキングコイル9を駆動して可動部2をトラッキング方向に移動させる場合、図2に示すように、光ディスク3側の一対の第1の支持ワイヤ5aのばね定数と、反光ディスク側の一対の第2の支持ワイヤ5bのばね定数とが同じだと、可動部2は不安定になる。
【0029】
その結果、可動部2が基本位置Sからトラッキング方向にシフトしたときに、図2(B)に示すように可動部2がローリングを起こして、光ディスク3の法線方向(符号H方向)に対してたとえば角度θの傾きが発生する場合がある。
また、トラッキング駆動力中心位置Faと寸法上の支持中心位置Lとが距離dだけずれているので、可動部2がトラッキングシフトしたときローリングを生じることになり、これが、加速度感度と位相の各乱れの原因にもなっていた(図4(A))。
【0030】
理想的には、可動部2の重心位置Gとトラッキング駆動力中心位置Faと寸法上の支持中心位置Lの三つの位置が、フォーカス方向(X方向)に関して一致するのが望ましい。
光ピックアップ1では、可動部2の本体部16をできるだけ薄型化する必要性があるが、可動部本体部16と光ディスク3の表面3aとの間には、光ピックアップ1のカバー(図示せず)などを配置するためのスペースを確保しなければならないので、本体部16を光ディスク表面3aからある程度離して配置する必要がある。
こうして、ワーキングディスタンスDが短く(すなわち、対物レンズの焦点距離が短く)、また、本体部16が光ディスク表面3aからある程度離して配置されている状況下においては、可動部2の重心位置Gとトラッキング駆動力中心位置Faとをフォーカス方向に関して一致させることはできるものの、この一致点(重心位置Gと中心位置Faの一致点)が、寸法上の支持中心位置Lに対して光ディスク表面3a側にずれた構造をどうしても採らざるを得ず、可動部2の重心位置Gとトラッキング駆動力中心位置Faと寸法上の支持中心位置Lとの三点を一致させることが不可能な場合が生じる。
その結果、可動部2の重心位置Gとトラッキング駆動力中心位置Faとの一致点が、寸法上の支持中心位置Lに対して光ディスク表面3a側にずれて構成されると、可動部2は、トラッキング方向に移動したときにローリングして傾きが生じ、これにより、低域の周波数帯における可動部の加速度感度の乱れと位相の乱れが発生する場合がある。
【0031】
そこで、本発明の光ピックアップ1では、まず、可動部2の重心位置Gと、トラッキングコイル9によるトラッキング駆動力中心位置Faとを、フォーカス方向(X方向)に関してほぼ一致させている。ところが、この一致点(重心位置Gと中心位置Faとが一致する点)は、寸法上の支持中心位置Lに対して光ディスク3側にずれている。
そのため、光ピックアップ1では、一対の第1の支持ワイヤ5aのばね定数を、一対の第2の支持ワイヤ5bのばね定数より相対的に大きくしている。これは、支持ワイヤ5a,5bによる上下方向(X方向)に関する力学的な支持中心位置(この場合には、仮想上の支持中心位置)を、トラッキング駆動力中心位置Faとほぼ一致させるかまたはその近傍に位置させていることに相当する。その結果、可動部2が、基本位置Sからトラッキング方向(Z方向)に移動したときにローリングを起こさない。
こうして、光ピックアップ1は、重心位置Gとトラッキング駆動力中心位置Faとが一致する点に対して、支持ワイヤ5a,5bによる寸法上の支持中心位置Lが距離dだけずれていることを前提として、可動部2のトラッキングシフト時の傾きを防止する構成にしている。
【0032】
たとえば、図3(A),(B)は、一対の第1の支持ワイヤ5aの直径を、一対の第2の支持ワイヤ5bの直径より大きくすることにより、一対の第1の支持ワイヤ5aのばね定数を、一対の第2の支持ワイヤ5bより相対的に大きくした場合を示している。
その結果、図3(B)に示すように、可動部2を基本位置Sからトラッキング方向(Z方向)に移動させたとき、可動部2は、傾くことなく平行移動することができる。
このようにすれば、光ピックアップ1の支持ワイヤ5a,5b以外の構成部材の設計変更が不要であるので、設計,製作上好ましい。
【0033】
図4(A),(B)に示す周波数特性のグラフは、可動部2の加速度感度(曲線A1)と位相(曲線A2)を示している。すなわち、周波数fが1KHz以下の低域の周波数帯で(たとえば、周波数f0のとき)低次共振が発生し、高域の周波数帯で(たとえば、周波数f2のとき)高次共振が発生する場合を示している。
可動部2の重心位置Gと、トラッキングコイル9によるトラッキング駆動力中心位置Faとが、フォーカス方向(X方向)に関して一致していても、この一致点が、寸法上の支持中心位置Lに対してフォーカス方向に関して光ディスク3側にずれており、且つ、一対の第1の支持ワイヤ5aのばね定数と一対の第2の支持ワイヤ5bのばね定数とが同じであれば(図2)、可動部2が基本位置Sからトラッキング方向にシフトしたときに、可動部2がローリングして傾く(図2(B))。
その結果、図4(A)に示すように、周波数f0〜1KHzの間の周波数で(たとえば、周波数f1のとき)、加速度感度の乱れと位相の乱れが発生する場合がある。
【0034】
これに対して、本実施例の光ピックアップ1(図1,図3)では、重心位置Gとトラッキング駆動力中心位置Faとが、フォーカス方向(X方向)に関してほぼ一致しているが、構造上、この一致点は、寸法上の支持中心位置Lに対して光ディスク3側に距離dだけずれている。
そして、可動部2がトラッキング方向に移動したときにローリングをしないように、一対の第1の支持ワイヤ5aのばね定数を、一対の第2の支持ワイヤ5bのばね定数より相対的に大きくしている。
その結果、可動部2が基本位置Sからトラッキング方向にシフトしたときに、可動部2はローリングを起こさず傾くこともない(図3(B))。したがって、図4(B)に示すように、低域の周波数帯(たとえば、周波数がf0〜1KHz)において、可動部2の加速度感度と位相の各乱れが解消されていることが分かる。
【0035】
次に、図5ないし図9にそれぞれ示す本発明の変形例にかかる光ピックアップ1a〜1fについて説明する。なお、上述の実施例にかかる光ピックアップ1と同一または相当部分には同一符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
図5(A1),(A2)は、本実施例の第1の変形例にかかる光ピックアップ1aのそれぞれ平面図,正面図、図5(B1),(B2)は、第2の変形例にかかる光ピックアップ1bのそれぞれ平面図,正面図である。
図6は、第3の変形例にかかる光ピックアップ1cを示す図である。図6(A1)は光ピックアップ1cの斜視図、図6(A2)は図6(A1)のVI線矢視図、図6(B)はさらに他の変形例を示す図、図6(C)はプリント配線板を示す図である。
図7,図8,図9は、それぞれ第4の変形例,第5の変形例,第6の変形例を示す図である。図7は、第4の変形例にかかる光ピックアップ1dの正面図である。図8(A)は、第5の変形例にかかる光ピックアップ1eの正面図、図8(B)は支持台6eの斜視図である。図9(A)は、第6の変形例にかかる光ピックアップ1fの正面図、図9(B)は支持台6fの斜視図である。
【0036】
図5ないし図9に示す光ピックアップ1a〜1fは、可動部2と、可動部2を移動可能に支持するために、光ディスク側および反光ディスク側にそれぞれ設けられた一対の第1の支持ワイヤ5aおよび一対の第2の支持ワイヤ5bと、一対の第1の支持ワイヤ5aと一対の第2の支持ワイヤ5bとを支持する支持台6,6e,6fと、フォーカスコイル8,トラッキングコイル9との間でそれぞれ磁気回路を構成する永久磁石19a,19bが取付けられたヨーク部7とを備えている。
ヨーク部7には、支持台6,6e,6fが取付けられている。対物レンズ4が設けられた可動部2は、光ディスク3に対する対物レンズ4の位置をフォーカスコイル8とトラッキングコイル9で調整可能になっている。
【0037】
変形例にかかる光ピックアップ1a〜1fは、可動部2の重心位置Gと、トラッキングコイル9によるトラッキング駆動力中心位置Faとは、フォーカス方向(X方向)に関してほぼ一致しているが、この一致点が、寸法上の支持中心位置Lに対して光ディスク3側にずれている。
そして、可動部2がトラッキング方向に移動したとき(たとえば、基本位置Sからトラッキング方向にシフトしたとき)にローリングをしないように、一対の第1の支持ワイヤ5aのばね定数を、一対の第2の支持ワイヤ5bのばね定数より相対的に大きくしている。
これにより、可動部2がトラッキング方向に移動したとき、この可動部2のローリングを防止し、その結果として、低域の周波数帯における可動部2の加速度感度の乱れと位相の乱れを解消している(図4(B))。
【0038】
図5(A1),(A2)に示す光ピックアップ1aは、支持ワイヤ5a,5bのうち一対の第1の支持ワイヤ5aのみを、支持台6側から平面視で見てハの字状に配置している。図5(B1),(B2)に示す光ピックアップ1bは、支持ワイヤ5a,5bのうち一対の第1の支持ワイヤ5aのみを、支持台6側から平面視で見て逆ハの字状に配置している。なお、光ピックアップ1a,1bでは、一対の第2の支持ワイヤ5bは、互いにほぼ平行に設けられている。
その結果、光ピックアップ1a,1bでは、一対の第1の支持ワイヤ5aのばね定数が、一対の第2の支持ワイヤ5bのばね定数より相対的に大きくなる。このようにすれば、全部の支持ワイヤ5a,5bを同じ直径のワイヤで構成することができ、部品の種類が増えないので、設計,製作上好ましい。
【0039】
図6に示す光ピックアップ1cでは、前記実施例と同様に、一対の第1の支持ワイヤ5aと一対の第2の支持ワイヤ5bは、支持台6に取付けられたプリント配線板13に電気的に接続されている。
そして、図6(A1),(A2)に示すように、プリント配線板13には、一対の第2の支持ワイヤ5bの接続位置の近傍に切欠き部30a(図6(B)では、切欠き部30b)を形成している。
その結果、一対の第2の支持ワイヤ5bのばね定数が、第1の支持ワイヤ5aのばね定数より相対的に小さくなる。言い換えれば、第1の支持ワイヤ5aのばね定数は、第2の支持ワイヤ5bのばね定数より相対的に大きくなっている。
したがって、光ピックアップ1cでは、可動部2が基本位置Sからトラッキング方向にシフトしたときにローリングを起こすことがなくなる。また、プリント配線板13に切欠き部30a(または、30b)を形成すればよいので設計,製造が容易である。
なお、図6(C)は、従来の基板形状または前記実施例の基板形状を有し、切欠き部30a,30bが形成されていないプリント配線板13を示している。
【0040】
図7に示す光ピックアップ1dでは、一対の第1の支持ワイヤ5aの長さ寸法を、一対の第2の支持ワイヤ5bの長さ寸法より短くすることにより、一対の第1の支持ワイヤ5aのばね定数を、一対の第2の支持ワイヤ5bのばね定数より相対的に大きくしている。
この場合には、支持ワイヤ5a,5bの長さ寸法と、これを支持する支持片12の位置を調整すればよいので、部品の種類が増えることはない。
【0041】
図8に示す光ピックアップ1eにおいて、一対の第1の支持ワイヤ5aと一対の第2の支持ワイヤ5bは、支持台6eの凹部31eに充填されたゲル剤32a,32bを介して支持台6eに支持されている。
また、一対の第1の支持ワイヤ5aを支持する一方のゲル剤32aの粘度を、一対の第2の支持ワイヤ5bを支持する他方のゲル剤32bの粘度より相対的に高くしている。これにより、一対の第1の支持ワイヤ5aのばね定数が、一対の第2の支持ワイヤ5bのばね定数より相対的に大きくなる。
したがって、可動部2は、基本位置Sからトラッキング方向にシフトしたときにローリングをせず平行移動することができる。四つの凹部32eは同じ形状で互いに平行に形成されているので、各凹部32eに充填されるゲル剤32a,32bの形状も同一である。この変形例では、ゲル剤32a,32bの粘度を変えるだけで本発明の前記作用効果を奏する。
【0042】
図9に示す光ピックアップ1fにおいて、一対の第1の支持ワイヤ5aと一対の第2の支持ワイヤ5bは、支持台6fの凹部31f1,31f2に充填されたゲル剤32a1,32b1を介して、支持台6fに支持されている。
この変形例では、一対の第1の支持ワイヤ5aを支持する一方のゲル剤32a1の軸線方向の有効長さ寸法Eaを、一対の第2の支持ワイヤ5bを支持する他方のゲル剤32b1の軸線方向の有効長さ寸法Ebより相対的に長くしている。なお、一方のゲル剤32a1と他方のゲル剤32b1の粘度は同じである。
【0043】
このように、光ピックアップ1fでは、第1の支持ワイヤ5aと第2の支持ワイヤ5bについて、ゲル剤32a1,32b1とそれぞれ接する部分の支持ワイヤ5a,5bの有効長さ寸法Ea,Ebを変えることにより、ゲル剤32a1,32b1のダンピング効果を変えている。
その結果、一対の第1の支持ワイヤ5aのばね定数が、一対の第2の支持ワイヤ5bのばね定数より相対的に大きくなるので、可動部2は、基本位置Sからトラッキング方向にシフトしたときにローリングをせず平行移動する。
【0044】
図8,図9に示すように、ゲル剤の粘度を変えたり、その有効長さ寸法を変えることにより、第1の支持ワイヤ5aのばね定数を、第2の支持ワイヤ5bのばね定数より相対的に大きくすれば、前記実施例と同じ作用効果を奏する。
【0045】
上述の実施例と第1の変形例〜第6の変形例にかかる光ピックアップ1,1a〜1fでは、可動部2の重心位置Gとトラッキング駆動力中心位置Faとはフォーカス方向に関してほぼ一致しているが、この一致点が、寸法上の支持中心位置Lに対して光ディスク3側にずれている場合において、一対の第1の支持ワイヤ5aのばね定数を、一対の第2の支持ワイヤ5bのばね定数より相対的に大きくしているので、支持ワイヤ5a,5bによる力学的な支持中心位置(仮想上の支持中心位置)が、トラッキング駆動力中心位置Faに近づくかまたはほぼ一致している。
その結果、可動部2がトラッキング方向に移動したとき、可動部2は、ローリングすることなく平行移動するので(図3(B))、低域の周波数帯における可動部2の加速度感度の乱れと位相の乱れが解消される(図4(B))。
【0046】
以上、本発明の実施例(各種変形例を含む。以下同じ)を説明したが、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲で種々の変形,付加などが可能である。
なお、各図中同一符号は同一または相当部分を示す。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、DVD,CDなど光ディスクの記録面上に対物レンズでレーザー光などを集光させて情報の記録,再生などを行う光ディスク装置に取付けられる光ピックアップに適用される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明にかかる光ピックアップの平面図である。
【図2】本発明の前提となる構成を説明するための参考図であって、本発明の特徴は示していない。図2は、一対の第1の支持ワイヤのばね定数と一対の第2の支持ワイヤのばね定数とが同じ場合の光ピックアップを示す図である。
【図3】図3は、一対の第1の支持ワイヤのばね定数を一対の第2の支持ワイヤのばね定数より大きくした本発明の一実施例にかかる光ピックアップを示す図である。
【図4】周波数特性を示すグラフであり、図4(A)は、可動部の加速度感度の乱れなどが発生している場合を、図4(B)は、可動部の加速度感度の乱れなどが解消された場合を、それぞれ示している。
【図5】図5(A1),(A2)は、第1の変形例にかかる光ピックアップのそれぞれ平面図,正面図であり、図5(B1),(B2)は、第2の変形例にかかる光ピックアップのそれぞれ平面図,正面図である。
【図6】第3の変形例を示す図で、図6(A1)は光ピックアップの斜視図、図6(A2)は図6(A1)のVI線矢視図、図6(B)はさらに他の変形例を示す図、図6(C)はプリント配線板を示す図である。
【図7】第4の変形例を示す光ピックアップの正面図である。
【図8】第5の変形例を示す図で、図8(A)は光ピックアップの正面図、図8(B)は支持台の斜視図である。
【図9】第6の変形例を示す図で、図9(A)は光ピックアップの正面図、図9(B)は支持台の斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
1,1a〜1f 光ピックアップ
2 可動部
3 光ディスク
4 対物レンズ
5a 第1の支持ワイヤ
5b 第2の支持ワイヤ
6,6e,6f 支持台
8 フォーカスコイル
9 トラッキングコイル
13 プリント配線板
19a,19b 永久磁石
30a,30b 切欠き部
31e,31f1,31f2 凹部
32a,32a1 一方のゲル剤
32b,32b1 他方のゲル剤
Ea,Eb 有効長さ寸法
Fa トラッキング駆動力中心位置
G 重心位置
L 寸法上の支持中心位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクの記録面上に光を集光させるための対物レンズが設けられ、前記光ディスクに対する前記対物レンズの位置をフォーカスコイルおよびトラッキングコイルで調整可能な可動部と、
この可動部を移動可能に支持するために、前記光ディスク側および反光ディスク側にそれぞれ設けられた一対の第1の支持ワイヤおよび一対の第2の支持ワイヤと、
この一対の第1の支持ワイヤと一対の第2の支持ワイヤとを支持する支持台と、
前記フォーカスコイルおよび前記トラッキングコイルとの間でそれぞれ磁気回路を構成する永久磁石が取付けられたヨーク部とを備えた光ピックアップであって、
前記可動部の重心位置と前記トラッキングコイルによるトラッキング駆動力中心位置とはフォーカス方向に関してほぼ一致しているが、この一致点が、寸法上の支持中心位置に対して前記光ディスク側にずれている場合において、
前記可動部がトラッキング方向に移動したときにローリングをしないように、前記一対の第1の支持ワイヤのばね定数を、前記一対の第2の支持ワイヤのばね定数より大きくしたことを特徴とする光ピックアップ。
【請求項2】
前記一対の第1の支持ワイヤの直径を、前記一対の第2の支持ワイヤの直径より大きくすることにより、この一対の第1の支持ワイヤのばね定数を相対的に大きくしたことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ。
【請求項3】
前記一対の第1の支持ワイヤのみを、前記支持台側から平面視で見てハの字状または逆ハの字状に配置することにより、この一対の第1の支持ワイヤのばね定数を相対的に大きくしたことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ。
【請求項4】
前記一対の第1の支持ワイヤと前記一対の第2の支持ワイヤは、前記支持台に取付けられたプリント配線板に電気的に接続されており、
このプリント配線板には前記一対の第2の支持ワイヤの接続位置の近傍に切欠き部を形成することにより、前記一対の第2の支持ワイヤのばね定数を相対的に小さくしたことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ。
【請求項5】
前記一対の第1の支持ワイヤの長さ寸法を、前記一対の第2の支持ワイヤの長さ寸法より短くすることにより、前記一対の第1の支持ワイヤのばね定数を相対的に大きくしたことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ。
【請求項6】
前記一対の第1の支持ワイヤと前記一対の第2の支持ワイヤは、前記支持台の凹部に充填されたゲル剤を介してこの支持台に支持されており、
前記一対の第1の支持ワイヤを支持する一方の前記ゲル剤の粘度を、前記一対の第2の支持ワイヤを支持する他方の前記ゲル剤の粘度より高くすることにより、前記一対の第1の支持ワイヤのばね定数を相対的に大きくしたことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ。
【請求項7】
前記一対の第1の支持ワイヤと前記一対の第2の支持ワイヤは、前記支持台の凹部に充填されたゲル剤を介して支持台に支持されており、
前記一対の第1の支持ワイヤを支持する一方の前記ゲル剤の軸線方向の有効長さ寸法を、前記一対の第2の支持ワイヤを支持する他方の前記ゲル剤の軸線方向の有効長さ寸法より長くすることにより、前記一対の第1の支持ワイヤのばね定数を相対的に大きくしたことを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−228322(P2006−228322A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−40104(P2005−40104)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(000107804)スミダコーポレーション株式会社 (285)
【Fターム(参考)】